(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154442
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】空間浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20231013BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20231013BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20231013BHJP
F24F 8/24 20210101ALI20231013BHJP
【FI】
A61L9/01 F
F24F8/80 155
F24F7/003
F24F8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063707
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】横山 広大
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CA06
4C180EA58X
4C180GG17
4C180HH05
4C180KK03
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】本開示は、次亜塩素酸の放出による不活化能力を把握可能な空間浄化装置を提供することを目的の一つとしている。
【解決手段】上記目的のため、本開示のある態様の空間浄化装置10は、次亜塩素酸を生成する生成部1と、生成部1により生成された次亜塩素酸を用いて所定空間9に次亜塩素酸を放出する放出部2と、生成部1による次亜塩素酸生成量Sと、所定空間9の容積Vと、次亜塩素酸の分子量Mと、に基づいて所定空間9の次亜塩素酸理論濃度Cを算出する次亜塩素酸理論濃度算出部4と、次亜塩素酸理論濃度算出部4により算出された次亜塩素酸理論濃度Cと、放出部2による放出期間Pと、に基づいて、所定空間9の不活化能力Jを算出する不活化能力算出部5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸を生成する生成部と、
前記生成部により生成された次亜塩素酸を用いて所定空間に前記次亜塩素酸を放出する放出部と、
前記生成部による次亜塩素酸生成量と、前記所定空間の容積と、前記次亜塩素酸の分子量と、に基づいて前記所定空間の次亜塩素酸理論濃度を算出する次亜塩素酸理論濃度算出部と、
前記次亜塩素酸理論濃度算出部により算出された前記次亜塩素酸理論濃度と、前記放出部による放出期間と、に基づいて、前記所定空間の不活化能力を算出する不活化能力算出部と、を備える、空間浄化装置。
【請求項2】
前記次亜塩素酸理論濃度算出部は、
前記次亜塩素酸生成量を前記所定空間の容積で除算して第一除算値を算出し、
前記次亜塩素酸の分子量を標準状態における前記次亜塩素酸の気体の体積で除算した所定値にて、前記第一除算値を除算することで前記次亜塩素酸理論濃度を算出する、請求項1に記載の空間浄化装置。
【請求項3】
前記次亜塩素酸理論濃度算出部は、さらに前記所定空間の換気量に基づいて前記所定空間の容積を補正する、請求項1または2に記載の空間浄化装置。
【請求項4】
前記次亜塩素酸理論濃度算出部は、前記所定空間の換気量が多いほど、前記所定空間の容積を大きく補正する、請求項3に記載の空間浄化装置。
【請求項5】
前記不活化能力算出部は、前記次亜塩素酸理論濃度を前記放出期間と乗算することで前記所定空間の前記不活化能力を算出する、請求項1から4のいずれかに記載の空間浄化装置。
【請求項6】
前記不活化能力算出部により算出された前記所定空間の前記不活化能力を表示する不活化能力表示部を備える、請求項1から5のいずれかに記載の空間浄化装置。
【請求項7】
前記不活化能力算出部により算出された前記所定空間の前記不活化能力に基づいて前記所定空間における対象微生物に関する不活化度を判定する判定部を備える、請求項1から6のいずれかに記載の空間浄化装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記所定空間の前記不活化能力が閾値以上である場合、前記対象微生物に関する不活化度は適正と判定する、請求項7に記載の空間浄化装置。
【請求項9】
前記判定部が前記対象微生物に関する不活化度を判定したとき、前記判定部の判定結果を表示する不活化表示部を備える、請求項7または8に記載の空間浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
居室などの所定の空間に向けて次亜塩素酸を含んだ空気を放出することで空間の除菌を行う装置が知られている。本出願人は、特許文献1において、除菌、脱臭性能を高めることができる空気浄化装置を開示した。この装置は、吸気口と吹出口とを有する本体ケースに、空気浄化手段と、吸気口から空気浄化手段を介して吹出口までを連通する空気流路と、空気流路に吸気口から空気を送風する送風手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、新たに以下の認識を得た。従来の除菌装置では、居室等の空間を除菌するために、当該空間に次亜塩素酸を含んだ空気を放出する。適切な除菌効果を実現するためには、対象空間に放出される次亜塩素酸による菌及び/又はウイルスを不活性化する能力である不活化能力が適切であることが重要である。しかし、従来の除菌装置には、次亜塩素酸の放出による不活化能力を把握できないという課題があった。
【0005】
本開示の目的の1つは、次亜塩素酸の放出による不活化能力を把握可能な空間浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の空間浄化装置は、次亜塩素酸を生成する生成部と、生成部により生成された次亜塩素酸を用いて所定空間に次亜塩素酸を放出する放出部と、生成部による次亜塩素酸生成量と、所定空間の容積と、次亜塩素酸の分子量と、に基づいて所定空間の次亜塩素酸理論濃度を算出する次亜塩素酸理論濃度算出部と、次亜塩素酸理論濃度算出部により算出された次亜塩素酸理論濃度と、放出部による放出期間と、に基づいて、所定空間の不活化能力を算出する不活化能力算出部と、を備える。
【0007】
なお、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、次亜塩素酸の放出による不活化能力を把握可能な空間浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例に係る空間浄化装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。実施例および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施例を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施例]
図面を参照して本開示の実施例に係る空間浄化装置10を説明する。
図1は、空間浄化装置10を模式的に示す図である。
図2は、空間浄化装置10のブロック図である。空間浄化装置10は、所定空間9に向けて次亜塩素酸を含んだ空気(以下、「機能性空気」という)を放出する装置である。機能性空気は、空気を除菌して、菌および/またはウイルス(以下、「微生物」という)を減少させる機能を有し得る。所定空間9に限定はないが、
図1の例の所定空間9は居室である。
【0013】
空間浄化装置は、空間を除菌するために、対象空間に次亜塩素酸を含んだ空気を放出する。対象空間の容積に対して次亜塩素酸の放出量が不足すると、所期の除菌効果が得られず、逆に、過剰に次亜塩素酸を放出すると、省エネルギーの観点で不利になる。適切な除菌効果を得るためには、次亜塩素酸の放出量が適切であるかどうかを把握することが重要である。このため、空間浄化装置10は、所定空間9の不活化能力を算出可能な構成を有する。
【0014】
空間浄化装置の不活化能力は、次亜塩素酸が微生物を不活性化する(増殖できなくする)能力であり、CT値(Concentration-Time Value)とも称される。不活化能力は、次亜塩素酸の空間濃度である次亜塩素酸理論濃度(ppm)と、当該空間濃度での運転期間(min)の積として算出できる。
【0015】
本開示では、不活化能力および関連する値の算出に関して、以下のパラメータを使用する。当該パラメータには、所定空間9の容積(以下、「容積V」という)、所定空間9の換気量(以下、「換気量W」という)、次亜塩素酸の分子量(以下、「分子量M」という)、次亜塩素酸の放出期間(以下、「放出期間P」という)、次亜塩素酸生成量(以下、「生成量S」という)、標準状態[0℃、気圧1013(hPa)]における次亜塩素酸の気体の体積(以下、「体積R」という)および不活化能力の閾値(以下、「閾値H」という)が含まれる。
【0016】
先に、空間浄化装置10の全体構成を説明し、不活化能力の算出動作については後述する。
図1に示すように、空間浄化装置10は、本体ケース12と、生成部1と、情報処理部3と、浄化部22と、送風部23と、不活化能力表示部7と、不活化表示部8と、情報入力部14とを主に備える。本体ケース12は、所定空間9の空気を吸い込む吸込口18と、所定空間9に空気を吹き出す吹出口16とを有する箱状の筐体である。一例として、吸込口18は、本体ケース12の側面に設けることができる。一例として、吹出口16は、本体ケース12の上面に設けることができる。本体ケース12には、生成部1、情報処理部3、浄化部22、送風部23、不活化能力表示部7、不活化表示部8および情報入力部14が設けられる。
【0017】
送風部23は、吸込口18から吸い込んだ空気を吹出口16に送出できる。送風部23は、情報処理部3の制御に基づいて、送風量を増減できる。送風部23の構成に限定はないが、この例の送風部23は、モータで駆動されるシロッコファンを含む。一例として、送風部23は、空気の流路として、浄化部22の下流側であって、吹出口16の上流側に設けられる。
【0018】
生成部1は、例えば食塩水を電気分解して次亜塩素酸を生成できる。生成部1は、情報処理部3の制御に基づいて、次亜塩素酸の生成量を増減できる。生成部1に通電する電流を大きくすることにより、次亜塩素酸の生成量を増やすことができ、電流を小さくすることにより、次亜塩素酸の生成量を減らすことができる。
【0019】
浄化部22は、吸込口18から吸い込んだ空気に、生成部1で生成された次亜塩素酸を含ませて機能性空気を生成できる。一例として、フィルタ様の繊維構造体に次亜塩素酸の水溶液を付着させ、この繊維構造体に吸込口18から吸い込んだ空気を接触させることにより、この空気に次亜塩素酸を含ませることができる。
【0020】
放出部2は、浄化部22、送風部23、吹出口16および吸込口18を含み、生成部1で生成された次亜塩素酸を所定空間9に放出する。具体的には、放出部2は、吸込口18から吸い込んだ空気A1を浄化部22において、生成部1で生成された次亜塩素酸を含ませて機能性空気A2を生成し、この機能性空気A2を所定空間9に放出して所定空間9を除菌する。
【0021】
情報処理部3には、判定部6が設けられる。判定部6は、不活化能力算出部5により算出された所定空間9の不活化能力Jに基づいて所定空間9における対象微生物に関する不活化度Qを判定する。不活化度Qは、不活化能力Jが所定空間9が十分に除菌できる能力であるかどうかを示す指標であってもよい。不活化能力Jが所定空間9を十分に除菌できる場合は、不活化度Qは適切であるとしてもよく、不活化能力Jが所定空間9を十分に除菌できない場合は、不活化度Qは不適切であるとしてもよい。
【0022】
不活化能力表示部7は、情報処理部3の制御に基づいて、不活化能力算出部5により算出された所定空間9の不活化能力Jを表示する。一例として、不活化能力表示部7は、本体ケース12の正面左上に配置される。不活化能力表示部7は、液晶やLEDなど公知の原理に基づく表示デバイスを採用できる。
【0023】
不活化表示部8は、情報処理部3の制御に基づいて、判定部6が対象微生物に関する不活化度Qを判定したとき、判定部6の判定結果を表示する。一例として、不活化表示部8は、本体ケース12の正面左上に配置される。不活化表示部8は、液晶やLEDなど公知の原理に基づく表示デバイスを採用できる。
【0024】
情報入力部14は、ユーザ等の操作に基づいて、所定の入力情報Eを受け付け、当該入力情報Eを情報処理部3に提供する。入力情報Eは、入力パラメータとして、容積V、換気量W、分子量M、放出期間P、次亜塩素酸生成量S、体積Rおよび閾値Hを含んでもよい。一例として、情報入力部14は、液晶タッチパネルを含んで構成できる。
【0025】
図2を参照して、空間浄化装置10の機能ブロックを説明する。
図2に示す各機能ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0026】
図2を参照して、情報処理部3を説明する。情報処理部3は、次亜塩素酸理論濃度算出部4と、不活化能力算出部5と、判定部6と、情報取得部32と、記憶部33と、生成制御部34と、送風制御部36と、第1表示制御部37と、第2表示制御部38とを含む。
【0027】
次亜塩素酸理論濃度算出部4は、所定のパラメータに基づいて次亜塩素酸理論濃度Cを算出できる。不活化能力算出部5は、所定のパラメータと次亜塩素酸理論濃度Cに基づいて所定空間9の不活化能力Jを算出できる。判定部6は、不活化能力Jに基づいて、所定空間9における対象微生物に関する不活化度Qを判定できる。次亜塩素酸理論濃度算出部4、不活化能力算出部5および判定部6の動作については後述する。
【0028】
生成制御部34は、生成部1の次亜塩素酸の生成量を制御する。送風制御部36は、送風部23の送風量を制御する。第1表示制御部37は、不活化能力表示部7の表示を制御する。第2表示制御部38は、不活化表示部8の表示を制御する。
【0029】
情報取得部32は、算出に用いるパラメータに関して、情報入力部14から入力情報Eを取得する。記憶部33は、算出に用いるパラメータに関して、予め設定されたプリセット情報Dおよび入力情報Eを記憶する。プリセット情報Dは、容積V、換気量W、分子量M、放出期間P、次亜塩素酸生成量S、体積Rおよび閾値Hを含んでもよい。つまり、次亜塩素酸理論濃度算出部4、不活化能力算出部5および判定部6は、入力情報Eとして入力されたパラメータについては、当該入力パラメータを用いて演算し、入力情報Eとして入力されていないパラメータについては、プリセット情報Dのパラメータを用いて演算する。
【0030】
空間浄化装置10の不活化能力の算出動作を説明する。この例では、次亜塩素酸理論濃度算出部4は、生成量Sと、容積Vと、分子量Mと、に基づいて所定空間9の次亜塩素酸理論濃度(以下、「理論濃度C」という)を算出する。つまり、生成量Sが大きいほど理論濃度Cは大きくなり、容積Vが大きいほど理論濃度Cは小さくなると考えられる。また、不活化能力算出部5は、次亜塩素酸理論濃度算出部4により算出された理論濃度Cと、放出期間Pと、に基づいて、所定空間9の不活化能力(以下、「不活化能力J」という)を算出する。つまり、理論濃度Cが大きいほど不活化能力Jは大きくなり、放出期間Pが長いほど不活化能力Jは大きくなる。
【0031】
次亜塩素酸理論濃度算出部4は、式1~式6によって理論濃度Cを算出できる。まず、次亜塩素酸理論濃度算出部4は、式1に示すように、生成量Sを容積Vで除算して第一除算値Kを算出する。
第一除算値K=生成量S/容積V ・・・(式1)
一例として、生成量S=500(mg/h)で、容積V=24000(L)を式1に代入して、
第一除算値K=500/24000=0.0208(mg/h・L)が得られる。
【0032】
次に、次亜塩素酸理論濃度算出部4は、式2に示すように、分子量Mを体積Rで除算して所定値Fを算出する。
所定値F=分子量M/容積V ・・・(式2)
分子量M=52.46(g/mol)、体積R=22.4(L)を式2に代入して、
所定値F=52.46×1000/22.4=2340(mg/L)が得られる。
【0033】
次に、次亜塩素酸理論濃度算出部4は、式3に示すように、所定値Fにて、第一除算値Kを除算することで理論濃度Cを算出する。
理論濃度C=第一除算値K/所定値F ・・・(式3)
上記の第一除算値Kと所定値Fを式3に代入して、
理論濃度C=0.0208/2340=8.89(ppm/h)が得られる。
【0034】
理論濃度Cの算出精度は高いことが望ましい。そこで、実施例の次亜塩素酸理論濃度算出部4は、さらに所定空間9の換気量(以下、「換気量W」という)に基づいて所定空間9の容積Vを補正する。一例として、所定空間9の換気量Wが多いほど、所定空間9の容積Vを大きく補正してもよい。理論濃度Cは所定空間9の換気回数の影響を受ける。このため、1時間当たりの換気回数N(回/h)に合わせて空間容積を補正できる。例えば、1時間当たりの換気回数がN(回/h)であれば、換気ロス分も考慮して空間容積を(1+換気回数N)倍して計算できる。1回の換気で、所定空間9の容積Vだけ換気されるので、換気量Wは式4で算出できる。
換気量W=容積V×換気回数N ・・・(式4)
【0035】
補正後の容積を補正容積Xとすると、補正容積Xは式5で算出できる。
補正容積X=容積V+換気量W=容積V(1+換気回数N) ・・・(式5)
式1の容積Vを補正容積Xに置換し、補正後の理論濃度Cは、式6で算出できる。
理論濃度C=生成量S/[容積V(1+換気回数N)]/所定値F ・・・(式6)
一例として、換気回数N=0.5(回/h)を式6に代入して、
補正後の理論濃度C=500/(24000×1.5)/2340
=5.92(ppm/h)が得られる。
この理論濃度Cは、1時間運転後の所定空間の目安値である。
【0036】
不活化能力Jは、理論濃度Cを放出期間P(=運転時間)と乗算することで、式7で算出できる。
不活化能力J=理論濃度C×放出期間P ・・・(式7)
一例として、放出期間P=60(min)を式7に代入し、
不活化能力J=5.92×60=355(ppm・min)が得られる。
【0037】
不活化能力表示部7の動作を説明する。不活化能力表示部7は、情報処理部3の制御に基づいて、不活化能力算出部5により算出された不活化能力Jを表示する。不活化能力表示部7は、不活化能力Jを液晶画面に数値表示してもよいし、不活化能力Jを点灯LEDの数、位置等で表示してもよい。
【0038】
判定部6の動作を説明する。判定部6は、不活化能力算出部5により算出された不活化能力Jに基づいて所定空間9における対象微生物に関する不活化度(以下、「不活化度Q」という)を判定する。一例として、判定部6は、不活化能力Jが閾値H以上である場合、不活化度Qは適正と判定し、不活化能力Jが閾値H未満である場合、不活化度Qは不適と判定する。一例として、閾値H=330(ppm・min)としてもよい。不活化能力Jが330(ppm・min)以上であれば、適切な除菌状態を実現できるとの検討結果がある。不活化度Qが適正とは、次亜塩素酸により所定空間9内の微生物を不活化できているともいえる。また、不活化度Qが不適とは、次亜塩素酸により所定空間9内の微生物を不活化できていないともいえる。
【0039】
不活化表示部8の動作を説明する。不活化表示部8は、判定部6が対象微生物に関する不活化度Qを判定したとき、情報処理部3の制御に基づいて、判定部6の判定結果を表示する。不活化表示部8は、判定結果を液晶画面に文字表示してもよいし、判定結果を点灯LEDの数、色、位置等で表示をしてもよい。
【0040】
本開示の一の態様の概要は、次の通りである。この態様の空間浄化装置(10)は、次亜塩素酸を生成する生成部(1)と、生成部(1)により生成された次亜塩素酸を用いて所定空間(9)に次亜塩素酸を放出する放出部(2)と、生成部(1)による次亜塩素酸生成量(S)と、所定空間(9)の容積(V)と、次亜塩素酸の分子量(M)と、に基づいて所定空間(9)の次亜塩素酸理論濃度(C)を算出する次亜塩素酸理論濃度算出部(4)と、次亜塩素酸理論濃度算出部(4)により算出された次亜塩素酸理論濃度(C)と、放出部(2)による放出期間(P)と、に基づいて、所定空間(9)の不活化能力(J)を算出する不活化能力算出部(5)と、を備える。
【0041】
この態様によれば、所定空間9の不活化能力Jを把握できる。このことにより、不活化能力Jを見える化(可視化)をすることができる。
【0042】
一例として、次亜塩素酸理論濃度算出部(4)は、次亜塩素酸生成量(S)を所定空間(9)の容積(V)で除算して第一除算値Kを算出し、次亜塩素酸の分子量(M)を標準状態における次亜塩素酸の気体の容積(V)で除算した所定値Fにて、第一除算値Kを除算することで次亜塩素酸理論濃度(C)を算出する。
【0043】
この場合、定量的な演算により、不活化能力Jの算出精度を高めることができる。
【0044】
一例として、次亜塩素酸理論濃度算出部(4)は、さらに所定空間(9)の換気量(W)に基づいて所定空間(9)の容積(V)を補正する。
【0045】
この場合、不活化能力Jの算出精度を一層高めることができる。
【0046】
一例として、次亜塩素酸理論濃度算出部(4)は、所定空間(9)の換気量(W)が多いほど、所定空間(9)の容積(V)を大きく補正する。
【0047】
この場合、不活化能力Jの算出精度を一層高めることができる。
【0048】
一例として、不活化能力算出部(5)は、次亜塩素酸理論濃度(C)を放出期間(P)と乗算することで所定空間(9)の不活化能力(J)を算出する。
【0049】
この場合、不活化能力Jの算出精度を一層高めることができる。
【0050】
一例として、空間浄化装置(10)は、不活化能力算出部(5)により算出された所定空間(9)の不活化能力(J)を表示する不活化能力表示部(7)を備える。
【0051】
この場合、ユーザに対して不活化能力Jを可視化することができる。
【0052】
一例として、空間浄化装置(10)は、不活化能力算出部(5)により算出された所定空間(9)の不活化能力(J)に基づいて所定空間(9)における対象微生物に関する不活化度(Q)を判定する判定部6を備える。
【0053】
この場合、不活化能力Jが適切であるかどうかを把握できる。
【0054】
一例として、判定部(6)は、所定空間(9)の不活化能力(J)が閾値(H)以上である場合、対象微生物に関する不活化度(Q)は適正と判定する。
【0055】
この場合、不活化能力Jを定量的に判定できる。
【0056】
一例として、空間浄化装置(10)は、判定部(6)が対象微生物に関する不活化度(Q)を判定したとき、判定部(6)の判定結果を表示する不活化表示部(8)を備える。
【0057】
この場合、ユーザに対して不活化度Qを可視化することができる。
【0058】
以上、本開示を、実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
以上の構成要素の任意の組み合わせも、実施例を抽象化した技術的思想の態様として有効である。たとえば、実施例に対して他の実施例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【0060】
以上、実施例を説明した。実施例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は実施例の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した実施例は、いずれも具体例を示したものにすぎず、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。実施例では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施例」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示にかかる空間浄化装置は、居室空間を除菌するために使用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 生成部、 2 放出部、 3 情報処理部、 4 次亜塩素酸理論濃度算出部、 5 不活化能力算出部、 6 判定部、 7 不活化能力表示部、 8 不活化表示部、 9 所定空間、 10 空間浄化装置、12 本体ケース、 14 情報入力部、 16 吹出口、 18 吸込口、 22 浄化部、 23 送風部、 32 情報取得部、 33 記憶部、 34 生成制御部、 36 送風制御部、 37 第1表示制御部、 38 第2表示制御部。