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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154427
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】組成物および架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20231012BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C08L27/12
C08J3/24 Z CEW
C08J3/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118118
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2022063403の分割
【原出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野原 明日香
(72)【発明者】
【氏名】小西 智久
(72)【発明者】
【氏名】太田 大助
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA24
4F070GA05
4F070GA10
4F070GB02
4J002BD15W
4J002BD15X
4J002BD16W
4J002BE04W
4J002DF016
4J002DF026
4J002DF036
4J002DG046
4J002DH046
4J002DJ006
4J002EK006
4J002EN006
4J002EN076
4J002EN106
4J002EP026
4J002ET016
4J002EU186
4J002EV236
4J002EZ016
4J002FD146
4J002GH00
4J002GJ02
4J002GM01
(57)【要約】
【課題】高温で圧縮されても割れにくく、優れた耐プラズマ性および優れた圧縮永久歪特性を有する架橋物を得ることができる組成物を提供すること。
【解決手段】パーフルオロエラストマーおよびポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物であって、前記ポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度が、1.0×10~7.0×10ポアズであり、前記ポリテトラフルオロエチレンの融点が、322℃以上であり、前記パーフルオロエラストマーと前記ポリテトラフルオロエチレンとを共凝析することにより得られる組成物を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロエラストマーおよびポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物であって、
前記ポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度が、1.0×10~7.0×10ポアズであり、
前記ポリテトラフルオロエチレンの融点が、322℃以上であり、
前記パーフルオロエラストマーと前記ポリテトラフルオロエチレンとを共凝析することにより得られる組成物。
【請求項2】
前記パーフルオロエラストマーが、シアノ基を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリテトラフルオロエチレンが、任意で変性モノマー単位を含有し、前記変性モノマー単位の含有量が、全モノマー単位に対して、0~0.10モル%である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレンが、変性モノマー単位を含有し、前記変性モノマー単位の含有量が、全モノマー単位に対して、0.02~0.10モル%である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記変性モノマー単位が、ヘキサフルオロプロピレン単位およびパーフルオロビニルエーテル単位からなる群より選択される少なくとも1種である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒径が、200nm以上である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記パーフルオロエラストマー100質量部に対して、1~100質量部である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
前記パーフルオロエラストマーおよび前記ポリテトラフルオロエチレンを含有する水性分散液を調製し、酸を用いて、得られた水性分散液中の前記パーフルオロエラストマーおよび前記ポリテトラフルオロエチレンを共凝析させることにより得られる請求項1または2に記載の組成物。
【請求項9】
さらに、無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の組成物を架橋することにより得られる架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物および架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーフルオロエラストマーの物性を改良するために、パーフルオロエラストマーにフッ素樹脂を添加する技術が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、500nm未満の平均粒径を有するフルオロプラスチック粒子と、非晶質フルオロポリマーと、を含む、組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、フッ素系弾性体の懸濁液と、フッ素系樹脂の懸濁液とを、前記フッ素系弾性体と前記フッ素系樹脂との質量混合比が95:5~5:95の範囲となるように混合してなる混合液に無機酸溶液を加えて共凝析して得られる封止材用フッ素系組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2018-531316号公報
【特許文献2】特開2003-2681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示では、高温で圧縮されても割れにくく、優れた耐プラズマ性および優れた圧縮永久歪特性を有する架橋物を得ることができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第の観点によれば、パーフルオロエラストマーおよびポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物であって、前記ポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度が、1.0×10~7.0×10ポアズであり、前記ポリテトラフルオロエチレンの融点が、322℃以上であり、前記パーフルオロエラストマーと前記ポリテトラフルオロエチレンとを共凝析することにより得られる組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高温で圧縮されても割れにくく、優れた耐プラズマ性および優れた圧縮永久歪特性を有する架橋物を得ることができる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本開示の組成物は、パーフルオロエラストマーおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する。
【0011】
パーフルオロエラストマーにフルオロプラスチックやフッ素系樹脂を添加する従来の技術は、パーフルオロエラストマーに無機粒子などのフィラーを添加する技術に比べて、パーティクルが発生しにくいなどの利点がある。しかしながら、優れた耐プラズマ性を有する架橋物であって、高温で圧縮された状態が継続した場合でも割れにくく、圧縮から開放された後においては、形状が復元しやすい架橋物を得ることができるパーフルオロエラストマー組成物が求められる。
【0012】
本発明者らは、フッ素樹脂としてPTFEを選択し、さらには、PTFEの溶融粘度および融点を適切に選択するとともに、組成物を調製する方法として、パーフルオロエラストマーとPTFEとを共凝析させる方法を選択することによって、そのような組成物を架橋することにより得られる架橋物が、高温で圧縮されても割れにくく、優れた耐プラズマ性および優れた圧縮永久歪特性を有することを見出し、本開示の組成物を完成するに至った。
【0013】
(PTFE)
本開示の組成物が含有するPTFEの溶融粘度は、1.0×10~7.0×10ポアズである。溶融粘度は、好ましくは1.0×10ポアズ以上であり、より好ましくは1.0×10ポアズ以上であり、好ましくは5.0×10ポアズ以下であり、より好ましくは3.0×10ポアズ以下であり、さらに好ましくは1.0×10ポアズ以下である。
【0014】
溶融粘度が上記範囲内のPTFEを用いることにより、組成物を架橋した場合に、優れた耐プラズマ性および優れた圧縮永久歪特性を有する架橋物を得ることができる。PTFEの溶融粘度が高すぎると、架橋物の圧縮永久歪特性が十分に向上せず、たとえば、架橋物を300℃程度の高温で長時間圧縮した場合に、圧縮により架橋物が圧壊する問題が生じたり、架橋物の形状が復元しにくい問題が生じたりする。溶融粘度が低すぎるPTFEは、高温揮発成分を発生させるおそれがあるため、高温(たとえば300℃程度)で使用される架橋物には好適に用いることができない場合がある。
【0015】
上記の範囲内の溶融粘度を有するPTFEは、分子量が低く、たとえば、数平均分子量が60万以下のPTFEである。数平均分子量が60万を超える「高分子量PTFE」は、PTFE特有のフィブリル化特性が発現する(たとえば、特開平10-147617号公報参照)。高分子量PTFEは、溶融粘度が高く、非溶融加工性である。本開示の組成物が含有するPTFEは、ペースト押出成形が可能な程度のフィブリル化特性を示さないことが好ましい。PTFEの溶融粘度および数平均分子量は、PTFEを製造する際のTFEの重合条件を調製したり、PTFEに電子線を照射したりすることにより、調整することができる。
【0016】
溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)および2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定する値である。上記数平均分子量は、上記測定方法により測定した溶融粘度から、それぞれ算出することができる。
【0017】
本開示の組成物が含有するPTFEの融点は、322℃以上である。融点は、好ましくは323℃以上であり、より好ましくは324℃以上であり、さらに好ましくは325℃以上であり、好ましくは333℃以下であり、より好ましくは332℃以下であり、さらに好ましくは330℃以下である。
【0018】
PTFEの融点が低すぎると、架橋物の圧縮永久歪特性が十分に向上せず、たとえば、架橋物を300℃程度の高温で長時間圧縮した場合に、PTFEが溶融してしまうため架橋物の形状が復元しにくい問題が生じる。
【0019】
PTFEの融点は、日立ハイテクサイエンス社製の示差走査熱量計X-DSC7000(DSC)を用い、事前に標準サンプルとして、インジウム、鉛を用いて温度校正した上で、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFE約3mgをアルミ製パンに入れ、40ml/分の窒素気流下で、230~350℃の温度領域を10℃/分で昇温させて示差走査熱量測定を行い、上記領域における融解曲線の最小点に対応する温度を融点として測定できる。
【0020】
PTFEの比表面積は、好ましくは0.5~20m/gである。比表面積は、表面分析計(商品名:BELSORP-miniII、マイクロトラック・ベル社製)を用い、キャリアガスとして窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスを用い、冷却に液体窒素を用いて、BET法により測定する。
【0021】
PTFEの平均一次粒径は、好ましくは10nm~1000μmであり、より好ましくは100nm以上であり、さらに好ましくは200nm以上であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは1μm以下であり、特に好ましくは500nm以下である。
【0022】
平均一次粒径は、固形分0.15質量%に調整されたPTFE水性分散液が注入された所定のセルに550nmの光を入射したときの透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して算出した数平均一次粒径との相関関係を求めた後に、得られた試料について測定した透過率を上記の相関関係にあてはめることにより求めた(検量線法)。
【0023】
PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体であってもよいし、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマー単位とを含む変性PTFEであってもよい。PTFEとしては、架橋物の圧縮永久歪特性が一層向上することから、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマー単位とを含むPTFEが好ましい。
【0024】
PTFEの変性モノマー単位の含有量は、全モノマー単位に対して、0~0.10モル%であり、より好ましくは0.02モル%以上であり、さらに好ましくは0.05モル%以上であり、より好ましくは0.09モル%以下である。
【0025】
本開示において、変性モノマー単位とは、PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味し、全モノマー単位とは、PTFEの分子構造における全てのモノマーに由来する部分を意味する。変性モノマー単位の含有量は、赤外分光分析またはNMR(核磁気共鳴)を行うことにより測定する値である。
【0026】
変性PTFEにおける変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、たとえば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕などのパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕などのクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕などの水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン:エチレンなどが挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0027】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、たとえば、一般式(I):
CF=CF-ORf (I)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物などが挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0028】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、たとえば、一般式(I)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0029】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、たとえば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロメチル基であるパープルオロメチルビニルエーテル〔PMVE〕、または、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロプロピルビニルエーテル〔PPVE〕が好ましい。
【0030】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、一般式(I)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0031】
【化1】
(式中、mは、0または1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
CFCFCF-(O-CF(CF)-CF
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるものなどが挙げられる。
【0032】
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、たとえば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレンなどが挙げられる。
【0033】
変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、パーフルオロビニルエーテル、PFBEおよびエチレンからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましく、HFPおよびパーフルオロビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、HFP、PMVEおよびPPVEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0034】
組成物中のPTFEの含有量は、一層優れた耐プラズマ性および一層優れた圧縮永久歪特性を有する架橋物を得ることができることから、パーフルオロエラストマー100質量部に対して、好ましくは1~100質量部であり、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、特に好ましくは15質量部以上であり、より好ましくは70質量部以下であり、さらに好ましくは60質量部以下である。組成物中のPTFEの含有量は、さらに一層優れた圧縮永久歪特性を有する架橋物を得ることができることから、尚さらに好ましくは55質量部以下であり、特に好ましくは50質量部以下である。
【0035】
(パーフルオロエラストマー)
本開示の組成物は、パーフルオロエラストマーを含有する。本開示の組成物は、フッ素ゴムとしてパーフルオロエラストマーを含有することから、組成物を架橋した場合に、優れた耐プラズマ性および優れた圧縮永久歪特性を有する架橋物を得ることができる。
【0036】
本開示において、パーフルオロエラストマーとは、全モノマー単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上、好ましくは91モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、さらに、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上、好ましくは71.5質量%以上であるポリマーである。本開示において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0037】
本開示において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子およびフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子または珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0038】
架橋部位を与えるモノマーとは、硬化剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0039】
本開示において、パーフルオロエラストマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析、その他公知の方法をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0040】
パーフルオロエラストマーを構成するパーフルオロモノマー単位を与えるパーフルオロモノマーとしては、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕、
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、
一般式(13):CF=CF-ORf13
(式中、Rf13は、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(14):CF=CFOCFORf14
(式中、Rf14は炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖状または分岐鎖状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるフルオロモノマー、および、
一般式(15):CF=CFO(CFCF(Y15)O)(CF
(式中、Y15はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0041】
パーフルオロエラストマーとしては、TFE単位を含むパーフルオロエラストマー、たとえばTFE/一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0042】
その組成は、TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)共重合体の場合、好ましくは、45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは55~80/20~45であり、さらに好ましくは55~70/30~45、最も好ましくは56~69.5/30.5~44である。
【0043】
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、さらに好ましくは55~69.8/30~44.8/0.2~3、最も好ましくは55.3~69.5/30.3~44.5/0.2~2.8である。
【0044】
TFE/炭素数が4~12の一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは60~88/12~40であり、さらに好ましくは65~85/15~35、最も好ましくは66~84/16~34である。
【0045】
TFE/炭素数が4~12の一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、さらに好ましくは65~84.8/15~34.8/0.2~3、最も好ましくは66~84.3/15.5~33.8/0.2~2.8である。
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0046】
パーフルオロエラストマーとしては、TFE/一般式(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体、TFE/一般式(15)で表されるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(13)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
上記パーフルオロエラストマーとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロエラストマーも挙げることができる。
【0048】
架橋部位を与えるモノマーとは、架橋剤により架橋を形成するための架橋部位をパーフルオロエラストマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0049】
架橋部位を与えるモノマーとしては、
一般式(16):CX =CX
(式中、X、Xは、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基であり、R は1個以上のエーテル結合性酸素原子を有していてもよく、芳香環を有していてもよい、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基またはオキシアルキレン基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子、ニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、ビニル基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基またはアルキン基である)で表されるモノマーが挙げられる。アルキン基は、エチニル基であってよい。
【0050】
架橋部位を与えるモノマーとしては、なかでも、
一般式(17):CX16 =CX16-Rf16CHR1617
(式中、X16は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはCH、Rf16は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R16は、水素原子またはCH、X17は、ヨウ素原子または臭素原子である)で表されるフルオロモノマー、
一般式(18):CX16 =CX16-Rf1717
(式中、X16は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはCH、Rf17は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、X17は、ヨウ素原子または臭素原子である)で表されるフルオロモノマー、
一般式(19):CF=CFO(CFCF(CF)O)(CF-X18
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X18は、シアノ基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキン基、ヨウ素原子、臭素原子、または、-CHIである)で表されるフルオロモノマー、
一般式(20):CH=CFCFO(CF(CF)CFO)(CF(CF))-X19
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X19は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、または-CHOHである)で表されるフルオロモノマー、および、
一般式(21):CR20 =CR20-Z-CR20=CR20
(式中、R20は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Zは、直鎖または分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1~10のアルキレン基もしくはオキシアルキレン基、または、
-(Q)-CFO-(CFCFO)(CFO)-CF-(Q)
(式中、Qはアルキレン基またはオキシアルキレン基である。pは0または1である。m/nが0.2~5である。)で表され、分子量が500~10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表されるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0051】
16は、フッ素原子であることが好ましい。Rf16およびRf17は炭素数が1~5のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。R16は、水素原子であることが好ましい。X18は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、または、-CHIであることが好ましい。X19は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、または-CHOHであることが好ましい。
【0052】
架橋部位を与えるモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHI、CF=CFOCFCFCHI、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CN、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH、CH=CHCFCFI、CH=CH(CFCH=CH、CH=CH(CFCH=CH、CF=CFO(CFCNおよび、CF=CFO(CFCNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFO(CFCNおよびCF=CFOCFCFCHIからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0053】
パーフルオロエラストマーは、高温における圧縮永久歪み特性に優れる点から、ガラス転移温度が-30℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましく、-10℃以上であることがさらに好ましい。また、耐寒性が良好である点から、10℃以下であることが好ましく、5℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。
【0054】
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製、X-DSC7000)を用い、試料3mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0055】
パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。また、加工性が良好な点で、100以下であることが好ましく、90以下であることがより好ましく、80以下であることがさらに好ましい。
【0056】
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
【0057】
パーフルオロエラストマーは、常法により製造することができるが、得られる重合体の分子量分布が狭く、分子量の制御が容易である点、末端にヨウ素原子または臭素原子を導入することができる点から、連鎖移動剤としてヨウ素化合物または臭素化合物を使用することもできる。ヨウ素化合物または臭素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、ヨウ素化合物または臭素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法が挙げられる(ヨウ素移動重合法)。使用するヨウ素化合物または臭素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
21Br
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R21は炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。ヨウ素化合物または臭素化合物を使用することによって、ヨウ素原子または臭素原子が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0058】
ヨウ素化合物および臭素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体等が挙げられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0059】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性等の点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0060】
パーフルオロエラストマーは、シアノ基(-CN基)を有することが好ましい。シアノ基(-CN基)を有するパーフルオロエラストマーは、シアノ基が環化三量化によりトリアジン環を形成して架橋したり、テトラミン化合物を架橋剤としてイミダゾール環を形成して架橋することができるものであり、架橋物にすぐれた圧縮永久歪み特性および耐熱性を付与できる。
【0061】
上記シアノ基を有するパーフルオロエラストマーは、主鎖末端および/または側鎖にシアノ基(-CN基)を有することが好ましい。
【0062】
主鎖末端および/または側鎖にシアノ基(-CN基)を有するパーフルオロエラストマーとしては、上述した、TFE/一般式(13)、(14)または(15)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体のうち、架橋部位を与えるモノマーが、シアノ基(-CN基)を有するモノマーである共重合体が挙げられる。この場合、シアノ基(-CN基)を有するモノマー単位の含有量は、良好な架橋特性および耐熱性の観点から、TFE単位と一般式(13)、(14)および(15)で表されるフルオロモノマー単位との合計量に対して、0.1~5モル%であってよく、0.3~3モル%であってよい。さらに好適な組成は、上述したとおりである。
【0063】
また、シアノ基(-CN基)を有するモノマーとしては、たとえば、
式:CY =CY(CF-CN
(式中、Yは、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子、nは1~8の整数である)
式:CF=CFCFRf-CN
(式中、Rfは-(OCF-または-(OCF(CF))-であり、nは0~5の整数である)
式:CF=CFCF(OCF(CF)CF(OCHCFCFOCHCF-CN
(式中、mは0~5の整数、nは0~5の整数である)
式:CF=CFCF(OCHCFCF(OCF(CF)CFOCF(CF)-CN
(式中、mは0~5の整数、nは0~5の整数である)
式:CF=CF(OCFCF(CF))O(CF-CN
(式中、mは0~5の整数、nは1~8の整数である)
式:CF=CF(OCFCF(CF))-CN
(式中、mは1~5の整数)
式:CF=CFOCF(CF(CF)OCFCF(-CN)CF
(式中、nは1~4の整数)
式:CF=CFO(CFOCF(CF)-CN
(式中、nは2~5の整数)
式:CF=CFO(CF-(C)-CN
(式中、nは1~6の整数)
式:CF=CF(OCFCF(CF))OCFCF(CF)-CN
(式中、nは1~2の整数)
式:CH=CFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)-CN
(式中、nは0~5の整数)、
式:CF=CFO(CFCF(CF)O)(CF-CN
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数である)
式:CH=CFCFOCF(CF)OCF(CF)-CN
式:CH=CFCFOCHCF-CN
式:CF=CFO(CFCF(CF)O)CFCF(CF)-CN
(式中、mは0以上の整数である)
式:CF=CFOCF(CF)CFO(CF-CN
(式中、nは1以上の整数)
式:CF=CFOCFOCFCF(CF)OCF-CN
式:CF=CFO(CFCN
式:CF=CFO(CFCN
で表されるモノマーなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0064】
上記の中でも、
式:CF=CF(OCFCF(CF))O(CF-CN
(式中、mは0~5の整数、nは1~8の整数である)で表されるモノマーが好ましく、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCNがより好ましい。
【0065】
これらのパーフルオロエラストマーは、常法により製造することができる。
【0066】
かかるパーフルオロエラストマーの具体例としては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報などに記載されているフッ素ゴムなどがあげられる。
【0067】
(共凝析)
本開示の組成物は、パーフルオロエラストマーとPTFEとを共凝析することにより得られる。共凝析法を用いて組成物を調製することにより、組成物を架橋した場合に、優れた耐プラズマ性および優れた圧縮永久歪特性を有する架橋物を得ることができる。共凝析法以外の方法、たとえば、ドライブレンドにより組成物を調製し、得られた組成物を架橋した場合には、架橋物の耐プラズマ性および圧縮永久歪特性が十分に向上せず、たとえば、架橋物にNFプラズマを照射した場合に削れる問題が生じたり、架橋物を300℃程度の高温で長時間圧縮した場合に、圧縮により架橋物が圧壊する問題が生じたり、圧縮から開放しても架橋物の形状が復元しにくい問題が生じたりする。
【0068】
共凝析をする際のパーフルオロエラストマーとPTFEの組み合わせは、それぞれの凝析性が近似しているか否か、重合体としての親和性があるか否かなどを考慮し、目的とする機能に合わせて選定される。
【0069】
パーフルオロエラストマーとPTFEとを共凝析する方法としては、パーフルオロエラストマーおよびPTFEを含有する水性分散液を調製し、得られた水性分散液中のパーフルオロエラストマーおよびPTFEを共凝析させる方法などが挙げられる。
【0070】
水性分散液を調製する方法としては、パーフルオロエラストマーを含有する水性分散液とPTFEを含有する水性分散液とを混合する方法、パーフルオロエラストマーの粉末と、PTFEを含有する水性分散液とを混合する方法、PTFEの粉末と、パーフルオロエラストマーを含有する水性分散液とを混合する方法、などが挙げられる。
【0071】
パーフルオロエラストマーを含有する水性分散液とPTFEを含有する水性分散液とを混合する際の各水性分散液の温度は、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは60℃以下であり、さらに好ましくは50℃以下である。
【0072】
このようにして得られる水性分散液中のパーフルオロエラストマーおよびPTFEを共凝析させる方法としては、水性分散液と凝析剤とを混合する方法や凍結する方法が挙げられる。凝析剤としては、酸などの公知の凝析剤が使用でき、たとえば、アルミニウム塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩、有機系凝析剤として酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなど、無機酸凝析剤として塩酸、硝酸、フッ酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などがあげられる。中でも凝析剤として無機酸凝析剤を用いることにより、金属含有量が少なくクリーンであり、凝析時にパーフルオロエラストマーが有するシアノ基などの架橋部位を損壊させることがなく、組成物を架橋した場合に高い架橋密度を有する架橋物が得られ、得られた架橋物は優れた耐プラズマ性および優れた圧縮永久歪特性を示すことになる。
【0073】
水性分散液と凝析剤とを混合する際の温度は、好ましくは10℃以上であり、より好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上であり、好ましくは60℃以下であり、さらに好ましくは50℃以下である。水性分散液と凝析剤とを混合する際の温度は、混合することにより得られる混合物の温度であってよい。水性分散液と凝析剤を含有する水溶液とを混合する場合は、水性分散液および水溶液の温度を調整することにより、水性分散液と凝析剤とを混合する際の温度を調整できる。
【0074】
共凝析することにより得られた組成物を水で洗浄し、組成物内に存在する少量の緩衝液や塩等の不純物を除去した後、洗浄した組成物を熱風炉や真空乾燥機などで乾燥させてもよい。乾燥温度は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上であり、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0075】
共凝析後に得られる組成物の形態は、特に限定されないが、ガム(gum)、クラム(crumb)、粉末、ペレットなどであってよく、ガムまたはクラムであることが好ましい。ガム(gum)は、組成物からなる粒状の小さな塊であり、クラム(crumb)とは、組成物中のパーフルオロエラストマーが、室温でガムとして小粒状の形を保つことができず互いに融着した結果、不定形な塊状の形態となったものである。
【0076】
<その他の成分>
本開示の組成物は、パーフルオロエラストマーおよびPTFE以外のその他の成分を含有することができる。その他の成分を含有する組成物は、パーフルオロエラストマーとPTFEとを共凝析させる際に、その他の成分を添加することにより調製してもよいし、パーフルオロエラストマーとPTFEとを共凝析させた後、共凝析組成物とその他の成分とを混合することにより調製してもよい。混合は、通常のポリマー用加工機械、たとえば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、密閉式混合機などを用いて行うことができる。
【0077】
その他の成分としては、たとえば、フィラーが挙げられる。
【0078】
フィラーとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド構造を有するイミド系フィラー、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリオキシベンゾエートなどのエンジニアリングプラスチック製の有機フィラー、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどの金属酸化物フィラー、炭化ケイ素、炭化アルミニウムなどの金属炭化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物フィラー、カーボンブラック、フッ化アルミニウム、フッ化カーボンなどの無機フィラーがあげられる。
【0079】
これらの中でも、各種プラズマの遮蔽効果の点から、カーボンブラック、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ポリイミド、フッ化カーボンが好ましい。
【0080】
また、上記無機フィラー、有機フィラーを単独で、または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0081】
とくに高純度かつ非汚染性が要求されない分野では、必要に応じて組成物に配合される通常の添加物、たとえば、加工助剤、可塑剤、着色剤などを配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤や架橋助剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
【0082】
上記組成物は、有機塩基性化合物を含有してもよい。有機塩基性化合物としては、式:CH(CH17-NHのオクダデシルアミン;
式:HN-C(O)-(CH11-CH=CH-(CHCHのエルカアミド;
式:HN-C(O)-(CH-CH=CH-(CHCHのオレアミド;
式:HN-(CH-NHのヘキサメチレンジアミン
式:
【化2】
の1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)等を挙げることができる。
【0083】
(架橋剤など)
本開示の組成物は、さらに、無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。本開示の組成物が架橋剤などのこれらの成分を含有することにより、本開示の組成物から、架橋物を容易に得ることができる。
【0084】
無機窒化物としては、特に限定されるものではないが、窒化ケイ素(Si)、窒化リチウム、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化バナジウム、窒化ジルコニウムなどがあげられる。これらの中でも、ナノサイズの微粒子が供給可能であることから、窒化ケイ素であることが好ましい。
【0085】
有機スズ化合物としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズなどがあげられる。
【0086】
アンモニアを発生させる化合物としては、40~330℃でアンモニアを発生させる化合物が好ましい。
【0087】
アンモニア発生化合物としては、尿素またはその誘導体、アンモニウム塩が好ましく、尿素またはアンモニウム塩がより好ましく、尿素がさらに好ましい。アンモニウム塩としては有機アンモニウム塩でも無機アンモニウム塩でもよい。また、アンモニア発生化合物としては、微量の水と反応して、アンモニアを発生させるものであってもよい。
【0088】
尿素の誘導体としては、ビウレア、チオウレア、尿素塩酸塩、ビウレットなどがあげられる。
【0089】
有機アンモニウム塩としては、安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、フタル酸アンモニウムなどの非フッ素系のカルボン酸またはスルホン酸のアンモニウム塩が挙げられる。
【0090】
無機アンモニウム塩としては、特開平9-111081号公報に記載された化合物、たとえば硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0091】
また、アンモニア発生化合物としては、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアミジン、ホルムアミジン塩酸塩、ホルムアミジン酢酸塩、t-ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、フタルアミドなども挙げられる。
【0092】
上記架橋剤としては、パーオキサイド架橋、ポリオール架橋、ポリアミン架橋、トリアジン架橋、オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、および、チアゾール架橋において用いる架橋剤が挙げられる。パーフルオロエラストマーがシアノ基(-CN基)を有する場合、架橋剤としては、オキサゾール架橋剤、イミダゾール架橋剤およびチアゾール架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0093】
パーオキサイド架橋において用いる架橋剤は、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD)、t-ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC)、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、パークミルD-40、パークミルD-40MB(T))、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B、パーヘキサ25B-40)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3(パーヘキシン25B、パーヘキシン25B-40)、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25Z)、t-ブチルパーオキシマレイン酸(t-ブチルMA)、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(パーブチルI-75)、メチルエチルケトンパーオキサイド(パーメックD(DR)、パーメックH(HR、HY)、パーメックN(NR、NY)、パーメックS(SR)、パーメックF(FR)、パーメックG(GR、GY))、シクロヘキサノンパーオキサイド(パーヘキサH)、アセチルアセトンパーオキサイド(パーキュアーAH、AL)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(パーヘキサTMH)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサHC)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン(パーヘキサMC)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサC-80(S)、パーヘキサC-75(EB)、パーヘキサC(C)、パーヘキサC-40、パーヘキサC-40MB(S))、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(パーヘキサ22)、4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ペンタン酸ブチル(パーヘキサV、パーヘキサV-40(F))、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン(パーテトラA)、p-メンタンヒドロパーオキサイド(パーメンタH)、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド(パークミルP)、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド(パーオクタH)、クメンヒドロパーオキサイド(パークミルH-80)、t-ブチルヒドロパーオキサイド(パーブチルH-69)、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、パーブチルP-40、ペロキシモンF-40、パーブチルP-40MB(K))、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(パーヘキシルD)、ジイソブチリルパーオキサイド(パーロイルIB)、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(パーロイル355(S))、ジラウロイルパーオキサイド(パーロイルL)、ジコハク酸パーオキサイド(パーロイルSA)、ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物(ナイパーBMT-K40、ナイパーBMT-M)、ジベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBW、ナイパーBO、ナイパーFF、ナイパーBS、ナイパーE、ナイパーNS)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド(ナイパーPMB)、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルNPP-50M)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルIPP-50、パーロイルIPP-27)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルTCP)、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルOPP)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(パーロイルSBP)、クミルパーオキシネオデカノエート(パークミルND、パークミルND-50E)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(パーオクタND、パーオクタND-50E)、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート(パーヘキシルND、パーヘキシルND-50E)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(パーブチルND、パーブチルND-50E)、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート(パーブチルNHP)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(パーヘキシルPV、パーヘキシルPV-50E)、t-ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、パーブチルPV-40E)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーオクタO)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25O)、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、パーキュアーHO(N))、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチルO、パーキュアーO)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシルI)、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(パーブチル355)、t-ブチルパーオキシラウレート(パーブチルL)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(パーブチルE)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(パーヘキシルZ)、t-ブチルパーオキシアセテート(パーブチルA)、t-ブチルパーオキシ-3-メチルベンゾエート及びt-ブチルパーオキシベンゾエートの混合物(パーブチルZT)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(パーブチルZ)、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート(ペロマーAC)、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB-25)、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(ノフマーBC-90)などをあげることができる。なかでも、好ましいものは、ジアルキルタイプのものである。さらに、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。一般に活性-O-O-の量、分解温度などを考慮して有機過酸化物の種類並びに使用量が選ばれる。
【0094】
また、この場合に用いることのできる架橋助剤としては、パーオキシラジカルとポリマーラジカルに対して反応活性を有する化合物であればよく、たとえば-CH=CH、-CHCH=CH、-CF=CF、-C(CF)=CF、-C(CH)=CF、-CF=CF(CF)、-CF=CF(CH)、-C(C)=CF、-CF=CF(C)、-CH=CF、-CF=CHF、-C(CF)=CHF、-CF=CH(CF)、-CH=CF(CF)などの官能基を有する多官能性化合物があげられる(各式中の「C」はフェニル基を表す)。具体的には、たとえばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’-n-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサンなどがあげられる。
【0095】
また、パーオキサイド架橋剤とともに用いる架橋助剤としては、一般式(31):
【化3】
(式中、6つのR31は、それぞれ独立に、H、ハロゲン原子、または、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にハロゲン化された1~5の炭素原子を有する基であり、Z31は、ヘテロ原子を任意選択的に含有する、線状若しくは分岐状の炭素数1~18の任意選択的にハロゲン化されたアルキレン基、シクロアルキレン基、または、(パー)フルオロポリオキシアルキレン基)で表される化合物を挙げることもできる。
【0096】
一般式(31)で表される化合物としては、一般式(32):
【化4】
(式中、jは、2~10の整数、好ましくは4~8の整数であり、4つのR32は、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基若しくは(パー)フルオロアルキル基である)で表される化合物、一般式(33):
【化5】
(式中、Y31は、それぞれ独立して、F、ClまたはHであり、Y32は、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはOR33(ここで、R33は、部分的に、実質的にまたは完全にフッ化若しくは塩素化されていてもよい、分岐若しくは直鎖のアルキル基である)であり、Z33は、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価の基であり、好ましくはZ33は、mが3~5の整数である、-(CF-基であり、一般式(33)で表される化合物は、好ましくはFC=CF-O-(CF-O-CF=CFである)で表される化合物、一般式(34):
【化6】
(式中、Y31、Y32およびZ33は、上記のとおりであり、R34は、それぞれ独立に、H、Fまたは炭素数1~5のアルキル基若しくは(パー)フルオロアルキル基である)で表される化合物などを挙げることができる。
【0097】
架橋剤、または、パーオキサイド架橋剤とともに用いる架橋助剤としては、一般式(35):
【化7】
【0098】
(式中、R35~R37は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、または、置換もしくは非置換のアリール基であり、R35~R37の少なくとも1つは、フッ素原子またはフッ素原子を含む基である。mは1~5の整数である。mが2以上である場合、m個のR35~R37は、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。ベンゼン環の水素原子は、置換されていてもよい。)で表される構造を、少なくとも1つ有する化合物を挙げることもできる。mが1の場合は、該構造を2以上有することが好ましい。
【0099】
一般式(36)で表される構造を有する化合物としては、一般式(36):
【化8】
【0100】
(式中、R35~R37は、上記のとおり。pは0~2の整数であり、nは2~6の整数である。)で表される化合物、一般式(37):
【化9】
【0101】
(式中、R35~R37は、上記のとおり。R38は、単結合手、-SO-、-O-、-S-、-CO-、ヘテロ原子含有基、置換もしくは非置換のアルキレン基、置換もしくは非置換のシクロアルキレン基または置換もしくは非置換のアリーレン基である。mは1~5の整数である。これらの基は一部又は全部がフッ素化されていてもよい。)で表される化合物などを挙げることができる。
【0102】
ヘテロ原子含有基としては、ヘテロ原子を含有する2価の基であれば、特に限定されない。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ホウ素原子、リン原子が例示できる。
【0103】
ポリオール架橋に用いる架橋剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAFなどの多価アルコール化合物があげられる。
【0104】
ポリアミン架橋に用いる架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどの多価アミン化合物があげられる。
【0105】
オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、チアゾール架橋に使用する架橋剤としては、たとえば一般式(41):
【0106】
【化10】
【0107】
(式中、R41は-SO-、-O-、-CO-、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基または単結合手、または、
【0108】
【化11】
【0109】
で示される基であり、R42およびR43は一方が-NHであり他方が-NHR44、-NH、-OHまたは-SHであり、R44は水素原子、フッ素原子または一価の有機基であり、好ましくはR42が-NHでありR43が-NHR44である。炭素数1~6のアルキレン基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などをあげることができ、炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基としては、
【0110】
【化12】
【0111】
などがあげられる。なお、これらの化合物は、特公平2-59177号公報、特開平8-120146号公報などで、ビスジアミノフェニル化合物の例示として知られているものである)で表されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、一般式(42):
【0112】
【化13】
(R41は、上記のとおり、R45は、それぞれ独立に、以下の基のいずれかである。)
【化14】
【0113】
で表されるビスアミドラゾン系架橋剤、一般式(43):
【0114】
【化15】
【0115】
(式中、Rf41は炭素数1~10のパーフルオロアルキレン基である)で表されるアミドラゾン系架橋剤、または一般式(44):
【0116】
【化16】
【0117】
(式中、nは1~10の整数である)で表されるビスアミドオキシム系架橋剤、一般式(45):HN=CR4546
(式中、R45は、H、NH、およびNHR47からなる群から選択され、R46は、Ph、SOH、NR4849、2-ピリジン、およびCHCONHからなる群から選択され、R47は、Ph、NH、およびCNからなる群から選択され、R48は、H、NHPh、CHCONH、炭素数1~8の直鎖アルキル基、および炭素数1~8の分枝アルキル基からなる群から選択され、かつ、R49は、Ph、COOC(CH、NH、CHCOOH、CSNH、CNHNH Cl、p-フェニルCN、
【化17】
および、COPhからなる群から選択される)で表される化合物などがあげられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤またはビスジアミノフェニル系架橋剤などは従来シアノ基を架橋点とする架橋系に使用していたものであるが、カルボキシル基およびアルコキシカルボニル基とも反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0118】
また、架橋剤としては、一般式(46):X41-(CH-R50-(CH-X41(式中、X41は、それぞれ独立に、アルキン基、ニトリル基またはY41 (Y41は、SO、SO、CまたはCOであり、pは0または1である)であり、n、mは独立して1~4の整数であり、R50は、
i)炭素数3~10のフルオロアルキレン基、
ii)炭素数3~10のフルオロアルコキシレン基、
iii)置換アリーレン基、
iv)フッ化ビニリデンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の共重合単位を含むオリゴマー、
v)フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合単位を含むオリゴマー、
vi)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の共重合単位を含むオリゴマー、および、
vii)テトラフルオロエチレンおよび炭化水素オレフィンの共重合単位を含むオリゴマーからなる群から選択される)で表される架橋剤を挙げることもできる。この架橋剤は、ニトリル基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基またはアルキン基を有するパーフルオロエラストマーとともに用いることが好ましい。たとえば、パーフルオロエラストマーのニトリル基と、架橋剤のアジド基とが反応して、テトラゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0119】
とくに好ましい架橋剤としては、複数個の3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル基、もしくは3-アミノ-4-メルカプトフェニル基を有する化合物、または一般式(47):
【0120】
【化18】
【0121】
(式中、R41、R42およびR43は上記のとおり)で表される化合物があげられ、具体的には、たとえば2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2-ビス(3-アミノ-4-メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス-3,4-ジアミノフェニルメタン、ビス-3,4-ジアミノフェニルエーテル、2,2-ビス(3,4-ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどである。
【0122】
これらの中でも、架橋剤としては耐熱性、耐スチーム性、耐アミン性、良好な架橋性の点から、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0123】
無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の含有量は、パーフルオロエラストマー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.2質量部以上であり、特に好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5.0質量部以下であり、さらに好ましくは2.0質量部以下であり、特に好ましくは1.0質量部以下である。
【0124】
(架橋物)
上記組成物は、架橋成形して架橋物を得るための成形材料として好適に使用できる。本開示の組成物を架橋することにより、架橋物を得ることができる。本開示の架橋物は、NFプラズマに対する耐久性に優れており、しかも、300℃を超えるような高温で使用した場合でも圧縮永久歪が小さい。
【0125】
本開示の架橋物は、圧縮率25%で、300℃で70時間放置することにより測定する圧縮永久歪(300℃)が、好ましくは60%以下であり、より好ましくは55%以下である。圧縮永久歪(300℃)は、架橋物を25%の圧縮率で圧縮した状態で、300℃で70時間放置してから、圧縮を開放し、23℃で30分間放置した後、圧縮前後の架橋物の厚みを測定することにより算出できる。
【0126】
本開示の架橋物は、高温で圧縮されても圧壊しにくい。本開示によれば、圧縮率25%で、300℃で70時間放置した場合でも、割れない架橋物が提供される。また、本開示によれば、圧縮永久歪(300℃)を測定する上記の試験においても割れることが無く、圧縮永久歪(300℃)を測定することができる架橋物(すなわち、圧縮永久歪(300℃)の値を有する架橋物)が提供される。
【0127】
本開示の架橋物は、圧縮率25%で、200℃で70時間放置し、さらに70℃で24時間放置することにより測定する圧縮永久歪(200℃から70℃に温度変更)が、好ましくは70%以下であり、より好ましくは65%以下である。圧縮永久歪(200℃から70℃に温度変更)は、架橋物を25%の圧縮率で圧縮した状態で、200℃で70時間放置し、さらに、70℃で24時間放置してから、圧縮を開放し、23℃で30分間放置した後、圧縮前後の架橋物の厚みを測定することにより算出できる。
【0128】
組成物から架橋物を得る方法としては、上記組成物を成形材料として成形することにより予備成形体を得た後、予備成形体を架橋させる方法が挙げられる。上記組成物から予備成形体を得る方法は通常の方法でよく、金型にて加熱圧縮する方法、加熱された金型に圧入する方法、押出機で押出す方法など公知の方法で行なうことができる。ホースや電線などの押出製品の場合は押出後にスチームなどによる加熱架橋を行なうことで、架橋物を得ることができる。
【0129】
上記架橋は一次架橋と呼ばれており、一次架橋、二次架橋の順で、行うことができる。一次架橋は、150~250℃で5~120分間行うことが好ましく、170~200℃で5~60分間行うことがより好ましい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いればよく、例えば、プレス架橋などをあげることができる。
【0130】
二次架橋は、250~320℃で2~48時間行うことが好ましく、280~310℃で5~24時間行うことがより好ましい。また、二次架橋は、180~320℃で2~24時間行ってもよく、190~310℃で5~20時間行ってもよい。この温度範囲で温度変化を持たせてもよい。架橋手段としては、公知の架橋手段を用いれば良く、例えば、オーブン架橋などをあげることができる。架橋は、たとえば、空気雰囲気下または窒素雰囲気下で行うことができる。
【0131】
本開示の架橋物は、特に耐熱性が要求される半導体製造装置、特に高密度プラズマ照射が行なわれる半導体製造装置のシール材として好適に使用できる。上記シール材としては、O-リング、角-リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、リップシール等が挙げられる。
そのほか、半導体製造装置に使用される各種のポリマー製品、例えばダイヤフラム、チューブ、ホース、各種ゴムロール、ベルト等としても使用できる。また、コーティング用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0132】
なお、本開示でいう半導体製造装置は、特に半導体を製造するための装置に限られるものではなく、広く、液晶パネルやプラズマパネルを製造するための装置等、高度なクリーン度が要求される半導体分野において用いられる製造装置全般を含むものであり、例えば次のようなものを挙げることができる。
【0133】
(1)エッチング装置
ドライエッチング装置
プラズマエッチング装置
反応性イオンエッチング装置
反応性イオンビームエッチング装置
スパッタエッチング装置
イオンビームエッチング装置
ウェットエッチング装置
アッシング装置
(2)洗浄装置乾式エッチング洗浄装置
UV/O洗浄装置
イオンビーム洗浄装置
レーザービーム洗浄装置
プラズマ洗浄装置
ガスエッチング洗浄装置
抽出洗浄装置
ソックスレー抽出洗浄装置
高温高圧抽出洗浄装置
マイクロウェーブ抽出洗浄装置
超臨界抽出洗浄装置
(3)露光装置
ステッパー
コータ・デベロッパー
(4)研磨装置
CMP装置
(5)成膜装置
CVD装置
スパッタリング装置
(6)拡散・イオン注入装置
酸化拡散装置
イオン注入装置
【0134】
本開示の架橋物は、例えば、CVD装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、アッシング装置またはエキシマレーザー露光機のシール材として優れた性能を発揮する。
【0135】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0136】
<1> 本開示の第1の観点によれば、
パーフルオロエラストマーおよびポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物であって、前記ポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度が、1.0×10~7.0×10ポアズであり、前記ポリテトラフルオロエチレンの融点が、322℃以上であり、前記パーフルオロエラストマーと前記ポリテトラフルオロエチレンとを共凝析することにより得られる組成物が提供される。
<2> 本開示の第2の観点によれば、
前記パーフルオロエラストマーが、シアノ基を有する第1の観点による組成物が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
前記ポリテトラフルオロエチレンが、任意で変性モノマー単位を含有し、前記変性モノマー単位の含有量が、全モノマー単位に対して、0~0.10モル%である第1または第2の観点による組成物が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
前記ポリテトラフルオロエチレンが、変性モノマー単位を含有し、前記変性モノマー単位の含有量が、全モノマー単位に対して、0.02~0.10モル%である第1または第2の観点による組成物が提供される。
<5> 本開示の第5の観点によれば、
前記変性モノマー単位が、ヘキサフルオロプロピレン単位およびパーフルオロビニルエーテル単位からなる群より選択される少なくとも1種である第4の観点による組成物が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
前記ポリテトラフルオロエチレンの平均一次粒径が、200nm以上である第1~第5のいずれかの観点による組成物が提供される。
<7> 本開示の第7の観点によれば、
前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記パーフルオロエラストマー100質量部に対して、1~100質量部である第1~第6のいずれかの観点による組成物が提供される。
<8> 本開示の第8の観点によれば、
前記パーフルオロエラストマーおよび前記ポリテトラフルオロエチレンを含有する水性分散液を調製し、酸を用いて、得られた水性分散液中の前記パーフルオロエラストマーおよび前記ポリテトラフルオロエチレンを共凝析させることにより得られる第1~第7のいずれかの観点による組成物が提供される。
<9> 本開示の第9の観点によれば、
さらに、無機窒化物、有機スズ化合物、アンモニアを発生させる化合物および架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第1~第8のいずれかの観点による組成物が提供される。
<10> 本開示の第10の観点によれば、
第1~第9のいずれかの観点による組成物を架橋することにより得られる架橋物が提供される。
【実施例0137】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0138】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0139】
(PTFEの組成)
19F-NMR分析により求めた。
【0140】
(PTFEの平均一次粒径)
平均一次粒径は、固形分0.15質量%に調整されたPTFE水性分散液が注入された所定のセルに550nmの光を入射したときの透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して算出した数平均一次粒径との相関関係を求めた後に、得られた試料について測定した透過率を上記の相関関係にあてはめることにより求めた(検量線法)。
【0141】
(PTFEの融点)
PTFEの融点は、日立ハイテクサイエンス社製の示差走査熱量計測定機X-DSC7000(DSC)を用い、事前に標準サンプルとして、インジウム、鉛を用いて温度校正した上で、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFE約3mgをアルミ製パンに入れ、40ml/分の窒素気流下で、230~350℃の温度領域を10℃/分で昇温させて示差走査熱量測定を行い、上記領域における融解曲線の最小点に対応する温度を融点として測定した。
【0142】
(PTFEの溶融粘度)
溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)および2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した。表中の「不溶」とは、PTFEが溶融せず、溶融粘度が測定できなかったことを意味する。
【0143】
(パーフルオロエラストマーの組成)
19F-NMR分析により求めた。
【0144】
(パーフルオロエラストマーのムーニー粘度)
ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃において、JIS K6300に従い測定した。
【0145】
(圧縮永久歪み(300℃))
圧縮永久歪みは、ASTM D395またはJIS K6262に記載の方法に準じて測定した。実施例および比較例で作製したOリングを、圧縮装置を用いて、常温で、圧縮率25%まで圧縮(厚さ(線径)3.5mmのOリングを、厚さ2.625mmまで圧縮)した。
次に、圧縮されたOリングが固定された圧縮装置を、電気炉内に静置し、300℃で70時間放置した後、電気炉から圧縮装置を取り出した。圧縮装置からOリングを取り外し、取り外したOリングを恒温室に23℃で30分放置し、Oリングの厚さ(t)を測定した。次式により、圧縮永久歪みを求めた。なお、圧縮永久歪みが0%に近いほど架橋物が圧縮永久歪特性に優れていることを意味する。
圧縮永久歪み(%)=(t-t)/(t-t)×100
:Oリングの元の厚さ(mm)
:スペーサの厚さ(mm)
:圧縮試験後のOリングの厚さ(mm)
上記の試験においては、t=3.5mm、t=2.625mmである。
【0146】
(割れ率(300℃))
上記の「圧縮永久歪み(300℃)」の試験後の12個のOリングについて、割れの発生状態を目視にて確認した。割れ率は次の計算式で算出した。なお、割れ率が0%に近いほど架橋物を圧縮しても割れにくいことを意味する。
割れ率(%)=(割れの発生個数)/(試験数)×100
上記の試験においては、試験数=12個である。
【0147】
(圧縮永久歪み(200℃から70℃に温度変更))
圧縮永久歪みは、ASTM D395またはJIS K6262に記載の方法に準じて測定した。実施例および比較例で作製したOリングを、圧縮装置を用いて、常温で、圧縮率25%まで圧縮(厚さ(線径)3.5mmのOリングを、厚さ2.625mmまで圧縮)した。
次に、圧縮されたOリングが固定された圧縮装置を、電気炉内に静置し、200℃で70時間放置した後、電気炉から圧縮装置を取り出した。その後、圧縮されたOリングが固定された圧縮装置を、別の電気炉に静置し、70℃で24時間放置した。圧縮装置からOリングを取り外し、取り外したOリングを恒温室に23℃で30分放置し、Oリングの厚さ(t)を測定した。次式により、圧縮永久歪みを求めた。
圧縮永久歪み(%)=(t-t)/(t-t)×100
:Oリングの元の厚さ(mm)
:スペーサの厚さ(mm)
:圧縮試験後のOリングの厚さ(mm)
上記の試験においては、t=3.5mm、t=2.625mmである。
【0148】
(割れ率(200℃から70℃に温度変更))
上記の「圧縮永久歪み(200℃から70℃に温度変更)」の試験後の12個のOリングについて、割れの発生状態を目視にて確認した。割れ率は次の計算式で算出した。なお、割れ率が0%に近いほど架橋物を圧縮しても割れにくいことを意味する。
割れ率(%)=(割れの発生個数)/(試験数)×100
上記の試験においては、試験数=12個である。
【0149】
(耐プラズマ性(プラズマ処理前後の架橋物の重量減少率))
実施例および比較例で作製したOリング(P24サイズ)を、プロセスチャンバー内に静置した。ラジカル発生装置を用いて発生させたプラズマを、プロセスチャンバー内に送り込み、以下のプラズマ照射条件で、Oリングを曝露した。プラズマ照射前後のOリングの質量からNFリモートプラズマ重量減少率を算出した。
(プラズマ照射条件)
フッ素ラジカル発生装置:Astron Atomic Fluorine Generator Model AX7657-2(MKS社製)
ガス流量:Ar/NF=1(L/min)/1(L/min)
圧力:3Torr
照射温度:250℃
照射時間:12時間(2時間毎にチャンバー内のOリング位置を移動)
【0150】
実施例および比較例では以下の材料を用いた。
パーフルオロエラストマー:
TFE/PMVE/CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN=59.3/39.9/0.8(モル%)
ムーニー粘度ML(1+20)(170℃)=66
【0151】
架橋剤:
2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン
【0152】
PTFE:
表1に記載の物性を有するPTFE
【0153】
実施例1
パーフルオロエラストマー粒子のエマルション(固形分濃度24重量%)880gと表1記載の物性を有するPTFE粒子のエマルション(固形分濃度15重量%)282gを23℃で混合し、23℃にて10%硝酸500g中に10分かけて滴下して共凝析を行った。得られた共凝析物を水洗し、真空乾燥機をもちいて70℃で乾燥し含フッ素エラストマーにPTFEが微分散したエラストマー組成物を得た。
【0154】
このエラストマー組成物を示差熱分析(DTA)で測定したところ327.7℃にPTFEに基づくと考えられる吸収が認められた。
【0155】
得られたエラストマー組成物120質量部に架橋剤(2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン)0.9質量部を混合し、オープンロールにより混練して架橋性エラストマー組成物を得た。
【0156】
さらに架橋性エラストマー組成物を180℃で30分間プレス架橋した後290℃で18時間オーブン架橋を行い、P24サイズのOリングを作製した。得られたOリングを用いて、上記の方法により、圧縮永久歪み(300℃)、圧縮永久歪み(200℃から70℃に温度変更)、NFリモートプラズマ減少率を測定した。結果を表1に示す。
【0157】
実施例2~3
実施例1と同様にしてエラストマー組成物及び架橋性エラストマー組成物、Oリングを得た。エラストマー組成物のDTA測定の結果、実施例2では327.5℃、実施例3では329.5℃にそれぞれのPTFEに基づくと考えられる吸収が認められた。
【0158】
比較例1
実施例1で用いた23℃のパーフルオロエラストマー粒子のエマルションを、10%硝酸の中に23℃で滴下し凝析させた。析出物を洗浄後、乾燥しパーフルオロエラストマー粒子を得た。一方、実施例1で用いたPTFE粒子のエマルションに硝酸を添加して凝析させた。析出物を洗浄、乾燥して白色のPTFE粉末を得た。
【0159】
パーフルオロエラストマー粒子100質量部にPTFE粉末を20質量部、架橋剤(2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン)0.9質量部をオープンロールにて混練し、架橋性エラストマー組成物を得た。
【0160】
実施例1~3と同様にしてOリングを作製した。上記の方法により、圧縮永久歪み(300℃)、圧縮永久歪み(200℃から70℃に温度変更)、NFリモートプラズマ重量減少率を測定した。結果を表1に示す。
【0161】
比較例2
表1記載のPTFEに変更したほかは実施例1~3と同様にしてOリングを作製し、得られたOリングを用いて同様に評価した。結果を表1に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
実施例4~7
表2に記載の組成になるように各材料の量を変更した以外は、実施例1と同様にしてエラストマー組成物及び架橋性エラストマー組成物、Oリングを得た。実施例1の結果とともに、結果を表2に示す。
【0164】
比較例3
比較例1で作製したパーフルオロエラストマー粒子100質量部に架橋剤(2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン)0.9質量部をオープンロールにて混練し、架橋性エラストマー組成物を得た。実施例1と同様にして架橋性エラストマー組成物からOリングを作製し、得られたOリングを用いて同様に評価した。結果を表2に示す。
【0165】
【表2】