(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154419
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】車椅子のための調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
A61G5/12 707
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023061076
(22)【出願日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】17/714,395
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VELCRO
(71)【出願人】
【識別番号】519430941
【氏名又は名称】スプラコール、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スーザン エル.ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】カーティス エル.ランディ
(57)【要約】
【課題】車椅子のための調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置を提供すること。
【解決手段】本開示のいくつかの実施例による車椅子のための調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置は、熱可塑性ハニカム材料の少なくとも1つの層で形成されたベース部材と、一体に結合されている熱可塑性ハニカム材料の上部層、中間層及び下部層で形成された概ね長方形の弾性クッション部材と、下部層のポケットに除去可能に挿入することができる少なくとも1つのパッドとを含む。ベース部材はクッション部材にピボットで取り付けられる。クッション部材は、ベース部材に対して非平行配置と平行配置の間で回転可能である。ポケットの開端は、クッション部材が平行配置に位置すると、ベース部材と対向する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子のための調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置であって、
熱可塑性ハニカム材料の少なくとも1つの層で形成されたベース部材と、
一体に結合されている熱可塑性ハニカム材料の上部層、熱可塑性ハニカム材料の中間層及び熱可塑性ハニカム材料の下部層で形成された弾性クッション部材であって、前記上部層が前記中間層よりも軟らかく、また、前記中間層が前記下部層よりも軟らかく、前記ベース部材がヒンジ部分の前記クッション部材の対応する縁にピボットで取り付けられたその縁を有し、前記クッション部材が前記ベース部材に対して非平行配置と前記ベース部材に対して平行配置との間で回転可能であり、前記クッション部材が前記ベース部材に対して前記平行配置に位置すると、前記ベース部材が前記下部層の真下に配置され、ポケットが前記下部層の中に形成され、且つ、前記クッション部材が前記ベース部材に対して前記平行配置に位置すると前記ベース部材と対向する開端を有する、弾性クッション部材と、
前記クッション部材の前記ポケット内に配置されるように構成された少なくとも1つのパッドであって、前記クッション部材の前記ポケットから除去することができる少なくとも1つのパッドと
を備える調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのパッドが熱可塑性ハニカム材料で形成される、請求項1に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項3】
前記ベース部材の熱可塑性ハニカム材料の前記少なくとも1つの層が前記クッション部材の熱可塑性ハニカム材料の前記層よりも剛直である、請求項2に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項4】
第1のパッド及び第2のパッドが提供され、前記第1のパッドが前記第2のパッドよりも軟らかい、請求項2に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項5】
第1のパッド、第2のパッド及び第3のパッドが提供され、前記第1のパッドが前記第2のパッドよりも軟らかく、また、前記第2のパッドが前記第3のパッドよりも軟らかい、請求項2に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項6】
3つのすべてのパッドが前記ポケット内に置かれると前記ポケットが満たされる、請求項5に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項7】
第1のパッド、第2のパッド及び第3のパッドが提供され、前記第1のパッドが前記第2のパッドよりも軟らかく、また、前記第2のパッドが前記第3のパッドよりも軟らかい、請求項1に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項8】
3つのすべてのパッドが前記ポケット内に置かれると前記ポケットが満たされる、請求項7に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項9】
前記中間層の中に形成されたポケットを更に備え、前記ポケットが互いに対して開いている、請求項1に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項10】
前記中間層の中に形成された前記ポケットが前記下部層の中に形成された前記ポケットよりも小さい、請求項9に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項11】
前記ベース部材の熱可塑性ハニカム材料の前記少なくとも1つの層が前記クッション部材の熱可塑性ハニカム材料の前記層よりも剛直である、請求項1に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項12】
前記クッション部材及び前記ベース部材が前記平行配置に位置すると、前記クッション部材、前記少なくとも1つのパッド及び前記ベース部材の周りに取外し可能に配置されるカバーを更に備える、請求項1に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項13】
前記カバーが、前記クッション部材、前記パッド及び前記ベース部材を前記カバーの中に挿入することができるように構成された開口と、前記開口の周りに配置され、且つ、前記クッション部材、前記パッド及び前記ベース部材を前記カバー内に密閉するように包むことができるように構成されたクロージャとを含む、請求項12に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項14】
概ね前記下部層と対向して前記ベース部材の表面に貼り付けられるように構成された少なくとも1つのクッション変形要素を更に備え、前記クッション部材が前記ベース部材に対して前記非平行配置から前記ベース部材に対して前記平行配置へ回転すると、前記少なくとも1つのクッション変形要素が係合して前記下部層を変形させるように動作し、前記少なくとも1つのクッション変形要素が前記ベース部材から取外し可能である、請求項1に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項15】
前記クッション部材及び前記ベース部材が前記平行配置に位置すると、前記クッション部材、前記パッド、少なくとも1つのクッション変形要素及び前記ベース部材の周りに取外し可能に配置されるカバーを更に備える、請求項14に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項16】
前記ヒンジが熱圧縮形成される、請求項1に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項17】
前記ポケットが前記ヒンジの近くに、前記ヒンジから間隔を隔てる、請求項1に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項18】
前記中間層の中に形成されたポケットを更に備え、前記ポケットが互いに対して開いており、前記中間層の中に形成された前記ポケットが前記下部層の中に形成された前記ポケットよりも小さい、請求項17に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのパッドが前記下部層の中に形成された前記ポケットの中に挿入されても、前記中間層の中に形成された前記ポケットが満たされない、請求項18に定義されている調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月25日に出願した米国特許出願第16/583,251号の一部継続出願であって、2018年9月28日に出願した米国特許出願第62/736,452号の国内利益を主張するものであり、これらの出願の内容は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、一般に、車椅子装置を使用している間、骨盤及び脊椎アラインメントの問題を改善するべく使用するために適合された解剖学的支援クッションに関する。
【背景技術】
【0003】
軽い病気又は単純な足の骨の損傷、等々を患っている非歩行患者は、通常、特殊な目的の車椅子クッションを使用する必要はない。しかしながら患者が重大な体位損傷を患い、或いは骨盤斜位問題、前方骨盤傾斜問題、後方及び/又は骨盤傾斜問題又は骨盤回転問題を示す、骨盤又は脊椎に関連する異常を含む物理的状態を患っている長期介護(LTC:Long Term Care)の患者には、特別に構成されたクッショニング又は他の身体位置決め、配向又は支援手段が必要であり得る。本開示には、この必要性に対処し、且つ、LTC療法士によって特化され、処方され、及び/又は使用され得る調整可能車椅子クッションを提供して、この環境で使用される車椅子クッショニングの有効性を改善することが意図されている。
【0004】
以下は、本開示が対象とし、また、標準の車椅子及びクッショニング手段を使用している間、いかに患者に安楽を提供するかをLTC療法士が探求し、或いは実際に提供している体位異常のうちのいくつかに関連する背景情報を提供するために含まれている。
【0005】
本明細書において使用される用語
【0006】
LTC:長期介護
【0007】
前弯:脊柱弯曲症姿勢をもたらすことになる腰部領域の脊椎の異常前方弯曲。
【0008】
後弯:上背が膨らむことになる脊椎の異常凸状弯曲。側弯:脊椎の異常横方向弯曲。
【0009】
斜位の:所与の線又は表面に対して直角でも、平行でもなく、ベースの平面に対して直角の軸を有していない(固体の)傾き、勾配で、所与の直線又はコースから発散している。
【0010】
斜位:斜位である状態。頸部:頸管又は頸の、或いは頸管又は頸に関する。腰部:1つ又は複数の側腹の、或いは1つ又は複数の側腹に関する。
【0011】
側腹:仮肋と寛骨の間の脊柱の両側にある、ヒトの身体の或いは四足歩行動物の1つ又は複数の部位。胸郭:ヒト及びより高い脊椎動物の、頸と腹部の間の、肋骨、胸骨及び特定の椎骨によって囲まれた、心臓、肺、等々が位置している空洞を含む体幹の部位、胸。脊椎:脊椎又は脊柱、背骨。
【0012】
仙骨:通常は5つの融合した椎骨から構成され、骨盤の後方壁を形成する、ヒトの腰部と尾骨領域の間の2つ以上の椎骨が融合してもたらされる骨。ELR:脚を高くした安静(Elevating Leg rest)
【0013】
STFH:シートから床までの高さ MWC:手動車椅子(Manual Wheelchair) IT:坐骨結節(Ischial Tuberosity)
【0014】
PSIS:上後腸骨棘(Posterior Superior Iliac Spine) ASIS:上前腸骨棘(Anterior Superior Iliac Spine) LE:下肢(Lower Extremity)
【0015】
UE:上肢(Upper Extremity) ROM:運動の範囲(Range of Motion)
【0016】
ADL:日常生活の活動性(Activities of Daily Living) PPT:後方骨盤傾斜(Posterior Pelvic Tilt)
【0017】
【0018】
正中線における骨盤。
【0019】
同じ高さにおけるASIS及びPSIS:骨盤傾斜はない。
【0020】
同じ高さにおけるL ASIS及びR ASIS:斜位はない。同じ深さにおけるL ASIS及びR ASIS:回転はない。
【0021】
平衡した、直立で、回転及び横方向の弯曲がない脊椎。
【0022】
所望の「S」字形を生成する、頸部及び腰部脊椎の通常の前弯並びに胸郭脊椎の通常の後弯。頭部は機能的に直立であり、ごく僅かに前方/横方向に屈曲又は回転する。
【0023】
【0024】
この異常を抱えている患者の場合、骨盤は他方よりも高いL ASIS又はR ASISで着座し、片方の臀部が持ち上がる原因になる。骨盤の片側が他方よりも高く持ち上がると、胸郭脊椎が高い側から湾曲して、徐々に側弯を生成する。頸は、あたかもその人が耳を肩に傾けているかの如くに横方向に屈曲することになる。この横方向の屈曲は、通常、臀部が高い側に向かうことになる。圧力再分配は、その変形が固定されたものであれ、或いは可撓性のものであれ、療法士の支援目標である。
【0025】
可撓性である場合:低い側を増強することによって骨盤を同じ高さにする。
【0026】
固定である場合:その変形に適応する。高い側への「充填」及び低い側のITを沈めることによって圧力から骨隆起を保護する。
【0027】
【0028】
この異常を抱えている患者の場合、骨盤はPSISより高いASISで着座し、仙骨着座姿勢を生じさせる後方骨盤傾斜をもたらすことになる。腰部及び頸部脊椎の過剰な胸郭前弯を抱えている場合、患者は、椅子のスリングの背もたれに自分の背中を過剰伸展し、椅子を仰向けにする危険に自らを置くことになる。
【0029】
頸部脊椎の過剰な前弯は頸の過剰伸展及び上向き視線の原因になる。この異常を抱えている場合、目標は、通常、シート表面との接触を最大化するクッション及び背中支援を利用し、それにより骨盤及び脊椎安定性並びに圧力再分配を最適化することである。安定性は目標であり、したがって背中支援は、通常、患者のために充分に丈の高い背中支援が使用される。
【0030】
測定はシート表面から肩の頂部まで実施される。通常、脊椎の弯曲と合わせるために成形可能な背中支援が使用される。
【0031】
【0032】
この異常を抱えている場合、骨盤はPSISより高いASISで着座し、仙骨着座姿勢を生じさせる後方骨盤傾斜をもたらすことになる。過剰な胸郭後弯は、「C」字形脊椎を生じさせ、頸部脊椎の前弯を「平らに」し、また、腰部脊椎の前弯を「平らに」する。
【0033】
頸部脊椎の前弯が小さくなると、床/膝への前方頸屈曲及び下向き視線の原因になる。LEアラインメント及び骨盤安定性を促進するために、中央及び横方向の輪郭を有するクッションがしばしば使用される。膝の裏側の圧迫感を軽減しようとする際に患者が前方にスライドするのを防止するためには、適切な深さのクッションを使用しなければならない。シート及びクッションがハンモックのようになるのを防止し、また、骨盤を後方骨盤傾斜に倒れることから維持するために、剛直なインサートがしばしば使用される。
【0034】
可撓性である場合:テーパが施されたアダクターを有するクッションを使用して転子に負荷をかけ、居住者の最も中立のアラインメントで骨盤を安定させることができる。
【0035】
可撓性である場合:反スラスト・コンポーネントを有するクッションを使用して、後方骨盤傾斜への骨盤の前方スライドを小さくすることができる。
【0036】
固定である場合:患者の形状に輪郭を合わせる沈み込むスタイルのクッションを使用して最大圧力再分配を促進し、ピーク圧力を最小にすることができる。
【0037】
固定である場合:患者のROM限界に一致し、且つ、前方スライドを最小にするために、車椅子の固定傾斜と共にオープニング・シート-背中角度がしばしば使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】米国特許第5,617,595号
【特許文献2】米国特許第5,039,567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
簡単に言及すると、本開示は、熱可塑性ハニカム材料の少なくとも1つの層で形成されたベース部材と、一体に結合されている熱可塑性ハニカム材料の上部層、中間層及び下部層で形成された弾性クッション部材と、下部層のポケットに除去可能に挿入することができる少なくとも1つのパッドとを含む、調整可能解剖学的支援及び車椅子シート・クッション装置を対象としている。ベース部材はクッション部材にピボットで取り付けられる。クッション部材は、ベース部材に対して非平行配置と平行配置の間で回転可能である。ポケットの開端は、クッション部材が平行配置に位置すると、ベース部材と対向する。
【0040】
本開示は、更に、弾性熱可塑性ハニカム・シート・クッション部材と、ピボットで取り付けられたベース部材であって、シート・クッション部材が載って、ピボットの周りに折り畳まれると変形して係合し、その上に横たわることになる平面ベースを形成しているベース部材とを含む、調整可能解剖学的支援及び車椅子シート・クッション装置を対象としている。ベース部材は、同じく、より剛直な熱可塑性ハニカム材料の1つ又は複数の層でできていてもよい。ユーザ、及び/又はLTC療法士が設置することができる、処方に合わせてサイズ化され、形状化された骨盤斜位要素、前橋要素及び/又はくさび要素、等々は、ベース部材の上に配置され、且つ、その間に配置され、また、シート・クッション部材の上に置かれ、それらと係合するとクッション部材を変形させるように動作する。
【0041】
パッド及び/又は斜位前橋要素及び/又はくさび要素が配置され、且つ、ベース部材に貼り付けられると、クッション部材が回転され、ベース部材と係合する。斜位前橋要素及び/又はくさび要素によってクッション部材が変形する。このアセンブリはその織物カバーに挿入され、クロージング・ジッパー等々が閉じられて、いつでもクッション装置を使用することができる。パッドは、ユーザの坐骨を保護するためにクッション部材の背面の中心部分に提供される。
【0042】
本開示の重要な利点は、装置の構築に使用される熱可塑性エラストマー・ハニカム材料が、改善された圧力除去、安定性、圧縮永久歪み抵抗、耐久性及び低保全特性を有する異方性材料であることである。
【0043】
本開示の別の利点は、クッション装置を特定のユーザのために適合させる場合、LTC療法士は、広範囲にわたる様々な事前形成済み整形要素及びクッション位置から選択することができ、したがってユーザのためにクッション装置を個別化し、個々に誂えることができることである。
【0044】
本開示の更に別の利点は、特定の車椅子ユーザの特定の要求事項を支援するために、単一のサイズ及び形状のクッションを個々に選択可能な様々な事前形成済み整形要素と一致させることができることである。
【0045】
本開示の更に別の利点は、空気を通して装置ユーザの発汗除去及び冷却を許容する、穴あきコア熱可塑性エラストマー・ハニカム・パネルから解剖学的支援装置を構築することができることである。
【0046】
本開示の別の利点は、異なる熱可塑性エラストマー・ハニカム・コア設計、及び/又は異なる熱可塑性ハニカム・コア設計の複数のパネルを利用して、改善された解剖学的支援装置の設計柔軟性を最大化することができることである。
【0047】
本開示の更に別の利点は、速やかに乾き、且つ、容易に消毒され、殺菌されるリサイクル可能な材料から熱可塑性エラストマー・ハニカム・コアが製造されることである。
【0048】
本開示の目的は、姿勢異常を患っているユーザ/患者の特定の解剖学的支援ニーズに適応するように適合させることができる調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置を提供することである。
【0049】
本開示の別の目的は、少なくとも1つの熱可塑性エラストマー・ハニカム・クッション・パネルと、広範囲にわたる様々な車椅子ユーザ着座位置、ユーザの解剖学的構造及び障害と一致し、それらを支援し、及び/又は安定させるように働く複数の選択可能なインサートとを含む、改善された解剖学的支援及びシート・クッション装置を提供することである。
【0050】
本開示の別の目的は、姿勢異常を患っている車椅子ユーザのための骨盤及び体幹安定性を提供するための、改善された調整可能解剖学的支援クッション装置を提供することである。
【0051】
本開示の更に別の目的は、姿勢異常を患っている車椅子ユーザのための日常生活の機能活動性を最大にするための調整可能解剖学的支援クッション装置を提供することである。
【0052】
本開示の更に別の目的は、皮膚を保護し、且つ、創傷を防止し、及び/又は姿勢異常を患っている車椅子ユーザが患っている既存の創傷の治癒を促進するための、改善された解剖学的支援クッション装置を提供することである。
【0053】
本開示の他の目的は、姿勢異常を患っている車椅子ユーザの快適性を最大にするための調整可能支援クッション装置を提供することである。
【0054】
本開示の別の目的は、姿勢異常を患っている車椅子ユーザによる望ましくない骨格の動きを最小にするための調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置を提供することである。
【0055】
本開示の更に別の目的は、姿勢異常の進行を防止するための調整可能支援クッションを提供することである。
【0056】
本開示の更に他の目的は、空気を通してユーザの冷却を許容する調整可能解剖学的支援装置を提供することである。
【0057】
本開示の別の目的は、コストを追加し、或いは耐久性を短くする、気泡、流体又は他の手段などのパッディング要素を導入する必要なく、特定の所望のクッショニング特性及び安定化特性をもたらすために誂えることができる調整可能解剖学的支援及びシート・クッション装置を提供することである。
【0058】
本開示の更に別の目的は、速やかに乾き、且つ、化学洗浄、マイクロ波処理、洗剤洗浄又は他の手段によって容易に消毒し、殺菌することができる材料で構築された調整可能解剖学的支援装置を提供することである。
【0059】
本開示のこれら及び他の目的並びに利点は、様々な図面に含まれ、また、様々な図面によって示されている好ましい実施例についての以下の詳細な説明を読めば、当業者には疑いなく明らかになるであろう。
【0060】
開示される実施例の構造及び動作の編成及び方法は、それらの他の目的及び利点と共に、必ずしもスケール通りには描かれていない添付の図面に関連してなされる以下の説明を参照することによって最も良好に理解することができ、添付の図面の同様の参照数表示は同様の要素を識別している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本開示の現時点における好ましい実施例に従って構築された、改善された解剖学的支援及びシート・クッション装置が上に配置された標準の車椅子を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されているタイプの標準の車椅子にまっすぐに着座している、最適姿勢をとっている患者を示す様式化された側面図である。
【
図3】
図1に示されている車椅子の線3-3に沿った様式化された部分横断面図であり、患者は、本開示による解剖学的支援及びクッション装置を使用して対処することができる状態の一実例を示すために骨盤斜位異常を示している。
【
図4】
図1に示されているタイプの標準の車椅子に着座している患者を示す様式化された側面図であり、本開示によるクッション装置を使用して対処することができる状態の別の実例を示すために前方骨盤傾斜異常を示している。
【
図5】
図1に示されているタイプの標準の車椅子に着座している患者を示す様式化された側面図であり、本開示によるクッション装置を使用して対処することができる状態の別の実例を示すために後方骨盤傾斜異常を示している。
【
図6】
図1に示されているタイプの標準の車椅子に着座している患者を示す部分破断平面図であり、本開示によるクッション装置を使用して対処することができる状態の別の実例を示すために骨盤回転異常を示している。
【
図7】本開示の実施例による、その開いた構成における調整可能解剖学的支援及びクッション・アセンブリ、ユーザ支援クッション部材、ピボットで取り付けられたベース部材、及びすべてベース部材の上に配置された斜位要素、前橋要素及びくさび要素の組合せを概略的に示す、斜め上から見た様式化された図である。
【
図8】
図7に示されている斜位要素の一般化された実例を示す三次元斜視図である。
【
図9】
図7に示されている前橋要素の一般化された実例を示す三次元斜視図である。
【
図10】
図7に示されているくさび要素の一般化された実例を示す三次元斜視図である。
【
図11】クッション・アセンブリ上の適切な場所、又はクッション・アセンブリのカバーの中に形成されたポケットの中の適切な場所に設置され得る、ある構成の坐骨パッドを概略的に示す斜視図である。
【
図12】
図7に示されているクッション・アセンブリを受け取り、且つ、含むための、ジッパー付きカバー外被をその開いた構成で概略的に示す、斜め上から見た様式化された斜視図である。
【
図13】本開示の実施例による、上側の背面から見た、また、
図7とは反対側から見たユーザ支援クッション部材及びピボットで取り付けられたベース部材をその開いた構成で概略的に示す、斜め上から見た様式化された斜視図である。
【
図14】その開いた構成で示されている、
図13のクッション・アセンブリの側面図である。
【
図15】その閉じた構成で示されている、
図13のクッション・アセンブリの側面図である。
【
図16】その閉じた構成で示されている、
図13のクッション・アセンブリを示す正面図である。
【
図17】
図12に示されているそのジッパー付きクッション・アセンブリ・カバーの中に包まれた、
図13の閉じたクッション・アセンブリを示す部分破断側面図である。
【
図18】
図13のユーザ支援クッション部材及びピボットで取り付けられたベース部材の代替実施例の側面図である。
【
図19】
図18のユーザ支援クッション部材及びピボットで取り付けられたベース部材の斜視図であり、
図18から分解された3つの坐骨パッドが示されている。
【
図20】
図18のユーザ支援クッション部材及びピボットで取り付けられたベース部材の斜視図であり、複数の坐骨パッドのうちの1つがそれらに取り付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0062】
次に図面の
図1を参照すると、
図1は、上で指摘したように、調整可能で、且つ、取外し可能な改善された解剖学的支援クッション・アセンブリ12がその上に配置された従来の車椅子10を示しており、クッション・アセンブリ12は変形していない状態で示されており、その織物カバー30の中に包まれている。以下でより詳細に説明されるように、クッション・アセンブリ12は、本開示に従って作られた少なくとも1つの可撓性熱可塑性エラストマー・ハニカム・コア・パネルで構築されている。クッション装置は車椅子アプリケーションのためにとりわけ適しているが、クッション装置又はその類似は、様々な他の解剖学的支援アプリケーション(例えばマットレス、自動車シート及びエアーライン・シート、ひじかけ、等々)にも同じく使用することができることに同じく留意されたい。
【0063】
図2は、標準の車椅子に着座した際の最適ユーザ姿勢を示すために提供されている。
【0064】
図3~
図6は、それぞれ、骨盤斜位、前方骨盤傾斜、後方骨盤傾斜及び骨盤回転として識別されている異常姿勢状態を示すために提供されており、これらの異常姿勢状態は、すべて、本開示を使用することによって援助され得る状態である。
【0065】
図7は、本開示の実施例による車椅子に使用することができるシート・クッション・アセンブリ12の主要な構成要素を概略的に示したものであり、多層化弾性熱可塑性ハニカム・クッション部材14、及びピボットで取り付けられたベース部材16(クッション変形要素20、24及び26を備えている)を含み、上部クッション部材14が載って、ピボット即ちヒンジ手段18の周りに折り畳まれると係合し、クッション部材14及び1つ又は複数の変形要素20、22及び24の頂部に横たわることになる平面ベースを形成する。ピボット手段18は、それぞれ上部クッション部材14及びベース部材16の相手方後部縁15及び17に沿って配置された熱圧縮形成ビード線であることが好ましい。ベース部材16は、より剛直な熱可塑性ハニカム材料の1つ又は複数の層でできていることが好ましい。
【0066】
ベース部材16の上に配置され、且つ、ベース部材16と上を覆うクッション部材14との間に配置されているのは、ユーザ、及び/又はLTC療法士が設置することができる、様々にサイズ化され、且つ、形状化された骨盤斜位要素20(
図8)、前橋要素22(
図9)及び/又はくさび要素24(
図10)であり、これらはすべて、特別に形状化され、且つ、サイズ化される、クッション変形要素(これは特定のユーザの状態に対処するために、恐らくLTC療法士によって処方に合わせてサイズ化され、且つ、形状化される)であり、また、係合すると、特定の方法でクッション部材14を変形させ、又はクッション部材14の支援能力を調整するように動作することが意図されている。
図7に示されているダッシュ線25によって示唆されているように、ポケットに同じく挿入することができる他のクッション調整要素(図示せず)を受け取るための追加ポケットをクッション部材14の中に提供して、ユーザ/患者の特定の特殊ニーズを満たすためにクッション部材14を更に変形させることも可能である。
【0067】
斜位要素、前橋要素及び/又はくさび要素、等々がベース部材16(及び恐らくはポケット25の中に挿入された他の要素)の上に配置され、且つ、貼り付けられると、クッション部材14をピボット即ちヒンジ手段18の周りに下向きに回転させて、それらと係合させることができ、延いてはクッション部材14を変形させることができ、また、アセンブリは、
図12に示されているその保護カバー30の中にいつでも挿入することができる。クッション「変形」は、クッションの軟らかさ又は弾性に応じて、また、ユーザに必要な解剖学的調整の程度に応じて、多少なりとも見ることができることに留意されたい。
【0068】
カバー30は適切な織物材料でできていることが好ましく、また、上部シェル様部品26及び相手方底部フラップ部品27を含むことができる。クッション・アセンブリ12が完全に組み立てられると、クッション・アセンブリ12をカバー30の底部フラップ部品27の上に置くことができ、また、上部シェル様部品26をその折畳み線29の周りに回転させて、それの閉じた位置にし、クッション・アセンブリ12を部分的に包むことができる。次に、シェル様部品26の下部縁の周りに配置されている上部ジッパー部品31を締めて、底部フラップ部品27の露出した周囲の周りに配置されている下部ジッパー部品33と係合させることによってカバー30を完全に閉じることができる。この時点で、完全に組み立てられたクッション装置をいつでもユーザ/患者の車椅子の上に置いて使用することができる。
【0069】
いくつかの事例では、ユーザ/患者の尾骨(坐骨)を保護するために、場合によっては坐骨パッド23(特定の軟らかさ又は硬さの、
図11に概略的に示されている別の小さいハニカム・パッドの形態で具体化されることが好ましい)の使用が同じく必要である。このような保護を提供するために、適切に構成された坐骨パッド23をカバー30の上部シェル部品26の背面の中心部分に提供されているポケット34の中に挿入してユーザ/患者の坐骨を保護することができる。
【0070】
第2のジッパー設備32、等々をカバー30の中に提供して、クッション・アセンブリに使用される様々な変形要素の数及び/又はサイズに適応するために必要なカバー・サイズの調整(拡大又は縮小)を許容することも可能であることに同じく留意されたい。
【0071】
図13には、参照により本明細書に完全に組み込まれている本出願人の先行する米国特許第5,617,595号に開示されている多層化クッション部材などの多層化クッション部材が14で示されている。本開示によれば、示されているクッション部材14は、上で説明した下部フラップ又はベース部材16を含むように修正されている。この実例は、クッション部材の後ろ側に沿った熱圧着によるフラップ縁17の取付けをより明確に示すために提供されている。別法としては、上部クッション部材14にフラップ縁を取り付けることも可能である。
【0072】
図13は、多層化ハニカム・シート・クッション14を有する調整可能車椅子シート・クッション・アセンブリ12の特定の実施例をより詳細に示したものである。多層化ハニカム・シート・クッション14は、熱可塑性エラストマー・ハニカム材料の複数のパネル即ち層を使用して構築されている。この実施例では、上部クッション部材14は、一体に結合されている3つの層即ちパネル40、42、44からなっている。個々のパネル40、42、44は、一体に結合され、且つ、伸長された可塑性材料の条片即ちリボンでできていることが好ましいハニカム様コアを含み、このハニカム様コアに、恐らくより重いゲージ材料の外装シートが熱圧着される。示されているクッション部材14は、X軸、Y軸及びZ軸に沿った所定のたわみ度を有する異方性三次元構造である。個々のセルは、部分的に、条片即ちリボンの4つの概ねS字形の壁セグメントによって形成され、これらの壁セグメントの個々の壁セグメントは隣接する条片に結合され、また、隣接するセルによって共有されている。更に、個々のセルは、二重厚さの壁セグメントを2つの隣接するセルと共有している。組み込まれている本出願人らの先行する特許に記載されているように、条片及び外装シートのうちの少なくともいくつかは、46で示されているように穴をあけてクッションを通気性にすることができ、また、ユーザの身体の発汗除去及び冷却を許容することができることに同じく留意されたい。更に、クッションが製造される熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は、リサイクル可能で、速やかに乾かすことができ、且つ、容易に消毒し、殺菌することができる。
【0073】
クッション部材14は、強い引裂き強度及び引張り強度を有し、また、高度に弾性であり、最適圧縮負荷及び衝撃吸収又は歪み特性を有し、更に、重量が極端に軽い。エラストマー材料、ハニカム・セル構成、コア厚さ及び外装材料変数の選択された組合せは、特定のアプリケーションの必要に応じて、パネルの軟らかさ又は硬さ、弾性回復速度及び剛性又はたわみの特性を決定することになる。外装材料は、熱可塑性ウレタン、気泡、EVA、ゴム、ネオプレン、エラストマー含浸繊維及び様々な織物、等々を含む広範囲にわたる様々な膜から選択することができる。本出願人らのクッション部材14に具体化されるタイプのクッションを作るために本開示に利用されるタイプのハニカム・クッションの製作及び製造については、本出願人らの米国特許第5,039,567号に記載されており、その開示は、参照により本明細書に明確に組み込まれている。
【0074】
本開示によれば、また、上で概略的に説明したように、ベース部材16は、より剛直なハニカム材料の少なくとも1つの比較的薄いシートでできていることが好ましく、また、好ましくはその最も後ろ側に沿って、クッション部材14の背面にヒンジで接続された後部縁17を有していることが好ましい。クッション・アセンブリのユーザ支援特性を定義するように選択された1つ又は複数のクッション変形要素は、ベース部材16とクッション部材14の間に取外し可能に配置され、また、好ましくは、Velcro又は他の「フープ・アンド・ループ材料」、等々などの適切な手段によって、定義済みの場所を有するベース部材16の上部表面に取り付けられている。クッション変形要素は、本明細書において
図8~
図10に示されているように、処方によってサイズ化され、形状化された骨盤斜位要素20、前橋要素22及び/又はくさび要素24の組合せとして概略的に説明することができる。
【0075】
これらの要素は、クッション・アセンブリによって支持されているユーザの骨格構成要素を上に上げ、下に下げ、整列させ、配向し、さもなければ調整するために、覆っている弾性クッション部材14を変形させ、或いはその支援特性を変え、それにより骨盤及び体幹安定性を提供し、ADL中のユーザの快適性及び機能を最大化し、ユーザの皮膚を保護し、且つ、創傷を防止し、既存の創傷の治癒を補助し、クッション表面でのユーザの望ましくない動きを最小化し、姿勢異常を修正し、又は適応し、及び/又は姿勢異常の進行を防止し、又は遅らせるために、ユーザ及び/又は補助する療法士或いは臨床医によって選択され、配置され、且つ、上向きに面しているベース部材表面に固着される。
【0076】
以下で概略的に説明されるように、これらの要素は、クッション部材14が下に下げられて(折り畳まれて)それらと支援係合すると、そのクッション部材14を変形させるように適合されている。事前形成済み斜位要素20、前橋要素22及び/又はくさび要素24は、覆っているクッション部材14の所望の個別化変形又は調整を提供し、それにより延いては、アセンブリがその閉じた構成、即ち折り畳まれた構成に折り畳まれると、クッションがユーザの支援ニーズを提供するよう、慎重に選択され、且つ、配置される。
【0077】
折り畳まれると、クッション・アセンブリ12は、
図12に概略的に示されている、クッション・アセンブリの形状と一致するように構成され、また、クッション・アセンブリを確実に収納し、且つ、クッション・アセンブリをその閉じた機能構成に維持するために周囲ジッパー手段、等々を備えている織物カバーなどの、包んでいる織物カバー30の中に挿入される。上で指摘したように、カバー30は、追加坐骨パッド、前橋又はくさび、等々を受け取るための内部ポケット及び/又は外部ポケットを同じく備えることができる。
【0078】
図14及び
図15には、その開いた構成及び閉じた構成の上で説明したクッション・アセンブリ12の側面図がより詳細に示されている。
【0079】
図16の正面図は、下を覆っているいくつかの要素によるクッション部材14の歪みを強調するために、いくらか誇張された斜視図で示されている。
【0080】
図17には、完全に組み立てられた解剖学的支援及びシート・クッション装置の部分破断側面図が示されており、その織物カバー30内に配置されたクッション・アセンブリ12を更に示している。クロージング・ジッパー31、33がカバーの下部縁の3つの側面の周りに提供され、また、第2の中間に配置されたエキスパンション・ジッパー及び過剰材料設備32は、より大きい、又はより小さいクッション変形要素のアセンブリに対する適応が必要であることを示唆していることに留意されたい。
【0081】
図18~
図20は、
図13に示されているクッション部材14に対する修正を示している。個々のパネル40、44は、その下部表面からその上部表面まで、概ね一様な高さを有しており、パネル40、44の高さは異なっていてもよく、また、これらの各々は一様な高さを有していなくてもよい。本明細書において説明されているように、中間パネル42は、その下部表面からその上部表面まで変化する高さを有している。上部パネル40の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は第1の硬さを有しており、中間パネル42の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は第2の硬さを有しており、また、下部パネル44の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は第3の硬さを有している。上部パネル40の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は中間パネル42の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料よりも軟らかく、また、中間パネル42の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は下部パネル44の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料よりも軟らかい。即ち下部パネル44は中間パネル42よりも剛直であり、また、中間パネル42は上部パネル40よりも剛直である。したがってユーザが調整可能車椅子シート・クッション・アセンブリ12の頂部に着座すると、ユーザの臀部は、上部パネル40内では、中間又は下部パネル42、44内よりもより容易に沈む。
【0082】
ポケット48はクッション部材14の背面の中心部分に形成されている。ポケット48は、クッション部材14の下部表面から見た場合に、中間パネル42の下部表面の一部50が露出するよう、下部パネル44を完全に貫通してその下部表面からその上部表面まで展開している。ポケット48は、下部パネル40によって形成された側壁56、及び中間パネル42の下部表面の部分50によって形成された上部壁を有している。ポケット52はポケット48から展開し、また、クッション部材14の下部表面から見た場合に、上部パネル40の下部表面の一部54が露出するよう、中間パネル42を貫通してその下部表面からその上部表面まで展開している。ポケット52は、中間パネル42によって形成され、また、本明細書において説明されているように中間パネル42の下部表面の一部によって更に形成することができる側壁58、及び上部パネル44の下部表面の部分54によって形成された上部壁を有している。ポケット48、52は、ピボット即ちヒンジ手段18の近くに、ヒンジ手段18から間隔を隔てており、また、少なくとも下部パネル44のセクション60によってピボット即ちヒンジ手段18から分離されている。実施例では、中間パネル42は、上部パネル及び下部パネル40、44がまとめて直接固着され、但し、中間パネル42の層を提供することができるよう、セクション60中の上部パネル40と下部パネル44の間に提供されていない。示されているように、個々のポケット48、52は概ね半円形であるが、他の形を提供することも可能である。ポケット52はポケット48よりも小さい。
【0083】
実施例では、中間パネル42は、概ね一様である高さを有する第1の部分62、及び第1の部分62からポケット52の側壁58まで徐々に低くなる高さを有する第2の部分64を有している。第1の部分62は、概ね平らな下部表面を画定し、また、中間パネル42の縁から第2の部分64まで展開している。第1の部分62の下部表面の一部はポケット48の中に露出され、ポケット48の上部壁を形成している。第2の部分64は、ポケット52の側壁58を取り囲み、側壁58の一部を形成している。第2の部分62の下部表面はポケット48の中に露出されている。
【0084】
ポケット48は、空のままにして、第1の感覚をユーザ/患者の坐骨に提供することができる。別法としては、熱可塑性エラストマー・ハニカム材料で形成された1つ又は複数の坐骨パッド66、68、70をポケット48内に置いて、調整可能車椅子シート・クッション・アセンブリ12の感覚を変え、また、ユーザ/患者の坐骨を保護することも可能である。1つ又は複数の坐骨パッド66、68、70はポケット52と重なる。示されているように、硬さが異なる3つの坐骨パッド66、68、70が提供されている。坐骨パッド66の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は第1の硬さを有しており、坐骨パッド68の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は第2の硬さを有しており、また、坐骨パッド70の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は第3の硬さを有している。第2の坐骨パッド68の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は第1の坐骨パッド66の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料よりも硬く、また、第3の坐骨パッド70の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料は第2の坐骨パッド66の熱可塑性エラストマー・ハニカム材料よりも硬い。即ち第3の坐骨パッド70は第2の坐骨パッド68よりも剛直であり、また、第2の坐骨パッド68は第1の坐骨パッド66よりも剛直である。個々の坐骨パッド66、68、70は、互いに反対側の平らな面を有し、また、坐骨パッド66、68、70がポケット48内に止り嵌めするよう、ポケット48の壁の形状を鏡映する周囲形状を有している。
【0085】
実施例では、個々の坐骨パッド66、68、70は、これらの坐骨パッド66、68、70のうちの単一の1つがポケット48の中に挿入された場合に、ポケット48がその高さ方向に完全に一杯にならないよう、その上部表面からその下部表面まで、ポケット48の高さより低い高さを有している。示されている実施例では、3つのすべての坐骨パッド66、68、70がポケット48の中に挿入されると、ポケット48はその高さ方向に完全に一杯になる。坐骨パッド66、68、70の高さは、これらの坐骨パッドのうちの2つがポケット48の中に挿入された場合に、ポケット48がその高さ方向に一杯になるよう、或いはこれらの坐骨パッドのうちの3つがポケット48の中に挿入された場合に、ポケット48がその高さ方向に一杯になるよう、変更することができる。坐骨パッド66、68、70は、同じ高さを有することも、或いは異なる高さを有することも可能である。
【0086】
シート・クッション14がピボット即ちヒンジ手段18の周りにベース部材16(クッション変形要素20、24及び26を備えることができる)の上に折り畳まれて、クッション部材14の頂部と係合してその上に置かれると、ポケット48、52がベース部材16の上部表面と対向する。変形要素20、22及び24はポケット48、52の下に配置されないことが好ましい。坐骨パッド66、68、70は、坐骨パッド66、68、70を所定の場所に固着するためにシート・クッション14とベース部材16の間にトラップされる。
【0087】
実施例では、ベース部材16は、パネル40、42、44のうちのどのパネルの硬さよりも硬い硬さを有している。実施例では、ベース部材16は、下部パネル44の硬さと同じ硬さである硬さを有している。
【0088】
ユーザ/患者の臀部に対する感覚は、ポケット48の中に挿入される坐骨パッド66、68、70が、何もないか、1つであるか、2つであるか、或いは3つであるかどうかに応じて変化する。更に、同じ硬さの2つ以上の坐骨パッドをポケット48の中に挿入することも可能である。少なくとも初期挿入時は、坐骨パッド66、68、70はポケット52の中に入らない/満たさない。ユーザ/患者の坐骨が坐骨パッド66、68、70の上に配置されると、ユーザ/患者の坐骨はポケット52の中へ移動することができ、また、保護され得る。
【0089】
以上、本開示の実施例について開示したが、上記開示を読んだ当業者には、それらの多くの変更及び修正が疑いなく明らかになるであろうことは認識されよう。例えば解剖学的支援クッションは、複数のパネルを使用して、また、穴があけられたコア・パネル及び穴があけられていないコア・パネルの様々な組合せを使用して、また、コア壁及び/又は面シート穴あけを使用して、任意の適切な形状で構成することができ、穴の数及び/又は穴サイズは、所望の制動特性、洗浄特性及び消毒特性を達成するために誂えられる。更に、開示されている熱圧縮ビード及び閉じることができるカバー以外の手段を提供して、変形要素がベース部材に取り付けられ、且つ、クッション部材と変形係合にもたらされた後に、係合関係でいくつかの構成要素を保持することも可能である。したがって以下の特許請求の範囲は、すべてのこのような変更及び修正を本開示の真の精神及び範囲の範疇として包含するものとして解釈され得ることが意図されている。
【外国語明細書】