(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154382
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】水耕栽培用の水槽、蓋付き水槽、及び栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20231012BHJP
【FI】
A01G31/00 617
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187371
(22)【出願日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2022063362
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314NA02
2B314NC07
2B314NC11
2B314NC22
2B314NC24
2B314NC54
(57)【要約】
【課題】植物の成長を妨げることなく水耕栽培用の培地を適切に位置決めすることが可能な水耕栽培用の水槽を提供する。
【解決手段】本発明の水耕栽培用の水槽は、底面から立ち上がり水耕栽培用の培地を支持する支持部と、支持部に支持された状態の培地のうち、底面と交差する面と当接する当接部と、を備える。そして、支持部に支持された培地に当接部が当接した状態では、水槽内において、培地と底面との間に挟まれた第1空間と、第1空間以外の第2空間とが連通している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面を備える水耕栽培用の水槽であって、
前記底面から立ち上がり、水耕栽培用の培地を支持する支持部と、
前記支持部に支持された状態の前記培地のうち、前記底面と交差する面と当接する当接部と、を備え、
前記支持部に支持された前記培地に前記当接部が当接した状態では、前記水槽内において、前記培地と前記底面との間に挟まれた第1空間と、前記第1空間以外の第2空間とが連通している、水耕栽培用の水槽。
【請求項2】
前記支持部と前記当接部とが、互いに隣接して一体化している、請求項1に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項3】
前記支持部は、前記支持部の上面にて前記培地を支持し、
前記当接部は、前記底面において前記支持部とは異なる位置から立ち上がっている、請求項1又は2に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項4】
前記支持部が複数備えられ、
複数の前記支持部の各々が、前記底面において互いに異なる位置から立ち上がっている、請求項1又は2に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項5】
前記当接部が複数備えられ、
複数の前記当接部には、前記支持部に支持された前記培地において互いに反対側に位置する二つの側面に当接する二つ以上の当接部が含まれる、請求項1又は2に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項6】
前記当接部の前記底面からの立ち上がり量が、前記支持部の前記底面からの立ち上がり量よりも大きい、請求項3に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項7】
前記支持部は、前記支持部の上面に前記培地の外縁部を載せることで前記培地を支持する、請求項3に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項8】
前記底面から立ち上がり、前記培地に形成された凹部に嵌合可能な凸部をさらに備える、請求項3に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項9】
前記支持部と前記凸部とが、互いに隣接して一体化している、請求項8に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項10】
前記水耕栽培用の水槽内には、複数の前記培地が配置可能であり、
前記支持部及び前記当接部が、前記水耕栽培用の水槽内に配置される前記培地毎に設けられている、請求項1又は2に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項11】
前記当接部の外表面は、
前記培地のうち、前記底面と交差する面と当接する当接面と、
前記当接面とは反対側に位置する背面と、を有し、
前記当接面は、前記底面に近づくほど前記背面から離れるように傾斜している、請求項1に記載の水耕栽培用の水槽。
【請求項12】
請求項1に記載の水耕栽培用の水槽と、
前記水耕栽培用の水槽の開口端を覆う蓋材と、を備える、蓋付き水槽。
【請求項13】
前記蓋材は、複数の蓋材片に分離しており、前記複数の蓋材片を所定方向に並べて配置することで前記開口端を覆う、請求項12に記載の蓋付き水槽。
【請求項14】
前記蓋材が前記開口端を覆った状態では、前記当接部が前記当接部の上面にて前記蓋材を支持する、請求項12に記載の蓋付き水槽。
【請求項15】
請求項1に記載の水耕栽培用の水槽、又は請求項12に記載の蓋付き水槽を用いて植物を水耕方式にて栽培する栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培用の水槽、蓋付き水槽、及び栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培の一つの方法として、水槽内に水又は養液を溜め、液面上に水耕栽培用の培地を配置し、培地に植物の苗を保持させる場合がある。このような方法において、培地は、水槽内で配置位置が決められた状態で利用され得る。水槽内での水耕栽培ではないが、水耕栽培において培地を位置決めして用いる例としては、特許文献1に記載の栽培方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1に示す栽培方法では、内部の空間が隔壁によって複数の栽培室に仕切られた容器(特許文献1では「栽培箱」)を用い、各栽培室に培地を敷き詰める。このような構成であれば、個々の培地の配置位置が決められるので、各培地に保持された植物同士の間隔を保つことができる。この結果、栽培箱において複数の植物を同時に栽培している期間中、隣接する植物同士の干渉を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
培地を水槽内で利用する場合には、上述のように培地を位置決めする必要があるが、その一方で、培地に保持された植物の成長に影響を与えないように培地を配置することが重要である。ただし、特許文献1の栽培箱のように仕切られた空間(つまり、栽培室)内に培地を敷き詰めて配置する構成では、植物の成長、特に、根の伸長を阻む可能性がある。
また、水槽内に配置された培地によって植物を保持しながら植物を栽培する場合には、水槽内の養液に光が照射されることで水槽内での藻が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、植物の成長を妨げることなく水耕栽培用の培地を適切に位置決めすることが可能な水耕栽培用の水槽を提供することを目的とする。
また、本発明は、植物の栽培期間中における水槽内での藻の発生を抑えることをも目的とする。
さらに、本発明は、上記の水槽を用いた栽培方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の水耕栽培用の水槽は、底面を備える水耕栽培用の水槽であって、底面から立ち上がり、水耕栽培用の培地を支持する支持部と、支持部に支持された状態の培地のうち、底面と交差する面と当接する当接部と、を備え、支持部に支持された培地に当接部が当接した状態では、水槽内において、培地と底面との間に挟まれた第1空間と、第1空間以外の第2空間とが連通していることを特徴とする。
上記の構成によれば、水耕栽培用の培地を支持部及び当接部によって水槽内で位置決めすることができる。また、位置決めされた培地と水槽の底面との間に空間(第1空間)が存在し、さらに、第1空間が、その周りの空間(第2空間)と連通しているので、培地から出た植物の根を伸ばすのに十分なスペースが確保される。この結果、培地に保持された植物の成長を妨げないように、培地を水槽内で適切に位置決めすることができる。
【0008】
また、上記の構成において、支持部と当接部とが、互いに隣接して一体化していてもよい。この場合には、支持部と当接部とが分離している構成に比べて、支持部及び当接部の強度がより高くなるため、支持部及び当接部が、それぞれの機能をより適切に発揮できるようになる。
【0009】
また、上記の構成において、支持部は、支持部の上面にて培地を支持し、当接部は、底面において支持部とは異なる位置から立ち上がっているとよい。この場合には、支持部とは異なる位置(平面視での位置)にて当接部が培地と当接するので、培地をより精度よく位置決めすることができる。
【0010】
また、上記の構成において、支持部が複数備えられ、複数の支持部の各々が、底面において互いに異なる位置から立ち上がってもよい。この場合には、複数の支持部によって培地が支持されるため、培地の姿勢をより安定させた状態で支持することができる。
【0011】
また、上記の構成において、当接部が複数備えられ、複数の当接部には、支持部の上面に支持された培地において互いに反対側に位置する二つの側面に当接する二つ以上の当接部が含まれてもよい。この場合には、培地において互いに反対側に位置する二つの側面の各々に当接部が当接することで、その培地をより適切に位置決めすることができる。
【0012】
また、上記の構成において、当接部の底面からの立ち上がり量が、支持部の底面からの立ち上がり量よりも大きくてもよい。この場合には、支持部の上面に支持された状態にある培地の側面に、当接部が当接することができ、培地をより適切に位置決めることができる。
【0013】
また、上記の構成において、支持部は、支持部に培地の外縁部を載せることで培地を支持してもよい。この場合には、支持部により、培地の姿勢をより安定させた状態で当該培地を支持することができる。
【0014】
また、上記の構成において、底面から立ち上がり、培地に形成された凹部に嵌合可能な凸部をさらに備えてもよい。この場合には、培地を水槽内でより適切に位置決めすることができ、詳しくは、培地の位置ずれを適切に抑えることができる。
【0015】
また、上記の構成において、支持部と凸部とが、互いに隣接して一体化していてもよい。この場合には、支持部と凸部とが分離している構成に比べて、支持部及び凸部の強度がより高くなるため、支持部及び凸部が、それぞれの機能をより適切に発揮できるようになる。
【0016】
また、上記の構成において、水耕栽培用の水槽内には、複数の培地が配置可能であり、支持部及び当接部が、水耕栽培用の水槽内に配置される培地毎に設けられてもよい。この場合には、複数の培地を水槽内に配置することができ、結果として、一つの水槽における植物の栽培量の増加が期待され得る。
【0017】
また、上記の構成において、当接部の外表面は、培地のうち、底面と交差する面と当接する当接面と、当接面とは反対側に位置する背面と、を有してもよい。そして、当接面は、底面に近づくほど背面から離れるように傾斜しているとよい。この場合には、当接面の傾斜を利用して培地の位置決めを容易に行うことができる。
【0018】
また、前述の目的は、本発明の蓋付き水槽によれば、上述した構成の水耕栽培用の水槽と、水耕栽培用の水槽の開口端を覆う蓋材と、を備えることにより解決される。かかる構成によれば、蓋材によって水槽内への入射光を遮ることができ、水槽内での藻の発生が適切に抑えられる。
【0019】
また、上記の構成において、蓋材は、複数の蓋材片に分離しており、複数の蓋材片を所定方向に並べて配置することで開口端を覆ってもよい。この場合には、複数の蓋材片を並べて配置することで、水槽の開口端を蓋材によって適切に覆うことができる。
なお、上記の構成において、一つ以上の蓋材片を第1の方向に沿って配置し、且つ、一つ以上の蓋材片を第1の方向と交差する第2の方向に沿って配置することで開口端が蓋材によって覆われてもよい。
【0020】
また、上記の構成において、蓋材が開口端を覆った状態では、当接部が当接部の上面にて蓋材を支持してもよい。この場合には、培地を位置決める当接部を、蓋材を支持させる部分として兼用することができる。
【0021】
また、本発明によれば、上述の水耕栽培用の水槽、又は上述の蓋付き水槽を用いて植物を水耕栽培方式にて栽培する栽培方法が実現される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、植物の成長を妨げることなく水耕栽培用の培地を水槽内で適切に位置決めすることができる。また、本発明によれば、水耕栽培用の水槽内での藻の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る蓋付き水槽と水耕栽培用の培地とによって構成される栽培ユニットを示す図である。
【
図2】本発明の一つの実施形態に係る水耕栽培用の培地を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一つの実施形態に係る水耕栽培用の水槽の斜視図である。
【
図4】本発明の一つの実施形態に係る水耕栽培用の水槽の平面図である。
【
図5】本発明の一つの実施形態に係る水耕栽培用の水槽の内部に培地が配置された状態を示す図である。
【
図6】水耕栽培用の水槽の内部に配置された一つの培地及びその周辺を拡大した平面図である。
【
図7】本発明の一つの実施形態に係る水耕栽培用の水槽のうち、一つの角部及びその周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図8】本発明の一つの実施形態に係る水耕栽培用の水槽のうち、一つの角部及びその周辺を拡大して示す平面図である。
【
図10A】蓋材の組み立て手順を示す図である(その1)。
【
図10B】蓋材の組み立て手順を示す図である(その2)。
【
図12】第1の変形例に係る支持部及び当接部を示す図である。
【
図13】第2の変形例に係る支持部及び当接部を示す図である。
【
図14】第3の変形例に係る支持部及び当接部を示す図である。
【
図15】第4の変形例に係る支持部及び当接部を示す図である。
【
図16A】第5の変形例に係る支持部及び当接部を示す斜視図である。
【
図16B】第5の変形例に係る支持部及び当接部を示す側面図である。
【
図17】別例の培地を固定する固定部の第1例を示す斜視図である。
【
図18】別例の培地を固定する固定部の第1例を示す平面図である。
【
図19】別例の培地を固定する固定部の第1例のうち、培地と係合する部分の拡大図である。
【
図20】別例の培地を固定する固定部の第2例を示す斜視図である。
【
図21】別例の培地を固定する固定部の第2例を示す平面図である。
【
図22】別例の培地を固定する固定部の第3例を示す斜視図である。
【
図23】別例の培地を固定する固定部の第4例を示す平面図である。
【
図24】別例の培地を固定する固定部の第5例を示す断面図である。
【
図25】別例の培地を固定する固定部の第6例を示す平面図である。
【
図26】別例の培地を固定する固定部の第6例を示す図であり、
図25のL-L断面図を示す図である。
【
図27】第6例の固定部に別例の培地が固定された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0025】
なお、本明細書にて参照する図面では、図示の便宜上、機器又は装置の一部を省略又は簡略化して図示する場合がある。例えば、
図11~27の各図において、水槽に関しては、大部分の図示を省略し、一部のみ(具体的には、嵌合ボス45又は固定部40等)を図示している。
【0026】
また、本明細書において、各機器(機器中の構成部品を含む)の位置、方向及び向き等を説明する際には、特に断る場合を除き、当該機器が利用されている状態での位置、方向及び向き等を説明する。例えば、以下の説明において、「上面」とは、使用状態において上側に位置する面、換言すると、上方(斜め上方を含む)を向く面を意味する。
【0027】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「水平」、「垂直」、「直交」及び「平行」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な水平、垂直、直交及び平行に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている場合が含まれ得る。
また、本明細書において、「同じ、「同一」及び「等しい」という意味には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
また、本明細書において、「全部」、「いずれも」及び「すべて」という意味には、100%である場合のほか、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合が含まれ得る。
【0028】
<栽培ユニットの構成>
本発明の水耕栽培用の水槽、及び蓋付き水槽は、水耕栽培用の培地とともに、植物を水耕栽培するための機器(以下、栽培ユニット100)として利用される。栽培ユニット100は、
図1に示す外観を有し、例えば建物内で植物Pを工業的に(詳しくは大量に)栽培するために利用される。
なお、建物内で利用される栽培ユニット100の台数は、特に限定されず、建物の床面積及び階数等に応じて任意の数に設定できる。
【0029】
建物において、栽培ユニット100は、例えば、不図示の棚又は保管庫内に配置された状態で利用される。栽培ユニット100では、水槽22内に養液又は水(以下、養液等)が溜められ、水槽22内に培地10を配置され、植物Pが、その根が養液等に浸かった状態で培地10によって保持される。そして、栽培期間中、培地10に保持された植物Pに対して、LED(Light-Emitting Diode)からなる光源等から光を照射して植物Pの光合成を促す。
【0030】
培地10は、植物Pの苗又は種を保持する固形培地であり、本実施形態では、細かな空隙を持つ多孔質体又は繊維状物質等によって構成される。培地10を構成する材質は、特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ロックウール、パルプ、ヤシガラ、PE(Polyethylene)、PET(Polyethylene Terephthalate)及びPC(Polycarbonate)等の樹脂材料、並びに生分解性素材等が培地10の財用として利用可能である。
【0031】
本発明の一つの実施形態において、培地10は、
図2に示すように方形状に成形されたマットであり、数mm~数cm程度の厚みを有する。培地10の平面形状は、特に限定されず、方形以外の形状、例えば、矩形、台形、菱形又はそれ以外の四角形、四角形以外の多角形、円又は楕円等でもよい。
【0032】
培地10に保持された植物Pが苗である場合、植物Pの根が培地10に絡みながら培地10の内部を通過し培地10の下面から突出し、植物Pの成長に伴って更に伸長する。なお、一つの培地10によって保持される植物Pの苗の数は、特に限定されず、一つ又は二つ以上でもよい。
【0033】
また、培地10が備える4つの角部分のそれぞれ(厳密には、角から培地10の中央に若干寄った部位)には、培地10を貫通する円孔12が設けられている。この円孔12は、凹部に相当し、後述の把持装置200が培地10を把持する際に把持装置200のピン202が差し込まれる(
図11参照)。
【0034】
また、培地10を水槽22内に配置(セット)する際には、水槽22内に配置された後述の嵌合ボス45が円孔12に嵌り込む。なお、嵌合ボス45が嵌り込む凹部は、貫通孔及び円孔には限定されず、例えば、培地10の下面に形成された窪み、若しくは陥没した穴等でもよい。
【0035】
蓋付き水槽20は、
図1、3及び4に示すように、水槽22と、水槽22の開口端を覆う蓋材30とを有する。水槽22は、
図3及び4に示すように、上端が開放されたトレイ型(バット型)の容器である。水槽22の材質は、特に限定されないが、水槽22内に後述の固定部40を設ける等の理由から成形が容易な材料であることが好ましく、例えば樹脂材料等が好適である。
【0036】
水槽22は、
図3及び4に示すように、底壁24と、底壁24の外縁に沿って底壁24に立設された側壁26、27とを有する。本発明の一つの実施形態において、底壁24の上面(以下、底面25)は、平坦面であり、例えば方形形状をなす。底面25の形状については、特に限定されず、矩形、台形、菱形又はそれ以外の四角形、四角形以外の多角形、円又は楕円であってもよい。また、底面25は、平坦面に限定されず、底壁24の下面に対して傾斜した面でもよく、円弧状に湾曲した面でもよく、あるいは段差若しくは凹凸が形成された面でもよい。
【0037】
なお、以下では、底面25の外縁において互いに直交する二辺のうち、一辺の延出方向をX方向とし、もう一辺の延出方向をY方向とする。ここで、Y方向は、「第1の方向」に相当し、X方向は、「第1の方向と交差する第2の方向」に相当する。
【0038】
側壁26は、X方向に沿って配置された側壁(以下、第1側壁26という)であり、Y方向において間隔を空けて一対設けられている。側壁27は、Y方向に沿って配置された側壁(以下、第2側壁27という)であり、X方向において間を空けて一対設けられている。
【0039】
第1側壁26及び第2側壁27のそれぞれの高さ、すなわち水槽22の深さは、特に限定されないが、植物Pの栽培に必要な量の養液等を溜めるのに適したサイズに設定されるとよい。なお、水槽22内に溜められた養液等の液面のレベルは、特に限定されないが、例えば、後述の支持部41の上端より上側にあり、且つ当接部43の上端より下側にあるとよい。
【0040】
また、それぞれの第1側壁26の上面には、
図3に示すように、矩形状に切り欠いて形成された窪み28が、X方向に一定間隔で複数設けられている。同様に、それぞれの第2側壁27の上面には、
図3に示すように、矩形状に切り欠いて形成された窪み28が、Y方向に一定間隔で複数設けられている。それぞれの窪み28には、蓋材30を構成する蓋材片32が入り込んで嵌合する(
図10A及び10B参照)。
【0041】
また、水槽22の内部空間には、
図3及び4に示すように、培地10を固定するための複数の固定部40(以下、固定部群40G)が設けられている。それぞれ固定部群40Gに含まれる複数の固定部40は、互いに協働することで、水槽22内に配置された一つの培地10を支持して、その培地10の位置を固定する。
【0042】
本発明の一つの実施形態では、水槽22が備える4つの角部分のそれぞれの周辺に固定部群40Gが設けられており、つまり、計4つの固定部群40Gが設けられており、
図5に示すように、4つの培地10を水槽22内に固定することができる。なお、水槽22内に設けられる固定部群40Gの数、つまり、水槽22内に配置可能な培地10の数は、特に限定されない。
【0043】
また、本発明の一つの実施形態では、
図4に示すように、固定部群40Gに含まれる固定部40の数が二つである。二つの固定部40は、対をなし、互いに離間し、且つ、底面25の対角線上に並んで互いに対向した状態で配置されている。ここで、「二つの固定部40が互いに離間している」とは、二つの固定部40が、同じ平面(具体的には底面25)上に設けられる一方で、水槽22を平面視した際に互いに異なる位置に配置されていることを意味する。
なお、固定部40及び固定部群40Gの構成については、改めて後の項で詳しく説明することとする。
【0044】
蓋材30は、水槽22の開口端の一部又は全体を覆って水槽22内の液面に藻が発生するのを抑える機器である。本発明の一つの実施形態において、蓋材30は、
図1、10A及び10Bに示すように、複数の蓋材片32に分離されている。それぞれの蓋材片32は、例えば、アクリル製の矩形板によって構成される。蓋材片32の材質は、特に限定されないが、蓋材30の機能を発揮させる観点では遮光性が高い材料であることが好ましい。
【0045】
複数の蓋材片32は、水槽22の上端部、詳しくは第1側壁26及び第2側壁27のそれぞれに対して着脱自在に取り付けられる。また、複数の蓋材片32は、所定方向に並んだ状態で配置されている。具体的に説明すると、本発明の一つの実施形態では、蓋材30が4つ以上の蓋材片32(
図1に示す構成では、6つの蓋材片32)に分かれている。そのうちの二つ以上の蓋材片32が、その長手方向がY方向に沿った状態で一対の第1側壁26の間に掛け渡される(
図10A参照)。この際、各蓋材片32のY方向両端部は、各第1側壁26の上端部に形成された窪み28に入り込んで嵌合する。また、残りの蓋材片32は、その長手方向がX方向に沿った状態で一対の第2側壁27の間に掛け渡される(
図10B参照)。この際、各蓋材片32のX方向両端部は、各第2側壁27の上端部に形成された窪み28に入り込んで嵌合する。
【0046】
以上のように、
図1に示すように、4つ以上の蓋材片32が交差して格子状に配置される。また、
図1に示すように、蓋材片32に囲まれる空間(格子の内側)には、培地10が配置される。このように4つ以上の蓋材片32は、培地10と隣り合う位置(換言すると、培地10とは上下に重ならない位置)に置かれて、培地10とともに水槽22の開口端を塞ぐ。
【0047】
上記のように構成された蓋材30であれば、苗移植のために植物Pの苗を保持した培地10を水槽22内に配置した後であっても、水槽22の開口端を容易に覆うことができる。つまり、本発明の一つの実施形態では、水槽22内に配置された培地10の周りに蓋材片32を置くことで、開口端のうち、培地10が存在する範囲以外の領域を蓋材片32によって塞ぐことができる。
【0048】
<固定部の詳細構成について>
次に、水槽22内に設けられた固定部40の構成について詳しく説明する。
水槽22内における4つの角部のそれぞれの周辺には、
図3及び4に示すように、対をなす二つの固定部40からなる固定部群40Gが設けられている。4つの固定部群40Gの各々は、共通の構成であり、詳しくは、底面25の中央に対して点対称である。そのため、以下では、水槽22内における一つの角部(以下、対象角部)に着目し、対象角部の周辺に設けられた固定部40及び固定部群40Gを例に挙げて、その構成について
図7~9Bを参照しながら説明することとする。なお、
図7及び8は、対象角部の拡大図を示している。
【0049】
対象角部付近に設けられた固定部群40Gに含まれる二つの固定部40は、それぞれ、
図7及び8に示すように平面視でV字状に屈曲した形状をなしている。その屈曲角度については、特に限定されないが、例えば90°程度でもよい。なお、以下では、各固定部40のうち、屈曲角度を規定する際の頂点に位置する部分を、便宜的に「頂点部」と称することとする。
【0050】
二つの固定部40の各々は、
図7に示すように、底面25の対角線上(詳しくは、対象角部を通過する対角線上)にそれぞれの頂点部が位置し、且つ、頂点部同士が向かい合った状態で配置されている。また、頂点部同士の間隔は、培地10の平面サイズに応じて設計されており、
図3及び5から分かるように、培地10の平面形状をなす方形の対角線よりも若干短い長さである。
【0051】
二つの固定部40のうち、対象角部により近い固定部40において頂点から延出した部分は、
図7及び8に示すように、対象角部にて交差する二つの側壁26、27のそれぞれに向かってX方向又はY方向に延びている。また、対象角部により近い固定部40の頂点部は、対象角部の頂点(すなわち、第1側壁26と第2側壁27との交差位置)から所定距離だけ離間している。
他方、対象角部からより離れた固定部40において頂点から延出した部分は、
図7及び8に示すように、対象角部にて交差する二つの側壁26、27に対して遠ざかる側に向かって、X方向又はY方向に延びている。
【0052】
それぞれの固定部40の構造について説明すると、
図7及び8に示すように、固定部40は、頂点部を境に対称な構造である。具体的に説明すると、固定部40において頂点部から延出した二つの部分のそれぞれには、頂点部に近い側から、支持部41及び当接部43が設けられている。また、頂点部には嵌合ボス45が設けられている。
【0053】
支持部41は、
図7に示すように、底面25から垂直に立ち上がった板状片又は柱型の突起であり、培地10が水槽22内で固定される際に、支持部41の上面にて培地10を支持する。具体的に説明すると、
図3及び5から分かるように、培地10が水槽22内に配置(セット)された状態において、培地10の外縁部、特に外縁部のうち、培地10の角部付近の部分が支持部41の上面に載置される。
【0054】
なお、支持部41の上面は、培地10を載置して支持する観点から、平坦面、特に水平面であるのが好ましい。ただし、これに限定されず、支持部41の上面は、水平方向に対して傾いた傾斜面でもよく、湾曲面でもよく、あるいは段差又は凹凸が形成された面でもよい。
【0055】
当接部43は、
図7に示すように、底面25から垂直に立ち上がった板状片又は柱型の突起であり、支持部41の上面に支持された状態の培地10のうち、底面25と交差する面と当接する。具体的に説明すると、固定部40において、当接部43は、頂点部とは反対側で支持部41と隣り合う位置に設けられている。また、当接部43は、底面25において、隣接する支持部41とは異なる位置から立ち上がっており、当接部43の底面25からの立ち上がり量(換言すると、突出量)は、支持部41の底面25からの立ち上がり量よりも大きい。つまり、当接部43と支持部41との間には段差面が存在する。この段差面は、
図6から分かるように、支持部41の上面に支持された状態の培地10のうち、底面25と交差(詳しくは略直交)する側面に当接する。
【0056】
より詳しく説明すると、固定部40において頂点部からX方向に延びた部分に設けられた当接部43は、X方向において支持部41と隣接し支持部41側に段差面を備えるため、培地10のX方向端面と当接する。他方、固定部40において頂点部からY方向に延びた部分に設けられた当接部43は、Y方向において支持部41と隣接し支持部41側に段差面を備えるため、培地10のY方向端面と当接する。
【0057】
そして、当接部43が培地10の側面と当接することにより、培地10が位置決めされ、詳しくは、当接部43と培地10との当接方向(すなわち、X方向及びY方向)における培地10の位置が決められる。つまり、各固定部40において、当接部43は、水槽22内に配置された培地10の位置を規制する部分として機能する。
【0058】
なお、段差面は、培地10の側面と当接して培地10の位置を規制する観点から、平坦面、特にX方向又はY方向に平行な平面であるのが好ましい。ただし、これに限定されず、段差面は、X方向又はY方向に対して傾いた傾斜面でもよく、湾曲面でもよく、あるいは凹凸が形成された面でもよい。
【0059】
嵌合ボス45は、底面25から垂直に立ち上がった凸部であり、当接部43とは反対側で支持部41と隣接する。嵌合ボス45の底面25からの立ち上がり量(換言すると突出量)は、支持部41の底面25からの立ち上がり量よりも大きく、また、前述したように、嵌合ボス45は、固定部40の頂点部に設けられている。また、嵌合ボス45のうち、支持部41より上方に位置する部分(以下、嵌合ボス45の上部という)は、ピン形状をなし、その外周面は、底面25と交差する方向(すなわち、水槽22の高さ方向)に延びている。
【0060】
そして、培地10が水槽22内に配置(セット)される際に、嵌合ボス45は、培地10の角部付近に形成された円孔12に嵌合する。つまり、嵌合ボス45は、培地10の円孔12と対応する位置に設けられており、支持部41が培地10を支持した状態で、嵌合ボス45の上部が円孔12と嵌合することができる。この状態では、円孔12の内周面が底面25と交差(詳しくは略直交)しており、嵌合ボス45の上部の外周面は、X方向及びY方向に円孔12の内周面と当接している。これにより、水槽22内における培地10の配置位置をより確実に位置決め(固定)することができる。
【0061】
なお、培地10には四つの円孔12が形成されており、そのうち、二つの円孔12に嵌合ボス45の上部が嵌合する。一方、残り二つの円孔12が開いたままでは、これらの円孔12を通じて光が水槽22内の養液等に入射されて藻の発生の原因となってしまう。そのため、
図7及び8に示すように、嵌合ボス45の上部が嵌合する円孔12以外の円孔12を塞ぐ第2の凸部として、孔塞ぎ部46が設けられてもよい。この孔塞ぎ部46は、底面25から垂直に立ち上がっており、嵌合ボス45の上部が嵌合する円孔12以外の円孔12と対応する位置に設けられている。
【0062】
本発明の一つの実施形態では、支持部41と当接部43とが互いに隣接し、支持部41と嵌合ボス45とが互いに隣接して、これらが一体化している。このように固定部40において嵌合ボス45と支持部41と当接部43が連続していることで、固定部40を備えた水槽22の成形が容易になる。また、支持部41と当接部43と嵌合ボス45とが一体化していることで、それぞれが分離している場合と比べて各部分の強度が向上する。この結果、支持部41、当接部43、及び嵌合ボス45がそれぞれの機能をより適切に発揮できる。
【0063】
また、本発明の一つの実施形態において、水槽22内の角部には支持部41が複数備えられ、複数の支持部41が、底面25において互いに異なる位置から立ち上がっている。詳しく説明すると、水槽22内の各角部には、二つの固定部40が設けられ、各固定部40において、嵌合ボス45の両側に、それぞれ、支持部41及び当接部43が設けられている。つまり、各固定部40では、二つの支持部41が嵌合部42を挟んで互いに直交しており、水槽22内に培地10が配置された際に、その培地10の角部が二つの支持部41によって支持される。これにより、培地10の角部を適切に支持することができる。
【0064】
また、本発明の一つの実施形態において、水槽22内の各角部には当接部43が複数備えられ、複数の当接部43が、底面25において互いに異なる位置から立ち上がっている。詳しく説明すると、水槽22内の各角部に設けられた二つの固定部40の各々では、二つの当接部43が互いに直交する方向に延出し、一方の当接部43が培地10の角部のX方向端面と当接し、もう一方の当接部43が同じ角部のY方向端面と当接する。このような構成により、水槽22内の各角部で培地10を適切に位置決め(固定)することができる。
【0065】
さらに、本発明の一つの実施形態では、水槽22の各角部付近において、二つの固定部40が互いに向き合った状態で設けられている。そのうちの一方に備わる当接部43は、培地10の角部分の側面(X及びY方向の端面)に当接し、もう一方に備わる当接部43は、対角位置にある角部分の側面(X及びY方向の端面)に当接する。つまり、二つの固定部40が備える複数の当接部43には、それぞれの固定部40の支持部41の上面に支持された培地10において互いに反対側に位置する二つの側面に当接する二つの当接部が含まれる。これにより、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、培地10が当接部43の間に挟まれるため、培地10をより一層正確に位置決め(固定)することができる。
【0066】
さらにまた、本発明の一つの実施形態では、水槽22内の各角部に、二つの固定部40からなる固定部群40Gが設けられている。つまり、支持部41、当接部43及び嵌合ボス45は、水槽22内のそれぞれの角部に設けられ、換言すると、水槽22内に配置される培地10毎に設けられている。これにより、
図5に示すように、一つの水槽22内に複数(例えば、四つ)の培地10を同時に配置することができる。
【0067】
なお、水槽22内に複数の培地10が配置された状態において、培地10間の間隔は、培地10に保持された植物を適切に生育させる上で好適な距離に設定されるのが好ましい。そのため、水槽22内における各固定部群40Gの配置位置についても、上記の距離(培地10間の間隔)に応じて好適な位置に決められるのが好ましい。詳しくは、培地10間の間隔は、植物が小さい段階では狭くし、植物が大きくなるにしたがって広くする。なお、間隔の下限については、30mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましく、50mm以上がさらに好ましく、60mm以上が特に好ましい。また、間隔の上限については、300mm以下が好ましく、250mm以下がより好ましく、200mm以下がさらに好ましく、150mm以下が特に好ましい。
【0068】
<水槽内に培地を配置する手順>
次に、水槽22内に培地10を配置し、固定部群40Gによって固定する手順について説明する。ちなみに、以下では、植物Pの苗を移設する場面を例に挙げて説明することとする。つまり、培地10には植物Pの苗が保持され、培地10の下面から植物Pの根が出た状態で、培地10を水槽22に配置する手順について説明する。
【0069】
培地10は、
図11に示すように把持装置200により把持され、詳しくは、把持装置200が、ピン202を培地10の円孔12に差し込んで培地10を把持する。この際、ピン202を広げたり、若しくは狭めたりすることで、培地10に対する把持力を高めるようにすることが好ましい。
【0070】
把持装置200は、水槽22の上端から水槽22内に培地10を投入し、水槽22内の角部周辺に培地10を配置する。この段階では、水槽22の上端が開放されている(つまり、開口端となっている)ため、植物Pが保持された培地10を水槽22内に容易に配置することができる。具体的に説明すると、例えば、水槽22の上端が予め蓋によって覆われてあり、この蓋に形成された培地10と同じ形状で同じサイズの貫通孔に、培地10を嵌め込んで培地10をセットする構成が考えられ得る。このような構成に比べて、上記のように開放された水槽22の上端を通じて培地10を水槽22内に配置することができれば、培地10を容易に水槽22内に配置できる。
【0071】
なお、培地10を水槽22内に配置する段階において、水槽22内に養液等が溜められていてもよく、あるいは、培地10を水槽22内に配置した後で水槽22内に養液等を溜めてもよい。
【0072】
培地10は、水槽22内の角部周辺に配置された後、その箇所に設けられた固定部群40Gによって固定される。具体的には、培地10において対角線上に配置された二つの角部のそれぞれが、固定部群40Gに含まれる二つの固定部40のうち、対応する方の支持部41の上面に載置されて当該支持部41に支持される(
図9A参照)。この際、支持部41は、
図6に示すように、培地10の角部の外縁部を支持する。これにより、培地10の姿勢を安定させた状態で培地10を支持部41によって支持することができる。
【0073】
また、各固定部40に備えられた二つの当接部43が、支持部41に支持された培地10の角部にて交差する二つの側面(X方向及びY方向それぞれの端面)に当接する。このとき、二つの固定部40のうち、一方の固定部40に備えられた当接部43と、他方の固定部40に備えられた当接部43とは、
図6に示すに、培地10において互いに反対側に位置する二つの側面、つまり対辺位置にある側面に当接する。詳しく説明すると、培地10が備える四つの側面のうち、X方向において互いに反対側に配置された二つの側面のそれぞれに当接部43が当接する。同様に、培地10の側面のうち、Y方向において互いに反対側に配置された二つの側面のそれぞれに当接部43が当接する。これにより、培地10において対角線上に配置された二つの角部のそれぞれが、X方向及びY方向において位置決めされる。
【0074】
さらに、培地10における角部の周辺に設けられた円孔12に、固定部40に設けられた嵌合ボス45の上部が嵌合する。これにより、水槽22における培地10の配置位置がより正確に決められ、位置ずれが強固に規制される。
【0075】
以上の手順により、培地10は、水槽22内において固定部40によって位置決めされる。また、位置決めされた培地10は、その下面が水槽22の底面25よりも上方に位置した(浮かんだ)状態にある。つまり、支持部41の上面に支持された培地10の側面に当接部43が当接した状態では、
図9Bに示すように、水槽22内において、培地10と底面25との間に空間(以下、第1空間S1)が挟まれている。
【0076】
上記の第1空間S1が設けられていることで、水槽22内に配置された培地10の直下において、培地10の下面から突出した根が伸長できるスペースを確保することができる。これにより、植物Pの成長に伴う根の伸長を妨げないように植物Pを良好に成長させることがでる。
【0077】
また、
図9Bに示すように、水槽22内において、第1空間S1は、それ以外の空間(以下、第2空間S2)と連通し、詳しくは連続している。第2空間S2は、固定部40の周辺、及び、固定部40から離れた部分の空間であり、第1空間S1と同じ高さ位置にある空間である。第1空間S1と第2空間S2とが連続していることで、植物Pの根は、第1空間S1を通って第2空間S2にまで伸長することができる。この結果、植物Pをより一層良好に成長させることができる。
【0078】
以上までの一連の動作を、水槽22内の角部に培地10を配置する度に繰り返し実施することで、水槽22内に複数の培地10が配置され、水槽22内の各角部において各培地10の位置を固定することができる。なお、水槽22が備える複数(具体的には四つ)の角部の中には、培地10が配置されない角部が含まれてもよい。
【0079】
水槽22内に培地10を配置した後には、水槽22の開口端(上端)を蓋材30によって覆う。具体的に説明すると、水槽22内に配置された培地10の上面は、水槽22の第1側壁26の上面(詳しくは、窪み28の底に位置する面)より若干上方に位置し、第2側壁27の上面(詳しくは、窪み28の底に位置する面)と略同レベルに位置する。
【0080】
かかる状態において、
図10Aに示すように、蓋材30を構成する複数の蓋材片32のうち、二つ以上の蓋材片32を、Y方向に沿って一対の第1側壁26の間に掛け渡す。この際、各蓋材片32を、培地10が存在する領域を避けるように配置し、各蓋材片32の両端部を第1側壁26の上端部に形成された窪み28に嵌め込む。なお、培地10が存在する領域とは、水槽22の開口端を平面視した際に、培地10が存在する領域(平面領域)を意味する。
また、
図10Bに示すように、二つ以上の蓋材片32を、X方向に沿って一対の第2側壁27の間に掛け渡す。この際、各蓋材片32を、培地10が存在する領域を避けるように配置し、各蓋材片32の両端部を各第2側壁27の上端部に形成された窪み28に嵌め込む。
【0081】
以上の要領で複数の蓋材片32を水槽22の上端に配置することで、水槽22の開口端の一部、詳しくは、培地10が存在しない領域が各蓋材片32によって覆われる。一方、開口端のうち、培地10が存在する領域は、培地10によって塞がれる。このように、開口端は、複数の蓋材片32からなる蓋材30と、培地10とにより覆われる。これにより、水槽22内に光が漏れ込んで水槽22内の養液等に藻が発生するのを抑えることができる。
【0082】
また、水槽22内に培地10を配置した後で、複数の蓋材片32を、培地10が存在する領域を避けて配置することにより、培地10に保持された植物Pとの干渉を回避しながら蓋材30を適切に且つ容易に配置することができる。また、各蓋材片32は、水槽22への着脱が自在であるため、例えば、培地10を水槽22から取り出したり、水槽22内の養液を交換したり等する際には、蓋材30を水槽22から簡単に取り外すことができる。
【0083】
また、本発明の一つの実施形態において、蓋材30(つまり、複数の蓋材片32)が水槽22の開口端を覆った状態では、
図10Cに示すように当接部43が当接部43の上面にて蓋材片32を支持してもよい。この場合には、培地10を位置決めするために培地10と当接する当接部43が、蓋材30(詳しくは蓋材片32)を支持する部分として兼用される。これにより、蓋材30を支持する部分が当接部43とは別に水槽22の底面25上に設けられる構成に比べて、水槽22の構造をより簡素化することができる。
【0084】
また、植物Pの苗が生長して苗のサイズが大きくなった場合には、より大きな水槽22、より詳しくは固定部群40Gの間隔がより広がった水槽22に植物Pの苗を培地10ごと移植する。この場合、上記と同様の手順により、水槽22内に培地10を配置して固定部群40Gによって固定する作業を繰り返す。
【0085】
<その他の実施形態>
以上までに本発明の水耕栽培用の水槽、及び蓋付き水槽について具体例を挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、上記以外の実施形態も考えられ得る。
【0086】
上記の実施形態では、支持部41及び当接部43がX方向又はY方向に直線状に並んでいる構成としたが、培地10が支持部41の上面に支持された状態で当接部43が培地10の側面に当接すれば、上記以外の構成でもよい。例えば、
図12及び13に示すように、互いに直交する二つの当接部43の間に、支持部41を各当接部43と隣接する位置に配置させた構成でもよい。あるいは、
図14及び15に示すように、一つの支持部41と一つの当接部43とを階段状に並べて配置した構成でもよい。
【0087】
上記の実施形態では、固定部群40Gには二つの固定部40が含まれ、二つの固定部40によって培地10を固定(位置決め)することとした。ただし、これに限定されず、例えば、一つの培地10を単一の固定部40によって固定(位置決め)してもよい。また、固定部群40Gには、三つ以上の固定部40が含まれてもよく、例えば、
図13~15に示すように四つの固定部40が含まれてもよい。
図13では、四つの固定部40の各々が、培地10が備える四つの角部のうち、対応する角部を支持して位置決め(固定)する。
図14及び15では、四つの固定部40の各々が、平面視で方形である培地10の四辺のうち、対応する辺の中央部を支持して位置決め(固定)する。
【0088】
上記の実施形態では、固定部群40Gに含まれる二つの固定部40が、水槽22の底面25において規定される対角線上に配置されることとした。ただし、これに限定されず、二つの固定部40のうちの少なくとも一方が、上記の対角線からずれた位置に設けられてもよい。
【0089】
上記の実施形態では、各固定部40において、支持部41、当接部43及び嵌合ボス45が連続して一体化していることとした。ただし、これに限定されず、支持部41、当接部43及び嵌合ボス45のうちの一つが残りの部分から分離してもよく、あるいは、支持部41、当接部43及び嵌合ボス45のそれぞれが互いに分離し、互いに異なる位置にて底面25から立ち上がっていてもよい。
【0090】
上記の実施形態では、水槽22内における培地10の配置位置をより正確に固定(位置決め)する目的から、各固定部40に嵌合ボス45を設けることとしたが、これに限定されず、
図12~15に示すように、嵌合ボス45を備えない固定部40が含まれてもよい。あるいは、特に図示しないが、嵌合ボス45が当接部として機能してもよく、その場合には、上記の実施形態に係る当接部43(培地10の側面と当接する当接部)が省略されてもよい。
【0091】
上記の実施形態では、水槽22を平面視した場合に、当接部43が、水槽22の底面25において支持部41とは異なる位置から立ち上がっていることとした。ただし、これに限定されず、水槽22を平面視した場合に、当接部43が支持部41と同じ位置に設けられてもよい。詳しくは、
図16A及び16Bに示すように、当接部43が支持部41の真上に位置し、支持部41の延長線上にあって支持部41と連続し、固定部40が柱状をなしてもよい。この場合、固定部群40Gには、一体化された支持部41及び当接部43、すなわち、柱状の固定部40が複数含まれ、例えば四角形の各頂点位置にある。
複数の柱状の固定部40に囲まれた空間には、
図16Aに示すように、培地10が配置される。上記の空間を平面視したサイズは、培地10の平面サイズよりやや小さい。このため、上記の空間の内側に培地10を配置する際には、培地10の外縁をなす四辺の各々が、対応する柱状の固定部40に当接し、それぞれの柱状の固定部40を外側に撓ませながら培地10を下方に押し込む。最終的に、培地10は、
図16Bに示すように、その下端が柱状の固定部40の中途箇所と隣り合う位置で留まる。これにより、培地10が位置決めされる。換言すると、柱状の固定部40において、培地10の下端より下方に位置する部分が支持部41に相当し、それよりも上方で培地10の側面に当接する部分が当接部43に相当する。
【0092】
上記の実施形態では、固定部群40Gに含まれる二つの固定部40が、それぞれ当接部43を備えており、すなわち、固定部群40Gには、複数の当接部43が設けられていることとした。そして、上記の実施形態では、固定部群40Gにおける複数の当接部43が、培地10において互いに反対側に位置する二つの側面(対辺の位置にある二つの側面)に当接する二つの当接部43を含むこととした。ただし、培地10において互いに反対側に位置する二つの側面に当接する当接部43の数は、二つには限定されず、三つ以上でもよい。
【0093】
上記の実施形態では、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、培地10の両端面に当接部43が当接することとした。ただし、これに限定されず、X方向又はY方向のいずれか一つの方向のみにおいて、当接部43が培地10の両端面に当接する構成でもよい。
【0094】
上記の実施形態では、培地10の位置が固定部40によって固定された状態において、培地10の外縁部、特に培地10の角部の外縁部が支持部41の上面に載せられて支持部41によって支持されることとした。ただし、これに限定されず、培地10の角部以外の外縁部、あるいは、培地10の外縁部以外の部分が支持部41の上面に載置されることで支持部41に支持されてもよい。
【0095】
上記の実施形態では、蓋材30が複数の蓋材片32に分かれていることとしたが、これに限定されず、蓋材30が単一の機器(一部品)によって構成されてもよい。また、上記の実施形態では、複数の蓋材片32のうち、二つ以上の蓋材片32をX方向に沿わせて並べ、二つ以上の蓋材片32をY方向に沿わせて並べて蓋材片32を交差させて配置したが、これに限定されるものではなく、二つ以上の蓋材片X方向又はY方向のいずれか一つの方向のみに沿わせて配置してもよい。
【0096】
上記の実施形態では、複数の蓋材片32を、水槽22の開口端において培地10が存在する領域を避けて配置したが、これに限定されるものではない。複数の蓋材片32を、培地10が存在する領域に掛かるように配置してもよく、つまり、蓋材30のうちの少なくとも一部分が培地10の上面に被さった状態で蓋材片32を配置してもよい。
【0097】
上記の実施形態では、培地10を位置決めするために培地10に当接する当接部43が、蓋材30(詳しくは、蓋材片32)を支持する部分として兼用されることとした。ただし、これに限定されず、
図15に示すように、蓋材30を支持する蓋支持部47が、当接部43とは別に設けられ、当接部43とは異なる位置で底面25から立ち上がってもよい。
【0098】
上記の実施形態では、水耕栽培用の培地として、平面視で方形状に成形されたマットからなる培地10を用いるケースについて説明した。ただし、これに限定されず、別例の培地として、
図17に示すような枠型の培地14を用いてもよい。この培地14は、方形枠からなる外縁部15の内側に枡型又は椀型の保持部16を配置して外縁部15と保持部16とを帯状又は棒状の連結部17によって連結させた構成となっている。保持部16の内部には、多孔質体又は繊維状物質等からなる充填材(不図示)が充填されている。この充填材に植物の苗の根元部分が担持されることで、培地14の保持部16が充填剤を介して植物の苗を保持する。このような構造の培地14を用いる場合にも、本発明の水槽、及び蓋付き水槽は利用可能である。すなわち、
図17~23に示すように、複数の固定部40からなる固定部群40Gにより、上記の構造を有する培地14を水槽の内部空間にて支持して固定することができる。
【0099】
具体的に説明すると、
図17及び18に示すように、固定部群40Gが、平面視で四角形状に配置された四つの固定部40からなり、各固定部40が、一つの支持部41と一つの当接部43とを階段状に並べて配置した構成でもよい。かかる構成では、各固定部40の支持部41の上端面に、培地14の外縁部15が載置され、詳しくは
図18に示すように、外縁部15がなす四辺のうち、対応する辺の中央部が載置される。各固定部40の当接部43は、支持部41より外側に位置しており、外縁部15の外側面と当接し、詳しくは
図18に示すように、外縁部15がなす四辺のうち、対応する辺の中央部の外側面と当接する。これにより、培地14は、各固定部40により位置決めされて水槽内で固定される。また、外縁部15が有する4つの角部のそれぞれの直下には固定部40が存在しないため、角部にて培地14を容易に把持することができる。これにより、培地14の移動及び取出しをスムーズに行うことができる。
なお、支持部41よりも外側に位置するとは、培地14が各固定部40によって固定された状態において、支持部41から見て培地14の保持部16側に位置することを意味する。
【0100】
また、各固定部40の当接部43は、
図19に示すように、外縁部15と当接する当接面から突出した爪状の係合凸部48を備えてもよい。この場合、係合凸部48と支持部41の上端面の間に外縁部15が挟み込まれることで、係合凸部48が外縁部15と係合する。このような構成であれば、培地14をより強固に固定できる。これにより、培地14に保持された植物の苗が生長して大きくなった際に、培地14の位置ずれを効果的に抑えることができる。
【0101】
固定部40は、
図17及び18に示す構造とは支持部41と当接部43の位置関係が逆転したものでもよい。すなわち、
図20及び21に示すように、各固定部40の当接部43は、支持部41よりも内側に位置し、外縁部15の内側面(保持部16)と当接してもよい。
なお、支持部41よりも内側に位置するとは、培地14が各固定部40によって固定された状態において、支持部41から見て培地14の保持部16とは反対側に位置することを意味する。
【0102】
また、先に説明した
図12に示す構成と同様、固定部群40Gが、互いに対向する位置に配置された二つの固定部40を有してもよい。また、各固定部40は、
図22及び23に示すように、互いに直交する二つの当接部43の間に、支持部41を各当接部43と隣接する位置に配置させた構成でもよい。また、
図23に示すように、二つの固定部40の一方では、外縁部15における一つの角部(以下、第1角部15a)が支持部41に支持され、第1角部15aにて直交する二つの外側面のそれぞれに当接部43が当接する。もう一方の固定部40では、外縁部15において第1角部15aと対向する位置にある角部(以下、第2角部15b)が支持部41に支持され、第2角部にて直交する二つの外側面のそれぞれに当接部43が当接する。また、
図22及び23から分かるように、外縁部15において第1角部15a及び第2角部15bを除いた残りの角部は、柱状の補助支持部49によって支持される。補助支持部49は、互いに離れた位置に2つ設けられており、各補助支持部49の上端面は、各固定部40の支持部41の上端面と同じ高さに位置している。この補助支持部49が設けられていることで、培地14の姿勢を安定させた状態、つまり培地14のガタツキを抑えた状態で培地14を固定することができる。
【0103】
また、培地14を固定する固定部40において、当接部43の外表面のうち、培地14の外縁部15と当接する当接面は、水槽の底面25の法線方向に平行な面であってもよい。あるいは、
図24に示すように、当接面43aが底面25の法線方向に対して傾斜してもよい。より詳しく説明すると、当接部43の外表面のうち、当接面43aとは反対側に位置する面を背面43bとした場合に、当接面43aは、底面25に近づくほど背面43bから離れるように傾斜してもよい。この場合には、当接面43aの傾斜を利用して培地14を位置決めすることが容易になる。より詳しく説明すると、培地14を、当接面43aに沿って支持部41の上端面に載置する位置まで移動させることで、当接部43に当接させた状態で支持部41に支持させて位置決めすることができる。また、当接面43aが傾斜していれば、固定部40を含む水槽を、樹脂材料を用いた真空成形法によって製造する場合に成形が容易になる。
【0104】
また、固定部40の形状は、柱状に限定されず、
図25及び26に示すように、平面サイズが下側(裾側)に向かって徐々に大きくなる山型形状でもよい。
図25及び26に示す構成では、間隔を空けて並ぶ二つの固定部40が固定部群40Gを構成している。それぞれの固定部40において、当接部43は、支持部41の真上に位置しており、支持部41の延長線上にあって支持部41と連続している。より詳しく説明すると、それぞれの固定部40の上端部のうち、相対する固定部40に面する部分が平面視で略扇状に凹むことで当接部43が形成され、その凹みより下方に位置する部分が支持部41を構成している。また、当接部43の外表面のうち、培地14の外縁部15と当接する当接面43aが平面視で円弧状に湾曲した面となる。このような構成の固定部40を複数含む固定部群40Gによれば、例えば、
図27に示すように外縁部15が円形枠からなる培地14を、水槽の内部空間にて支持して固定することができる。つまり、培地14の外縁部15の外周面が各固定部40の当接部43の当接面43aに当接し、当接部43の直下に位置する各固定部40の支持部41に外縁部15が載置される。これにより、
図27に示すように、外縁部15が円形枠からなる培地14が、二つの固定部40(固定部群40G)によって固定される。
【0105】
また、
図25及び26に示す構造の固定部40では、当接部43の外表面のうち、培地14の外縁部15と当接する当接面43aが、底面25の法線方向に対して傾斜している。より詳しく説明すると、当接部43の外表面のうち、当接面43aとは反対側に位置する面を背面43bとした場合に、当接面43aは、底面25に近づくほど背面43bから離れるように傾斜している。この場合には、当接面43aの傾斜を利用して培地14を位置決めすることが容易になる。さらに、
図25及び26に示す構造の固定部40では、支持部41の外表面のうち、当接面43aの直下に位置する支持側面41aが、底面25の法線方向に対して傾斜しており、詳しくは、当接面43aと同じ傾斜方向及び傾斜角度にて傾斜している。このように当接面43a及び支持側面41aが傾斜していれば、固定部40を含む水槽を、樹脂材料を用いた真空成形法によって製造する場合に成形が容易になる。
【0106】
上記の実施形態では、主として、蓋付き水槽20の構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、蓋材30を用いずに水槽22単独で使用してもよい。蓋なしの水槽であれば、蓋材30を取り付ける必要がないので、蓋材30の取り付けの手間を省くことができる。また、蓋なしの水槽では、水槽22内の養液等に藻が発生する可能性があるが、蓋がないことで養液等の交換を容易に行うことができる。そのため、定期的に養液等を交換すれば、蓋なしの水槽において藻の発生を抑えることができる。
なお、蓋がない水槽22を用いる場合、水槽22内の養液等を通じて水槽22の底面25に光が到達するが、この光を植物の栽培に有効に利用する上で、底面25の光の反射率は極力高いことが好ましい。具体的には、底面25において、鏡面反射率と拡散反射率の和である全反射が80%以上であるのが好ましく、より好ましくは90%以上であるのがよく、さらに好ましくは95%以上であるのがよく、特に好ましくは98%以上であるのがよい。
上記の理由から、底面25は、反射率が一般的に高い白色の樹脂材料又は鏡によって構成されてもよい。樹脂材料によって底面25を構成する場合には、発泡PET(Polyethylene Terephthalate)、発泡PC(Poly Carbonate)又はユポ紙等を用いるのが好ましい。鏡によって底面25を構成する場合には、銀又はアルミニウム等の金属を利用するとよい。
【符号の説明】
【0107】
10 培地(水耕栽培用の培地)
12 円孔(凹部)
14 培地(水耕栽培用の培地)
15 外縁部
15a 第1角部
15b 第2角部
16 保持部
17 連結部
20 蓋付き水槽
22 水槽(水耕栽培用の水槽)
24 底壁
25 底面
26 第1側壁
27 第2側壁
28 窪み
30 蓋材
32 蓋材片
40 固定部
40G 固定部群
41 支持部
41a 支持側面
43 当接部
43a 当接面
43b 背面
45 嵌合ボス(凸部)
46 孔塞ぎ部
47 蓋支持部
48 係合凸部
49 補助支持部
100 栽培ユニット
200 把持装置
202 ピン
P 植物
S1 第1空間
S2 第2空間