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特開2023-154415サイドエアバッグを備える車両用シート
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  • 特開-サイドエアバッグを備える車両用シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154415
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】サイドエアバッグを備える車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20231012BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20231012BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/64
B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060519
(22)【出願日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】102022000006824
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ トニ
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087CD05
3B087DE03
3B087DE10
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054BB22
3D054EE20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】側方衝突時における、車両乗員の安全性を高める。
【解決手段】フレーム5と、フレーム5に取り付けられ、弾性変形可能であり、座面2、背もたれ3、ヘッドレスト4に分割される支持構造体6と、支持構造体6を覆う内装材7と、フレーム5の後壁に取り付けられ、後壁9及び支持構造体6と接触する2つの側壁10を有するカバーシェル8と、フレーム5に直接固定され、前記カバーシェル8の外側壁10によって横方向に区切られ、支持構造体6の外側部分14によって前方で区切られた収容スペース内に配置された、サイドエアバッグ11と、フレーム5に直接取り付けられ、サイドエアバッグ11とカバーシェル8との間に位置するように、サイドエアバッグ11の後方に配置された、剛性を有する偏向板12とを備える、車両用シート1。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シート(1)であって、
フレーム(5)と、
前記フレーム(5)に取り付けられ、前記シート(1)の乗員の身体に押されることに応じて弾性的に変形するように弾性変形可能であり、座面(2)、背もたれ(3)、及びヘッドレスト(4)に分割される支持構造体(6)と、
前記支持構造体(16)を覆い、外側への美的かつ触覚的な境界面を形成する内装材(7)と、
前記フレーム(5)の後壁に取り付けられ、後壁(9)、及び前記支持構造体(6)と接触する2つの側壁(10)を有するカバーシェル(8)と、
膨張式クッションが設けられ、前記フレーム(5)に直接固定され、前記カバーシェル(8)の外側壁(10)によって横方向に区切られた収容スペース(13)内に配置されたサイドエアバッグ(11)と、
前記フレーム(5)に直接取り付けられ、前記サイドエアバッグ(11)と前記カバーシェル(8)との間に位置するように、前記サイドエアバッグ(11)の後方に配置された、剛性の偏向板(12)と、を備え、
前記収容スペース(13)が、前記支持構造体(6)の外側部分(14)によって前方で直接画定されるため、前記サイドエアバッグ(11)の前壁が、前記支持構造体(6)の前記外側部分(14)の後壁に、部品を介さずに直接面し、
前記カバーシェル(8)の外側壁(10)の端部と前記支持構造体(6)の前記外側部分(14)との間の接続部(15)が、前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションが展開することの推力によって、破損するように較正された機械的抵抗を有し、したがって、前記カバーシェル(8)の前記外側壁(10)の前記端部と前記支持構造体(6)の前記外側部分(14)との間に、前記クッションが前記シート(1)から外に出る通路開口(17)を形成し、
前記支持構造体(6)の前記外側部分(14)を直接押圧する、前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションが展開することの推力によって、前記支持構造体(6)の前記外側部分(14)が破損せず、前方に変形するように構成されることを特徴とする、シート(1)。
【請求項2】
前記偏向板(12)が、前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションが展開することの推力によって、破損及び変形することのないように十分に堅牢である、請求項1に記載のシート(1)。
【請求項3】
前記偏向板(12)が、前方に面する、すなわち前記サイドエアバッグ(11)に面する「U」字形状を有する、請求項1に記載のシート(1)。
【請求項4】
前記偏向板(12)の外側付属部が、前記偏向板(12)の内側付属部よりも前方に向かって延出している、請求項3に記載のシート(1)。
【請求項5】
前記偏向板(12)が、前記クッションが前方に向かって展開し、後方に向かっては展開しないように、前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションの展開を導くように設計されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(1)。
【請求項6】
前記偏向板(12)が、前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションが展開することから、前記カバーシェル(8)の前記後壁(9)を保護するように設計されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(1)。
【請求項7】
前記偏向板(12)が、前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションの展開後に、いかなる変形も受けないように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(1)。
【請求項8】
前記カバーシェル(8)の外側壁(10)が、予め弱体化されたヒンジ線(16)を有し、前記サイドエアバッグ(11)のクッションが展開することよって前記外側壁(10)が押し進められたときに、前記外側壁(10)が前記ヒンジ線(16)に沿って優先的に回転しやすくなる、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(1)。
【請求項9】
前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションが、前記支持構造体(6)の前記外側部分(14)を前方に押圧し、前記カバーシェル(8)の前記外側壁(10)を側方に押圧するように構成され、したがって2つの作用、すなわち、前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションが展開することの推力によって、前記支持構造体(6)の前記外側部分(14)が前方に変形する一方で、前記サイドエアバッグ(11)の前記クッションが前記シート(1)から出て前方に突出するための前記通路開口(17)を開くように、前記カバーシェル(8)の前記外側壁(10)が、前記支持構造体(6)の前記外側部分(14)からそれ自体を切り離し、かつ予め弱体化されたヒンジ線(16)を中心に外側に回転することをもたらす、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(1)。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願は、2022年4月6日に出願されたイタリア特許出願第102022000006824号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、サイドエアバッグを備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0003】
自動車を扱う場合に、側方衝突は前方衝突に次いで二番目に多い、約20%を占める事故であり、交差点で運転者が道を譲らない場合、あるいは、車両が道路を外れて、柱、木、又は他の物体に衝突する場合に発生する。側方衝突の影響を低減するために、サイドエアバッグが、車両乗員の胴体及び頭部を保護し、自動車の受動的安全における重要な革新となるように導入されてきた。運転者及び前席乗員にとって、サイドエアバッグは、身体の上部を保護するための適正な位置に常にあるように、通常、前部シートの背もたれ内に収容される。一方、後席乗員用には、通常、サイドエアバッグはドアパネル内に収容される。
【0004】
構造的観点から、シートは、車両の床板に固定されたフレーム、及び、フレームに取り付けられ、弾性的に撓む(典型的にはポリウレタンフォーム製の)支持構造体、並びに、支持構造体を覆い、外部への美的かつ触覚的な境界面を構成する内装材を備える(この内装材は、布又は革製であり得る)。現在のところ、支持構造体及び内装材は、サイドエアバッグの領域に配置された1つ又はそれ以上のガイド付き破断線に沿って、予め弱体化されている。そうすることによって、衝撃が起こり、サイドエアバッグが膨張したときに、サイドエアバッグはガイド付き破断線に沿って支持構造体及び内装材を破断し、シートの乗員と車室の側壁との間に割って入るために、シートから外に出る。
【0005】
米国特許第8905431号には、サイドエアバッグを備えるシートが開示されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、側方衝突時における車両乗員の安全性を高めることができる、サイドエアバッグを備える車両用シートを提供することである。
【0007】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲で主張されるように、サイドエアバッグを備える車両用シートが提供される。
【0008】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を説明し、説明の不可欠な部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明の説明を行う。
図1】本発明によるシートの斜視図である。
図2図1のシートの側面図である。
図3図1のシートの背もたれの一部の、線III-IIIによる断面図である。
図4図1のシートの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1において、番号1は、全体として、車両用シートを示す。
【0011】
シート1は、実質的に水平に配置された座面クッション2、及び実質的に垂直に配置された背もたれ3からなる。座面クッション2及び背もたれ3は、共にシート1を「L」形状にする。背もたれ3は、背もたれ3自体に含まれるヘッドレスト4にて頂部で終了する(すなわち、ヘッドレスト4は、背もたれ3と共に分割不可能な単一の本体を形成する)。
【0012】
構造的観点から、図4によれば、各シート1は、車両の床板に固定された(典型的には、金属製又は複合材料製の)フレーム5、及び、フレーム5に取り付けられ、シート1の乗員の身体に押されることに応じて弾性的に変形するように弾性変形する(撓む)ことのできる(典型的には、ポリウレタンフォーム製の)支持構造体6、並びに、支持構造体6を覆い、外部との美的かつ触覚的な境界面を構成する、内装材7を備える(内装材7は、布又は革製であり得る)。
【0013】
更に、シート1は、プラスチック材料で作製され、シート1の後壁を構成するようにフレーム5の後部に取り付けられた、(後部)カバーシェル(パネル)8を備える(あるいは、カバーシェル8は、複合材料で作製することもできる)。特に、カバーシェル8は、後壁9、並びに、内装材7によって覆われた支持構造体6と接触する2つの側壁10(すなわち、側面)を有する。
【0014】
図4によれば、シート1は、フレーム5に直接固定され、衝突発生時にクッションを膨張させるサイドエアバッグ11を備える。このクッションは、シート1の乗員と車室の側壁との間に割って入るために、実質的に長手方向に展開する。フレーム5には偏向板12が直接取り付けられる。偏向板12は、サイドエアバッグ11の後方に配置され(すなわち、サイドエアバッグ11とカバーシェル8との間に配置され)、剛性であり、サイドエアバッグ11のクッションが展開することの推力によって破損又は変形しないように、十分に堅牢である(耐性がある)。すなわち、偏向板12は、サイドエアバッグ11のクッションが展開した後に、いかなる変形も生じないように構成されている。
【0015】
好ましい実施形態によれば、偏向板12は、前方に面する、すなわちサイドエアバッグ11に面する「U」字形状を有する。偏向板12の「U」字形状は、外側に延出するにつれて非対称である。すなわち、偏向板12の外側付属部は、偏向板12の内側付属部よりも前方に向かって延出している(すなわち、長手方向に長い)。
【0016】
偏向板12の機能は、クッションが前方に向かって(すなわち、シート1の乗員に向かって)展開し、後方に向かって(すなわち、カバーシェル8に向かって)展開しないように、サイドエアバッグ11のクッションの展開を導くものである。別の観点からは、偏向板12は、サイドエアバッグ11のクッションの展開からカバーシェル8を「保護」し、したがって、クッションがカバーシェル8に向かって(対して)展開することを防止し、したがって、クッションを前方に向かって(すなわち、シート1の乗員に向かって)展開させる。
【0017】
偏向板12は、比較的高い機械的抵抗を有する必要があるため、金属材料で作製される。あるいは、その重量を減らすために、複合材料で偏向板12を作製することができる。
【0018】
図3によれば、サイドエアバッグ11は、収容スペース(容積、空洞)13内に配置される(囲まれている)。この収容スペースは、カバーシェル8の外側壁10(すなわち、シート1が設置されている車両の外側を向く外側壁)によって横方向に区切られ、内装材7によって(少なくとも部分的に)覆われた、支持構造体6の外側(サイド)部分14によって、正面方向に区切られている。このようにして、サイドエアバッグ11の前壁は、それらの間の部品なしに、支持構造体6の外側部分14の後壁に直接面する。すなわち、サイドエアバッグ11の前壁は、支持構造体6の外側部分14の後壁に「直面」しており、それらの間の中間部品はない。カバーシェル8の外側壁10の端部と支持構造体6の外側部分14との間の接続部15は、サイドエアバッグ11のクッションが展開することの推力によって破損するように較正された、比較的弱い機械的抵抗を有するため、カバーシェル8の外側壁10の端部と支持構造体6の外側部分14との間に通路開口17を形成する。更に、カバーシェル8の外側壁10は、予め弱体化されたヒンジ線16を有し、外側壁10がサイドエアバッグ11のクッションが展開することによる機械的応力を受けたときに、この予め弱体化されたヒンジ線に沿って、外側壁10が優先的に回転しやすくなる。
【0019】
サイドエアバッグ11のクッションが(明らかに、衝突を受けて)展開する場合、(偏向板12によっても押し進められる)サイドエアバッグ11のクッションは、支持構造体6の外側部分14を前方に直接押圧し、かつカバーシェル8の外側壁10を横方向に押圧するため、2つの作用をもたらす。すなわち、サイドエアバッグ11のクッションが展開することの推力が、支持構造体6の外側部分14を直接に押圧することによって、支持構造体6の外側部分14が前方に変形する。一方、カバーシェル8の外側壁10は、支持構造体6の外側部分14からそれ自体を分離し(上述したように、それらの接続部15は、サイドエアバッグ11のクッションが展開することの推力によって破損するように較正された、比較的弱い機械的抵抗を有する)、支持構造体6の外側部分14は、通路開口17を開くように予め弱体化されたヒンジ線16の周りを外側に回転する。サイドエアバッグ11のクッションは、シート1の乗員と車室の側壁との間に割って入るために、この通路開口17を介してシート1から出て前方に突出する。
【0020】
言い換えれば、サイドエアバッグ11のクッションが展開することの推力は、支持構造体6の外側部分14を直接押圧し、したがって、支持構造体6の外側部分14を前方に押し進めるものであり、支持構造体6の外側(サイド)部分14は、それによって破損せず、前方に変形するように構成される。したがって、支持構造体6の外側(サイド)部分14は、サイドエアバッグ11のクッションが展開することによって破壊されることなく、イドエアバッグ11のクッションが展開することによって変形するだけである(すなわち、シート1の内側に向かって前方に、したがってシート1の乗員に向かって前方に押し進められる)。このようにして、支持構造体6の外側(サイド)部分14は、サイドエアバッグ11のクッションが展開することによって破損し、乗員に向かって投げ出されるおそれのある、シート1の内部に存在し得る(一般にプラスチック製の)部品類から、シート1の乗員を保護する。
【0021】
本明細書に記載の実施形態は、互いに組み合わせることができ、そのために本発明の保護範囲を超えることはない。
【0022】
上述したシート1は、多くの利点を有する。まず、上記に開示したシート5は、側方衝突時における、車両乗員の安全性を高めることができる。サイドエアバッグ11のクッションが、理想的に、すなわちシート1の乗員と車室側壁との間に全体的に割って入るように、基本的に前方に突出することによって展開するため、この結果が得られる。また、サイドエアバッグ11のクッションが展開することによって、シート1の支持構造体6は破壊されず、シート1の乗員により大きな保護を提供することができるため、この結果が得られる。
【0023】
最後に、上述したシート1は、製造が簡単で経済的なものである。
【符号の説明】
【0024】
1 シート
2 座面クッション
3 バックレスト
4 ヘッドレスト
5 フレーム
6 支持構造体
7 内装材
8 カバーシェル
9 後壁
10 側壁
11 サイドエアバッグ
12 偏向板
13 収容スペース
14 外側部分
15 接続部
16 ヒンジ線
17 通路開口
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】