(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154375
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】分析システム、補助分析システム、分析方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/00 20060101AFI20231012BHJP
G01N 25/00 20060101ALI20231012BHJP
G01N 25/14 20060101ALI20231012BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20231012BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20231012BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20231012BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20231012BHJP
H01J 49/04 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H01J49/00 310
G01N25/00 K
G01N25/14 D
G01N1/22 T
G01N30/06 G
G01N30/72 A
G01N27/62 F
G01N27/62 C
H01J49/00 360
H01J49/04 220
H01J49/04 680
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144535
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】111112981
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518005182
【氏名又は名称】▲コウ▼康科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】鍾 禹▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲エン▼安
(72)【発明者】
【氏名】陳 弘仁
【テーマコード(参考)】
2G040
2G041
2G052
【Fターム(参考)】
2G040AA03
2G040AB11
2G040BA02
2G040BA25
2G040CA01
2G040DA06
2G040DA15
2G040DA16
2G040EA06
2G040EC02
2G040ZA03
2G041AA06
2G041CA01
2G041EA02
2G041EA06
2G041GA17
2G041HA01
2G041JA16
2G041JA17
2G041MA04
2G052AA13
2G052AB26
2G052AD02
2G052AD32
2G052AD42
2G052EB01
2G052EB02
2G052EB11
2G052GA24
2G052GA27
2G052HA19
2G052HC11
2G052HC34
2G052JA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、試料の組成を知らなくても、試料に付着した分析対象物質の組成を分析することができる分析システム、補助分析システムおよび分析方法を提供する。
【解決手段】分析方法は、試料上の分析対象成分の組成を分析するために用いられ、第1の加熱ステップ、第1の質量分析ステップ、第2の加熱ステップ、第2の質量分析ステップおよび分析ステップから構成される。第1の加熱工程と第2の加熱工程では、加熱装置を用いて試料の分析対象外領域と分析領域をそれぞれ加熱する。第1の質量分析ステップと第2の質量分析ステップでは、試料を加熱して発生したガスを気相クロマトグラフィー質量分析計に送り込み、分析対象外領域と分析領域それぞれの分析情報を取得する。分析ステップは、分析情報を比較し、分析対象物の少なくとも一部の成分組成を含む分析結果情報を生成する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象物である試料に対して組成分析操作を行うのに用いられ、補助分析システムを備える分析システムであって、
前記補助分析システムは、
処理装置と、
外部に連通するように操作可能である少なくとも1つの可動扉を含むチャンバーと、
前記チャンバー内に配置され、前記試料を載置するための載せ台と、
前記処理装置に電気的に接続される加熱装置と、
前記チャンバーに連通され、流体供給装置と接続するように用いられる、流体搬送モジュールと、
前記流体搬送モジュールに接続される気相クロマトグラフィー質量分析計と、
を備え、
前記処理装置は、前記所定位置における前記試料の組成の少なくとも一部を熱的に剥離させるために、前記載せ台上にセットされた前記試料の所定位置を加熱するように前記加熱装置を制御し、次に、前記流体供給装置が流体を提供するように前記流体搬送モジュールを作動させ、それによって、前記チャンバー内のガスを前記流体に連れて前記気相クロマトグラフィー質量分析計に送入し、送入された流体とガスの混合物を分析して分析情報を生成するように、前記気相クロマトグラフィー質量分析計を作動させるように、サンプリング工程を実行し、
前記処理装置は、前記試料に対して組成分析操作を行うたびに前記所定位置を分析対象外領域および分析対象領域に順序に設定するように、2回前記サンプリング工程を実行してから、2回前記サンプリング工程によって得られた分析情報を、比較して分析結果情報を生成するように設定され、
前記分析結果情報は、前記分析対象領域における前記試料の前記分析対象物の成分の少なくとも一部の組成を含む、
ことを特徴とする分析システム。
【請求項2】
前記分析システムは、画像取得装置および駆動装置をさらに備え、
前記駆動装置は、前記処理装置に電気的に接続され、
前記処理装置は、前記載せ台上にセットされた前記試料の前記所定位置を加熱させるように、前記載せ台および前記加熱装置を互いに相対的に移動させるように作用するように前記駆動装置を制御可能であり、
前記処理装置は、前記駆動装置を制御して、前記載せ台の少なくとも1つの校正位置を少なくとも1つの対応する校正座標に移動させ、前記撮像装置を制御して前記載せ台の画像を撮像して撮像画像を生成し、前記撮像画像に基づいて、前記校正位置が前記校正座標にあるか否かを判定し、前記校正位置が前記校正座標にないと判断された場合、前記校正座標を前記校正位置に対応する座標に更新するように、校正工程を実行することが可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記分析システムは、画像取得装置および駆動装置をさらに備え、
前記駆動装置は、前記処理装置に電気的に接続され、
前記処理装置は、前記載せ台上にセットされた前記試料の前記所定位置を加熱させるように、前記載せ台および前記加熱装置を互いに相対的に移動させるように作用するように前記駆動装置を制御可能であり、
前記処理装置は、前記駆動装置を制御して、前記加熱装置の少なくとも1つの校正位置を少なくとも1つの対応する校正座標に移動させ、前記撮像装置を制御して前記加熱装置の画像を撮像して撮像画像を生成し、前記撮像画像に基づいて、前記校正位置が前記校正座標にあるか否かを判定し、前記校正位置が前記校正座標にないと判断された場合、前記校正座標を前記校正位置に対応する座標に更新するように、校正工程を実行することが可能である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項4】
前記補助分析システムは、駆動装置をさらに備え、
前記駆動装置は、前記載せ台と前記加熱装置のうち少なくとも1つに接続され、前記処理装置は、前記駆動装置に電気的に接続され、前記処理装置は、前記駆動装置を制御して前記載せ台と前記加熱装置を互いに相対移動させることができ、前記処理装置は、分析対象位置情報を受信し、
前記処理装置は、前記駆動装置を制御して、前記分析対象位置情報に従って前記載せ台および前記加熱装置を互いに相対的に移動させ、それによって前記加熱装置が前記載せ台上の前記試料セットの前記分析対象外領域および前記分析対象領域を順番に加熱することが可能であり、
前記処理装置は、遠隔電子装置によって送信された前記分析対象位置情報、または、前記処理装置に電気的に接続される入力装置によって入力された前記分析対象位置情報を受信することができる、
請求項1に記載の分析システム。
【請求項5】
前記分析システムは、温度検出装置をさらに備え、
前記温度検出装置は、前記処理装置に電気的に接続され、
前記処理装置は、前記サンプリング工程を実行する際、前記所定位置の温度を検出し温度検出情報を生成するように前記温度検出装置を制御し、
前記処理装置は、前記温度検出情報に基づいて、前記所定位置の温度が所定温度に達したか否かを判断し、
前記所定位置の温度が前記所定温度に達していないと判断した場合、前記加熱装置による加熱を再度実行するよう前記加熱装置を制御し、一方、前記所定位置の温度が前記所定温度に達したと判断した場合、前記所定位置の温度を前記所定温度に、前記流体搬送モジュールを作動させる直前まで維持するように前記加熱装置を制御する、
請求項1に記載の分析システム。
【請求項6】
前記温度検出装置は、熱画像取得装置であり、
前記処理装置は、まず、前記所定位置に対応した熱画像情報を生成するために、前記所定位置に対し画像撮影を行うように前記熱画像取得装置を制御し、前記熱画像情報に基づいて、前記所定位置の温度が前記所定温度に達したかどうかを判定する、
請求項5に記載の分析システム。
【請求項7】
前記補助分析システムは、少なくとも1つの駆動装置をさらに備え、
前記駆動装置は、前記加熱装置と前記載せ台のうち少なくとも一方に接続され、
前記加熱装置は、エネルギービーム発生器を含み、
前記処理装置は、前記駆動装置を制御して前記エネルギービーム発生器と前記載せ台とを相対移動させ、それによって前記エネルギービーム発生器によるエネルギービームを、前記載せ台上の前記所定位置に向けさせる、
請求項1に記載の分析システム。
【請求項8】
前記加熱装置は複数のヒータを備え、前記載せ台は負荷面を備え、前記負荷面は前記試料を載せるために用いられ、
前記ヒータの各々は、前記処理装置によって制御されて前記負荷面の少なくとも1つの領域を加熱することができ、
前記処理装置は、前記試料に対して組成分析操作を行うたびに、前記2回のサンプリング工程のそれぞれを順序に実行する際に、複数の前記ヒータから選択した少なくとも1つのヒータを作動させるように設定され、かつ、前記2回のサンプリング工程で作動する前記ヒータの組合せは相違する、
請求項1に記載の分析システム。
【請求項9】
前記分析システムが、複数のクーラを含む冷却装置をさらに備え、
前記クーラは、前記処理装置によって制御されて、前記負荷面の少なくとも1つの領域の温度を下げることが可能であり、
前記処理装置が前記サンプリング工程を実行するにあたって、前記試料の前記所定位置の温度を上げるように前記ヒータの一部を作動させ、かつ、前記試料の前記所定位置でない領域の温度が前記所定温度まで上昇されないように前記クーラを作動させる、
請求項8に記載の分析システム。
【請求項10】
前記分析システムは、前記処理装置に電気的に接続された画像取得装置をさらに備え、
前記処理装置は、前記サンプリング工程を実行する前に、前記載せ台上にセットされた前記試料の全領域の画像を取得して取得画像を生成するように画像取得装置を制御し、前記取得画像を分析して前記試料における前記分析対象領域および前記分析対象外領域を決定し、前記分析対象領域は前記分析対象物の少なくとも一部を覆っている、
請求項1に記載の分析システム。
【請求項11】
前記流体供給装置に接続される入口と、
前記チャンバーに連通する通し口と、
前記気相クロマトグラフィー質量分析計に接続される出口と、
前記入口、前記通し口および前記出口を連通する連通路と、
を含む流体流路を、前記処理装置がさらに備え、
前記処理装置は、前記流体を前記入口から所定速度で供給するように前記流体供給装置を制御可能であり、
前記連通路は、前記流体が前記入口から前記出口に向かって前記気相クロマトグラフィー質量分析計に流れると共に、前記チャンバー内のガスが前記流体の流れに駆動されて前記通し口を通って前記連通路に入りながら前記流体とともに前記気相クロマトグラフィー質量分析計に流れ込むように構成される、
請求項1に記載の分析システム。
【請求項12】
分析対象物である試料に対して組成分析操作を行うために気相クロマトグラフィー質量分析計と接続されるように用いられる、補助分析システムであって、
前記補助分析システムは、
前記気相クロマトグラフィー質量分析計と接続する、処理装置と、
外部に連通するように操作可能である少なくとも1つの可動扉を含むチャンバーと、
前記チャンバー内に配置され、前記試料を載置するための載せ台と、
前記処理装置に電気的に接続される加熱装置と、
前記チャンバーに連通され、流体供給装置と接続するように用いられる、流体搬送モジュールと、
を備え、
前記処理装置は、前記所定位置における前記試料の組成の少なくとも一部を熱的に剥離させるために、前記載せ台上にセットされた前記試料の所定位置を加熱するように前記加熱装置を制御し、次に、前記流体供給装置が流体を提供するように前記流体搬送モジュールを作動させ、それによって、前記チャンバー内のガスを前記流体に連れて前記気相クロマトグラフィー質量分析計に送入し、送入された流体とガスの混合物を分析して分析情報を生成するように、前記気相クロマトグラフィー質量分析計を作動させるように、サンプリング工程を実行し、
前記処理装置は、前記試料に対して組成分析操作を行うたびに前記所定位置を分析対象外領域および分析対象領域に順序に設定するように、2回前記サンプリング工程を実行してから、2回前記サンプリング工程によって得られた分析情報を、比較して分析結果情報を生成するように設定され、
前記分析結果情報は、前記分析対象領域における前記試料の前記分析対象物の成分の少なくとも一部の組成を含む、
ことを特徴とする補助分析システム。
【請求項13】
試料の分析対象領域における分析対象物に対して組成分析操作を行うのに用いられる分析方法であって、
処理装置によって、一部の組成物を熱的に剥離させるようにチャンバーにセットされた前記試料の前記分析対象領域と重なっていない分析対象外領域を加熱するように、加熱装置を制御する、第1の加熱ステップと、
前記処理装置によって、前記チャンバー内のガスを前記気相クロマトグラフィー質量分析計に送入することによって、第1の分析情報を生成する、第1の質量分析ステップと、
前記処理装置によって、一部の組成物を熱的に剥離させるように前記チャンバーにセットされた前記試料の前記分析対象領域を加熱するように、加熱装置を制御する、第2の加熱ステップと、
前記処理装置によって、前記チャンバー内のガスを前記気相クロマトグラフィー質量分析計に送入することによって、第1の分析情報を生成する、第2の質量分析ステップと、
前記第1の分析情報と前記第2の分析情報とを比較することで、分析結果情報を生成し、前記分析結果情報は、前記分析対象領域における前記試料の前記分析対象物の成分の少なくとも一部の組成を含む、ステップと、
を含む、
ことを特徴とする、分析方法。
【請求項14】
前記第1の加熱ステップでは、前記処理装置は、前記分析対象位置情報に従って前記試料を載置するための載せ台と前記加熱装置とを互いに相対的に移動させるように、駆動装置を作動させてから、前記分析対象外領域を加熱するように前記加熱装置を制御し、
前記第2の加熱ステップでは、前記処理装置は、前記分析対象位置情報に従って前記載せ台および前記加熱装置を互いに相対的に移動させるように、駆動装置を作動させてから、前記分析対象領域を加熱するように前記加熱装置を制御する、
請求項13に記載の分析方法。
【請求項15】
前記第1の加熱ステップでは、前記加熱装置が前記分析対象外領域を加熱できるように、前記処理装置は、前記分析対象位置情報に従って前記試料を載置するための載せ台と前記加熱装置とを互いに相対的に移動させるように、駆動装置を作動させ、
前記第2の加熱ステップでは、前記加熱装置が前記分析対象領域を加熱できるように、前記処理装置は、前記分析対象位置情報に従って前記試料を載置するための載せ台と前記加熱装置とを互いに相対的に移動させるように、駆動装置を作動させ、
前記第1の加熱ステップは、
前記処理装置によって、前記撮像装置を制御して前記加熱装置の画像を撮像して撮像画像を生成する撮影ステップと、
前記処理装置によって、入力装置によって入力された入力情報を分析対象位置情報に変換させる位置情報生成ステップと、
をさらに含む、
請求項13に記載の分析方法。
【請求項16】
前記第1の加熱ステップの前に、
前記処理装置を用いて、前記加熱装置を制御して前記試料の前記分析対象外領域を加熱するステップと、前記処理装置を用いて、画像取得装置を制御して前記分析対象外領域を画像化し、前記画像取得装置がそれに対応して画像情報を生成するステップと、
前記処理装置を用いて、前記画像情報に基づいて、前記分析対象外領域の少なくとも一部における前記試料の成分の熱脱離が生じたか否かを判定する判定ステップと、
をさらに含み、
前記処理装置が、前記画像情報に基づいて、前記分析対象外領域における前記試料の組成の少なくとも一部に熱脱離が生じたと判断した場合、前記処理装置は、前記画像情報に基づいて、前記加熱装置が前記分析対象外領域を加熱する加熱時間を算出し、
前記処理装置は、前記第1の加熱ステップを行うように進み、前記第1の加熱ステップおよび前記第2の加熱ステップにおいて、前記処理装置は、前記加熱装置を制御して、前記試料の前記分析対象外領域および前記分析対象領域をそれぞれ前記加熱時間だけ加熱し、前記処理装置が、前記画像情報に基づいて、前記分析対象外領域の少なくとも一部において前記試料の構成要素の熱剥離が発生していないと判断した場合、前記処理装置は、前記加熱ステップおよび前記画像取得ステップを再び実行する、
請求項13に記載の分析方法。
【請求項17】
前記第1の加熱ステップと前記第1の質量分析ステップとの間に、第1の判断ステップをさらに含み、
前記第1の判断ステップでは、前記処理装置によって、まず、温度検出装置を制御して前記分析対象外領域の温度を検出して第1の温度検出情報を生成させ、前記処理装置を用いて、前記第1の温度検出情報に基づいて、前記分析対象外領域の温度が所定温度に達したか否かを判断し、
前記処理装置は、前記分析対象外領域の温度が前記所定温度に達していないと判断した場合、前記第1の加熱ステップを再度実行し、一方、前記分析対象外領域の温度が前記所定温度に達していると判断した場合、前記加熱装置を制御して前記分析対象外領域の温度を所定時間内に前記所定温度で維持してから、前記分析対象外領域に対する加熱を終了して前記第1の質量分析ステップを実行し、
前記第2の加熱ステップと前記第2の質量分析ステップとの間に、第2の判断ステップをさらに含み、
前記第2の判断ステップでは、前記処理装置によって、まず、温度検出装置を制御して前記分析対象領域の温度を検出して第2の温度検出情報を生成させ、前記処理装置を用いて、前記第2の温度検出情報に基づいて、前記分析対象領域の温度が所定温度に達したか否かを判断し、
前記処理装置は、前記分析対象領域の温度が前記所定温度に達していないと判断した場合、前記第2の加熱ステップを再度実行し、一方、前記分析対象領域の温度が前記所定温度に達していると判断した場合、前記加熱装置を制御して前記分析対象領域の温度を所定時間内に前記所定温度で維持してから、前記分析対象領域に対する加熱を終了して前記第2の質量分析ステップを実行する、
請求項13に記載の分析方法。
【請求項18】
前記第2の加熱ステップにおいて、前記処理装置は、分析される試料の前記分析対象外領域の温度が前記所定温度まで上昇しないように、冷却装置の動作を同時に制御する、
請求項17に記載の分析方法。
【請求項19】
前記第1の質量分析ステップと前記第2の質量分析ステップとの間に、前記処理装置を用いて前記流路搬送モジュールを制御し、前記チャンバー内のガスを所定時間継続して前記チャンバー外に導出するパージステップをさらに有する、
請求項13に記載の分析方法。
【請求項20】
前記第1の加熱ステップでは、前記処理装置を用いて前記加熱装置を制御して前記分析対象外領域を加熱して前記分析対象外領域の温度を所定温度に上昇させ、前記第2の加熱ステップでは、前記処理装置を用いて前記加熱装置を制御して前記分析対象領域を加熱して前記分析対象領域の温度を所定温度に上昇させ、
前記処理装置を用いて、前記第1の分析情報と前記第2の分析情報との類似度が所定のレベルよりも高いか低いかを判定する判定工程をさらに含み、
前記処理装置は、前記第1の分析情報と前記第2の分析情報とが前記所定の類似度よりも近いと判断した場合、まず更新工程を実行し、前記第1の加熱ステップ、前記第1の質量分析ステップ、前記第2の加熱ステップ、前記第2の質量分析ステップをこの順に再実行し、前記更新工程は、前記所定温度を更新して前記元の所定温度の値を増加させ、前記更新工程は、前記元の事前設定温度の値を増加させるように前記事前設定温度を更新し、
前記処理装置は、前記第1の分析情報と前記第2の分析情報との類似度が前記所定の類似度よりも低いと判断した場合、前記分析結果情報を生成する、
請求項13に記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析システム、補助分析システムおよび分析方法に関し、特に、気相クロマトグラフィー質量分析計と協働する分析システム、補助分析システムおよび分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存のガスクロマトグラフ質量分析技術を利用して、試料(ウエハーなど)上の異物の組成を分析する場合、関係者が試料の正確な組成を把握していないため、気相クロマトグラフィー質量分析計が出力するマススペクトルから異物の組成を分解できないことがよくある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、試料の具体的な組成が分からない場合に、気相クロマトグラフィー質量分析計から出力されるマススペクトルから試料上の異物の組成を分解できないという問題を改善することを目的とした分析システム、補助分析システムおよび分析方法について開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、試料における分析対象物の組成分析を行うための分析システムであって、補助分析システムとガスクロマトグラフ質量分析システムとを備える分析システムにおいて開示される。補助分析システムは、処理装置、チャンバー、載せ台、加熱装置、流体搬送モジュールを含む。チャンバーは、チャンバーを外部に連通させるように動作可能な少なくとも1つの可動ドアを備え、載せ台はチャンバー内に配置され、載せ台は試料を載置するために用いられ、加熱装置は処理装置に電気的に接続され、流体搬送モジュールはチャンバーに接続され、流体搬送モジュールは流体供給装置への接続に用いられ、気相クロマトグラフィー質量分析計は流体搬送モジュールと接続されており、処理装置はサンプリング工程を実行可能で、処理装置はサンプリング工程の実行時に以下の工程を実行することになる:加熱ステップ:加熱装置を制御して、載せ台にセットされた試料の所定位置を加熱し、所定位置の試料の成分の少なくとも一部を熱脱着させる;質量分析ステップ:流体供給装置から供給される流体がチャンバーから気相クロマトグラフィー質量分析計にチャンバーに位置するガスを導くように流体搬送モジュールを動作させ、流入する流れを気相クロマトグラフィー質量分析計が分析し、分析情報を生成する。なかでも、処理装置が分析試料を構成する際に、分析ステップに続いて少なくとも2つのサンプリング工程を実行し、処理装置が、試料の分析対象外領域である加熱ステップにおける予め決められた位置で1回目のサンプリング工程を実行し、処理装置が、分析される試料の領域である加熱ステップにおける予め決められた位置で2回目のサンプリング工程を実行する、ステップにおいて、処理装置は分析ステップは、2つのサンプリング工程で得られた2つの分析情報を比較し、分析対象領域の試料の少なくとも一部の成分組成を含む分析結果を得る。
【0005】
本発明の一実施形態は、気相クロマトグラフィー質量分析計に接続して同一製品の分析対象物の組成分析を行うための補助分析システムを開示し、該補助分析システムは、処理装置、チャンバー、載せ台、加熱装置および流路担持モジュールからなることを特徴とする。処理装置は、気相クロマトグラフィー質量分析計に電気的に接続される。チャンバーは、チャンバーを外部に連通させるように動作可能な少なくとも1つの可動ドアを備え;載せ台は、チャンバー内に位置し、載せ台は、試料を運ぶために使用され;加熱装置は、処理装置に電気的に接続され;流体搬送モジュールは、チャンバーに接続され、流体搬送モジュールは、液体供給装置に接続され;処理装置は、気相クロマトグラフィー質量分析計に接続されており、ここで処理は、以下を行う能力を有している。サンプリング工程を実行する際に、処理装置が、以下のステップ:加熱ステップ:加熱装置を制御して、載せ台上にセットされた試料の所定位置を加熱して、所定位置で試料の成分の少なくとも一部を熱脱着させるステップ;質量分析ステップ:流体供給装置によって供給される流体が、チャンバーから気相クロマトグラフィー質量分析計にチャンバーに位置するガスを搬送するように作用するよう載せ台モジュールを制御するステップ;を含み、前記処理装置が前記サンプリング工程を実行する1回目に、前記加熱ステップは、前記試料の分析対象外領域にあることが予め定められており;前記処理装置が前記サンプリング工程を実行する2回目に、前記加熱ステップは、前記試料の分析対象外領域にあることが予め定められており;前記処理装置が前記サンプリング工程を実行する2回目に、前記加熱ステップは、前記試料にある分析対象外領域にあることが予め定められている。処理装置がサンプリング工程を実行する1回目は、分析されない試料の領域に加熱ステップで前置され、処理装置がサンプリング工程を実行する2回目は、分析される試料の領域に加熱ステップで前置される。
【0006】
本発明の一実施形態は、同一製品の分析対象領域における分析対象物の組成分析を行う分析方法であって、処理装置を用いて加熱装置を制御し、チャンバーにセットされた試料の分析対象外領域を加熱して、分析対象外領域における試料の少なくとも一部の組成を熱剥離する第1の加熱ステップと、第1の質量分析ステップとを含む分析方法について開示するものである。前記分析対象外領域は、分析対象領域と重ならない;第1の質量分析ステップ質量分析ステップ:処理装置を用いて流体搬送モジュールを制御しつつ、チャンバー内に位置するガスを気相クロマトグラフィー質量分析計に流入させ、これにより気相クロマトグラフィー質量分析計が第1の質量分析情報の生成に対応する;第2の加熱ステップ:処理装置を用いて加熱装置を制御してチャンバーにセットされた試料の分析対象領域を加熱する工程と第2の加熱ステップ:処理装置を用いて、チャンバー内にセットされた試料の分析される領域を加熱して、分析される領域の少なくとも一部から試料の成分を熱的に解離させるように制御するステップと、第2の質量分析ステップと分析ステップ:前記処理装置を用いて、前記第1の分析情報と前記第2の分析情報とを比較し、分析対象物の少なくとも一部の成分組成からなる分析結果情報を生成するステップを含む。
【0007】
以上のように、本発明の分析システム、補助分析システムおよび分析方法によれば、関係者は、試料の組成を知らなくても、試料に付着した分析対象物質の組成を分析することができる。
【0008】
本発明の特徴および技術的側面のさらなる理解のために、以下の本発明の詳細な説明および図面を参照されたい。しかし、図面は参照および説明の目的のためにのみ提供され、本発明を限定することを意図するものでない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明における分析システムのブロックの模式図である。
【
図2】本発明における分析システムの概略図である。
【
図3】本発明における分析システムの処理装置により試料に対して成分演算を行う際の流れを示す模式図である。
【
図4】本発明における分析システムの載せ台に試料をセットした状態を示す模式図である。
【
図5】本発明の分析システムの他の実施態様を示すブロック図である。
【
図6】本発明の分析システムの処理装置が試料に対して成分演算を行う実施態様の一例を示す概略フロー図である。
【
図7】本発明の分析システムの処理装置が試料に対して成分演算を行う実施の形態の一つを示す模式的なフロー図である。
【
図8】本発明の分析システムの処理装置が試料に対して成分演算を行う他の実施例の模式的なフロー図である。
【
図9】本発明の分析システムの載せ台テーブルの一実施態様を示す概略上面図である。
【
図10】本発明の分析システムの処理部が実行する校正工程の流れを示す模式図である。
【
図11】本発明の分析システムの処理部が実行する校正工程の他の実施例を示す概略フロー図である。
【
図12】本発明の分析システムの他の実施の形態を示す模式図である。
【
図13】本発明の分析方法の第1の実施形態を示す概略フロー図である。
【
図14】本発明の分析方法の第2の実施形態を示す概略フロー図である。
【
図15】本発明の分析方法の第3の実施形態を示す概略フロー図である。
【
図16】本発明の分析方法の第4の実施形態を示す概略フロー図である。
【
図17】本発明の分析方法の第5の実施形態を示す概略フロー図である。
【
図18】本発明の分析方法の第6の実施形態の模式的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の注記において、特定の図または特定の図に示されているように参照されていることが示されている場合、これは、以下の注記に記載されている関連内容の大部分がその特定の図に示されていることを強調するためのものであり、以下の注記をその特定の図にのみ参照するように限定するものではない。
【0011】
図1~
図4を併せて参照すると、本発明の分析システムZは、分析対象となる製品Mの成分分析を行うために使用されるものである。分析システムZは、補助分析システムAと、ガスクロマトグラフ質量分析システムBとからなり、補助分析システムAは、処理装置1、チャンバー2、載せ台3、加熱装置4、駆動装置5、載せ台モジュール6からなり、処理装置1は、例えば、マイクロプロセッサ、回路基板等からなり、駆動装置5は、例えば、モータおよび関連する接続部品からなるがこれに限定されない。
【0012】
チャンバー2内には、チャンバー2を外部と連通させるために操作可能な可動扉21が設けられている。可動扉21が閉じられると、チャンバー2が実質的に閉鎖され、チャンバー2外からの気体がチャンバー2内に容易に入り込まないようにすることができる。載せ台3は、チャンバー2内に配置され、試料Mを運ぶために使用される。これは、人または機械装置(例えば、ロボットアーム)が、可動扉21を開き、次に試料Mを載せ台3上に配置することができることを意味する。実際には、載せ台3には、載せ台3に対する試料Mの移動範囲を制限する保持機構や制限機構が設けられていてもよい。
【0013】
加熱装置4は、処理装置1と電気的に接続されており、載せ台3に駆動装置5が接続され、駆動装置5を制御して載せ台3を加熱装置4に対して相対的に移動させることができるようにしてもよい。別の実施形態では、駆動装置5も加熱装置4に接続され、処理装置1が駆動装置5を制御して加熱装置4を載せ台3に対して移動させることが可能である。さらなる実施形態において、補助分析システムAはまた、それぞれが載せ台3および加熱装置4に接続された2つの駆動装置5を含んでいてもよく、処理装置1は、加熱装置4および載せ台3を互いに相対的に動かすためにいずれかの駆動装置5を独立的に制御することができる。
【0014】
流体搬送モジュール6は、チャンバー2に接続され、処理装置1によって制御されて流体、例えば、窒素(N2)、水素(H2)、ヘリウム(He)、不活性ガスなどの載せ台ガスを供給することができる流体供給装置Cを接続するために使用される。様々な実施形態において、分析システムZは、流体供給装置Cを含んでいてもよく、流体搬送モジュール6には、ガスクロマトグラフィー質量分析システム(GC-MS)Bが接続されている。
【0015】
具体的には、流体搬送モジュール6は、入口611、アクセスポート612および出口613からなる流体ダクト61を備え、流体ダクト61内に流体流路614を備え、流体流路614、入口611、アクセスポート612および出口613は互いに接続され、入口611は流体供給装置Cに接続され、アクセスポート612はチャンバーに接続されてもよい。入口611は流体供給装置Cに、アクセスポート612はチャンバー2に、出口613はガスクロマトグラフBに接続される。処理装置1は、前記流体が入口611から流体流路614に所定の速度で入り、出口613から気相クロマトグラフィー質量分析計Bに流入するように流体供給装置Cを制御し、チャンバー2内に位置する気体はベルヌーイの法則により接続部612から流体流路614に入り、流体流路614内の流体と一緒に気相クロマトグラフィー質量分析計Bに入り、気相クロマトグラフィー質量分析計は、その流入する気体を処理装置1に供給する。をガスクロマトグラフBで測定した。
【0016】
ある特定のアプリケーションでは、流体搬送モジュール6は、補助ダクト62を含んでいてもよく、その一端はポート612に接続され、補助ダクト62内のチャネル621は流体チャネル614に接続され、補助ダクト62の他端は載せ台3に隣接して配置されている。
【0017】
処理装置1は、サンプリング工程を実行することが可能であり、処理装置1がサンプリング工程を実行する場合、以下の工程を実行することになる。
【0018】
加熱ステップ:加熱装置4を制御して、載せ台3上にセットされた試料Mの所定位置を加熱し、所定位置の試料Mの組成の少なくとも一部を熱脱着させるステップ。
【0019】
質量分析ステップ:流体供給装置Cから供給された流体、チャンバー2内に位置するガスが、チャンバー2から気相クロマトグラフィー質量分析計Bに入るように流体搬送モジュール6を制御し、気相クロマトグラフィー質量分析計Bを制御して取り込んだ流体を分析して分析情報を生成するステップを有する。実際には、関連するコンピュータがディスプレイを制御して分析情報を表示し、関連する人がディスプレイを通じて流体の一般的な組成を見ることができ、具体的には、分析情報をマススペクトルグラフとしてディスプレイに表示し、関連する人がマススペクトルグラフを見ることによって流体の一般的な組成を知ることができる。もちろん、分析情報はマススペクトルだけに限らず、必要に応じて他の情報を含めることも可能である。
【0020】
具体的な用途において、加熱装置4は、例えば、エネルギービーム発生器を含んでいてもよく、処理装置1は、エネルギービーム発生器によって発生されたエネルギービーム(例えば、レーザー)が試料Mの所定位置に向けられるように駆動装置5および加熱装置4を制御し、それによって試料Mの所定位置が加熱されるようにしてもよい。
【0021】
また、別の実施形態では、加熱装置4は、近接部材(図示せず、例えば棒状構造体)とヒータとから構成されてもよい。処理装置1は、加熱装置4を制御して試料Mの所定位置を加熱する場合、例えば、まず駆動装置5を制御して前記近接部材を試料Mの所定位置の周りに移動させ、その後、ヒータの動作を制御して近接部材の端部の温度を所定温度まで上昇させることが考えられる。前記所定位置の温度は、前記所定温度まで徐々に上昇する。
【0022】
なお、駆動装置5は、主に加熱装置4が試料Mの所定位置を所定温度まで昇温させるために用いられるので、加熱装置4自体を処理装置1によって制御して試料Mの所定位置を正確に加熱できる実施形態では、分析システムZが駆動装置5を含まなくてもよいことに留意すべきである。
【0023】
処理装置1は、少なくとも2回のサンプリング工程の後に分析工程を行うことにより、試料Mの分析対象領域M2における分析対象物Wの組成分析動作を行うものである。説明した分析ステップは、2つのサンプリング工程を行うことによって得られた2つの分析情報B1、B2を比較して、分析対象領域M2における試料Mの分析対象物Wの成分の少なくとも一部の組成を含む分析結果情報11を作成する。前記分析対象外領域M1が前記分析領域M2と重ならず、前記分析領域M2に分析対象物が設定され、前記処理装置1により2回目のサンプリング工程が行われる際に分析対象物が加熱されて熱脱着される。
【0024】
すなわち、
図3に示すように、処理装置1は、試料Mに対して組成分析動作を行う際に、加熱ステップS11、質量分析ステップS12、加熱ステップS21、質量分析ステップS22、分析ステップS3を順に行い、前記加熱ステップS11と前記質量分析ステップS22は、処理装置1が行う第1のサンプリング工程に対応するステップであり、前記加熱ステップS21および前記質量分析ステップS22は、処理装置1が行う第2のサンプリング工程に対応するステップである。
【0025】
図4は、
図1~
図4に示す載せ台3および試料Mの上面図である。具体的には、本発明の分析システムZを用いて、分析対象の試料Mの保留分析物Wに対する組成分析操作を行う場合、処理装置1は、第1のサンプリング工程を行う際に、試料Mの組成の少なくとも一部を熱的に剥離するために、保留分析物Wが位置しない場所(すなわち前記非保留領域M1)において試料Mを加熱し、それに応じて第1の分析情報B1を得てもよい。次に、処理装置1は、同じ試料Mに対して分析対象物W(すなわち分析対象領域M2)を加熱することによって別のサンプリング工程を実行し、それによって分析対象物Wの組成の少なくとも一部が熱的に剥離し、それによって第2の分析情報B2が得られ、処理装置1は、2つの分析情報B1,B2を使って試料Mの分析対象物Wが存在しない領域の主成分を分析することができ、またそして、処理装置1は、2つの分析情報B1、B2を用いて、試料Mのうち分析対象物Wが存在しない領域の主成分と、試料Mのうち分析対象物Wが存在する領域の主成分を分析することができるようになる。
【0026】
例えば、分析システムZが回路基板(すなわち前記試料M)上の分析対象物Wの組成分析を行うために用いられると仮定すると、前記分析ステップS3において、処理装置1は、第1の分析情報B1から回路基板の分析対象物Wがない領域(すなわち分析対象外領域)の主成分を求め、第2の分析情報B2から回路基板上の分析対象物Wの主成分を求めてもよい。処理装置1は、第1の分析情報B1と第2の分析情報B2とを比較するだけで、分析対象物Wの考えられる主成分を求めることができ、回路基板上の分析対象物Wと回路基板(すなわち分析対象領域)上の分析対象物Wとの主成分を求めることもできる。
【0027】
以上のように、本発明の分析システムZは、関係者が試料Mの組成を知らなくても、試料M上の分析対象物質Wの主成分を分析することができ、しかも、関係者は、分析システムZによる試料Mの組成の分析過程に基本的に全く関与しない。すなわち、関係者は、分析すべき試料Mを載せ台3にセットした後、起動するだけでよいのである。分析システムZは、基本的に試料Mに付着した分析対象物Wの主成分を自動的に分析することになる。
【0028】
なお、
図4に示した試料Mの外観、分析対象外領域M1の位置と範囲、および分析対象領域M2の位置と範囲は、例示的な試料の一つに過ぎず、この実用例に限定されるものではない。
【0029】
実際には、処理装置1が保留分析対象位置情報Dを受信可能であり、処理装置1が保留分析対象位置情報Dに従って駆動装置5を制御して、載せ台3と加熱装置4が相対移動することにより、加熱装置4が載せ台3にセットされた試料Mの非保留分析領域M1及び保留分析領域M2を順に加熱できるようにしても良い。具体的には、分析対象位置情報Dは、現在載せ台3に載置されている試料Mに対応する分析対象外領域M1の複数の境界座標と、当該試料Mの分析対象領域M2の複数の境界座標の少なくとも一方を含んでいればよく、処理装置1は、分析対象位置情報Dに含まれるこれらの境界座標に従って、試料Mのどの位置を加熱装置4で加熱するか制御することができる。の試料Mのもちろん、分析対象位置情報Dに含まれる情報は、上記の説明に限定されるものではなく、処理装置1が試料Mの分析対象外領域M1の境界と分析対象領域M2の境界とを判断するのに十分な情報であれば、どのような情報を含んでいてもよい。
【0030】
一実施形態では、処理装置1は、遠隔電子装置Eと通信可能であってもよく、処理装置1は、前記遠隔電子装置Eから分析される位置に関する情報Dを受信可能であり、前記遠隔電子装置Eは、例えば、クラウドサーバなどである。
【0031】
図5および
図6に示すように、実施形態の一具体例において、補助分析システムAは、入力装置7、画像取得装置8および表示装置9を含んでいてもよく、処理装置1は、サンプリング工程の最初の実行に先立ち、以下の工程で先行することが可能である。
【0032】
試料画像撮影ステップS01:撮像装置8を制御して、載せ台3上の試料Mの全領域を1枚撮影し、同一の試料取得画像81を生成する。
【0033】
入力ステップS02:表示装置9を制御して試料取得画像81を表示させ、処理装置1を用いて入力装置7から入力メッセージ71を受信する。
【0034】
変換ステップS03:入力情報71を、処理装置1を用いて分析するための前記位置情報Dに変換する。
【0035】
以上のように、具体的には、処理装置1が試料画像取得ステップS01を実行した後、ユーザは、現在載せ台3にセットされている試料Mの画像を表示装置9に表示させることができる。入力装置7は、前記入力情報71を生成するために使用することができる。
【0036】
したがって、処理装置1が行う2つの連続するサンプリング工程の2つの加熱ステップS11およびS21において、処理装置1は、分析対象位置に関する情報Dに従って駆動装置5を制御し、加熱装置4が試料Mの分析対象外領域M1および分析対象領域M2をそれぞれ加熱するようにする。
【0037】
図5および
図7に示すように、別の具体的な実施形態において、分析される位置情報Dは、処理装置1が試料Mの取得画像の分析を行うことによっても取得され得る。具体的には、分析システムZが試料M上の物体Wに対して説明した組成分析動作を行う場合、処理装置1は、まず画像取得ステップSA1および画像分析ステップSA2を行い、その後、2つのサンプリング工程と説明した分析ステップS3とを行うことが考えられる。
【0038】
前記画像取得ステップSA1は、画像取得装置8を用いて、載せ台3上にセットされた試料Mの全領域の画像を1枚取得して同一の撮影画像81を生成する。
【0039】
前記画像分析ステップSA2は、前記試料取得画像81を分析して、試料M上の前記分析対象領域M2および前記分析対象外領域M1を決定する。
【0040】
具体的な一応用例では、画像分析ステップSA2において、処理装置1は、試料取得画像81とプリセーブ画像12に含まれる画素を1つずつ比較して、試料取得画像81のどの画素がプリセーブ画像12の対応画素と異なっているかを判断し、それにより試料取得画像81のそれらの画素が分析対象物体Wの画像に対応すると判定してもよい。分析対象物Wのここで、前記プリセーブ画像12は、試料Mのうち前記分析対象物Wを有しない任意の領域の画像であり、前記プリセーブ画像12は、処理装置1に予め記憶されていてもよい。別の具体的な応用例では、画像分析ステップSA2において、例えば機械学習によって、試料取得画像81のどの部分が分析対象の前記物体Wの画像に対応するかを決定することが可能である。なお、画像分析ステップSA2において、処理装置1が試料取得画像81中の前記対象物Wに対応する画像をどのように決定するかは、特に限定されるものではない。
【0041】
実際には、試料Mに対する加熱装置4の加熱方法に応じて、試料取得画像81において予定される分析対象領域M2の面積が、試料取得画像81において分析対象物Wが占める面積よりも小さくてもよいし、試料取得画像81において予定される分析対象領域M2の面積が、試料取得画像81において分析対象物Wが占める面積よりも大きくてもよい。例えば、試料取得画像81の面積が大きい場合には、加熱装置4を用いてもよい。例えば、加熱装置4がレーザを用いて試料Mの分析対象領域M2を加熱する場合、画像分析ステップSA2において、処理装置1は、まず、試料M上の分析対象物Wの面積が、試料Mにレーザが当たっている面積よりも大きいかどうかを、試料取得画像81に基づいて判定してもよい。処理装置1は、試料M上の分析対象物Wの面積が試料M上のレーザの面積よりも大きいと判断した場合、試料取得画像81上の分析対象領域M2予定の面積を試料取得画像81上の分析対象物Wの面積よりも小さくして、加熱装置4が分析対象物Wにレーザを精度よく当てられるようにすればよい。
【0042】
これに対して、加熱装置4が、例えばレーザを用いて試料Mの所定位置を正確に加熱しない場合には、前記画像分析ステップSA2において、処理装置1は、試料取得画像81における分析対象領域M2の予定面積が、試料取得画像81における分析対象物Wの占有面積よりも大きくなるように、加熱装置4が分析対象領域M2を確実に熱解離させることができるようにしてもよい。加熱装置4が、分析対象物Wの熱脱着が確実に起こるように、分析対象領域M2を加熱することを保証するためである。
【0043】
様々な実施形態において、本発明の補助分析システムAは、処理装置1に電気的に接続される温度検出装置100をさらに構成されてもよい。所定位置の温度が所定温度に達していないと判断された場合には、再び加熱ステップSB1が実行され、所定位置の温度が所定温度に達していると判断された場合には、まず、所定位置の温度を予め定められた時間だけ維持するように加熱装置4が制御される。プリセット位置の温度がプリセット温度に達すると、プリセット位置で熱脱着が始まり、プリセット位置の温度をプリセット時間維持し、その後加熱装置4でのプリセット位置の加熱を停止することにより、該当位置をさらに加熱することができる設計になっていることに留意されたい。加熱装置4の設計により、関連物質がさらに熱脱着反応を完了させることができる。
【0044】
具体的な実施形態において、前記温度検出装置100は、例えば、熱画像キャプチャ装置であってもよく、温度判定ステップSB2において、処理装置1は、まず、熱画像取得装置が対応して熱画像情報を生成するように、所定位置の画像を取得するように制御し、次に、熱画像情報に基づいて、所定位置の温度が所定温度に達しているかどうかを判定する。
【0045】
温度検出装置100と温度判定ステップSB2の設計により、処理装置1の2回の連続したサンプリング工程の間に、加熱装置4が試料Mの分析対象外領域M1と分析対象領域Mの両方を所定温度まで上昇させるので、最終分析結果情報11の精度を向上させることができる。
【0046】
例えば、試料を700℃に加熱し、試料を720℃に加熱したと仮定すると、試料は主にA、B、C、Dの3つの有機分子を揮発する。処理装置1が第1のサンプリング工程を行う際に、加熱装置4が試料の所定位置を700℃に加熱し、処理装置1は第1の分析情報B1に基づいて、次のように判断した場合:第2のサンプリング工程の間に、加熱装置4が試料Mの所定位置を720度に加熱し、処理装置1が第2の分析情報B2に基づいて、分析対象の試料Mの領域M1の主成分がA、B、C、D、EおよびFの有機分子であると判断した場合;したがって、第2のサンプリング工程の間に、処理装置1が分析対象の試料Mの領域M2の主成分がA、B、C、D、EおよびFの有機分子であると判断した場合、このように、処理装置1は、分析ステップS3を実行する際に、試料Mの分析対象領域M2における分析対象物Wの主成分が3つの有機分子D、E、Fを含むと判定することができる。しかし、実際には、有機分子Dは、試料を720℃に加熱したときにのみ揮発する成分であり、有機分子Dは、分析対象物Wの成分として全く存在しない可能性がある。
【0047】
以上のように、温度検出装置100および温度判定ステップSB2は、処理装置1が行うどのサンプリング工程においても、加熱装置4が試料Mを所定位置でほぼ同じ温度に加熱できるようにし、最終的な分析結果の精度を向上させるものである。
【0048】
1つの実用化において、分析システムZは、通常カメラおよび熱画像取得カメラの2つの画像取得装置から構成されてもよく、処理装置1は、試料M上の分析物Wの組成を分析するために2つのサンプリング工程を行う前に少なくとも1つのサンプリング工程を行うこともでき、サンプリング工程の加熱ステップの間、処理装置1が、以下のことを言及するとよい加熱装置4を制御して試料Mの分析対象外領域M1を加熱すると同時に、2つの画像撮影装置8を制御して試料Mの画像を間隔(例えば30秒ごと、ただしこれに限らない)をおいて撮影し、処理装置1が2つの画像撮影装置8で撮影した画像を用いて、試料Mの分析対象外領域M1の現在の温度と試料Mの分析対象外領域M1かどうかを判断し物質が蒸発し始めるかどうか(例えば、煙が出始めるか、表面の形状が変わり始めるか、表面の色が変わり始めるか、など)、それによって、その後の2回のサンプリング工程の間に、加熱装置4が試料Mの分析対象外領域M1および分析領域M2を加熱する時間、および当該加熱ステップ中に所定温度の特定値が決定される。
【0049】
図5および
図9を共同で参照すると、1つの特定の実施形態において、加熱装置4は、複数のヒータ41を含んでよく、その各々は、載せ台テーブル3の負荷面31の少なくとも1つの領域を加熱するように処理装置1によって制御することができる。処理装置1によって試料Mが分析される場合、処理装置1は、サンプリング工程が2回行われるときには、同一ではない少なくとも1つのヒータ41を制御する。
【0050】
図9に示すように、載せ台3は、例えば、複数の流路32を含み、複数の流路32は互いに断絶していてもよく、いずれかの流路32に所定温度に達した流体が流入すると、その流路32は、前述のようにヒータ41となる、すなわち、処理装置1は、所定温度に達した流体を異なる流路32に流入させることにより載せ台3の異なる領域の温度を所定温度まで上げる効果を実現できる場合がある。つまり、処理装置1は、所定温度に達した流体を異なる流路32に流すことで、プラットフォーム3の異なる領域の温度を所定温度まで上昇させることができる。なお、本実施形態の図面では、多数の流路32が載せ台3内に概ね同心円状に配置されているが、流路32の配置はこのように限定されるものではない。
【0051】
異なる具体的な実施形態において、各ヒータ41は、電磁誘導/高周波加熱を用いて、載せ台プラットフォーム3の1つの領域の温度を所定温度に上昇させてもよく、例えば、各ヒータ41は、金属ブロック(図示せず)とコイル(図示せず)とからなり、各コイルは、以下に接続されてもよい。各ヒータ41は、載せ台3内に配置されてもよく、処理装置1は、電磁誘導電源によって提供される電流がヒータのうちの1つのコイルに流れ、それによって金属ブロックと通電されたコイルとの間で電磁誘導が起こり、それによって金属ブロックの温度が所定温度まで上昇するように電磁誘導電源の動作を制御することができる。
【0052】
また、
図5および
図9に示すように、分析システムZは、複数のクーラ201からなる冷却装置200を含んでいてもよく、この冷却装置200は、処理装置1によってそれぞれが制御されて負荷面31の少なくとも一領域の温度を低下させることが可能である。処理装置1がサンプリング工程を実行する場合、処理装置1は、試料Mの所定位置の温度が所定温度まで上昇するようにヒータ41の一部を制御するとともに、試料Mの所定位置でない領域の温度が所定温度まで上昇しないようにクーラ201の一部を制御する。
【0053】
図9に示すように、例えば、いずれの載せ台3の流路32も、所定温度に達した流体を流すと、前記クーラ201となり得る。処理装置1がサンプリング手順を実行するとき、処理装置1は、予め定められた温度に達する高温流体を流路の一部分に流れるように制御すると同時に、予め定められた温度に達する低温流体を流路の他部分に流れるように制御し、それによって、高温流体の通過により負荷面の一部の温度が予め定められた温度まで上昇し、低温流体の通過により負荷面の残りの部分の温度は予め定められた温度まで上昇しなくても良い。
【0054】
別の具体的な実施態様では、載せ台3は複数の冷却チップを備え、各冷却チップは処理装置1に電気的に接続され、処理装置は冷却チップへの電力入力の極性を制御し、それによって冷却チップはクーラまたはヒータとして機能することができる。
【0055】
図5および
図10を一緒に参照すると、駆動ユニット5が載せ台3に接続され、加熱ユニット4がエネルギービーム発生器または近接部材を含む実施形態では、校正工程を実行する場合、処理装置1は、以下のステップを実行することができる。
【0056】
移動ステップSC1:駆動装置5を制御して、載せ台3の少なくとも1つの校正位置を、対応する校正座標の少なくとも1つに移動させる。
【0057】
撮像ステップSC2:撮像装置8を制御して載せ台3の画像を撮像し、撮像画像82を生成する。
【0058】
判定ステップSC3:撮影画像82に基づいて、校正位置が校正座標にあるか否かを判定する。
【0059】
校正位置が校正座標にないと判断された場合、校正位置に対応する座標に校正する。校正位置が校正座標にあると判定された場合、校正処理を終了する。
【0060】
上記の校正工程により、加熱装置4は、処理装置1のサンプリング工程において、試料Mの所定位置をより正確に加熱することができ、その後の分析ステップS3で得られる分析結果情報11の正しさを向上させることができるようになる。
【0061】
図5および
図11を一緒に参照すると、同様に、駆動ユニット5が加熱ユニット4に接続され、加熱ユニット4がエネルギービーム発生器または近接部材を含む実施形態において、駆動ユニット5は、加熱ユニット4に接続される。また、処理装置1は、校正工程を実行することが可能である。校正工程を実行する場合、処理装置1は、以下の工程を実行することができる。
【0062】
移動ステップSD1:駆動装置5を制御して、加熱ユニット4の少なくとも1つの校正位置を、対応する少なくとも1つの校正座標に移動させる。
【0063】
撮像ステップSD2:撮像装置8を制御して加熱装置4の画像を撮像し、撮像画像83を生成する。
【0064】
判定ステップSD3:撮影画像に基づき、校正位置が校正座標にあるか否かを判定する。
【0065】
校正位置が校正座標にないと判断された場合、校正位置に対応する座標に校正する。校正位置が校正座標にあると判定された場合、校正処理を終了する。
【0066】
上記の校正工程により、加熱装置4は、処理装置1のサンプリング工程において、試料Mの所定位置をより正確に加熱することができ、その後の分析ステップS3で得られる分析結果情報11の正しさを向上させることができるようになる。
【0067】
本発明の分析システムの代替的な概略図を示す
図12を参照する。本実施形態の流体搬送モジュール6Aは、先の実施形態の流体搬送モジュール6と同じではない。具体的には、本実施形態の流体搬送モジュール6は、入口ダクト6A1と出口ダクト6A2とからなり、入口ダクト6A1の一端は流体供給装置Cに接続され、入口ダクト6A1の他端はチャンバー2内に配置されて第1の電動弁6A3が備えられている。第1の電動弁6A3および第2の電動弁6A4は、いずれも加工装置1に電気的に接続されており、第1の電動弁6A3および第2の電動弁6A4の開閉をそれぞれ独立的に制御する。
【0068】
処理装置1は、試料Mを加熱した後に分析対象のガスをチャンバー2内に貯留できるように、サンプリング工程の加熱ステップを実行する前に第1の電動弁6A3および第2の電動弁6A4を閉じるように制御してもよい。処理装置1によりサンプリング工程における加熱ステップが行われた後、処理装置1は、例えば、まず、第1の電動弁6A3を開いて流体供給装置Cを制御してチャンバー2内に充填する流体の供給を開始し、第2の電動弁6A4を開いて分析対象のガスが混入された流体が流出管6A2に沿って気相クロマトグラフィー質量分析計Bに流入するようにしてもよい。
【0069】
好ましい実施形態において、流出管6A2は、関連する補助流量装置(例えば、抽出器)に接続されてもよく、処理装置1は、第2の電動弁6A4の開度を制御すると同時に、補助流量装置を制御して、チャンバー2内の流体が補助流量装置を介してガスクロマトグラフBに流れる流量を増加させるようにしてもよい。補助流路装置が抽出器からなる実施形態では、処理装置1は、第2の電動弁6A4および抽出器の開放を制御する前に、第1の電動弁6A3を閉じるように制御してもよい。
【0070】
なお、流体搬送モジュール6は、主に流体供給装置Cから供給される流体をチャンバー2内に流入させ、チャンバー2内のガスや、もともとチャンバー2内に位置していたガスをガスクロマトグラフ質量分析システムBに運ぶために用いられるが、流体搬送モジュール6に含まれる特定の部品は、本実施形態および先の実施形態の内容に限定されるものではない。
【0071】
特に、上記補助分析システムAは、実際には、単独で製造、販売、実施されてもよく、補助分析システムAは、分析システムZと共に製造、販売、実施されることに限定されない。
【0072】
図13を参照すると、本発明の分析方法は、同じ物品の分析対象物に対する組成分析操作を行うために用いられ、前記分析方法は、以下のステップを含む。
【0073】
第1の加熱ステップSE1:処理装置を用いて加熱装置を制御し、チャンバー内にセットされた試料の分析対象外領域を加熱して、分析対象外領域の少なくとも一部から試料の成分を熱的に解離させるステップである。
【0074】
第1の質量分析ステップSE2:処理装置を用いた流体搬送モジュールの制御により、チャンバー内に位置するガスが気相クロマトグラフィー質量分析計に入り、それに応じて気相クロマトグラフィー質量分析計が第1の分析情報を対応的に生成する。
【0075】
第2の加熱ステップSE3:処理装置を用いて加熱装置を制御し、チャンバー内にセットされた分析対象試料の領域を加熱して、分析対象領域の少なくとも一部から試料の成分を熱的に解離させる。
【0076】
第2の質量分析ステップSE4:処理モジュールを用いて搬送モジュールを制御して、チャンバー内に位置するガスを気相クロマトグラフィー質量分析計に流入させ、これにより、気相クロマトグラフィー質量分析計が第2の分析情報を生成することに対応するステップ。
【0077】
分析ステップSE5:前記処理装置は、前記第1の分析情報と前記第2の分析情報とを比較して、分析対象の分析対象物に含まれる少なくとも一部の成分を含む分析結果情報を生成する。
【0078】
なお、本実施形態の分析方法は、先の実施形態の分析システムを用いて行うことができるが、これに限定されるものではない。なお、第1の質量分析ステップSE2および第2の質量分析ステップSE4で説明した搬送モジュールや、加熱装置の具体的な実施可能な構成については、先の実施例を参照していただきたいので、ここでは繰り返さない。本実施例で説明する第1の分析情報、第2の分析情報および分析結果情報は、先の実施例で説明した分析情報および分析結果情報と同様であり、ここでの説明は繰り返さない。
【0079】
本実施形態の具体的な応用例としては、第1の加熱ステップSE1において、駆動部を制御して、加熱部と試料を搬送するための載せ台とを相対的に移動させ、分析対象位置情報に基づいて、加熱部を制御して、分析対象外領域を加熱するようにしてもよい。第2の加熱ステップでは、駆動部を制御して加熱部と試料を搬送する載せ台を相対的に移動させ、加熱部を制御して分析対象領域を加熱する。処理装置、駆動装置、搬送装置、加熱装置の具体的な接続や、処理装置が分析対象位置の情報をどのように取得するかは、先の実施例で説明したので、ここでは繰り返さない。
【0080】
本発明の分析方法は、まず、第1の加熱ステップSE1と第1の質量分析ステップSE2とを実行し、分析対象の分析対象物を含まない位置での試料のおおよその組成(すなわち、第1の分析情報に含まれるデータ内容)を得る。そして、第2の加熱ステップSE3および第2の質量分析ステップSE4が実行され、試料および分析対象物のおおよその組成(すなわち、第2の分析情報に含まれるデータ内容)が求められる。最後に、分析ステップにより試料上の分析対象物の組成を求めるので、試料の組成を知らなくても試料上の分析対象物の組成を求めることができる。
【0081】
図14を参照して、本実施形態の分析方法は、第1加熱ステップSE1において、処理装置に、加熱装置と載せ台とを相対的に移動させるように分析対象位置情報に従って駆動装置を制御させ、これにより加熱装置が試料の分析対象外領域を加熱する点、第2加熱ステップSE3において、処理装置に、加熱装置と載せ台とを相対的に移動させるように分析対象位置情報に従って駆動装置を制御させ、これにより加熱装置が試料の分析対象領域を加熱する点が先の実施形態と相違している。処理装置、駆動装置、搬送装置、加熱装置の具体的な接続や、処理装置がどのように分析対象位置の情報を取得するかは、先の実施例で説明したので、ここでは繰り返さない。
【0082】
本例は、第1の加熱ステップSE1に先立って、以下のステップを行う点が、これまでの実施形態と異なっている。
【0083】
撮像ステップSF1:処理装置を用いて、まず撮像装置を制御して載せ台上に位置する試料の画像を撮像して撮像画像を生成し、次に表示装置を制御して撮像画像を表示させる。
【0084】
位置情報生成ステップSF2:入力装置によって生成された入力情報を、処理装置を用いて分析するための位置情報に変換し、表示装置が撮影画像を表示することに応答して、入力装置が入力情報を生成するように動作可能である。
【0085】
つまり、人は、表示装置を介して載せ台上の試料のキャプチャ画像を見ることができ、人は、入力装置を操作して、前記キャプチャ画像のどの領域を分析しないか、どの領域を分析するかを決定することができる。
【0086】
図15を参照して、本実施例の分析方法は、第1の加熱ステップSE1の前に以下のステップが含まれる点が、従来の分析方法と異なる。
【0087】
加熱および画像取得ステップSG1:処理装置を用いて、まず加熱ユニットを制御して試料の分析対象外領域を加熱し、同時に画像取得ユニットを制御して分析対象外領域を撮影し、画像情報を生成する。
【0088】
判定ステップSG2:処理装置を用いて、画像情報に基づいて、当該試料について分析対象外領域で熱脱着が生じたか否かを判定する。
【0089】
処理装置は、画像情報に基づいて、非分析領域で試料の熱剥離が発生したと判断した場合、画像情報に基づいて、非分析領域に対する加熱装置の加熱時間を算出し、その後、処理装置は、第1の加熱ステップを行い、当該第1の加熱ステップおよび第2の加熱ステップにおいて、加熱装置を制御して、以下のことを行う。加熱時間に処理装置は、画像情報に基づいて、非分析領域において試料の熱剥離が発生していないと判断した場合、再度、加熱・画像取得ステップSG1を実行する。
【0090】
例えば、画像取得装置は、例えば、通常のカメラや赤外線カメラであってもよく、テストステップSGにおいて、処理装置は、画像取得装置を制御して、30秒に1回(この時間に限らない)、試料とその周囲の画像を取得して画像情報を生成し、画像取得装置で生成した各画像情報に対して、処理装置が画像情報を分析して試料が加熱されたかどうかを判定するようにしてもよい。処理装置は、画像情報に基づいて、試料が加熱されている位置でそのような変化が生じたと判断すると、分析対象外領域の試料の組成の少なくとも一部が熱剥離したと判断し、処理装置は、画像情報に基づいて、加熱装置が試料を加熱する時間を計算し、それによって、処理装置がその後の第1の加熱ステップおよび第2の加熱ステップにおいて、加熱装置が試料の加熱を制御するのに必要な時間を決定する。好ましい実施形態において、画像情報は、撮影された画像に加えて、例えば、撮影時刻を含んでもよい。
【0091】
なお、前記画像取得装置として熱画像取得カメラを用いた場合、それぞれの画像情報には、試料の各領域の温度データも含まれていてもよく、処理装置は、画像情報から、試料に対する加熱装置の加熱時間および加熱された後の試料の各領域の温度を取得することができる。
【0092】
図16を参照して、本実施例の分析方法は、第1の加熱ステップSE1と第1の質量分析ステップSE2との間に第1の判定ステップSH1を含み得る点が、従来の分析方法と異なる:処理装置により温度検出装置が制御されて、分析対象外領域の温度を検出して第1の温度検出情報を生成し、第1の温度検出情報に基づいて、分析対象外の領域の温度が所定温度に達しているか判定する。
【0093】
処理装置が、分析対象外領域の温度がプリセット温度に達していないと判断した場合、第1の加熱ステップを再度行い、処理装置が、非分析領域の温度がプリセット温度に達したと判断した場合、加熱装置を制御して、分析対象外領域の温度をプリセット温度にプリセット時間維持し、その後、加熱装置を制御して(関連物質が熱脱着反応を十分に完了するように)プリセット位置の加熱を停止し、第1の質量分析ステップを行うようになる。
【0094】
第2の加熱ステップSE3と第2の質量分析ステップSE4との間に第2の判定ステップSH2が含まれ:処理装置は、まず、温度検出装置を制御して分析対象領域の温度を検出して第2の温度検出情報を生成し、第2の温度検出情報に基づいて分析対象領域の温度が所定温度に達したか否かを判定する。
【0095】
処理装置が、分析対象領域の温度が予め設定された温度に達していないと判断した場合、第2の加熱ステップSE3が再度実行される。分析対象領域の温度が予め設定された温度に達したと判断した場合には、分析対象領域の温度を予め設定された時間だけ維持するように加熱装置を制御し、その後、(当該物質が熱脱着反応を完全に完了するように)加熱装置を制御し、予め設定した位置の加熱を停止して第2の質量分析ステップSE4が実施される。温度検出装置の詳細な説明については、先の実施例を参照し、ここでは繰り返さない。
【0096】
以上のように、本実施例の分析方法は、第1の判定ステップSH1と第2の判定ステップSH2とによって、加熱装置が非分析領域と分析対象領域とをほぼ同じ温度に加熱するようになっており、最終的な分析結果の精度を向上させることができる。
【0097】
好ましい実施形態では、第2の加熱ステップにおいて、冷却装置を用いて、分析されない試料の領域の温度が所定温度まで上昇しないように、処理装置の動作を同時に制御することも可能である。冷却装置の詳細な説明については、先の実施例を参照し、ここでは繰り返さない。
【0098】
図17を参照すると、この例は、第1の質量分析ステップと第2の加熱ステップとの間に、パージステップSKが含まれる点で従来の分析方法と異なる:流体搬送モジュールは、所定時間、チャンバーからガスを連続的に流すように制御される。パージステップSKは、第2の質量分析ステップでガスクロマトグラフにより分析されるガスに、第1の加熱ステップで試料から発生したガスが含まれないようにするためのものである。
【0099】
図18を参照して、本実施例は、従来の分析方法と異なり、第1の加熱ステップSE1において、非分析領域を加熱して非分析領域の温度を所定温度にするように加熱装置を制御し、第2の加熱ステップSE3において、分析対象領域を加熱して分析対象領域の温度を所定温度にするように加熱装置を制御し、分析ステップSE5において、判定ステップSE51:処理装置が、第1の分析情報が第2の分析情報と所定の類似度より近いかどうかを判定し、かつ、処理装置が判定ステップSE51を含み:前記処理装置は、前記第1の分析情報と前記第2の分析情報との類似度が所定の類似度よりも高いか否かを判定する。
【0100】
第1の分析情報と第2の分析情報とが所定割合以上近いと判定された場合、更新ステップSE52が実行される。所定温度を更新して元の所定温度の値を上げ、第1の加熱ステップ、第1の質量分析ステップ、第2の加熱ステップ、第2の質量分析ステップを順に再度実行し、つまり、第1の加熱ステップと第2の加熱ステップを再度実行して制御する。つまり、第1の加熱ステップと第2の加熱ステップを再実行する場合、非分析領域と分析領域の温度をそれぞれ更新後の設定温度(元の設定温度よりも高い温度)にするように加熱装置を制御する。前記第1の分析情報と前記第2の分析情報との類似度が所定比率以下であると判定された場合、前記分析結果情報を生成する。
【0101】
例えば、試料の分析対象外領域の少なくとも一部の組成を700℃に加熱し、分析対象領域に設定された分析対象物質を720℃に加熱してから熱脱着すると、所定温度を700℃に設定して第1の加熱ステップ、第1の質量分析ステップ、第2の加熱ステップ、第2の質量分析ステップを順に実行すると、処理装置はまず第1の分析情報に含まれる組成が第2の分析情報に含まれる組成とほぼ同じ(例えば最大95%以上)ことを見出すことができるようになる。分析ステップの間、処理装置は、第1の分析情報の組成が第2の分析情報の組成と実質的に同じ(例えば、組成の95%以上までが同じ)であることを発見し、この場合、処理装置は、最初に、元の700℃の温度を700℃より高い温度に更新するために上述の更新工程を実行することになる。仮に、処理装置によって、デフォルト温度を740度に上げる更新工程が実行されたとすると、第1の加熱ステップの後に、第1の質量分析ステップと第2の加熱ステップとが再び順に実行され、第2の質量分析ステップで熱脱着される分析対象物の組成を含むガスがガスクロマトグラフに集められ、続く分析ステップで、処理装置は第1の分析情報に含まれる組成が第2の分析情報に含まれる組成と同一であると判断することになる。続く分析ステップでは、処理部は、第1の分析情報の構成と第2の分析情報の構成とが同じでないことを見出し、それに応じて分析結果情報を生成することになる。
【0102】
ここで重要なことは、前項で述べたように、第1の加熱工程と第2の加熱工程で、それぞれ試料の分析対象外領域と分析領域をほぼ同じ温度に加熱するように加熱装置を設計することが、最終的な分析情報の精度を向上させるということである。
【0103】
以上のように、本発明の分析システム、補助分析システムおよび分析方法によれば、関係者は、試料の組成を知らなくても、試料に付着した分析対象物質の組成を分析することができる。
【0104】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書および添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0105】
Z 分析システム
A 補助分析システム
1 処理装置
11 分析結果情報
12 プリセーブ画像
2 チャンバー
21 可動扉
3 載せ台
31 負荷面
32 流路
4 加熱装置
41 ヒータ
5 駆動装置
6 流体搬送モジュール
61 流体ダクト
611 入口
612 通し口
613 出口
614 流体流路
62 補助ダクト
621 チャネル
6A 流体搬送モジュール
6A1 入口ダクト
6A2 出口ダクト
6A3 第1の電動弁
6A4 第2の電動弁
7 入力装置
71 入力情報
8 撮像装置
81 試料取得画像
82 撮像画像
83 撮像画像
9 表示装置
100 温度検出装置
101 温度検出情報
200 冷却装置
201 クーラ
B 気相クロマトグラフィー質量分析計
B1、B2 分析情報
C 流体供給装置
D 分析対象位置情報
E 遠隔電子装置
M 試料
M1 分析対象外領域
M2 分析対象領域
W 分析対象物