(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154463
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20231013BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063754
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小迫 寛明
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP32
5F083EP76
5F083ER21
5F083GA10
5F083GA25
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA19
5F083JA35
5F083JA39
5F083JA40
5F083ZA19
5F101BA46
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
(57)【要約】
【課題】好適に動作する半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置は、第1方向(Z)に並ぶ複数のワード線(WL)と、複数のワード線に対して第1方向の一方側に設けられたビット線と、複数のワード線とビット線との間に設けられ、第1方向に並ぶ複数の選択ゲート線(SGD1,SGD2,SGD3)と、複数のワード線及び複数の選択ゲート線と対向する半導体層(120)と、を備える。複数の選択ゲート線は、第1選択ゲート線(SGD3)と、第2選択ゲート線(SGD1)と、を含む。第1選択ゲート線は、複数の選択ゲート線のうち複数のワード線に最も近い位置に設けられ、第1方向に第1の長さ(L
ZSGD3)を有する。第2選択ゲート線は、第1選択ゲート線とビット線との間に設けられ、第1方向に第2の長さ(L
ZSGD1)を有する。第1の長さは、第2の長さよりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並ぶ複数のワード線と、
前記複数のワード線に対して前記第1方向の一方側に設けられたビット線と、
前記複数のワード線と前記ビット線との間に設けられ、前記第1方向に並ぶ複数の選択ゲート線と、
前記第1方向に延伸し、前記複数のワード線及び前記複数の選択ゲート線と対向し、前記ビット線に電気的に接続された第1半導体層と、
前記複数のワード線と、前記第1半導体層と、の間に設けられた電荷蓄積膜と
を備え、
前記複数の選択ゲート線は、
前記複数の選択ゲート線のうち前記複数のワード線に最も近い位置に設けられ、前記第1方向に第1の長さを有する第1選択ゲート線と、
前記第1選択ゲート線と前記ビット線との間に設けられ、前記第1方向に第2の長さを有する第2選択ゲート線と
を含み、
前記第1の長さは、前記第2の長さよりも小さい
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記複数の選択ゲート線は、お互いに導通している
請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記複数の選択ゲート線の前記第1方向の長さの総和をLSUM、
前記第1の長さをLZ、
前記複数の選択ゲート線の数をNとすると、
(LSUM-LZ×(N-1))/LZで表される値が1.31より大きい
請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1半導体層は、前記複数の選択ゲート線に対向する第1領域を備え、
前記第1領域は、P型の不純物を含まない
請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
第1方向に並ぶ複数の第1導電層と、
前記複数の第1導電層に対して前記第1方向の一方側に設けられ、前記第1方向に並び、お互いに導通する複数の第2導電層と、
前記第1方向に延伸し、前記複数の第1導電層及び前記複数の第2導電層と対向する第1半導体層と、
前記複数の第1導電層と、前記第1半導体層と、の間に設けられた電荷蓄積膜と
を備え、
前記複数の第2導電層は、
前記複数の第2導電層のうち前記複数の第1導電層に最も近い位置に設けられた第1層厚導電層と、
前記第1層厚導電層に対して前記複数の第1導電層と反対側に設けられた第2層厚導電層と
を含み、
前記第1層厚導電層の層厚は、前記第2層厚導電層の層厚よりも小さい
半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と、この基板の表面と交差する方向に並ぶ複数の導電層と、これら複数の導電層に対向する半導体層と、導電層及び半導体層の間に設けられた電荷蓄積膜と、を備える半導体記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0092994号明細書
【特許文献2】特開2017-045492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
好適に動作する半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態に係る半導体記憶装置は、第1方向に並ぶ複数のワード線と、複数のワード線に対して第1方向の一方側に設けられたビット線と、複数のワード線とビット線との間に設けられ第1方向に並ぶ複数の選択ゲート線と、第1方向に延伸し複数のワード線及び複数の選択ゲート線と対向しビット線に電気的に接続された第1半導体層と、複数のワード線と第1半導体層との間に設けられた電荷蓄積膜と、を備える。複数の選択ゲート線は、第1選択ゲート線と、第2選択ゲート線と、を含む。第1選択ゲート線は、複数の選択ゲート線のうち複数のワード線に最も近い位置に設けられ、第1方向に第1の長さを有する。第2選択ゲート線は、第1選択ゲート線とビット線との間に設けられ、第1方向に第2の長さを有する。第1の長さは、第2の長さよりも小さい
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な回路図である。
【
図2】メモリセルアレイMCAの一部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図3】メモリセルアレイMCAの一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図3のAで示す部分を拡大して示す模式的な断面図である。
【
図5】読出動作について説明するための模式的な断面図である。
【
図6】書込動作について説明するための模式的な断面図である。
【
図7】消去動作について説明するための模式的な断面図である。
【
図8】ドレイン側選択トランジスタ書込動作について説明するための模式的な断面図である。
【
図9】比較例に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図10】比較例に係る半導体記憶装置に関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】第1実施形態に係る半導体記憶装置に関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】シミュレーション結果を示すグラフである。
【
図13】第2実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図15】第4実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、実施形態に係る半導体記憶装置を、図面を参照して詳細に説明する。尚、以下の実施形態はあくまでも一例であり、本発明を限定する意図で示されるものではない。また、以下の図面は模式的なものであり、説明の都合上、一部の構成等が省略される場合がある。また、複数の実施形態について共通する部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0008】
また、本明細書において「半導体記憶装置」と言った場合には、メモリダイを意味する事もあるし、メモリチップ、メモリカード、SSD(Solid State Drive)等の、コントローラダイを含むメモリシステムを意味する事もある。更に、スマートホン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の、ホストコンピュータを含む構成を意味する事もある。
【0009】
また、本明細書において、第1の構成が第2の構成に「電気的に接続されている」と言った場合、第1の構成は第2の構成に直接接続されていても良いし、第1の構成が第2の構成に配線、半導体部材又はトランジスタ等を介して接続されていても良い。例えば、3つのトランジスタを直列に接続した場合には、2つ目のトランジスタがOFF状態であったとしても、1つ目のトランジスタは3つ目のトランジスタに「電気的に接続」されている。
【0010】
また、本明細書において、第1の構成が第2の構成及び第3の構成の「間に接続されている」と言った場合、第1の構成、第2の構成及び第3の構成が直列に接続され、且つ、第2の構成が第1の構成を介して第3の構成に接続されていることを意味する場合がある。
【0011】
また、本明細書において、回路等が2つの配線等を「導通させる」と言った場合には、例えば、この回路等がトランジスタ等を含んでおり、このトランジスタ等が2つの配線の間の電流経路に設けられており、このトランジスタ等がON状態となることを意味する事がある。
【0012】
また、本明細書においては、基板の表面に対して平行な所定の方向をX方向、基板の表面に対して平行で、X方向と垂直な方向をY方向、基板の表面に対して垂直な方向をZ方向と呼ぶ。
【0013】
また、本明細書においては、所定の面に沿った方向を第1方向、この所定の面に沿って第1方向と交差する方向を第2方向、この所定の面と交差する方向を第3方向と呼ぶことがある。これら第1方向、第2方向及び第3方向は、X方向、Y方向及びZ方向のいずれかと対応していても良いし、対応していなくても良い。
【0014】
また、本明細書において、「上」や「下」等の表現は、基板を基準とする。例えば、上記Z方向に沿って基板から離れる向きを上と、Z方向に沿って基板に近付く向きを下と呼ぶ。また、ある構成について下面や下端と言う場合には、この構成の基板側の面や端部を意味する事とし、上面や上端と言う場合には、この構成の基板と反対側の面や端部を意味する事とする。また、X方向又はY方向と交差する面を側面等と呼ぶ。
【0015】
[第1実施形態]
[回路構成]
図1は、第1実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な回路図である。本実施形態に係る半導体記憶装置は、メモリセルアレイMCAと、メモリセルアレイMCAに接続された図示しない周辺回路と、を備える。
【0016】
メモリセルアレイMCAは、複数のメモリブロックBLKを備える。これら複数のメモリブロックBLKは、それぞれ、複数のストリングユニットSUを備える。
図1では、1つのメモリブロックBLKに5つのストリングユニットSUa~SUeが設けられる例を示している。これら複数のストリングユニットSUは、それぞれ、複数のメモリストリングMSを備える。これら複数のメモリストリングMSの一端は、それぞれ、ビット線BLを介して周辺回路に接続される。また、これら複数のメモリストリングMSの他端は、それぞれ、共通のソース線SLを介して周辺回路に接続される。
【0017】
メモリストリングMSは、ドレイン側選択トランジスタSTDT1,STDT2,STD1~STD3と、複数のメモリセルMC(メモリトランジスタ)と、ダミーメモリセルDMCと、ソース側選択トランジスタSTS,STSBと、を備える。ドレイン側選択トランジスタSTDT1,STDT2,STD1~STD3、複数のメモリセルMC、ダミーメモリセルDMC、及び、ソース側選択トランジスタSTS,STSBは、ビット線BL及びソース線SLの間に直列に接続される。また、図示の例では、メモリセルMCとドレイン側選択トランジスタSTD3との間、及び、メモリセルMCとソース側選択トランジスタSTSとの間に、それぞれ、ダミーメモリセルDMCが設けられている。
【0018】
以下、ドレイン側選択トランジスタSTDT1,STDT2を、単にドレイン側選択トランジスタSTDTと呼ぶ場合がある。また、ドレイン側選択トランジスタSTD1~STD3を、単にドレイン側選択トランジスタSTDと呼ぶ場合がある。また、ドレイン側選択トランジスタSTDT,STD、及び、ソース側選択トランジスタSTS,STSBを、単に選択トランジスタ(STDT,STD,STS,STSB)と呼ぶ場合がある。
【0019】
メモリセルMCは、電界効果型のトランジスタである。メモリセルMCは、半導体層、ゲート絶縁膜、及び、ゲート電極を備える。半導体層は、チャネル領域として機能する。ゲート絶縁膜は、電荷蓄積膜を含む。メモリセルMCのしきい値電圧は、電荷蓄積膜中の電荷量に応じて変化する。メモリセルMCは、1ビット又は複数ビットのデータを記憶する。尚、1つのメモリストリングMSに対応する複数のメモリセルMCのゲート電極には、それぞれ、ワード線WLが接続される。これらワード線WLは、それぞれ、1つのメモリブロックBLK中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。
【0020】
ダミーメモリセルDMCは、基本的には、メモリセルMCと同様に構成されている。ただし、ダミーメモリセルDMCは、データの記憶には用いられない。ダミーメモリセルDMCは、例えば、メモリセルMCに供給される電圧と、選択トランジスタ(STD,STS)に供給される電圧と、の差を緩和する際に用いられる。尚、1つのメモリストリングMSに対応する複数のダミーメモリセルDMCのゲート電極には、それぞれ、ダミーワード線DWLが接続される。これらダミーワード線DWLは、それぞれ、1つのメモリブロックBLK中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。
【0021】
ドレイン側選択トランジスタSTDT1,STDT2、及び、ソース側選択トランジスタSTS,STSBは、電界効果型のトランジスタである。ドレイン側選択トランジスタSTDT1,STDT2、及び、ソース側選択トランジスタSTS,STSBは、半導体層、ゲート絶縁膜、及び、ゲート電極を備える。半導体層はチャネル領域として機能する。ドレイン側選択トランジスタSTDT1,STDT2、及び、ソース側選択トランジスタSTS,STSBのゲート電極には、それぞれ、ドレイン側選択ゲート線SGDT1,SGDT2、及び、ソース側選択ゲート線SGS,SGSBが接続される。ドレイン側選択ゲート線SGDT1,SGDT2、及び、ソース側選択ゲート線SGS,SGSBは、それぞれ、1つのメモリブロックBLK中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。
【0022】
ドレイン側選択トランジスタSTD1~STD3は、電界効果型のトランジスタである。ドレイン側選択トランジスタSTD1~STD3は、半導体層、ゲート絶縁膜、及び、ゲート電極を備える。半導体層はチャネル領域として機能する。ドレイン側選択トランジスタSTD1~STD3には、それぞれ、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3が接続される。ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3は、それぞれ、1つのストリングユニットSU中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。また、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3は、それぞれ、各ストリングユニットSUに対応して設けられている。ストリングユニットSUaに対応するドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3は、電気的に導通している。同様に、ストリングユニットSUb~SUeに対応するドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3は、それぞれ、電気的に導通している。
【0023】
以下、ドレイン側選択ゲート線SGDT1,SGDT2を、単にドレイン側選択ゲート線SGDTと呼ぶ場合がある。また、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3を、単にドレイン側選択ゲート線SGDと呼ぶ場合がある。また、ドレイン側選択ゲート線SGDT,SGD、及び、ソース側選択ゲート線SGS,SGSBを、単に選択ゲート線(SGDT,SGD,SGS,SGSB)と呼ぶ場合がある。
【0024】
ビット線BLは、それぞれ、メモリセルアレイMCA中の全てのストリングユニットSUに接続される。また、1つのストリングユニットSUに含まれる複数のメモリストリングMSは、全て異なるビット線BLに接続される。
【0025】
ソース線SLは、それぞれ、メモリセルアレイMCA中の全てのメモリストリングMSに接続される。
【0026】
図示しない周辺回路は、例えば、動作電圧を生成する電圧生成回路と、生成された動作電圧を選択されたビット線BL、ワード線WL、ダミーワード線DWL、ソース線SL、選択ゲート線(SGDT,SGD,SGS,SGSB)等に転送する電圧転送回路と、ビット線BLに接続されたセンスアンプモジュールと、これらを制御するシーケンサと、を備える。
【0027】
[メモリセルアレイMCAの構造]
図2は、メモリセルアレイMCAの一部の構成を示す模式的な斜視図である。
図3は、メモリセルアレイMCAの一部の構成を示す模式的な断面図である。
図4は、
図3のAで示す部分を拡大して示す模式的な断面図である。尚、
図4は、YZ断面を示しているが、半導体層120の中心軸に沿ったYZ断面以外の断面(例えば、XZ断面)を観察した場合にも、
図4と同様の構造が観察される。
【0028】
メモリセルアレイMCAは、図示しない基板の上方に設けられている。
図2に示す様に、メモリセルアレイMCAは、Y方向に並ぶ複数のメモリブロックBLKを備える。Y方向に隣り合う2つのメモリブロックBLKの間には、酸化シリコン(SiO
2)等のメモリブロック間絶縁層STが設けられている。
【0029】
メモリブロックBLKは、Y方向に並ぶ複数のストリングユニットSU(SUa~SUe)を備える。Y方向に隣り合う2つのストリングユニットSUの間には、酸化シリコン(SiO2)等のストリングユニット間絶縁層SHEが設けられている。
【0030】
メモリブロックBLKは、例えば
図2に示す様に、Z方向に並ぶ複数の導電層110と、これら複数の導電層110の下方に設けられた導電層112と、Z方向に延伸する複数の半導体層120と、を備える。また、
図3に示す様に、複数の導電層110及び複数の半導体層120の間には、それぞれ、ゲート絶縁膜130が設けられている。
【0031】
導電層110は、X方向に延伸する略板状の形状を備える。導電層110は、窒化チタン(TiN)等のバリア導電膜及びタングステン(W)等の金属膜の積層膜等を含んでいても良い。また、導電層110は、例えば、リン(P)又はホウ素(B)等の不純物を含む多結晶シリコン等を含んでいても良い。Z方向に並ぶ複数の導電層110の間には、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁層101(
図3)が設けられている。
【0032】
複数の導電層110は、ワード線WL(
図1)及びこれに接続された複数のメモリセルMC(
図1)のゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(WL)と呼ぶ場合がある。これら複数の導電層110(WL)は、それぞれ、メモリブロックBLK毎に電気的に独立している。
図2の例では、Y方向に隣り合う2つのメモリブロックBLKに対応する導電層110(WL)が、メモリブロック間絶縁層STを介して絶縁されている。
【0033】
複数の導電層110(WL)よりも上方に位置する一又は複数の導電層110、及び、複数の導電層110(WL)よりも下方に位置する一又は複数の導電層110は、ダミーワード線DWL(
図1)及びこれに接続された複数のダミーメモリセルDMC(
図1)のゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(DWL)と呼ぶ場合がある。この一又は複数の導電層110(DWL)は、導電層110(WL)と同様に構成されている。
【0034】
複数の導電層110(WL),110(DWL)よりも下方に位置する一又は複数の導電層110は、ソース側選択ゲート線SGS(
図1)及びこれに接続された複数のソース側選択トランジスタSTS(
図1)のゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(SGS)と呼ぶ場合がある。この一又は複数の導電層110(SGS)は、導電層110(WL)と同様に構成されている。
【0035】
一又は複数の導電層110(SGS)よりも下方に位置する一又は複数の導電層110は、ソース側選択ゲート線SGSB(
図1)及びこれに接続された複数のソース側選択トランジスタSTSB(
図1)のゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(SGSB)と呼ぶ場合がある。この一又は複数の導電層110(SGSB)は、導電層110(WL)と同様に構成されている。
【0036】
複数の導電層110(WL),110(DWL)よりも上方に位置する複数の導電層110は、それぞれ、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3(
図1)及びこれに接続された複数のドレイン側選択トランジスタSTD1~STD3(
図1)のゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(SGD)、又は、導電層110(SGD1)~110(SGD3)と呼ぶ場合がある。
図2に示す様に、これら複数の導電層110(SGD)のY方向の幅は、導電層110(WL)のY方向の幅よりも小さい。1つのメモリブロックBLK内でY方向に隣り合う2つの導電層110(SGD)の間には、ストリングユニット間絶縁層SHEが設けられている。
【0037】
これら複数の導電層110(SGD)は、それぞれ、ストリングユニットSU毎に電気的に独立している。各メモリブロックBLK中において、Y方向に隣り合う2つの導電層110(SGD)は、ストリングユニット間絶縁層SHEを介して、電気的に絶縁されている。各メモリブロックBLK中において、Y方向の一方側(例えば、Y方向負側)から数えて1番目及び5番目のストリングユニットSUa,SUeに対応する導電層110(SGD)は、メモリブロックBLK間に設けられたメモリブロック間絶縁層STを介して、他のメモリブロックBLK中の構成から電気的に絶縁されている。
【0038】
複数の導電層110(SGD)よりも上方に位置する複数の導電層110は、それぞれ、ドレイン側選択ゲート線SGDT1,STDT2(
図1)及びこれに接続された複数のドレイン側選択トランジスタSTDT1,STDT2(
図1)のゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(SGDT)、又は、導電層110(SGDT1),110(SGDT2)と呼ぶ場合がある。導電層110(SGDT)は、基本的には、導電層110(SGD)と同様に構成されている。ただし、1つのメモリブロックBLK内に含まれる複数の導電層110(SGDT)は、配線等を介してお互いに電気的に接続されている。
【0039】
導電層112は、例えば、リン(P)等のN型の不純物を含む多結晶シリコン等を含んでいても良い。また、導電層112の下面には、タングステン(W)等の金属、タングステンシリサイド等の導電層又はその他の導電層が設けられていても良い。導電層112は、ソース線SL(
図1)として機能する。
【0040】
半導体層120は、X方向及びY方向に所定のパターンで並ぶ。半導体層120は、1つのメモリストリングMS(
図1)に含まれる複数のメモリセルMC、複数のダミーメモリセルDMC及び選択トランジスタ(STDT,STD,STS,STSB)のチャネル領域として機能する。半導体層120は、略円筒状の形状を有し、中心部分には酸化シリコン等の絶縁層125(
図3)が設けられている。また、半導体層120の外周面は、それぞれ導電層110によって囲まれており、導電層110と対向している。
【0041】
半導体層120は、例えば、多結晶シリコン(Si)等を含む。半導体層120の、導電層110(WL),110(DWL),110(SGS)と対向する領域はノンドープであっても良い。半導体層120の、導電層110(SGD)に対向する領域は、ノンドープであっても良いし、ホウ素(B)等のP型の不純物を含んでいても良い。半導体層120の、導電層110(SGDT)に対向する領域は、ノンドープであっても良いし、リン(P)等のN型の不純物を含んでいても良い。半導体層120の、導電層110(SGSB)に対向する領域は、リン(P)等のN型の不純物を含んでいても良い。
【0042】
図3に示す様に、半導体層120の上端部には、リン(P)等のN型の不純物を含む不純物領域121が設けられている。この不純物領域121は、ビアコンタクト電極Ch,Vy(
図5参照)を介してビット線BLに接続される。尚、一つのストリングユニットSUに対応する複数の半導体層120は、全て異なるビット線BLに接続されている。
図2の例では、X方向に並ぶ複数の半導体層120を含む列が、一つのストリングユニットSUに対応して、Y方向に4つ並んでいる。これら4つの列に含まれる複数の半導体層120は、全て異なるビット線BLに接続されている。
【0043】
図3に示す様に、半導体層120の下端部には、リン(P)等のN型の不純物を含む不純物領域122が設けられている。この不純物領域122は、上記導電層112に接続されている。尚、一つのメモリセルアレイMCAに対応する複数の半導体層120は、全て共通の導電層112に接続される。
【0044】
ゲート絶縁膜130は、半導体層120の外周面を覆う略円筒状の形状を有する。ゲート絶縁膜130は、例えば
図4に示す様に、半導体層120及び導電層110の間に積層されたトンネル絶縁膜131、電荷蓄積膜132及びブロック絶縁膜133を備える。トンネル絶縁膜131及びブロック絶縁膜133は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)等を含む。電荷蓄積膜132は、例えば、窒化シリコン(SiN)等の電荷を蓄積可能な膜を含む。トンネル絶縁膜131、電荷蓄積膜132、及び、ブロック絶縁膜133は略円筒状の形状を有し、例えば
図3に示す様に、半導体層120と導電層112との接触部を除く半導体層120の外周面に沿ってZ方向に延伸する。
【0045】
尚、
図4には、ゲート絶縁膜130が窒化シリコン等の電荷蓄積膜132を備える例を示している。しかしながら、ゲート絶縁膜130は、例えば、N型又はP型の不純物を含む多結晶シリコン等のフローティングゲートを備えていても良い。
【0046】
[ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3のZ方向の長さ]
図4には、導電層110(SGD1)~110(SGD3)のZ方向の長さを、それぞれ、長さL
ZSGD1~L
ZSGD3として示している。図示の例では、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2が、導電層110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD3よりも大きい。長さL
ZSGD1,L
ZSGD2は、略一致する。即ち、導電層110(SGD1),110(SGD2)の層厚が、導電層110(SGD3)の層厚より大きく、導電層110(SGD1),110(SGD2)の層厚は、互いに略一致する。
【0047】
尚、
図4には、導電層110(WL)のZ方向の長さを、長さL
ZWLとして示している。第1実施形態においては、複数の導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLが、全て、略一致する。また、導電層110(DWL),110(SGDT),110(SGS),110(SGSB)のZ方向の長さが、導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLと、略一致する。
【0048】
また、
図4の例では、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2が、導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLよりも大きい。また、導電層110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD3が、導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLよりも小さい。
【0049】
[読出動作]
図5は、読出動作について説明するための模式的な断面図である。
【0050】
尚、以下の説明では、動作の対象となっているワード線WLを選択ワード線WLSと呼び、それ以外のワード線WLを非選択ワード線WLUと呼ぶ場合がある。以下では、動作の対象となっているストリングユニットSUに含まれる複数のメモリセルMCのうち、選択ワード線WLSに接続されたもの(以下、「選択メモリセルMC」と呼び、同様に、非選択ワード線WLUに接続されたものを「非選択メモリセルMC」と呼ぶ場合がある。)に対して読出動作を実行する例について説明する。また、以下の説明では、この様な複数の選択メモリセルMCを含む構成を、ページ部PGと呼ぶ場合がある。
【0051】
以下、ストリングユニットSUa中のページ部PGに対して読出動作を実行する例について説明する。
【0052】
読出動作においては、例えば、ビット線BLに、電圧VDDを供給する。また、ソース線SLに、電圧VDDとは異なる電圧VSRCを供給する。電圧VSRCは、接地電圧VSSより大きくても良いし、接地電圧VSSと等しくても良い。電圧VDDは、電圧VSRCよりも大きい。
【0053】
また、読出動作においては、ドレイン側選択ゲート線SGDTに、電圧VSGを供給する。電圧VSGは、電圧VDDよりも大きい。また、電圧VSGと電圧VDDとの電圧差は、ドレイン側選択トランジスタSTDTのしきい値電圧よりも大きい。従って、ドレイン側選択トランジスタSTDTのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VDDが転送される。
【0054】
また、読出動作においては、ストリングユニットSUaに対応するドレイン側選択ゲート線SGDに、電圧VSGを供給する。電圧VSGと電圧VDDとの電圧差は、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧よりも大きい。従って、ストリングユニットSUaに対応するドレイン側選択トランジスタSTDのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VDDが転送される。
【0055】
尚、図示は省略するものの、読出動作においては、ストリングユニットSUb~ストリングユニットSUeに対応するドレイン側選択ゲート線SGDに、接地電圧VSSを供給する。接地電圧VSSと電圧VDDとの電圧差は、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧よりも小さい。従って、ストリングユニットSUb~ストリングユニットSUeに対応するドレイン側選択トランジスタSTDのチャネル領域には電子のチャネルが形成されず、電圧VDDが転送されない。
【0056】
また、読出動作においては、ソース側選択ゲート線SGS,SGSBに電圧VSGを供給する。電圧VSGは、電圧VSRCよりも大きい。また、電圧VSGと電圧VSRCとの電圧差は、ソース側選択トランジスタSTS,STSBのしきい値電圧よりも大きい。従って、ソース側選択トランジスタSTS,STSBのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VSRCが転送される。
【0057】
また、読出動作においては、ダミーワード線DWLに、電圧VREADDを供給する。電圧VREADDは、例えば、選択ゲート線(SGD,SGS)に供給される電圧VSGよりも大きく、非選択ワード線WLUに供給される読出パス電圧VREADよりも小さい。これにより、選択トランジスタ(STD,STS)と、これらに最も近いメモリセルMCと、の間の領域における電位の急峻な変化が抑制される。尚、電圧VREADDは、電圧VDD,VSRCよりも大きい。また、電圧VREADDと電圧VDD,VSRCとの電圧差は、ダミーメモリセルDMCのしきい値電圧よりも大きい。従って、ダミーメモリセルDMCのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VDD,VSRCが転送される。
【0058】
また、読出動作においては、非選択ワード線WLUに読出パス電圧VREADを供給する。読出パス電圧VREADは、電圧VDD,VSRCよりも大きい。また、読出パス電圧VREADと電圧VDD,VSRCとの電圧差は、メモリセルMCに記憶されたデータに拘わらず、メモリセルMCのしきい値電圧よりも大きい。従って、非選択メモリセルMCのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、選択メモリセルMCに、電圧VDD,VSRCが転送される。
【0059】
また、読出動作においては、選択ワード線WLSに読出電圧VCGRを供給する。読出電圧VCGRと電圧VSRCとの電圧差は、一部のデータが記憶されたメモリセルMCのしきい値電圧よりも大きい。従って、一部のデータが記憶されたメモリセルMCはON状態となり、この様なメモリセルMCに接続されたビット線BLには電流が流れる。一方、読出電圧VCGRとVSRCとの電圧差は、他の一部のデータが記憶されたメモリセルMCのしきい値電圧よりも小さい。従って、他の一部のデータが記憶されたメモリセルMCはOFF状態となり、この様なメモリセルMCに接続されたビット線BLには電流が流れない。
【0060】
読出動作においては、図示しない周辺回路中の電圧生成回路や電圧転送回路がこの様な電圧をメモリブロックBLK中の各配線に供給し、周辺回路中のセンスアンプモジュールが各ビット線の状態、例えば、ビット線BLに電流が流れるか否かを検出する。これによって、読出電圧VCGRが供給された選択ワード線WLSに接続された選択メモリセルMCのON状態/OFF状態を検出する。
【0061】
また、読出動作においては、必要に応じて、複数の読出電圧VCGR毎に得られた上記選択メモリセルMCの状態を示すデータに対して、AND、OR等の演算処理が実行される。これによって、選択メモリセルMCに記憶されていたデータを算出することが出来る。
【0062】
[書込動作]
図6は、書込動作について説明するための模式的な断面図である。
【0063】
書込動作においては、例えば、複数の選択メモリセルMCのうちしきい値電圧の調整を行うものに接続されたビット線BL(以下、「ビット線BLW」と呼ぶ場合がある。)に電圧VSRCを供給する。また、複数の選択メモリセルMCのうちしきい値電圧の調整を行わないものに接続されたビット線BL(以下、「ビット線BLP」と呼ぶ場合がある。)に電圧VDDを供給する。以下、複数の選択メモリセルMCのうちしきい値電圧の調整を行うものを「書込メモリセルMC」と呼び、しきい値電圧の調整を行わないものを「禁止メモリセルMC」と呼ぶ場合がある。
【0064】
また、書込動作においては、ドレイン側選択ゲート線SGDT、及び、ストリングユニットSUaに対応するドレイン側選択ゲート線SGDに、電圧VSGDが供給される。
【0065】
電圧VSGDは、電圧VSRCよりも大きい。また、電圧VSGDと電圧VSRCとの電圧差は、ドレイン側選択トランジスタSTDT,STDのしきい値電圧よりも大きい。従って、ビット線BLWに対応するドレイン側選択トランジスタSTDT,STDのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VSRCが転送される。
【0066】
一方、電圧VSGDと電圧VDDとの電圧差は、ドレイン側選択トランジスタSTDT,STDのしきい値電圧よりも小さい。従って、ビット線BLPに対応するドレイン側選択トランジスタSTDT,STDはOFF状態となる。
【0067】
尚、図示は省略するものの、書込動作においては、ストリングユニットSUb~ストリングユニットSUeに対応するドレイン側選択ゲート線SGDに、接地電圧VSSを供給する。接地電圧VSSと電圧VSRC,VDDとの電圧差は、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧よりも小さい。従って、ストリングユニットSUb~ストリングユニットSUeに対応するドレイン側選択トランジスタSTDのチャネル領域には電子のチャネルが形成されず、電圧VSRC,VDDが転送されない。
【0068】
また、書込動作においては、ソース線SLに電圧VSRCが供給され、ソース側選択ゲート線SGS,SGSBに接地電圧VSSが供給される。これにより、ソース側選択トランジスタSTS,STSBはOFF状態となる。
【0069】
また、書込動作においては、ダミーワード線DWLに、電圧VPASSDを供給する。電圧VPASSDは、例えば、ドレイン側選択ゲート線SGDに供給される電圧VSGDよりも大きく、非選択ワード線WLUに供給される書込パス電圧VPASSよりも小さい。これにより、ドレイン側選択ゲート線SGDと、これに最も近いメモリセルMCと、の間の領域における電位の急峻な変化が抑制される。尚、電圧VPASSDは、電圧VSRCよりも大きい。また、電圧VPASSDと電圧VSRCとの電圧差は、ダミーメモリセルDMCのしきい値電圧よりも大きい。従って、ストリングユニットSUaに対応するダミーメモリセルDMCのうち、ビット線BLWに対応するもののチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VSRCが転送される。
【0070】
また、書込動作においては、非選択ワード線WLUに書込パス電圧VPASSを供給する。書込パス電圧VPASSは、読出パス電圧VREADよりも大きい。また、書込パス電圧VPASSと電圧VSRCとの電圧差は、メモリセルMCに記憶されたデータに拘わらず、メモリセルMCのしきい値電圧よりも大きい。従って、ストリングユニットSUaに対応する非選択メモリセルMCのうち、ビット線BLWに対応するもののチャネル領域には電子のチャネルが形成され、書込メモリセルMCに、電圧VSRCが転送される。
【0071】
また、書込動作においては、選択ワード線WLSにプログラム電圧VPGMを供給する。プログラム電圧VPGMは、書込パス電圧VPASSよりも大きい。
【0072】
ここで、ビット線BL
Wに対応する半導体層120のチャネルには、電圧V
SRCが供給されている。この様な半導体層120と選択ワード線WL
Sとの間には、比較的大きい電界が発生する。これにより、半導体層120のチャネル中の電子がトンネル絶縁膜131(
図4)を介して電荷蓄積膜132(
図4)中にトンネルする。従って、書込メモリセルMCのしきい値電圧は増大する。
【0073】
一方、ビット線BL
Pに対応する半導体層120のチャネル、及び、ストリングユニットSUb~ストリングユニットSUeに対応する半導体層120のチャネルは、電気的にフローティング状態となっており、このチャネルの電位は非選択ワード線WL
Uとの容量結合によって書込パス電圧V
PASS程度まで上昇している。この様な半導体層120と選択ワード線WL
Sとの間には、上記した電界よりも小さい電界しか発生しない。これにより、半導体層120のチャネル中の電子は、電荷蓄積膜132(
図4)中にトンネルしない。従って、禁止メモリセルMC等のしきい値電圧は増大しない。
【0074】
[消去動作]
図7は、消去動作について説明するための模式的な断面図である。
【0075】
消去動作においては、ビット線BL及びソース線SLに、消去電圧VERAが供給される。消去電圧VERAは、例えば、プログラム電圧VPGMより大きくても良いし、プログラム電圧VPGMと等しくても良い。
【0076】
また、消去動作においては、ドレイン側選択ゲート線SGDT及びソース側選択ゲート線SGSBに、電圧VGIDLが供給される。電圧VGIDLは、消去電圧VERAよりも小さい。これにより、ドレイン側選択トランジスタSTDT及びソース側選択トランジスタSTSBにおいてGIDL(Gate Induced Drain Leakage)が発生し、電子-正孔対が発生する。ドレイン側選択トランジスタSTDTにおいて発生した電子はビット線BL側に移動し、正孔はメモリセルMC側に移動する。ソース側選択トランジスタSTSBにおいて発生した電子はソース線SL側に移動し、正孔はメモリセルMC側に移動する。
【0077】
また、消去動作においては、ドレイン側選択ゲート線SGD及びソース側選択ゲート線SGSに、電圧VSGDEが供給される。電圧VSGDEは、消去電圧VERAよりも小さい。これにより、ドレイン側選択トランジスタSTD及びソース側選択トランジスタSTSのチャネル領域には正孔のチャネルが形成される。
【0078】
また、消去動作においては、ダミーワード線DWLに、電圧VERDを供給する。電圧VERDは、選択ゲート線(SGD,SGS)に供給される電圧VSGDEよりも小さく、ワード線WLに供給される接地電圧VSSよりも大きい。これにより、選択トランジスタ(STD,STS)と、これらに最も近いメモリセルMCと、の間の領域における電位の急峻な変化が抑制される。尚、電圧VERDは、消去電圧VERAよりも小さい。これにより、ダミーメモリセルDMCのチャネル領域には正孔のチャネルが形成される。
【0079】
また、消去動作においては、ワード線WLに接地電圧V
SSが供給される。これにより、半導体層120のチャネル中の正孔がトンネル絶縁膜131(
図4)を介して電荷蓄積膜132(
図4)中にトンネルする。従って、メモリセルMCのしきい値電圧が減少する。
【0080】
[ドレイン側選択トランジスタ書込動作]
図6を参照して説明した様に、書込動作では、ビット線BL
Wに電圧V
SRCを供給し、ビット線BL
Pに電圧V
DDを供給する。また、ドレイン側選択ゲート線SGDに電圧V
SGDを供給し、ビット線BL
Wに接続されたドレイン側選択トランジスタSTDをON状態とし、ビット線BL
Pに接続されたドレイン側選択トランジスタSTDをOFF状態とする。
【0081】
この様な方法を実行すべく、ドレイン側選択トランジスタSTDは、しきい値電圧のばらつきが、少なくとも、電圧V
DD,V
SRCの差分の範囲内に収まる様に制御される。このため、本実施形態においては、ドレイン側選択トランジスタSTDの電荷蓄積膜132(
図4)中の電荷量を調整し、これによってドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧を調整する。以下、この動作を、ドレイン側選択トランジスタ書込動作と呼ぶ。
【0082】
図8は、ドレイン側選択トランジスタ書込動作について説明するための模式的な断面図である。
【0083】
ドレイン側選択トランジスタ書込動作においては、例えば、複数のドレイン側選択トランジスタSTDのうちしきい値電圧の調整を行うものに接続されたビット線BL(以下、「ビット線BLWD」と呼ぶ場合がある。)に電圧VSRCを供給する。また、複数のドレイン側選択トランジスタSTDのうちしきい値電圧の調整を行わないものに接続されたビット線BL(以下、「ビット線BLPD」と呼ぶ場合がある。)に電圧VBLHを供給する。電圧VBLHは、電圧VSRCより大きい。以下、複数のドレイン側選択トランジスタSTDのうちしきい値電圧の調整を行うものを「書込選択トランジスタSTD」と呼び、しきい値電圧の調整を行わないものを「禁止選択トランジスタSTD」と呼ぶ場合がある。
【0084】
また、ドレイン側選択トランジスタ書込動作においては、ドレイン側選択ゲート線SGDTに、電圧VSGが供給される。従って、ドレイン側選択トランジスタSTDTのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VSRC,VBLHが転送される。
【0085】
また、ドレイン側選択トランジスタ書込動作においては、ストリングユニットSUaに対応するドレイン側選択ゲート線SGDに、プログラム電圧VPGMSを供給する。プログラム電圧VPGMSは、電圧VBLH及び書込パス電圧VPASSよりも大きい。
【0086】
ここで、ビット線BL
WDに対応する半導体層120のチャネルには、電圧V
SRCが供給されている。この様な半導体層120とドレイン側選択ゲート線SGDとの間には、比較的大きい電界が発生する。これにより、半導体層120のチャネル中の電子がトンネル絶縁膜131(
図4)を介して電荷蓄積膜132(
図4)中にトンネルする。従って、書込選択トランジスタSTDのしきい値電圧は増大する。
【0087】
一方、ビット線BL
PDに対応する半導体層120のチャネルには、電圧V
BLHが供給されている。この様な半導体層120とドレイン側選択ゲート線SGDとの間には、上記した電界よりも小さい電界しか発生しない。これにより、半導体層120のチャネル中の電子は、電荷蓄積膜132(
図4)中にトンネルしない。従って、禁止選択トランジスタSTDのしきい値電圧は増大しない。
【0088】
尚、図示は省略するものの、ドレイン側選択トランジスタ書込動作においては、ストリングユニットSUb~ストリングユニットSUeに対応するドレイン側選択ゲート線SGDに、接地電圧VSSを供給する。接地電圧VSSと電圧VSRC,VBLHとの電圧差は、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧よりも小さい。従って、ストリングユニットSUb~ストリングユニットSUeに対応するドレイン側選択トランジスタSTDのチャネル領域には電子のチャネルが形成されず、電圧VSRC,VBLHが転送されない。
【0089】
また、ドレイン側選択トランジスタ書込動作においては、ソース線SLに電圧VSRCが供給され、ソース側選択ゲート線SGS,SGSBに接地電圧VSSが供給される。これにより、ソース側選択トランジスタSTS,STSBはOFF状態となる。
【0090】
また、ドレイン側選択トランジスタ書込動作においては、ダミーワード線DWLに、電圧VPASSDDを供給する。電圧VPASSDDは、例えば、ドレイン側選択ゲート線SGDに供給されるプログラム電圧VPGMSよりも小さく、ワード線WLに供給される書込パス電圧VPASSよりも大きい。これにより、ドレイン側選択ゲート線SGDと、これらに最も近いメモリセルMCと、の間の領域における電位の急峻な変化が抑制される。尚、電圧VPASSDDは、電圧VSRCよりも大きい。また、電圧VPASSDDと電圧VSRCとの電圧差は、ダミーメモリセルDMCのしきい値電圧よりも大きい。従って、ストリングユニットSUaに対応するダミーメモリセルDMCのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VSRC,VBLHが転送される。
【0091】
また、ドレイン側選択トランジスタ書込動作においては、ワード線WLに書込パス電圧VPASSを供給する。従って、ストリングユニットSUaに対応するメモリセルMCのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、電圧VSRC,VBLHが転送される。
【0092】
[比較例]
図9は、比較例に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。比較例に係る半導体記憶装置においては、全ての導電層110のZ方向の長さが、略一致する。また、比較例に係る半導体記憶装置においては、半導体層120の、導電層110(SGD)に対向する領域が、ホウ素(B)等のP型の不純物を含んでいる。
【0093】
比較例に係る半導体記憶装置の製造工程においては、半導体層120中にP型の不純物を注入する際、P型の不純物の濃度のピーク位置が、導電層110(SGD2)の近傍となる様な制御が行われる。これにより、ドレイン側選択トランジスタSTDのカットオフ位置を、導電層110(SGD2)の近傍に制御している。
【0094】
[ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧の変動]
比較例に係る半導体記憶装置では、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行後、書込動作及び消去動作を複数回実行すると、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧が変動してしまう場合がある。また、これにより、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧がばらついてしまうおそれがある。この様なばらつきの一因としては、次の様な理由が考えられる。
【0095】
比較例に係る半導体記憶装置では、製造工程において、半導体層120の上端位置が、ばらついてしまう場合がある。ここで、上述の通り、比較例に係る半導体記憶装置においては、半導体層120の、導電層110(SGD)に対向する領域が、ホウ素(B)等のP型の不純物を含んでいる。この不純物は、半導体層120の形成後に、上方から注入される。従って、半導体層120の上端位置がばらついてしまうと、不純物濃度のピーク位置がばらついてしまう。例えば、一部の半導体層120の上端位置が、他の半導体層120の上端位置よりも低くなってしまうと、これら一部の半導体層120において、P型の不純物が、比較的深い位置まで注入されることとなる。これにより、これら一部の半導体層120において、不純物濃度のピーク位置が、導電層110(SGD2)の近傍ではなく、導電層110(SGD3)の近傍となってしまう場合がある。
【0096】
図10は、比較例に係る半導体記憶装置に関するシミュレーション結果を示す図である。
図10には、2つのグラフを示している。1番目のグラフは、上方から数えて2番目の導電層110(WL)の高さ位置から導電層110(SGDT2)の高さ位置までの範囲における、電荷蓄積膜132中の電子分布密度を示している。このグラフには、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直後の特性を示している。2番目のグラフは、上方から数えて2番目の導電層110(WL)の高さ位置から導電層110(SGDT2)の高さ位置までの範囲における、半導体層120の伝導帯のエネルギーを示している。この2番目のグラフには、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直前の特性と、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直後の特性と、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行後、書込動作及び消去動作を複数回実行した後の特性と、を示している。
【0097】
図10の2番目のグラフ中に実線で示す様に、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直前においては、半導体層120中の伝導帯のエネルギーが、導電層110(SGD3)の近傍において最大となる場合がある。これは、上述の様に、ホウ素(B)等のP型の不純物の濃度のピーク位置が、導電層110(SGD3)の近傍に位置するためである。
【0098】
図10の1番目のグラフ中に示す様に、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直後においては、電荷蓄積膜132中の、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する高さ位置に電子が蓄積される。その結果、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する3つの高さ位置に、電子分布密度のピークが生じる。これら3つのピークにおける電子分布密度は、同程度である。
【0099】
また、
図10の2番目のグラフ中に二点鎖線で示す様に、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直後においては、電荷蓄積膜132中の電荷に応じて、半導体層120中の伝導帯のエネルギーが変動する。即ち、半導体層120中の、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する高さ位置において、伝導帯のエネルギーが高くなる。その結果、ドレイン側選択ゲート線SGD3に対応する高さ位置(図中に点p1で示す高さ位置)において、伝導帯のエネルギーが最大となる。この様な状態では、図中に点p1で示す高さ位置が、ドレイン側選択トランジスタSTDのカットオフ位置となる。
【0100】
図10の2番目のグラフ中に点線で示す様に、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行後、書込動作及び消去動作を複数回実行すると、ドレイン側選択ゲート線SGD3に対応する高さ位置において、半導体層120中の伝導帯のエネルギーが変動してしまう場合がある。これは、書込動作及び消去動作において、導電層110(SGD3)と導電層110(WL)との間の電位差が比較的大きくなるため、この近傍の領域において半導体層120中にホットキャリアが発生してしまい、このホットキャリアが電荷蓄積膜132中に蓄積されてしまうためである。これにより、ドレイン側選択トランジスタSTD3のしきい値電圧が変動してしまい、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧がばらついてしまう場合がある。
【0101】
尚、この様な場合、図示の様に、半導体層120中の伝導帯のエネルギーが最大となる位置が、ドレイン側選択ゲート線SGD3に対応する高さ位置(図中に点p1で示す高さ位置)から、ドレイン側選択ゲート線SGD2に対応する高さ位置(図中に点p2で示す高さ位置)に変動する傾向がある。
【0102】
[第1実施形態に係る半導体記憶装置の効果]
第1実施形態に係る半導体記憶装置では、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧の変動を防ぐべく、
図4を参照して説明した様に、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2を、導電層110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD3よりも大きくしている。以下、この点について説明する。
【0103】
図11は、第1実施形態に係る半導体記憶装置に関するシミュレーション結果を示す図である。
図11には、2つのグラフを示している。1番目のグラフは、上方から数えて2番目の導電層110(WL)の高さ位置から導電層110(SGDT2)の高さ位置までの範囲における、電荷蓄積膜132中の電子分布密度を示している。このグラフには、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直後の特性を示している。2番目のグラフは、上方から数えて2番目の導電層110(WL)の高さ位置から導電層110(SGDT2)の高さ位置までの範囲における、半導体層120の伝導帯のエネルギーを示している。この2番目のグラフには、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直前の特性と、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直後の特性と、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行後、書込動作及び消去動作を複数回実行した後の特性と、を示している。
【0104】
尚、上述の通り、半導体層120の、導電層110(SGD)に対向する領域は、ノンドープであっても良いし、ホウ素(B)等のP型の不純物を含んでいても良い。
図11の2番目のグラフには、半導体層120の、導電層110(SGD)に対向する領域が、P型の不純物を含む例を示している。
【0105】
図11の2番目のグラフ中に実線で示す様に、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直前においては、半導体層120中の伝導帯のエネルギーが、導電層110(SGD3)の近傍において最大となる場合がある。
【0106】
図11の1番目のグラフ中に示す様に、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直後においては、電荷蓄積膜132中の、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する高さ位置に電子が蓄積される。その結果、ドレイン側選択ゲート線SGD1~SGD3に対応する3つの高さ位置に、電子分布密度のピークが生じる。
【0107】
ここで、第1実施形態に係る半導体記憶装置では、
図4を参照して説明した様に、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2を、導電層110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD3よりも大きくしている。その結果、電荷蓄積膜132中の、ドレイン側選択ゲート線SGD1,SGD2に対応する高さ位置に蓄積される電子の量が、電荷蓄積膜132中の、ドレイン側選択ゲート線SGD3に対応する高さ位置に蓄積される電子の量よりも多くなる。これにより、
図11に示す様に、ドレイン側選択ゲート線SGD1,SGD2に対応するピークにおける電子分布密度が、ドレイン側選択ゲート線SGD3に対応するピークにおける電子分布密度よりも、大きくなっている。
【0108】
また、
図11の2番目のグラフ中に二点鎖線で示す様に、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行直後においては、電荷蓄積膜132中の電荷に応じて、半導体層120中の伝導帯のエネルギーが変動する。その結果、ドレイン側選択ゲート線SGD2に対応する高さ位置(図中に点p3で示す高さ位置)において、伝導帯のエネルギーが最大となる。この様な状態では、図中に点p3で示す高さ位置が、ドレイン側選択トランジスタSTDのカットオフ位置となる。
【0109】
図11の2番目のグラフ中に点線で示す様に、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行後、書込動作及び消去動作を複数回実行すると、ドレイン側選択ゲート線SGD3に対応する高さ位置において、半導体層120中の伝導帯のエネルギーが変動してしまう場合がある。しかしながら、第1実施形態に係る半導体記憶装置においては、ドレイン側選択トランジスタSTDのカットオフ位置が、ドレイン側選択ゲート線SGD2に対応する高さ位置となっている。従って、ドレイン側選択ゲート線SGD3に対応する高さ位置において半導体層120中の伝導帯のエネルギーが変動したとしても、ドレイン側選択トランジスタSTDのカットオフ位置においては半導体層120中の伝導帯のエネルギーが変動しない。これにより、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧の変動を抑制して、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧のばらつきを抑制可能である。
【0110】
尚、第1実施形態に係る半導体記憶装置によれば、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さLZSGD1,LZSGD2を、導電層110(SGD3)のZ方向の長さLZSGD3よりも大きくすることにより、ドレイン側選択トランジスタ書込動作の実行後の電荷蓄積膜132中の電子分布密度のピーク位置をドレイン側選択ゲート線SGD1,SGD2に対応する高さ位置に制御する。これによってドレイン側選択トランジスタSTDのカットオフ位置をこの高さ位置に制御することが可能である。従って、この様な方法によれば、半導体層120へのP型の不純物の注入を省略することが可能である。この様な場合には、半導体記憶装置の製造工程を削減することにより、半導体記憶装置をより安価に提供することが可能である。
【0111】
[導電層110(SGD)のZ方向の長さ]
発明者らは、導電層110(SGD)のZ方向の長さ、及び、導電層110(SGD)間のZ方向における距離について検討すべく、シミュレーションを行った。
【0112】
シミュレーションにおいては、導電層110(SGD1),110(SGD2),110(SGD3)のZ方向の長さ、導電層110(SGD1),110(SGD2)の間の距離、及び、導電層110(SGD2),110(SGD3)の間の距離を複数通りに変動させ、どの様な条件で、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧がどの程度変動するか、検討した。
【0113】
シミュレーションの結果、導電層110(SGD3)のZ方向の長さLZSGD3が小さい場合に、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧の変動量が、比較的小さくなる傾向が観察された。一方、シミュレーションの範囲内では、導電層110(SGD2),110(SGD3)のZ方向の長さ、導電層110(SGD1),110(SGD2)の間の距離、及び、導電層110(SGD2),110(SGD3)の間の距離と、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧の変動量との間で、明らかな相関関係は観察されなかった。
【0114】
次に、発明者らは、上記シミュレーション結果に基づき、導電層110(SGD3)のZ方向の長さLZSGD3と、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さLZSGD1,LZSGD2との比率を算出し、この比率とドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧の変動量との関係について検討した。
【0115】
図12は、シミュレーション結果を示すグラフである。
図12の横軸は、((長さL
ZSGD1+長さL
ZSGD2)-長さL
ZSGD3)/長さL
ZSGD3で表される変数Rを示している。
図12の縦軸は、ドレイン側選択トランジスタSTDのしきい値電圧の変動量を示している。
図12では、下方に位置する点ほど、しきい値電圧の変動量が大きい。
【0116】
シミュレーションの結果によれば、
図12に示す様に、上記変数Rが小さいほど、しきい値電圧の変動量が、許容値を超える傾向が観察された。また、上記変数Rが大きいほど、しきい値電圧の変動量が、0から許容値までの範囲に収まる傾向が観察された。より具体的には、しきい値電圧の変動量が許容値を超えた時の変数Rの最大値は、1.31だった。即ち、変数Rが1.31より大きい場合には、しきい値電圧の変動量が、0から許容値までの範囲に収まっていた。従って、上記変数Rが1.31よりも大きい場合、しきい値電圧の変動量を許容範囲内に抑えることが可能であると考えられる。
【0117】
[第2実施形態]
第1実施形態に係る半導体記憶装置では、
図4を参照して説明した様に、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2が、どちらも、導電層110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD3より大きい。しかしながら、この様な構成はあくまでも例示に過ぎず、具体的な構成は適宜調整可能である。例えば、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2の一方は、導電層110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD3と同程度であっても良いし、長さL
ZSGD3より小さくても良い。ただし、この様な場合であっても、導電層110(SGD1),110(SGD2),110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2,L
ZSGD3を、
図12を参照して説明した変数Rが1.31より大きくなる様に調整することが望ましい。
【0118】
図13は、第2実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。尚、
図13は、YZ断面を示しているが、半導体層120の中心軸に沿ったYZ断面以外の断面(例えば、XZ断面)を観察した場合にも、
図13と同様の構造が観察される。
【0119】
第2実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第1実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第2実施形態においては、導電層110(SGD2)のZ方向の幅LZSGD2が、導電層110(SGD3)のZ方向の幅LZSGD3と略一致する。
【0120】
[第3実施形態]
第1実施形態に係る半導体記憶装置では、
図4を参照して説明した様に、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2が、導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLよりも大きい。また、第2実施形態に係る半導体記憶装置では、
図13を参照して説明した様に、導電層110(SGD1)のZ方向の長さL
ZSGD1が、導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLよりも大きい。しかしながら、この様な構成はあくまでも例示に過ぎず、具体的な構成は適宜調整可能である。例えば、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2の少なくとも一方は、導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLと同程度であっても良いし、長さL
ZWLより小さくても良い。ただし、この様な場合であっても、導電層110(SGD1),110(SGD2),110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2,L
ZSGD3を、
図12を参照して説明した変数Rが1.31より大きくなる様に調整することが望ましい。
【0121】
図14は、第3実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。尚、
図14は、YZ断面を示しているが、半導体層120の中心軸に沿ったYZ断面以外の断面(例えば、XZ断面)を観察した場合にも、
図14と同様の構造が観察される。
【0122】
第3実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第1実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第3実施形態においては、導電層110(SGD1),110(SGD2)のZ方向の幅LZSGD1,LZSGD2が、導電層110(WL)のZ方向の幅LZWLと略一致する。
【0123】
[第4実施形態]
第1実施形態~第3実施形態に係る半導体記憶装置では、
図4、
図13及び
図14を参照して説明した様に、導電層110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD3が、導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLよりも小さい。しかしながら、この様な構成はあくまでも例示に過ぎず、具体的な構成は適宜調整可能である。例えば、導電層110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD3は、導電層110(WL)のZ方向の長さL
ZWLと同程度であっても良いし、長さL
ZWLより大きくても良い。ただし、この様な場合であっても、導電層110(SGD1),110(SGD2),110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2,L
ZSGD3を、
図12を参照して説明した変数Rが1.31より大きくなる様に調整することが望ましい。
【0124】
図15は、第4実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。尚、
図15は、YZ断面を示しているが、半導体層120の中心軸に沿ったYZ断面以外の断面(例えば、XZ断面)を観察した場合にも、
図15と同様の構造が観察される。
【0125】
第4実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第2実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第4実施形態においては、導電層110(SGD2),110(SGD3)のZ方向の幅LZSGD2,LZSGD3が、導電層110(WL)のZ方向の幅LZWLと略一致する。
【0126】
[その他の実施形態]
以上、第1実施形態~第4実施形態に係る半導体記憶装置について説明した。しかしながら、上述の構成はいずれも例示に過ぎず、具体的な構成は適宜調整可能である。
【0127】
例えば、第1実施形態~第4実施形態に係る半導体記憶装置においては、Z方向に並ぶ複数の導電層110のうちの3つ(導電層110(SGD1),110(SGD2),110(SGD3))が、ドレイン側選択トランジスタSTDのゲート電極として機能する。しかしながら、ドレイン側選択トランジスタSTDのゲート電極として機能する導電層110(SGD)は、2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。
【0128】
ここで、導電層110(SGD)が3つである場合には、
図12を参照して説明した様に、((長さL
ZSGD1+長さL
ZSGD2)-長さL
ZSGD3)/長さL
ZSGD3で表される変数Rが1.31より大きくなる様に、導電層110(SGD1),110(SGD2),110(SGD3)のZ方向の長さL
ZSGD1,L
ZSGD2,L
ZSGD3を調整することが望ましい。
【0129】
導電層110(SGD)がN個(Nは2以上の整数)である場合には、例えば、N個の導電層110(SGD)のZ方向の長さの総和(トータルの層厚)をLSUM、N個の導電層110(SGD)のうち最も下方に位置するもののZ方向の長さ(層厚)をLZとすると、(LSUM-LZ×(N-1))/LZで表される値が1.31より大きくなる様に、導電層110(SGD)のZ方向の長さ(層厚)を調整することが望ましい。
【0130】
[その他]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
110,112…導電層、120…半導体層、130…ゲート絶縁膜、131…トンネル絶縁膜、132…電荷蓄積膜、133…ブロック絶縁膜、BLK…メモリブロック、SU…ストリングユニット、WL…ワード線、SGDT,SGD,SGS,SGSB…選択ゲート線、BL…ビット線、LZWL,LZSGD1,LZSGD2,LZSGD3…Z方向の長さ。