(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154319
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】注入機、地山補強工法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063576
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】591140813
【氏名又は名称】株式会社カテックス
(71)【出願人】
【識別番号】515217454
【氏名又は名称】ジオマシンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】浅井 勉
(72)【発明者】
【氏名】塚田 純一
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054FA02
2D054FA07
2D054GA10
2D054GA17
2D054GA25
2D054GA73
2D054GA81
2D054GA92
(57)【要約】
【課題】行地山補強工に際し、注入作業の省力化を図りつつ注入作業を簡便かつ確実に行うことができる注入機、地山補強工法及びプログラムを提供する。
【解決手段】本注入機1は、第1地山改良材(止水用地山改良材A)を圧送する第1注入ユニット2Aと、第1地山改良材と異なる第2地山改良材(汎用地山改良材B)を圧送する第2注入ユニット2Bと、第1注入ユニット及び第2注入ユニットが接続され、各注入ユニットの注入情報を一括して表示する管理画面6を有するとともに、各注入ユニットを各地山改良材の注入条件によって注入制御する制御ユニット3と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管の内空を通じて前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法に用いられる注入機において、
第1地山改良材を圧送する第1注入ユニットと、
前記第1地山改良材と異なる第2地山改良材を圧送する第2注入ユニットと、
前記第1注入ユニット及び前記第2注入ユニットが接続され、前記各注入ユニットの注入情報を一括して表示する管理画面を有するとともに、前記各注入ユニットを前記各地山改良材の注入条件によって注入制御する制御ユニットと、を備えることを特徴とする注入機。
【請求項2】
前記制御ユニットは、
前記長尺鋼管から流出する湧水を撮影した画像データ又は前記画像データから得られる湧水データを取得する取得部と、
前記取得された前記画像データ又は前記湧水データから湧水量を算出する処理部と、
前記算出された湧水量によって前記長尺鋼管に対して前記各地山改良材の何れを注入するかを選定する選定部と、
複数の前記長尺鋼管に対して前記各地山改良材の何れを注入するかを識別可能に前記管理画面に表示する表示部と、
前記各注入ユニットを前記各地山改良材の注入条件によって注入制御する制御部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の注入機。
【請求項3】
前記表示部は、複数の前記長尺鋼管と対応する複数の注入孔の配置図を、複数の前記注入孔が色及び/または模様によって前記各地山改良材の何れを注入するかを識別可能に前記管理画面に表示することを特徴とする請求項2に記載の注入機。
【請求項4】
トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設する工程と、
前記長尺鋼管から流出する湧水を撮影した画像データ又は前記画像データから得られる湧水データを取得する工程と、
前記取得された前記画像データ又は前記湧水データから湧水量を算出する工程と、
前記算出された湧水量によって前記長尺鋼管に対して第1地山改良材及び前記第1地山改良材と異なる第2地山改良材の何れを注入するかを選定する工程と、
複数の前記長尺鋼管に対して前記各地山改良材の何れを注入するかを識別可能に管理画面に表示する工程と、
前記第1地山改良材を圧送する第1注入ユニット及び前記第2地山改良材を圧送する第2注入ユニットを前記各地山改良材の注入条件によって注入制御する工程と、を備えることを特徴とする地山補強工法。
【請求項5】
注入機を制御するコンピュータに、
トンネルの未掘削地山に打設した長尺鋼管から流出する湧水を撮影した画像データ又は前記画像データから得られる湧水データを取得する処理と、
前記取得された前記画像データ又は前記湧水データから湧水量を算出する処理と、
前記算出された湧水量によって前記長尺鋼管に対して第1地山改良材及び前記第1地山改良材と異なる第2地山改良材の何れを注入するかを選定する処理と、
複数の前記長尺鋼管に対して前記各地山改良材の何れを注入するかを識別可能に管理画面に表示する処理と、
前記第1地山改良材を圧送する第1注入ユニット及び前記第2地山改良材を圧送する第2注入ユニットを前記各地山改良材の注入条件によって注入制御する処理と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削時の先行地山補強工に用いられる注入機、地山補強工法及びプログラム関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削に際し、トンネルの周囲の前方地山に長尺鋼管を打設し、この長尺鋼管内から地山改良材を注入して地山を改良する、いわゆる長尺鋼管フォアパイリングが知られている。例えば特許文献1に示す工法では、例えば、3m程度の複数本の鋼管を接続することで10~20m程度の長尺鋼管をトンネルの外周に複数打設し、長尺鋼管の打設後に各長尺鋼管内に地山改良材を注入する。長尺鋼管内に注入された地山改良材は、長尺鋼管の外周に設けられた複数の吐出孔を通じて長尺鋼管周辺の地山の空隙や亀裂に浸透して固結することで、地山を補強する。この地山改良材としては改良効果や施工性の面からウレタン系地山改良材が広く用いられている。
【0003】
ウレタン系地山改良材においては、湧水の量によって止水効果の高い地山改良材と汎用的に使用される地山改良材とが使い分けられている。従来は鋼管を打設した後にバケツなどによって各鋼管から流出する湧水量を測定し、例えば鋼管から流出する湧水量が20L/分以上の場合は止水性の高い地山改良材を注入し、20L/分未満の場合には汎用的な地山改良材を注入していた。そのため各地山改良材のための2台の注入機(即ち2組の独立した注入ユニット)を準備する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、2台の注入機の各注入ユニットにはそれぞれの管理画面や制御ユニットが接続されており、このような方法では各注入機を操作する作業員が多く必要となるため注入作業が煩雑となり、また、打設した各鋼管から流出する湧水量を測定するための複数の作業員も必要であった。さらに、打設した各鋼管から流出する湧水量を測定した後に各鋼管を介して注入する地山改良材を選定し、各注入機に振り分ける作業も人力で行っていた。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、先行地山補強工に際し、注入作業の省力化を図りつつ注入作業を簡便かつ確実に行うことができる注入機、地山補強工法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設し、前記長尺鋼管の内空を通じて前記長尺鋼管の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山の亀裂に浸透させ地山を補強する工法に用いられる注入機において、
第1地山改良材を圧送する第1注入ユニットと、
前記第1地山改良材と異なる第2地山改良材を圧送する第2注入ユニットと、
前記第1注入ユニット及び前記第2注入ユニットが接続され、前記各注入ユニットの注入情報を一括して表示する管理画面を有するとともに、前記各注入ユニットを前記各地山改良材の注入条件によって注入制御する制御ユニットと、を備えることを特徴とする注入機。
2.前記制御ユニットは、
前記長尺鋼管から流出する湧水を撮影した画像データ又は前記画像データから得られる湧水データを取得する取得部と、
前記取得された前記画像データ又は前記湧水データから湧水量を算出する処理部と、
前記算出された湧水量によって前記長尺鋼管に対して前記各地山改良材の何れを注入するかを選定する選定部と、
複数の前記長尺鋼管に対して前記各地山改良材の何れを注入するかを識別可能に前記管理画面に表示する表示部と、
前記各注入ユニットを前記各地山改良材の注入条件によって注入制御する制御部と、を有することを特徴とする上記1.に記載の注入機。
3.前記表示部は、複数の前記長尺鋼管と対応する複数の注入孔の配置図を、複数の前記注入孔が色及び/または模様によって前記各地山改良材の何れを注入するかを識別可能に前記管理画面に表示することを特徴とする上記2.に記載の注入機。
4.トンネルの未掘削地山に複数の長尺鋼管を打設する工程と、
前記長尺鋼管から流出する湧水を撮影した画像データ又は前記画像データから得られる湧水データを取得する工程と、
前記取得された前記画像データ又は前記湧水データから湧水量を算出する工程と、
前記算出された湧水量によって前記長尺鋼管に対して第1地山改良材及び前記第1地山改良材と異なる第2地山改良材の何れを注入するかを選定する工程と、
複数の前記長尺鋼管に対して前記各地山改良材の何れを注入するかを識別可能に管理画面に表示する工程と、
前記第1地山改良材を圧送する第1注入ユニット及び前記第2地山改良材を圧送する第2注入ユニットを前記各地山改良材の注入条件によって注入制御する工程と、を備えることを特徴とする地山補強工法。
5.注入機を制御するコンピュータに、
トンネルの未掘削地山に打設した長尺鋼管から流出する湧水を撮影した画像データ又は前記画像データから得られる湧水データを取得する処理と、
前記取得された前記画像データ又は前記湧水データから湧水量を算出する処理と、
前記算出された湧水量によって前記長尺鋼管に対して第1地山改良材及び前記第1地山改良材と異なる第2地山改良材の何れを注入するかを選定する処理と、
複数の前記長尺鋼管に対して前記各地山改良材の何れを注入するかを識別可能に管理画面に表示する処理と、
前記第1地山改良材を圧送する第1注入ユニット及び前記第2地山改良材を圧送する第2注入ユニットを前記各地山改良材の注入条件によって注入制御する処理と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、先行地山補強工に際し、注入作業の省力化を図りつつ注入作業を簡便かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部材を示す。
【
図3】実施形態に係る地山補強工法のフローチャート図である。
【
図4】上記地山補強工法(鋼管打設)を説明するための説明図である。
【
図5】上記地山補強工法(湧水撮影)を説明するための説明図である。
【
図6】上記地山補強工法(湧水撮影)を説明するための説明図であり、(a)は画像データを示し、(b)は湧水データを示す。
【
図7】上記地山補強工法(湧水量算出)を説明するための説明図である。
【
図8】上記地山補強工法(注入孔表示)を説明するための説明図である。
【
図9】他の形態に係る制御ユニットを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。なお、本実施形態の注入機1は、
図5に示すように、トンネル20の未掘削地山22に複数の長尺鋼管23を打設し、長尺鋼管23の内空を通じて長尺鋼管23の外周に設けられた吐出孔から地山改良材を周辺地山22の亀裂に浸透させ地山を補強する工法に用いられる。
【0012】
本注入機1は、
図1に示すように、止水性の高い地山改良材A(本発明に係る「第1地山改良材」として例示する。)を圧送する注入ユニット2A(本発明に係る「第1注入ユニット」として例示する。)と、汎用的(即ち地山改良材Aよりも止水性の低い)な地山改良材B(本発明に係る「第2地山改良材」として例示する。)を圧送する注入ユニット2B(本発明に係る「第2注入ユニット」として例示する。)と、各注入ユニット2A、2Bが電気的に接続された制御ユニット3と、から構成されている。
【0013】
なお、各地山改良材A、Bは、シリカレジン等のウレタン系発泡樹脂が用いられ、2種類の液を混合して発泡される。また、各注入ユニット2A、2Bは、注入ポンプ4を有するポンプユニットである。注入ポンプ4は、長尺鋼管23の長手方向に沿って設定された複数領域(例えば3つの領域)ごとに2種類の液を圧送して混合するように一対で複数組(例えば3組)設けられている。
【0014】
制御ユニット3は、注入ユニット2A、2Bのそれぞれを地山改良材A、Bの注入条件(例えば注入量や注入圧力等)によって独立して注入制御する。この制御ユニット3は、各注入ユニット2A、2Bの注入情報(例えば注入中の注入量や注入圧力等)を一括して表示する管理画面6を備えている。なお、注入中の注入量は、例えば制御盤7A、7Bで設定した注入量(注入速度)から得ることができる。また、注入中の注入圧力は、例えばポンプ又は注入チューブ(注入資材)に設けた圧力センサにより得ることができる。
【0015】
制御ユニット3は、各注入ユニット2A、2Bの起動・停止や流量調整等を行う制御盤(操作盤)7A、7Bを備えている。この制御盤7A、7Bは、注入ユニット2A、2Bをそれぞれ独立して運転できるよう2組備えられている。さらに、制御ユニット3は、タッチパネル式などの入力部8を備えている。この入力部8は、鋼管23と対応する注入孔25の番号、鋼管23の打設角度、湧水データ(具体的に鋼管23上端から水面までの距離L等)などを入力する画面となっており、それぞれ該当する数値を入力可能である。なお、鋼管23の打設角度は鋼管打設に先立って設定した数値を入力するが、鋼管打設時に変更があった場合には鋼管打設後に測定した数値を入力する。
【0016】
制御ユニット3は、
図2に示すように、取得部11、処理部12、選定部13、表示部14及び制御部15を有する制御装置10を備えている。この制御装置10による制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、記憶装置(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより制御装置10を構成できる。
【0017】
取得部11は、入力部8に入力された注入孔25の番号、鋼管23の打設角度及び鋼管23上端から水面までの距離L(湧水データ)を取得する(
図3のステップS6参照)。
【0018】
処理部12は、鋼管23上端から水面までの距離Lから湧水量を算出する(
図3のステップS7参照)。この処理部12では、注入孔25ごとに入力された鋼管23の打設角度と鋼管上端から水面までの距離Lによって、単位時間当たりの湧水量を算出する。具体的には下記のマニングの公式により平均流速Vを求め、平均流速Vと流積Aの積によって単位時間当たりの湧水量が算出される。より具体的に、
図7に示すように、鋼管23上端から湧水Wの水面までの距離Lを測定することにより、水面高さhが算出され、これにより面積S2、S3が導かれることで面積S1(流積A)と径深Rが導かれ、下記のマニングの公式より平均流速Vが算出される。さらに平均流速Vと面積S1(流積A)を乗じることで単位時間当たりの流量が算出される。
【0019】
【0020】
選定部13は、算出された湧水量によって注入孔25(即ち長尺鋼管23)に対して各地山改良材A、Bの何れを注入するかを選定する(
図3のステップS8~S10参照)。この選定部13は、算出された湧水量が予め設定した閾値(例えば、20L/分)以上である場合に地山改良材Aを注入することを選定し、算出された湧水量が閾値未満である場合に地山改良材Bを注入することを選定する。なお、閾値は、例えば20~30L/分から選ばれる値であることができる。
【0021】
表示部14は、
図8に示すように、複数の注入孔25(即ち長尺鋼管23)に対して各地山改良材A、Bの何れを注入するかを識別可能に管理画面6に表示する(
図3のステップS11参照)。具体的に、表示部14は、複数の長尺鋼管23と対応する複数の注入孔25の番号と各地山改良材A、Bとの相関表29を表示する。さらに、表示部14は、複数の注入孔25の配置
図30を、複数の注入孔25が色及び/または模様によって各地山改良材A、Bの何れを注入するかを識別可能に管理画面6に表示する。この配置
図30は、トンネル20の断面を模した半円形の外周部に打設した鋼管23を注入孔25として表示する。さらに、表示部14は、各注入孔25に対する地山改良材A、Bの種類と設定注入量などを表示する。
【0022】
なお、注入孔25の色による識別は、両者を識別し得る限り、どのような色を採用してもよい。また、注入孔25の模様による識別としては、例えば注入孔25の形状や大きさなどの相違を採用したり、異なる図柄化、文字化、記号化などを採用したりできる。
【0023】
制御部15は、注入ユニット2A、2Bのそれぞれを各地山改良材A、Bの注入条件(例えば注入量や注入圧力等)によって独立して注入制御する(
図3のステップS12参照)。この制御部15は、制御盤7A、7Bで設定された注入量などに基づいて各注入ユニット2A、2Bを注入制御する。
【0024】
次に、上記構成の注入機1を用いた地山補強工法について説明する。
先ず、
図4に示すように、トンネル20の外周前方の未掘削地山22に複数の長尺鋼管23を打設する(
図3のステップS1)。次に、
図5に示すように、鋼管23末端部の断面を、距離が測定できる既存のアプリケーションを備えたスマートフォンやタブレットなどの携帯端末27の内蔵カメラによって撮影する(ステップS2)。このとき鋼管23断面の上端と湧水Wの水面が撮影された画像データ17を取得し(ステップS3)、画像データ17から鋼管23上端から水面までの距離L(湧水データ)を測定する(ステップS4)。
【0025】
なお、携帯端末27による鋼管23の湧水Wの撮影は、複数の鋼管23に対して順に行われてもよいし、複数の鋼管23に対して同時に行われてもよい。さらに、湧水Wが極端に少ない(あるいは湧水Wがない)鋼管23や湧水Wが極端に多い鋼管23に対しては撮影を行わず、その鋼管23に対する各地山改良材A、Bの種類を入力部8に入力してもよい。
【0026】
次いで、鋼管23と対応する注入孔25の番号、鋼管23の打設角度及び距離Lを入力部8に入力する(ステップS5)。この入力により、取得部11では、注入孔25の番号、鋼管23の打設角度及び距離Lを取得する(ステップS6)。その後、処理部12では、注入孔25ごとに入力された鋼管23の打設角度と距離Lによって、単位時間当たりの湧水量を算出する(ステップS7)。
【0027】
次に、選定部13では、算出された湧水量が閾値以上であるかを判定し(ステップS8)、湧水量が閾値以上である場合は地山改良材Aの注入を選定し(ステップS9)、湧水量が閾値未満である場合は地山改良材Bの注入を選定する(ステップS10)。次いで、表示部14では、選定部13で選定された地山改良材A、Bを各注入孔25にそれぞれ異なる色や模様により表示する(ステップS11)。
【0028】
その後、地山改良材Aが選定された注入孔25と対応する長尺鋼管23には注入ユニット2A、地山改良材Bが選定された注入孔25と対応する長尺鋼管23には注入ユニット2Bの注入資材を接続し、各地山改良材A、Bを注入する(ステップS12)。この場合、制御ユニット3には注入ユニット2A、注入ユニット2Bの双方の注入を別個に制御する制御部15と制御盤7A、7Bが設置されており、地山改良材Aと地山改良材Bの双方の注入量や注入圧力を表示する管理画面6が設置されているため、1台の制御ユニット3で2種類の地山改良材A、Bの注入が可能となる。
【0029】
以上より、本実施形態の注入機1によれば、2種類の異なる地山改良材A、Bを注入する注入ユニット2A、2Bを接続して1つの管理画面6で一括して注入できる制御ユニット3を備える。これにより、従来のように2台の注入機(即ち2組の独立した注入ユニット)により2種類の地山改良材A、Bを注入していた作業を1台の注入機1(即ち単一の制御ユニット3が接続された2組の注入ユニット2A、2B)で行うことができるため、少ない作業人員で注入作業を行うことが可能となる。
【0030】
また、本実施形態では、制御ユニット3は、打設した複数の長尺鋼管23から流出する湧水Wを撮影した画像データ17から得られる湧水データLを取得する取得部11と、取得された湧水データLから湧水量を算出する処理部12と、算出された湧水量にしたがって2種類の異なる地山改良材A、Bの何れを注入するかを選定する選定部13と、管理画面6に表示された各注入孔25に選定された2種類の異なる地山改良材A、Bをそれぞれ識別可能に表示する表示部14と、選定された各地山改良材A、Bの注入条件によって注入を制御する制御部15と、を備える。これにより、打設した長尺鋼管23から流出する湧水Wの流量をバケツなどを用いて人力で測定する作業が不要となり、湧水量を測定した後に注入する地山改良材A、Bを選定し、各注入ユニット2A、2Bに手動で振り分ける作業も不要となる。そのため、先行地山補強工に際し、注入作業の省力化と湧水地山における地山改良材A、Bの選定と注入作業を簡便かつ確実に行うことができ、作業効率の向上と作業時間の短縮が可能となる。
【0031】
さらに、本実施形態では、注入孔25ごとに選定された地山改良材A、Bは管理画面6に表示されたトンネル20の断面を模した半円部に沿った各注入孔25に識別可能に色及び/または模様によって表示される。これにより、各長尺鋼管23に対して注入する地山改良材A、Bの種類を直感的に識別することができる。
【0032】
尚、本発明においては、実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更することができる。すなわち、上記実施形態では、トンネル20の断面を模した半円部に沿った各注入孔25に各地山改良材A、Bの種類を識別可能に表示する配置
図30を例示したが、これに限定されず、例えば
図9に示すように、一方向(具体的に横方向)に並んで配置される各注入孔25に各地山改良材A、Bの種類を識別可能に表示する配置
図30としてもよい。この配置
図30では、長尺鋼管23を模した長尺状の注入孔25を表示してもよいし、長尺鋼管23と異なる形状の注入孔25を表示してもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、入力部8への入力により湧水データLを取得する制御ユニット3を例示したが、これに限定されず、例えば、入力部8を介さずに、携帯端末27から無線又は有線で送信される湧水データLや画像データ17を取得する制御ユニット3としてもよい。この場合、取得するデータL、27は、注入孔25(長尺鋼管23)を示す情報を含むことができる。さらに、制御ユニット3が画像データ17を取得する場合、制御ユニット3が画像データ17から湧水データLを作成(測定)することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、湧水データとして鋼管23上端から水面までの距離Lを例示したが、これに限定されず、マニングの公式などにより湧水量を算出できるものであれば特に限定されず、湧水の水面高さhであってもよく、鋼管23上端から水面までの距離Lと湧水の水面高さhとの比であってもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態において、制御装置10に各処理を実行させるプログラムは、制御装置10に予め記憶(インストール)される形態であってもよいし、CD-ROMやUSBメモリ等の記憶媒体に記憶されて提供される形態であってもよいし、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態であってもよい。
【0036】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明はトンネル掘削時の先行地山補強工の地山改良材の注入に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0038】
1;注入機、2A,2B;注入ユニット、3;制御ユニット、6;管理画面、11;取得部、12;処理部、13;選定部、14;表示部、15;制御部、17;画像データ、22;地山、23;長尺鋼管、25;注入孔、30;配置図、A;止水用地山改良材,B;汎用地山改良材、L;鋼管上端から水面までの距離(湧水データ)。