(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154443
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】工程情報の事前通知システム、および、工程情報の事前通知方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231013BHJP
G06Q 10/0631 20230101ALI20231013BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q10/06 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063717
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誠治
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA03
3C100AA08
3C100AA16
3C100AA18
3C100AA24
3C100AA38
3C100BB03
3C100BB04
3C100BB13
3C100BB14
3C100BB39
3C100CC02
3C100CC05
3C100EE17
5L049AA09
(57)【要約】
【課題】複数の工程からなる流れ作業において、事前準備を要する工程の効率化に寄与すること。
【解決手段】事前通知システム600は、事前準備を要する工程を含むジョブに係るジョブ情報を、印刷機200,201,202、営業端末500から受信する管理装置100と、管理装置100を介してジョブ情報を受信する加工用端末300と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前準備を要する工程を含むジョブに係るジョブ情報を外部装置から受信する管理手段と、
前記管理手段を介して前記ジョブ情報を受信する端末と、
を備える工程情報の事前通知システム。
【請求項2】
前記ジョブ情報は、前記ジョブの納期情報を更に含んで構成され、
前記管理手段は、前記ジョブの納期と前記ジョブの完了時期とを比較して納期未達となる可能性を判定する納期管理部を備え、
前記端末は、前記ジョブ情報のうち、納期未達となる可能性が高いものを警告表示する、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項3】
前記端末は、同一工程を含む複数のジョブに係るジョブ情報を視覚的に区別可能に表示する、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項4】
前記外部装置である印刷機を更に含み、
前記印刷機は、前記ジョブ情報の入力を受け付ける入力部を備える、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項5】
前記印刷機は、前記ジョブ情報が符号化されたバーコードを読み込むバーコードリーダを備える、
請求項4に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項6】
前記管理手段は、前記ジョブ情報から、事前準備を要する工程での作業順序をスケジューリングするスケジューリング部を備え、
前記端末は、前記ジョブ情報から、事前準備を要する工程での作業順序をスケジューリングした結果を受信する、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項7】
前記スケジューリング部は、短納期のジョブを優先的に処理するようにスケジューリングする、
請求項6に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項8】
前記スケジューリング部は、短納期のジョブに対して納期未達となる可能性を判定し、
前記端末は、前記短納期のジョブのうち、納期未達となる可能性が高いものを警告表示する、
請求項6に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項9】
前記作業順序を前記端末にガントチャートで表示させる作業順序表示部を更に備える、
請求項6から8のうち何れか1項に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項10】
前記端末は、工程情報を基に作業のスケジューリングを表示する、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項11】
前記ジョブは、既に印刷された印刷物、または、これから印刷される印刷物に係るものである、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項12】
前記管理手段は、前記端末が兼任する、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項13】
前記管理手段が前記ジョブ情報を受信する通信路は、無線通信路である、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項14】
前記管理手段が前記ジョブ情報を受信する通信路は、インターネットである、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項15】
前記端末は、携帯端末である、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項16】
前記外部装置は、任意の端末である、
請求項1に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項17】
前記工程は、印刷物を加工する工程であり、
前記管理手段は、印刷機が前記ジョブに係る印刷物の印刷を開始した後に、前記ジョブ情報を前記端末に送信する、
請求項1から16のうち何れか1項に記載の工程情報の事前通知システム。
【請求項18】
外部装置と通信可能に接続された管理手段が、事前準備を要する工程を含むジョブに係るジョブ情報を前記外部装置から受信するステップと、
端末が、前記管理手段を介して前記ジョブ情報を受信するステップと、
を実行する工程情報の事前通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程情報の事前通知システム、および、工程情報の事前通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物制作会社(以下、印刷会社)は、顧客からの要望により、ポスター、看板、バナー広告などを幅広く制作する。印刷会社は、一般的に、後述のような工程で依頼品を制作する。
顧客が店舗受付に依頼品の制作を依頼することで、以下の一連の工程が開始する。注文が受け付けられた店舗受付は、顧客からの注文に応じて、どのように印刷物を制作すべきかの仕様が記載された仕様書を作成する。店舗受付にて作成された仕様書は、制作工程の最初であるDTP(DeskTop Publishing)工程に送られる。
【0003】
DTP工程では、仕様書に沿って印刷物の画像電子データが作成され、印刷工程に送られる。印刷工程では、仕様書に沿って印刷物が印刷され、この印刷物は、加工工程に送られる。加工工程では、印刷物に対して仕様書の沿った加工が施され、依頼品は完成する。
【0004】
この加工工程の作業内容は、極めて多岐に渡るが、その1つに、ラミネート加工がある。ラミネート加工で使用されるラミネート材(ラミネートロール)は数種類が存在する。加工作業者は、仕様書の指示によりラミネート機で使用するラミネートロールを交換またはセットする事前準備を行う。このラミネートロールの交換作業は、1回あたり約20分程度を必要とし、非効率であるという問題がある。
【0005】
そのため、同じラミネートロールを使用するジョブに係る印刷物をまとめて加工処理することで、加工工程の事前準備であるラミネートロールの交換作業の回数を減らして、加工工程の効率化を図ることができる。
【0006】
つまり、この問題を解決する方法の1つは、印刷工程から来た印刷物を未加工のまま蓄積しておき、未加工の印刷物がある程度蓄積されたところで、同じラミネート材を使用するジョブに係る印刷物をまとめて加工処理することである。
【0007】
しかしながら、この方法では流れ作業を止めてしまうことになる。よって、蓄積した印刷物に係るジョブの出荷を遅らせることになり、採用することができない。
【0008】
画像形成システムに関する技術として、特許文献1に記載の発明がある。特許文献1には、「画像形成装置100のCPUは、大容量スタッカ200に積載される用紙Pに対して、後処理装置300へと手動で搬送されて後処理が実施される場合には、大容量スタッカ200の最大積載枚数と、後処理装置300の最大後処理枚数とに基づいて、上限積載枚数を設定する」画像形成システムが開示されている(特許文献1の要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された画像形成システムでは、「画像形成システムが備える積載部に積載された用紙束を、後処理装置へと手動で搬送するような環境において、後処理装置による後処理を考慮して用紙を効率的に積載する」ことができる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された画像形成システムでは、前工程である印刷作業中に、後処理の加工が必要なジョブ内容であるか否かを判断しているにすぎず、後処理の具体的な作業内容までは分からない。また、複数の印刷機が存在する場合における、加工仕様に代表されるような、事前準備を要する工程の最適化は、何ら考慮されていない。
【0012】
そこで、本発明は、複数の工程からなる流れ作業において、事前準備を要する工程の効率化に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
(1)事前準備を要する工程を含むジョブに係るジョブ情報を外部装置から受信する管理手段と、
前記管理手段を介して前記ジョブ情報を受信する端末と、
を備える工程情報の事前通知システム。
【0014】
(2)前記ジョブ情報は、前記ジョブの納期情報を更に含んで構成され、
前記管理手段は、前記ジョブの納期と前記ジョブの完了時期とを比較して納期未達となる可能性を判定する納期管理部を備え、
前記端末は、前記ジョブ情報のうち、納期未達となる可能性が高いものを警告表示する、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0015】
(3)前記端末は、同一工程を含む複数のジョブに係るジョブ情報を視覚的に区別可能に表示する、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0016】
(4)前記外部装置である印刷機を更に含み、
前記印刷機は、前記ジョブ情報の入力を受け付ける入力部を備える、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0017】
(5)前記印刷機は、前記ジョブ情報が符号化されたバーコードを読み込むバーコードリーダを備える、
(4)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0018】
(6)前記管理手段は、前記ジョブ情報から、事前準備を要する工程での作業順序をスケジューリングするスケジューリング部を備え、
前記端末は、前記ジョブ情報から、事前準備を要する工程での作業順序をスケジューリングした結果を受信する、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0019】
(7)前記スケジューリング部は、短納期のジョブを優先的に処理するようにスケジューリングする、
(6)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0020】
(8)前記スケジューリング部は、短納期のジョブに対して納期未達となる可能性を判定し、
前記端末は、前記短納期のジョブのうち、納期未達となる可能性が高いものを警告表示する、
(6)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0021】
(9)前記作業順序を前記端末にガントチャートで表示させる作業順序表示部を更に備える、
(6)から(8)のうち何れか1つに記載の工程情報の事前通知システム。
【0022】
(10)前記端末は、工程情報を基に作業のスケジューリングを表示する、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0023】
(11)前記ジョブは、既に印刷された印刷物、または、これから印刷される印刷物に係るものである、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0024】
(12)前記管理手段は、前記端末が兼任する、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0025】
(13)前記管理手段が前記ジョブ情報を受信する通信路は、無線通信路である、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0026】
(14)前記管理手段が前記ジョブ情報を受信する通信路は、インターネットである、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0027】
(15)前記端末は、携帯端末である、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0028】
(16)前記外部装置は、任意の端末である、
(1)に記載の工程情報の事前通知システム。
【0029】
(17)前記工程は、印刷物を加工する工程であり、
前記管理手段は、印刷機が前記ジョブに係る印刷物の印刷を開始した後に、前記ジョブ情報を前記端末に送信する、
(1)から(16)のうち何れか1つに記載の工程情報の事前通知システム。
【0030】
(18)外部装置と通信可能に接続された管理手段が、事前準備を要する工程を含むジョブに係るジョブ情報を前記外部装置から受信するステップと、
端末が、前記管理手段を介して前記ジョブ情報を受信するステップと、
を実行する工程情報の事前通知方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複数の工程からなる流れ作業において、事前準備を要する工程の効率化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】事前通知システムの概略の構成を示した説明図である(その1)。
【
図2】事前通知システムの概略の構成を示した説明図である(その2)。
【
図3】管理装置のハードウエアの構成を示したハードウエアブロック図である。
【
図4】管理装置のCPUがプログラムを実行することで具現化される機能を示した機能ブロック図である。
【
図5】加工用端末のハードウエアの構成を示したハードウエアブロック図である。
【
図6】営業端末のハードウエアの構成を示したハードウエアブロック図である
【
図7】印刷機ハードウエアの構成を示したハードウエアブロック図である。
【
図8】比較例として、ジョブが到達するごとに印刷物のラミネート加工の処理順序を示したガントチャートである。
【
図9】工程の効率化が施されたラミネート加工の処理順序を示したガントチャートである。
【
図10】第1実施形態のスケジュール表示処理を示したフローチャートである。
【
図11】加工用端末の表示部に表示されたガントチャート画面例である。
【
図12】ガントチャート画面に表示された納期の警告例である。
【
図13】第2実施形態のスケジュール表示処理を示したフローチャートである。
【
図14】加工用端末の表示部に表示されたガントチャート画面例である。
【
図15】ガントチャート画面に表示された納期の警告例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正または変更されるべきものであり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図において、同一の構成については同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。
【0034】
<本実施形態>
図1および
図2は、事前通知システム600,600Aの概略の構成を示した説明図である。
図1では、管理装置100(管理手段)は、複数の印刷機200,202,201からジョブ情報を受信し、その受信した各ジョブ情報を加工用端末300に送信している。
図2では、加工用端末300は、複数の印刷機200,202,201からジョブ情報を、直接受信している。
【0035】
図1に示すように、事前通知システム600は、管理装置100、印刷機200,201,202、営業端末500、加工用端末300、および加工機400を備えている。また、
図2に示すように、事前通知システム600Aは、印刷機200,201,202、営業端末500、加工用端末300、および加工機400を備えている。
【0036】
印刷機200,201,202は、ジョブに係るジョブ情報の入力を受け付けて、このジョブ情報に沿って印刷用紙(記録媒体)に画像電子データを形成することで、印刷物を印刷する装置である。なお、このジョブは、印刷用紙に印刷する工程と、印刷物に加工する工程(以下、加工工程)とを含んでいる。加工工程は、所定の事前準備を要する。
【0037】
例えば、そのジョブの加工工程がラミネート処理であれば、事前準備としてラミネート材の交換を要する。加工工程が印刷物のカット処理であれば、事前準備としてカット機の設定を要する。加工工程が縫合処理であれば、事前準備として縫合台の手配を要する。
加工工程が看板にするための板材への貼り付け処理であれば、事前準備として板材の手配などを要する。加工工程がくるみ製本作業であれば、事前準備として糊剤の手配や製本機の調整などを要する。
【0038】
本実施形態の事前通知システム600では、3台の印刷機200,201,202が管理装置100と通信可能に接続されているが、これに限定されるものではなく、1または複数の印刷機が、管理装置100と通信可能に接続されていればよい。印刷機200,201,202は、管理装置100と電気配線で有線接続されていてもよく、無線通信路で接続されていてもよい。また、印刷機200,201,202は、管理装置100とインターネットで接続されていてもよい。
【0039】
管理装置100は、事前準備を要する工程を含むジョブに係るジョブ情報を、例えば、複数の印刷機200,201,202から受信する。これにより、管理装置100は、複数の印刷機200,201,202におけるジョブの状態を管理している。つまり、管理装置100は、印刷中の各ジョブが何分後に終了し、また、そのジョブがどのような加工仕様であるのか(例えば、どんなラミネートを使うのか)を、加工用端末300に表示させる情報を送る。それにより、加工作業者は、いつ頃どのようなジョブに係る印刷物が来るのかを、そのジョブに係る印刷物が加工工程に到着する前に、予め知ることができる。また、加工工程は、事前準備を要する工程を含んでいる。
【0040】
そのため、例えば、そのジョブの加工工程がラミネート処理であれば、加工作業者は、事前準備であるラミネート材の交換作業の回数を減らすことができる。なお、加工工程は、ラミネート処理以外でもよく、例えば印刷物のカット処理、縫合処理、看板にするための板材への貼り付け作業、くるみ製本作業などであってもよい。印刷物のカット処理の場合、加工作業者は、事前準備であるカット機の設定回数を減らすことができる。縫合処理の場合、加工作業者は、事前準備である縫合台の手配をいち早く行い、縫合台の手配待ち時間を減らすことができる。看板にするための板材への貼り付け処理の場合、加工作業者は、事前準備である板材の手配などをいち早く行い、板材の手配待ち時間を減らすことができる。くるみ製本作業の場合、加工作業者は、事前準備である糊剤の手配をいち早く行って、手配待ち時間を減らし、かつ製本機の調整回数を減らすことができる。
【0041】
加工工程が印刷物のカット処理の場合には、事前準備のため、カット用の切り刃の交換のため、予め切り刃の情報が必要となる。加工工程が縫合処理の場合には、事前準備のため、予め必要な作業スペースや、縫合機(ミシン)の準備などの情報が必要となる。加工工程が看板にするための板材への貼り付け処理の場合には、事前準備のため、予め板材の情報が必要となる。加工工程がくるみ製本作業の場合には、事前準備のため、予め糊剤の種類や、製本機の調整のため、製本後の本の厚さなどの情報が必要となる。
【0042】
本発明では、これらの事前準備に必要な情報がジョブ情報として加工用端末に表示されるので、加工作業者は、その事前準備を効率的に行うことができる。また、ジョブ情報は、工程情報の一例を構成する。
【0043】
なお、本実施形態のジョブ情報には、例えば、加工の仕様としてどのようなラミネートを使用するかなどが記載され、ジョブの納期情報を更に含むことができる。
【0044】
また、管理装置100は、加工用端末300にジョブの加工仕様の情報を送るのみではなく、ジョブ情報を基に、事前準備を要する工程での作業順序が効率的となるようにスケジューリングし、そのスケジューリング結果を加工用端末300に送ってもよい。この場合、加工用端末300は、その情報(スケジューリング結果)を表示部360にそのまま表示することができ、これにより、加工作業者は、効率的な作業順序を自分で考える必要がなくなる。なお、スケジューリング結果は、工程情報に含まれる。
【0045】
また、管理装置100は、このスケジューリング機能において、納期が短いジョブについては、たとえ作業効率が落ちるとしても、優先的に着手するようにスケジューリングしてもよい。それにより、短納期のジョブが納期未達となることを防ぐことができる。ここで、短納期のジョブとは、例えば、印刷物の到着から納期までの時間が所定値よりも短いことをいう。
【0046】
納期の短いジョブが来た場合のほかの対応として、短納期であることを警告表示し、かつ、このシステムを停止させ、加工作業者が自分でスケジューリングすることを強制させてもよい。これにより、加工作業者は、短納期のジョブの存在を認知して、自ら納期達成を優先した行動を取ることができる。
【0047】
また、自動スケジューリングについては、管理装置100ではなく、加工用端末300において行ってもよい。この場合、管理装置100は、ジョブ情報を送るだけでよく、その負荷(スケジューリングの負荷)を減らすことができる。
【0048】
また、管理装置100が情報を収集する外部装置は、同じ作業場における印刷機200,201,202だけではなく、他所からジョブを持ってきた営業担当者がジョブ情報を入力する営業端末500であってもよい。つまり、管理装置100がジョブ情報を収集する外部装置は、任意の端末である営業端末500であってもよい。
【0049】
加工工程へ送られるジョブの中には、自社内の印刷工程から来たものだけではなく、営業担当者が顧客から印刷済みの印刷物を預かり、その印刷済みの印刷物にラミネート処理をするだけといったジョブも存在する。そのような場合であっても、加工作業者は、そのジョブをほかのジョブと全く同様に加工処理する必要がある。そのため、加工用端末300には、ほかのジョブと同様に、その仕様が表示される。なお、加工用端末300には、そのジョブをスケジューリングした結果が表示されてもよい。
【0050】
なお、工程とは、印刷物を加工する工程であり、管理装置100は、印刷機200~202がジョブに係る印刷物の印刷を開始した後に、ジョブ情報を加工用端末300に送信してもよい。
【0051】
また、
図2のように、管理装置100を廃止し、印刷機200,201,202と加工用端末300を直接電気配線で接続してもよい。この場合、加工用端末300が管理装置100の機能を兼用することになる。また、これまでに説明したシステムにおいて、管理装置100と印刷機200,201,202と加工用端末300の間の通信路に使われる電気配線を廃止し、Wi-Fi(登録商標)など無線通信を用いた通信路を使用してもよい。また、管理装置100をデータセンタに設けたサーバとし、この管理装置100と印刷機200,201,202と加工用端末300の間の通信路を、インターネットとしてもよい。それにより、作業場に制作を依頼した営業担当者などは、営業端末500によりウェブ上でジョブの進捗を確認することができる。
【0052】
また、加工用端末300は、デスクトップコンピュータに限られず、スマートフォンやタブレット端末などの、携帯端末を用いてもよい。それにより、加工作業者は、加工機400から加工用端末300のデスクトップコンピュータの設置場所へ移動することなく、何処でもジョブ仕様を確認することができる。
【0053】
また、加工用端末300がジョブ情報の作業順序を表示する場合、ガントチャート形式で表示することが、加工作業者の理解を容易にするために好ましい。
また、印刷工程から加工工程へ情報を送るのは、印刷を開始した後の所定時間以内であることが望ましい。基本的には情報を送るのは早いほどよいが、印刷を開始する前に送る場合、加工工程にジョブ(印刷物)が渡る時間の予測にばらつきが生じる。一方、印刷を開始した後であれば、印刷終了時刻は、印刷仕様と印刷スピードによって画一的に決まるため、ばらつきがない。よって、加工用端末300に送られる情報が正確であり、かつ最も連絡の早い段階として、印刷を開始した後の所定時間以内となる。
【0054】
図1では、複数の各印刷機200,201,202のそれぞれは、管理装置100に、加工機400による加工工程(事前準備を要する工程)を含むジョブに係るジョブ情報を送信する。複数の各印刷機200,201,202のそれぞれは、印刷用紙に画像を印刷した印刷物を出力すると、その印刷物は、それぞれ個別に加工機400に届けられる。なお、印刷物は、加工用端末300に届けられてもよい。この場合、加工用端末300に届けられた印刷物は、ジョブ情報とともに加工機400に届けられる。
【0055】
加工用端末300は、情報処理装置で構成され、ジョブに係る印刷物を受領するより前に、管理装置100を介してジョブ情報を受信する。加工用端末300は、受信した各ジョブ情報の状況を、加工用端末300の表示部360に表示する。また、加工用端末300は、ジョブ情報から、事前準備を要する工程での作業順序をスケジューリングした結果を受信し、表示部360に表示することもできる。
【0056】
これにより、加工作業者は、いつ頃どのようなジョブが来るのかを予め把握することができ、加工機400による処理がラミネート処理の場合には、同一のラミネートロールに係るジョブをまとめて処理することにより、事前準備であるラミネートロールの交換回数を減らすことができる。なお、加工機400による作業は、ラミネート処理に限定されるものではなく、例えば、印刷物のカット処理、縫合処理、看板を制作するための板材への貼り付ける作業、ステープル、パンチ、中綴じ、くるみ製本などのうち何れかを処理するものであってもよい。これにより、加工作業者は、カット機の設定などの事前準備の回数を減らし、縫合台や板材の手配などのように、物品が未手配で作業に着手できない状況を回避することができる。
【0057】
本実施形態では、一例として、ラミネートロールの交換作業に時間を要するラミネート加工について説明する。なお、印刷物に対するラミネート加工時間は10分であり、ラミネートロールの交換作業時間の20分と比較して、短いものとする。
【0058】
本実施形態に係る事前通知システム600,600Aでは、加工作業者が効率化を図るために着手の優先順位を下げたジョブについて、その優先順位を下げた結果、納期未達の可能性があるジョブについては、加工用端末300に、警告を表示する。この結果、加工用端末300の表示部360に警告を表示することで、加工作業者に、そのジョブの着手の優先順位を元に戻すように促す。これにより、事前通知システム600,600Aは、納期未達を事前に防ぐことができる。
【0059】
また、加工用端末300は、同じ仕様のジョブ情報が複数表示された場合、すなわち、同じラミネートロールを使用するジョブ情報が複数表示された場合、それらのジョブは、同じ色、または同じフォントなどにより同じ仕様であることを視覚的に認識できるように表示される。これにより、加工作業者は、効率的な作業順序を容易に想到できる。
【0060】
なお、管理装置100は、各印刷機200,201,202からジョブ情報を受信しているが、ジョブ情報は、加工作業者が管理装置100に直接入力してもよく、また、営業端末500のように、管理装置100に電気的に接続された別の情報処理装置などにより入力を受け付けてもよい。
【0061】
また、管理装置100にジョブ情報を入力する方法は、キーボードとマウスなどの入力装置(後述する操作部150)による手入力のほか、仕様書などに記載されたバーコード、QRコード(登録商標)などの二次元コードを、後述のバーコードリーダ280で読み取ることであってもよい。例えば、仕様書のバーコードをバーコードリーダ280で読み取ることで、管理装置100に保存されている複数のジョブの中から1つのジョブを特定し、ジョブ情報として入力できる。なお、本実施形態では、バーコードとQRコード(登録商標)は一次元コードか二次元コードかの違いであるため、バーコードにQRコード(登録商標)が含まれるものとする。
【0062】
<管理装置>
図3は、管理装置100のハードウエアの構成を示したハードウエアブロック図である。
図3に示すように、管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)110、記憶部120、ROM(Read Only Memory)130、RAM(Random Access Memory)140、操作部150、表示部160、およびネットワークインターフェース部170を備えて構成されている。
【0063】
CPU110は、中央処理装置であり、記憶部120またはROM130に格納された制御プログラムを実行することにより、
図4に示す各処理(機能)を具現化する。なお、CPU110が具現化する各処理については、
図4を用いて後述する。
【0064】
管理装置100は、印刷機200,201,202がジョブに係る印刷物の印刷開始した後に、ジョブ情報を加工用端末300に送信する。
【0065】
記憶部120は、ジョブ情報、制御プログラム、各種データを格納する。記憶部120は、大容量の記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)、不揮発性メモリなどで構成される。
【0066】
ROM130は、CPU110によって実行されるプログラムや、このプログラムの実行に使用されるデータ、パラメータなどを記憶する。
【0067】
RAM140は、CPU110で実行可能な各種プログラム、入力データ、出力データ、およびパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。
【0068】
操作部150は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備える。操作部150は、ユーザによる各種入力操作を受け付けて、操作信号をCPU110に出力する。
【0069】
表示部160は、CPU110の制御に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等を表示する。なお、操作部150と表示部160は、表示操作部を構成してもよい。この場合、表示操作部は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、液晶ディスプレイ上にボタンを表示し、このボタンに対する操作入力を検知できる。
【0070】
ネットワークインターフェース部170は、ネットワーク上の印刷機200,201,202、営業端末500、および加工用端末300と通信するための通信インタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードである。なお、ネットワークインターフェース部170は、無線通信を行う無線LAN(Local Area Network)アダプタであってもよい。内部バス195は、管理装置100における各構成要素を、相互に接続する。
【0071】
バーコードリーダ280は、情報が符号化されたバーコードを読み込むものである。バーコードリーダ280は、縞模様状の線の太さによって情報を表したバーコードを読み取る機能を有している。なお、バーコードは、固有の情報の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、バーコードリーダ280に代えて、バーコードやQRコード(登録商標)を読み取るカメラでもよい。なお、バーコードリーダ280は、任意の構成要素である。
【0072】
<管理装置の機能ブロック>
次に、管理装置100のCPU110の機能について、
図4を用いて説明する。
図4は、管理装置100のCPU110がプログラムを実行することで具現化される機能を示した機能ブロック図である。CPU110は、ROM130またはRAM140に格納された制御プログラムを実行することにより、
図4に示した、作業順序表示部112、納期管理部113、スケジューリング部114を具現化する。
【0073】
作業順序表示部112は、事前準備を要する工程での作業順序を、加工用端末300の表示部360にガントチャートで表示させる。作業順序表示部112は、例えば、同一のラミネートロールを用いる加工作業ごとにガントチャートで表示する。これにより、加工作業者は、ジョブを入れ替えることで、事前準備を要する工程の効率化が可能であることを容易に判別可能である。なお、作業順序表示部112は、任意の機能ブロックであり、本発明に必須のものではない。
【0074】
納期管理部113は、ジョブの納期とジョブの完了時期とを比較して納期未達となる可能性を判定する。
【0075】
スケジューリング部114は、ジョブ情報から、事前準備を要する工程での作業順序をスケジューリングする。この場合、スケジューリング部114は、短納期のジョブを優先的に処理するようにスケジューリングする。なお、スケジューリング部114は、任意の機能ブロックであり、本発明に必須のものではない。
【0076】
<加工用端末>
図5は、加工用端末300のハードウエアの構成を示したハードウエアブロック図である。
図5に示すように、加工用端末300は、CPU310、記憶部320、ROM330、RAM340、操作部350、表示部360、およびネットワークインターフェース部370を備えて構成されている。
【0077】
加工用端末300は、例えばタブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成することができる。加工用端末300は、ジョブ情報を受信することに限られず、加工工程での作業順序をスケジューリングした結果を受信することもできる。また、加工用端末300は、短納期のジョブのうち、納期未達となる可能性が高いものを警告表示できる。
【0078】
CPU310は、中央処理装置であり、記憶部320またはROM330に格納された制御プログラムを実行することにより、各処理(機能)を具現化する。
【0079】
記憶部320は、ジョブ情報、制御プログラム、各種データを格納する。記憶部320は、大容量の記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ、不揮発性メモリなどで構成される。
【0080】
ROM330は、CPU310によって実行されるプログラムや、このプログラムの実行に使用されるデータ、パラメータなどを記憶する。
【0081】
RAM340は、CPU310で実行可能な各種プログラム、入力データ、出力データ、およびパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。
【0082】
操作部350は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備える。操作部350は、ユーザによる各種入力操作を受け付けて、操作信号をCPU310に出力する。
【0083】
表示部360は、CPU310の制御に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等を表示する。表示部360は、同一工程を含む複数のジョブに係るジョブ情報を視覚的に区別可能に表示できる。なお、操作部350と表示部360は、表示操作部を構成してもよい。この場合、表示操作部は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイで構成され、液晶ディスプレイ上にボタンを表示し、このボタンに対する操作入力を検知できる。
【0084】
ネットワークインターフェース部370は、ネットワーク上の印刷機200,201,202、および営業端末500と通信するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースカードである。なお、ネットワークインターフェース部370は、無線通信を行う無線LANアダプタであってもよい。内部バス395は、加工用端末300における各構成要素を、相互に接続する。
【0085】
なお、加工用端末300は、管理装置100の機能を備えることができ、管理装置100の機能を兼任することもできる。
【0086】
<営業端末>
図6は、営業端末500のハードウエアの構成を示したハードウエアブロック図である。
図6に示すように、営業端末500は、CPU510、記憶部520、ROM530、RAM540、操作部550、表示部560、ネットワークインターフェース部570、およびバーコードリーダ280を備えて構成されている。
【0087】
CPU510は、中央処理装置であり、記憶部520またはROM530に格納された制御プログラムを実行することにより、各処理(機能)を具現化する。
【0088】
記憶部520は、ジョブ情報、制御プログラム、各種データを格納する。記憶部520は、大容量の記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ、不揮発性メモリなどで構成される。
【0089】
ROM530は、CPU510によって実行されるプログラムや、このプログラムの実行に使用されるデータ、パラメータなどを記憶する。
【0090】
RAM540は、CPU510で実行可能な各種プログラム、入力データ、出力データ、およびパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。
【0091】
操作部550は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備える。操作部550は、ユーザによる各種入力操作を受け付けて、操作信号をCPU510に出力する。
【0092】
表示部560は、CPU510の制御に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等を表示する。なお、操作部550と表示部560は、表示操作部を構成してもよい。この場合、表示操作部は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイで構成され、液晶ディスプレイ上にボタンを表示し、このボタンに対する操作入力を検知できる。
【0093】
ネットワークインターフェース部570は、ネットワーク上の印刷機200,201,202、管理装置100、および加工用端末300と通信するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースカードである。なお、ネットワークインターフェース部570は、無線通信を行う無線LAN(Local Area Network)アダプタであってもよい。内部バス595は、営業端末500における各構成要素を、相互に接続する。
【0094】
バーコードリーダ280は、ジョブ情報が符号化されたバーコードを読み込む。バーコードリーダ280は、読み取ったバーコードに係るジョブ情報を管理装置100に送出する。営業端末500のバーコードリーダ280は、管理装置100のバーコードリーダ280と同一であるため、説明を省略する。
【0095】
<印刷機>
図7は、印刷機200のハードウエアの構成を示したハードウエアブロック図である。印刷機201,202は、印刷機200と同一の構成であるため、印刷機200を用いて説明する。
【0096】
図7に示すように、印刷機200は、CPU210、記憶部220、ROM230、RAM240、操作部250(入力部)、画像形成部260、ネットワークインターフェース部270、およびバーコードリーダ280を備えて構成されている。
【0097】
CPU210は、中央処理装置であり、記憶部220またはROM230に格納された制御プログラムを実行することにより、各処理(機能)を具現化する。
【0098】
記憶部220は、ジョブ情報、制御プログラム、各種データを格納する。記憶部220は、大容量の記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)、不揮発性メモリなどで構成される。
【0099】
ROM230は、CPU210によって実行されるプログラムや、このプログラムの実行に使用されるデータ、パラメータなどを記憶する。
【0100】
RAM240は、CPU210で実行可能な各種プログラム、入力データ、出力データ、およびパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。
【0101】
操作部250は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備える。操作部250は、ユーザによる各種入力操作を受け付けて、操作信号をCPU110に出力する。操作部250は、各ジョブ情報の入力を受け付けることができる。
【0102】
画像形成部260は、印刷用の画像データに基づいて、記録媒体である印刷用紙に画像を形成する。画像形成部260は、例えば、電子写真方式による作像プロセスを用いて、印刷用紙に画像を形成する。なお、電子写真方式による作像プロセスは、帯電、露光、現像、および転写の各工程をプロセスに含む画像形成方法である。
【0103】
ネットワークインターフェース部270は、ネットワーク上の管理装置100、営業端末500、および加工用端末300と通信するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースカードである。なお、ネットワークインターフェース部270は、無線通信を行う無線LANアダプタであってもよい。内部バス295は、印刷機200における各構成要素を、相互に接続する。
【0104】
バーコードリーダ280は、ジョブ情報が符号化されたバーコードを読み込む。バーコードリーダ280は、読み取ったバーコードに係るジョブ情報を管理装置100に送出する。印刷機200のバーコードリーダ280は、管理装置100のバーコードリーダ280と同一であるため、説明を省略する。
【0105】
<比較例>
図8は、比較例として、ジョブが加工工程に到達するごとに印刷物のラミネート加工の処理順序を示したガントチャートである。ガントチャートの横方向は時刻を示している。ガントチャートは、各加工作業を各行に示している。
【0106】
図8に示すように、加工工程には、ラミネートAを使用するジョブXの印刷物およびジョブXに係るジョブ情報が最初に到着する。
【0107】
比較例において、ジョブXの印刷物およびジョブXに係るジョブ情報の仕様書が到着すると、加工工程の作業者(加工作業者)は、ジョブXを実行するためにラミネートAをセットする。ラミネートロールの交換時間は、20分間である。加工作業者は、加工機400に対してラミネートAをセットした後、ジョブXに係るラミネート処理を実行する。各ジョブのラミネート処理時間は、10分間である。
【0108】
次に、加工機400がジョブXを実行中に、ラミネートBを使用するジョブYの印刷物およびジョブYに係るジョブ情報の仕様書が加工工程に到着する。ジョブXに係るラミネート処理の終了後に、加工作業者が、ジョブYに係るジョブ情報に合わせて、ラミネートロールをラミネートAからラミネートBに交換する。ここで、加工作業者がラミネートBに交換している間に、ラミネートAを使用するジョブZの印刷物およびジョブZに係るジョブ情報の仕様書が到着する。この場合、ジョブYに係るラミネート処理後に、加工作業者は、ジョブZに係るジョブ情報の仕様に合わせ、ラミネートロールをラミネートBからラミネートAに交換する。そして、加工機400は、再びラミネートAがセットされた状態で、ジョブZに係るラミネート処理を実行する。
【0109】
このように、加工工程において、ラミネートロールの交換に伴う時間は20分であり、各ジョブの実行時間の10分よりも長い。そのため、ジョブに係る印刷物とジョブ情報とが到着する度に、そのジョブ情報に合わせてラミネートロールの交換を行うと、加工工程が非効率になる場合がある。
【0110】
<工程の効率化が施されたラミネート処理の順序>
図9は、工程の効率化が施されたラミネート加工の処理順序を示したガントチャートである。
本実施形態において、管理装置100は、各ジョブに係る印刷物を受領するより前に、各ジョブ情報を受信する。加工用端末300は、管理装置100を介して、各ジョブ情報を受信している。
【0111】
管理装置100は、例えば、ラミネートAを使用するジョブXに係るジョブ情報と、ラミネートBを使用するジョブYに係るジョブ情報と、ラミネートAを使用するジョブZに係るジョブ情報と、を予め取得する。また、各ジョブX,Y,Zの印刷が終了すると、ジョブXの印刷物、ジョブYの印刷物、ジョブZの印刷物が、順番に加工機400に到着する。
【0112】
ここで、ラミネートロールの交換作業には、1回あたり20分間が必要である。ラミネートロールの交換作業の時間よりも、同一のラミネートロールを使用するジョブの印刷物を待つ時間の方が短いならば、同一のラミネートロールを使用するジョブの印刷物を待った方が効率的である。そのため、ラミネートAを使用するジョブXを実行後、加工作業者は、ラミネートロールをラミネートBに交換せずに、ジョブZの印刷物が到着するまで待機する。そして、ジョブZの印刷物が到着したとき、加工作業者は、加工機400にジョブZに係るラミネート処理を実行させる。加工機400がジョブZの印刷物のラミネート処理を完了した後に、加工作業者は、ラミネートロールをラミネートAからラミネートBに交換して、加工機400にジョブYに係るラミネート処理を実行させる。
【0113】
このように、ジョブの順番を入れ替えて、ラミネートロールの交換回数を減らすことにより、加工工程の効率を向上させることができる。すなわち、同じラミネートロールを使用するジョブを、まとめて処理することにより、加工工程の効率化を図ることができる。
【0114】
なお、理屈の上では、事前通知システム600,600Aを用いなくとも、加工作業者が印刷工程の作業の進捗具合を常に意識することによって、加工工程の効率化を図ることが可能である。また、印刷機は印刷終了時間を比較的正確に算出可能である。作業者が印刷機を見に行けば、印刷中のジョブに係る印刷物がどんな仕様で、いつ加工工程に流れてくるかは分かるからである。
【0115】
しかし、ラミネートの交換時間を除くと、印刷物へのラミネート処理時間自体はそれほど時間がかからない。これに対して、先の工程における印刷時間は、かなりの時間がかかる。そのため、一般的な印刷会社では、ラミネート機に対して、かなり多くの印刷機を所有しており、加工機1台に対して、印刷機を平均して8台所有する。よって、加工工程の作業者が作業をしながら、印刷工程における複数のジョブの進捗から、いつ頃どの仕様のジョブが加工工程に流れてくるか、複数の印刷機からどういうジョブの順番でラミネート処理をするのが効率的かを考えることは、大変複雑な作業であり、実際困難である。本実施形態は、このような課題を解決するものである。
【0116】
<第1実施形態>
第1実施形態の事前通知システム600,600Aは、予めジョブ情報を受信して表示することで、加工作業者によるジョブの入れ替えを支援し、加工工程(事前準備を要する工程)の効率化に寄与するものである。
【0117】
図10は、管理装置100の各機能部が実行する処理を示したフローチャートである。
管理装置100は、印刷機200,201,202のうち何れかから、事前準備を要する工程を含むジョブに係る印刷物の印刷が完了するよりも前に、予めそのジョブに係るジョブ情報を受信する(ステップS20)。
【0118】
ステップS21において、納期管理部113は、短納期であり、納期未達となる可能性が高いジョブ情報が有るか否かを判定する。納期未達の可能性の高いジョブ情報がある場合(ステップS21のYes)、納期管理部113は、その納期未達の可能性の高いジョブを加工用端末300の表示部360に警告表示させ(ステップS22)、ステップS23に進む。
【0119】
一方、納期未達の可能性の高いジョブ情報がない場合(ステップS21のNo)、管理装置100は、ステップS23に進む。
【0120】
ステップS23において、管理装置100の作業順序表示部112は、ジョブの作業順序を加工用端末300の表示部360に表示させ、
図10の作業順序表示処理を終了する。
【0121】
図11は、管理装置100が加工用端末300の表示部360に表示させた、作業順序を示すガントチャート画面例である。
【0122】
図11に示すように、印刷物アイコン367~369は、各ジョブに係る印刷物が到着する時刻を示している。
【0123】
加工作業361は、ジョブXのラミネート加工に関するものである。加工作業361において、時刻「13:00」から「13:20」までの期間は、ラミネートAへの交換処理期間である。また、時刻「13:20」から「13:30」までの期間は、ジョブXの印刷物にラミネート処理を実行する期間である。
【0124】
加工作業362は、ジョブYのラミネート加工に関するものである。加工作業362において、時刻「13:30」から「13:50」までの期間は、ラミネートBへの交換処理期間である。また、時刻「13:50」から「14:00」までの期間は、ジョブYの印刷物にラミネート処理を実行する期間である。
【0125】
加工作業363は、ジョブZのラミネート加工に関するものである。加工作業363において、時刻「14:00」から「14:20」までの期間は、ラミネートAへの交換処理期間である。また、時刻「14:20」から「14:30」までの期間は、ジョブZの印刷物にラミネート処理を実行する期間である。
【0126】
図11に示すように、第1実施形態では、加工作業361,363は、同一のラミネートAを使用する工程を含むジョブXとZに係るものであるため、同一の行に示されている。このようにラミネートの種別で区分したガントチャートを表示することにより、ラミネート種別の交換を視覚的に示すことができる。更に、他の行の加工作業に遷移した後に元の行の加工作業に戻る場所を視覚的に示している。この場所は、ジョブの着手順番の入れ替えによって効率化できる可能性がある。
【0127】
図12は、ガントチャート画面に表示された納期の警告例である。
図12の加工作業363は、
図11の加工作業363とは異なり、ハッチングで他の加工作業とは異なる態様で表示されている。更に加工作業363の直下には、納期アイコン3631が示されており、14:25頃がジョブZの納期であることを示している。
【0128】
このガントチャート画面のコメント欄366には、「ジョブZが納期に間に合わないおそれがあります。」と、表示されている。これにより、加工作業者は、このガントチャートの順番に従わず、ジョブZの加工作業を優先させることで、短納期のジョブZを優先させて作業することができる。
【0129】
以上説明したように、第1実施形態に係る事前通知システム600,600Aは、1または複数の印刷機200~202または営業端末500と通信可能に接続され、少なくとも加工機400による事前準備を要する工程を含むジョブに係るジョブ情報を、印刷機200~202または営業端末500から受信する管理装置100と、管理装置100を介してジョブ情報を受信する加工用端末300とを備えて構成されている。
【0130】
第1実施形態によれば、管理装置100は、事前準備を要する工程を含むジョブに係るジョブ情報を、各印刷機200,201,202または営業端末500からそれぞれ受信し、加工用端末300は、管理装置100を介してそのジョブ情報を受信する。
【0131】
これにより、第1実施形態に係る事前通知システム600,600Aは、加工用端末300の表示部360に、加工作業361~363を示したガントチャートによって、ラミネート種別の交換時間と各ジョブに関する処理時間(作業順序)を視覚的に表示できる。
更に、第1実施形態では、加工用端末300の表示部360に表示されたガントチャートを参考として、加工作業者は、事前準備を要する工程を効率化するようにジョブの作業順序を入れ替えることができる。このように、事前通知システム600,600Aは、加工作業を効率的に行うことに寄与できる。
【0132】
<第2実施形態>
第2実施形態の事前通知システム600,600Aは、加工作業者に依らず、例えば、管理装置100が事前準備を要する工程の作業順序をスケジューリングして、加工工程を自動で効率化するものである。
【0133】
図13は、管理装置100の各機能部が実行する処理を示したフローチャートである。
管理装置100は、印刷機200,201,202のうち何れかから、事前準備を要する工程を含むジョブに係る印刷物の印刷が完了するよりも前に、予めそのジョブに係るジョブ情報を受信する(ステップS10)。管理装置100のスケジューリング部114は、受信したジョブ情報から短納期のジョブがあるか否かを判定する(ステップS11)。
【0134】
短納期のジョブがある場合(ステップS11のYes)、管理装置100のスケジューリング部114は、短納期のジョブを優先的に処理するように作業順序を決定し(ステップS12)、ステップS13に進む。一方、短納期のジョブがない場合(ステップS11のNo)、管理装置100は、ステップS15に進む。
【0135】
ステップS13において、スケジューリング部114は、短納期のジョブを除く未着手のジョブ情報の作業順序を評価する。スケジューリング部114は、短納期のジョブを除く未着手のジョブについて、効率が最も高くなるようにジョブの作業順序を決定すると(ステップS14)、ステップS17に進む。
【0136】
ステップS15において、スケジューリング部114は、未着手のジョブ情報の作業順序を全て評価する。スケジューリング部114は、全ての未着手のジョブについて、効率が最も高くなるように作業順序を決定すると(ステップS16)、ステップS17に進む。
【0137】
ステップS17において、納期管理部113は、納期未達となる可能性が高いか否かを判定する。納期未達の可能性の高いジョブ情報がある場合(ステップS17のYes)、納期管理部113は、その納期未達の可能性の高いジョブを、加工用端末300の表示部360に警告表示させ(ステップS18)、ステップS19に進む。
【0138】
一方、納期未達の可能性の高いジョブ情報がない場合(ステップS17のNo)、管理装置100は、ステップS19に進む。
【0139】
ステップS19において、管理装置100の作業順序表示部112は、ジョブの作業順序を加工用端末300の表示部360に表示させ、
図13のスケジューリング処理を終了する。
【0140】
図14は、管理装置100が加工用端末300の表示部360に表示させた、作業順序を示すガントチャート画面例である。
【0141】
図14に示すように、印刷物アイコン367~369は、各ジョブに係る印刷物が到着する時刻を示している。
【0142】
加工作業361は、ジョブXのラミネート加工に関するものである。加工作業361において、時刻「13:00」から「13:20」までの期間は、ラミネートAへの交換処理期間である。また、時刻「13:20」から「13:30」までの期間は、ジョブXの印刷物にラミネート処理を実行する期間である。
【0143】
加工作業363は、ジョブZのラミネート加工に関するものである。加工作業363において、時刻「13:30」から「13:40」までの期間は、ジョブZの印刷物が到着するまで待機する期間である。また、時刻「13:40」から「13:50」までの期間は、ジョブZの印刷物にラミネート処理を実行する期間である。加工作業361と363は、同一のラミネートAによる加工作業であるため、同一の行に示している。
【0144】
加工作業362は、ジョブYのラミネート加工に関するものである。加工作業362において、時刻「13:50」から「14:10」までの期間は、ラミネートBへの交換処理期間である。また、時刻「14:10」から「14:20」までの期間は、ジョブYの印刷物にラミネート処理を実行する期間である。加工作業362は、ラミネートBによる加工作業であるため、加工作業361,363とは異なる行に示している。そして、コメント欄366には、「スケジュール調整により、10分短縮されました。」と表示されている。
【0145】
図14に示すように、第2実施形態では、ジョブに係る印刷物が事前準備を要する工程に到達する前に受信したジョブ情報に応じて、同一の加工工程を含む複数のジョブをまとめて処理するように順番を入れ替えることができる。これにより、第2の実施形態では、同一の事前準備を要する工程を含む複数のジョブをまとめて処理することができるので、加工工程を効率化できる。
【0146】
図15は、ガントチャート画面に表示された納期の警告例である。
図15の加工作業362は、
図11の加工作業362とは異なり、ハッチングで他の加工作業とは異なる態様で表示されている。更に加工作業362の直下には、納期アイコン3621が示されており、時刻「14:15」頃がジョブYの納期であることを示している。このガントチャート画面のコメント欄366には、「ジョブYが納期に間に合わないおそれがあります。」と、表示されている。これにより、加工作業者は、例えば手作業などでジョブYとジョブZの順序を入れ替えることで、納期を優先させて作業できる。
【0147】
以上説明したように、第2実施形態に係る事前通知システム600,600Aでは、スケジューリング部114は、更に未着手のジョブ情報の作業順序を全て評価し、加工工程の効率が最も高くなるようにジョブの作業順序を決定する。
【0148】
第2実施形態によれば、スケジューリング部114は、ジョブに係る印刷物が事前準備を要する工程に到達する前に受信したジョブ情報に応じて、同一の加工工程を含む複数のジョブをまとめて処理するように順番を入れ替えることができる。
【0149】
これにより、第2実施形態に係る事前通知システム600,600Aは、同一の後処理のジョブ(すなわち、事前準備を要する工程)をまとめて処理できるので、加工作業者は、加工工程を効率化できる。
【0150】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(k)のようなものがある。
【0151】
(a) 本実施形態では、加工用端末300は、同一工程を含む複数のジョブに係るジョブ情報を視覚的に区別可能に表示してもよい。例えば、
図11に示すガントチャートでは、ジョブXとジョブZが同一のラミネートAを使用し、一方、ジョブYのみラミネートBを使用している。そのため、ジョブXに係るジョブ情報からなる加工作業361と、ジョブZに係るジョブ情報からなる加工作業363を同一の色(例えば、青色)で表示するとともに、ジョブYに係るジョブ情報からなる加工作業362を、他の色(例えば、緑色)で表示することで、加工作業者は、ジョブをまとめれるか否かを容易に判断できる。
【0152】
(b) 印刷機200~202は、操作部250(入力部)によりジョブ情報の入力を受け付けてもよい。これにより、加工作業者は、ジョブ情報を直接に入力できる。
(c) 印刷機200~202は、バーコードリーダ280によってジョブ情報が符号化されたバーコードを読み込んでもよい。これにより、加工作業者は、ジョブの仕様が符号化されたバーコードを読み取るだけで、ジョブ情報を入力できる。
(d) 加工用端末300は、工程情報を基に作業のスケジューリングを表示してもよい。例えば、加工用端末300は、表示部360に、
図9に示すガントチャートを表示してもよく、また、
図11,
図12,
図14,
図15に示すガントチャートを表示してもよい。この場合、工程情報には、ジョブ情報、スケジューリング結果および加工作業361~363などが含まれる。
(e) ジョブは、既に印刷された印刷物、または、これから印刷される印刷物に係るものであってもよい。これにより、例えば、営業担当の担当者が有する営業端末500により、既に印刷された印刷物についてジョブ情報を登録し、管理装置100にジョブ情報を入力することができる。
(d) 管理装置100の機能は、加工用端末300が兼任してもよい。これにより、加工用端末300は、管理装置100の納期管理部113およびスケジューリング部114と同等の処理を実行することができる。
(f) 工程とは、印刷物を加工する工程であり、管理装置100は、印刷機200~202がジョブに係る印刷物の印刷を開始した後に、ジョブ情報を加工用端末に送信してもよい。
【0153】
(g) 管理装置100は、ジョブ情報から、事前準備を要する工程での作業順序をスケジューリングするスケジューリング部114を備え、加工用端末300は、ジョブ情報から、事前準備を要する工程での作業順序をスケジューリングした結果を受信してもよい。この場合、加工用端末300は、作業順序のスケジューリング結果を受信することで、加工作業者は、効率的な作業順序を考える必要がなく、最も効率的と思われるジョブの作業順序でラミネートの交換に着手できる。
(h) 更に、管理装置100のスケジューリング部114は、短納期のジョブを優先的に処理するようにスケジューリングしてもよい。これにより、作業者は、確実に納期を満たすように、短納期のジョブを実行することができる。この場合、スケジューリング部114は、短納期のジョブに対して納期未達となる可能性を判定し、加工用端末300は、短納期のジョブのうち、納期未達となる可能性が高いものを警告表示してもよい。加工用端末300の表示部360に、納期未達となるジョブについて警告表示を行うことにより、加工作業者は、ジョブの作業順序を見直すことができる。
【0154】
(i) 本発明におけるジョブの加工工程は、加工機を必須とするものではなく、事前準備作業と、加工作業の組み合わせからなる工程であればよい。
(j) 本発明のジョブは、印刷物の制作に係るジョブに限定されず、複数の工程からなるジョブであればよい。
(k) 事前準備を要する工程は、加工工程に限定されない。更に、ジョブ情報を受信するのは加工用端末に限定されず、事前準備を要する工程にて参照される任意の端末であればよい。
【符号の説明】
【0155】
100 管理装置(管理手段)
112 作業順序表示部
113 納期管理部
114 スケジューリング部
200,201,202 印刷機 (外部装置)
300 加工用端末 (端末)
400 加工機
500 営業端末 (外部装置)
600,600A 事前通知システム
110,210,310,510 CPU
120,220,320,520 記憶部
130,230,330,530 ROM
140,240,340,540 RAM
150,250,350,550 操作部(入力部)
160,360,560 表示部
260 画像形成部
170,270,370,570 ネットワークインターフェース部
280 バーコードリーダ