(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154321
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】鋼管と継手の接続機構
(51)【国際特許分類】
F16L 37/107 20060101AFI20231012BHJP
F16L 37/248 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
F16L37/107
F16L37/248
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063578
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】391057627
【氏名又は名称】オーエヌ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】大賀 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山島 護
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AA01
3J106AB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106EB03
3J106ED43
3J106EE16
3J106EE18
3J106EF13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鋼管を継手にナットで締め付けて接続するナットの緩みが生じ難い接続機構及び接続方法を提供する。
【解決手段】端部2a側に山型突部21を有する鋼管2を継手3とナット4で挟んで接続する接続機構であって、継手は、接続用筒部の外周の先端に円周方向に複数の係合羽根を具備し、ナットは、係合羽根の外周を外嵌する環状外筒部41と、鋼管押圧部43とを有し、環状外筒部の内周には本締リング6と仮締リングを相互に離接近不能で円周方向には回動自在に設けられ、鋼管の端部2a側を接続用筒部に挿入して、パッキン5で山型突部21の端部側傾斜面21aを押圧し、前記鋼管押圧部43で内部側傾斜面21bを押圧し、仮締リングの仮締羽根が円周方向に回転不能に係止され、且つ、本締羽根が係合羽根の鋼管押圧部と反対側に位置して抜け方向への力を阻止しながら継手とナットを連結固定すること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部側に山型突部を有する鋼管を継手とナットで挟んで接続する鋼管と継手の接続機構であって、
前記継手は、内部に流体通路を有する連結筒部の端部の接続用筒部の内周側に前記鋼管の端部側の外周を挿通する中拡径部を有し、更に前記中拡径部より端部側にはこの中拡径部より更に径が大きく端部へ開口した大拡径部であるパッキン収納部を有し、前記連結筒部と前記接続用筒部の境界付近の外周には外方向へ延びる鍔部を有し、前記接続用筒部の外周の先端に円周方向に複数の係合羽根を所定間隔を開けて具備し、前記係合羽根から軸心方向に所定間隔を開けて且つ前記係合羽根の円周方向に開けた係合羽根間隔の幅方向の間に位置するように複数の止台が設けられ、
前記ナットは、前記接続用筒部の係合羽根の外周を外嵌する環状外筒部と、該環状外筒部の一端側において前記鋼管を挿通する管挿通孔を中央に形成すると共に前記鋼管の山型突部の内部側傾斜部を押圧する傾斜押圧面を具備した鋼管押圧部とを有し、前記環状外筒部内周には前記鋼管押圧部に近い方から順に本締リングと仮締リングを軸心方向に所定間隔を開けて相互に離接近不能で円周方向には回動自在に設けられ、前記仮締リングは前記環状外筒部と共に回転可能に配置される一方、前記本締リングは所定角度だけ独自の回動が可能とされており、前記本締リング及び仮締リングの内周側には円周方向の所定長さと中心方向への所定突出高さを有する本締羽根及び仮締羽根が夫々前記係合羽根の円周方向の長さ相当分以上の間隔を開けて設けられており、
前記ナットの鋼管押圧部の管挿通孔に挿通している前記鋼管の端部側を前記接続用筒部に挿入して、前記パッキン収納部に収納したパッキンで前記山型突部の端部側傾斜面を押圧し、且つ、前記傾斜押圧面で内部側傾斜面を押圧し、前記仮締リングの仮締羽根が前記止台に円周方向に回転不能に係止され、且つ、前記本締羽根が前記係合羽根の鋼管押圧部と反対側に位置することによって抜け方向への力を阻止しながら継手とナットを連結固定することを特徴とする鋼管と継手の接続機構。
【請求項2】
前記環状外筒部内周に、本締リングと仮締リングを軸心方向に所定間隔を開けて相互に離接近不能で円周方向には回動自在に設けられる構造が、前記環状外筒部内周に設けた本締リング溝と該本締リング溝と軸心方向に所定間隔を開けて設けた仮締リング溝とにそれぞれの外周囲が回動自在に嵌め込まれた構造であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項3】
前記本締リングと仮締リングは、輪の一部を切り欠いた切欠部の両端部に夫々引掛部又は係止頭部を有する弾力性のある輪であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項4】
前記本締リングが金属材料で前記仮締リングが合成樹脂材料からなることを特徴とする請求項2に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項5】
前記止台と前記係合羽根の間の軸心方向に回転止棒を設けたことを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項6】
前記仮締リングの係止頭部に、本締リング方向に膨らみ部を持たせたことを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項7】
前記本締リングの引掛部の近傍の外周に係止突部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の鋼管と継手の接続機構。
【請求項8】
鋼管と継手とをナットを用いて接続する鋼管と継手の接続方法において、前記継手とナットの間に前記鋼管の端部に形成してある山型突部の2つの傾斜面を両方から挟んで前記継手とナットを対峙させて前記鋼管を保持するように相接近させる方向に移動させてから仮連結する仮締作業工程と、該仮締作業工程の後に更に前記継手とナットを相近接させる方向に締め付けて本連結する本締作業工程と、を有することを特徴とする鋼管と継手の接続方法。
【請求項9】
前記仮連結が、前記ナットに設けてある仮締リングを前記継手に係合して行い、前記本連結が、前記仮連結の解除後に前記ナットに設けてある本締リングを前記継手に係合して行うことを特徴とする請求項8に記載の鋼管と継手の接続方法。
【請求項10】
前記仮締リングが合成樹脂材料からなり、前記本締リングが金属材料からなることを特徴とする請求項9に記載の鋼管と継手に接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物の屋内配管などに主として使用される鋼管と継手の接続機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の鋼管と継手の接続機構の従来技術としては、出願人らが先に提案した特許文献1に示される接続機構がある。この接続機構は、被係合部を端部に設けた継手本体と、該被係合部を内側に挿入して係合する係合環部を端部に有するロックリングホルダーとを、前記被係合部の外周に設けた係合突起を前記ロックリングホルダーの内周に設けた開口切欠部を通じて内周の奥へと押し込み挿入してから該開口切欠部と連通している内周に設けてある係合穴へ回転させて挿入して、ロックリングホルダーと継手とに引き抜き方向の力が作用した場合であっても抜け出ないように確固に接続できる構造の接続機構である。そして、常時はロックリングホルダーは鋼管を抜け方向への移動を阻止すると共に自身はロックリングによって引き抜き方向へ付勢されているので前記被係合部と係合穴内面との摩
擦が大となり円周方向への回転が阻止され緩むことはないようになされている。
【0003】
また、特許文献2の鋼管と継手の接続機構は、端部外周に接合用の雄ねじを形成した継手と、該継手を内側に挿入して係合するための雌ねじを形成したナットとを、前記継手の端部を前記ナットの内側に挿入しつつ前記雄ねじに雌ねじを螺合させるためにナットを回転させて接続するものである。この際に、山型突起の端部側の傾斜面は継手の角部によって押圧され反対側の傾斜面はナットの傾斜角部によって押圧されることで、山型突起を有する鋼管が軸心方向への移動が阻止されて接続が完了する。このナットの傾斜角部は、鋼管の端部を山型に拡管する際に使用した拡管機の部材をそのまま使用することから、山型突起の傾斜面と傾斜角部は傾斜角度や表面形状が完全一致しているので密着が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4352434号公報
【特許文献2】WO2009/050823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来技術によれば、継手本体とロックリングホルダーとの接続時において、雄ねじを形成した被係合部を端部に設けた継手本体と、該被係合部を内側に挿入して係合する雌ねじを形成した係合環部を端部に有するロックリングホルダーとを、ねじ結合して接続しているので、長年の使用による建造物の振動や老化によってねじ結合が緩んで、鋼管内部を通過する流体漏れが発生する虞があるという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2の従来技術においても、継手の端部外周に形成した雄ねじとナットの内周に形成した雌ねじを螺合して接続しているので、前記と同様に、長年の使用による建造物の振動や老化によってねじ結合が緩んで、鋼管内部を通過する流体漏れが発生する虞があるという問題点がある。
【0007】
この発明は上記の問題点を解決すべくなされたものであって、その手段とするところは以下の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
端部側に山型突部を有する鋼管を継手とナットで挟んで接続する鋼管と継手の接続機構であって、
前記継手は、内部に流体通路を有する連結筒部の端部の接続用筒部の内周側に前記鋼管の端部側の外周を挿通する中拡径部を有し、更に前記中拡径部より端部側にはこの中拡径部より更に径が大きく端部へ開口した大拡径部であるパッキン収納部を有し、前記連結筒部と前記接続用筒部の境界付近の外周には外方向へ延びる鍔部を有し、前記接続用筒部の外周の先端に円周方向に複数の係合羽根を所定間隔を開けて具備し、前記係合羽根から軸心方向に所定間隔を開けて且つ前記係合羽根の円周方向に開けた係合羽根間隔の幅方向の間に位置するように複数の止台が設けられ、
前記ナットは、前記接続用筒部の係合羽根の外周を外嵌する環状外筒部と、該環状外筒部の一端側において前記鋼管を挿通する管挿通孔を中央に形成すると共に前記鋼管の山型突部の内部側傾斜部を押圧する傾斜押圧面を具備した鋼管押圧部とを有し、前記環状外筒部内周には前記鋼管押圧部に近い方から順に本締リングと仮締リングを軸心方向に所定間隔を開けて相互に離接近不能で円周方向には回動自在に設けられ、前記仮締リングは前記環状外筒部と共に回転可能に配置される一方、前記本締リングは所定角度だけ独自の回動が可能とされており、前記本締リング及び仮締リングの内周側には円周方向の所定長さと中心方向への所定突出高さを有する本締羽根及び仮締羽根が夫々前記係合羽根の円周方向の長さ相当分以上の間隔を開けて設けられており、
前記ナットの鋼管押圧部の管挿通孔に挿通している前記鋼管の端部側を前記接続用筒部に挿入して、前記パッキン収納部に収納したパッキンで前記山型突部の端部側傾斜面を押圧し、且つ、前記傾斜押圧面で内部側傾斜面を押圧し、前記仮締リングの仮締羽根が前記止台に円周方向に回転不能に係止され、且つ、前記本締羽根が前記係合羽根の鋼管押圧部と反対側に位置することによって抜け方向への力を阻止しながら継手とナットを連結固定することを特徴とする鋼管と継手の接続機構としたことにある。
【0009】
前記環状外筒部内周に、本締リングと仮締リングを軸心方向に所定間隔を開けて相互に離接近不能で円周方向には回動自在に設けられる構造が、前記環状外筒部内周に設けた本締リング溝と該本締リング溝と軸心方向に所定間隔を開けて設けた仮締リング溝とにそれぞれの外周囲が回動自在に嵌め込まれた構造であることを特徴とする鋼管と継手の接続機構としたことにある。
【0010】
前記本締リングと仮締リングは、輪の一部を切り欠いた切欠部の両端部に夫々引掛部又は係止頭部を有する弾力性のある輪である鋼管と継手の接続機構としたことにある。
【0011】
前記本締リングが金属材料で前記仮締リングが合成樹脂材料からなる鋼管と継手の接続機構としたことにある
【0012】
前記止台と前記係合羽根の間の軸心方向に回転止棒を設けた鋼管と継手の接続機構としたことにある。
【0013】
前記仮締リングの係止頭部に、本締リング方向に膨らみ部を持たせたことを特徴とする鋼管と継手の接続機構としたことにある。
【0014】
前記本締リングの引掛部の近傍の外周に係止突部を設けたことを特徴とする鋼管と継手の接続機構としたことにある。
【0015】
鋼管と継手とをナットを用いて接続する鋼管と継手の接続方法において、前記継手とナットの間に前記鋼管の端部に形成してある山型突部の2つの傾斜面を両方から挟んで前記継手とナットを対峙させて前記鋼管を保持するように相接近させる方向に移動させてから仮連結する仮締作業工程と、該仮締作業工程の後に更に前記継手とナットを相近接させる方向に締め付けて本連結する本締作業工程と、を有することを特徴とする鋼管と継手の接続方法としたことにある。
【0016】
前記仮連結が、前記ナットに設けてある仮締リングを前記継手に係合して行い、前記本連結が、前記仮連結の解除後に前記ナットに設けてある本締リングを前記継手に係合して行うことを特徴とする鋼管と継手の接続方法としたことにある。
【0017】
前記仮締リングが合成樹脂材料からなり、前記本締リングが金属材料からなることを特徴とする鋼管と継手に接続方法としたことにある。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、端部側に山型突部を有する鋼管と継手とを接続する際に、ナットの管挿通孔に挿入されている鋼管の山型突部の内部側傾斜面にナットの傾斜押圧面を当て、ナットの環状外筒部内に継手の接続用筒部を挿入してから、ナットの回転をして仮締リングによる継手とナットの仮連結及び締付後の本締リングの回転による本連結によって確固に接続される。そして、接続後は本締リングや仮締リングによって長年の建造物の振動などによっても接続が緩むことがない。又、鋼管に引張り方向の力が作用した場合には、ナットに固定されている本締リングが継手の係合羽根に引き抜き方向への力が阻止されて抜け出ることがない。同時に、端部側傾斜面に圧着しているパッキンの圧着が緩むことがないので流体漏れを有効に阻止できる。
【0019】
前記環状外筒部内周に、本締リングと仮締リングを軸心方向に所定間隔を開けて相互に離接近不能で円周方向には回動自在に設けられる構造が、前記環状外筒部内周に設けた本締リング溝と該本締リング溝と軸心方向に所定間隔を開けて設けた仮締リング溝とにそれぞれの外周囲が回動自在に嵌め込まれた構造であれば、環状外筒部の内周においては回転自在であるが軸心方向への移動はしなく、即ち引抜き方向への力に対しては強く阻止出来、しかも仮締リング、本締リングの着脱も容易に行える。
【0020】
前記本締リングと仮締リングは、輪の一部を切り欠いた切欠部の両端部に夫々引掛部又は係止頭部を有する弾力性のある輪であるので、輪を変形させて直径に変化を加えることが出来るので、本締リング溝、仮締リング溝への着脱が容易である。引掛部、係止頭部によりそれぞれのリングの切欠部がそれぞれの溝の中に入り込まない。
【0021】
前記仮締リングが合成樹脂材料であれば係止頭部などの成型加工が金属に較べて容易であり且つ材料費も安価である。前記本締めリングが金属材料であれば耐久性に富み長年の使用に耐え得る。
【0022】
前記回転止棒を設けた場合には、ナットを押し込む際に本締リングと仮締リングの軸方向へのスライドが容易で且つナットの回転を阻止できる。
【0023】
前記仮締リングの両端部に設けた係止頭部に、幅方向に膨らみ部を持たせた場合には、リング溝がない開口部において本締リングとの間に所定間隔を保持できるようになるので、開口部においても本締リングと仮締リングの間隔距離を適切に保持できる。
【0024】
本締リングの両端部に設けた引掛部の近傍の外周に係止突部を設けた場合には、この係止突部がそれぞれの溝の入り口にある周壁に係止されて仮締時及び本締時における本締リングの緩みを防止できる。
【0025】
前記継手とナットの間に前記鋼管の端部に形成してある山型突部の2つの傾斜面を両方から挟んで前記継手とナットを対峙させて前記鋼管を保持するように相接近させる方向に移動させてから仮連結する仮締作業工程と、該仮締作業工程の後に更に前記継手とナットを相近接させる方向に締め付けて本連結する本締作業工程と、の2工程を有するものである。即ち、まず、仮締リングによって一時的に仮連結された配管網を仮構築する。多数の継手と管を同じ作業の繰り返しで効率よく配管現場作業が行える。例えば、配管の設置付近に針金で吊り下げた配管網を仮構築してから、継手とナットを更に締付けてから本締リングを回転させて本連結して設置場所に固定して行く作業をすると能率よく配管設置作業が出来る。又、この構築した配管網を補修等により取り外す場合にも、連結時の本締リング及びナットのそれぞれの回転方向と逆回転の作業をするだけで簡単に行える。
【0026】
前記仮連結及び本連結が、それぞれ前記ナットに設けてある仮締リング、本締リングを前記ナットと共に又はナット内で回転させて継手に係合して行うものであるから、作業が簡単で効率よく行うことが出来る。
【0027】
前記仮締リングが合成樹脂材料からなり、前記本締リングが金属材料からなるので、一時的に連結する仮締リングは成型加工し易く安価な材料費で出来、永年に亘って連結する本締リングは金属材料としたので耐久性と強度の強いものとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】この発明の実施形態の鋼管と継手の接続状態の断面斜視図
【
図7】継手にナットを嵌め込んだ時の本締羽根と仮止羽根及び係合止歯の位置関係を示す継手の斜視説明図
【
図8】本締リングの仮止突部が開口部壁に係止される正面斜視図
【
図9】ナットと共に仮締リングを回転させて仮締羽根を係合羽根横に移動したナットの内部説明図
【
図10】
図9の本締羽根と仮止羽根及び係合羽根の位置関係を示す継手の斜視説明図
【
図11】
図9の状態から継手とナットを相接近する方向へ締め付けた時のナットの内部説明図
【
図12】
図11の本締羽根と仮締羽根及び係合羽根の位置関係を示す継手の斜視説明図
【
図13】
図11の状態から継手とナットを更に相接近させてから本締リングのみを回転させて本締めした時のナットの内部説明図
【
図14】
図13の本締羽根と仮止羽根及び係合羽根の位置関係を示す継手の斜視説明図
【
図16】継手とナットの接続完了時の開口部を中心とする外観斜視図
【
図17】鋼管の山型突部を形成する拡管機の断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の鋼管と継手の接続機構の最良の実施形態について、以下図を参考にしつつ説明する。
この鋼管と継手の接続機構1は、
図1に示されるように、鋼管2の先端を継手3の端部から差し込んで、鋼管2の一方の端部2a側に形成している山型突部21の端部側の傾斜面21aと内部側の傾斜面21bとを連結された継手3とナット4で挟み込んで固定することにより接続する接続機構である。
【0030】
前記鋼管2は、前記のように一方の端部2a側の傾斜面21aと傾斜面21bの2つの傾斜面をからなる山型突部21を有するステンレス、鉄、金属合金などからなる厚さが薄肉の長尺な管体が一般的に用いられ、その内部の流体通路は令温水、水道水などの液体や蒸気、ガス、空気などの気体の流体の通過経路となる。これらの鋼管2は主として建造物の屋内配管に用いられるが、この配管工事は狭い空間内の施工現場が多いので、長尺な鋼管2を搬入して必要な長さに切断し難い時には予め工場で切断された鋼管2や、更には、予めこれら切断された鋼管2に接続された継手3と共に施工現場まで搬送されて、或いは現場で接続され組み立てられて敷設されてゆく。
【0031】
前記継手3は、L字形状のエルボ、T字形状のテイー、三方に分岐するクロス、両端の径の長さが異なるレジューサなどの構造形状から施工現場に応じて選択される連結筒部31と、この連結筒部31の端部に設けている接続用筒部32を有する。又、連結筒部31と接続用筒部32の境界付近の外周には接続用筒部32より大径で外方向へ延びる鍔部33を有している。
図1、2等に示されているように、この実施形態では、連結筒部31としては、短い直線状で外形が六角形で内部が円形の流体通路34を用いている。
【0032】
前記連結筒部31は、内部に鋼管2の内径と略等しい内径の前記流体通路34を有している。そして、この連結筒部31の一方又は両端部には、流体通路34と連続する前記接続用筒部32が突出して設けられているが、
図1、
図2には一方の端部にのみ設けた実施態様が示されている。この接続用筒部32の内側には前記鋼管2の端部2a側の外周を挿通する前記流体通路34より径の大きい中拡径部35を有し、更にこの中拡径部35より先端側にはこの中拡径部35より更に径が大きく先端へ開口した大拡径部36を形成して、この大拡径部32と中拡径部35の段差で形成される差壁面35aと大拡径部36とで環状のパッキン5を収納するパッキン収納部36aとしている。
【0033】
前記接続用筒部32の外周の先端には、
図2に示すように、係合羽根32a間の間隔Kを開けて6つの円弧直方体形状の係合止歯32aが円周方向に一列に設けられ、夫々所定の係合止歯32aは円周方向の長さL、継手3の中心の軸心方向でもある幅方向の長さS、接続用筒部32の外周面からの突出高さHを有している。更に、この夫々の係合止歯32aの一端側からは幅方向に鍔部33に向かって係合止歯32aの突出高さHより背が低い6つの回転止棒32bが設けられている。又、この回転止棒32bの鍔部33との接続位置から鍔部33の根元に沿って回転止棒32bより背が低く、円周方向の長さ及び幅方向の長さが夫々係合止歯32aの長さL、幅方向の長さSと略同じである止台32cが6つ設けられている。この止板32と前記係合止歯32aとの幅方向の間隔距離は、略係合止歯32aの幅方向の長さSより少し長く開けており、且つ、係合止歯32aと軸心方向に重ならない位置に配置されている。
【0034】
前記ナット4は、
図1~6においてよく現れているように袋ナットが用いられ、前記継手3の接続用筒部32を内側に挿入して接合する環状外筒部41と、該環状外筒部41の軸心方向の一端部において、前記鋼管2を挿通する管挿通孔42を中央に形成した鋼管押圧部43が形成されている。前記環状外筒部41の内周面には、鋼管押圧部43側から順にテーパー状の傾斜押圧面44、本締リング6の外周縁部61を挿入する円周状の本締リング溝45、この本締リング溝45と間隔を開けて仮締リング7の外周縁部71を挿入する円周状の仮締リング溝46が設けられている。
【0035】
この実施形態では、
図4、5に良く示されるように、本締リング6と仮締リング7の幅の厚さ及び直径は等しく形成されているので、本締リング溝45と仮締リング溝46の横幅及び溝の直径は略同じである。更に、両リング溝45、46の間隔Nは本締リング45の幅の厚さ相当分開けられており、又、仮締リング溝46と環状外筒部43と反対側の環状外筒部41の円周端面47との間隔Mも本締リンク6の幅の厚さ相当分開けられている。それら2つの間隔N、Mを形成する仕切内周枠48の形状は夫々円周端面47から鋼管押圧部43方向に下るテーパー状に形成された滑り傾斜面として、円周端面47側からの本締リング6及び仮締リング7を夫々本締リング溝45及び仮締リング溝46に嵌め込み易くしている。
【0036】
環状外筒部41の一部は切り欠いた開口部49を形成しており、この開口部49によって前記本締リング溝45及び仮締リング溝46も切断されており、開口部49の周囲には環状外筒部41の厚さ分の周壁49aが露出している。41aは環状外筒部41の外周部に必要に応じて設けた工具用穴で、ナット4を継手3に圧接する際に必要に応じて使用されるものである。
【0037】
前記本締リング6は、
図2等に示すように、所定厚さのステンレス鋼などの弾力性を有する金属からなる輪であり、一部が切り欠いた本締切欠部62とこの本締切欠部62の相対向する両端部には工具等で掴むための引掛部63が形成されると共に、この引掛部63の近傍のリング外周には仮締止突部64と本締止突部65が隆起して設けられている。この引掛部63は開口部49の周壁49aに当接可能に設けられており、又、引掛部63近傍のリング外周に設けている仮締止突部64及び本締止突部65も近傍の引掛部63が本締リング溝45入口の周壁49aに係合していな時には自身が係合可能となっている。
【0038】
本締リング6の内周面には5つの円弧状の本締羽根66が、
図7に表れているように、前記係合羽根32aの円周方向長さLが通過可能な羽根間隔66aを開けて設けられている。又、この本締羽根66の円周方向の長さは前記係合羽根32aの間隔Kを通過できる長さである。更に、同内周面から中心方向への突出長さは前記係合羽根66の突出高さHより若干長くして、継手3とナット4との接合時に5つの本締羽根66の内周面を接続用筒部32の外周面に嵌め込む際に係合羽根32aに妨げられることなく通過可能にしている。
【0039】
前記仮締リング7は、ステンレス鋼などの弾力性を有する金属、或いは合成樹脂材料からなる輪であり、輪の一部が切り欠いた仮締切欠部72とこの仮締切欠部72の相対向する両端部には係止頭部43が形成されている。この係止頭部43は、開口部49に突出すると共に仮締リング溝7の入口の周壁49aに当接しているので、環状外筒部41が左右いずれの方向に回転する時にも同時に同じ方向に回転するようになっている。この係止頭部43の側面に膨らみ部74を形成した場合には、開口部49において本締リング溝45、仮締リング溝46がない箇所においても本締リング6との間隔距離が確実に保持される。仮締リング7にはリングの厚さ方向への力は仮締時を除いて掛からないので合成樹脂材料の強度でも耐え得ることができ、金属と比較して成形加工が容易である分だけ有用である。
【0040】
図2等に示すように、仮締リング7の内周面には4つの円弧状の仮締羽根76が、前記係合羽根32aの円周方向長さLが通過可能な羽根間隔76aを開けて設けられている。又、この仮締羽根76の円周方向の長さは前記係合羽根32aの間隔Kを通過できる長さである。更に、内周から中心方向への突出長さは前記係合羽根66の突出高さHより若干長くして、前記本締羽根66と同じように、仮締羽根76の4つの内周面を接続用筒部32の外周面に嵌め込む際に係合羽根32aに妨げられることなく容易に通過可能にしている。仮締羽根76が本締リング66より1つ数が少ない4つであるのは、実質的に接続して力が掛かるのは本締羽根66であり、仮締羽根76は一時的な接続に使用するだけであるので少なくても差し障りがないからである。
【0041】
前記環状のパッキン5は、
図1、2に良く現れているように、断面形状が略台形状を呈しており、略直角をなす2辺が継手2の大拡径部36とこの大拡径部36と中拡径部35の段差である差壁面35aが形成する前記環状のパッキン収納部36aに収納されている。略直角に対向する傾斜面は必要に応じて小突部5aが形成されており、接続時に山型突部21の端部側傾斜面21aに当接した際に、パッキン5の本体と共に体積が収縮し当接強度を高めるようにして流体漏れを防止している。
【0042】
鋼管2の端部の2つの向きの異なる端部側傾斜面21aと内部側傾斜面21bからなる山型突部21は、
図17に示すような拡管機8を用いて形成される。この拡管機8は、図示していない取付枠体に拡管ヘッド81及び該拡管ヘッド81内で連結管82を軸心方向へ押引きする図外の駆動ピストンなどの駆動源が取付取外し自在に固定されている。前記拡管ヘッド81の中心部には加圧ロッド83の先端の連結棒84の挿通用の挿通穴81aが設けられ、この挿通穴81aの外周囲から連結管82と反対方向に鋼管嵌入筒部81bが設けられている。そして、この鋼管嵌入筒部81bの先端内周には山型突部21の端部側傾斜面21aを形成するための傾斜形成面81dが設けられている。
【0043】
前記連結棒84の先端部は前記連結管82とねじ結合されているので、前記連結棒84と加圧ロッド83との径の差によって生じる段差面83aに当接する拡管ゴム85及び該拡管ゴム85と前記挿通穴81aの外周方向の拡管ヘッド81の端面81cに当接するガイドリング86がそれぞれ連結棒84に移動自在に外嵌されている。前記鋼管嵌込筒部81bの外周にはナット4の環状外筒部41が外嵌されて、鋼管押圧部43の内面に鋼管嵌込筒部81bの先端が当接するようになっている。前記拡管ガイド81の端面81cには、前記ナット4の鋼管押圧部43を拡管時に移動しないように係止する係止具87が回軸自在に複数設けられている。
【0044】
上記構成からなるこの拡管機8を用いて鋼管2を拡管する場合には、
図17に示すように、鋼管2の一端を加圧ロッド83の端部からナット4の管挿通孔42を通過するように差し込んで、拡管ヘッド81の前面に当接するまで押し込む。これによって鋼管2の端部側は、拡管ヘッド81の端面81cに当たって係止すると共に、先端の内周部はガイドリンク86と拡管ゴム85の外周側が入る。この時点で、係止具87を回転軸87aを中心に回転させて鋼管押圧部43の外側面に当てナット4が拡管ヘッド81と反対方向に移動しないように係止する。その後、図外の駆動源を作動させて且つ加圧ロッド83を拡管ヘッド81方向に引くと、ガイドリング86によって拡管ヘッド81方向への移動阻止されている拡管ゴム85が段差面83aによって軸心方向への力が作用することで、収縮した体積分が外周方向へ膨張して鋼管2の直径を膨らませる。鋼管2の端部の外周にはナット4の傾斜押圧部43の傾斜押圧面44と鋼管嵌込筒部81bの傾斜形成面81dがあるので、鋼管2の端部の外周は2つの端部側傾斜面21aと内部側傾斜面21bからなる山型突部21が形成される。
【0045】
尚、
図17及び
図4にも示すように、拡管機8による拡管時に予めナット4の環状外筒部41の内周面に設けてある本締リング溝45及び仮締リング溝46に本締リング6及び仮締リング7を嵌め込んでおくと、拡管後に嵌め込む場合と較べて作業能率が向上する。
【0046】
このようにして、鋼管2の端部外周に山型突部21が形成されると、係止具87を回転軸87aを中心に回転させて鋼管押圧面43から外し、鋼管2を加圧ロッド83から引き抜く。ナット4は鋼管2の端部外周に嵌め込まれたそのまま使用できる。
【0047】
尚、
図17に示すこの実施形態の拡管機8以外の形態の拡管機を使用して山型突部21を形成しても良いが、当該拡管機8を用いれば、ナット4の傾斜押圧面44と鋼管2の山型突起21の内部側傾斜面21bが一致するため、密着度の高い接続が可能となる利点がある。
【0048】
次に、上記構成からなるこの鋼管と継手の接続機構1の接続手順について説明する。
【0049】
鋼管と継手の接続機構1を配管の施工現場で構築する場合は、仮締作業と本締作業の2段階を経て行われる。まず仮締作業について説明する。
図1に示されるように、端部2aを継手3の接続用筒部32の開口部から中拡径部35に挿入して、パッキン収納部36aに予め嵌め込まれているパッキン5の2つの突起5aが端部側傾斜面21aに押圧され当接するまで押し込む。これにより、パッキン5の側面及び外周面はそれぞれ差壁面35a及び大拡径部36の内周面に密着して、気密が保持され流体漏れが塞がれた状態にある。山型突起21の異なる方向の2つの端部側傾斜面21a、内部側傾斜面21bをナット4の傾斜押圧面46及び継手3のパッキン収納部36aのパッキン5によって両方向から挟むようにして押圧することで接続される。なお、パッキン5の材質の収縮限度を超える圧力が加わった時には、中拡径部35と差壁面35aの交差する角部が端部側傾斜面21aに当たってパッキン5の保護をしている。
【0050】
前記拡管機8による拡管時に用いた前記ナット4の管挿入孔42に鋼管2の端部2aが挿入されたままの状態では、山型突部21の内部側傾斜面21bが鋼管押圧部43の傾斜押圧面44に当接し、鋼管2の直線部の長手方向は管挿通孔42から外側へ延びた状態にある。
【0051】
次に、
図3に良く現れているように、本締リング溝45に嵌め込んだ本締リング6と、仮締リング溝46に嵌め込んだ仮締リング7が、それぞれの溝45,46内で回転不能の状態で軸心方向に重なり合うように、以下の手順で位置合わせを行う。
【0052】
本締リング6と仮締リング7は共に弾力性のある輪を開く方向に付勢されたものであるので、仮締切欠部72の両端の2つの係止頭部73が開口部49の周方向の相対向する周壁49aに引っ掛って、仮締リング7が仮締リング溝46内で周方向に回転しない不動の定位置にある。そして、
図8に良く現れているように、本締リング6の両端部にある引掛部63の一方を周壁49aに作業者の手等で当接させると、この一方の引掛部63の近傍にある本締止突部65は、引掛部63が周壁49aに接近した時に、広がる方向への付勢力に抗して本締リング溝45内に沈み込む。これによって、他方の引掛部63の近傍にあって開口部49に露出している仮締止突部64が本締リング6の外広がりの付勢力により相対向する本締リング溝45の出口の周壁49aに引っ掛って本締リング6の逆方向への回転が阻止される。結局、本締リング6は引掛部63と仮締止突部64が相対向する周壁49aに係止されて本締リング溝45内で回転不能となる。
【0053】
このように、本締リング6と仮締リング7がそれぞれ本締リング溝45と仮締リング溝46で回転不能の状態で、且つ、軸心方向に本締羽根66と仮締羽根76が間隔を開けて重なった状態で、
図6に示されるように、継手3とナット4を対峙させて、継手3の接続用筒部32をナット4の環状外筒部41の内部へ押し込む。この時、回転止棒32bがあれば、これに案内されて仮締羽根76が軸心方向へ直進し易くなる。
【0054】
内部へ押し込まれると、
図7に示すように、係合羽根間隔Kを仮締羽根76が通過して止台32cの手前で止まり、この仮締羽根76の軸心方向に間隔を開けて重なっている本締羽根66が係合羽根間隔K入り込んだ状態で止まる。この止まりは、継手3内のパッキン5が山型突部21の内部側傾斜面21bに当接するので作業者の手ではこれ以上は押し込めなくなることによる。
【0055】
次に、ナット4を
図9の矢符P方向に正回転させて仮締作業をする。
図9、10に示すように、仮締リング7は係止頭部73が周壁49aに引っ掛っているので、仮締羽根76がナット4と共にP方向に正回転しナット4の回転停止と共に止まる。この時点で、
図10の点線で示すように、仮締リング7の仮締羽根76は係合羽根32aの側面と鍔部33の間の接続用筒部32上方に位置する。
【0056】
本締リング6の一方の引掛部63は正回転方向には周壁49aにより阻止されていなく、又、本締羽根66がナット4の正回転方向側の係合羽根32aにも回転を阻止されていないので、ナット4の正回転により他方の引掛部63が周壁49aに当たるまで回転する。この状態で一方の引掛部63近傍の仮止突部65が周壁49aの外側に出て本締リング6の逆回転を阻止する。本締リング6の正回転は本締羽根66が係合羽根32aに当接していることにより阻止される。即ち、ナット4は継手3に対して正逆回転出来ない状態になっている。このような作業の繰り返しによって、鋼管2が次々と継手2を介して接続されて配管網が形成され仮締作業は完了する。ここでいう配管網とは、2以上の鋼管を接続する配管を意味する。
【0057】
このように、ナット4が継手3に対して回転不能で、且つ、仮締リング7が係合羽根32aと鍔部33の間に位置していることから、鋼管網の形成により鋼管2の自重や振動等によって鋼管2に引張力や回転力が作用した場合でも、継手3とナット4には接続解除の緩みが生ぜず、又、配管網の引張方向或いは弛み方向には、仮締羽根76が鍔部33と係合羽根32aの間で保持されているので接続が外れることがない。しかも、鍔部33と係合羽根32aの間には仮締羽根76の移動可能な多少の遊び空間があるので、配管網の引張や弛みに対しても対応できる。
【0058】
このような仮締作業(工程)は、配管網を構築する場合において、針金などで施工個所の近傍で吊り下げるなどして全体の配管網を取敢えず完成させた後に以下に述べる本締作業をすることによって、作業能率の向上と締め忘れ等の施工ミスを防ぐことが出来る。
【0059】
本締作業(工程)は、上記の仮締状態後において、
図16の相対向する矢符T、T‘方向へ継手3とナット4とを更に強く相接近させた後に、本締リング6のみを正回転させることによって行う。この相接近は、ナット4の工具用穴41aと継手3の鍔部33に図外の締付工具の端部を取り付けて締め付するなどして行う。すると、この本締付により、端部側傾斜面21aに接しているパッキン5の軸心方向の長さが縮まることや弛んでいた継手3とナット4の間隙が詰まり、その縮小し間隙のなくなった長さ分だけ相対的に環状外筒部41が継手3に軸心方向に接近することになる。これによって、
図11,
図12に示すように、仮締羽根76と本締羽根66も共に鍔部33方向である矢符S方向に同時に移動し、仮締羽根76は止台32cと回転止棒32bの間に、本締羽根66は円周方向で止台32cと係合羽根32aの間に回転止棒32bに沿って移動する。
【0060】
そして、この相接近状態を維持しつつ、開口部49に現れて周壁49aに当接されている一方の引掛部63を
図13,14の矢符P方向に逆回転させる。この逆回転は、必要であれば図外の工具などを用いて、他方の引掛部63を相対向する周壁49aに当接するまで回転移動させる。すると
図15に示すように、この他方の引掛部63が周壁49aから離れる際に近傍の本止突部64が本締リング溝46から出て自身の弾性力で外側へ飛び出して開口部49の周壁49aに係止される。同時に、他方の引掛部63が周壁49aに当接する時には近傍の仮止突起65が本締リング溝45内に沈んで行き、本締作業が完了する。これは、仮締作業時の
図8と対称的である。
【0061】
この段階で、
図13,
図14に示すように、本締羽根66即ち本締リング6は正逆いずれの方向へも回転不能の状態で、且つ、係合羽根32aの鍔部33側面に密着した位置にある。そして、本締作業がされて行くに伴い本締羽根66と係合羽根36aとの軸心方向の間隔が狭まることにより、密着度合いが強くなって摩擦力も大きくなり、緩み方向への回転が一層阻止される。なお、前記本止突部64,仮止突起65による本締リング6の回転が阻止出来ない場合であっても、引掛部63が周壁49aに当たって回転が阻止されるので、多少の弛みは生じるものの使用可能である。
【0062】
加えて、仮締羽根76の円周方向の両端が止台32cと回転止棒32bによって係止されており加えて両端部の係止頭部73が開口部49の周壁49aによって回転を阻止されているので、これによってもナット4の緩み方向への回転が阻止される
【0063】
更に加えて、本締リング6も一方の引掛部63と本止突部65が開口部49の周壁49aに当接しているので、ナット4の緩み方向への回転が阻止される。このように、継手3とナット4との緩み方向への回転は、本締リング6、仮締リング7及び配管時の引張方向への力の作用による本締羽根66と係合羽根32aの側面の摩擦力によって阻止され、長年の使用によっても緩みの発生を阻止出来る。
【0064】
仮締作業(工程)と本締作業(工程)の2段階で接続作業を行うことにより、同一作業の繰り返しに伴う作業能率の向上と締め忘れ防止効果を合わせて得ることが出来る。
【産業上の利用分野】
【0065】
この発明は、端部に山型突部を有する継手を継手とナットで挟んで締付接続して緩み止めをした構成を採用しているので、振動が生じやすい建造物などの配管に特に有効に使用される。また、仮締作業と本締作業とで接続作業を行うので、広範囲な配管網を構築する構造物に対してとくに有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 鋼管と継手の接続機構
2 鋼管
2a 端部
21 山型突部
21a 端部側傾斜面
21b 内部側傾斜面
3 継手
31 連結筒部
32 接続用筒部
32a 係合羽根
32b 回転止棒
32c 止台
33 鍔部
34 流体通路
35 中拡径部
35a 差壁部
36 大拡径部
36a パッキン収納部
4 ナット
41 環状外筒部
41a 工具用穴
42 管挿通孔
43 鋼管押圧部
44 傾斜押圧面
45 本締リング溝
46 仮締リング溝
47 円周端面
48 仕切内周枠
49 開口部
49a 周壁
5 パッキン
5a 突起
6 本締リング
61 外周縁部
62 本締切欠部
63 引掛部
64 本止突部(係止突部)
65 仮止突部(係止突部)
66 本締羽根
66a 本締羽根間隔
7 仮締リング
71 外周縁部
72 仮締切欠部
73 係止頭部
74 膨らみ部
76 仮締羽根
76a 仮締羽根間隔
8 拡管機
81 拡管ヘッド
81a 挿通穴
81d 傾斜形成面
82 連結管
83 加圧ロッド
84 連結棒
85 拡管ゴム
86 ガイドリンク