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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154450
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20231013BHJP
   H01R 4/70 20060101ALI20231013BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/70 H
H01R13/11 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063729
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】牟田 正哉
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD14
5E085FF01
5E085GG11
5E085HH09
5E085JJ13
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】防水性能を確保しつつ、組立性を向上させることができる端子1を提供する。
【解決手段】端子1は、シール部10と、芯線圧着部20と、第1密封用圧着部30と、第2密封用圧着部40とを備える。シール部10は、導電性の芯線91と、芯線91を覆う絶縁性の被覆部92とを有する電線90を覆い、弾性及び絶縁性の素材からなる筒状のものである。芯線圧着部20は、導電性の素材からなり、電線90の芯線91に圧着される。第1密封用圧着部30は、芯線圧着部20の-Y寄りの端部寄りに配置され、シール部10を電線90に圧着する。第2密封用圧着部40は、芯線圧着部20の+Y寄りの端部寄りに配置され、シール部10を電線90に圧着することで、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所を、第1密封用圧着部30と共に密封する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯線と、前記芯線を覆う絶縁性の被覆部と、を有する電線を覆い、弾性及び絶縁性の素材からなる筒状のシール部と、
導電性の素材からなり、前記電線の前記芯線に圧着される芯線圧着部と、
前記芯線圧着部の一方の端部寄りに配置され、前記シール部を圧着する第1密封用圧着部と、
前記芯線圧着部の一方の端部とは反対の他方の端部寄りに配置され、前記シール部を前記電線に圧着することで、前記芯線圧着部が前記芯線に圧着される箇所を、前記第1密封用圧着部と共に密封する第2密封用圧着部と、
を備える、端子。
【請求項2】
前記第1密封用圧着部と前記第2密封用圧着部とを連結する連結部を備え、
前記電線が延びる方向に交差する方向における、前記連結部と前記芯線圧着部との間には、前記シール部を配置可能に形成されている隙間が設けられている、請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記第1密封用圧着部は、圧着されている前記シール部の内部に前記被覆部が配置されている電線配置部分を有する、請求項1に記載の端子。
【請求項4】
前記第1密封用圧着部は、前記電線の先端部から外れた位置で前記シール部に圧着する非電線配置部分を有する、請求項1に記載の端子。
【請求項5】
相手端子が挿入可能な形状に形成されている本体部と、
前記本体部から延設されていると共に、前記芯線圧着部が設けられている第1延設部と、
前記本体部から延設されていると共に、前記第1密封用圧着部が設けられている第2延設部と、
を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の端子。
【請求項6】
前記本体部は、第1壁部及び第2壁部を有する角筒状に形成され、
前記第1延設部は、前記第1壁部から延設され、
前記第2延設部は、前記第2壁部から延設されている、請求項5に記載の端子。
【請求項7】
前記本体部の内部に収容されると共に、前記第2壁部の配置面に配置され、導電性の素材からなる弾性板を備え、
前記第1壁部は、前記配置面に平行な面を有するように形成されている、請求項6に記載の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁電線の芯線に圧着された芯線接続部の周囲が熱収縮チューブに覆われている電線モジュールが開示されている。熱収縮チューブの内周面には接着剤が塗布されている。電線モジュールの製造工程において、芯線接続部の周囲に配置された熱収縮チューブをヒータ等の加熱部によって加熱した際、熱収縮チューブが収縮しつつ、接着剤が溶融して芯線接続部の周囲を覆う。このとき、熱収縮チューブの一方の開口寄りにせき止め部を配置して、熱収縮チューブの一方の端部に規制部材を押し付けることにより、接着剤を所定の位置でせき止めつつ、収縮した熱収縮チューブの内部空間を固化した接着剤で満たしている。これにより、特許文献1に記載のものにおいては、芯線接続部における防水性能を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-091648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものにおいては、電線モジュールにおける製造工程では、熱収縮チューブを加熱する加熱工程を行う際、せき止め部を所定の位置に配置しつつ、熱収縮チューブに規制部材を押し付ける押付工程を行う必要がある。押付工程を省略すれば端子の組立性が向上する一方、熱収縮チューブの内部空間を接着剤で満たすことができず、防水性能を確保できないおそれがある。それゆえ、端子の芯線接続部における防水性能を確保しつつ、端子の組立性を向上させることに課題がある。
【0005】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、防水性能を確保しつつ、組立性を向上させることができる端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明に係る端子は、
導電性の芯線と、前記芯線を覆う絶縁性の被覆部と、を有する電線を覆い、弾性及び絶縁性の素材からなる筒状のシール部と、
導電性の素材からなり、前記電線の前記芯線に圧着される芯線圧着部と、
前記芯線圧着部の一方の端部寄りに配置され、前記シール部を圧着する第1密封用圧着部と、
前記芯線圧着部の一方の端部とは反対の他方の端部寄りに配置され、前記シール部を前記電線に圧着することで、前記芯線圧着部が前記芯線に圧着される箇所を、前記第1密封用圧着部と共に密封する第2密封用圧着部と、
を備える。
【0007】
前記第1密封用圧着部と前記第2密封用圧着部とを連結する連結部を備え、
前記電線が延びる方向に交差する方向における、前記連結部と前記芯線圧着部との間には、前記シール部を配置可能に形成されている隙間が設けられていてもよい。
【0008】
前記第1密封用圧着部は、圧着されている前記シール部の内部に前記被覆部が配置されている電線配置部分を有していてもよい。
【0009】
前記第1密封用圧着部は、前記電線の先端部から外れた位置で前記シール部を圧着する非電線配置部分を有していてもよい。
【0010】
相手端子が挿入可能な形状に形成されている本体部と、
前記本体部から延設されていると共に、前記芯線圧着部が設けられている第1延設部と、
前記本体部から延設されていると共に、前記第1密封用圧着部が設けられている第2延設部と、
を備えていてもよい。
【0011】
前記本体部は、第1壁部及び第2壁部を有する角筒状に形成され、
前記第1延設部は、前記第1壁部から延設され、
前記第2延設部は、前記第2壁部から延設されていてもよい。
【0012】
前記本体部の内部に収容されると共に、前記第2壁部の配置面に配置され、導電性の素材からなる弾性板を備え、
前記第1壁部は、前記配置面に平行な面を有するように形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る端子では、第1密封用圧着部及び第2密封用圧着部が、弾性の素材からなるシール部を圧着することで、芯線圧着部が芯線に圧着される箇所を密封する。このため、本発明に係る端子は、防水性能を確保することができる。また、シール部を用いていることにより、端子の組立性を向上させることができる。この結果、本発明に係る端子においては、防水性能を確保しつつ、組立性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1に係る端子の斜視図(その1)である。
図2】実施の形態1に係る端子の斜視図(その2)である。
図3】(A)は、実施の形態1に係る端子の正面図である。(B)は、(A)のB-B断面図である。
図4】実施の形態1に係る端子の分解断面図である。
図5】(A)は、実施の形態1に係る端子の分解斜視図(その1)である。(B)は、実施の形態1に係る端子の分解斜視図(その2)である。
図6】実施の形態1に係る端子の製造方法を説明するための斜視図(その1)である。
図7】実施の形態1に係る端子の製造方法を説明するための斜視図(その2)である。
図8】実施の形態1に係る端子の製造方法を説明するための斜視図(その3)である。
図9】実施の形態1に係る端子の製造方法を説明するための斜視図(その4)である。
図10】実施の形態1に係る端子の製造方法を説明するための断面図(その1)である。
図11】(A)は、実施の形態1に係る端子の製造方法を説明するための断面図(その2)である。(B)は、実施の形態1に係る端子の製造方法を説明するための断面図(その3)である。
図12】実施の形態1に係る端子の製造方法を説明するための斜視図(その5)である。
図13】実施の形態2に係る端子の断面図である。
図14】実施の形態3に係る端子の断面図である。
図15】変形例1に係る端子の斜視図である。
図16】変形例2に係る端子の斜視図である。
図17】(A)は、変形例3に係る端子の製造方法を説明するための斜視図(その1)である。(B)は、変形例3に係る端子の製造方法を説明するための斜視図(その2)である。(C)は、変形例3に係る端子の製造方法を説明するための斜視図(その3)である。
図18】変形例4に係る端子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る端子1について、図を用いて説明する。なお、理解を容易にするために、XYZ座標を設定し、適宜参照する。XYZ座標の+Y方向は、図1及び図2に示すように、端子1に接続されている電線90が端子1から引き出されて延びる方向D1である。X軸方向は、図2及び図3(A)に示すように、方向D1に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向の双方向に直交する方向である。
【0016】
端子1は、例えば、自動車部品に装備される電子回路部品としてのコネクタに用いられる。端子1は、雄端子である相手端子100に接続されると共に、Y軸方向に延在する形状の雌端子である。また、端子1には、図3(B)及び図4に示すように、電線90が接続される。端子1に接続される電線90は、導電性の芯線91と、芯線91を覆う絶縁性の被覆部92とを有する絶縁電線である。芯線91の素材は、例えば、銅からなるものよりも軽量化を図ることができるアルミニウムである。この端子1は、シール部10と、芯線圧着部20と、第1密封用圧着部30と、第2密封用圧着部40と、連結部50と、本体部60と、第1延設部71と、第2延設部72と、弾性板80とを備える。なお、本実施の形態1においては、シール部10及び弾性板80以外の端子1の各構成部分(芯線圧着部20、第1密封用圧着部30、第2密封用圧着部40、連結部50、本体部60、第1延設部71、及び第2延設部72)は、1枚の導電性の板が折り曲げられることで一体的に形成されている。導電性の板には、例えば、銅(Cu)の板にスズ(Sn)のメッキが施されたものが用いられる。
【0017】
シール部10は、弾性及び絶縁性の素材からなる。具体的には、シール部10は、例えば、シリコンゴムからなる。このシール部10は、電線90を覆う部材であり、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所を密封するために用いられる。シール部10は、図5(A)、(B)に示すように、芯線圧着部20、第1密封用圧着部30、及び第2密封用圧着部40に取り付ける前においては、筒孔11が形成されている円筒状に形成されている。筒孔11には、電線90が挿入される。
【0018】
芯線圧着部20は、電線90の芯線91に圧着される芯線バレルである。詳しくは、芯線圧着部20は、かしめにより、被覆部92が除去されることで径方向(Y軸方向に直交する方向)に露出した芯線91に圧着される。そして、芯線圧着部20は、当該圧着によって、芯線91に電気的に接続される。
【0019】
第1密封用圧着部30は、芯線圧着部20に対して、芯線圧着部20の一方の端部(-Y寄りの端部)寄りに配置されている。第1密封用圧着部30は、シール部10の-Y寄りの端部を圧着するシールバレルである。本実施形態において、第1密封用圧着部30は、シール部10を電線90に圧着する。この第1密封用圧着部30は、図3(B)及び図4に示すように、電線配置部分31と非電線配置部分32とを有する。
【0020】
電線配置部分31は、圧着されているシール部10の筒状の内部に被覆部92が配置されている部分である。第1密封用圧着部30は、電線配置部分31においては、シール部10を電線90に圧着することで、シール部10と共に電線90の被覆部92を圧着する。これにより、電線配置部分31は、端子1に対して電線90を強固に固定しつつ接続する。
【0021】
非電線配置部分32は、電線90の先端部90aから-Y寄り(電線90の先端寄り)に外れた位置でシール部10を第1延設部71に圧着する部分である。非電線配置部分32においては、電線90は圧着されないため、第1密封用圧着部30は、非電線配置部分32においては、シール部10と共に第1延設部71を圧着している。
【0022】
第2密封用圧着部40は、芯線圧着部20に対して、芯線圧着部20の一方の端部とは反対の他方の端部(+Y寄りの端部)寄りに配置されている。第2密封用圧着部40は、第1密封用圧着部30と同様に、シール部10を電線90に圧着するシールバレルである。第2密封用圧着部40は、シール部10の+Y寄りの端部を電線90に圧着することで、シール部10と共に電線90の被覆部92を圧着する。これにより、図3(B)に示すように、第2密封用圧着部40は、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所を、第1密封用圧着部30と共に密封する。この結果、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所の周囲には、密封空間Sが形成される。芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所は、密封空間Sの内部に配置されることにより、外部から異物や水分が進入しないように密封されて保護される。
【0023】
連結部50は、図3(B)及び図4に示すように、第1密封用圧着部30と第2密封用圧着部40とを連結する部位である。連結部50には、電線90が延びる方向D1(Y軸方向)に交差する径方向において、芯線圧着部20との間に、シール部10が配置可能に形成されている隙間Gが設けられている。端子1に電線90が接続されることで、この隙間Gにはシール部10が配置される。
【0024】
本体部60は、銅、銅合金等の導電性の素材から形成されていると共に、弾性板80を内部で支持する部材である。本体部60は、相手端子100が挿入可能な筒状に形成されている。具体的には、本体部60は、図1及び図2に示すように、第1壁部61と、第2壁部62と、第3壁部63Rと、第4壁部63Lとを有し、Y軸方向を筒軸方向とする四角筒状に形成されている。
【0025】
第1壁部61は、図3(B)及び図4に示すように、本体部60の四角筒状の天井壁を構成する。第1壁部61は、XY平面に平行な+Z寄り(筒状の内寄り)の面61aを有する。
【0026】
第2壁部62は、本体部60の四角筒状の底壁を構成する。第2壁部62の+Z寄りの面(筒状の内寄りの面)は、弾性板80が配置される配置面62aとして構成されている。第2壁部62は、その配置面62aが、第1壁部61の面61aに平行な面、且つ、対向する面となるように形成されている。
【0027】
第3壁部63Rは、四角筒状の本体部60の+X寄りの側壁である。
【0028】
第4壁部63Lは、四角筒状の本体部60の-X寄りの側壁である。
【0029】
また、本体部60には、挿入用開口部64と、掛止用開口部65と、逆挿入防止突部66とが形成されている。
【0030】
挿入用開口部64は、相手端子100が挿入される開口部である。挿入用開口部64は、本体部60の-Y寄りの端部に設けられて、-Y方向に開口している。
【0031】
掛止用開口部65は、本体部60の第3壁部63R及び第4壁部63Lそれぞれに設けられている。掛止用開口部65は、弾性板80の一部を引っ掛けるための開口部である。
【0032】
逆挿入防止突部66は、第4壁部63Lから+Z方向に突出して形成されている。逆挿入防止突部66は、作業者が端子1をコネクタハウジングの端子収容室に挿入する際に、端子1の上下方向を逆にして挿入してしまうことを防止するためのものである。なお、本実施の形態1においては、逆挿入防止突部66は、第4壁部63Lから+Z方向に突出して形成されているが、これに限られない。逆挿入防止突部66は、第4壁部63Lから+Z方向以外の方向に突出して形成されていてもよい。また、逆挿入防止突部66は、第4壁部63L以外の箇所、例えば、第3壁部63Rから突出して形成されていてもよい。
【0033】
第1延設部71は、本体部60から+Y方向に延設されている。そして、第1延設部71の先端には、芯線圧着部20が設けられている。本実施の形態1においては、第1延設部71は、本体部60の四角筒状の壁部のうちの第1壁部61から延設されている。
【0034】
第2延設部72は、本体部60から+Y方向に延設されている。また、第2延設部72は、その+Z寄りの上面が、第1延設部71の-Z寄りの下面に対向しながら、一定の間隙を維持しつつ延設されている。そして、第2延設部72には、第1密封用圧着部30が設けられている。さらに、第2延設部72の延設された先端には、第2密封用圧着部40が設けられている。本実施の形態1においては、第2延設部72は、本体部60の角筒状の壁部のうちの第2壁部62から延設されている。
【0035】
弾性板80は、本体部60の内部において、Y軸方向に延設されつつ、本体部60の第2壁部62の-Z寄り(内寄り)の配置面62aに配置されている。弾性板80は、+Z方向(Zの値が増加する方向)に凸となっている円弧状に形成された円弧状部分を有することで、相手端子100の挿入に伴って、Z軸方向に撓み可能に設けられている。円弧状部分の頂点近傍は、相手端子100と接触する接点として機能する。弾性板80は、本実施の形態1においては、本体部60とは別体に形成されている。詳しくは、弾性板80は、シール部10及び弾性板80以外の端子1の各構成部分(芯線圧着部20、第1密封用圧着部30など)を形成する1枚の導電性の板とは別の1枚の導電性の板から形成されている。弾性板80を形成する導電性の板には、例えば、銅(Cu)の板にスズ(Sn)のメッキが施されたものが用いられる。しかしながら、これに限られない。弾性板80は、本体部60とは一体に形成されていてもよい。
【0036】
次に、本実施の形態1に係る端子1の組立方法、製造方法について図を用いて説明する。
【0037】
先ず、図6に示すように、端子1を製造する作業者は、シール部10が取り付けられていない端子1と、電線90とを準備する。
【0038】
(シール部挿通工程)
続いて、図7に示すように、作業者は、電線90を、シール部10の筒孔11に-Y方向(Yの値が減少する方向)に挿通させる。
【0039】
(被覆部除去工程)
続いて、図8に示すように、作業者は、シール部10に挿通されている電線90の一部の被覆部92を剥がして除去する。これにより、電線90の芯線91が径方向(Y軸方向に直交する方向)に露出する。このとき、作業者は、電線90の先端部90a近傍の被覆部92は除去せずに残す。なお、本実施の形態1においては、被覆部除去工程は、シール部挿通工程の後に行っているが、これに限らず、シール部挿通工程の前に行ってもよい。
【0040】
(芯線圧着工程)
続いて、図9に示すように、作業者は、径方向に露出した芯線91を、端子1の芯線圧着部20によって圧着可能な位置に配置する。そして、作業者は、芯線圧着部20をかしめ方向D2に沿ってかしめることで、径方向に露出した芯線91に芯線圧着部20を圧着する。これにより、芯線圧着部20は、芯線91に電気的に接続される。このとき、図10に示すように、Y軸方向に直交する径方向において、連結部50と芯線圧着部20との間には、シール部10が配置可能に形成されている隙間Gが設けられる。
【0041】
(シール部被せ工程)
続いて、図11(A)に示すように、作業者は、端子1に対して、シール部10を-Y方向(Yの値が減少する方向)に移動させる。すると、シール部10は弾性変形しつつ-Y方向に移動し、図11(B)に示すように、その一部は隙間Gに配置される。やがて、シール部10は、-Y寄りの端部が第1密封用圧着部30に圧着可能な位置に配置されると共に、+Y寄りの端部が第2密封用圧着部40に圧着可能な位置に配置される。これにより、シール部10は、芯線圧着部20を覆うように配置される。また、第1延設部71は、シール部10の内部に配置される。
【0042】
(シール部圧着工程)
続いて、図12に示すように、作業者は、第1密封用圧着部30及び第2密封用圧着部40をかしめることで、シール部10を電線90及び第1延設部71に圧着する。シール部10が圧着されることで、図3(B)及び図4に示すように、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所が密封されると共に、圧着箇所の周囲に密封空間Sが形成される。
【0043】
以上により、図1及び図2に示す端子1の組み立てが完了する。上述した端子1の組立方法、製造方法は、作業者が各工程を行うこととして例示したが、これに限られない。例えば、専用の装置を用いて、装置が各工程を行ってもよい。また、各工程の順序は、適宜、変更されてもよい。
【0044】
以上、説明したように、本実施の形態1に係る端子1においては、第1密封用圧着部30及び第2密封用圧着部40が、弾性の素材からなるシール部10を圧着することで、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所を密封する。このため、端子1は、防水性能を確保することができる。また、シール部10を用いていることにより、端子1の組立性を向上させることができる。この結果、本実施の形態1に係る端子1においては、防水性能を確保しつつ、組立性を向上させることができる。
【0045】
例えば、電線90の芯線91がアルミニウムからなる場合、芯線圧着部20が銅からなるため、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所が密封されていなければ、芯線91の素材と芯線圧着部20の素材とが異種金属であることに起因して、異種金属接触による腐食が発生するおそれがある。この結果、端子1の導通能力の低下が生じるおそれがある。
【0046】
これに対して、本実施の形態1に係る端子1においては、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所が密封されているため、防水性能を確保することができる。これにより、芯線91の素材と芯線圧着部20の素材とが異種金属であっても、この異種金属接触による腐食の発生に起因する端子1の導通能力の低下を抑制することができる。この結果、本実施の形態1に係る端子1においては、防水性能を確保しつつ、組立性を向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態1において、図3(B)及び図4に示すように、連結部50と芯線圧着部20との間に隙間Gが設けられており、この隙間Gには、シール部10が配置される。この構造により、本実施の形態1では、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所の密封能力を向上させることができる。この結果、本実施の形態1に係る端子1は、防水性能を確保しつつ、組立性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態1において、第1密封用圧着部30は、シール部10の筒状の内部に電線90が配置されている電線配置部分31に加えて、電線90が配置されていない非電線配置部分32を有する。第1密封用圧着部30が、電線配置部分31及び非電線配置部分32の双方を有することにより、本実施の形態1では、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所の密封能力を向上させることができる。この結果、本実施の形態1に係る端子1は、防水性能を確保しつつ、組立性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施の形態1に係る端子1は、芯線圧着部20が設けられている第1延設部71と、第1密封用圧着部30及び第2密封用圧着部40が設けられている第2延設部72とを備える。そして、第1延設部71及び第2延設部72は、本体部60から延設されている。したがって、本体部60を形成する板部材と、芯線圧着部20、第1密封用圧着部30及び第2密封用圧着部40を形成する板部材とを別に用意する必要がない。このため、芯線圧着部20、第1密封用圧着部30及び第2密封用圧着部40が本体部60とは別体に形成されている場合に比べて、組立性を向上させることができる。この結果、本実施の形態1に係る端子1は、防水性能を確保しつつ、組立性を向上させることができる。
【0050】
実施の形態2.
本発明の実施の形態1においては、第1密封用圧着部30は、シール部10の筒状の内部に電線90が配置されている電線配置部分31と、電線90が配置されていない非電線配置部分32とを有する。しかしながら、これに限られない。例えば、図13に示す実施の形態2に係る端子2のように、第1密封用圧着部30は、シール部10の内部に電線90が配置されている電線配置部分31に相当する部分を有さなくてもよい。この端子2においても、端子1と同等の効果を奏することができる。
【0051】
実施の形態3.
本発明の実施の形態1においては、第1密封用圧着部30は、シール部10の筒状の内部に電線90が配置されている電線配置部分31と、電線90が配置されていない非電線配置部分32とを有する。しかしながら、これに限られない。例えば、図14に示す実施の形態3に係る端子3のように、第1密封用圧着部30は、シール部10の内部に電線90が配置されていない非電線配置部分32に相当する部分を有さなくてもよい。この端子3においても、端子1、2と同等の効果を奏することができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態によって限定されるものではない。
【0053】
例えば、上記実施の形態において、シール部10は、図5(A)、(B)に示すように、円筒状に形成されている。しかしながら、これに限られない。シール部10は、円筒状以外の形状に形成されていてもよい。例えば、シール部10は、弾性の素材の板状の部材を丸めて筒状にしたものであってもよいし、円錐筒形状のものでもあってもよい。さらに、シール部10は、角筒形状のものであってもよい。ただし、シール部10が角筒形状のものである場合、四角筒形状よりも五角形状や六角形状など多角筒形状であることが望ましい。
【0054】
また、上記実施の形態においては、図3(B)及び図4に示すように、第1延設部71は、第1壁部61から延設され、第2延設部72は、第2壁部62から延設されている。しかしながら、これに限られない。例えば、第1延設部71は、第1壁部61以外の第2壁部62、第3壁部63R、第4壁部63Lのいずれかから延設されていてもよい。第2延設部72は、第2壁部62以外の第1壁部61、第3壁部63R、第4壁部63Lから延設されていてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態は、第1密封用圧着部30と第2密封用圧着部40とを連結する連結部50を備える。しなしながら、これに限られない。例えば、図15に示す変形例1に係る端子4のように、連結部50を備えていなくてもよい。この場合、第2密封用圧着部40は、第1密封用圧着部30に連結されていないため、第1密封用圧着部30とは別体に形成される。この端子4においても、上記実施の形態と同等の効果を奏することができる。ただし、端子4の組立性の観点からは、上記実施の形態のように、連結部50を備えている方が望ましい。
【0056】
また、上記実施の形態は、本体部60から延設されていると共に、第1密封用圧着部30が設けられている第2延設部72を備える。しなしながら、これに限られず、図16に示す変形例2に係る端子5のように、第2延設部72を備えていなくてもよい。この場合、第1密封用圧着部30、第2密封用圧着部40、及び連結部50は、本体部60とは別体に形成される。この端子5においても、上記実施の形態と同等の効果を奏することができる。ただし、端子5の組立性の観点からは、上記実施の形態のように、第2延設部72を備え、第2延設部72に第1密封用圧着部30及び第2密封用圧着部40が設けられている方が望ましい。
【0057】
また、図16に示す変形例2に係る端子5において、第1密封用圧着部30、第2密封用圧着部40、及び連結部50は、導電性の素材以外の素材、例えば、かしめることが可能な絶縁性の素材からなっていてもよい。
【0058】
上記実施の形態においては、図3(B)に示すように、第2密封用圧着部40によって圧着されているシール部10の内部に被覆部92が配置されている。しかしながら、これに限られない。第2密封用圧着部40によって圧着されているシール部10の内部に被覆部92が配置されていなくてもよい。この場合、第2密封用圧着部40は、シール部10と共に、芯線91を直接圧着する。
【0059】
上記実施の形態においては、シール部10は、シリコンゴムからなる。しかしながら、これに限られない。シール部10は、図3に示すように、芯線圧着部20が芯線91に圧着される箇所を密封することが可能な、シリコンゴムとは異なる弾性の素材からなっていてもよい。
【0060】
上記の実施の形態に係る被覆部除去工程においては、図8に示すように、作業者は、シール部10に挿通されている電線90の一部の被覆部92を剥がして除去する。しかしながら、これに限られない。例えば、図17(A)~(C)に示す変形例3のように、作業者は、シール部10に挿通されている電線90の被覆部92に切れ目92aを入れてから、一部の被覆部92を除去するようにしてもよい。詳しくは、作業者は、図17(A)に示すように、シール部10に挿通されている電線90に対して、芯線91を切断しないように、被覆部92に切れ目92aを入れて、被覆部92の一部を切断する(切れ目形成工程)。続いて、作業者は、図17(B)に示すように、切断された被覆部92の一部である切断部分92bを-Y方向(Yの値が減少する方向)にずらす(切断部分移動工程)。続いて、作業者は、図17(C)に示すように、芯線91の先端91aを外部に露出させるために、ずらした切断部分92bの一部をさらに切断する(芯線先端露出工程)。これにより、被覆部除去工程が完了し、図8に示す電線90と同等のものが得られる。
【0061】
また、上記変形例に係る被覆部除去工程は、ずらした切断部分92bの一部を切断する芯線先端露出工程を含む。しかしながら、これに限られない。被覆部除去工程は、芯線先端露出工程を含まなくてもよい。この場合、図18に示す端子6のように、第1密封用圧着部30の電線配置部分31は、シール部10の筒状の内部に、電線90の芯線91と被覆部92との双方が配置されている有芯線部分31aに加えて、電線90の被覆部92のみが配置されている無芯線部分31bを有する。
【0062】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0063】
1,2,3,4,5,6:端子、10:シール部、11:筒孔、20:芯線圧着部、30:第1密封用圧着部、31:電線配置部分、31a:有芯線部分、31b:無芯線部分、32:非電線配置部分、40:第2密封用圧着部、50:連結部、60:本体部、61:第1壁部、61a:面、62:第2壁部、62a:配置面、63R:第3壁部、63L:第4壁部、64:挿入用開口部、65:掛止用開口部、66:逆挿入防止突部、71:第1延設部、72:第2延設部、80:弾性板、90:電線、90a:先端部、91:芯線、91a:(芯線の)先端、92:被覆部、92a:切れ目、92b:切断部分、100:相手端子、D1:方向、D2:かしめ方向、G:隙間、S:密封空間。
図1
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