(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154333
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20231012BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20231012BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/1343
G09F9/30 349C
G09F9/30 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063604
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】中村 やよい
(72)【発明者】
【氏名】小林 君平
【テーマコード(参考)】
2H092
2H291
5C094
【Fターム(参考)】
2H092GA14
2H092HA04
2H092JA24
2H092JB52
2H092NA03
2H092PA06
2H092PA08
2H092PA09
2H092PA10
2H092PA11
2H092QA06
2H291FA14Y
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA85Z
2H291FD26
2H291GA17
2H291GA19
2H291HA11
2H291HA15
2H291LA03
2H291PA44
2H291PA62
2H291PA65
5C094DA13
5C094DA15
5C094EA04
5C094EA07
5C094ED15
(57)【要約】
【課題】 表示特性を向上させることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】 表示装置は、複数の画素と、第1方向に隣接する画素の境界を遮光するように構成されたブラックマトリクス26とを含む。ブラックマトリクス26は、画素ごとに開口部30を有する。開口部30は、曲線を含むように構成される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素と、
第1方向に隣接する画素の境界を遮光するように構成されたブラックマトリクスと、
を具備し、
前記ブラックマトリクスは、画素ごとに開口部を有し、
前記開口部は、曲線を含むように構成される
表示装置。
【請求項2】
複数の画素と、
第1方向に隣接する画素の境界を遮光するように構成されたブラックマトリクスと、
を具備し、
前記ブラックマトリクスは、画素ごとに複数の開口部を有し、
前記複数の開口部の各々は、曲線を含むように構成される
表示装置。
【請求項3】
前記開口部は、円、楕円、円弧、又は楕円弧を含む閉曲線で構成される
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記第1方向に直交する第2方向に延びる2個の側部を有し、
前記2個の側部の各々は、曲線を含む
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記側部は、複数の円弧又は楕円弧が接続されて構成される
請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記開口部は、複数の円又は楕円が接続されて構成される
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項7】
第1及び第2基板と、
前記第1及び第2基板間に挟まれた液晶層と、
前記第1基板に設けられた画素電極と、
前記画素電極上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた共通電極と、
をさらに具備し、
前記共通電極は、前記画素電極の上方に配置され、前記第1方向に直交する第2方向に延びるスリットを有し、
前記ブラックマトリクスは、前記第2基板に設けられる
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記スリットは、曲線を含むように構成される
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
第1及び第2基板と、
前記第1及び第2基板間に挟まれた液晶層と、
前記第1基板に設けられた画素電極と、
前記第2基板に設けられた共通電極と、
をさらに具備し、
前記ブラックマトリクスは、前記第2基板と前記共通電極との間に設けられる
請求項1又は2に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末などに搭載された表示装置を屋外で用いる場合、太陽光などの外光が表示装置に入射した際に、その反射光により表示装置の視認性が低下する。この屋外での視認性(屋外視認性)を低下させる反射光の種類として、「面での反射」と「光条を伴う反射」との2つが存在する。光条とは、放射状に広がる光の筋である。「面での反射」は、表示装置に用いられるフィルム、ガラス基板、および金属配線等の表面もしくは内部の層の界面における反射を指す。「光条を伴う反射」は、太陽光や電球の光などの強い点光源が表示装置に入射した場合に、その点光源の反射光を中心に干渉した光の筋が放射状に広がる現象を指し、一般的には、十字状に広がることが知られている。また、「光条を伴う反射」の原因は、表示装置を表示面側から観察した場合に露出している(遮蔽されていない)ブラックマトリクスや金属や透明電極による配線のパターンに起因するものであることが知られている。
【0003】
これらの反射は、表示装置の表面への反射防止フィルムの導入と、偏光板および円偏光板の導入とを組み合わせることで効果的に抑制することが可能である。しかしながら、偏光板および円偏光板を導入した場合、液晶表示装置では、垂直配向型を除き、円偏光板により発生する位相差を補償するために製造プロセスが非常に複雑になるという問題がある。有機ELなどの他の表示装置においては、偏光板および円偏光板の導入により、輝度が大きく低下するなどデメリットが大きい。
【0004】
しかしながら、「面での反射」については、反射防止フィルムの導入とともに表示装置の各部材の反射率の低減や屈折率の制御により、その抑制が可能である。
【0005】
一方、「光条を伴う反射」については、幾何学的なパターンによる光の干渉によって発生する現象であるため、反射率の低減や屈折率の制御のみでは抑制できないという問題がある。また、偏光板および円偏光板を導入した垂直配向型液晶表示装置であっても、光が透過する表示状態(白表示)においては、同様に、「光条を伴う反射」が発生してしまうという問題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、表示特性を向上させることが可能な表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によると、複数の画素と、第1方向に隣接する画素の境界を遮光するように構成されたブラックマトリクスとを具備し、前記ブラックマトリクスは、画素ごとに開口部を有し、前記開口部は、曲線を含むように構成される、表示装置が提供される。
【0009】
本発明の第2態様によると、複数の画素と、第1方向に隣接する画素の境界を遮光するように構成されたブラックマトリクスとを具備し、前記ブラックマトリクスは、画素ごとに複数の開口部を有し、前記複数の開口部の各々は、曲線を含むように構成される、表示装置が提供される。
【0010】
本発明の第3態様によると、前記開口部は、円、楕円、円弧、又は楕円弧を含む閉曲線で構成される、第1又は第2態様に係る表示装置が提供される。
【0011】
本発明の第4態様によると、前記開口部は、前記第1方向に直交する第2方向に延びる2個の側部を有し、前記2個の側部の各々は、曲線を含む、第1又は第2態様に係る表示装置が提供される。
【0012】
本発明の第5態様によると、前記側部は、複数の円弧又は楕円弧が接続されて構成される、第4態様に係る表示装置が提供される。
【0013】
本発明の第6態様によると、前記開口部は、複数の円又は楕円が接続されて構成される、第1又は第2態様に係る表示装置が提供される。
【0014】
本発明の第7態様によると、第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板間に挟まれた液晶層と、前記第1基板に設けられた画素電極と、前記画素電極上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた共通電極とをさらに具備し、前記共通電極は、前記画素電極の上方に配置され、前記第1方向に直交する第2方向に延びるスリットを有し、前記ブラックマトリクスは、前記第2基板に設けられる、第1又は第2態様に係る表示装置が提供される。
【0015】
本発明の第8態様によると、前記スリットは、曲線を含むように構成される、第7態様に係る表示装置が提供される。
【0016】
本発明の第9態様によると、第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板間に挟まれた液晶層と、前記第1基板に設けられた画素電極と、前記第2基板に設けられた共通電極とをさらに具備し、前記ブラックマトリクスは、前記第2基板と前記共通電極との間に設けられる、第1又は第2態様に係る表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表示特性を向上させることが可能な表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る液晶表示パネルの平面図である。
【
図3】
図3は、液晶表示パネルのうち共通電極より下の構成を説明する平面図である。
【
図4】
図4は、液晶表示パネルに含まれる共通電極を抽出した平面図である。
【
図5】
図5は、
図2のA-A´線に沿った液晶表示パネルの断面図である。
【
図6】
図6は、
図2のB-B´線に沿った液晶表示パネルの断面図である。
【
図7】
図7は、比較例に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図8】
図8は、実施例1に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図9】
図9は、実施例2に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図10】
図10は、実施例3に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図11】
図11は、実施例4に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図12】
図12は、実施例5に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図13】
図13は、液晶表示装置の表面に発生する十字干渉光の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、ピンホールパターンにおける光の回折を説明する図である。
【
図15】
図15は、ドットパターンにおける光の回折を説明する図である。
【
図16】
図16は、線状パターン及びスリットパターンを説明する図である。
【
図18】
図18は、縦方向及び横方向の線状パターンで発生する光条を説明する図である。
【
図19】
図19は、格子状パターンで発生する光条を説明する図である。
【
図20】
図20は、BMパターンによる光条発生と干渉とを説明する模式図である。
【
図21】
図21は、TFTパターンによる光条発生と干渉とを説明する模式図である。
【
図22】
図22は、比較例に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。
【
図23】
図23は、実施例1に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。
【
図24】
図24は、実施例2に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。
【
図25】
図25は、実施例3に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。
【
図26】
図26は、実施例4に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。
【
図27】
図27は、実施例5に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。
【
図28】
図28は、十字干渉光の輝度変化の比較方法を説明する図である。
【
図29】
図29は、比較例、実施例1~5における十字干渉光の位置と輝度との関係を示すグラフである。
【
図30】
図30は、変形例1に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図31】
図31は、変形例2に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図32】
図32は、変形例3に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図33】
図33は、変形例4に係るブラックマトリクスの構成を説明する平面図である。
【
図34】
図34は、本発明の第3実施形態に係る共通電極の平面図である。
【
図35】
図35は、本発明の第4実施形態に係る液晶表示装置の平面図である。
【
図38】
図38は、第4実施形態に係るブラックマトリクスの平面図である。
【
図39】
図39は、本発明の第5実施形態に係る反射層及びブラックマトリクスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[1] 第1実施形態
[1-1] 液晶表示装置1の全体構成
本実施形態に係る液晶表示装置は、FFS(fringe field switching)型の液晶表示装置である。FFSは、ホモジニアス配向させた液晶をフリンジ電界でスイッチングする方式である。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置1のブロック図である。液晶表示装置1は、液晶表示パネル2、バックライト(照明装置)3、走査線駆動回路4、信号線駆動回路5、共通電極ドライバ6、電圧生成回路7、及び制御回路8を備える。
【0022】
液晶表示パネル2は、複数の画素PXがマトリクス状に配列された画素アレイを備える。液晶表示パネル2には、それぞれがロウ方向に延びる複数の走査線GL1~GLmと、それぞれがカラム方向に延びる複数の信号線SL1~SLnとが配設される。“m”及び“n”はそれぞれ、2以上の整数である。走査線GLと信号線SLとの交差領域には、画素PXが配置される。
【0023】
バックライト3は、液晶表示パネル2の背面に光を照射する面光源である。バックライト3としては、例えば、直下型又はサイドライト型(エッジライト型)のLEDバックライトが用いられる。
【0024】
走査線駆動回路4は、複数の走査線GLに接続される。走査線駆動回路4は、制御回路8から送られる制御信号に基づいて、画素PXに含まれるスイッチング素子をオン/オフするための走査信号を液晶表示パネル2に送る。
【0025】
信号線駆動回路5は、複数の信号線SLに電気的に接続される。信号線駆動回路5は、制御回路8から制御信号、及び表示データを受ける。信号線駆動回路5は、制御信号に基づいて、表示データに対応する複数の階調信号(駆動電圧)を液晶表示パネル2に送る。
【0026】
共通電極ドライバ6は、共通電圧Vcomを生成し、これを液晶表示パネル2内の共通電極に供給する。電圧生成回路7は、液晶表示装置1の動作に必要な各種電圧を生成して各回路に供給する。
【0027】
制御回路8は、液晶表示装置1の動作を統括的に制御する。制御回路8は、外部から画像データDT及び制御信号CNTを受ける。制御回路8は、画像データDTに基づいて、各種制御信号を生成し、これら制御信号を、対応する回路に送る。
【0028】
[1-2] 液晶表示パネル2の構成
図2は、第1実施形態に係る液晶表示パネル2の平面図である。
図3は、液晶表示パネル2のうち共通電極23より下の構成を説明する平面図である。
図4は、液晶表示パネル2に含まれる共通電極23を抽出した平面図である。
図5は、
図2のA-A´線に沿った液晶表示パネル2の断面図である。
図6は、
図2のB-B´線に沿った液晶表示パネル2の断面図である。
図2において、X方向は、走査線が延びるロウ方向であり、Y方向は、X方向に直交するカラム方向である。
図2には、1つの画素に対応する部分を抽出して示しており、実際には、
図2の画素がマトリクス状に複数個配置される。
【0029】
液晶表示パネル2は、スイッチング素子(TFT)及び画素電極などが形成されるTFT基板10と、TFT基板10に対向配置されかつカラーフィルタなどが形成されるカラーフィルタ基板(CF基板という)11とを備える。TFT基板10及びCF基板11の各々は、透明かつ絶縁性を有する基板(例えば、ガラス基板、又はプラスチック基板)から構成される。
【0030】
液晶層12は、TFT基板10及びCF基板11間に挟持及び充填される。具体的には、液晶層12は、TFT基板10、CF基板11、及びシール材(図示せず)によって包囲された表示領域内に封入される。シール材は、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFT基板10又はCF基板11に塗布された後、紫外線照射、又は加熱等により硬化させられる。
【0031】
液晶層12を構成する液晶材料は、印加された電界に応じて液晶分子の配向が操作されて光学特性が変化する。本実施形態では、液晶層12としては、正の誘電率異方性を有するポジ型(P型)のネマティック液晶が用いられる。液晶層12は、初期状態において、水平配向(ホモジニアス配向)される。液晶分子は、無電圧(無電界)時には基板の主面に対してほぼ水平に配向する。電圧印加(電界印加)時には、液晶分子のダイレクタが電界方向に向かって傾く。
【0032】
まず、TFT基板10側の構成について説明する。TFT基板10の液晶層12側には、画素ごとに、スイッチング素子13が設けられる。スイッチング素子13としては、例えばTFT(Thin Film Transistor)が用いられ、またnチャネルTFTが用いられる。TFT13は、走査線GLとして機能するゲート電極と、ゲート電極上に設けられたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に設けられた半導体層15と、半導体層15上に互いに離間して設けられたソース電極17及びドレイン電極18とを備える。
【0033】
TFT基板10上には、X方向に延びるゲート電極GLが設けられる。ゲート電極GLは、走査線として機能する。X方向に並んだ1行分の複数の画素は、1本の走査線に共通接続される。TFT基板10及びゲート電極GL上には、ゲート絶縁膜(絶縁層ともいう)14が設けられる。
【0034】
ゲート絶縁膜14上には、画素ごとに、半導体層15が設けられる。半導体層15としては、例えばアモルファスシリコンが用いられる。TFT13の種類については特に制限されない。本実施形態では、エッチングストッパー型TFTを例に挙げて説明する。
図5は、エッチングストッパー型TFTを示している。エッチングストッパー型TFTでは、半導体層15上に保護膜16(例えばシリコン酸化膜)を形成し、この保護膜16をエッチングストッパーとしてソース電極及びドレイン電極が加工される。なお、平面図において、保護膜16の図示を省略している。
【0035】
半導体層15及びゲート絶縁膜14上には、Y方向において互いに離間したソース電極17及びドレイン電極18が設けられる。ソース電極17及びドレイン電極18は、半導体層15に部分的に重なる。なお、ソース電極17と半導体層15との間には、これらの電気的接続を良好にするために、高濃度のn型不純物が導入されたn+型半導体層を設けてもよい。同様に、ドレイン電極18と半導体層15との間には、n+型半導体層を設けてもよい。
【0036】
ゲート絶縁膜14上には、Y方向に延びる信号線SLが設けられる。例えば、信号線SLは、画素の中央部で折れ曲がったくの字形状を有する。信号線SLは、直線状に構成してもよい。信号線SLは、X方向に隣接する2個の画素の境界部分に配置される。Y方向に並んだ1列分の複数の画素は、1本の信号線SLに共通接続される。ソース電極17は、信号線SLに電気的に接続されるとともに、ソース線SLからX方向に延びる。
【0037】
ソース電極17、ドレイン電極18、信号線SL、及びゲート絶縁膜14上には、絶縁層19が設けられる。
【0038】
絶縁層19上には、Y方向に延びる画素電極20が設けられる。画素電極20は、画素ごとに設けられ、おおよそ画素領域全体を覆うサイズを有する。本実施形態では、画素電極20は、画素の中央部で折れ曲がったくの字形状を有する。画素電極20は、直線状に構成してもよい。すなわち、画素電極20は、長方形で構成してもよい。
【0039】
絶縁層19内には、画素電極20とドレイン電極18とを電気的に接続するコンタクト21が設けられる。ドレイン電極18は、Y方向に延びる凸部を有する。コンタクト21は、ドレイン電極18の凸部上に設けられる。
【0040】
画素電極20及び絶縁層19上には、絶縁層22が設けられる。
【0041】
絶縁層22上には、共通電極23が設けられる。共通電極23は、複数の画素に共通に設けられる。共通電極23は、画素ごとに複数のスリット24を有する。本実施形態では、画素ごとに6個のスリット24が設けられる構成例を示している。スリット24の数は、1個でもよいし、2個以上であってもよい。複数のスリット24は、画素電極20の上方に配置され、平面視において画素電極20に重なるように配置される。複数のスリット24は、等間隔に配置される。スリット24は、画素電極20と同様に、Y方向に延びる。本実施形態では、スリット24は、画素の中央部で折れ曲がったくの字形状を有する。また、本実施形態では、スリット24は、両端部がより角度が大きく折れ曲がるように構成される。スリット24は、直線状に構成してもよい。すなわち、スリット24は、長方形で構成してもよい。
【0042】
スリット24のY方向の長さは、画素電極20のY方向の長さより若干短く設定される。画素電極20のX方向における右側の端部は、最も右側に配置されたスリット24の端部より若干内側に配置される。画素電極20のX方向における左側の端部は、最も左側に配置されたスリット24の端部より若干内側に配置される。
【0043】
共通電極23及び絶縁層22上には、液晶層12の配向を制御する配向膜(図示せず)が設けられる。配向膜は、液晶層12の初期状態において、液晶分子を水平に配向させる。また、配向膜は、液晶分子の長軸がY方向を向くようにラビング処理される。
【0044】
次に、CF基板11側の構成について説明する。CF基板11の液晶層12側には、カラーフィルタ25が設けられる。カラーフィルタ25は、赤フィルタ、緑フィルタ、及び青フィルタを備える。一般的なカラーフィルタは光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)で構成される。隣接したR、G、Bの三色のセットが表示の単位(画素)となっており、1つの画素中のR、G、Bのいずれか単色の部分はサブピクセル(サブ画素)と呼ばれる最小駆動単位である。TFT13及び画素電極20は、サブピクセルごとに設けられる。本明細書の説明では、画素とサブ画素との区別が特に必要な場合を除き、サブ画素を画素と呼ぶものとする。
【0045】
カラーフィルタの配列としては、ストライプ配列、モザイク配列、及びデルタ配列を含む任意の配列を適用可能である。
図15及び
図16では、緑フィルタ25G、及び青フィルタ25Bを例示している。赤フィルタ、緑フィルタ、及び青フィルタは、隣接するもの同士で接している。本明細書では、赤フィルタ、緑フィルタ、及び青フィルタを特に区別する必要がない場合、単にカラーフィルタ25と表記する。
【0046】
CF基板11の液晶層12側には、遮光層(ブラックマトリクス、ブラックマスクともいう)26が設けられる。ブラックマトリクス26は、画素の境界に配置される。ブラックマトリクス26は、平面視において、信号線SL、走査線GL、及びTFT13(特に半導体層15を含む)を覆うように構成される。また、ブラックマトリクス26は、赤フィルタ、緑フィルタ、及び青フィルタのそれぞれの境界に配置される。ブラックマトリクス26は、画素の境界で発生する不要な光を遮光し、コントラストを向上させる機能を有する。
【0047】
なお、
図5及び
図6では、ブラックマトリクス26の概略的な配置を示している。本実施形態では、ブラックマトリクス26を特有の構成にしている。ブラックマトリクス26の詳細な構成については後述する。
【0048】
カラーフィルタ25上には、液晶層12の配向を制御する配向膜(図示せず)が設けられる。配向膜は、液晶層12の初期状態において、液晶分子を水平に配向させる。また、配向膜は、液晶分子の長軸がY方向を向くようにラビング処理される。
【0049】
TFT基板10の液晶層12と反対側には、偏光板27が設けられる。CF基板11の液晶層12と反対側には、偏光板28が設けられる。偏光板27及び偏光板28は、直線偏光板で構成され、互いに直交する透過軸及び吸収軸を有する。偏光板27及び偏光板28の透過軸は、液晶表示装置1の表示モード(ノーマリーブラックモード又はノーマリーホワイトモード)に応じて適宜設定される。偏光板27及び偏光板28は、例えば、互いの透過軸が直交するように、すなわち直交ニコル状態で配置される。
【0050】
(材料の例示)
ゲート電極GL、ソース電極17、ドレイン電極18、及び信号線SLとしては、例えば、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、及びタングステン(W)のいずれか、又はこれらの1種類以上を含む合金等が用いられる。
【0051】
画素電極20、コンタクト21、及び共通電極23は、透明電極で構成され、例えばITO(インジウム錫酸化物)で構成される。
【0052】
ゲート絶縁膜14、絶縁層19、及び絶縁層22としては、透明な絶縁材料が用いられ、例えばシリコン窒化物(SiN)が用いられる。
【0053】
[1-3] ブラックマトリクス26の構成
次に、ブラックマトリクス26の構成について説明する。ブラックマトリクス26は、画素ごとに1個又は複数個の開口部30を有し、各開口部30は、曲線を含むように構成される。具体的には、開口部30は、円、楕円、円弧、又は楕円弧を含む閉曲線で構成される。望ましくは、開口部30は、直線を含まないように構成される。本実施形態において、曲線は、意図して設計された曲線を意味する。曲線には、設計(マスクパターンを含む)されたパターンに含まれる直線や角部が、プロセスにおけるパターンの加工で部分的に曲線になったものは含まれない。
【0054】
ブラックマトリクス26の開口部30を構成する円、楕円、円弧、及び楕円弧の直径または長径は、画素の長辺(Y方向の長さ)以下に設定される。直径または長径を小さくすることで、光条を伴う反射光をより抑制することができる。
【0055】
(比較例)
まず、比較例に係るブラックマトリクス26の構成について説明する。
図7は、比較例に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
図7には、5個の画素が配置された領域におけるブラックマトリクス26を示している。
図7において、ブラックマトリクス26に斜線ハッチングを付している。
【0056】
ブラックマトリクス26は、平面視において、信号線SL、走査線GL、及びTFT13を覆うように構成される。ブラックマトリクス26は、画素ごとに、開口部30を有する。開口部30の平面形状は、画素電極20の平面形状とおおよそ同じである。開口部30は、画素の中央部で折れ曲がったくの字形状を有する。
【0057】
比較例では、ブラックマトリクス26は、ほぼ全体が直線で構成される。ブラックマトリクス26は、光条を伴う反射光を抑制するための形状を有していない。
【0058】
以下に、実施例1~5に係るブラックマトリクス26の構成について説明する。
【0059】
(実施例1)
図8は、実施例1に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0060】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、1個の開口部30を有する。開口部30の平面形状は、複数の円弧(又は複数の楕円弧)が接続されて構成される。また、開口部30は、画素電極20(又はスリット24)が延びる方向(本実施例では、くの字)に沿って配置された複数の円(例えば3個の円)が順に接続されて構成される。開口部30に含まれる円の数は、2個以上であれば任意に設定可能である。なお、複数の円は、Y方向に沿って配置してもよい。換言すると、開口部30は、Y方向に延びる2個の側部を有し、2個の側部の各々は、複数の円弧又は楕円弧が接続されて構成される。
【0061】
実施例1では、ブラックマトリクス26は、直線部分を含んでいない。よって、ブラックマトリクス26は、光条を伴う反射光を抑制することが可能である。
【0062】
(実施例2)
図9は、実施例2に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0063】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、複数の開口部30を有する。本実施例では、ブラックマトリクス26は、画素ごとに、3個の開口部30を有する。開口部30の数は、2個以上であれば任意に設定可能である。開口部30の平面形状は、円である。3個の開口部30は、画素電極20が延びる方向に沿って配置される。
【0064】
(実施例3)
図10は、実施例3に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0065】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、複数の開口部30を有する。本実施例では、ブラックマトリクス26は、画素ごとに、3個の開口部30を有する。開口部30の平面形状は、円である。3個の開口部30は、Y方向に並んで配置される。すなわち、3個の開口部30は、画素電極20が延びる方向とずれて配置される。
【0066】
(実施例4)
図11は、実施例4に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0067】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、1個の開口部30を有する。開口部30の平面形状は、複数の円弧(又は複数の楕円弧)が接続されて構成される。換言すると、開口部30は、画素電極20が延びる方向に沿って配置された複数の円(例えば3個の円)が順に接続されて構成される。開口部30に含まれる円の数は、2個以上であれば任意に設定可能である。なお、複数の円は、Y方向に沿って配置してもよい。換言すると、開口部30は、第1方向に凸の複数の第1の円弧と、上記第1方向の反対の第2方向に凸の複数の第2の円弧とが交互に接続されて構成される。
【0068】
実施例1と比べると、実施例4の開口部30は、複数の円の接続部分の幅が広くなっている。
【0069】
(実施例5)
図12は、実施例5に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0070】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、複数の開口部30を有する。本実施例では、ブラックマトリクス26は、画素ごとに、2個の開口部30を有する。開口部30の平面形状は、楕円である。2個の開口部30は、画素電極20が延びる方向に沿って配置される。また、楕円の長軸は、画素電極20が延びる方向に沿って配置される。なお、楕円の長軸は、Y方向に沿って配置してもよい。
【0071】
[1-4] 液晶層12の配向
次に、液晶層12の配向について説明する。
【0072】
共通電極23には、共通電極ドライバ6により共通電圧Vcomが印加される。共通電圧Vcomは、例えば0Vである。オフ状態とは、液晶層12に電界が印加されない状態であり、画素電極20には、共通電極23と同じ共通電圧Vcomが印加される。オン状態とは、液晶層12に電界が印加された状態であり、画素電極20には、正電圧が印加される。正電圧は、液晶層の閾値電圧以上に設定される。なお、実際には、画素電極20及び共通電極23間の電界の極性を所定周期で反転させる反転駆動(交流駆動)が行われる。反転駆動を行うことで、液晶が劣化するのを抑制できる。反転駆動の周期は任意に設定可能である。
【0073】
オフ状態において、液晶分子は、初期状態に設定され、すなわち、液晶分子の長軸は、Y方向に向いている。Y方向は、配向膜のラビング方向と同じである。ノーマリーブラックモードを例に説明すると、オフ状態では、液晶表示装置1は、黒を表示する。
【0074】
オン状態において、液晶層12には、共通電極23から画素電極20に向かう電界が印加される。平面視において、液晶分子は、Y方向に対して斜め方向に旋回する。これにより、液晶表示パネル2は、入射光の透過量を制御することができる。すなわち、液晶表示パネル2の透過率を変化させることができる。オン状態では、液晶表示装置1は、カラー表示を行う。
【0075】
[1-5] 十字干渉光について
次に、十字干渉光について説明する。
【0076】
太陽などの強い点光源が映り込む角度で液晶表示装置の画面を見た場合に、液晶表示装置の表面の反射光が十字に見える現象が発生する。この場合、特に、低階調での表示における視認性が低下する。十字の反射光は、虹色で干渉している。この十字の反射光を十字干渉光とよぶ。縦ラインは横方向、横ラインは縦方向のように画素のラインに対し直交する方向に干渉が発生することが判明している。
図13は、液晶表示装置の表面に発生する十字干渉光の一例を示す図である。
【0077】
十字干渉光の発生メカニズムの一例について説明する。点光源入射時の線状パターンの直交方向での光条の発生は、バビネの原理で説明できる。バビネの原理とは、「互いに相補的な(透明部と不透明部とが逆転している)2つの遮蔽が置かれたとき、これによって任意の点に生ずる回折光の振幅の和は、遮蔽が全くないときにその点に生じる振幅に等しい」という原理である。簡単に言い換えると、「ある物体の回折は、その物体と形状が同じで、全く逆の透過率をもつ物体の回折に等しい(同一の回折パターンになる)」という原理とも言える。
【0078】
図14は、ピンホールパターンにおける光の回折を説明する図である。
図15は、ドットパターンにおける光の回折を説明する図である。
【0079】
光がピンホールを通過すると、回折が生じる。また、光がドットパターンを通過すると、回折が生じる。ドットパターンでの回折の位相は、ピンホールパターンでの回折の位相の逆位相になる。ピンホールパターンでの回折とドットパターンでの回折との和は、回折前のパターンと同じになる。
【0080】
図16は、線状パターン及びスリットパターンを説明する図である。
図16において、線状パターンの幅は、スリットパターンの幅と同じである。バビネの原理から、線状パターンにおける光の回折は、同じ幅のスリットパターンにおける光の回折と同じになる。
【0081】
図17は、光条を説明する模式図である。
図17(a)は、入射光の強度分布である。
図17(b)は、スリットパターンにより発生する光条の様子であり、
図17(a)の強度分布を有する光がスリットパターンに入射した場合の光条の様子である。
図17(c)は、光の進行方向であり、紙面の奥から手前に向けて光が進む。光条に付したハッチングは、虹色(図では、赤、黄、緑、青のみ図示)を表している。光条の白抜き部分は、白色光を表している。
【0082】
スリットへの点光源入射時、下記の説明(1)~(3)のように入射位置のスリットと直交する方向で回折光が強め合うため、光条が発生する。線状パターンでも同様である。
(1)入射位置を中心に入射光の強度分布を反映した回折点が連続的に形成される。
図17(b)の複数の丸が回折点を表しており、丸の大きさが光の強度を模式的に表している。
(2)入射位置のスリットと直交する左右方向の線上では、上下対称位置の回折点からの光が同位相となり強め合う。このため、スリット直交方向に光条(明線)が発生する。
図17(b)の実線矢印が上下対称位置の回折点からの光が強め合う様子を表している。
(3)上記の光条上でも各回折点からの距離の違いから位置で位相差による光の強弱にムラがあり、また、波長ごとでも光の強弱が異なる。このため、特に入射光が白色光の場合は、光条は虹色となる。
図17(b)の破線矢印が位相差を有する光を表している。
【0083】
図18は、縦方向及び横方向の線状パターンで発生する光条を説明する図である。
図18(a)が縦方向の線状パターンであり、
図18(b)が横方向の線状パターンである。
【0084】
入射光により発生する光条は、隣接パターンや反射光により発生する光条と互いに干渉する。液晶表示装置や撮像素子などにおいて縦方向及び横方向の線状パターンがある場合、それぞれ直交する方向に光条が発生する。
【0085】
図19は、格子状パターンで発生する光条を説明する図である。線状パターンがミクロ(光源のスポットよりも小さいサイズ)で格子状になっている場合、各方向で複数の光条が発生する。このため、それらの光条が干渉した状態での光条が観測される。この結果、十字干渉光が発生する。
【0086】
図20は、BM(ブラックマトリクス)パターンによる光条発生と干渉とを説明する模式図である。TFT基板には、同じ方向に延びる複数の配線が設けられる。複数の配線は、線状パターンを構成する。CF基板には、同じ方向に延びる複数の遮光層からなるBM(ブラックマトリクス)が設けられる。BMは、線状パターンを構成する。配線とBMとのパターンは、互いに直交する。
図20の矢印は、光路を模式的に表している。
【0087】
液晶表示装置に入射した光は、POL(偏光板)で減衰した後、BMを通過する。この際、横方向の光条(横方向光条(1))が発生する。横方向とは、BMの線状パターンと直交する方向である。BMを通過した光は、TFT基板で反射した後、BMを通過する。この際、横方向の光条(横方向光条(2))が発生し、さらに、横方向光条(2)は横方向光条(1)と干渉する。説明のため、横方向光条(1)及び横方向光条(2)の発生位置と入射光の反射の位置とをずらして図示しているが、実際には平面視においてすべて同じ位置である。このようにして、横方向の光条が発生する。
【0088】
図21は、TFTパターンによる光条発生と干渉とを説明する模式図である。液晶表示装置に入射した光は、POL(偏光板)及びCF(カラーフィルタ)で減衰した後、TFT基板の配線を通過する。この際、縦方向の光条(縦方向光条(1))が発生する。縦方向とは、配線の線状パターンと直交する方向である。TFT基板の配線を通過した光は、TFT構造の下層で反射した後、再度TFT基板の配線を通過する。この際、縦方向の光条(縦方向光条(2))が発生し、さらに、縦方向光条(2)は縦方向光条(1)と干渉する。説明のため、縦方向光条(1)及び縦方向光条(2)の発生位置と入射光の反射の位置とをずらして図示しているが、実際には平面視においてすべて同じ位置である。このようにして、縦方向の光条が発生する。その後、TFT基板の配線を通過した光は、TFT構造内で散乱し、さらにPOL及びCFで減衰した後、液晶表示装置から出射する。
【0089】
最終的に、
図20の横方向光条と
図21の縦方向光条とにより、十字干渉光が発生する。
【0090】
[1-6] 十字干渉光像について
次に、液晶表示装置で観測される十字干渉光像について説明する。前述した比較例、実施例1~5におけるブラックマトリクスを備えた液晶表示装置を製造し、それらの十字干渉光像を観測した。
【0091】
図22は、比較例に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。比較例では、ブラックマトリクスは、線状パターンを含む。また、ブラックマトリクスの開口部から共通電極の線状パターンが露出している。よって、比較例では、十字干渉光が視認される。
【0092】
図23は、実施例1に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。前述したように、実施例1では、ブラックマトリクス26は、直線部分を含んでいない。実施例1では、十字干渉光が弱く、ドット像が弱くなっている。ドット像とは、十字干渉光の周囲に形成される複数のドット状の像である。
【0093】
図24は、実施例2に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。実施例2では、十字干渉光が非常に弱く、ドット像がやや強くなっている。
【0094】
図25は、実施例3に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。実施例3では、十字干渉光が非常に弱く、ドット像が強くなっている。
【0095】
図26は、実施例4に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。実施例4では、十字干渉光がかなり弱く、ドット像が弱くなっている。
【0096】
図27は、実施例5に係る液晶表示装置の十字干渉光像を示す図である。実施例5では、十字干渉光が弱く、ドット像が中程度となっている。
【0097】
以上のように、比較例に対して、各実施例において光条の発生(十字干渉光)を抑制できている。実施例2及び実施例3のような円や楕円のみのパターンはドット像が目立つようになるため、実施例1及び実施例4のように円を接合したパターンにするのがより望ましい。
【0098】
次に、比較例、実施例1~5における十字干渉光の輝度変化を比較した結果について説明する。
図28は、十字干渉光の輝度変化の比較方法を説明する図である。
図28は、センサで取得した光強度を表している。十字干渉光のうち横方向の光条に関して輝度の比較を実施した。縦方向にセンサの10画素分の輝度を平均化した。
【0099】
図29は、比較例、実施例1~5における十字干渉光の位置と輝度との関係を示すグラフである。
図29の横軸が十字干渉光のうち横方向の光条の位置、縦軸が光強度(任意単位)である。
図29の位置は、十字干渉光の中心が横軸の中心に対応する。
【0100】
図29から、実施例1~5は、比較例に比べて、十字干渉光が抑制できていることが理解できる。
【0101】
[1-7] 第1実施形態の効果
以上詳述したように第1実施形態では、液晶表示装置1は、複数の画素PXと、X方向に隣接する画素の境界を遮光するように構成されたブラックマトリクス26とを具備する。ブラックマトリクス26は、画素PXごとに1個又は複数個の開口部30を有し、各開口部30は、曲線を含むように構成される。また、開口部30は、円、楕円、円弧、又は楕円弧を含む閉曲線で構成される。
【0102】
従って第1実施形態によれば、液晶表示装置1に太陽光を含む外光が入射した場合、光条を伴う反射光を抑制することができる。また、十字干渉光(十字反射光)を抑制することができる。これにより、表示特性を向上させることが可能な液晶表示装置1を実現できる。また、屋外での視認性が向上した液晶表示装置1を実現できる。
【0103】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、ブラックマトリクスの他の変形例である。
【0104】
以下に、変形例1~4に係るブラックマトリクス26の構成について説明する。
【0105】
(変形例1)
図30は、変形例1に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0106】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、1個の開口部30を有する。開口部30の平面形状は、長方形の4個の角が丸まった(4個の角が円弧又は楕円弧で構成された)形状を有する。
【0107】
変形例1のように、開口部30が部分的に直線を含んでいてもよい。
【0108】
(変形例2)
図31は、変形例2に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0109】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、複数の開口部30を有する。本変形例では、ブラックマトリクス26は、画素ごとに、3個の開口部30を有する。開口部30の数は、2個以上であれば任意に設定可能である。開口部30の平面形状は、2個の円弧又は楕円弧が直線で接続されて構成される。3個の開口部30は、Y方向に並んで配置される。3個の開口部30は、画素電極20が延びる方向に沿って配置されてもよい。
【0110】
変形例2のように、開口部30が部分的に直線を含んでいてもよい。
【0111】
(変形例3)
図32は、変形例3に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0112】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、複数の開口部30を有する。本変形例では、ブラックマトリクス26は、画素ごとに、3個の開口部30を有する。開口部30の数は、2個以上であれば任意に設定可能である。開口部30の平面形状は、斜め方向に凸の2個の円弧又は楕円弧が4本の直線で接続されて構成される。3個の開口部30は、Y方向に並んで配置される。3個の開口部30は、画素電極20が延びる方向に沿って配置されてもよい。
【0113】
変形例3のように、開口部30が部分的にX方向及びY方向に延びる複数の直線を含んでいてもよい。
【0114】
(変形例4)
図33は、変形例4に係るブラックマトリクス26の構成を説明する平面図である。
【0115】
ブラックマトリクス26は、画素ごとに、1個の開口部30を有する。開口部30の平面形状は、X方向に延びる2個の側部(辺)と、Y方向に延びる2個の側部とを有する四辺形である。Y方向に延びる2個の側部の各々は、同じ方向に凸の円弧又は楕円弧で構成される。X方向に延びる2個の側部は、直線で構成される。
【0116】
変形例4のように、開口部30が部分的に直線を含んでいてもよい。
【0117】
第2実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0118】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、共通電極23が有するスリット24が曲線を含むように構成している。
【0119】
図34は、本発明の第3実施形態に係る共通電極23の平面図である。
図34は、1画素分の共通電極23を抽出して示している。
【0120】
共通電極23は、画素ごとに、複数のスリット24を有する。
図34では、画素ごとに5個のスリット24が設けられる場合を例示している。
【0121】
5個のスリット24は、それぞれがY方向に延び、X方向に並んで配置される。各スリット24は、曲線を含むよう構成され、波形を有する。換言すると、スリット24のY方向に延びる2個の側部の各々は、曲線を含み、波形を有する。望ましくは、スリット24は、直線を含まないように構成される。
【0122】
その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0123】
第3実施形態によれば、共通電極23及びスリット24に起因して発生する光条を伴う反射光を抑制することができる。
【0124】
[4] 第4実施形態
第4実施形態は、垂直配向(VA)型の液晶表示装置の適用例である。また、第4実施形態は、透過表示と反射表示とが可能な半透過型液晶表示装置の適用例である。
【0125】
図35は、本発明の第4実施形態に係る液晶表示装置1の平面図である。
図36は、
図35のA-A´線に沿った液晶表示装置1の断面図である。
図37は、
図35のB-B´線に沿った液晶表示装置1の断面図である。
【0126】
液晶層12としては、負の誘電率異方性を有するネガ型(N型)のネマティック液晶が用いられる。液晶層12は、初期状態において、垂直配向される。液晶層12に電圧(電界)を印加しない時には、液晶分子の長軸(ダイレクタ)は、基板の主面に対してほぼ垂直に配向する。液晶層12に電圧を印加した時には、液晶分子の長軸は、基板の主面に対して水平方向に向かって傾く。
【0127】
TFT基板10の液晶層12側には、画素ごとに、スイッチング素子13が設けられる。スイッチング素子13は、走査線GLとして機能するゲート電極と、ゲート電極上に設けられたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に設けられた半導体層15と、半導体層15上に互いに離間して設けられたソース電極17及びドレイン電極18とを備える。スイッチング素子13の構成は、第1実施形態と同様である。なお、本実施形態では、チャネルエッチ型TFTを例示している。チャネルエッチ型TFTでは、エッチングストッパーを形成せずにソース電極17及びドレイン電極18が加工される。
【0128】
ゲート絶縁膜14上には、ドレイン電極18に接続された接続電極40が設けられる。接続電極40は、ドレイン電極18から画素の中央までY方向に延びる。接続電極40は、透明電極で構成され、例えばITOで構成される。
【0129】
ソース電極17、ドレイン電極18、接続電極40、信号線SL、及びゲート絶縁膜14上には、絶縁層19が設けられる。
【0130】
絶縁層19上には、反射層41が設けられる。反射層41は、外光を反射する。反射層41は、スイッチング素子13(半導体層15を含む)を覆うようにして、X方向に延びる。
図35には、Y方向に並んだ2個の反射層41-1、41-2を示している。添え字付きの参照符号に共通する説明については、添え字を省略して記載する。反射層41としては、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、又はこれらの1種類以上を含む合金等が用いられる。
【0131】
反射層41及び絶縁層19上には、絶縁層42が設けられる。
【0132】
絶縁層42上には、Y方向に延びる画素電極20が設けられる。画素電極20は、長方形を有する。画素電極20は、画素ごとに設けられ、おおよそ画素領域全体を覆うサイズを有する。
【0133】
絶縁層19、40内には、画素電極20と接続電極40とを接続するコンタクト21が設けられる。コンタクト21は、画素の中心に配置される。
【0134】
画素電極20及び絶縁層42上には、液晶層12の配向を制御する配向膜(図示せず)が設けられる。配向膜は、液晶層12の初期状態において、液晶分子を垂直に配向させる。
【0135】
CF基板11の液晶層12側には、カラーフィルタ25が設けられる。カラーフィルタ25は、赤フィルタ25R、緑フィルタ25G、及び青フィルタ25Bを備える。カラーフィルタ25は、例えば、ストライプ配列である。
【0136】
CF基板11の液晶層12側には、ブラックマトリクス26が設けられる。ブラックマトリクス26は、Y方向における画素の境界に配置される。ブラックマトリクス26は、平面視において、信号線SLを覆うように構成される。また、ブラックマトリクス26は、赤フィルタ、緑フィルタ、及び青フィルタのそれぞれの境界に配置される。
【0137】
カラーフィルタ25上には、共通電極23が設けられる。共通電極23は、表示領域全体に平面状に設けられる。
【0138】
共通電極23上には、突起43が設けられる。突起43は、画素の中心に配置される。突起43は、平面視において、コンタクト21に重なるように配置される。突起43は、透明な樹脂で構成される。
【0139】
本実施形態の液晶表示装置1は、マルチドメイン(配向分割)方式が適用され、すなわち、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)モードが適用される。MVAモードでは、1つの画素を複数の領域(ドメイン)に分割し、複数の領域で液晶分子が傾く方向を変える。突起43は、液晶分子が傾く方向を制御する。すなわち、複数の液晶分子は、突起43を中心として放射状に傾く。MVAモードを採用することで、視野角依存性を低減でき、視野角を大きくできる。
【0140】
共通電極23、及び突起43上には、液晶層12の配向を制御する配向膜(図示せず)が設けられる。配向膜は、液晶層12の初期状態において、液晶分子を垂直に配向させる。
【0141】
TFT基板10の液晶層12と反対側には、円偏光板44が設けられる。CF基板11の液晶層12と反対側には、円偏光板45が設けられる。円偏光板44、45の各々は、1/4波長板及び直線偏光板が積層されて構成される。1/4波長板の遅相軸と直線偏光板の透過軸とは、おおよそ45度の角度をなすように設定される。例えば、円偏光板44及び円偏光板45は、互いの透過軸が直交するように、すなわち直交ニコル状態で配置される。
【0142】
図35に示すように、画素領域PAは、画素電極20により規定され、画素電極20が占める領域に対応する。画素電極20と反射層41-1とが重なる領域は、反射領域RA1となる。画素電極20と反射層41-2とが重なる領域は、反射領域RA2となる。画素領域PAのうち、反射領域RA1と反射領域RA2とを合わせた領域が1つの画素における反射領域である。画素領域PAのうち反射層41-1、41-2が設けられていない領域が1つの画素における透過領域TAである。透過領域TAは、バックライトの光を透過し、透過表示を行う。反射領域RA1、RA2は、外光を反射し、反射表示を行う。
【0143】
図38は、第4実施形態に係るブラックマトリクス26の平面図である。ブラックマトリクス26は、X方向に隣接する画素の境界に配置された複数の遮光部材26Aを含む。各遮光部材26Aは、Y方向に延びる。遮光部材26Aは、曲線を含むように構成され、波形を有する。
【0144】
遮光部材26Aは、信号線SLを覆うように配置される。信号線SLは、例えば直線で構成される。なお、信号線SLは、をブラックマトリクス26の遮光部材26Aと同じ平面形状で構成してもよい。すなわち、信号線SLは、曲線を含むように構成され、波形を有していてもよい。
【0145】
第4実施形態によれば、ブラックマトリクス26に起因して発生する光条を伴う反射光を抑制することができる。
【0146】
なお、第4実施形態は、反射層を有しない透過型の液晶表示装置に適用してもよい。この場合、ブラックマトリクス26は、第1乃至3実施形態のいずれの構成を用いてもよい。
【0147】
また、第4実施形態を第1乃至3実施形態に適用してもよい。すなわち、反射層41及び反射領域を含む半透過型をFFSに適用してもよい。この場合、ブラックマトリクス26は、第1乃至4実施形態のいずれの構成を用いてもよい。
【0148】
[5] 第5実施形態
第5実施形態は、反射層41が曲線を含むように構成するようにしている。
【0149】
図39は、本発明の第5実施形態に係る反射層41及びブラックマトリクス26の平面図である。
【0150】
反射層41は、X方向に延びる。反射層41は、曲線を含むように構成される。反射層41は、X方向に延びる2個の側部を有し、画素ごとに、各側部が円弧又は楕円弧を有するように構成される。反射層41のうちブラックマトリクス26と重なる部分は、例えば直線で構成される。
【0151】
第5実施形態によれば、反射層41及びブラックマトリクス26に起因して発生する光条を伴う反射光を抑制することができる。第5実施形態は、半透過型液晶表示装置全般に適用可能である。
【0152】
上記実施形態では、液晶表示装置としてFFS型及びVA型を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。上記実施形態は、TN(twisted nematic)型など他の種類の液晶表示装置にも適用可能である。
【0153】
また、上記実施形態では、表示装置として液晶表示装置を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。上記実施形態は、ブラックマトリクス及び/又は線状パターンを有する配線を備えつつ、液晶表示装置以外の表示装置にも適用可能である。例えば、上記実施形態は、有機EL(electro luminescence)表示装置にも適用可能である。
【0154】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0155】
1…液晶表示装置、2…液晶表示パネル、3…バックライト、4…走査線駆動回路、5…信号線駆動回路、6…共通電極ドライバ、7…電圧生成回路、8…制御回路、10…TFT基板、11…CF基板、12…液晶層、13…スイッチング素子、14…ゲート絶縁膜、15…半導体層、16…保護膜、17…ソース電極、18…ドレイン電極、19…絶縁層、20…画素電極、21…コンタクト、22…絶縁層、23…共通電極、24…スリット、25…カラーフィルタ、26…ブラックマトリクス、27,28…偏光板、30…開口部、40…接続電極、41…反射層、42…絶縁層、43…突起、44,45…円偏光板。