(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154322
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20231012BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063579
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝行
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】作業者の経験や技術の暗黙知等のノウハウを活用してプラントの管理・運用を行える情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】情報処理装置は、プラントの各処理工程の入力と出力とに基づいてモデルを学習させる学習部と、学習済みのモデルを用いて、プラントの作業者が管理または運用の設定を行う際の暗黙知を過去に入力された所定時間単位の業務結果データである過去データを用いて形式知データに変換してプラントに関する業務を解析する解析部と、プラントの作業者が入力した所定時間単位の業務結果データをアプリケーションに入力し、アプリケーションのデータをオブジェクト化させる処理部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの各処理工程の入力と出力とに基づいてモデルを学習させる学習部と、
学習済みの前記モデルを用いて、前記プラントの作業者が管理または運用の設定を行う際の暗黙知を過去に入力された所定時間単位の業務結果データである過去データを用いて形式知データに変換して前記プラントに関する業務を解析する解析部と、
前記プラントの作業者が入力した前記所定時間単位の業務結果データをアプリケーションに入力し、前記アプリケーションのデータをオブジェクト化させる処理部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記解析部は、PDCA手法(Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(回線))を用いて前記プラントに関する業務を解析する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記解析部は、前記学習済みのモデルを用いて、入力された所定時間単位の前記業務結果データに対して、前記過去データを参照して、入力された所定時間単位の前記業務結果データが正常な入力値であるか異常な入力値かを判定する、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記アプリケーションのデータのうち関連性のあるデータをグループ分けして、前記グループ分けしたデータに前記プラントの業務管理に関する情報である属性を付与する、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記アプリケーションに応じて前記アプリケーションのデータの変換を行うか変換を行わないかを判定し、変換が必要な場合に前記アプリケーションのデータの変換を行い、または前記アプリケーションのデータの同期を行うか否かを判定し、同期が必要な場合に前記アプリケーションのデータに対して同期を行う、
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記アプリケーションが、オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部に登録するデータを前記アプリケーション内でデータ定義に合うオブジェクトに加工し、前記オブジェクト記憶部の入力データとして渡すことで、前記オブジェクト記憶部にオブジェクトデータを登録する、
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記アプリケーションが、オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部内にあるオブジェクトデータを、前記アプリケーションの識別情報または前記アプリケーションに付与されている属性の組み合わせで検索して、前記データをオブジェクトで取得し、前記オブジェクト記憶部から取得した前記オブジェクトデータを前記アプリケーション内で扱えるデータに加工する、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記アプリケーションが、オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部内にあるオブジェクトデータを、前記アプリケーションの識別情報または前記アプリケーションに付与されている属性の組み合わせで検索し、前記データを更新し、前記更新するデータを、前記アプリケーション内でデータ定義に合うオブジェクトに加工し、前記オブジェクト記憶部の更新データとして渡す、
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記アプリケーションが、オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部内にあるオブジェクトデータを、前記アプリケーションの識別情報または前記アプリケーションに付与されている属性の組み合わせで検索して、前記データを削除する、
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記処理部が、前記プラントの出力の予測値と計算過程を可視化して提示する、
請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
学習部が、プラントの各処理工程の入力と出力とに基づいてモデルを学習し、
解析部が、学習済みのモデルを用いて、前記プラントの作業者が管理または運用の設定を行う際の暗黙知を過去に入力された所定時間単位の業務結果データである過去データを用いて形式知データに変換して前記プラントに関する業務を解析し、
処理部が、前記プラントの作業者が入力した前記所定時間単位の業務結果データをアプリケーションに入力し、前記アプリケーションのデータをオブジェクト化させる、
情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
プラントの各処理工程の入力と出力とに基づいてモデルを学習させ、
学習済みのモデルを用いて、前記プラントの作業者が管理または運用の設定を行う際の暗黙知を過去に入力された所定時間単位の業務結果データである過去データを用いて形式知データに変換して前記プラントに関する業務を解析させ、
前記プラントの作業者が入力した前記所定時間単位の業務結果データをアプリケーションに入力させ、前記アプリケーションのデータをオブジェクト化させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、作業者の経験やノウハウによって、プラントの運転が効率よく安定して行われている場合が少なくない。このような経験やノウハウは、一般的にベテランと新人との差が大きい。そして、このような経験やノウハウは、作業者の頭の中に蓄積されている。
【0003】
例えば水処理のプラントでは、浄水処理における凝集剤の注入率を適正に決定する必要がある。この凝集剤の注入率を、学習済みモデルを用いて決定するシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、目的変数として浄水場におけるジャーテストの処理水の濁度(度)も用い、説明変数としてPAC注入率(mg/L)、原水水温(℃)、濁度(度)、pH、及びアルカリ度(mg/L)を用いている。そして、特許文献1に記載の技術では、ニューラルネットワークに、これらを入力して学習済みモデルを構築する。そして、特許文献1に記載の技術では、説明変数と候補の凝集剤の注入率とを学習済みモデルに入力し、予測濁度の値を得え、候補の凝集剤の注入率で凝集剤を注入した後の濁度も測定している。作業者は、これらの結果を見て、採用すべき凝集剤の注入率を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、学習に用いた環境(対象の沈殿池等)の状況が変化した場合や、他の環境に適用することが困難であり、システムを作り直す必要があった。また、特許文献1に記載の技術では、作業者の長年の業務によって培われた経験や技術の暗黙知等を学習モデルに学習させることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、作業者の経験や技術の暗黙知等のノウハウを活用してプラントの管理・運用を行える情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る情報処理装置は、プラントの各処理工程の入力と出力とに基づいてモデルを学習させる学習部と、学習済みの前記モデルを用いて、前記プラントの作業者が管理または運用の設定を行う際の暗黙知を過去に入力された所定時間単位の業務結果データである過去データを用いて形式知データに変換して前記プラントに関する業務を解析する解析部と、前記プラントの作業者が入力した前記所定時間単位の業務結果データをアプリケーションに入力し、前記アプリケーションのデータをオブジェクト化させる処理部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置において、前記解析部は、PDCA手法(Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(回線))を用いて前記プラントに関する業務を解析するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置において、前記解析部は、前記学習済みのモデルを用いて、入力された所定時間単位の前記業務結果データに対して、前記過去データを参照して、入力された所定時間単位の前記業務結果データが正常な入力値であるか異常な入力値かを判定するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置において、前記処理部は、前記アプリケーションのデータのうち関連性のあるデータをグループ分けして、前記グループ分けしたデータに前記プラントの業務管理に関する情報である属性を付与するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置において、前記処理部は、前記アプリケーションに応じて前記アプリケーションのデータの変換を行うか変換を行わないかを判定し、変換が必要な場合に前記アプリケーションのデータの変換を行い、または前記アプリケーションのデータの同期を行うか否かを判定し、同期が必要な場合に前記アプリケーションのデータに対して同期を行うようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置において、前記処理部は、前記アプリケーションが、オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部に登録するデータを前記アプリケーション内でデータ定義に合うオブジェクトに加工し、前記オブジェクト記憶部の入力データとして渡すことで、前記オブジェクト記憶部にオブジェクトデータを登録するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置において、前記処理部は、前記アプリケーションが、オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部内にあるオブジェクトデータを、前記アプリケーションの識別情報または前記アプリケーションに付与されている属性の組み合わせで検索して、前記データをオブジェクトで取得し、前記オブジェクト記憶部から取得した前記オブジェクトデータを前記アプリケーション内で扱えるデータに加工するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置において、前記処理部は、前記アプリケーションが、オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部内にあるオブジェクトデータを、前記アプリケーションの識別情報または前記アプリケーションに付与されている属性の組み合わせで検索し、前記データを更新し、前記更新するデータを、前記アプリケーション内でデータ定義に合うオブジェクトに加工し、前記オブジェクト記憶部の更新データとして渡すようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置において、前記処理部は、前記アプリケーションが、オブジェクトを記憶するオブジェクト記憶部内にあるオブジェクトデータを、前記アプリケーションの識別情報または前記アプリケーションに付与されている属性の組み合わせで検索して、前記データを削除するようにしてもよい。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る情報処理方法は、前記処理部が、前記プラントの出力の予測値と計算過程を可視化して提示するようにしてもよい。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る情報処理方法は、学習部が、プラントの各処理工程の入力と出力とに基づいてモデルを学習し、解析部が、学習済みのモデルを用いて、前記プラントの作業者が管理または運用の設定を行う際の暗黙知を過去に入力された所定時間単位の業務結果データである過去データを用いて形式知データに変換して前記プラントに関する業務を解析し、処理部が、前記プラントの作業者が入力した前記所定時間単位の業務結果データをアプリケーションに入力し、前記アプリケーションのデータをオブジェクト化させる。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、プラントの各処理工程の入力と出力とに基づいてモデルを学習させ、学習済みのモデルを用いて、前記プラントの作業者が管理または運用の設定を行う際の暗黙知を過去に入力された所定時間単位の業務結果データである過去データを用いて形式知データに変換して前記プラントに関する業務を解析させ、処理部が、前記プラントの作業者が入力した前記所定時間単位の業務結果データをアプリケーションに入力させ、前記アプリケーションのデータをオブジェクト化させる、を実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、作業者の経験や技術の暗黙知等のノウハウを活用してプラントの管理・運用を行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係るプラントシステムの概要を示す図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図3】PDCA手法の概要を説明するための図である。
【
図4】実施形態に係る解析手法で用いられるデータの生成手順を示すフローチャートである。
【
図5】作業工程と入出力の例を説明するための図である。
【
図6】端末によって入力される業務結果データの一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る業務結果データの正常・異常の判定処理のフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る情報処理装置の役割を説明するための図である。
【
図10】実施形態に係るデータの登録(Create)における処理例を説明するための図である。
【
図11】実施形態に係るデータの取得(Read)における処理例を説明するための図である。
【
図12】実施形態に係るデータの更新(Update)における処理例を説明するための図である。
【
図13】実施形態に係るデータの削除(Delete)における処理例を説明するための図である。
【
図14】実施形態に係る学習時のモデルへの入出力データの例を示す図である。
【
図15】実施形態に係る解析部が学習済みのモデルを用いて予測、シミュレーション、解析等を行う例を説明する図である。
【
図16】実施形態に係る予測構成の結果例を示す図である。
【
図17】実施形態に係る予測精度の確認結果例を示す図である。
【
図18】実施形態に係る管理・運用予測の結果例を示す図である。
【
図19】実施形態に係る予測結果を分析して活用する例を示す図である。
【
図20】実施形態に係る予測精度悪化の原因分析結果例を示す図である。
【
図21】工程毎に分けた系統図の一例を示す図である。
【
図22】実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0022】
(プラントシステムの概要)
図1は、本実施形態に係るプラントシステムの概要を示す図である。
図1のように、プラントシステム1は、例えば、端末2(2-1、2-2)、ネットワークNW、情報処理システム3、提示装置5、およびプラント6を備える。なお、
図1に示した構成は一例であり、これに限らない。
【0023】
端末2は、例えばタブレット端末、スマートフォン、専用端末等である。端末2は、作業者がデータを入力したり、予測過程やシミュレーション過程等が可視化された画像を見たり、予測結果やシミュレーション結果を確認したりする際等に使用する。端末2は、例えば、通信機能部、操作部、画像表示部、マイクロホン、スピーカ、制御部、および記憶部等を備える。端末2は、ネットワークNWを介して情報処理システム3と接続されている。
【0024】
ネットワークNWは、有線回線または無線回線である。
【0025】
情報処理システム3は、作業者が入力した業務結果データと、工程で生じたデータに基づいて暗黙知データを学習し、学習したモデルを用いてプラントの運用を予測やシミュレーションしたりする。なお、業務結果データは、所定時間単位に入力される。所定時間単位は、例えば1日、12時間、2日、一週間、一ヶ月等であり、作業者が業務で業務結果データを記録している時間単位であればよい。
【0026】
提示装置5は、例えば画像表示装置、印字装置等である。なお、端末2が提示装置5を兼用していてもよい。提示装置5は、情報処理システム3と無線ネットワークまたは有線ネットワーク等を介して接続されている。
【0027】
プラント6は、例えば、水処理、下水道処理、発電所、工場等である。なお、以下の説明では、プラント6の一例として、下水道処理を例に説明する。
【0028】
(情報処理システム)
【0029】
図2は、本実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図2のように、情報処理システム3は、例えば、情報処理装置31、業務結果記憶部32、過去データ記憶部33、モデル記憶部34、アプリケーションDB35、オブジェクト記憶部36、および予測データ記憶部37を備える。
【0030】
業務結果記憶部32は、作業者によって入力された例えば日毎の業務結果データを記憶する。過去データ記憶部33は、過去に入力または取得された業務結果データを記憶する。モデル記憶部34は、モデルを記憶する。なお、モデルは、暗黙知データが形式知データに変換された結果も含む。アプリケーションDB35は、アプリケーションを格納する。オブジェクト記憶部36は、後述するオブジェクトデータを記憶する。予測データ記憶部37は、管理・運用に際して、入力データに対する予測出力データを記憶する。なお、本実施形態において、管理または運用を「管理・運用」とする。
【0031】
情報処理装置31は、例えば、取得部301、学習部302、解析部303、処理部304(共通プラットフォーム)、出力画像作成部305、および出力部306を備える。情報処理装置31は、例えばサーバである。情報処理装置31は、作業者が端末2で入力した業務結果を業務結果記憶部32に記憶させる。情報処理装置31は、作業者が端末2で入力した業務結果が正常であるか異常であるかを判別し、異常の場合に作業者に提示する。情報処理装置31は、作業全体を工程に分け、工程毎の入力と出力を関連付け、関連付けた入力と出力を用いて暗黙知データを形式知データにする。情報処理装置31は、このようなデータを用いて学習して学習済みモデルを生成していき、学習済みモデルをモデル記憶部34に格納する。情報処理装置31は、入力された業務結果のデータのうち関連のあるデータをグループ化し、そのグループまたはデータに属性を付加する。情報処理装置31は、アプリケーションDB35に格納されているアプリケーションで使用されるデータをオブジェクト化してオブジェクト記憶部36に格納させる。情報処理装置31は、学習済みモデルを用いて、例えば、プラントの管理・運用を予測やシミュレーションを行い、予測過程やシミュレーションの途中結果等も含めて可視化して提示する。なお、学習方法、属性については後述する。
【0032】
取得部301は、端末2がネットワークNWを介して送信した業務結果データを取得し、取得した業務結果データを業務結果記憶部32に記憶させる。また、取得部301は、後述する処理工程毎の入力と出力を取得する。なお、取得部301は、通信機能を備えている。
【0033】
学習部302は、作業者が端末2で入力した業務結果が正常であるか異常であるかを判別するための学習を行う。学習部302は、工程の入力と出力を用いて、形式知データを学習する。学習部302は、形式知データのうち関連のあるデータをグループ化し、そのグループまたはデータに付加する属性を学習する。学習部302は、アプリケーションで使用されるデータのうち関連のあるデータをグループ化し、そのグループまたはデータに付加する属性を学習する。学習部302は、アプリケーションで使用されるデータを変換すべきか否か学習する。学習部302は、業務結果データ、工程の入力と出力、属性が付加されたグループまたはデータされた結果等を用いて、管理・運用を予測やシミュレーションを行うための学習を行う。なお、関連付けてグループ化されるデータとは、例えば出力Cの結果に影響した入力Aと入力Bの場合、入力Aと入力Bと出力Cが関連付けられてグループ化されるデータである。属性は、例えば、この入力Aと入力Bと出力Cに付加されるラベルであってもよい。なお、学習部302の学習は、これに限らない。
【0034】
解析部303は、学習済みのモデルを用いて、作業者が端末2で入力した例えば作業を行った日の業務結果データが正常であるか異常であるかを判定し、異常の場合に作業者に提示する。なお、解析部303は、作業者が端末2で入力した業務結果データが正常であるか異常であるかを、過去に入力された業務結果データである過去データと比較することで判定するようにしてもよい。解析部303は、学習済みのモデルを用いて、形式知データのうち関連のあるデータをグループ化する。解析部303は、学習済みのモデルを用いて、管理・運用の予測やシミュレーションを行い、予測結果と予測過程、またはシミュレーション結果とシミュレーション過程等を出力する。なお、解析部303が行う処理は、これに限らない。
【0035】
処理部304は、アプリケーションのデータのうち関連のあるデータをグループ化し、そのグループまたはデータに属性を付加する。処理部304は、アプリケーションのデータを変換するか変換しないかを判定し、変換が必要な場合、アプリケーションに応じてデータを変換する。なお、処理部304が行う処理は、これに限らない。
【0036】
出力画像作成部305は、解析部303が判定、予測、シミュレーション、解析等した結果を示す情報を画像化して、出力部306を介して提示装置5に提示する。なお、提示画像の例は、後述する。
【0037】
出力部306は、出力画像作成部305が生成した画像を提示装置5に出力する。なお、出力部306は、通信機能またはインタフェースを備えている。
【0038】
(PDCA手法)
次に、本実施形態で用いるPDCA手法の概要を説明する。
図3は、PDCA手法の概要を説明するための図である。PDCA手法とは、
図3のように、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、およびAction(改善)を繰り返すことで、管理・運用の方針を決定したり、管理・運用の変更を実行したり、業務結果データとその後のデータを分析または解析したり、分析や解析された結果を以降の業務に反映させる手法である。本実施形態では、このP,D,C,Aのサイクルを繰り返すことで暗黙知データを解析して学習する。
【0039】
図4は、本実施形態に係る解析手法で用いられるデータの生成手順を示すフローチャートである。なお、以下の手順は、PDCAサイクルの業務解析を行う手法でもある。
【0040】
(ステップS1)情報処理装置31は、作業全体を処理工程毎に分ける。なお、処理工程については、例えば利用者が予め例えばモデル記憶部34等に記憶させておくようにしてもよい。
【0041】
(ステップS2)情報処理装置31は、処理工程毎の入力と出力を確認する。なお、入力は少なくとも1つであり、2つ以上の場合もある。同様に、出力は、少なくとも1つであり、2つ以上の場合もある。
【0042】
(ステップS3)情報処理装置31は、処理工程毎の入力と出力に基づいて、暗黙知を確認する。この意味合いは、処理工程に入力されたデータ(含むパラメータ)によって、出力がどのように変化したのかを確認することで、どのパラメータをどのように変化させると、出力(=結果)がどのように変化するかを把握することで、作業者の暗黙知を確認する。なお、暗黙知を確認できる理由は、このような作業を、作業者が経験とノウハウによって、パラメータを変更し、その変更は決行を経験とノウハウで予測していると想定されるためである。
【0043】
(ステップS4)情報処理装置31は、作業全体の暗黙知を処理工程毎にデータ化する。この意味合いは、処理工程の入力と出力であれば、数値として表すことができるからである。
【0044】
(ステップS5)情報処理装置31は、ステップS4の処理によって、暗黙知を形式知データで可視化する。この意味合いは、暗黙知は数値化が困難であるが、数値化されたデータを形式知データと見なせるためである。
【0045】
(ステップS6)情報処理装置31は、処理工程毎に形式知データを整理する。
【0046】
(ステップS7)情報処理装置31は、整理した形式知データのうち関連のあるデータをグループ化する。
【0047】
なお、
図4に示した処理は一例であり、これに限らない。
【0048】
(作業工程、入出力の例)
次に、作業工程と入出力の例を説明する。
図5は、作業工程と入出力の例を説明するための図である。なお、
図5は、下水道処理の全行程の内の一部の処理工程を抜き出したイメージ図である。
図5の例では、5つの工程(第1工程g11~第5工程g15)がある。第1工程g11は、入力が入力g11であり、出力が出力g22である。第3工程g13は、入力が入力g23であり、出力が出力g24である。第2工程g12は、入力が入力g25と第1工程g11の出力g22と第3工程g13の出力g24であり、出力が出力g26と出力g27である。
なお、
図5に示した各処理工程や、入出力は一例であり、これに限らない。
【0049】
(業務結果の例)
次に、端末2によって入力される業務結果データの一例を説明する。
図6は、端末によって入力される業務結果データの一例を示す図である。
図6のように、例えば下水道処理において、端末2によって入力される業務結果データは、例えば入力された日時に項目が関連付けられている。なお、入力された日時に関する情報は、端末2が送信字等に付与してもよく、または情報処理装置31の取得部301が取得したときに付与してもよい。項目は、例えば、水量、投入した塩素量等である。
【0050】
(業務結果データの正常・異常の判定)
次に、業務結果データの正常・異常の判定について説明する。なお、この判定処理は、学習済みモデルを用いて、解析部303が行う。
図7は、本実施形態に係る業務結果データの正常・異常の判定処理のフローチャートである。
【0051】
(ステップS101)解析部303は、作業者が端末2によって入力した業務結果データを、取得部301を介して取得する。
【0052】
(ステップS102)解析部303は、学習済みモデルと、過去データ記憶部33が記憶する過去データとを用いて、入力された業務結果データが誤入力であるか否かを確認する。
【0053】
(ステップS103)解析部303は、入力された業務結果データが誤入力ではないと判別した場合(ステップS103;NO)、ステップS104の処理に進める。解析部303は、入力された業務結果データが誤入力であると判別した場合(ステップS103;YES)、ステップS105の処理に進める。
【0054】
(ステップS104)解析部303は、入力された業務結果データが正常であるため、このデータを用いて各種の解析、予測やシミュレーション等を行う。処理後、解析部303は、処理を終了する。
【0055】
(ステップS105)解析部303は、入力された業務結果データが異常であるため、データが異常であることを提示装置5に提示させる。例えば、入力データの小数点の位置が異常であると判定した場合、解析部303は、例えば入力された業務結果データの小数点、または小数点を含む左右の数字の色を変えて、提示装置5である端末2に表示させるようにしてもよい。処理後、解析部303は、処理を終了する。
【0056】
なお、
図7に示した処理は一例であり、これに限らない。
【0057】
(情報処理装置の役割)
次に、情報処理装置31の役割について説明する。
図8は、本実施形態に係る情報処理装置の役割を説明するための図である。
図8において、共通プラットフォームg31が情報処理装置31に対応する。
図8に示すように、プラントの処理で用いられるアプリケーションg40(新アプリケーションg41、新アプリケーションg42、他所アプリケーションg43、既存アプリケーションg44)それぞれは、アプリケーションDB35に格納されている。なお、アプリケーションDB35の個数は、複数であってもよい。アプリケーションg40のデータは、共通プラットフォームg31を介してオブジェクト化されて、オブジェクト記憶部36に格納される。
【0058】
共通プラットフォームg31は、アプリケーションg40のデータをAPI(Application Programming Interface)(g51~g54)によって行う。API(g51~g54)は、アプリケーションg40が、共通プラットフォームg31内のAPI(REST)の手続きに対応している場合、共通プラットフォームg31側にデータをそのまま通過させる。なお、共通プラットフォームg31の機能は、処理部304が提供する。
【0059】
また、共通プラットフォームg31は、アプリが入出力機能を有していれば、変換機能g61が、その入出力データに合う変換機能を用意して通過させる。また、共通プラットフォームg31は、アプリケーションがデータの入出力機能を有さないデータベースを有する場合、共通プラットフォームg31側からデータベースに同期(g72)する。これにより、共通プラットフォームg31は、共通プラットフォームg31側でデータを参照して、オブジェクトDB36へ通過させることができるようにする。なお、アプリケーションが入出力機能を有していない場合は、データを作業者等が手動(g71)で共通プラットフォームg31へ渡すこともできる。
【0060】
また、共通プラットフォームg31は、アプリが入出力機能を有している場合、情報を用意してデータを例えば操作者によって共通プラットフォームg31側に渡す。なお、人力でデータを渡す軽減手段としては、アプリの操作を自動的に記録してデータ化して共通プラットフォームg31に渡すようにしてもよい。
【0061】
さらに、共通プラットフォームg31は、データのうち関連のあるデータをグループ化し、そのグループまたはデータに、情報を共有するために必要な属性の自動追加を行う。共通プラットフォームg31は、関連のあるデータをグループ化して、グループまたはデータに通過するデータの中身に応じた属性を追加したオブジェクトデータを、オブジェクト記憶部36に格納する。なお、共通プラットフォームg31は、オブジェクト記憶部36にオブジェクトデータを格納する際、オブジェクトデータに識別情報を追加してもよい。また、オブジェクト記憶部36の容量は、例えばオブジェクトデータ容量に応じて拡張させてもよい。
【0062】
このように、本実施形態では、データを、共通プラットフォームg31を通過させるとこで、アプリケーションを「カスタマイズせず」にデータをオブジェクト化したオブジェクトデータとしてオブジェクト記憶部36に格納することができる。
【0063】
(属性の例)
ここで、追加される属性の例を説明する。
図9は、追加される属性の例を示す図である。属性は、プラントの業務管理に関する情報である。
図9のように、下水道プラントで追加される属性の例は、例えば、下水道の系統を示す情報、作業を行った日時を示す情報、管理・運用のパラメータを変更した内容を示す情報等である。
なお、
図9に示した属性は一例であり、これに限られない。属性は、プラントに応じた情報等であってもよい。例えば、プラントが水道や下水の場合、属性は、これらの事業に特化した情報となる。
【0064】
(情報処理装置の動作)
次に、情報処理装置31の動作について、
図10~
図13を用いて説明する。処理部304である共通プラットフォームg31は、
図8を用いて説明したように、
図10~
図13の各処理においてもAPI機能、変換機能によって、データ受け渡しの仲介処理を行う。
【0065】
図10は、本実施形態に係るデータの登録(Create)における処理例を説明するための図である。
図10のように、データの追加の場合、アプリケーションg40が、オブジェクト記憶部36にオブジェクトデータを登録する。なお、登録データは、アプリケーション内でデータ定義に合うオブジェクトに加工し、ストレージの入力データとして渡す。なお、識別情報は自動追加される。
【0066】
図11は、本実施形態に係るデータの取得(Read)における処理例を説明するための図である。
図11のように、アプリケーションg40が、オブジェクト記憶部36内にあるオブジェクトデータを識別情報または属性の組み合わせで検索して、当該データをオブジェクトで取得する。これにより、オブジェクト記憶部36から取得したオブジェクトデータをアプリケーション内で扱えるデータに加工することができる。
【0067】
図12は、本実施形態に係るデータの更新(Update)における処理例を説明するための図である。アプリケーションg40が、オブジェクト記憶部36内にあるオブジェクトデータを識別情報または属性の組み合わせで検索し、そのまま当該データを更新する。なお、更新するデータは、アプリケーションg40内でデータ定義に合うオブジェクトに加工し、オブジェクト記憶部36の更新データとして渡される。
【0068】
図13は、本実施形態に係るデータの削除(Delete)における処理例を説明するための図である。アプリケーションg40が、オブジェクト記憶部36内にあるオブジェクトデータを識別情報または属性の組み合わせで検索して、そのまま当該データを削除する。
【0069】
なお、アプリケーションg40内でオブジェクトデータを扱うことが難しい場合は、APIではなく、アプリケーションg40の入出力機能および共通プラットフォームg31の変換機能で対応する。
【0070】
(学習方法の例)
次に、学習方法の例を説明する。
図14は、本実施形態に係る学習時のモデルへの入出力データの例を示す図である。なお、以下の説明において、モデル記憶部34に記憶されているモデル341は、予め学習されていなくても良く、業務結果データが入力され、処理が行われる毎に学習を繰り返すことで、徐々に学習していくようにしてもよい。また、モデル341は、例えばDNN(Deep Neural Network)、RNN(Recurrent neural network)等のニューラルネットワークである。また、
図14に示すモデル341の学習は一例であり、これに限らない。学習に際して入出力は、プラントおよび各処理工程に応じたものであればよい。
【0071】
I.第1の学習例(g101)
モデル341は、業務結果データと、過去データ記憶部33に記憶されている過去データとが入力され、正常であるか異常であるかを示す情報を出力する。なお、この学習は、例えば業務結果データが入力される毎に行われる。なお、学習に際して、正解データである過去データは、例えばシステムの使用者が入力または選択するようにしてもよい。
【0072】
II.第1の学習例(g102)
モデル341は、処理工程への入力データと、処理工程の出力データとが入力され、形式知データのうち関連するデータをグループ化した結果を示す情報を出力する。なお、この学習は、例えば所定時間毎、処理が行われた際毎、入力または出力が変化した際毎に行われる。
【0073】
なお、処理部が行う属性の付与、アプリケーションのデータの変換を行うか否かも以下のように学習部302が学習するようにしてもよい。
III.第1の学習例(g103)
モデル341は、アプリケーションのデータと、アプリケーションを示す情報(例えばアプリケーションの名称または識別情報)とが入力され、関連のあるデータをグループ化して付加する属性が出力される。なお、この学習は、例えばアプリケーションが、データの入出力を行う毎に行われる。
【0074】
IV.第1の学習例(g104)
モデル341は、アプリケーションのデータと、アプリケーションを示す情報(例えばアプリケーションの名称または識別情報)とが入力され、そのデータを変換するかしないかを示す情報が出力される。なお、この学習は、例えばアプリケーションが、データの入出力を行う毎に行われる。
【0075】
(予測、解析の例)
次に、解析部303が、学習済みのモデル341を用いて予測、シミュレーション、解析等を行う例を説明する。
図15は、本実施形態に係る解析部が学習済みのモデルを用いて予測、シミュレーション、解析等を行う例を説明する図である。
解析部303は、学習済みのモデル341に、業務結果データを入力し、入力された業務結果データが正常であるか異常であるかを示す情報を出力させる(g201)。
解析部303は、学習済みのモデル341に、処理工程への入力データを入力し、予測される処理工程の出力データを出力させる(g202)。
解析部303は、学習済みのモデル341に、アプリケーションのデータと、アプリケーションを示す情報とを入力し、付与される属性を出力させることで、データに属性を付与する(g203)。
解析部303は、学習済みのモデル341に、アプリケーションのデータと、アプリケーションを示す情報とを入力し、そのデータを変化するか変換しないかを示す情報を出力させる(g204)。
【0076】
(予測、解析過程の可視化の例)
次に、予測、シミュレーション、解析過程の可視化の例を、
図16~
図20を用いて説明する。
図16は、本実施形態に係る予測構成の結果例を示す図である。
図16の例では、例えば、入力データ(当日の条件)(業務結果データ)、判断アルゴリズム(a)(教師データ、精度向上)、アプリケーション(A、B,C,X)、教師データ、予測結果、最終出力(実行した設定値)、判断アルゴリズム(b)で行った精度向上、事項結果の分析結果、実行結果の解析結果が含まれる。
図16の予測構成は、例えば、情報処理システム3の構成の概要を示している。なお、教師データは、各処理の出力である。なお、教師データとして、運用者等が正解データを入力するようにしてもよい。
【0077】
図17は、本実施形態に係る予測精度の確認結果例を示す図である。
図17の例では、例えば、横軸が日時、縦軸が予測精度EVS[%]である。グラフにおいて、2つの線は、第1の系統の変化g301、第2の系統の変化g302である。このように、例えば複数の系統の予測精度を同時に可視化して提示することで、因果関係や原因を検討することができる。
【0078】
図18は、本実施形態に係る管理・運用予測の結果例を示す図である。
図18の例では、例えば、横軸が日時、左の縦軸が水量、右の縦軸が注入塩素濃度である。グラフにおいて、3つの線は、配水量g311、戻り量g312、注入率計画値g313である。この例では、X月X1日Y1時と、X日X2日Y2時に、戻り量が急上昇し、排水量が低下していることを示している。このように、運用結果を含む情報を可視化して提示装置5に英字することで、作業者または運用者は、原因を検討したり、設定値を検討したりできる。このように、本実施形態では、処理部304が、学習部302によって予測される値と、作業者が入力した値、実測値等を時系列で、例えばグラフや表で可視化して提示する。これにより、本実施形態によれば、作業者は、自分が入力した結果による操作結果が想定とずれた場合等に、提示されたグラフ等を確認することでずれた原因を検討したりできる。また、本実施形態では、このように予測値の計算結果を時系列等で提示することで、学習部303の処理を可視化して提示することができる。なお、可視化して提示する情報は、例えば、学習部303が複数のアルゴリズムを用いて予測し、それらの計算経過も含めて提示するようにしてもよい。これにより、本実施形態によれば、システムの管理者がシステムに最適なアルゴリズムを選択することもできる。
【0079】
図19は、本実施形態に係る予測結果を分析して活用する例を示す図である。
図19は、
図18の問題のある配水量が低下した部分を拡大したものでもある。このように、予測結果の一部を、必要に応じて拡大したり、数値を確認して見ることも可能であるため、作業者または運用者は予測結果を分析して活用することができる。なお、これらの処理は、例えば、提示装置5の表示画面上に設けられているタッチパネルを利用者が操作して、拡大したい範囲を選択したり、数値を知り箇所を選択する、タッチパネルのセンサーは、検出結果を情報処理装置31へ出力する。情報処理装置31は、検出結果に基づいて、例えば
図19のように、例えば、予測結果に拡大図を重ねて、提示装置5に表示させる。
【0080】
図20は、本実施形態に係る予測精度悪化の原因分析結果例を示す図である。
図20の例では、例えば、横軸が日時、縦軸が必要増注入率(mg/L)である。グラフにおいて、上段が第系統であり、下段が第2系統である。それぞれ、計画値と予測値を示している。グラフの右側に示したように、情報処理装置31は、例えば、注入量が第1閾値(mg/L)を超える日時を抽出して、リストアップする。また、情報処理装置31は、例えば、注入量が第2閾値(mg/L)を下回る日時を抽出して、リストアップする。
【0081】
なお、
図16~
図20に示した予測、シミュレーション、解析結果、および提示される画像は一例であり、これに限らない。
【0082】
以上のように、予測結果やシミュレーション結果や解析結果を可視化することで、例えば予測結果の情報を作業者と運用者とで共有することで、経験やノウハウである暗黙知の技術継承を行うことができる。
【0083】
(本実施形態の意義)
現在、プラントの運用では、作業者が各種データを見て業務を進めている。また、作業者は、設定したパラメータの業務結果データを紙に記録している。作業者は、各種データを見て、その上で経験やノウハウに基づいてパラメータの設定や変更を行っていると思われる。
【0084】
例えば、水の再処理において、再処理された水に対して、エンドユーザにおける塩素濃度を一定に保つ必要がある。このために、処理場の作業者は、適切な塩素の投入量を設定する必要がある。この処理では、現在の配水量に対して一意に投入すべき塩素量を決定できない。その理由は、塩素濃度が時間とともに変化するためであり、この塩素濃度がエンドユーザの使用量に左右される。このため、作業者は、エンドユーザの水の使用量等を想定して、塩素投入量を設定する必要がある。
【0085】
しかしながら、このような経験やノウハウは作業者がベテランであるか新人であるか、すなわち経験によって異なってしまっていた。うまく設定をできない場合であっても、その理由は作業者当人には分からず、ベテランの作業者でも言葉で教えるのが難しい。特に、運転させてみて、想定外の結果となった場合に、設定をどのように変更するか(またはしたか)は、経験やノウハウに基づくことが多いと思われる。そして、このような暗黙知を数値化することは困難であった。
【0086】
このため、本実施形態は、暗黙知を形式知データ化して数値化し、学習済みモデルを用いて推定や解析を行い、さらにその過程である処理結果、推定結果、解析結果等を可視化して作業者に提示するようにした。これにより、本実施形態によれば、パラメータの設定や変更に出力がどう変化したかが分かるので、情報を共有でき、技術継承でき、作業改善に役立てることができる。
【0087】
また、ベテランの作業者にとって、今まで行ってきた業務結果データの紙へ記録を、急にデジタル化することには抵抗があると思われる。このため、本実施形態では、作業者に日頃の業務を今まで通り行ってもらい、紙に記録していたデータをそのまま端末2で入力してもらうようにした。したがって、業務結果データの入力フォーマットは、使用されている紙への記録に基づいたものである。これにより、本実施形態によれば、作業者の負担を減らすことができる。また、本実施形態によれば、このような作業を進めながら業務結果データを入力する処理により、システム導入にあたり、データを一括移行させる必要が無いので、移行費用が不用である。また、本実施形態によれが、過去データを教師データに用いるため、教師データが自動的にモデルに供給される。
【0088】
また、作業者によっては、業務結果データを端末2で入力することも面倒であり抵抗がある場合もある。これに対して、本実施形態では、誤入力の場合に提示したり、予測結果を提示したり、解析結果を提示する等によって、作業者がメリットを感じることができるので、業務脚気データ入力を促すことができる。これにより、本実施形態では、入力された業務結果データを用いて、暗黙知を形式知データ化でき、モデルの学習を行うことができ、モデルの精度を向上させることができる。また、本実施形態によれば、このように学習されたモデルを用いて予測、シミュレーション、解析、業務結果データ入力の異常検出等を行うことで、ベテランの暗黙知を活用でき、かつ可視化によって新人に暗黙知を伝えることができる。
【0089】
また、本実施形態では、処理部304である共通プラットフォームを用いて、情報処理システム3を
図8のように構成したので、共通プラットフォームでデータを変換したりオブジェクト化して管理するようにした。これにより、本実施形態では、新たなアプリケーションを追加したり、アプリケーションを置き換えたり、アプリケーションを変更したりした場合であっても、カスタマイズしたり作り直さなくてすみ、システム変更によるデータの移行等の作業も不要となる。
【0090】
このように、本実施形態では、データのやりとりを共通プラットフォームを介して行うようにした。また、本実施形態では、モデルを学習させ、学習させたモデルを用いるようにした。さらに、本実施形態では、作業の過程や、解析過程、予測過程、シミュレーション過程等を可視化して提示するようにした。なお、上述したように、本実施形態では、業務の解析に、PDCA手法を用いるようにしたが、手法はこれに限らない。また、本実施形態では、データに付加する属性、PDCA手法、共通プラットフォームを、
図17~
図20を用いて説明した例のように、適用するプラント例である水道または下水道に特化または最適化して用いることで、システムを水道または下水道に特化または最適化できる。なお、共通プラットフォームは、上述したように、APIを介してオブジェクト化したオブジェクトデータをオブジェクト記憶部36に格納し、入出力に応じたデータに変換し、さらに作業者等によるデータ入力にも対応するようにした。
【0091】
また、本実施形態では、全行程を処理工程毎に分解し、処理工程毎の入力と出力を確認し、処理工程毎に形式知データを整理し、さらに形式知データのうち関連するデータをグループ化するようにした。この意味合いは、処理工程において、入力されたデータによって、変化したものが何であるか、出力に関係している入力が何であるかを、人間が手作業で見分けて入力と出力との因果関係を調べて関連するデータをグループ化することは困難であった。例えば、A処理において、入力Bがこうなり、入力Cがこうなった結果、出力Dがこうなった、と言う因果関係を知りたくても、これらの入出力を見つけてグループ化することは、困難であった。
【0092】
これに対して、本実施形態では、学習済みのモデルを用いて、形式知データのうち関連するデータをグループ化するようにした。これにより、本実施形態によれば、処理工程における入力と出力との因果関係である暗黙知を活用することができる。そして、本実施形態では、このように学習されたモデルである形式知を用いて、作業者の経験則と同様に、管理・運用における出力を予測やシミュレーションすることができる(PDCA手法におけるCheckに相当)。なお、本実施形態において、暗黙知(PDCA手法におけるCheckに相当)は、各処理工程の入力と出力ではなく、後段の結果に基づくものである。
【0093】
また、本実施形態では、上述したように、作業者が例えば日々の業務で記録していた日単位の業務結果データを日々入力していくことで、モデルの学習や管理・運用における予測値を予測やシミュレーションするようにした。このように、本実施形態によれば、これまで行ってきた業務を継続しながらシステムを構築、運用することができる。すなわち、本実施形態によれば、本システムを導入した際に作業者は、システム導入前と同様に、これまで通りに業務を進めることができ、システムの導入と活用を促進できる。これにより、本実施形態によれば、例えば新たなシステムの導入等に抵抗のある熟練の作業者であっても、上述したようにこれまでの業務を継続でき、さらに予測過程や予測結果、シミュレーション過程やシミュレーション結果、実測値を可視化して提示するようにしたので、業務に活用できるので利用を促すことができる。また、実施形態によれば、作業対象が変わったり追加等された場合であっても、日々の業務結果データを入力していくことで、モデルが学習されるので、変更されたり追加されたシステムに合わせてシステムを構築できる。このため、本実施形態によれば、第1の事業所で構築されたシステムを、他の第2の事業所にカスタマイズせずに、そのまま導入でき、導入後に業務結果データの入力等によって、システムを自動的に合わせていくことができる。このため、本実施形態によれば、本システムを例えば他の事業所等で使用するような水平展開する場合に、最小のコストで展開することができる。
【0094】
また、本実施形態では、
図17~
図20を用いて説明した例のように、学習部303が予測やシミュレーションをしたり処理している途中経過や時系列データを含めて、例えば時系列でグラフや表等で可視化して提示するようにした。これにより、本実施形態によれば、作業者やシステム利用者が、例えば学習過程やデータの因果関係等を提示されたデータから推測できる。これにより、本実施形態によれば、作業者毎の設定のばらつきを低減できたり、所定の要因による予測値(またはシミュレーション値)と設定値とのズレが可視化して提示されるため、作業者が前もって設定を変更したり修正したりすることもできる。
【0095】
また、本実施形態によれば、上述したようにPDCA手法を用いているため、このサイクルによって、例えば設備の取り替えや運転方法を変えた場合であっても、自動的に教師データが供給される。また、本実施形態によれば、例えば設備の取り替えや運転方法を変えた場合であっても、水平展開時にシステムやアプリケーション等のカスタマイズをしなくて済む。また、本実施形態によれば、アルゴリズムは、複数を同時に使う考え方をしているため、場所毎に選定する必要がない。また、本実施形態によれば、日々の情報やデータを教師データに使用するので、精度を維持することができる。
【0096】
ここで、工程毎に分けた系統図の一例を説明する。
図21は、工程毎に分けた系統図の一例を示す図である。なお、
図21の工程図は、汚泥処理の工程例である。このように本実施形態では、系統図の工程毎に分けるルールは、例えば予め決めておき統一することが望ましい。また、
図21において、各ブロック(工程)の後段には、既存の情報やデータがリンクしている。
これにより、本実施形態によれば、
図21のように系統図を統一化できるので、業務を同一視することができる。また、本実施形態によれば、情報やデータの流れを双方向で管理しやすくなる。
従って、本実施形態によれば、情報やデータを一元管理でき、広域管理が行いやすい。
【0097】
また、上述したように、現在の業務では、作業者が紙ベースでデータを記入していた。本実施形態によれば、このような紙ベースのデータを作業員が入力して電子化することで、例えば工程毎に収支を自動的に反映することができる。これにより、本実施形態によれば、広域管理を効率的に行うことができる。
例えば、各工程や全行程で発生する温室効果ガス排気量や維持管理費等を、
図21に示した分けた工程毎に算出(または予測またはシミュレーション)して管理者に提示するようにしてもよい。これにより、本実施形態によれば、温室効果ガス排気量や維持管理費等の集計や管理が行いやすくなる。さらに、本実施形態によれば、広域的な運転・管理を行うことで、温室効果ガス排気量や維持管理費を削減することができる。
【0098】
なお、情報処理装置31は、上述したように例えばサーバであり、例えば
図21のような構成であってもよい。
図22は、本実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
図22のように、情報処理装置31は、例えば、IF401、通信部402、ROM403、RAM404、CPU405、HDD405、操作部407、およびGPU408を備える。IF401、通信部402、ROM403、RAM404、CPU405、HDD405、操作部407、GPU408は、BUS(バス)を介して接続されている。
【0099】
IF401は、外部装置とのインタフェース機能であり、USB(Universal Serial Bus)端子等を含む。通信部402は、外部装置とデータの送受信を行う。ROM403は、読み出し用記憶部であり、プログラム等を記憶する。RAM404は、読み出しと書き込み可能な記憶部であり、処理結果の一次記憶や閾値の記憶等を行う。CPU405は、処理部であり、ROM403が記憶するプログラムを用いて処理や制御を行う。HDD405は、ハードディスクドライブであり、プログラムや閾値等を格納する。なお、HDD405は、SSD(Solid State Drive)であってもよい。操作部407は、例えばキーボード、マウス、表示画面上のタッチパネルセンサ等である。GPU408は、画像処理機能部である。なお、情報処理装置31は、光ディスクドライブ等を備えていてもよい。
【0100】
なお、本発明における情報処理装置31の機能の全てまたは一部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより情報処理装置31が行う処理の全てまたは一部を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0101】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0102】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0103】
1…プラントシステム、2…端末、3…情報処理システム、5…提示装置、6…プラント、NW…ネットワーク、31…情報処理装置、301…取得部、302…学習部、303…解析部、304…処理部、305…出力画像作成部、306…出力部