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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154447
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】X線CT装置用ワーク保持治具
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20231013BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063726
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇一
(72)【発明者】
【氏名】小林 興尚
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】加部 重好
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001JA08
2G001PA12
2G001QA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被測定物のX線の吸収率が、被測定物固定用の両面粘着テープ等に近い場合、X線CT測定により得られる断面画像から作成したボリュームデータ上で被測定物と固定に使用されたテープ等と一体化され、これらの分離は困難である。そのため、X線CT装置を内部構造の観察に使用した場合よりも、被測定物の外観形状の評価の結果に影響を及ぼす。
【解決手段】X線吸収率が低い発泡スチロール等の熱可塑性樹脂発泡体の柱状体で、該柱状体の底面10a又は対向する天面10cの少なくとも一方の面から内部に向かって錐体状の凹部10fを形成し被測定物が三点で接することで、被測定物を固定する接着剤、又は両面粘着テープ、ワックス、粘土等を使用せず、様々な形状の被測定物を任意の傾斜角に簡単に保持することを可能にするX線CT装置用ワーク保持治具10とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面形状が円形若しくは楕円形状又は多角形状を成し、該底面から鉛直に延伸して形成された熱可塑性樹脂発泡体の柱状体で、該柱状体の前記底面又は対向する天面の少なくとも一方の面から内部に向かって錐体状の凹部を形成して成るX線CT装置用ワーク保持治具。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂発泡体が発泡ポリスチレン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置用ワーク保持治具。
【請求項3】
前記柱状体は、中空の保持治具ベースと、該保持治具ベースに収納される少なくとも1つ以上のワーク受けから成ることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置用ワーク保持治具。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影型のX線CT装置用ワーク保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用X線CT装置は、ワーク(被測定物)にX線を照射し、工業製品のクラック等の内部欠陥について、母材とのX線吸収率の差を検出器により検出し、これをコンピュータ処理する(再構成する)ことによって、断面画像を得るものである。
産業用X線CT装置で多く見られる、コーンビームCTと呼ばれる投影型のX線CT装置では、回転テーブル中心近傍にワークを配置し、ワークを回転させながらX線照射を行う。
【0003】
多くの産業用X線CT装置で用いられる投影型のX線CT装置において、回転テーブル上に載置されるワーク(被測定物)を挟んで対向するようにX線管球(X線源)とX線検出器が配置されている。ワークを回転テーブル上に載置して、回転テーブルを回転させると、ワークはX線を全方位から受け、照射されたX線はワークを通過し、ワークに一部が吸収されて減衰した後、X線管球(X線源)の反対側に位置するX線検出器に投影イメージとして到達する。この投影イメージを画像再構成することにより、断面画像が得られる。
【0004】
産業用X線CT装置では、ワークを回転させず固定して、X線管球(X線源)とX線検出器を同時に回転させる方式もあるが、原理は同じである。ここでは、回転テーブル上に載置されるワークを回転させる方式でのべる。
そして、X線検出器から取得される測定情報から3次元像を再構成して得られる投影イメージのイメージ自体のピクセルサイズ(投影イメージ寸法)に対し、拡大率〔X線管球とX線検出器との距離/X線管球とワークとの間の距離〕の逆数をかけることにより、形状寸法を算出できる。前述したように、これら一連の処理は、内蔵するソフトウエア等を有するコンピュータシステムにより、データ処理され、記録され、表示される。
【0005】
X線CT測定を行う際、回転テーブル上のワークの固定が不十分なとき、ワークが回転以外の動きなどをすることによってモーションアーチファクトと呼ばれるアーチファクト(偽画像)が発生する。
【0006】
そのため、ワークはチャック、接着剤、又は両面粘着テープ、ワックス、粘土等により、回転テーブルに固定する必要がある。
【0007】
また、回転テーブル上のワークの長手方向の平面を光軸方向(X線管球とX線検出器とを結んだ方向)に対し水平に固定した場合には、X線CT測定により得られる断面画像上に、ビームハードニングアーチファクトや部分体積アーチファクトと呼ばれるアーチファクトが発生する。なお、詳細は後述する比較例1にて示す。
【0008】
このビームハードニングアーチファクトや部分体積アーチファクトを低減させるためには、ワークの長手方向の平面は光軸方向と水平にならないように、傾斜をつけて回転テーブル上に固定する必要がある。
【0009】
ワークを光軸方向に対して数度の傾斜角をつけるだけでもビームハードニングアーチファクトや部分体積アーチファクトの低減は有効であるが、X線検出器のグリッドの影響を受けるため、X線CT測定により得られる断面画像上に光軸方向と垂直方向に段差が生じてしまう。そのため、30度~45度程度の傾斜角をつけることが一般的である。
【0010】
ワークを光軸方向に対して傾斜角をつけるため、ワークの傾斜の保持治具は、X線吸収率が低い、斜めに切断した発泡スチロール(発泡ポリスチレン樹脂)等が用いられる。なお、詳細は後述する比較例2にて示す。
【0011】
ワークとワークを斜めに保持する治具および治具と回転テーブルは、チャック、接着剤、又は両面粘着テープ、ワックス、粘土等で固定する必要がある。
【0012】
ワークが樹脂成形品等でX線の吸収率が、ワーク固定用の接着剤、又は両面粘着テープ、ワックス、粘土等に近い場合、X線CT測定により得られる断面画像上で、または断面画像から作成したボリュームデータ上でワークと固定に使用されたテープ等が一体化され、これらの分離は困難となる。そのため、X線CT装置を内部構造の観察に使用した場合よりも、ワークの外観形状の評価の結果に影響を及ぼす。
【0013】
例えば、X線透過撮影のワークを、チャック、接着剤、又は両面粘着テープ、ワックス、粘土等を用いないで斜めに固定する保持治具については、特許文献1が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009-281764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述した特許文献1の保持治具は、複数の試料を同時にX線CT撮影したときに、個々のワークごとにX線CT撮影画像を分割すること目的としたものであり、X線CT測定用保持治具ではない。また、ワークを保持する楔型のような凹部は、深くなるにつれて、その幅が狭くなる形状を有することが好ましいとのみ記述され、ワーク2点で保持するため、球体状のワークと様々なワークの保持を行うことが困難な場合がありえるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述の技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、様々な形状のワークを簡単に任意の傾斜角に保持することを可能にするX線CT装置用ワーク保持治具を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の手段は、発泡スチロール(発泡ポリスチレン樹脂)等の熱可塑性樹脂発泡体の柱状体で、該柱状体の底面又は対向する天面の少なくとも一方の面から内部に向かって錐体状の凹部を形成して成るX線CT装置用ワーク保持治具としたことである。
【0017】
すなわち、ワークを保持する場合に、X線吸収率が低い発泡スチロール等の円柱や角柱の柱状体に形成された錐体状の凹部内に、接着剤、又は両面粘着テープ、ワックス、粘土等を用いることなく、錐体状の内面とワークが少なくとも三点で接して支持されることで、様々な形状のワークを任意の傾斜角に保持することを可能にした治具である。
【0018】
本発明に係る第1の手段によれば、ワークを固定する場合に、錐体状の内面とワークが少なくとも三点で接することで、様々な形状のワークを任意の傾斜角に保持することが可能となり、接着剤、又は両面粘着テープ、ワックス、粘土等を用いることなく、簡単にワークを固定することができ、セット姿勢(傾斜角)を変更する場合にも単にワークを置き直すだけで良いため、作業効率が非常に向上するばかりでなく安定してワークを保持できる利点がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、様々な形状のワークを簡単に安定して任意の傾斜角に保持することを可能にするX線CT装置用ワーク保持治具を提供することができる。
【0020】
(課題を解決するためのその他の手段)
本発明に係る第2の手段は、X線CT装置用ワーク保持治具を中空の保持治具ベースと該保持治具ベースに収納されるワーク受けの少なくとも2つに分割して構成したことである。
【0021】
本発明に係る第2の手段によれば、ワーク保持治具は、筒形状の保持治具ベースと、積み重ねて配置されて成る1つ以上のワーク受けから構成されており、ワーク受けを数種類用意しておけば、ワークの大きさや形状に合った適切な形状のワーク受けを選定し、連続して効率よく測定出来て便利である。さらに、大きさの異なるワーク受けを積重ねて収納できるようにすれば、未使用時には保持治具ベース内に積み重ねて収納できるため、非常に場所を取らずにコンパクトに収納保管できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のX線CT装置用ワーク保持治具の第1の実施態様の全体を表す斜視図である。
図2図1のA-A矢視断面図である。
図3】(a)は本発明のX線CT装置用ワーク保持治具の変形例の矢視断面図である。(b)は本発明のワーク保持治具の他の変形例の矢視断面図である。
図4】本発明のX線CT装置用ワーク保持治具をX線CT装置に載置した時のX線CT装置全体を表す斜視図である。
図5】本発明のX線CT装置用ワーク保持治具の第2の実施態様を示す分解斜視断面図である。
図6図5に示す第2の実施態様のワーク保持治具の例で、保持治具ベースと複数のワーク受けを重ねた状態で収納した例を示す斜視図である。
図7】本発明のX線CT装置用ワーク保持治具の凹部内部でワークを保持した図である。
図8】本発明のX線CT装置用ワーク保持治具でワークの一部を保持した図である。
図9】本発明のX線CT装置用ワーク保持治具の第3の実施態様を示し、(a)は斜視図、(b)はその断面斜視図である。
図10】本発明のX線CT装置用ワーク保持治具を使用してペットボトルのキャップを保持した実施例1におけるX線CT測定結果(ボリュームデータ)である。
図11】従来例を示し、両面粘着テープを使用し光軸方向と水平にペットボトルのキャップを保持した比較例1におけるX線CT測定結果(ボリュームデータ)である。
図12】従来例を示し、粘着テープを使用し発泡スチロールの角柱を斜め45度に切断したワーク保持治具にペットボトルのキャップを保持した比較例2におけるX線CT測定結果(ボリュームデータ)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。まず、本発明の第1の実施態様について図1図2を用いて説明する。
【0024】
図1はワーク保持治具10を示し、図2はその中心を通るA-A部矢視断面を示している。ワーク保持治具10の外形状は、底面10aが円形で該底面10aに対して垂直に延伸して外装面10bを有し上部端面10cまで押し出されたX線吸収率が低い発泡スチロール(発泡ポリスチレン樹脂)等の円柱である。また、該円柱の略中心で頂点B-Cで中心軸Yが形成されており、上部端面10cの一点に頂点Dが位置し、頂点B、C,Dにて直角三角形を形成している。(図1斜線部)
【0025】
ワーク保持治具10は、頂点B、C、Dの直角三角形を中心軸Yの周りに360度回転させて形成された円錐体が上述の円柱から除去されて錐体面10dを有する凹部空間10fが形成された形状をしている。そのため、図2では直線C-Dが錐体面10dの稜線10eとなっている。
【0026】
上記第1の実施態様の変形例を断面図で図3(a)、図3(b)にて示す。図3(a)のワーク保持治具20では、底面20aは多角形の閉図形を成し底面20aから垂直に延伸して外装面20bを有する多角形柱を形成している。また、凹部空間20fは錐面の稜線20eが楕円の一部である凹部錐体面20dで形成されている。さらに、図3(b)のワーク保持治具30では、底面30aは楕円形の閉図形を成し底面30aから垂直に延伸して外装面30bを有する楕円柱を形成している。また、凹部空間30fは錐面の稜線30eが放物線の一部である凹部錐体面30dで形成されている。
【0027】
次に、X線CT装置1において本発明のワーク保持治具10に被測定物5をセットし、X線CT測定を行う場合について、図4図7図8を用いてそのセット方法及びセット状態を説明する。X線CT装置1はX線管球3とX線検出器(スクリーン)4の略中間部に回転台2が設けられ、回転台2の上に回転軸Wとワーク保持治具10の中心軸Yが近接するようにワーク保持治具10が固定されている。また、ワーク保持治具10の凹部空間10f内に被測定物5が傾斜して保持されている。
【0028】
図7は、ワーク保持治具10の凹部空間10f内に被測定物5が収まるようにセットした状態を示しており、例えば直方体の被測定物5の支持点5a、5b、5c、5dのうち少なくとも3点が凹部錐体面10dに接触し保持される。また、図8は、ワーク保持治具10の凹部空間10f外に被測定物5の一端がはみ出す様にセットし、ワークの一部を保持した状態を示しており、被測定物5の支持点5a、5b、5e、5fのうち少なくとも3点が凹部錐体面10dに接触し保持される。このように、ワーク保持治具10は、X線吸収率が低い発泡スチロール等の柱状体で、内部を錐体状に除去し内部が狭くなる形状を有しており、被測定物5は錐体に接する三点で傾斜角をつけて安定して保持される。
【0029】
ここで、X線CT装置用ワーク保持治具は、被測定物5の形状や大きさに合う大きさとし、適切な測定が可能となるような大中小それぞれの形状や寸法を有するものを予め数個ずつ準備しておき、その中から適切な形状や大きさのX線CT装置用ワーク保持治具を選んで使用すればよい。なお、X線吸収率が低い発泡スチロール等の柱状体の高さはワークの形状に合わせる他は制限が無く、加工する凹部錘体面はワークの形状に合わせ180°未満の頂角を有する。
【0030】
しかしながら、第1の実施態様においては、被測定物5の形状や大きさに合うワーク保持治具10を、予め数個ずつ準備しておく必要があった。本発明の第2の実施態様について図5図6を用いて説明する。
【0031】
本発明の第2の実施態様のワーク保持治具40は、保持治具ベース41と被測定物5を保持する少なくとも1つのワーク受けで構成されており分解可能に係合されている。なお、図5ではワーク受けは3つのワーク受け42、43、44で形成されている例を示すが、ワーク受けは1つ以上幾つで構成しても構わない。
【0032】
保持治具ベース41は円柱状の外形に対して、内部に円柱状の凹部空間41fが形成された中空の筒形状であり、底面41aを有している。なお、底面41aが無い円筒形状であっても構わないが、回転台2に固定する場合に底面41aがあった方が固定し易く好ましい。
【0033】
一方、ワーク受け42は、フランジ部42hを有し、保持治具ベース41の凹部空間41f内に収まるように円錐状の突起部42kが形成され、突起部42kの反対面には円錐状の凹部空間42fが設けられている。フランジ部42hは保持治具ベース41の端面41hに当接し切欠溝42gが端面41hに設けられた2本の位置決めピン45に案内されてワーク受け42は保持治具ベース41に載置される。なお、この位置決めピン45もX線吸収率が低い発泡スチロール(発泡ポリスチレン樹脂)等のピンである。
【0034】
同様に、ワーク受け43は、フランジ部43hを有し、ワーク受け42の凹部空間42f内に収まるように円錐状の突起部43kが形成され、突起部43kの反対面には円錐状の凹部空間43fが設けられている。フランジ部43hはワーク受け42のフランジ部42hと当接し切欠溝43gが2本の位置決めピン45に案内されてワーク受け43はワーク受け42上に載置される。なお、ワーク受け44も同様にワーク受け43に載置される。
【0035】
図6は保持治具ベース41にワーク受け42、43、44を積層して収納した状態であり、ワーク受け44で測定可能な被測定物5は、このように積層したままの状態で被測定物5をワーク受け44にセットし使用してもよいし、ワーク受け42、43を取り外し、保持治具ベース41の端面41hにワーク受け44のフランジ部44hを当接させ載置して使用してもよい。このように保持治具ベース41にワーク受け42、43、44を積層して収納できるようにしたため、ワーク保持治具40は未使用時には場所を取らず非常にコンパクトに収納保管できる利点がある。
【0036】
本発明の第3の実施態様について図9を用いて説明する。ワーク保持治具50の外形状は、底面50aが円形で上部端面50cが正方形であり、底面50aから上部端面50cに向かって垂直に押し出され外装面50bを有したX線吸収率が低い発泡スチロール(発泡ポリスチレン樹脂)等の柱状体である。
【0037】
上部端面50cには、第1の実施態様と同様に底面50aに向かって錐体面50dを有する凹部空間50fが形成されている。一方、底面50aには同様に上部端面50cに向かって錐体面50jを有する凹部空間50mが形成されている。すなわち、ワーク保持治具50は柱状体部分に対して両端面から内側に向かって凹部空間50fと50mが形成されている。
【0038】
なお、図9では各凹部空間50fと50mは同一軸中心で形成されていると表現しているが、必ずしも同一軸周りの錐体でなくても構わないし、錐体も円錐体でなくても構わない。また、図9では底面50aと上部端面50cは平行で表現しているが、必ずしも平行の必要はなく傾斜していても構わない。
【0039】
本発明の第3の実施態様によれば、ワーク保持治具50は一つで上下異なる大きさや形状の凹部空間50fと50mを設定できるため、被測定物に合わせて適宜選択できる利点がある。
【0040】
なお、本発明のワーク保持治具の素材は、X線吸収率が低くかつ被測定物5を保持したときに不安定に変形しなければよい。そのため、熱可塑性樹脂発泡体は、発泡ポリスチレン樹脂だけでなく、発泡ポリプロピレン樹脂、発泡ポリエチレン樹脂、発泡ポリウレタン樹脂スポンジ等が使用できる。
【実施例0041】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
<実施例1>
本発明のワーク保持治具を使用してペットボトルのキャップを保持し、X線CT測定を行った結果を示す。(図10参照)
【0042】
ワーク保持治具10は、発泡倍率60倍の発泡スチロール(発泡ポリスチレン樹脂)を使用して中央部が円錐形の凹部錐体面10dを有する形状である。
被測定物5は、清涼飲料水用ペットボトルに使用されている、直径28mm前後、材質はポリエチレン樹脂(PEと略す)製キャップを用いた。キャップを凹部錐体面10d内にセットしたワーク保持治具10を回転台2にセットし回転しながらX線CT測定を行った。
図10(b)は、X線CT測定により得られた断面画像から作成したボリュームデータである。断面画像上には、ビームハードニングアーチファクトや部分体積アーチファクトの発生がほとんど見受けられない、また固定用のテープ等が用いられていないためキャップのみのボリュームデータを容易に得ることができる。
【0043】
本発明のワーク保持治具の効果を明らかにするため、従来のワーク保持治具を使用してペットボトルのキャップを保持し、X線CT測定を行った結果を比較例1、比較例2に示す。
<比較例1>
図11(a)に示すように、従来のワーク保持治具は発泡スチロールの平板状のワーク保持治具60であり平面60d上に光軸方向と水平に保持したキャップを乗せ、両面粘着テープの固定テープ61で平面60dに固定し、回転台2にセットし回転しながらX線CT測定を行った。
X線CT測定により得られた断面画像から作成したボリュームデータを図11(b)に示す。
【0044】
図11(b)では、断面画像上にビームハードニングアーチファクトや部分体積アーチファクトが発生しているため、本来存在するキャップの底面が抜けた状態のボリュームデータ(F部参照)となってしまっている。また、このボリュームデータは、キャップを固定するための固定テープ61の一部がキャップと一体化され、これらを分離することは困難である。
【0045】
<比較例2>
図12(a)に示すように、従来の別のワーク保持治具は発泡スチロールのブロック塊状のワーク保持治具70であり、一部が約45度の斜面70dを以て切り取られている。この斜面70dにキャップを乗せ、固定テープ71で斜面70dに固定し、回転台2にセットし回転しながらX線CT測定を行った。
X線CT測定により得られた断面画像から作成したボリュームデータを図12(b)に示す。
【0046】
図12(b)では、キャップのセットに傾斜をつけたことにより、ビームハードニングアーチファクトや部分体積アーチファクトは低減されているが、図11(b)同様にキャップとキャップを固定するための固定テープ71のボリュームデータ(G部参照)が一体化されてしまうため、これらを分離すること困難である。
【0047】
以上詳細に説明したように、本発明のワーク保持治具を使用すれば、様々な形状のワークを簡単に安定して任意の傾斜角に保持することが可能となり、作業効率が非常に向上するばかりでなく安定してワークを保持できる利点がある。
【0048】
なお、本発明は上述の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではなく、構成要件には実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、上述に記載した実施態様及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1:X線CT装置
2:回転台
3:X線管球(X線源)
4:X線検出器(スクリーン)
5:被測定物(ワーク)
5a、5b、5c、5d、5e、5f:支持点
10、20、30、40、50、60,70:ワーク保持治具
10d、20d、30d、50d、50j:凹部錐体面
10e、20e、30e、50e、50k:錐面の稜線
10f、20f、30f、41f、50f、50m:凹部空間
41:保持治具ベース
42、43、44:ワーク受け
45:位置決めピン
61、71:固定テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12