(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154381
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】炉心の制御方法
(51)【国際特許分類】
G21D 3/12 20060101AFI20231012BHJP
G21C 7/32 20060101ALI20231012BHJP
G21C 7/26 20060101ALI20231012BHJP
G21C 7/08 20060101ALI20231012BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
G21D3/12 A
G21C7/32 100
G21C7/26 100
G21C7/08
G21C17/00 220
G21C17/00 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184599
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2022063319
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横井 公洋
(72)【発明者】
【氏名】日野 哲士
(72)【発明者】
【氏名】石井 佳彦
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075BA09
2G075CA08
2G075DA07
2G075GA27
(57)【要約】
【課題】
日負荷追従運転において、特に高出力(例えば、定格出力)復帰時及びその後で
135Xeの濃度変化に伴う臨界制御を実施しても、軸方向出力分布のピーク増大を一定範囲内に抑制可能な炉心の制御方法を提供する。
【解決手段】
本発明の炉心の制御方法は、日負荷追従運転を実施する原子力プラントにおける炉心の臨界制御方法を決定する方法であって、日負荷追従におけるキセノン濃度および平衡キセノン濃度を評価するステップと、前記キセノン濃度N
1および前記平衡キセノン濃度N
2を比較するステップと、炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置を判定するステップと、当該ピークの大きさがより小さくなる臨界制御手段を判断するステップと、を有することを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
日負荷追従運転を実施する原子力プラントにおける炉心の臨界制御方法を決定する方法であって、
日負荷追従におけるキセノン濃度および平衡キセノン濃度を評価するステップと、
前記キセノン濃度N1および前記平衡キセノン濃度N2を比較するステップと、
前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置を判定するステップと、
前記ピークの大きさがより小さくなる臨界制御手段を判断するステップと、を有することを特徴とする炉心の制御方法。
【請求項2】
前記臨界制御手段は、流量制御、吸水温度制御および制御棒制御のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の炉心の制御方法。
【請求項3】
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも大きく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が下部である場合は、前記臨界制御手段を流量制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも大きく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が上部である場合は、前記臨界制御手段を給水温度制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも小さく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が下部である場合は、前記臨界制御手段を給水温度制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも小さく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が上部である場合は、前記臨界制御手段を流量制御と判定することを特徴とする請求項1に記載の炉心の制御方法。
【請求項4】
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも大きく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が下部である場合は、前記臨界制御手段を流量制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも大きく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が上部である場合は、前記臨界制御手段を制御棒制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも小さく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が下部である場合は、前記臨界制御手段を制御棒制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも小さく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が上部である場合は、前記臨界制御手段を流量制御と判定することを特徴とする請求項1に記載の炉心の制御方法。
【請求項5】
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも大きく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が下部である場合は、前記臨界制御手段を流量制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも大きく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が上部である場合は、前記臨界制御手段を給水温度制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも小さく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が下部である場合は、前記臨界制御手段を給水温度制御と判定し、
前記キセノン濃度N1が前記平衡キセノン濃度N2よりも小さく、かつ、前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置が上部である場合は、前記臨界制御手段を流量制御および制御棒制御と判定することを特徴とする請求項1に記載の炉心の制御方法。
【請求項6】
前記炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置を、運転サイクルの経過時間を元に判定する請求項1に記載の炉心の制御方法。
【請求項7】
前記ピークの大きさがより小さくなる臨界制御手段を判断する前記ステップにおいて、判定された前記臨界制御手段に加えて、線出力密度等の制約の範囲内で、異なる臨界制御手段を同時に併用することを特徴とする、請求項1、請求項3、は請求項4、請求項5、及び請求項6のうち、いずれか1項に記載の炉心の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉心の制御方法に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な炉心の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉の炉心には、核燃料物質(例えば、酸化ウラン)を含む複数の燃料ペレットを封入した燃料棒が複数束ねられた燃料集合体が、複数装荷されている。原子炉の定格出力運転を行うためには、この炉心を臨界に維持しなければならない。炉心の臨界制御の方法として、例えば、制御棒の挿入量を調整する制御棒制御、冷却材流量を再循環ポンプによって調整する炉心冷却材の流量制御および蒸気タービンからの抽気を用いてボイラまたは原子炉への給水を加熱することによって調整する給水温度制御等がある。
【0003】
これまでベースロード電源(発電コストが低く、かつ昼夜等の時間帯を問わずに継続的に安定して稼働する電源を示す)として認識されてきた国内の原子力プラントにおいても、近年の再生可能エネルギー(特に太陽光)の大量導入に伴い、日負荷追従運転による調整力としての機能が求められつつある。原子力プラントの負荷追従運転の方法として、炉心の熱出力を変化させる熱出力制御がある。沸騰水型原子炉の熱出力制御には、一般に熱出力の約60~100%の領域では上述した流量制御、熱出力の約60%未満の領域では上述した制御棒制御が用いられる。
【0004】
熱出力制御する際の大きな課題の一つとして、135Xeの濃度変化がある。135Xeは核燃料物質の核分裂によって生じ、核分裂反応を起こす中性子の強吸収物質であるため、その濃度変化に合わせて臨界制御を行う必要がある。135Xeは例えば、定格出力時には生成と消滅がつり合い平衡状態(一定の数密度)となっているが、熱出力を下げると消滅の寄与が減り濃度が上昇していく。炉心にもよるが、おおよそ6~9時間程度で135Xeの数密度がピークとなったのち減少に転じる。この135Xeの数密度がピークとなる時間オーダーというのは、太陽光発電が盛んに行われる日照時間の時間オーダーに比較的近い。従って、太陽光発電が行われている間に、電力の需給調整のため原子力プラントで低出力運転をすることを考えた場合、定格出力に戻す際には、ちょうど135Xeが蓄積した状態である可能性が高い。定格出力に戻した際にも当然臨界を維持する必要があるが、135Xeの蓄積している分、定格運転状態と比べると正の反応度を投入しなければならない。また、この後定格出力を維持すると、135Xeの消滅の寄与が増えて逆に135Xeの数密度が減り負の反応度を投入する必要がでてくる。このように同じ定格出力状態であっても、負荷追従による135Xeの濃度変化に伴い、大きく臨界制御をする必要がある。
【0005】
135Xeの濃度変化に伴う炉心の臨界制御に関連して、特許文献1(特開平9-304586号公報)に記載された技術がある。特許文献1に記載の沸騰水型原子力発電プラントは、日負荷追従運転による135Xeの濃度変化に対して、給水加熱器による昇温を制御し(給水温度制御)、臨界を制御する。給水温度を変化させると、主に炉心の平均ボイド率が変化することで、投入反応度をコントロールすることができる。特許文献1によれば、タービンの熱効率を変動させることなく、適切に日負荷追従運転を行うことができる沸騰水型原子力発電プラントを得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1では、日負荷追従運転において、タービンへの供給蒸気量及び抽気量を制御することで、タービンの熱効率を変動させることなく、135Xeの濃度変化に対応して適切に日負荷追従運転することができるとされている。一方で、特許文献1においては、給水温度制御、すなわち臨界制御自体による炉心の軸方向出力分布の変化については言及されていない。特に、高出力(例えば、定格出力)への復帰時及びその後の軸方向出力分布の変化は、プラントの最大線出力密度等の制約に抵触する可能性がある。また、PCIOMR(Pre-Conditioning Interim Operating Management Recommendation)上のエンベロープ逸脱やSDRs(Soft Duty Rules)上の閾値逸脱等も考えられる。
【0008】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、日負荷追従運転における軸方向出力分布のピーク増大を抑制する炉心の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の一態様は、日負荷追従運転を実施する原子力プラントにおける炉心の臨界制御方法を決定する方法であって、日負荷追従におけるキセノン濃度および平衡キセノン濃度を評価するステップと、キセノン濃度N1および平衡キセノン濃度N2を比較するステップと、炉心の軸方向出力分布におけるピークの位置を判定するステップと、ピークの大きさがより小さくなる臨界制御手段を判断するステップと、を有することを特徴とする炉心の制御方法である。
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、日負荷追従運転において、135Xeの濃度変化に伴う臨界制御を実施しても、特に高出力(例えば、定格出力)復帰時及びその後の軸方向出力分布のピーク増大を一定範囲内に抑制できる。
上記した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。 上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2A】はサイクル初期における流量及び給水温度変化による炉心の軸方向出力分布を示すグラフ(時間帯1での制御)
【
図2B】はサイクル初期における流量及び給水温度変化による炉心の軸方向出力分布を示すグラフ(時間帯2での制御)
【
図3A】はサイクル末期における流量及び給水温度変化による炉心の軸方向出力分布を示すグラフ(時間帯1での制御)
【
図3B】はサイクル末期における流量及び給水温度変化による炉心の軸方向出力分布を示すグラフ(時間帯2での制御)
【
図4】
図2A、2B、3Aおよび3Bにおける軸方向出力分布のピーク増大を抑制する制御方法を示す表
【
図5】実施例1の原子炉熱出力の時間変化を示すグラフ
【
図6】
図5の時間帯3及び4における炉心の臨界制御方法の判定手順を示すフロー図
【
図7】実施例2の原子炉熱出力の時間変化を示すグラフ
【
図8】
図7の時間帯9及び10における炉心の臨界制御方法の判定手順を示すフロー図
【
図9】実施3の原子炉熱出力の時間変化を示すグラフ
【
図10】
図9の時間帯15及び16における炉心の臨界制御方法の判定手順を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者等は種々の検討を重ね、日負荷追従運転に関して、特に高出力(例えば、定格出力)復帰時及びその後の時間帯において、135Xeの濃度変化に伴う臨界制御を実施しても、軸方向出力分布のピーク増大を一定範囲内に抑制可能な制御方法を見出した。この検討結果及び新たに見出した制御方法の概要について以下に説明する。
【0013】
上述の通り、135Xeの濃度変化に伴う臨界制御が軸方向出力分布に影響すると考えられるため、最大線出力密度等の制約から、特に高出力(例えば、定格出力)復帰時及びその後の時間帯において、ピーク増大を一定範囲内に抑制する必要がある。ここで、炉心の連続的な臨界制御には、制御棒制御ではなく、流量制御及び給水温度制御が適用しやすい。以降、特に高出力(例えば、定格出力)復帰時及びその後の時間帯における、制御棒制御、流量制御、給水温度制御とは、高出力での135Xe平衡状態における炉心の制御棒位置、流量、給水温度からその状態を変化させることを意味する。
【0014】
流量制御に関して、例えば、正の反応度を投入するために流量を増大させた場合、増大前と比べて相対的に軸方向上部の出力が増大する。これは、主に軸方向上部のボイド率の変化が下部より大きいためである。
【0015】
一方、給水温度制御に関しては、正の反応度を投入するため給水温度を低下させた場合、軸方向下部で出力分布が増大する。これは、主にサブクール度が大きくなると、沸騰開始点が下流側に移るためである。
【0016】
このように、流量制御と給水温度制御は、(同じ反応度投入操作に対して)軸方向出力分布への影響が違うことが分かる。このことから、運転状況に応じて、これらを適切に切り替えて、あるいは併用して臨界制御することで、軸方向出力分布のピーク増大を一定範囲内に抑制することができると考えた。ここで、運転状況というのは、運転サイクルの経過や高出力(例えば、定格出力)へ復帰した後の時間経過のことを示している。
【0017】
沸騰水型原子力プラントの炉心では、一般的に運転サイクル中に軸方向出力分布が下部から上部へと移っていく。これは、サイクル初期ではボイド率が軸方向下部で低く核分裂反応率が高いが、燃焼と共に核分裂性物質が減りサイクル末期では上部で核分裂反応率が高くなるためである。
【0018】
また、上述のように、低出力から高出力状態への復帰後は、時間経過とともに正の反応度投入から負の反応度投入を行い臨界制御する必要がある。例えば、流量制御であれば、正の反応度投入は流量増大制御を行い、負の反応度投入は流量減少制御を行う。
【0019】
図1は原子炉熱出力の時間変化を示す図であり、原子炉熱出力の時間変化と反応度制御を切り替える時間のイメージを示している。
図1に示す制御では、始めに高出力(定格出力)運転を行い、続いて、太陽光発電の出力が高くなる日中は低出力運転を行い、太陽光発電の出力が低くなる夜間に再び高出力運転を行う場合を示している。低出力から高出力の運転にする際、始めは
135Xe濃度が高い状態にあり、正の反応度投入が必要となる。一方、反応を続けていると平衡
135Xe濃度が低くなっていくため、負の反応度投入が必要となる。正の反応度投入が必要な時間帯1、負の反応度投入が必要な時間帯2は、解析(
135Xe過渡解析等)により、負荷追従時の
135Xe濃度変化及び高出力時の平衡
135Xe濃度を評価し、負荷追従時の
135Xe濃度変化が高出力時の平衡
135Xe濃度より大きければ時間帯1、小さければ時間帯2と判別できる。なお、
図1では、便宜的に時間帯1及び2をそれぞれ一領域で示している。
【0020】
図2Aおよび
図2Bはサイクル初期における流量及び給水温度変化による炉心の軸方向出力分布を示すグラフである。
図2Aは正の反応度投入が必要な時間帯1に相当する制御の結果を示しており、
図2Bは負の反応度投入が必要な時間帯2に相当する制御の結果を示している。また、
図3Aおよび
図3Bはサイクル末期における流量及び給水温度変化による炉心の軸方向出力分布を示すグラフである。
図3Aは正の反応度投入が必要な時間帯1に相当する制御の結果を示しており、
図3Bは負の反応度投入が必要な時間帯2に相当する制御の結果を示している。
【0021】
図2Aより、時間帯1において、給水温度(低下)制御だと、基準の軸方向出力分布よりピークが増大することがわかる。また、
図2Bより、時間帯2において、流量(減少)制御だと軸方向ピークが増大することが分かる。なお、基準の評価結果は定格出力時の平衡炉心の値を示している。
【0022】
一方で、
図3A、
図3Bではサイクル末期で軸方向出力分布が上部へと移り、
図3Aより、時間帯1においては流量(増加)制御で、
図3Bより、時間帯2においては給水温度(上昇)制御で軸方向ピークが増大することが分かる。
【0023】
図4は
図2A、2B、3Aおよび3Bにおける軸方向出力分布のピーク増大を抑制する制御方法を示す表である。以上の検討結果から、
図4に示す組み合わせで
135Xeの濃度変化に伴う臨界制御を実施することで、軸方向出力ピークの増大を抑制できると考えられる。なお、軸方向出力ピークは、最大線出力密度やPCIOMR上のエンベロープ、SDRs上の閾値等の制約の観点から、一定範囲内に抑制すれば制約超過を回避可能と考えられるため、その範囲内であれば、
図4の組み合わせをベースに、ある時間帯の制御方法は組み合わせても良い。具体的な一例として、軸方向出力ピークが下部の場合、時間帯1においては、流量増大制御をベースとするが、軸方向出力ピークの増大が許容される範囲内で、同時に給水温度低下制御を併用しても良い。また、時間帯1の制御は、低出力状態において事前に実施しても良い。
【0024】
その他の臨界制御方法についても、流量制御や給水温度制御と同様に軸方向出力分布への影響を配慮して、代用することも可能である。例えば、給水温度制御は、制御棒制御で代用することが可能である。
図4より、サイクル初期では、時間帯2において、負の反応度投入のため給水温度(上昇)制御を実施して軸方向下部ピークの増大を抑制するが、負の反応度投入のために炉心下部からの制御棒挿入でも、軸方向下部ピークの増大を一定範囲内に抑制可能である。サイクル末期の給水温度制御も同様のことが言える。
【実施例0025】
本発明の好適な一実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される実施例1の炉心の制御方法を、
図5、6を用いて説明する。
【0026】
図5は実施例1の原子炉熱出力の時間変化示すグラフであり、目標とする炉心の熱出力変化を示している。本実施例では、典型的な熱出力変化100%-80%-100%の日負荷追従を考える。負荷追従時のプラントの運転経過としては、サイクル初期に該当すると仮定する。
【0027】
図6は
図5の時間帯3及び4における炉心の臨界制御の判定手順を示すフロー図である。
図6では、まず、ステップ5で負荷追従による
135Xeの濃度N
1変化及び定格出力状態の平衡
135Xe濃度N
2を、解析により評価する。次に、ステップ6ではこれらの
135Xe濃度を比較する。また、ステップ7で、軸方向出力分布のピーク位置が上部か下部かを炉心解析により判定する。最後にステップ8で以上のステップの判定結果により各時間帯の臨界制御法を決定する。具体的には、ステップ6で“True”、ステップ7で“下部”となった場合は流量(増大)制御、ステップ6で“True”、ステップ7で“上部”となった場合は給水温度(低下)制御、ステップ6で“False”、ステップ7で“下部”となった場合は給水温度(上昇)制御、ステップ6で“False”、ステップ7で“上部”となった場合は流量(減少)制御を実施する。
【0028】
実施例1の状況では、時間帯1においては、ステップ6で“True”、ステップ7で“下部”となるため、流量(増大)制御を実施する。また、時間帯2においては、ステップ6で“False”、ステップ7で“下部”となるため給水温度(上昇)制御を実施する。なお、最大線出力密度等の制約の範囲内で、制御方法を組み合わせても良い。例えば、時間帯1においては、流量(増大)制御に加え、制約の範囲内で給水温度(低下)制御を実施しても良い。
【0029】
このように時間帯3及び時間帯4で、臨界制御方法を切り替えることで、軸方向出力分布のピーク増大を一定範囲内に抑制することが可能となる。実施例1は、特に、給水温度制御が可能なプラントでの最適な制御方法である。
実施例2の状況では、時間帯9においては、ステップ12で“True”、ステップ13で“下部”となるため、流量(増大)制御を実施する。また、時間帯10においては、ステップ12で“False”、ステップ13で“下部”となるため、制御棒(挿入)制御を実施する。