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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154453
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ローダ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/04 20060101AFI20231013BHJP
   B23Q 16/06 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B23Q7/04 B
B23Q16/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063734
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】玉井 寛人
【テーマコード(参考)】
3C033
【Fターム(参考)】
3C033HH21
3C033HH25
(57)【要約】
【課題】エンドエフェクタユニットの割出の際のエンドエフェクタユニットの揺れや位置決め不良の発生を防止しうるローダを提供する。
【解決手段】ローダを用いたワーク搬送装置50は、搬送アーム52と、搬送アーム52の先端部に搬送アーム52の軸線に対して直角をなす1つの旋回軸線の周りに旋回するように設けられ、かつ旋回軸線の周りに間隔をおいてチャックハンド11a、11bが配置されたハンドユニット10とを備えている。さらに、ワーク搬送装置50は、シリンダ31、32を有しかつハンドユニット10を前記旋回軸線の周りに旋回させて2以上の位置に割り出す動力を発生する動力発生部30、動力発生部30から発生される力をハンドユニット10に伝達する動力伝達機構20およびハンドユニット10の割出位置においてハンドユニット10を拘束するロック機構40を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、前記アームの先端部に、前記アームの軸線に対して直角をなす1つの旋回軸線の周りに旋回するように設けられ、かつ前記旋回軸線の周りに間隔をおいて複数のエンドエフェクタが配置されたエンドエフェクタユニットとを備えたローダであって、
アクチュエータを有しかつエンドエフェクタユニットを前記旋回軸線の周りに旋回させて2以上の位置に割り出す動力を発生する動力発生部、前記動力発生部から発生される力を前記エンドエフェクタユニットに伝達して前記旋回軸線の周りに旋回させる動力伝達機構、および前記エンドエフェクタユニットの割出位置において前記エンドエフェクタユニットを拘束するロック機構を備えているローダ。
【請求項2】
前記ロック機構が、前記エンドエフェクタユニットの旋回方向の両端および中間に位置する割出位置において前記エンドエフェクタユニットを拘束する請求項1記載のローダ。
【請求項3】
前記動力伝達機構が、前記エンドエフェクタユニットに直結される直結ピニオンおよび前記直結ピニオンを固定状に支持する回転軸とを備えており、前記ロック機構が、前記直結ピニオンまたは前記回転軸に設けられたロック用凹部と、前記ロック用凹部に挿入される先細り状のロック用凸部とを備えている請求項1または2記載のローダ。
【請求項4】
前記エンドエフェクタが工作機械により加工されるワークを把持するチャックハンドからなり、前記エンドエフェクタユニットがハンドユニットからなり、ワーク搬送装置として用いられる請求項1記載のローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はローダに関し、たとえばNC旋盤などの工作機械に付設されて、ワークを搬送するワーク搬送装置に用いられるローダに関する。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤などの工作機械での生産自動化において、走行軸とワークを保持するチャックハンドを有するハンドユニットを備えたワーク搬送装置が用いられている。当該ワーク搬送装置において、未加工ワークと加工済みワークを短時間で着脱するために、ハンドユニットには2つのチャックハンドが配置されていることが多い。2つのチャックハンドの位置決め・割出を行う機構は、省スペース、周辺装置との干渉が少ないこと、ワークを把持する段取りや運用において自由度が高いことなどが求められる。
【0003】
上記要求を満たしたワーク搬送装置に用いられるローダとして、アームと、前記アームの先端部に、ハンドユニットとなるエンドエフェクタが前記アームの軸線に対して直角をなす1つの旋回軸線の周りに旋回するように設けられ、ハンドユニットにワークを把持するチャックハンドとなる2つのエンドエフェクタが前記旋回軸線の周りに間隔をおいて設けられ、ハンドユニットが、動力発生部、動力伝達機構、ならびに回転カムおよび回転カムに従動するカムフォロワからなるカム機構により旋回方向の2位置に割り出されるようになされており、動力発生部で発生した力が動力伝達機構を介してカム機構の回転カムに伝えられて回転カムが回転し、回転カムの回転がカムフォロワを介してハンドユニットに伝えられてハンドユニットが旋回方向の2位置に割り出されるようになされたローダが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3735979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のローダでは、ハンドユニットであるエンドエフェクタユニットが旋回方向の2位置に割り出される際に動力伝達機構に発生するがたつきや位置決め誤差の累積などによって、エンドエフェクタユニットの揺れや位置決め不良が発生するという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、上記問題を解決し、エンドエフェクタユニットの割出の際のエンドエフェクタユニットの揺れや位置決め不良の発生を防止しうるローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0008】
1)アームと、前記アームの先端部に、前記アームの軸線に対して直角をなす1つの旋回軸線の周りに旋回するように設けられ、かつ前記旋回軸線の周りに間隔をおいて複数のエンドエフェクタが配置されたエンドエフェクタユニットとを備えたローダであって、
アクチュエータを有しかつエンドエフェクタユニットを前記旋回軸線の周りに旋回させて2以上の位置に割り出す動力を発生する動力発生部、前記動力発生部から発生される力を前記エンドエフェクタユニットに伝達して前記旋回軸線の周りに旋回させる動力伝達機構、および前記エンドエフェクタユニットの割出位置において前記エンドエフェクタユニットを拘束するロック機構を備えているローダ。
【0009】
2)前記ロック機構が、前記エンドエフェクタユニットの旋回方向の両端および中間に位置する割出位置において前記エンドエフェクタユニットを拘束する上記1)記載のローダ。
【0010】
3)前記動力伝達機構が、前記エンドエフェクタユニットに直結される直結ピニオンおよび前記直結ピニオンを固定状に支持する回転軸を備えており、前記ロック機構が、前記直結ピニオンまたは前記回転軸に設けられたロック用凹部と、前記ロック用凹部に挿入される先細り状のロック用凸部とを備えている上記1)または2)記載のローダ。
【0011】
4)前記エンドエフェクタが工作機械により加工されるワークを把持するチャックハンドからなり、前記エンドエフェクタユニットがハンドユニットからなり、ワーク搬入出装置として用いられる上記1)記載のローダ。
【発明の効果】
【0012】
上記1)~4)のローダによれば、エンドエフェクタユニットを、割出位置においてロック機構により拘束することができるので、ハンドユニットの割出の際のハンドユニットの揺れや位置決め不良の発生を防止することが可能になる。
【0013】
しかも、エンドエフェクタユニットの旋回方向は、複数のエンドエフェクタの中心軸からなる面に垂直な軸の周りであるから、エンドエフェクタユニットに配置された複数のエンドエフェクタは、省スペースで旋回が可能であり、すべてのエンドエフェクタが、それぞれ、ワークを搬送する工作機械のチャック、ワーク供給部、その他任意の周辺装置にアクセスすることが可能であるため、ワークを把持する爪などの段取りや生産ラインを構成する周辺装置の自由度の高いローダを提供することができる。したがって、工作機械等を有する生産自動化ラインにおいて、ライン長の短縮や複数の周辺装置を搭載する工程集約を実現した生産ラインを提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明によるローダを用いたワーク搬送装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1のワーク搬送装置の一部の要素を省略して概略的に示し、ハンドユニットが旋回動作始端位置にある状態を示す一部省略概略側面図である。
図3】ハンドユニットが旋回動作始端位置から180°旋回した旋回動作終端位置にある状態を示す図2相当の図である。
図4】ハンドユニットが旋回動作始端位置から90°旋回した旋回動作中間位置にある状態を示す図2相当の図である。
図5】ロック機構を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
以下の説明において、図1の上下、左右を上下、左右というものとし、図2図4の左側を前、同じく右側を後というものとする。
【0017】
図1はこの発明によるローダを用いたワーク搬送装置の全体構成を概略的に示し、図2図4図1のワーク搬送装置のハンドユニットが異なった旋回位置にある状態を概略的に示す。
【0018】
図1において、ワーク搬送装置50は、たとえば図示しないNC旋盤の工具受け台から主軸への未加工ワークの搬入および主軸から工具受け台への加工済みワークの搬出を行うものであって、NC旋盤および工具受け台の上方に両者の並び方向(左右方向)に延びるように架設されたガイドレール51と、ガイドレール51に、ガイドレール51に対して上下動するとともにガイドレール51に沿って走行するように配置された上下方向に延びる搬送アーム52と、搬送アーム52の先端部に、搬送アーム52の軸線に対して直角をなして左右方向に延びる1つの旋回軸線の周りに旋回するように設けられ、かつ前記旋回軸線の周りに間隔をおいて複数のエンドエフェクタ、この実施形態ではワークを把持する第1および第2の2つのチャックハンド11a、11bを有するエンドエフェクタユニットとしてのハンドユニット10と、ハンドユニット10を前記旋回軸線の周りに旋回させて2以上の位置、この実施形態では3つの位置に割り出す動力を発生する動力発生部30と、動力発生部30で発生された力をハンドユニット10に伝達して前記旋回軸線の周りに旋回させる動力伝達機構20と、ハンドユニット10の割出位置においてハンドユニット10を拘束するロック機構40とを備えている。
【0019】
ハンドユニット10は、搬送アーム52の下端部に設けられた二股部53の両脚部53aに回転自在に支持された左右方向に延びる回転軸54に固定されたチャックハンド固定部12を備えており、チャックハンド固定部12が左右方向に延びる旋回軸線の周りに回転自在となっている。チャックハンド固定部12に、2つのチャックハンド11a、11bがハンドユニット10の旋回方向の周りに直角をなすように固定されている。
【0020】
動力発生部30は、ピストンロッド31aが上方を向いた状態でシリンダチューブ31bが搬送アーム52に固定された第1シリンダ31(アクチュエータ)と、ピストンロッド32aが上方を向いた状態でシリンダチューブ32bが第1シリンダ31のピストンロッド31aの先端に固定された第2シリンダ32(アクチュエータ)と、第2シリンダ32のピストンロッド32aに固定された動力伝達機構20への接続部33とから構成されている。両シリンダ31、32はエアシリンダからなる。2つのシリンダ31、32は同一のストロークであり、各ピストンロッド31a、32aの進出、退入の組み合わせによってハンドユニット10を3つの位置に割り出すことが可能である。
【0021】
図1および図2に示すように、両シリンダ31、32のピストンロッド31a、32aが進出した場合に、ハンドユニット10は第1チャックハンド11aが上方を向くとともに第2チャックハンド11bが後方を向いた旋回動作始端位置(旋回角度0°)に割り出され、図3に示すように、両シリンダ31、32のピストンロッド31a、32aが退入した場合に、ハンドユニット10は、旋回動作始端位置から図2の時計方向に180°回転して第1チャックハンド11aが下方を向くとともに第2チャックハンド11bが前方を向いた旋回動作終端位置(旋回角度180°)に割り出され、図4に示すように、第1シリンダ31のピストンロッド31aが進出するとともに第2シリンダ32のピストンロッド32aが退入した場合に、ハンドユニット10は、旋回動作始端位置から図2の時計方向に90°回転して第1チャックハンド11aが後方を向くとともに第2チャックハンド11bが下方を向いた旋回動作中間位置(旋回角度90°)に割り出される。
【0022】
動力発生部30で発生する直動方向の動力をハンドユニット10の旋回動作に変換する動力伝達機構20は、動力発生部30の接続部33に長手方向を上下方向に向けて垂下状に固定されたラック23と、ハンドユニット10に直結された直結ピニオン21と、ラック23および直結ピニオン21に噛み合う中間ピニオン22とからなる。直結ピニオン21は、ハンドユニット10のチャックハンド固定部12が固定された回転軸54に固定されている。中間ピニオン22は、搬送アーム52の二股部53の両脚部53aに回転自在に支持された左右方向に延びる回転軸(図示略)に固定されている。
【0023】
ロック機構40は、図1および図2に示す旋回動作始端位置、図3に示す旋回動作終端位置におよび図4に示す旋回動作中間位置において、ハンドユニット10を拘束する。ロック機構40は、搬送アーム52の二股部53の左側脚部53aにおける回転軸54よりも上方の高さ位置および下方の高さ位置にそれぞれ設けられた固定側の第1デッドストッパ41および第2デッドストッパ42と、ハンドユニット10のチャックハンド固定部12に設けられかつハンドユニット10の旋回動作始端位置において第1デッドストッパ41に当接するとともに旋回動作終端位置において第2デッドストッパ42に当接する旋回側デッドストッパ43と、動力伝達機構20の直結ピニオン21に径方向外方に開口するように設けられたロック用凹部44と、ロック用シリンダ45のピストンロッド45aの先端部に設けられかつロック用凹部44に挿入される先細り状のロック用凸部46とを備えている。図5に示すように、この実施形態においては、ロック用凹部44は直結ピニオン21の歯溝からなり、ロック用凸部46は先端に向かって薄肉となった板状体からなる。板状体からなるロック用凸部46は、直結ピニオン21の1つの歯を両側から挟み込むように2つ設けられていてもよい。なお、ロック用凹部44は、直結ピニオン21の一部を切り欠いて形成したり、あらかじめ凹部が形成された部材を直結ピニオン21に固定することで形成してもよい。あるいは、ロック用凹部44が直結ピニオン21が固定されている回転軸54に形成された穴からなり、ロック用凸部46が先細り状のテーパピンからなるものであってもよい。
【0024】
そして、ハンドユニット10が第1および第2シリンダ31、32の推力により図2の反時計方向への力を受けるとともに旋回側デッドストッパ43が第1デッドストッパ41に当接することによって、ハンドユニット10は旋回動作始端位置において拘束される。また、ハンドユニット10が第1および第2シリンダ31、32の推力により図3の時計方向への力を受けるとともに旋回側デッドストッパ43が第2デッドストッパ42に当接することによって、ハンドユニット10は旋回動作終端位置において拘束される。さらに、ロック用シリンダ45のピストンロッド45a先端のロック用凸部46が直結ピニオン21のロック用凹部44内に圧入されることによって、ハンドユニット10は旋回動作中間位置において拘束される。
【0025】
上述したワーク搬送装置50によれば、ハンドユニット10が旋回するスペースは、図1の左右方向において省スペース化される。また、ハンドユニット10の第1チャックハンド11aは下方および後方の2方向でワークにアクセスすることができ、第2チャックハンド11bは後方、下方および前方の3方向でワークにアクセスすることができる。これにより、横形NC旋盤にワーク搬送装置50を付設した際には、両チャックハンド11a、11bが工作機械の主軸およびワーク供給装置にアクセスすることができる。
【0026】
上述した実施形態においては、エンドエフェクタとしてワークを把持するチャックハンド11a、11bが用いられているが、これに限定されるものではなく、ワーク把持以外の機能を有するエンドエフェクタであってもよい。また、チャックハンド11a、11bは、ハンドユニット10の旋回方向に直角をなす2つの位置に設けられているが、これに限定されず、2つのチャックハンド11a、11b間の間隔は適宜変更可能である。さらに、チャックハンド11a、11bの数も2つに限定されない。
【0027】
また、動力発生部30は直動動作する2つのシリンダ31、32を利用してハンドユニット10を3つの位置に割り出すようになっているが、シリンダ31、32を増設してハンドユニット10の割出位置を増やしてもよい。また、アクチュエータとして、直動動作するシリンダ31、32に代えて、回転力を発生するモータなどを用いてもよい。
【0028】
また、動力伝達機構20の直結ピニオン21とラック23との間には中間ピニオン22が設けられているが、中間ピニオン22は必ずしも必要としない。さらに、動力伝達機構20はラック23とピニオン21、22を利用したものに限らず、たとえばベルトおよびプーリや、チェーンおよびスプロケットからなる巻き掛け伝動装置を利用したものであってもよい。
【0029】
さらに、ロック機構40は、ロック用凹部44およびロック用凸部46からなるものではなく、ディスクブレーキや電磁クラッチを利用したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明によるローダを用いたワーク搬送装置は、横形NC旋盤に好適に付設され、ワーク供給装置と主軸との間でのワークの搬送に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0031】
10:ハンドユニット(エンドエフェクタユニット)、11a,11b:チャックハンド(エンドエフェクタ)、20:動力伝達機構、21:直結ピニオン、30:動力発生部、40:ロック機構、44:ロック用凹部、46:ロック用凸部、50:この発明によるローダを用いたワーク搬送装置、54:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5