(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154310
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】ウニ類採取処分装置
(51)【国際特許分類】
A01K 80/00 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
A01K80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063561
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】391002454
【氏名又は名称】株式会社吉谷機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
(72)【発明者】
【氏名】大谷 亮太
【テーマコード(参考)】
2B105
【Fターム(参考)】
2B105AD04
2B105AG25
2B105AG30
2B105AJ01
2B105PA20
(57)【要約】
【課題】本発明は、海中のウニを効率よく処分でき、また、その処分に費用がかからないウニ類採取処分装置を提供することを目的とする。
【解決手段】船Sに搭載されたウニ類採取処分装置100は、ウニ類等を採取する採取部1と、採取した前記ウニ類を吸引する吸引部2と、吸引したウニ類を排出する排出部4と、からなり、採取部1と吸引部2と排出部4における前記ウニ類が通過する通過経路内に、ウニ類を砕く粉砕手段3を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウニ類を採取する採取部と、
採取した前記ウニ類を吸引する吸引部と、
吸引した前記ウニ類を排出する排出部と、
からなり、
前記採取部と前記吸引部と前記排出部における前記ウニ類が通過する通過経路内に、前記ウニ類を砕く粉砕手段を設けたことを特徴とするウニ類採取処分装置。
【請求項2】
前記採取部は、採取用チューブからなり、
前記排出部は、排出用チューブからなり、
前記吸引部は、
高圧水が注入される注入口と、
前記採取用チューブが接続される吸引口と、
前記排出用チューブが接続され、前記高圧水と前記ウニ類とを吐出する吐出口と、
からなるエジェクタであり、
前記粉砕手段は、前記吐出口に接続された前記排出用チューブとの接続箇所に設けられた切断刃からなることを特徴とする請求項1のウニ類採取処分装置。
【請求項3】
前記採取部は、採取用チューブからなり、
前記排出部は、排出用チューブからなり、
前記吸引部は、
高圧水が注入される注入口と、
前記採取用チューブが接続される吸引口と、
前記排出用チューブが接続され、前記高圧水と前記ウニ類とを吐出する吐出口と、
からなるエジェクタであり、
前記粉砕手段は、前記吐出口と前記排出用チューブとの間に設けられ、
本体ケースと、
前記本体ケース内に固定された切断刃と、
からなることを特徴とする請求項1のウニ類採取処分装置。
【請求項4】
前記採取用チューブの先端には、操作用把手が設けられていることを特徴とする請求項2又は3のウニ類採取処分装置。
【請求項5】
前記採取用チューブの採取口の先端には、鉤爪が取り付けられていることを特徴とする請求項2又は3のウニ類採取処分装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウニ類採取処分装置に関し、詳しくは、ウニ類が通過する通過経路内にウニ類を砕く粉砕手段を設けたウニ類採取処分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非特許文献1にも記載されているいわゆる「磯焼け」と呼ばれる、藻場の著しく衰退や消失が生じる現象が、各地に広がり非常に大きな問題となっている。この磯焼けの発生原因としては、栄養塩の欠乏や海水温の上昇等、様々な原因が挙げられているが、その中に植食動物による食害がある。
その中でも特にウニ類による食害はウニ焼けと呼ばれる程大きな原因の一つであり、非特許文献2にあるようにその対策としてウニの除去が行われている。
具体的には、潜水により海中に潜り、ウニを採ったり、海中で潰したりすることで、ウニの除去を行っている。
【0003】
また、潜水によりウニを除去する方法以外の対策としては、特許文献1にあるような採取装置によりウニを採取する対策が知られている。また、その他の対策としては、特許文献2~4にあるようなウニの動きを規制する対策も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-000043号公報
【特許文献2】特開2011-045341号公報
【特許文献3】特開2008-173059号公報
【特許文献4】特開平10-004808号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】水産庁「指針・ガイドライン等;第3章 磯焼けとは」 検索日:令和4年3月26日〈https://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/g_gideline/attach/pdf/index-36.pdf〉
【非特許文献2】水産庁「指針・ガイドライン等;E 対策の実施」 検索日:令和4年3月26日〈https://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/g_hourei/pdf/isoyake5.pdf〉
【非特許文献3】神奈川県「キャベツウニについて」 検索日:令和4年3月26日〈https://www.pref.kanagawa.jp/docs/mx7/kikaku/kyabetsuuni.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2~4にあるようなウニの動きを規制する対策は、使用する資材等に費用がかかることになり、また対象範囲が広くなればなるほど費用も増えることになる。
非特許文献2のように潜水によりウニを除去する対策は、作業者の人数、経験、体力等に影響されるため、あまり効率的ではないという問題がある。
一方、特許文献1のような採取装置であれば非常に効率よくウニを採取することができる。
【0007】
ところが、特許文献1のような採取装置で採取した大量のウニは、その処分が問題となる。例えば、採取したウニを別の場所に移し、非特許文献3のように養殖して利用することも考えられるが、現実にはこのような方法で全て処分できるわけではない。
【0008】
したがって、採取したウニは廃棄処分することになるが、陸に上げて廃棄処分を行う場合、その処分に費用が掛かってしまうという問題がある。また、一度採取したウニを船上で潰して廃棄することも考えられるが、一度採取した後でウニを船上で潰して廃棄することは、廃棄物の不法投棄と判断されてしまうおそれがある。
本発明は、海中のウニを効率よく処分でき、また、その処分に費用がかからないウニ類採取処分装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のウニ類採取処分装置は、ウニ類を採取する採取部と、採取した前記ウニ類を吸引する吸引部と、吸引した前記ウニ類を排出する排出部と、からなり、前記採取部と前記吸引部と前記排出部における前記ウニ類が通過する通過経路内に、前記ウニ類を砕く粉砕手段を設けることを特徴とする。
【0010】
本発明のウニ類採取処分装置によれば、潜水士が潜って処分するような場合に比べ、ウニ類を効率よく処分することができる。また、採取部より採取されたウニ類は、本装置内から排出される際には粉砕手段により砕かれた状態で排出されるので、排出先を海洋内とすることでそのまま廃棄することができる。なお、このような廃棄は、従来潜水士が海中でウニを潰していくことと同じであるので、不法投棄にも該当しないと思われる。
【0011】
また、本装置は、船の上に載せて使用するだけでなく、浅瀬の岩場に設置して使用することもできる。また、砕かれて死んだウニであれば、ウニを捕食する魚等の餌にもなるため、近年言われている持続可能な開発目標(SDGs)における海の豊かさを守ることにもつながる。また、そのまま海に投棄しない場合でも、後で餌として活用してもよい。
【0012】
なお、本発明のウニ類採取処分装置の吸引部には、高圧水が注入される注入口と、採取部が接続される吸引口と、排出部へとつながるとともに注入された高圧水と採取部で採取されたウニ類とを吐出する吐出口と、からなるエジェクタを用いることができる。エジェクタであれば内部構造が単純であり、壊れにくいことから本装置に適している。
【0013】
また、本発明はウニ類採取処分装置と記しているが、この「ウニ類」は純粋に「ウニ類」にのみに限定することを意図したものではなく、磯焼けの対策としてヒトデやサザエ等の他の植食動物も採取処分の対象とするのであれば、それらもこの「ウニ類」に含まれることは当然である。
【0014】
また、本発明のウニ類採取処分装置は、前記採取部は、採取用チューブからなり、前記排出部は、排出用チューブからなり、前記吸引部は、高圧水が注入される注入口と、前記採取用チューブが接続される吸引口と、前記排出用チューブが接続され、前記高圧水と前記ウニ類とを吐出する吐出口と、からなるエジェクタであり、前記粉砕手段は、前記吐出口に接続された前記排出用チューブとの接続箇所に設けられた切断刃からなることが好ましい。
【0015】
これにより、エジェクタを用いるため装置の構成が簡単な構造となる。また、エジェクタの駆動流体である高圧水を利用して、ウニ類を吐出する際に切断刃にウニ類を勢いよくぶつけることができ、確実に粉砕することができる。なお、エジェクタへの採取用チューブと排出用チューブの接続は、直接でも間接でもよい。たとえば、エジェクタと採取用チューブの取り付け孔位置や内径が異なる場合は、継手を介して取り付けられる。
【0016】
また、本発明のウニ類採取処分装置は、前記採取部は、採取用チューブからなり、前記排出部は、排出用チューブからなり、前記吸引部は、高圧水が注入される注入口と、前記採取用チューブが接続される吸引口と、前記排出用チューブが接続され、前記高圧水と前記ウニ類とを吐出する吐出口と、からなるエジェクタであり、前記粉砕手段は、前記吐出口と前記排出用チューブとの間に設けられ、本体ケースと、前記本体ケース内に固定された切断刃と、からなることが好ましい。
【0017】
これにより、このような粉砕手段を用いてもウニ類を粉砕して排出することができる。また、切断刃の欠けが生じたりすれば、本体ケースの交換を行うことで簡単に対応できる。
【0018】
また、本発明のウニ類採取処分装置は、前記採取用チューブの先端には、操作用把手が設けられていることが好ましい。これにより、潜水士が海中に潜って採取用チューブを操作するような場合に、操作用把手があることで操作しやすくなり、石等のウニ類以外の物の吸引を防ぐことができる。
【0019】
また、本発明のウニ類採取処分装置は、前記採取用チューブの採取口の先端には、鉤爪が取り付けられていることが好ましい。これにより、岩の裏側にいるようなウニ類を鉤爪で取り出すことができる。なお、この鉤爪は着脱可能でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1のウニ類採取処分装置の使用状態の一例を示す図である。
【
図2】Aは本発明の第1実施形態のウニ類採取処分装置の要部の構成を示す平面図であり、Bは主要部品の断面図であり、Cは切断刃を示す
図1BのIIC-IIC断面図である。
【
図3】Aは本発明の実施形態2のウニ類採取処分装置の主要部品の構成を示す断面図であり、Bは切断刃を示す
図3AのIIIB-IIIB断面図であり、Cは
図3Aの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0022】
[実施形態1]
図1、
図2を用いて本発明の実施形態1のウニ類採取処分装置100の要部の構成を説明する。
図1は実施形態1のウニ類採取処分装置100の使用例を示す図であり、
図2Aはウニ類採取処分装置100の全体の構成を示す図であり、
図2Bは主要な部品の構成を示す断面図であり、
図2Cは切断刃を示す
図2Bの側面断面図である。
【0023】
本実施形態のウニ類採取処分装置100は、
図1に示すように船Sに搭載されて使用されるものであり、海上でウニ類を海水と共に吸引し、粉砕して海中に排出する採取処分装置である。
【0024】
なお、ウニ類採取処分装置100の採取対象は、ウニ類( ムラサキウニ、アカウニ、バフンウニ、コシダカウニ、ガンガセ等ウニの仲間)が主ではあるが、実際にはサザエ等も海藻を食べることから、これらを採取の対象としても構わない。したがって、ウニ類採取処分装置100の採取対象における「ウニ類」には、ヒトデやサザエ等の他の植食動物が含まれることは当然である。
【0025】
実施形態1のウニ類採取処分装置100は、
図1、
図2に示すように、ウニ類を吸引して採取する採取部1と、採取の吸引力を得るための吸引部2と、採取されたウニ類を粉砕するためにウニ類が通過する通過経路内に設けられ粉砕手段3と、粉砕されたウニ類を海水と共に排出する排出部4と、採取部1と吸引部2を連結する採取用継手5と、粉砕手段3を挟んで吸引部2と排出部4を連結する排出用継手6と、各部を螺着する第1~第5ねじS1~S5と、からなる。
採取部1は、
図1、
図2に示すように、採取用チューブ11と、採取用連結金具12と、吸引調整具13と、把手14と、鉤爪15と、からなる。
【0026】
採取用チューブ11は、補強の繊維入りの透明で柔軟な樹脂材の第1チューブ111と、硬い塩ビパイプである第2チューブ112からなる。採取用連結金具12は、第1チューブ111の一端に固着され、第1ねじS1によって採取用継手5に螺着される。また、第1チューブ111の他端には第2チューブ112の一端が固着され、この第2チューブ112の他端側に吸引調整具13と、把手14と、鉤爪15が順次取り付けられる。
【0027】
この吸引調整具13は、採取部1からの吸引をON/OFFさせたり、吸引力を調整したりするためのものである。本実施形態では、具体的には、ボールバルブを用いており、通路の孔を有した球を内部に有し、その球を回転させて、通路の向きを変えることで、採取部1からの吸引をON/OFFさせたり、吸引力を調整したりする。また、把手14は、潜水士(図示せず)が採取用チューブ11を握って操作をするための器具である。また、鉤爪15は、第2チューブ112の先端に着脱可能に取り付けられ、岩の隙間などに入り込んだウニなどを採取するための器具である。なお、この吸引調整具13や把手14、鉤爪15については、必ず備えておく必要はないが、海中での作業性や、後述する吸引部2による吸引力が非常に強力であることから備えておくと非常に便利なものである。したがって、吸引調整具13、把手14、鉤爪15は、必要となった場合に使用できるよう、取り外し可能な構成であってもよい。
【0028】
粉砕手段3は、採取したウニ類を砕いて殺すために用いるものである。本実施形態においては
図2Bに示すように、切断刃31とフランジ32とからなり、切断刃31がフランジ32内面に溶着された構成となっている。そして、切断刃31は、
図2Cに示すように、U字状に曲げられた平行な2枚刃になっている。なお、切断刃31が1枚刃であると、ウニが刃に当たっても、モーメントでウニを逃がしてしまうおそれもあるが、2枚刃としておくことで、このようなことを防ぐことができる。
【0029】
排出部4は、
図1、
図2に示すように、排出用チューブ41と、排出用連結金具42と、からなる。排出用チューブ41の一端には排出用連結金具42が固着され、他端は海中に浸けられる。
【0030】
吸引部2は、
図1、
図2に示すように、ポンプ21(P)と、エジェクタ22と、ポンプ吸水用チューブ23と、ポンプ吐水用チューブ24と、ポンプ用連結金具オス25と、ポンプ用連結金具メス26と、からなる。
【0031】
本実施形態で用いるポンプ21は、エンジンで駆動する可搬式のポンプを用いており、その吸水側にはポンプ吸水用チューブ23の一端が取り付けられ、吐水側にはポンプ吐水用チューブ24の一端が取り付けられる。そして、ポンプ吸水用チューブ23の他端は海水に浸けられ、ポンプ吐水用チューブ24の他端にはポンプ用連結金具オス25が固着される。なお、
【0032】
エジェクタ22は、流体の通路を絞ることで流速を早め、その負圧で吸引する装置である。
図2Bのエジェクタ22の断面図に示すように、エジェクタ22には、ポンプ21で吸い上げられた海水が入る注入口221と、負圧でウニ類を吸引する吸引口222と、粉砕されたウニ類を吐出する吐出口223と、ポンプ用連結金具メス26と、を有する。
【0033】
注入口221には、
図2に示すように、ポンプ用連結金具メス26が第2ねじS2によって螺着されており、ポンプ用連結金具メス26に吸引部2のポンプ用連結金具オス25が接合されている。このポンプ用連結金具オス25とポンプ用連結金具メス26の接続は着脱可能となっている。なお、注入口221には異物の吸入を防止するためのフィルター(図示せず)が設けられている。
【0034】
吸引口222には、採取部1の採取用継手5が第3ねじS3によって螺着される。吐出口223には、粉砕手段3を挟んで排出用継手6が第4ねじS4で螺着され、排出用継手6には、排出部4の排出用連結金具42が第5ねじS5で螺着される。
【0035】
なお、本実施形態の吸引部2に用いたエジェクタ22は、先にも記したように、駆動流体の通路を絞ることで流速を早め、その負圧で吸引するものである。したがって、駆動流体となる海水を注入口221へできるだけ高圧で注入することで吸引力が高まる。そのため、このポンプ21はできるだけ強力なものを用いた方がよく、本発明の検討段階では、放水圧力が0.85MPaとなる消防用のポンプを用いた。そして、このようなポンプを用いたところ、ウニ類を吸引するのに十分な吸引力を得ることができた。他方で、吸引力が非常に強力となることから、吸引調整具13や把手14が備わっていると、非常に扱い易い。
【0036】
このような構成からなるウニ類採取処分装置100は、
図1に示すように、船Sに搭載され、ポンプ吸水用チューブ23の先端側と、採取用チューブ11の先端側(第1チューブ111の先端側と第2チューブ112)と、排出用チューブ41の先端側が海水に浸けられる。
【0037】
そして、ポンプ21のエンジンが駆動されると、ポンプ吸水用チューブ23から海水がエジェクタ22内に吸引され、エジェクタ22の狭い通路で高速になった海水の負圧によって、採取用チューブ11内の海水が吸引される。そこで、潜水士が把手14を握って、ウニ類を海水と共に吸引する。
【0038】
そして、ウニ類採取処分装置100内に吸引されたウニ類は、採取部1と吸引部2(のエジェクタ22)と排出部4からなるウニ類通過経路内に設けられた粉砕手段3によって粉砕され、ウニ類採取処分装置100外の海中へと排出される。
【0039】
このようにして、ウニ類をポンプ21で吸引し、その吸引力で粉砕するので、本実施形態のウニ類採取処分装置100は、非常に効率よくウニ類を処分することができる。また、粉砕したウニ類はそのまま海中に排出するので、陸に上げられたウニ類を廃棄する場合に必要となるような廃棄費用もかからない。また、砕かれたウニであれば、ウニを捕食する魚等の餌にもなるため、近年言われている持続可能な開発目標における海の豊かさを守ることにもつながる。
【0040】
なお、実施形態1では、海に潜った潜水士がウニ類の吸引作業をしたが、潜水士の作業をロボットが行ってもよい。また、海に潜ることなく、船上から箱メガネで海中を覗きながらウニを吸引してもよい。また、本実施形態のウニ類採取処分装置100は、船の上に載せて使用するだけでなく、浅瀬の岩場に設置して使用することもできる。
【0041】
[実施形態2]
図3を用いて実施形態2のウニ類採取処分装置100Aを説明する。
図3Aは本実施形態のウニ類採取処分装置100Aの主要な部品の構成を示す断面図であり、
図3Bは
図3AのIIIB-IIIB断面図であり、
図3Cは
図3Aの斜視図である。そして、実施形態2のウニ類採取処分装置100Aにおいては、実施形態1のウニ類採取処分装置100と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「A」を付す。
本実施形態のウニ類採取処分装置100Aは、実施形態1のウニ類採取処分装置100と粉砕手段3Aの具体的な構成が異なっている。
【0042】
図3に示すように、ウニ類採取処分装置100Aの粉砕手段3Aは、排出用継手6と排出用連結金具42との間に設けられている。そして、この粉砕手段3Aは、複数の切断刃31と、本体ケース33と、2つの粉砕用連結金具34と、からなる。
【0043】
本体ケース33は、横長の直方体のケースであり、上下の内面にそれぞれ2つずつの切断刃31が合計4つ固着されている。そして、本体ケース33の左右は、それぞれ粉砕用連結金具34が固着され、それぞれの粉砕用連結金具34は、排出用継手6側が第6ねじS6で螺着され、排出用連結金具42側が第7ねじS7で螺着された構成となっている。
【0044】
このように粉砕手段は、本実施形態の粉砕手段30Aのように、実施形態1とは異なる構成を採用することもできる。また、切断刃31の数を本実施形態のように複数用いることもできる。ただし、実際に試作した実施形態1の粉砕手段30と、本実施形態の粉砕手段30Aを比較してみたところ、複数の切断刃31を用いた本実施形態の粉砕手段30Aにおいては、本体ケース33内に、粉砕されたウニ類の殻が溜まってしまったり、切断刃31によって吐出口223からの吐出力が弱まってしまいウニ類の排出がうまくできなかったりすることがあった。したがって、本実施形態のような粉砕手段30Aを採用する場合にも、切断刃31は複数用いるよりは1つだけの方がよく、また切断刃31の固着位置も排出用継手6にできるだけ近い位置がよい。
【0045】
このように、本発明のウニ類採取処分装置100(100A)は、ウニ類を採取する採取部1と、採取したウニ類を吸引する吸引部2と、吸引したウニ類を排出する排出部4と、からなり、この採取部1と吸引部2と排出部4におけるウニ類が通過する通過経路内に、ウニ類を砕く粉砕手段3(3A)を設けた構成となっている。したがって、ウニ類採取処分装置100を用いることで、非常に効率よくウニ類を処分することができる。また、粉砕したウニ類はそのまま海中に排出するので、陸に上げられたウニ類を廃棄する場合に必要となるような廃棄費用もかからない。また、砕かれたウニであれば、ウニを捕食する魚等の餌にもなるため、近年言われている持続可能な開発目標における海の豊かさを守ることにもつながる。
そして、実施形態1や実施形態2のウニ類粉砕処分装置100を実際に試作し、試験したところ、排出されたウニは全て完全に粉砕されていた。
【0046】
なお、実施形態においては、ウニ類が通過する通過経路内に設けられた粉砕手段3(3A)は、何れもエジェクタ22の吐出口223と排出用チューブ41との間に位置して設けられていたがこのような構成に限定するわけではなく、例えば、エジェクタ22内部に設けてもよい。また、採取したウニ類を粉砕するのに十分な吸引力があれば、例えば、粉砕手段はエジェクタ22の吸引口222の近傍に設けてもよい。
【0047】
また、実施形態においては、ポンプ21とエジェクタ22を用いていたが、このような構成に限定するわけではなく、例えば、特許文献1に記載されているようなエアリフトポンプのような構成を採用することもでき、また、エジェクタ22の駆動源としてポンプ21からの海水を用いたが、駆動源を気体としても構わない。
【0048】
また、実施形態においては、粉砕手段として切断刃31を用いていたが、ウニ類が粉砕できれば必ずしも刃物である必要はなく、例えば、棒状のものでも構わない。本実施形態においては、非常に吐出力が強かったので、三角柱のような棒状のものでもウニ類を粉砕することが可能であった。
【0049】
また、粉砕手段については、実施形態のようなものに限らず、摩擦や圧縮の力によって対象物を粉砕する粉砕機と一般的に呼ばれるような粉砕専用の装置を使用してもよい。
【0050】
また、実施形態において粉砕手段として用いた切断刃31については、切断刃31の切れ味が悪くなったときは、実施形態1、実施形態2いずれも粉砕手段3、3Aを交換すればよい。
【0051】
また、実施形態1、実施形態2では、採取用チューブ11は採取用継手5を介して吸引部2のエジェクタ22に間接的に接続されたが、採取用継手5を削除して吸引部2のエジェクタ22に直接接続されてもよい。同様に、実施形態1の排出用チューブ41は排出用継手6を介して吸引部2のエジェクタ22に間接的に接続されたが、排出用継手6を削除して吸引部2のエジェクタ22に直接接続されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
100、100A:ウニ類採取処分装置
1:採取部
11:採取用チューブ
12:採取用連結金具
13:吸引調整具
14:把手
15:鉤爪
2:吸引部
21:ポンプ
22:エジェクタ
221:注入口
222:吸引口
223:吐出口
3、3A:粉砕手段
31:切断刃
33:本体ケース
4:排出部
41:排出用チューブ
42:排出用連結金具
5:採取用継手
6:排出用継手