(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154328
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】トンネルの出来形管理方法および装置
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063593
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三河内 永康
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BA06
2D155BB02
2D155CA03
2D155DA08
2D155LA13
(57)【要約】
【課題】設備コストの低減、省人化、作業効率の向上を図り、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る。
【解決手段】トンネル2の床面2Cに敷設されたレール4上に移動可能にスライドセントル12を配置し、3次元レーザースキャナー14をスライドセントル12に取り付け、スライドセントル12をレール4上で移動させ、3次元レーザースキャナー14によって二次覆工後のトンネル12の3次元形状の計測を行ない、3次元レーザースキャナー14で計測された3次元形状データと、トンネル2の設計データとに基づいてトンネル2の出来形管理を行なうための管理情報を生成するようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの床面に前記トンネルの長手方向に沿って敷設されたレール上に移動可能にスライドセントルを配置し、
前記トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナーを前記スライドセントルに取り付け、
二次覆工がなされたのち、前記スライドセントルを前記レール上で移動させ、前記3次元レーザースキャナーによる前記3次元形状の計測を行ない、
前記3次元レーザースキャナーで計測された前記3次元形状データと、前記トンネルの設計データとに基づいて前記トンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成する、
ことを特徴とするトンネルの出来形管理方法。
【請求項2】
前記管理情報は、前記3次元形状データに基づく前記トンネルの断面図と、前記設計データに基づく前記トンネルの断面図とを比較した画像情報を含む、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネルの出来形管理方法。
【請求項3】
前記トンネルの所定箇所に基準ターゲットを配置し、
前記3次元レーザースキャナーは前記基準ターゲットを計測することで前記トンネルの基準点を取得し、
前記管理情報の生成に先立って、前記トンネルの3次元形状データは、前記3次元レーザースキャナーの機械中心を原点とする機械座標系から前記基準点を原点とする前記トンネルの現地座標系に変換される変換処理がなされる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のトンネルの出来形管理方法。
【請求項4】
掘削されたトンネルの床面に前記トンネルの長手方向に沿って敷設されたレール上に移動可能に配置されたスライドセントルに取り付けられ、二次覆工がなされたのち、前記トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナーと、
前記3次元形状データと、前記トンネルの設計データとに基づいて前記トンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成する情報処理装置と、
を備えることを特徴とするトンネルの出来形管理装置。
【請求項5】
前記スライドセントルは、前記レールの延在方向に沿った長さを有し、
前記3次元レーザースキャナーは、切羽面と反対側に位置する前記スライドセントルの長さ方向の端部に設けられている、
ことを特徴とする請求項4記載のトンネルの出来形管理装置。
【請求項6】
前記3次元レーザースキャナーは複数個設けられ、
前記各3次元レーザースキャナーは、前記トンネルの周壁面をその周方向に沿って分割して計測するように前記スライドセントルに取り付けられている、
ことを特徴とする請求項4または5記載のトンネルの出来形管理装置。
【請求項7】
前記情報処理装置は、前記トンネルの半径方向において前記スライドセントルの型枠部材の内側に配置されている、
ことを特徴とする請求項4記載のトンネルの出来形管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳地などにおけるトンネルの出来形管理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から山岳地の岩盤を掘削して車両や鉄道が通る空間を構築するためにトンネル工事が行われている。
この場合、3次元レーザースキャナーを用いて掘削後あるいは一次覆工後のトンネルの3次元形状を計測し、その計測結果からトンネルの断面形状を演算し、計測された断面形状と設計された断面形状とを比較してトンネルの出来形を評価し、その評価結果に基づいて掘削作業の修正を行なうなどしてトンネルの施工を管理することが開示されている(特許文献1参照)。
また、一次覆工後に掘削した空間内にアーチ状のコンクリート(二次覆工)を構築し、3次元レーザースキャナーによりトンネルの3次元形状を計測し、その計測結果からトンネルの出来形を評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなトンネルの3次元形状の計測に際しては、作業員が手作業で3次元レーザースキャナーを架台と共に運搬してトンネルの坑内に配置したり、あるいは、手作業で3次元レーザースキャナーを搭載した台車を移動させ配置したり、3次元レーザースキャナーを搭載した車両(自動車)を作業員が手作業で操縦して移動させ配置したりしていることから、架台や台車あるいは車両といった設備が必要となり、それらの設備を取り扱う手間がかかる不利がある。
また、作業員が3次元レーザースキャナーを手作業で配置するために、トンネル坑内の現場で長時間にわたって作業する必要があるため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたもので、本発明の目的は、設備コストの低減を図ると共に、省人化および作業効率の向上を図り、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利なトンネルの出来形管理方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、トンネルの床面に前記トンネルの長手方向に沿って敷設されたレール上に移動可能にスライドセントルを配置し、前記トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナーを前記スライドセントルに取り付け、二次覆工がなされたのち、前記スライドセントルを前記レール上で移動させ、前記3次元レーザースキャナーによる前記3次元形状の計測を行ない、前記3次元レーザースキャナーで計測された前記3次元形状データと、前記トンネルの設計データとに基づいて前記トンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記管理情報は、前記3次元形状データに基づく前記トンネルの断面図と、前記設計データに基づく前記トンネルの断面図とを比較した画像情報を含むことを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記トンネルの所定箇所に基準ターゲットを配置し、前記3次元レーザースキャナーは前記基準ターゲットを計測することで前記トンネルの基準点を取得し、前記管理情報の生成に先立って、前記トンネルの3次元形状データは、前記3次元レーザースキャナーの機械中心を原点とする機械座標系から前記基準点を原点とする前記トンネルの現地座標系に変換される変換処理がなされることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、掘削されたトンネルの床面に前記トンネルの長手方向に沿って敷設されたレール上に移動可能に配置されたスライドセントルに取り付けられ、二次覆工がなされたのち、前記トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナーと、前記3次元形状データと、前記トンネルの設計データとに基づいて前記トンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成する情報処理装置と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記スライドセントルは、前記レールの延在方向に沿った長さを有し、前記3次元レーザースキャナーは、切羽面と反対側に位置する前記スライドセントルの長さ方向の端部に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記3次元レーザースキャナーは複数個設けられ、前記各3次元レーザースキャナーは、前記トンネルの周壁面をその周方向に沿って分割して計測するように前記スライドセントルに取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記情報処理装置は、前記トンネルの半径方向において前記スライドセントルの型枠部材の内側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、二次覆工を行なうために使用される既存の移動式型枠であるスライドセントルを利用して3次元レーザースキャナーを配置するため、従来のように架台や台車あるいは車両といった設備を設ける必要がなく、また、3次元レーザースキャナーと設備の配置作業やそれらの撤去作業が不要となるため、設備コストの低減、省人化、作業効率の向上を図る上で有利となる。
また、3次元レーザースキャナーが二次覆工を行なうために使用される既存のスライドセントルに搭載されているため、スライドセントルがレール上を移動する際に同時にトンネルの3次元形状が計測できることから、3次元レーザースキャナーと設備の配置作業やそれらの撤去作業のために作業員がトンネル坑内の現場で長時間にわたって作業する必要がないため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、管理情報は、3次元形状データに基づくトンネルの断面図と、設計データに基づくトンネルの断面図とを比較した画像情報を含むものとしたので、それら2つの断面図を比較することでトンネルの施工の品質管理を的確に行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、管理情報の生成に先立って、トンネルの3次元形状データは、3次元レーザースキャナーの機械中心を原点とする機械座標系から基準ターゲットに基づいて取得された基準点を原点とするトンネルの現地座標系に変換される変換処理がなされるようにしたので、基準ターゲットを配置するといった簡単な作業でトンネルの3次元形状データを的確に取得する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、3次元レーザースキャナーは、切羽面と反対側に位置するスライドセントルの長さ方向の端部に設けられているので、3次元レーザースキャナーによるトンネルの3次元形状の計測を的確に行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、各3次元レーザースキャナーがトンネルの周壁面をその周方向に沿って分割して計測するので、周壁面の全周にわたって3次元形状データの計測をきめ細かく正確に行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、トンネルの壁面の一部が落下しても、情報処理装置を取り扱う作業者の作業員は、型枠部材で保護されるため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態に係るトンネルの出来形管理方法が適用されるトンネルの正面断面図であり、スライドセントルを用いて二次覆工のコンクリートが打設された状態を示す。
【
図3】本実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】トンネルの基準断面図と実測断面図とを重ね合わせて表示した管理情報の一例を示す説明図である。
【
図5】本実施の形態に係るトンネルの出来形管理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置と共に、出来形管理方法について図面を参照して説明する。
まず、山岳地における一般的なトンネルの施工について説明する。
山岳地においては、発破工法や機械工法などの従来公知のさまざまな工法によってトンネルの掘削が行われる。
例えば、発破工法の場合には、発破作業終了後、現場作業員によりバックホウや削岩機を用いた掘削作業が行われ、発破作業および掘削作業によって発生した掘削ずりはホイールローダやダンプトラックなどの重機によりトンネルの坑外に搬出される。
掘削ずりの搬出後、鋼製支保工の建込みがなされ、ついで、切羽面近傍のトンネルの周壁面およびトンネルの床面に対してコンクリート吹き付け機によりコンクリートの吹付けがなされ、コンクリートによる一次覆工がなされる。
次に、ロックボルト挿通孔が周壁面に削孔されたのち、ロックボルト挿通孔にロックボルトが打設され地山の安定化が図られる。
また、トンネルが所定の長さ分掘削される毎に、トンネルの床面にレールが敷設され、移動式型枠であるスライドセントルをレール上で移動させ、周壁面に対向してスライドセントルを配置し、周壁面とスライドセントルとの間にコンクリートを打設することで覆工作業が行われ、コンクリートによる二次覆工がなされる。
このようなトンネルの掘削作業と覆工作業が繰り返してなされることでトンネルが施工されていく。
以下では、トンネルの掘削を発破工法を用いて行なう場合について説明するが、トンネルの掘削を機械工法などの発破工法以外の工法によって行なう場合についても本発明は無論適用可能である。
【0009】
トンネルの出来形管理は、トンネルの掘削作業後、一次覆工後および二次覆工後においてそれぞれトンネルの3次元形状を計測し、計測したトンネルの3次元形状に基づいてトンネルの出来形を評価することによってなされる。
本実施の形態では、掘削作業後、一次覆工後のトンネルの出来形管理については、従来技術と同様に、人手を用いて3次元レーザースキャナーを運搬設置してトンネルの3次元形状を計測することでなされる。一方、二次覆工後のトンネルの出来形管理については、本発明が適用され、スライドセントルに搭載した3次元レーザースキャナーを利用してトンネルの3次元形状を計測する。
【0010】
図1、
図2、
図3に示すように、本実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置10(以下単に出来形管理装置10という)は、スライドセントル12に取り付けられた3次元レーザースキャナー14と、情報処理装置16(コンピュータ)とを含んで構成されている。
図1、
図2に示すように、スライドセントル12は、地山1に掘削されたトンネル2の床面2Cにトンネル2の長手方向に沿って敷設されたレール4上に移動可能に配置されるものであり、スライドセントル12は、レール4の延在方向に沿った長さと、レール4の延在方向と直交する幅とを有している。
スライドセントル12は、台車部18と、型枠部材20と、ジャッキ22とを含んで構成されている。
台車部18は、レール4上を走行する複数の車輪1802と、正面から見て門型を呈し、複数の車輪1802を支持する台車本体1804とを備えている。
台車本体1804は、正面から見て左右両側に位置する一対の側面部1804Aと、一対の側部の上端を接続する上面部1804Bとを備えている。
型枠部材20は、トンネル2の天端に対向する天端部2002と、天端部2002の両側にヒンジ2006を介して連結されトンネル2の側部に対向する一対の側部2004とを備えている。
ジャッキ22は、台車本体1804の上面部1804Bと型枠部材20の天端部2002との間に設けられた複数の天端側ジャッキ2202と、台車本体1804の一対の側面部1804Aと型枠部材20の一対の側部2004との間に設けられた複数の側部側ジャッキ2204とを備えている。
各天端側ジャッキ2202および各側部側ジャッキ2204が伸縮することで型枠部材20の天端部2002および一対の側部2004はトンネル2の半径方向に拡縮する。
すなわち、各ジャッキ22が伸長することによって、型枠部材20とトンネル2の天端および両側の側部との間に二次覆工のコンクリート6を打設するアーチ状の打設空間が形成される。
また、打設空間に打設されたコンクリート6の硬化後、各ジャッキ22が収縮することで型枠部材20は打設されたコンクリート6から脱型される。
型枠部材20が脱型されることで、スライドセントル12はレール4上で移動可能となる。
なお、トンネル2の二次覆工を行なう際、スライドセントル12は、切羽面2Aから300m以上離間した箇所に配置されている。
【0011】
3次元レーザースキャナー14は、切羽面2Aとは反対側に位置するスライドセントル12の長さ方向の端部に設けられている。
本実施の形態では、3次元レーザースキャナー14は、第1、第2、第3の3次元レーザースキャナー14A、14B、14Cで構成され、各3次元レーザースキャナー14A、14B、14Cは、トンネル2の周壁面2Bをその周方向に沿って分割して計測するようにスライドセントル12に取り付けられている。
第1の3次元レーザースキャナー14Aは、切羽面2Aと反対側に位置する上面部1804Bの端面で上面部1804Bの幅方向の中央箇所にブラケット15を介して着脱可能に取り付けられ、周壁面2Bの周方向のうち天端部分を計測するように設けられている。
第2、第3の3次元レーザースキャナー14B、14Cは、切羽面2Aと反対側に位置する一対の側面部1804Aの端面で側面部1804Aの長手方向(上下方向)の中央箇所にブラケット15を介して着脱可能に取り付けられ、周壁面2Bの周方向のうち天端部分を除く両側部を計測するように設けられている。
3次元レーザースキャナー14は、水平方向および垂直方向にレーザー光線を走査させ、レーザー光線が照射されたレーザー照射点からの反射光を受光することで、レーザー光線の水平角および鉛直角と、3次元レーザースキャナー14の中心点からレーザー照射点までの距離とからなるデータを取得し、それらデータから座標値(x,y,z)で表現される直交座標系のトンネル2の3次元形状データ(点群データともいう)を生成するものである。
本実施の形態では、3次元レーザースキャナー14は、トンネル2の周壁面2Bの3次元形状データを計測するものである。
なお、3次元レーザースキャナー14は、トンネル2の周壁面2Bの全周にわたって3次元形状データを計測できればよく、3次元レーザースキャナー14の数は1個でもかまわない。
ただし、3次元レーザースキャナー14の計測範囲が限られている場合は、本実施の形態のように複数の3次元レーザースキャナー14のそれぞれによってトンネル2の周壁面2Bをその周方向に沿って分割して計測するようにすると、トンネル2の周壁面2Bの全周にわたって3次元形状データの計測をきめ細かく正確に行なう上で有利となる。
また、使用する3次元レーザースキャナー14の数は3個に限定されず、2個であっても4個以上であってもよいことは無論である。
3次元レーザースキャナー14は、自身の中心位置を機械座標の原点として備えており、3次元レーザースキャナー14で計測された3次元形状データは、後述する情報処理装置16によって、予め設定されたトンネル2の基準点を現地座標の原点とする3次元形状データに変換される。
本実施の形態では、例えば発破や重機による掘削作業などによって位置が変動しないトンネル2の箇所、例えば、スライドセントル12よりも後方に離間した箇所であるトンネル2の周壁面2Bや床面2Cに基準ターゲット24を配置しておく。
そして、3次元レーザースキャナー14は、基準ターゲット24を計測することで上記のトンネル2の基準点、言い換えると、トンネル2の現場座標の原点を取得する。
基準ターゲット24は、3次元レーザースキャナー14から照射されるレーザー光線を3次元レーザースキャナー14に向けて反射するように構成されている。
【0012】
図3に示すように、情報処理装置16は、何れも不図示のCPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、入出力インターフェースに加えて、入力装置26、出力装置28、外部記憶装置30を含んで構成されている。
ROMは所定の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は、後述する記憶部32Aを構成すると共に、座標変換部32B、断面図生成部32C、管理情報生成部32Dを実現するための制御プログラムを格納している。
入出力インターフェースは、3次元レーザースキャナー14、入力装置26、出力装置28とのインターフェースを取るものである。
入力装置26は、情報処理装置16を取り扱う作業員(操作者)による操作入力を受け付けるものであり、キーボード、マウスを備えている。
出力装置28は、情報を出力するものであり、ディスプレイ、プリンタを備えている。
外部記憶装置30は、情報を記憶するものであり、外付けのハードディス装置や外付けのSSD(ソリッドステートドライブ装置)、あるいは、メモリカードやUSBメモリなどの半導体記録媒体、あるいは、DVDなどの光ディスク記録媒体などを含む。
なお、情報処理装置16は、トンネル2の半径方向において型枠部材20の内側に配置されている。
【0013】
記憶部32Aは、施工するトンネル2の設計データを記憶するものである。
設計データは、掘削作業後(一次覆工前)の段階のトンネル2の断面形状を示すトンネル2の基準断面図(以下設計断面図という)、一次覆工のコンクリートの厚さ、二次覆工のコンクリート6の厚さなどの施工するトンネル2の形状を規定する様々な設計データを含む。
【0014】
CPUがハードディスク装置の制御プログラムを実行することにより、座標変換部32B、断面図生成部32C、管理情報生成部32Dが実現される。
座標変換部32Bは、3次元レーザースキャナー14から供給される、3次元レーザースキャナー14の機械中心を原点とする機械座標の3次元形状データを、トンネル2の基準点を現地座標の原点とする3次元形状データに変換するものである。
【0015】
断面図生成部32Cは、座標変換部32Bから供給されるトンネル2の現地座標で表現される3次元形状データに基づいてトンネル2の断面形状を示すトンネル2の実測断面図を生成するものである。
トンネル2の実測断面図は、例えば、入力装置26から入力されたトンネル2の長手方向の位置に対応する位置に対応して生成される。
【0016】
管理情報生成部32Dは、断面図生成部32Cで生成された実測断面図と、設計データとに基づいて管理情報を生成するものである。
設計データは、掘削後のトンネルの設計断面を示す設計断面図、一次覆工のコンクリートの厚さ、二次覆工のコンクリート6の厚さなどを含んでいる。
管理情報生成部32Dは、設計断面図に対して、一次覆工のコンクリートの厚さを加味することで、一次覆工後におけるトンネル2の断面形状を示す第1基準断面図を生成することができる。
また、管理情報生成部32Dは、設計断面図に対して、一次覆工のコンクリートの厚さと二次覆工のコンクリートの厚さを加味することで、二次覆工後におけるトンネル2の断面形状を示す第2基準断面図を生成することができる。
すなわち、設計断面図、第1、第2基準断面図は、設計データに基づいて生成されるトンネルの断面図である。
【0017】
例えば、
図4に示すように、管理情報MIは、実線で示す第2基準断面
図34(以下、設計断面図および第1基準断面図も符号34として説明する)と、二点鎖線で示す実測断面
図36とを比較した画像情報として生成される。
管理情報MIは、出力装置28であるディスプレイによって画像表示され、あるいは、プリンタによって印刷出力される。
画像表示あるいは印刷出力された管理情報MIを視認することで二次覆工後の掘削されたトンネル2の断面形状(輪郭)と、設計されたトンネル2の断面形状(輪郭)との差異やずれを確認することができる。
また、管理情報生成部32Dは、上記の画像情報とは別に、管理情報MIとして、第2基準断面
図34で示されるトンネル2の断面形状と、実測断面
図36で示されるトンネル2の断面形状とを比較して評価する様々な評価データを演算することが可能である。
なお、本実施の形態では、管理情報MIは、掘削作業後、一次覆工後および二次覆工後のトンネル2の出来形管理を行なうために用いることができればよく、本実施の形態で示された画像情報に限定されるものではなく、管理情報MIの構成や表示形態として従来公知の様々なものが採用可能である。
【0018】
詳細に説明すると、二次覆工が終了した段階において、トンネル2の断面形状を計測することで、以下のような評価データ(管理情報MI)に基づいてトンネル2の出来形を評価、確認することができる。
例えば、第2基準断面
図34で示されるトンネル2の断面形状の中心軸と二次覆工後の実測断面図で示されるトンネル2の断面形状の中心軸とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算、評価することで、トンネル2の掘削が設計データ通り行われているか評価することができる。
また、第2基準断面
図34で示されるトンネル2の断面形状と、実測断面
図36で示される二次覆工後のトンネル2の断面形状とのずれ量とをトンネル2の周方向に沿って評価データ(管理情報MI)として演算、評価することで、トンネル2の掘削が設計データ通り行われているか評価することができる。
また、第2基準断面
図34で示されるトンネル2の断面の面積と、実測断面
図36で示される二次覆工後のトンネル2の断面の面積とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算することで、トンネル2の掘削が設計データ通り行われているか評価することができる。
【0019】
なお、本実施の形態では、掘削作業が終了した段階において、および、一次覆工が終了した段階において、従来技術と同様にトンネル2の坑内において不図示の3次元レーザースキャナーを手作業で運搬しトンネル2の坑内の適宜箇所に設置すると共に、設置した3次元レーザースキャナーによってトンネル2の断面形状を計測し、その計測結果を情報処理装置16に入力することで、掘削作業後および一次覆工後のトンネル2の出来形の管理をそれぞれ行なう場合について説明する。
すなわち、以下のような評価データ(管理情報MI)を演算し、次の掘削作業の修正を図る場合について説明する。
例えば、掘削作業後、設計断面
図34で示されるトンネル2の断面形状の中心軸と実測断面
図36で示されるトンネル2の断面形状の中心軸とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算することで、そのずれ量に基づいて掘削作業の修正を行なうことができる。
また、一次覆工後、第1基準断面
図34で示されるトンネル2の断面形状の中心軸と実測断面
図36で示されるトンネル2の断面形状の中心軸とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算することで、そのずれ量に基づいて掘削作業の修正を行なうことができる。
【0020】
また、設計断面
図34あるいは第1基準断面
図34で示されるトンネル2の断面形状と実測断面
図36で示されるトンネル2の断面形状とのずれ量とをトンネル2の周方向に沿って評価データ(管理情報MI)として演算することで、トンネル2の掘削が不足している箇所あるいは掘削が過剰である箇所を特定し、掘削作業の修正を行なうことができる。
【0021】
また、設計断面
図34あるいは第1基準断面
図34で示されるトンネル2の断面の面積と実測断面
図36で示されるトンネル2の断面の面積とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算することで、トンネル2の掘削が過剰あるいは過少であるかを判定し、その判定結果に基づいて掘削作業の修正を行なうことができる。
掘削作業の修正とは、具体的には、重機を用いた追加の掘削作業、および、次回の発破工程における削孔パターンの修正、装薬孔の増減、装薬孔に装填する爆薬の量の増減などである。
なお、一次覆工後において、上記掘削作業の修正を行なうために一次覆工のコンクリートと共に地山を部分的に掘削した場合は、その部分について一次覆工をやり直すことになる。
また、上述した3次元レーザースキャナーを手作業で運搬、設置して掘削作業後あるいは一次覆工後のトンネル2の3次元形状を計測し、その計測結果から評価データ(管理情報MI)を生成して掘削作業後あるいは一次覆工後のトンネル2の出来形の評価を行ない、掘削作業の修正を行なう一連の作業については従来技術と同様である。
【0022】
次に、
図5のフローチャートを参照して本実施の形態の出来形管理方法の一例について説明する。
まず、発破や重機による切羽面2Aの掘削を行ない、掘削ずりの搬出を行なう(ステップS10)。
次いで、従来と同様に不図示の3次元レーザースキャナーを手作業により運搬し、トンネル2の坑内の適宜箇所に設置し、掘削後のトンネル2の3次元形状の計測を行い(ステップS12)、計測されたトンネル2の3次元形状に基づいて実測断面図と、設計データに基づく設計断面図とが管理情報MIとして生成され(ステップS14)、管理情報MIに基づいてトンネル2の掘削作業後における出来形を評価し、掘削作業の修正の有無を判断し(ステップS16)、必要に応じて掘削作業の修正を行なう(ステップS18)。
【0023】
次に、コンクリート吹付け機によって掘削された切羽面2Aおよび周壁面2Bにコンクリートを吹き付けて一次覆工を行なう(ステップS20)。また、鋼製支保工の建込み、ロックボルトの打設も行なう。
次いで、ステップS14と同様に、不図示の3次元レーザースキャナーを手作業により運搬し、トンネル2の坑内の適宜箇所に設置し、一次覆工後のトンネル2の3次元形状の計測を行い(ステップS22)、計測されたトンネル2の3次元形状に基づいて実測断面図と、設計データに基づく第1基準断面図とが管理情報MIとして生成され(ステップS24)、管理情報MIに基づいてトンネル2の一次覆工後における出来形を評価し、掘削作業の修正の有無を判断し(ステップS26)、必要に応じて掘削作業および一次覆工の修正を行なう(ステップS28)。したがって、この修正作業は、部分的な一次覆工のやり直しなどを含む。
なお、ステップS26において掘削作業の修正が不要であると判断された場合は、ステップS28をスキップし、ステップS30に進む。
なお、ステップS26において掘削作業の修正が不要であると判断された場合は、ステップS22で得られた一次覆工後の実測断面図と、設計データに基づく第2基準断面
図34(すなわち二次覆工後におけるトンネル2の断面形状)とを比較する(演算する)ことにより、以下のステップS32で実施される二次覆工の作業前に、二次覆工コンクリートの厚さを求めることが可能となる。
【0024】
次に、スライドセントル12が一次覆工された箇所の近傍まで移動できるように床面2Cにレール4を敷設し、スライドセントル12を、このスライドセントル12を用いた二次覆工が可能となるように移動させ配置する(ステップS30)。
次に、スライドセントル12の型枠部材20とトンネル2の周壁面2Bとの間に形成された打設空間にコンクリート6を打設して二次覆工を行なう(ステップS32)。
打設されたコンクリート6の硬化後、スライドセントル12を脱型し、スライドセントル12を、3次元レーザースキャナー14によって、二次覆工後の周壁面2Bの計測が可能となるように移動させる(ステップS34)。
そして、3次元レーザースキャナー14を移動させつつ、同時に二次覆工後のトンネル2の3次元形状を計測する(ステップS36)。なお、予め基準ターゲット24がトンネル2に配置されており、計測された3次元形状のデータに基準ターゲット24の位置が現地座標の原点として含まれる。
上記と同様に、3次元レーザースキャナー14によって計測されたトンネル2の3次元形状は、座標変換部32Bで変換され、断面図生成部32Cによって、計測されたトンネル2の3次元形状に基づく実測断面
図36と、記憶部32Aから読み出された設計データに基づく第2基準断面
図34とが管理情報MIとして生成される(ステップS38)。
作業者は、情報処理装置16から出力される管理情報MIに基づいてトンネル2の二次覆工後における出来形の評価を行なう(ステップS40)。
以下、ステップS10に戻って次のスパンの掘削作業、掘削作業の出来形の評価、評価に基づく修正作業、一次覆工、一次覆工の出来形の評価、評価に基づく修正作業、二次覆工、二次覆工の出来形の評価を上述と同様に繰り返して行なうことでトンネル2が順次施工されていく。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トンネル2の床面2Cに敷設されたレール4上に移動可能にスライドセントル12を配置し、3次元レーザースキャナー14をスライドセントル12に取り付け、スライドセントル12をレール4上で移動させ、3次元レーザースキャナー14によって二次覆工後のトンネル2の3次元形状の計測を行ない、3次元レーザースキャナー14で計測された3次元形状データと、トンネル2の設計データとに基づいて二次覆工後のトンネル2の出来形管理を行なうための管理情報MIを生成するようにした。
したがって、二次覆工を行なうために使用される既存のスライドセントル12を利用して3次元レーザースキャナー14を移動させるため、従来のように3次元レーザースキャナーを架台を介してトンネル2の床面2Cに配置したり、3次元レーザースキャナーを搭載した台車を設けて台車をトンネル2内で移動させたり、3次元レーザースキャナーを搭載した車両を作業員が手作業で操縦してトンネル2内で移動させたりする場合に比較して、架台や台車、車両といった設備を設ける必要がなく、また、3次元レーザースキャナーと設備の配置作業やそれらの撤去作業が不要となるため、設備コストの低減、省人化、作業効率の向上を図る上で有利となる。
また、3次元レーザースキャナー14が二次覆工を行なうために使用される既存のスライドセントル12に搭載されているため、スライドセントル2がレール4上を移動する際に同時にトンネル2の3次元形状が計測できることから、3次元レーザースキャナーと設備の配置作業やそれらの撤去作業のために作業員がトンネル2坑内の現場で長時間にわたって作業する必要がないため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利となる。
また、スライドセントル2がレール4上を移動する際に同時に3次元レーザースキャナー14によってトンネル2の3次元形状が計測できることから、トンネル2の3次元形状をトンネル2のトンネル軸方向(トンネル2の長手方向)に沿って連続的に計測できるため、二次覆工後のトンネル2の3次元形状をきめ細かくかつ効率的に計測する上で有利となり、二次覆工後のトンネル2の出来形の評価を効率的に行なう上でも有利となる。
【0026】
また、本実施の形態では、管理情報MIは、3次元形状データに基づくトンネル2の断面図である実測断面
図36と、設計データに基づくトンネル2の断面図(第2基準断面
図34)とを比較した画像情報を含むものとしたので、それら2つの断面図を比較することでトンネル2の施工の品質管理を的確に行なう上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、トンネル2の所定箇所に基準ターゲット24を配置し、3次元レーザースキャナー14は基準ターゲット24を計測することでトンネル2の基準点を取得し、管理情報MIの生成に先立って、トンネル2の3次元形状データは、3次元レーザースキャナー14の機械中心を原点とする機械座標系から基準点を原点とするトンネル2の現地座標系に変換される変換処理がなされるようにした。
したがって、基準ターゲット24を配置するといった簡単な作業でトンネル2の3次元形状データを的確に取得する上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、スライドセントル12は、レール4の延在方向に沿った長さを有し、3次元レーザースキャナー14は、切羽面2Aと反対側に位置するスライドセントル12の長さ方向の端部に設けられているので、3次元レーザースキャナー14によるトンネル2の3次元形状の計測を的確に行なう上で有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、情報処理装置16は、トンネル2の半径方向において型枠部材20の内側に配置されているので、例えば二次覆工後にトンネル2の周壁面2Bの一部が落下しても、情報処理装置16を取り扱う作業者の作業員は、型枠部材20で保護されるため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0030】
1 地山
2 トンネル
2A 切羽面
2B 周壁面
2C 床面
4 レール
6 コンクリート(二次覆工)
10 トンネルの出来形管理装置
12 スライドセントル
14 3次元レーザースキャナー
15 ブラケット
16 情報処理装置
18 台車部
1802 車輪
1804 台車本体
1804A 側面部
1804B 上面部
20 型枠部材
2002 天端部
2004 側部
2006 ヒンジ
22 ジャッキ
2202 天端側ジャッキ
2204 側部側ジャッキ
24 基準ターゲット
26 入力装置
28 出力装置
30 外部記憶装置
32A 記憶部
32B 座標変換部
32C 断面図生成部
32D 管理情報生成部
34 設計断面図(第1基準断面図、第2基準断面図)
36 実測断面図
MI 管理情報