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特開2023-154433デンタルフロスの固定方法とフロス保持具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154433
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】デンタルフロスの固定方法とフロス保持具
(51)【国際特許分類】
   A61C 15/04 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
A61C15/04 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063691
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(71)【出願人】
【識別番号】311013155
【氏名又は名称】システムセイコー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】細野 正寛
(72)【発明者】
【氏名】山口 亨
(72)【発明者】
【氏名】川原 潤也
(72)【発明者】
【氏名】小宅 智史
(57)【要約】
【課題】専用ロールタイプの保持具は複数種類存在する市販のケースに入ったフロスを使用できないという問題があり、樹脂ゴミによる環境破壊の観点からも問題があった。また、ヌンチャク型の保持具は、日々使用する器具としては操作が煩雑で使い難い問題もあった。
【解決手段】一端又は該一端近傍が開放された溝部40fを有するポスト40と、他端を固着するガイド軸30及びガイド軸30を保持する握持部10と、ガイド軸30に遊嵌しポスト40の胴体外周面40hと予め定めた間隙を保持してガイド軸30に対して摺動する中空のシリンダ20と、該シリンダ20をガイド軸30の軸線に沿って握持部10に付勢するバネ50とを備えたフロス保持具2で、胴体外周面40hと中空のシリンダ20の内壁面20gとの間でフロス3を圧潰するようにした。
【選択図】 図3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端又は該一端近傍が開放された溝部を有するポストと、
前記ポストの他端を固着するガイド軸、該ガイド軸を保持する握持部と、
前記ガイド軸に遊嵌し、前記ポストの胴体外周面と予め定めた間隙を保持して前記ガイド軸に対して摺動する中空のシリンダと、
該シリンダを前記ガイド軸の軸線方向に沿って前記握持部に付勢するバネ
とを備えたフロス保持具。
【請求項2】
前記握持部に設けられた斜面と、前記シリンダに設けられた斜面とが互いに係合し位置が定まる第1の保持位置と、前記シリンダを前記ガイド軸周りに回動し、前記握持部の先端部と前記シリンダの先端部とが係合する第2の保持位置とを備えた請求項1に記載のフロス保持具。
【請求項3】
前記ガイド軸の円周方向に設けられたガイドピンと、前記シリンダに設けられた螺旋状の溝孔部を互いに係合させ、一端で係合させた第1の保持位置と、前記シリンダを前記ガイド軸周りに回動した後他端で係合する第2の保持位置とを備えた請求項1に記載のフロス保持具。
【請求項4】
一端又は該一端近傍が開放された溝部を有するポストと、
前記ポストの他端を固着するガイド軸、該ガイド軸を保持する握持部と、
前記ガイド軸に遊嵌し、前記ポストの胴体外周面と予め定めた間隙を保持して前記ガイド軸に対して摺動する中空のシリンダと、
該シリンダを前記ガイド軸の軸線方向に沿って前記握持部に付勢するバネ
とを備えたフロス保持具において、前記ポストの前記胴体外周面と前記シリンダの内壁面との前記間隙に、デンタルフロスを圧潰して挟み込むように固定したことを特徴とするデンタルフロスの固定方法。
【請求項5】
前記シリンダを前記ガイド軸に対して軸線方向に移動させて、前記デンタルフロスを前記ポストの前記胴体外周面と前記シリンダの前記内壁面とで圧潰して挟み込むように固定したことを特徴とする請求項4に記載のデンタルフロスの固定方法。
【請求項6】
前記ポストの前記胴体外周面と前記シリンダの前記内壁面との前記間隙に前記デンタルフロスを圧潰して挟み込むと共に、さらに、前記ポストのフランジ部と前記シリンダの端部に前記デンタルフロスを圧潰して挟み込むように固定したことを特徴とする請求項5に記載のデンタルフロスの固定方法。
【請求項7】
前記シリンダを前記ガイド軸に対して前記ガイド軸周りに回動させて、前記デンタルフロスを前記ポストの前記胴体外周面に巻き付けるようにして前記ポストの前記胴体外周面と前記シリンダの前記内壁面とで圧潰して挟み込むように固定したことを特徴とする請求項4に記載のデンタルフロスの固定方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃用のデンタルフロスを固定する固定方法とそのフロス保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシによるブラッシングでは除去しきれない歯垢を除去することを目的とした歯間ブラシやデンタルフロスは数多くの種類が存在する。特にデンタルフロスは、歯間の距離が狭い若年層でも使用可能であり、多くの歯科医も使用を推奨している。
【0003】
デンタルフロス(以後、フロスと呼ぶ)は、絹糸やナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などの合成繊維のフィラメントを複数本撚り合わせて構成したものであり、歯間に通すことで歯垢を掻き出す道具である。一般に販売されている製品の形式としては、樹脂製のホルダーにフロスが弓状に取り付けられた形式(以後、ホルダータイプと呼ぶ)と、一巻が30~50mほどのフロスを30~40cm程度切り取って指などに巻き付けて使用する形式(以後、ロールタイプと呼ぶ)の2種類に分類される。
【0004】
ホルダータイプの場合、包装から取り出すことでそのまま使用でき、片手でも操作可能であるなど使用しやすいという利点がある。しかし、フロスがホルダーに固定されていることで、小回りが利きにくいことと歯垢の除去効率が悪いことが欠点となっている。また、原則として、樹脂製のホルダーが使い捨てとなっており、樹脂ゴミによる環境破壊の観点からも使用を控えるべき形式となっている。
【0005】
これに対して、ロールタイプの場合は、フロス使用時の長さや張力を適切に調整できるため、歯に沿った形で歯垢の除去操作ができる。さらに、巻き取られたフロスを収めるためのケース以外の付属品がないため、環境破壊の観点からも使用が推奨される形式といえる。しかし、ロールタイプは、フロスを切り取って両指に巻き付けて使用するため実際使用する部分よりかなり長めに切り取って使用しなければならず無駄が多い問題があった。また、フロスを両手で操作しなければならず、操作に慣れるまで時間がかかることが問題となっている。さらに、指が口腔内に入る場合もあり衛生上の観点から敬遠される場合もある。
【0006】
近年では、ロールタイプのフロスの使用を補助するための器具が提案されている。例えば、特許文献1では、巻かれたロールタイプのフロスを収納するためのケースとしての器具が提案されている。これは、引き出したフロスを固定する機能を持ったフロスケースに関するものであり、引き出したフロスを片手の指に巻き、もう一方の手でケースを持って歯垢除去作業を行うことで、容易にフロスが扱えるようにすることを目的としている。
【0007】
また、特許文献2では、二本の中空棒から成る「ヌンチャク型」と呼称される器具が提案されている。この器具では、二本の棒の内の一本がフロスケースの機能を備えたものとなっており、もう一本が引き出したフロスを固定するための治具になっている。この治具を使用することで、口腔内に指を入れることに抵抗がある人や奥歯の清掃作業が不慣れな人においても、容易かつ正確に歯垢除去作業が行えると記載されている。
【0008】
さらに、「ヌンチャク型」と呼称される器具には特許文献3、特許文献4の様に、一定の長さのフロスの両端に固定具を備え、2本の握り棒端部に各々の固定具を固定して使用するものが提案されている。この場合、固定具付きの専用フロスを交換して使用することとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-122061号公報
【特許文献2】特開2016-150246号公報
【特許文献3】実用新案登録第3158023号公報
【特許文献4】特表2013-537817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に提案のあるロールタイプのフロスを使用補助するための器具は、フロスケースの延長上としての器具に関するものとなっており、予め器具に装着されたフロスを引き出して使用するタイプであり、フロスをケースに固定する必要もあり、複数種類存在する市販のケースに入ったフロスを使用できないという問題があった。
【0011】
さらに、「ヌンチャク型」器具でも引き出したフロスを固定するための治具の場合は、細く柔らかいフロスを小孔に通す作業や、複数の部品によって構成される器具を分解・組み立てる作業が必要となっており、日々使用する器具としては操作が煩雑で使い難い問題もあった。
【0012】
また、特許文献3、特許文献4に記載のヌンチャク型の器具は、フロスの装着性は向上しているものの、固定具付きの専用フロスとなっており、前述の問題と同様に複数種類存在する市販のケースに入ったフロスを使用できない問題があった。
【0013】
また、特許文献3、特許文献4のヌンチャク型の器具は、予め決められた長さのフロスしか使用できず操作性に問題が発生する場合もあり、フロスの両端に固定具が固定されているため、フロスが歯に引っ掛かった場合に緊急の取り外しが容易にできない問題もあった。さらに、フロス使用後は固定具付きの専用フロスを廃棄するため、樹脂ゴミによる環境破壊の観点からも問題があった。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するために提案したものであり、複数種類存在する市販のケースに入ったフロスを使用可能とし、使用量も削減でき、さらにフロス保持具への装着も簡単に行える非常に操作性の良いデンタルフロスの固定方法とフロス保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために手段1は、一端又は該一端近傍が開放された溝部を有するポストと、該ポストの他端を固着するガイド軸及びガイド軸を保持する握持部と、ガイド軸に遊嵌しポストの胴体外周面と予め定めた間隙を保持してガイド軸に対して摺動する中空のシリンダと、該シリンダをガイド軸の軸線方向に沿って握持部に付勢するバネとを備えたフロス保持具としたことである。
【0016】
本発明の手段1によれば、フロスを装着する場合にポストの一端又は該一端近傍が開放された溝部を有しており、開放端の溝からフロスを潜らせてセットできることで、細く柔らかいフロスを小孔に通す煩雑な作業も必要なく簡単に装着できる利点がある。さらに、フロスの固定は中空のシリンダをガイド軸に対して軸線方向又は軸周りに移動させるだけで固定できるため、非常に簡単に固定できる利点がある。
【0017】
また、安価な複数種類存在する市販のケースに入ったフロスを切り取って使用するだけであり、フロスをフロス保持具に固定する場合にもフロスの端部近傍で固定できるため、実際歯垢除去に必要なフロスの長さだけ切り取って使用することで使用量が大幅に削減でき、無駄な廃棄物が発生せず非常に経済的である利点もある。
【0018】
さらに、フロスが歯に引っ掛かった場合にフロス保持具の分解は必要なく、中空のシリンダをガイド軸に対して軸線方向又は軸周り逆方向に移動させるだけでフロスの固定が外れフロス端部を簡単に取り外せるため、フロス保持具から外したフロスを歯間から抜き取ることで緊急の取り外しが容易に行える利点がある。
【0019】
(課題を解決するためのその他の手段)
上述の手段1の下位概念の手段2は、握持部の一部と、シリンダの一部とが互いに係合する第1の保持位置と、シリンダをガイド軸周りに回動することでシリンダを軸線方向に移動させ係合する第2の保持位置とを備えたことである。
【0020】
本発明の手段2によれば、第1の保持位置でも第2の保持位置でも、係合部においてバネの力で安定に保持でき、フロスの保持具への固定や取り外しの操作もシリンダを回動させるだけであり、非常に簡単に操作できる利点がある。
【0021】
本発明の下位概念の手段3は、手段1のフロスの固定方法がシリンダをガイド軸に対して軸線方向に移動させ、ポストの胴体外周面とシリンダの内壁面との間隙にデンタルフロスを圧潰して挟み込むように固定したことである。
【0022】
本発明の手段3によれば、ポストの胴体外周面と中空のシリンダの内壁面との間隙を予め定めた間隙に設定しておくだけで、使用するフロスを圧潰して最適な保持力を発生させることが可能になるため、非常に扱いやすいフロス保持具を提供できる利点がある。さらに、前述のポストの胴体外周面と中空のシリンダの内壁面との間隙で圧潰するばかりでなく、さらに加えてポストのフランジ部とシリンダの端部にフロスを圧潰して挟み込むように固定したことで、圧潰方向が異なる方向になり、一層保持力が向上する利点がある。
【0023】
本発明の下位概念の手段4は、手段1のフロス固定方法がシリンダをガイド軸に対して軸周りに回動させて、フロスをポストの胴体外周面に巻き付けるようにしてポストの胴体外周面とシリンダの内壁面とで圧潰して挟み込むように固定したことである。
【0024】
本発明の手段4によれば、フロスを固定するために必要な圧潰量は巻き付け量(巻き付け回転角度)を変化させることで調整ができ、太さ(または厚さ)の異なるフロスを使用する場合にも常に安定した保持力を維持できるため、複数種類存在する市販のケースに入った太さ(または厚さ)の異なるフロスも安定的に使用できる利点がある。
【発明の効果】
【0025】
以上、本発明によれば、複数種類存在する市販のケースに入ったフロスを使用可能とし、使用量も削減でき、さらにフロス保持具への装着も簡単に行える非常に操作性の良いデンタルフロスの固定方法とフロス保持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態におけるデンタルフロス保持具セットである。
図2】本発明の第1の実施態様における(a)フロス保持具の上面図、(b)正面図である。
図3図2のフロス保持具の分解斜視図である。
図4図2のA-A断面矢視の斜視図である。
図5図2のB-B断面矢視の斜視図である。
図6】本発明の第1の実施態様における(a)フロス保持具の開状態を示す斜視図、(b)フロス保持具の閉状態を示す斜視図である。
図7】本発明の第1の実施態様における握持部とシリンダの係合部において、係合状態を説明するため、係合をずらした状態を示す斜視詳細図である。
図8】本発明の第1の実施態様における(a)フロス装着時の開状態を示す斜視図、(b)フロスを装着した閉状態を示す斜視図である。
図9図8(b)における斜視断面詳細図である。
図10図9における部分拡大図である。
図11】フロスの他の装着方法の例を示す概略図である。
図12】本発明の第1の実施態様における変形例を示すフロス装着時の斜視図である。
図13】本発明の第1の実施態様における変形例の握持部とシリンダの係合を示す斜視詳細図である。
図14】本発明の第2の実施態様における(a)フロス保持具の開状態を示す斜視図、(b)フロス保持具の閉状態及び一部詳細を示す斜視図である。
図15】本発明の第3の実施態様におけるフロス保持具の要部分解斜視図である。
図16】本発明の第3の実施態様における(a)フロス装着時の開状態を示す斜視図、(b)フロスを装着した閉状態を示す斜視図である。
図17】本発明の第4の実施態様における要部斜視図である。
図18図15におけるシリンダと握持部との係合部における他の係合例を示す要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以降、本発明を実施するための形態について、図を用いて詳細に説明する。まず、図1では本発明の各種実施態様を適用した場合のフロス保持具2を2個使用して、そのフロス保持具2の間にフロス3を装着したフロス保持具セット1を示す。この場合、フロス3は複数種類存在する市販のケースに入ったフロスを、適宜実際の使用部分に対して若干長い程度必要な長さに切って使用することになる。
【0028】
本発明のフロス保持具2について、第1の実施態様の構成を図2図5、動作を図6図7に基づいて説明する。
【0029】
フロス保持具2は図2及び図3で示す様に、歯垢除去作業で使用する場合に掌に握る部分である握持部10にガイド軸30の案内部30aが穴壁面部10dに圧嵌されて握り棒5が構成されている。ガイド軸30は案内部30aとバネ案内部30bで形成される段付きの円柱軸で、内部に突起部20cを有する中空のシリンダ20が外覆されている。
【0030】
また、案内部30aが圧嵌される握持部10の端部は、図2に示されるように斜めに切断されており、その斜面は底部10aと斜面部10b、斜面先端部10c(図7参照)で構成されている。
【0031】
シリンダ20は前述の様に内壁面20gから軸芯に向かって中央近傍に突起部20cを有する中空円筒で、突起部20cに対して一方の内壁面20gはガイド軸30の案内部30aと遊嵌されて回動及び軸線方向に摺動可能に保持されている。また、突起部20cの突起内壁20fはガイド軸30のバネ案内部30bと遊嵌されて同様に回動及び軸線方向に摺動可能に保持されている。
【0032】
また、シリンダ20の一端は図2図3に示されるように握持部10の斜面部10bと対向して斜めに切断されて斜面部20bが斜面部10bと当接している。さらにその斜面部20b先端には一部が切り取られて凹形状をした係止部20aが設けられている。
【0033】
さらに、図4及び図5に示す様に、ガイド軸30のバネ案内部30bとシリンダ20の突起部20cに対して他方の内壁面20gの間にはバネ50が挿入され、バネ案内部30bの先端には端部30cが穴底部40cに突き当たるまで別途説明するポスト40が圧嵌され固着されている。ポスト40の端部40bとシリンダ20の突起座面20dにはそれぞれバネ端部50a、50bが当接して、バネ50の圧縮反力でシリンダ20の斜面部20bを握持部10の斜面部10bに押し付けている。なお、斜面部20bが斜面部10bに押し付けられた状態では、図示せぬが突起部20cと座部30dとは若干の間隙を有しており当接することはない。
【0034】
ポスト40は、図3図5に示す様に、球状の先端部40aを有するポストで、胴体部は外壁面40gが前述のシリンダ20の内壁面20gと遊嵌し摺動可能になっている。また、胴体部の一部は周方向から開口部40eが形成され、更に軸芯近傍には開口部40eと連結された細い溝部40fが形成されている。この溝部40fの隙間は市販のフロスの太さ(または厚さ)より若干広い幅が形成されている。
【0035】
ポスト40は、球状の先端部40aと繋がって外壁面40gと段差を有する円柱状の胴体外周面40hが形成され、シリンダ20の内壁面20gと間隙Xを形成している。なお、この間隙Xは市販のフロスの太さ(または厚さ)に対して若干狭い隙間に設定されている。この結果、ポスト40の胴体外周面40hは開口部40eができ、フロス3が溝部40fに係止されるようにフック部40dが形成される。
【0036】
なお、本発明に使用するフロス保持具2の金属材料は、口腔内に入れて使用することから医療用によく使用されるオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316Lが好ましく用いられている。
【0037】
次に、動作について図6図7を用いて説明する。まず、シリンダ20の斜面部20bが握持部10の斜面部10bにバネ50で押し付けられている状態では、図6(a)に示す様にシリンダの端部20eが下方に下がっており、ポスト40の開口部40eが開放されている。
【0038】
この状態から、シリンダ20を図6の矢印T方向に回転させると、シリンダ20の斜面部20bは握持部10の斜面先端部10cに突き上げられてシリンダ20は内壁面20gがガイド軸30の案内部30aに沿って図6(a)の矢印Z方向に移動する。このとき、バネ50は図9に示す様に突起座面20dと端部40b間で押しつぶされ、徐々に押圧力が増していく。
【0039】
シリンダ20が図6(a)の位置から180度回転して図6(b)の状態になると、斜面先端部10cがシリンダ20の凹形状をした係止部20aと係合することになる。係合状態は係合位置を離した状態で表現した図7に示す様に斜面先端部10cが係止部20aと輪郭を接して隙間なく係合している。また、バネ50は突起座面20dと端部40b間で押しつぶされることにより押圧力が増し、この押圧力でシリンダ20が回転して元に戻ろうとする力に抗して安定して係合する。なお、本説明では斜面先端部10cがシリンダ20の凹形状をした係止部20aと係合すると説明しているが、係合の関係を逆にしてシリンダ20の斜面部20bの先端を凸状の頂点とし、握持部10の斜面先端部10cに凹状の係止部を設けて係合させてもよい。
【0040】
フロス3をフロス保持具2に装着する場合の装着動作について図8図10を用いて説明する。まず、図8(a)のシリンダの端部20eが下方に下がっており、ポスト40の開口部40eが開放されている状態において、フロス3の端部近傍をポスト40の開口部40eから潜らせた後、溝部40fに挿入する。溝部40fの幅はフロス3の太さ(または厚さ)より若干広い幅になっている。
【0041】
この状態で、図8(a)の矢印T方向にシリンダ20を180度回転させると、握持部10の斜面先端部10cが係止部20aと係合するまで図中矢印Z方向に移動する。このとき、フロス3は終端近傍がシリンダ20の内壁面20gと円柱状の胴体外周面40hとの間隙Xに挟まり圧潰部3aと3cで圧し潰されて挟持される。なお、フロス3が溝部40fに係合する係止部3bにも溝部40fの壁面に押圧する力が発生している。(図8(b)~図10参照)
【0042】
一旦、フロス3を装着すると、フロス3に引き抜く力を掛けた場合でも、圧潰部3a、3c、係止部3bでコの字形状に押さえつけており抜けることはない。なお、図11に示す様にフロス3の端部近傍をポスト40の胴体外周面40hの背面部40jに巻き付けるようにセットすると、シリンダ20の内壁面20gと背面部40jの間でも圧潰部が発生するため一層引き抜き抵抗力が強くなる。
【0043】
本発明の第1の実施態様における変形例のフロス保持具2を使用してフロス3を装着した場合の装着状態を図12に示す。第1の実施態様と異なる点はポスト45が胴体外周面45hから円周方向に張り出したフランジ部45kを有している点である。さらに、図13に示す様に、握持部15とシリンダ25の係合部の形状が異なる点が特徴である。
【0044】
ポスト45の胴体外周面45hから円周方向に張り出したフランジ部45kとシリンダの端部25eは、フロス3が装着される位置では間隙Yの距離を隔てており、フロス3の太さ(または厚さ)より狭い間隔に設定されている。そのため、フロス3は終端近傍がシリンダ20の内壁面20gと円柱状の胴体外周面45hとの間隙Xに挟まり圧潰部3aと3cで圧し潰されて挟持されるとともに、フランジ部45kとシリンダの端部25eとの間隙Yに2か所で挟まり圧潰される。
【0045】
この結果、圧潰部分が4か所ハット状(帽子のツバ状)に形成されるため、引き抜き負荷が更に一層向上して、安定してフロスを保持することができる。なお、フロス3の装着は図8と同様であるが、フランジ部45kとシリンダの端部25eとの間隙Yを常に一定に保つためには、図7の斜面先端部10cと係止部20aの係合の様に軸線方向に変化することができない。
【0046】
そのため、図13の様に握持部15の先端には先端平坦部15cが形成されている。一方、シリンダ25の係止部25aもその先端は平坦部となっており、フロス3の装着時にはバネ50の反力に抗して先端平坦部15cと係止部25aで確実に係合して間隙Yを常に一定に保つ構造となっている。
【0047】
本発明の第2の実施態様について図14を用いて説明する。図14(a)と(b)に示す様に、シリンダ70は前述のシリンダ20と同様の形状をしているが、異なる点は、その外周の一部には螺旋状の溝孔部70mが設けられており、さらにその両端には軸周りの回転方向に平行な溝平坦部70nが形成されている。
【0048】
一方、握持部60に固着されたガイド軸30の案内部30aには螺旋状の溝孔部70mに遊嵌して摺動するように案内部30aの軸芯から円周方向に向かって円柱状のガイドピン35が固着されている。
【0049】
その動作について説明する。図14(a)の様にガイドピン35が溝孔部70mの一端近傍の溝平坦部70nで係合している状態では、ポスト45のフランジ部45kと、シリンダ70の端部70eは大きく離れており、ポスト45の開口部45eと溝部45fは開放されている状態であり、開口部45eを介してフロス3を溝部45fに装着することが可能となっている。
【0050】
握持部60に対してシリンダ70が図14(a)中の矢印Tの方向に回転すると、シリンダ70は図示せぬバネ50の押圧に抗して螺旋状の溝孔部70mがガイドピン35に沿って回転しながら図中矢印Zの方向に移動する。この結果、シリンダ70は図14(b)の様にガイドピン35が溝孔部70mの他端近傍の溝平坦部70nでバネ弾性力によりしっかり係合する。この状態では、ポスト45のフランジ部45kと、シリンダ70の端部70eが近接することとなり、開口部45eと溝部45fは隠れた状態となり、胴体外周面45hとシリンダ20の内壁面20gとの間隙X、およびフランジ部45kと、端部70eとの間隙Yでフロス3を圧潰できるようになる。(図14(b)参照)
【0051】
本発明の第2の実施態様の構成と方法によれば、シリンダ70の矢印Z方向への移動距離は螺旋状の溝孔部70mの回転に伴う進み量に合わせることができる。例えば、シリンダ70を1/4回転する場合でも、1回転させる場合でも同一の移動量が得られるように設定することが可能となり、設定の自由度が増す追加の利点がある。
【0052】
本発明の第3の実施態様について図15図16を用いて説明する。シリンダ90の一端は端部90eから円筒状の一部が切り欠かれた状態の形状をしており、端部90eと端面部90qの間は平坦部90nと壁部90pで構成される段差が両側に設けられ2段の切り欠き構造となっている。また、端部90eからは軸線方向に端面壁部90kが円筒の両側に設けられている。
【0053】
一方、シリンダ90の他端は端面部90rから設けられた凹状の係合凹部90sが4分割されて形成され、係合凹部90sに対向するように握持部80の端面部80rに設けられ両側に傾斜を有する突起部80sと係合する形になっている。図15では円周方向の4か所で係合する形で説明しているが、何か所で係合しても構わない。また、係合力は図示せぬバネ50により押圧されて係合している。なお、ポスト45はポストの外壁面45gがシリンダ90の
内壁面90gと嵌合し回動可能になっている。この結果、前述と同様にポストの胴体外周面45hと内壁面90gとの間には間隙Xが形成されている。(図16参照)
【0054】
図16においてフロス3の装着と固定方法について説明する。まず、フロス3の終端3e近傍をポスト45の開口部45eを介して溝部45fに位置決めをする。このとき、フロス3は段差の平坦部90nに合わせて位置決めができる。この段差は、装着時にフロス3が開口部45eに戻ることを防ぐ効果も有する。なお、溝部45fの幅をフロス3の太さ(または厚さ)より若干狭くしておけばその摩擦保持力で戻ることはないため、平坦部90nと壁部90pで構成される段差は必ずしも必要ではない。
【0055】
この状態から、ポスト45に対してシリンダ90を図16(a)の矢印Wの方向に回転させる。すると、図16(a)中の破線で示す端面壁部90kがフロス3の端部3e側を巻き込むように回転してフロス3をフック部45dに巻き付けるように押し付けていく。このとき、間隙Xはフロスの太さ(または厚さ)より若干狭い間隔になっており、シリンダ90の内壁面90gがフロスを圧潰しながらフロス3をフック部45dに巻き付けていく。
【0056】
図16(b)はフロス3が圧潰し装着された状態を示し、圧潰部3f、3gで圧潰されて装着されている。なお、図16(a)では矢印Wの方向に回動させているが、矢印Wとは反対方向に回動させて装着してもよい。この場合、図16(a)中の実線で示す端面壁部90kがフロス3をフック部45dに巻き付けていく。
【0057】
フロス3の太さ(または厚さ)が異なる場合に、例えば太さ(または厚さ)が太い場合には間隙Xに対して圧潰量が大きくなるために巻き付け量(巻き付け角度)を少なくし、細い場合には間隙Xに対して圧潰量が小さくなるために巻き付け量(巻き付け角度)を大きくするなど、圧潰量を制御することにより常に安定した保持力を維持することが可能となる。
【0058】
なお、本発明の第3の実施態様の巻付け方式によるフロス3の固定方法は、端面壁部90kにフロス3を巻き戻す方向(図16(b)中で矢印M方向)に外力が加わる場合には、握持部の突起部80sとシリンダの係合凹部90sの係合が外れやすいことが考えられる。特に、各突起部80sが両側になだらかな斜面形状を構成している場合は顕著になる。
【0059】
この場合は、巻取りの回転方向は1方向になってしまうが、図18に示す様に握持部81に突起部81sを設け、斜面81uと垂直壁81tで構成する鋸形状の刃とし、対向するシリンダ91の突起部91sも同様に斜面91uと垂直壁91tで構成する鋸形状の刃とし、いわゆるラチェット歯で互いに係合させることで、巻き戻す方向(図中矢印S方向)に外力が加わった場合にも垂直壁81tと垂直壁91tがしっかり係合することで、安定して確実に係合することができる。なお、係合を解除する場合は、係合部の各突起の噛み合いが外れるまでシリンダ91をガイド軸30の軸線方向に移動して戻す必要がある。
【0060】
本発明の第4の実施態様について図17を用いて説明する。ポスト46は前述の第1~第3の実施態様と異なり、半球形状の先端部46aには溝底部46mに達するまですり割り状の溝部46fが設けられている。また、円筒状のシリンダ95の端部95eには溝部46fと対向するように溝部95fが円周方向に貫通して設けられている。
【0061】
ポスト46の図示せぬ胴体外周面とシリンダ95の内壁面との間隙は、前述と同様に間隙Xが設けられている。図17のすり割り状の溝部46fとシリンダ95の溝部95fが揃った状態でフロス3を図中矢印V方向から挿入し、溝底部46m近傍に位置させた後、ポスト46に対してシリンダ95を図中矢印W方向に回転させると、フロス3はシリンダ95の両側の溝端面部95kにより折れ曲がって間隙Xに挟まれながら互いに反対方向に胴体外周面に巻き付いていく。
【0062】
この場合も、フロス3の太さ(または厚さ)の違いにより、巻き付け量(巻き付け角度)を調整して保持力を得ることができる。また、前述と同様に図示せぬ握持部の突起部80sとシリンダの係合凹部95sの係合はラチェット歯で係合させることで、巻き戻す方向に外力が加わった場合にも安定して確実に係合することができる。
【0063】
以上、実施の態様1~4にて詳細に説明してきたが、本発明によれば、ポストの胴体外周面とガイド軸の軸線方向に移動する又は軸周りに回動するシリンダの内壁面で形成する間隙Xの隙間にフロスを圧潰して挟み込むことにより、フロスをフロス保持具に簡単に安定して固定することができる。また、フロスの装着もフロス端部近傍をポストの開口部を介して溝に簡単にセットできるため、非常に利便性に富んだフロス保持具を提供することができるようになる。
【0064】
さらに、フロスをフロス保持具へ装着する場合に、フロス端部近傍で固定できるため、従来の様に指に巻き付ける量や掌でフロスを保持する量の無駄なフロスが不要となり、本発明のフロス保持具2を2本使用してフロス保持具セット1とすれば、従来の半分以下とフロス使用量を大幅に削減でき、非常に経済的である。
【0065】
以上、本発明の実施するための形態に基づいて詳細に説明してきたが、実施の形態はこれに限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成をとり得ることは勿論である。

【符号の説明】
【0066】
1:フロス保持具セット
2:フロス保持具
3:フロス(デンタルフロス)
3a、3c、3f、3g:圧潰部
5:握り棒
10、15、60、80、81:握持部
10a、15a:底部
10b、15b:斜面部
10c:斜面先端部
20、25、70、90、91、95:シリンダ
20a、25a:係止部
20b、25b:斜面部
20c:突起部
20f:突起内壁
20g、90g:内壁面
70m:溝孔部
70n:溝平坦部
90k:端面壁部
95f:溝部
95k:溝端面部
30:ガイド軸
35:ガイドピン
40、45、46:ポスト
40d、45d:フック部
40e、45e:開口部
40f、45f、46f:溝部
40g、45g:ポストの外壁面
40h、45h:胴体外周面
45k:フランジ部
50:バネ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図11
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図18