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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154465
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】害獣忌避装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/08 20110101AFI20231013BHJP
   A01M 29/30 20110101ALI20231013BHJP
【FI】
A01M29/08
A01M29/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063758
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中野 さおり
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121DA27
2B121DA33
2B121EA26
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成でありながら、監視領域の360゜の範囲をカバーでき、しかも害獣に学習効果を学ばせずに持続した忌避効果が発揮できるようにする。
【解決手段】発光源および上記発光源から出射される光を360゜の環状光に変換するアキシコンレンズを含む光学レンズ系を有する発光ユニット100と、上記発光ユニット100と組み合わされ上記環状光を反射角度を変化させながら全方向に向けて反射する光反射部を有する光反射ユニット200とを備え、発光源から出射される例えばレーザー光をアキシコンレンズで環状光とし、光反射ユニット200に設けられている例えば放物凸面鏡で監視領域の全方向に向けて照射する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光源および上記発光源から出射される光を360゜の環状光に変換する光学レンズ系を有する発光ユニットと、
上記発光ユニットと組み合わされ上記環状光を反射角度を変化させながら全方向に向けて反射する光反射部を有する光反射ユニットと、
を備えていることを特徴とする害獣忌避装置。
【請求項2】
上記反射ユニットは上記光反射部を動かして上記光反射部と上記発光ユニットとの間の距離を可変とする第1駆動部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の害獣忌避装置。
【請求項3】
上記発光ユニットは上記光学レンズ系を動かして上記光学レンズ系と上記反射ユニットとの間の距離を可変とする第2駆動部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の害獣忌避装置。
【請求項4】
上記第1駆動部は上記光反射部をフォロワーとして1周あたり回転中心からの高さが異なる複数の作用突部を有するカムを備えていることを特徴とする請求項2に記載の害獣忌避装置。
【請求項5】
上記発光源にレーザー光源が用いられることを特徴とする請求項1に記載の害獣忌避装置。
【請求項6】
上記光反射部に放物凸面鏡が用いられることを特徴とする請求項1に記載の害獣忌避装置。
【請求項7】
上記光反射部に頂部から裾部にかけての面が凹状の円錐面である放物凹面鏡が用いられることを特徴とする請求項1に記載の害獣忌避装置。
【請求項8】
上記光反射部は複雑な反射面を有する円錐体として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の害獣忌避装置。
【請求項9】
上記円錐体を回転および/または上記発光ユニットに向けて進退させる第3駆動部を備えていることを特徴とする請求項8に記載の害獣忌避装置。
【請求項10】
上記光学レンズ系にアキシコンレンズが含まれることを特徴とする請求項1に記載の害獣忌避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物等に被害を加える猪、猿、熊、鹿や鳥等の害獣を追い払う害獣忌避装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
害獣を追い払う方法には、大別して、火薬やスピーカ等を使用して大音響を出力して害獣の聴覚を刺激する方法と、畑等の監視領域の周囲に通電した電線を張り巡らして電気ショックにより害獣の触覚を強く刺激する方法と、光(例えばレーザー光)を照射して害獣の視覚を刺激する方法とが知られている。
【0003】
大音響により聴覚を刺激する方法は、近隣に人家や家畜の飼育施設等がある場合には、住民に迷惑をかけ、また、家畜の生育を蝕むおそれがある。そのため、音響による方法は、使用する場所が限られる。電気ショックにより害獣の触覚を強く刺激する方法の場合には、電線を張り巡らす作業に多大なコストがかかるばかりでなく、人が感電するおそれもある。また、害獣が隙間を潜り抜けるおそれもある。
【0004】
これに対して、光によって害獣の視覚を刺激する方法は、音を発生させず、また、感電事故を発生させない。そのため、光による忌避方法は、人や近隣への環境に配慮し、安全に使用することができるため、近年において多くの提案がなされている。
【0005】
例えば特許文献1では、害獣検出部によって監視領域内へ侵入する害獣が検出されると、発光部よりその侵入地点に向けて高輝度の閃光(例えばレーザー光)を出射することが提案されている。
【0006】
特許文献2では、監視領域内に環状のガイドレールを設け、このガイドレールに沿って閃光(例えばレーザー光)を発光する発光装置を移動可能とし、発光装置をガイドレールに沿って周回させながら害獣に閃光を照射することが提案されている。
【0007】
また、特許文献3では、レーザー発振器を内蔵した光源シャフト部と、上記光源シャフト部を軸として回転するターンテーブルとを有し、上記ターンテーブル上にレーザー発振器から出射されるレーザー光をラインレーザーとするレンズ系とそのラインレーザーを所定方向に反射する反射板を載置し、ターンテーブルを回転させることにより、ラインレーザーで監視領域の全体を走査することが提案されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のようなレーザービームによる点照射では、害獣の目への命中率が低い。また、監視領域の全体にレーザ光を照射(走査)するには、特許文献2,3に記載のように、発光部を360゜回転させる機構が必要である。そのため、装置が大掛かりになってしまう。また、回転装置によらない場合には、死角が生じないように複数台で監視領域の全体をカバーすることになるが、コストが問題となる。
【0009】
また、照射が例えば規則的であったり、単調であったりする場合、害獣が照射方向を学習し、忌避効果が持続しない、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3197542号公報
【特許文献2】実用新案登録第3199518号公報
【特許文献3】実用新案登録第3212816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、コンパクトな構成でありながら、監視領域の360゜の範囲をカバーでき、かつ持続した害獣忌避効果が発揮できる害獣忌避装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の害獣忌避装置は、発光源および上記発光源から出射される光を360゜の環状光に変換する光学レンズ系を有する発光ユニットと、上記発光ユニットと組み合わされ上記環状光を反射角度を変化させながら全方向に向けて反射する光反射部を有する光反射ユニットと、を備えていることを特徴としている。
【0013】
上記発光源にはレーザー光源が用いられてもよい。
【0014】
上記光学レンズ系にはアキシコンレンズが用いられてもよい。
【0015】
上記光反射部には放物凸面鏡が用いられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンパクトな構成でありながら、360゜の範囲をカバーできる害獣忌避装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による害獣忌避装置の一実施形態を示す(a)正面図および(b)正面側斜視図。
図2】上記害獣忌避装置の分解斜視図。
図3】上記害獣忌避装置に含まれる発光ユニットを示す(a)分解正面図および(b)その分解斜視図。
図4】上記害獣忌避装置に含まれる光反射ユニットを示す(a)正面分解図および(b)その底面側から見た斜視図。
図5】上記光反射ユニット内において光反射部を駆動するいくつかのカムを例示したカムの斜視図。
図6】上記光反射部に用いられる放物凸面鏡を示す(a)正面図および(b)その斜視図。
図7】上記光反射部に用いられる放物凹面鏡を示す(a)正面図および(b)その斜視図。
図8】上記光反射部に用いられる不規則な反射面を有する円錐体を示す(a)正面図および(b)その斜視図。
図9】上記放物凸面鏡を(a)高位置、(b)中位置、(c)低位置としたときの光反射状態を示す本発明の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
まず、図1および図2を参照して、本実施形態に係る害獣忌避装置1について説明する。害獣忌避装置1は、円筒状のハウジング10を備えている。ハウジング10内には、発光ユニット100と光反射ユニット200とが対として収納されている。
【0020】
ハウジング10は、メインケース11と、トップケース12と、ボトムケース13とを備えている。メインケース11は、円筒状であり、光が透過する材料からなる。トップケース12はメインケース11の上端に嵌合され、ボトムケース13はメインケース11の下端に嵌合される。
【0021】
トップケース12内には、発光ユニット100と電池ケース101とが図示しない支持基板に取り付けられた状態で配置される。また、トップケース12の上端には、Oリング14を介して円盤状のケースカバー15がネジ止めされる。
【0022】
ボトムケース13内には、光反射ユニット200が発光ユニット100と対向するように駆動部とともに収納される。光反射ユニット200の駆動部については後述する。ボトムケース13には、動く物体を検知する動体検知センサー16が設けられている。
【0023】
動体検知センサー16には、例えば焦電赤外線センサーが用いられる。本実施形態において、動体検知センサー16は、ボトムケース13の外周面に120゜間隔で3個配置されている。
【0024】
図3を参照して、発光ユニット100について説明する。発光ユニット100は、レーザー光源110と、レーザーホルダー120と、コリメートレンズホルダー130と、コリメートレンズ140と、ホルダハウジング150と、アキシコンレンズ160とを備えている。
【0025】
レーザーホルダー120は、上面に蓋カバー121を有し、下面が開放された円筒体からなる。蓋カバー121の中心部分には、レーザー光源110が嵌め込まれる。レーザー光源110に代えて高輝度のLED(発光ダイオード)が用いられてもよい。
【0026】
コリメートレンズ140は、レーザーホルダー120内に、コリメートレンズホルダー130に支持された状態でレーザー光源110の光軸と同軸となるように設けられる。レーザー光源110から出射されたレーザー光は、コリメートレンズ140により平行光となる。また、コリメートレンズ140またはレーザー光源110のいずれか一方の位置が同軸上において可変調整できてもよい。出射されたレーザー光の太さは、コリメートレンズ140とレーザー光源110間の距離に応じて変化する。すなわち、コリメートレンズ140とレーザー光源110との間隔を可変にする構成は、出射されたレーザー光の太さを変化させる。
【0027】
ホルダハウジング150は、大径のシリンダ部151と小径のレンズホルダー部152を備えている。シリンダ部151はホルダハウジング150の上部に、レンズホルダー部152はホルダハウジング150の下部にそれぞれ配置される。シリンダ部151には、レーザーホルダー120が収納される。レンズホルダー部152には、レーザー光源110の光軸と同軸となるようにアキシコンレンズ160が取り付けられる。
【0028】
レーザー光源110から出射されたレーザー光(レーザービーム)は、コリメートレンズ140とアキシコンレンズ160とを通過して出射される。すなわち、レーザー光は、コリメートレンズ140によって平行光とされ、アキシコンレンズ160からリング状のラインレーザー光(360゜の環状光)として光反射ユニット200に向けて出射される。
【0029】
図4を参照して、光反射ユニット200について説明する。光反射ユニット200は、光反射ミラー(光反射部)210と、ミラーホルダー220と、ホルダケーシング230と、支持基板240と、カム250とを備えている。ミラーホルダー220とホルダケーシング230は円筒状である。カム250は、第1駆動部として機能するモーター260によって駆動される。
【0030】
本実施例では、光反射ミラー210に放物凸面鏡211が用いられている。放物凸面鏡211は、ミラーホルダー220に支持される。ミラーホルダー220は、放物凸面鏡211を支持した状態でホルダケーシング230内に上下動可能に配置される。
【0031】
ミラーホルダー220の下端側には、左右一対の係合爪221,221が形成されている。これに対して、ホルダケーシング230側には、係合爪221,221の相手方となる係合孔231,231(図4(b)にその一方のみを示す)が形成されている。
【0032】
係合孔231,231は、ホルダケーシング230の軸方向に沿った長孔であり、その長さ範囲内でミラーホルダー220を上下動可能としている。係合爪221,221は、ミラーホルダー220の抜け止め用である。また、ミラーホルダー220は、その下部にカム250の従動節としてのカムフォロワー222を備えている。
【0033】
ホルダケーシング230は、支持基板240の上面側に載置されている。支持基板240は、ボトムケース13に対する係止爪241を備えている。係止爪241は支持基板240の側辺部分に複数箇所にわたって設けられている。支持基板240は係止爪241によってボトムケース13内に固定される。
【0034】
カム250は、支持基板240の下面側に配置される。支持基板240には、カム250をミラーホルダー220のカムフォロワー222に接触させるための開口部242が形成されている。
【0035】
図5(a)および図9を併せて参照して、カム250について説明する。ここで使用しているカム250は、複数(この例では4つ)の作用突部250a~250dを有する変則カムである。作用突部250a~250dのそれぞれの高さは、カム250の1周あたり回転中心軸Xからの半径方向においてそれぞれ異なる。この例において、高さは250d→250c→250b→250aの順で高くなっている。
【0036】
アキシコンレンズ160から出射されるリング状のラインレーザー光(環状光)は、放物凸面鏡211によって水平方向(横方向)に向けて360゜同時に反射される。しかし、カム250によって放物凸面鏡211が上下動することで、放物凸面鏡211とアキシコンレンズ160との間の距離(間隔)が可変になる。この動作に伴って、放物凸面鏡211での反射角度が変化し、リング状のラインレーザー光も上下に変化する。
【0037】
その一例を図9により説明する。使用するに先だって、本害獣忌避装置1はレーザー光源110の光軸が水平面Hに対して直交するように図示しない監視台等に配置される。なお、動体検知センサー16が動体(例えば、害獣)を検知すると、本害獣忌避装置1が起動する。
【0038】
図9(a)は、カム250により放物凸面鏡211を高位置に押し上げてアキシコンレンズ160との間の距離を最も短くした場合を示している。リング状のラインレーザー光は水平面Hより上方に向けて360゜同時に反射し、外部へ照射される。
【0039】
図9(b)は、カム250により放物凸面鏡211を図9(a)の高位置から中位置(ノーマル位置)に下げた場合を示している。リング状のラインレーザー光は水平面Hとほぼ平行として360゜同時に反射し、外部へ照射される。
【0040】
図9(c)は、カム250により放物凸面鏡211を図9(b)の中位置からさらに下げて低位置にした場合を示している。リング状のラインレーザー光は水平面Hより下方に向けて360゜同時に反射し、外部へ照射される。
【0041】
参考として、図9(a)~(c)の各図の下欄に、光学シミュレーションにて放物凸面鏡211を上下させた場合の照射角度の変化状態を示す。
【0042】
このように、本発明によれば、変則カム250で放物凸面鏡211を上下させることにより、アキシコンレンズ160から出射されるリング状のラインレーザー光の反射角度をランダムに変化させることができる。
【0043】
また、本発明の害獣忌避装置1では、リング状のラインレーザー光が360゜同時に照射される。そのため、従来の忌避装置のように発光部を360゜回転させるガイドレール等が不要となる。すなわち、本発明の害獣忌避装置1は少ない台数で監視領域の全方位をカバーすることができる。
【0044】
また、放物凸面鏡211による反射角度(照射角度)が上下方向に複雑に変化することから、本発明の害獣忌避装置1は、目の高さが異なる害獣にも対応できるとともに、害獣の学習を妨げる効果も備える。すなわち、本発明の害獣忌避装置1は持続した忌避効果を発揮することができる。
【0045】
上記実施形態では放物凸面鏡211を上下させているが、図示しない第2駆動部により、アキシコンレンズ160側が上下してもよく、本発明にはこのような態様も含まれる。また、変則カム250として図5(b)にまとめて示すように、本発明の害獣忌避装置1は3つの高さのことなる作用突部を有する三角形状のカムや星形形状のカム等も使用することができる。
【0046】
さらには、本発明の害獣忌避装置1は、作用突部(頂部)が一つである例えば涙的形状のカムを備え、単調な照射とならないように、好ましくは正転、逆転を複雑に繰り返すことによって放物凸面鏡211を上下動させるようにしてもよい。
【0047】
また、本発明の害獣忌避装置1では、放物凸面鏡211に代えて、図7(a),(b)に示すように、頂部から裾部にかけての面が凹状の円錐面である放物凹面鏡212が用いられてもよい。
【0048】
また、放物凸面鏡211に代えて、図8(a),(b)に示すように、凸凹状の不規則な反射面213aを有する円錐体213が用いられてもよい。この場合には、図示しない第3駆動部により、円錐体213が上下動しながらレーザー光の光軸を中心として回転してもよく、上下動せずに回転だけしてもよい。
【0049】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。当業者であるならば上記実施形態に加えられる変更もしくは改良も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 害獣忌避装置
10 ハウジング
11 メインケース
12 トップケース
13 ボトムケース
16 動体検知センサー
100 発光ユニット
110 光源
140 コリメートレンズ
160 アキシコンレンズ
200 光反射ユニット
210 光反射ミラー(光反射部)
211 放物凸面鏡
212 放物凹面鏡
222 カムフォロワー
250 カム
260 モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9