(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154467
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B41J2/14 307
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063763
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF22
2C057AF93
2C057AG51
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】アクチュエーターからの力を均一に伝えることのできる振動板を備えた液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】実施形態の液体吐出ヘッドは、圧力室、振動板、硬質粒子、およびアクチュエーターを備える。圧力室は、液体を吐出するノズルと連通する。振動板は、複数の前記圧力室の隔壁の一部を形成する。硬質粒子は、前記振動板の外面に形成する樹脂層中に分布する。アクチュエーターは、前記硬質粒子を介して前記振動板に力を与える。前記硬質粒子が分散する前記樹脂層は、前記アクチュエーターと接する領域から隣り合う前記圧力室を隔てる隔壁の位置まで、前記振動板の外面に形成している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと連通する圧力室と、
複数の前記圧力室の隔壁の一部を形成する振動板と、
前記振動板の外面に形成した樹脂層に分散する硬質粒子と、
前記硬質粒子を介して前記振動板に力を与えるアクチュエーターと、を備え、
前記硬質粒子が分散する前記樹脂層は、前記アクチュエーターと接する領域から隣り合う前記圧力室を隔てる隔壁の位置まで、前記振動板の外面に形成していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
隣り合う前記アクチュエーター間に支柱を設け、
前記隔壁の位置まで形成した前記硬質粒子が分散する前記樹脂層と前記振動板を、前記支柱と前記隔壁で挟んでいることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記樹脂層に分散する前記硬質粒子は、同じ粒子径であって、各々が前記振動板と前記アクチュエーターの両方に接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記硬質粒子は、ランダムに分散していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の液体を所定の位置に供給する液体吐出ヘッドが知られている。液体吐出ヘッドは、例えばインクジェットプリンタ、3Dプリンタ、分注装置などに搭載する。インクジェットプリンタは、インクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の表面に画像等を形成する。3Dプリンタは、造形材の液滴を造形材吐出ヘッドから吐出し、硬化させて、三次元造形物を形成する。分注装置は、試料の液滴を吐出して複数の容器等へ所定量供給する。
【0003】
液体吐出ヘッドは、液体を吐出するチャネルを複数有している。各チャネルは、液体を吐出するノズル、ノズルに連通する圧力室、圧力室の隔壁の一部を構成する振動板、及び振動板に力を与えて圧力室の容積を変えるアクチュエーターを備える。液体吐出ヘッドは、複数のチャネルの中から液体を吐出するチャネルを選択し、アクチュエーターに駆動信号を与えて駆動させる。アクチュエーターで振動板に力を加えると、液体で満たされている圧力室の容積が変わり、ノズルから液体を吐出する。しかしながら、振動板は、撓みやすい素材で形成するためアクチュエーターからの力が伝わり難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-169656号公報
【特許文献2】特開平8-300647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アクチュエーターからの力を均一に伝えることのできる振動板を備えた液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の液体吐出ヘッドは、圧力室、振動板、硬質粒子、およびアクチュエーターを備える。圧力室は、液体を吐出するノズルと連通する。振動板は、複数の前記圧力室の隔壁の一部を形成する。硬質粒子は、前記振動板の外面に形成する樹脂層中に分布する。アクチュエーターは、前記硬質粒子を介して前記振動板に力を与える。前記硬質粒子が分散する前記樹脂層は、前記アクチュエーターと接する領域から隣り合う前記圧力室を隔てる隔壁の位置まで、前記振動板の外面に形成している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に従うインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの全体構成図である。
【
図3】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
【
図4】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した断面図である。
【
図5】上記インクジェットヘッドのヘッド部を部分拡大した平面図である。
【
図6】上記インクジェットヘッドの組立工程を説明する図である。
【
図7】上記インクジェットヘッドの制御系の回路図である。
【
図8】上記インクジェットヘッドのアクチュエーターに与える駆動波形である。
【
図9】上記アクチュエーターの動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に従う液体吐出ヘッドについて、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0009】
実施形態の液体吐出ヘッドを搭載した画像形成装置の一例として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。
図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10は、筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出する複数のインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。
【0010】
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
【0011】
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
【0012】
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。モータ205は、駆動装置の一例である。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
【0013】
液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
【0014】
インクジェットヘッド100~103は、夫々、インク流路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と連結する。各インクタンク315~318は、各インクジェットヘッド100~103の上方に配置する。待機時に、インクジェットヘッド100~103のノズル24(
図2参照)からインクが漏れ出ないように、各インク供給圧力調整装置321~324は、各インクジェットヘッド100~103内を大気圧に対して負圧、例えば-1.2kPaに調整している。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
【0015】
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
【0016】
続いて、インクジェットヘッド100~103の構成について説明する。以下は、
図2~
図9を参照しながら、インクジェットヘッド100について説明しているが、インクジェットヘッド101~103もインクジェットヘッド100と同じ構造である。
【0017】
図2に示すように、インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるヘッド部2を備える。ヘッド部2は、フィルム配線基板の一例であるフレキシブルプリント配線板21と接続する。フレキシブルプリント配線板21は、中継基板の一例であるプリント基板22と接続する。ヘッド部2は、ノズル部の一例であるノズルプレート23を備える。ヘッド部2は、インク流路311を介して
図1のインク供給圧力調整装置321と接続する。
【0018】
インクを吐出する各チャネルのノズル24は、ノズルプレート23の第1の方向の例えばX方向に沿って配列する。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。ノズル24は、一列に限らず、複数列であってもよい。ヘッド部2の詳しい構成は、後述する。
【0019】
フレキシブルプリント配線板21は、例えばポリイミドなどの合成樹脂フィルムを用いたフレキシブルなプリント配線基板である。フレキシブルプリント配線板21は、ドライバチップである駆動用のIC(Integrated Circuit)3を搭載している(以下、駆動ICと称す)。プリント基板22は、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂層と銅配線層を多重に積層した硬質のスルーホール基板である。制御部としての駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御基板17からプリント基板22を介して送られてくるプリントデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するよう各チャネルに駆動信号を与える。
【0020】
図3~
図5は、ヘッド部2の部分断面図である。ノズルプレート23は、圧力室基板4の一面に接合する。ノズルプレート23は、例えばポリイミドなどの樹脂又はステンレスなどの金属で形成した矩形状のプレートである。振動板41は、ノズルプレート23とは反対側の圧力室基板4の一面に接合する。振動板41は、外力を加えたときに変形する可撓性を有する。振動板41は、例えばステンレスなどの金属で形成した薄板状のプレートである。振動板41の厚みは、例えば4μmである。振動板41の材質は、ポリイミドフィルムなど、金属以外でもよい。
【0021】
圧力室42は、圧力室基板4に形成する。複数の圧力室42は、各ノズル24の位置に配列して、ノズル24とそれぞれ連通させている。圧力室基板4は、例えばステンレスなどの金属で形成する。圧力室42は、一例として、第2の方向の例えばZ方向に貫通する矩形状の開口を圧力室基板4に形成し、両側の開口をノズルプレート23と振動板41でそれぞれ塞ぐことによって形成する。すなわち、振動板41は、複数の圧力室42が共用し、複数の圧力室42のそれぞれの隔壁の一部を構成している(
図4参照)。
【0022】
圧力室42は、狭窄部を有するガイド流路43と連通し、さらに振動板41と樹脂層5を貫通する開口穴であるインク供給口44を介してインク供給マニホールド45に連通する。ガイド流路43は、圧力室42ごとに、圧力室基板4の振動板41側の一面に第3の方向の例えばY方向に溝状に形成する。インク供給マニホールド45は、樹脂層5を介在して振動板41の一面に接合したフレーム46内に形成する。インク供給マニホールド45は、X方向に延び、各チャネルのインク供給口44及びガイド流路43を介して、各チャネルの圧力室42とそれぞれ連通する。共通インク室としてのインク供給マニホールド45は、インク流路311と連通する(
図1,
図2参照)。
【0023】
硬質粒子50は、圧力室42から見て振動板41の外面に敷き詰め、隙間をバインダー樹脂51で埋めて粒子を固定している。すなわち、硬質粒子50は、バインダー樹脂51で形成した樹脂層5内に分散している。硬質粒子50が分散している樹脂層5は、一例として、硬質粒子50を混合した流動性を有するバインダー樹脂51を振動板41の外面に塗布し、バインダー樹脂51を硬化させることによって形成する。バインダー樹脂51は、熱硬化性エポキシ樹脂が好ましい。硬質粒子50は、振動板41の外面にランダムに分散していればよい。但し、樹脂層5の厚み方向(すなわちZ方向)に粒子同士が重なっていないことが望ましい。硬質粒子50の平均粒子径は、例えば4μmである。
【0024】
硬質粒子50は、少なくともバインダー樹脂51(硬化後)よりも硬い粒子である。硬質粒子50の材質は、金属、ガラス、シリカなどである。これら材質の粒子は、大きさを揃えやすいという利点がある。金属は、例えばニッケル(Ni)である。金属など導電性を有する硬質粒子50を用いた場合、例えば電極や配線に利用するようにしてもよい。なお、硬質粒子50は、粒子径が揃っていれば異なる材質のものを含んでいてもよい。
【0025】
アクチュエーター6は、硬質粒子50を介在して振動板41の外面に配置する。すなわち、硬質粒子50は、アクチュエーター6と振動板41の両方に接している。従って硬質粒子50の粒子径が、振動板41とアクチュエーター6との間隔を規定する。なお、上述のように振動板41を例えば4μmのステンレスで形成した場合、硬質粒子50の直径と振動板41の厚みは同じである。
【0026】
各チャネルのアクチュエーター6は、振動板41及び硬質粒子50を挟んで圧力室42およびガイド流路43と対向する位置に配列する。アクチュエーター6と振動板41は、樹脂層5を形成するバインダー樹脂51を接着剤にして接合するようにしてもよい。各アクチュエーター6は、Z方向における振動板41とは反対側の一面を支持部材47にそれぞれ接合することによって固定している。なお、フレーム46も樹脂層5を形成するバインダー樹脂51を接着剤にして接合するようにしてもよい。
図3は、振動板41の上面全体に硬質粒子50を分散させているが、例えば接着剤を使い分けて、フレーム46を配置する領域はバインダー樹脂51のみにしてもよい。
【0027】
アクチュエーター6は、例えばピエゾ素子などの圧電体61、第1の内部電極62、及び第2の内部電極63を交互に層状に積層して形成した積層型圧電アクチュエーターである(特に
図3参照)。各圧電体61は、分極方向が例えばZ方向において互いに逆向きに配置し、d33モードで変形させる。第1の内部電極62と第2の内部電極63は、圧電体61の主面にそれぞれ形成した導電膜である。第1の内部電極62は、それぞれY方向におけるアクチュエーター6の一方の端面まで形成し、この端面に形成した第1の外部電極64に接続する。第2の内部電極63は、それぞれY方向におけるアクチュエーター6の他方の端面まで形成し、この端面に形成した第2の外部電極65に接続する。ダミー層68は、圧電体61と同材料である。但し、ダミー層68は、内部電極を片側にしか設けず、電界が印加されないので変形しない。ダミー層68は、アクチュエーター6を支持部材47に固定するベースとなり(特に
図4参照)、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
【0028】
複数の圧電体61を積層したアクチュエーター6は、一例として、薄板状に加工した各圧電体61の主面に第1の内部電極62と第2の内部電極63をそれぞれ成膜する。そして圧電体61同士を積層し焼成してから第1の内部電極62と第2の内部電極63の間に電圧を印加して圧電体61を分極する。その後、第1の外部電極64と第2の外部電極65を成膜する。圧電体61は、チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT)などの鉛含有圧電材料、或いはニオブ酸ナトリウムカリウムなどの鉛非含有圧電材料で形成する。第1の内部電極62と第2の内部電極63は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で成膜する。第1の外部電極64と第2の外部電極65は、メッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどで成膜する。
【0029】
各アクチュエーター6の第1の外部電極64は、フレキシブルプリント配線板21の個別配線66にそれぞれ接続する(
図3参照)。フレキシブルプリント配線板21は、基材26,個別配線66,接着層27,絶縁層28を有する。フレキシブルプリント配線板21は、ハンダメッキ層29を形成した領域が第1の外部電極64と対向するように配置し、ハンダを溶融させることによって各チャネルの第1の外部電極64と個別配線66を電気的及び機械的に接続する。一方、各チャネルの第2の外部電極65は、共通配線(不図示)に接続し、例えばフレキシブルプリント配線板21を介して共通電位に接続する。
【0030】
各チャネルのアクチュエーター6間には、溝69を介してアクチュエーター6と同様の構成のアクチュエーター60を配置し、例えば支柱としてよい。アクチュエーター6とアクチュエーター60は、共通の圧電体61、第1の内部電極62、及び第2の内部電極63を用いて一括で形成し、溝69を形成することで個々のアクチュエーター6及びアクチュエーター60に分ける。支柱となるアクチュエーター60は、隣接する圧力室42間の隔壁40にあたる位置に配置する(
図4参照)。硬質粒子50は、この支柱と振動板41との間にも敷き詰める。これにより、バインダー樹脂51よりも硬い硬質粒子50で支柱を支持する。アクチュエーター60は、インクの吐出操作には利用しないが、インクの吐出に使用するようにしてもよい。従って支柱となるアクチュエーター60には、第1の外部電極64と第2の外部電極65を設けなくともよく、設けてもよい。なお、支柱は、アクチュエーター6と同様の構成のアクチュエーター60で構成するのに代えて、別の部材で形成してもよい。例えば支持部材47と一体的に支柱を形成してもよい。
【0031】
上述のヘッド部2は、一例として、
図6に示すように、ノズルプレート23、圧力室42を形成した圧力室基板4、及び振動板41を互いに接合した第一の構造体と、アクチュエーター6、支柱(アクチュエーター60)、及び支持部材47を互いに接合した第二の構造体をそれぞれ製作し、振動板41に硬質粒子50を含む未硬化のバインダー樹脂51を塗布した後、アクチュエーター6の位置が圧力室42の中心と一致するように位置決めし、バインダー樹脂51を熱硬化させて製作する。第一の構造体と第二の構造体を接合する際、アクチュエーター6が硬質粒子50を含む未硬化のバインダー樹脂51を押して、硬質粒子50が厚さ方向に重ならないようにする。
【0032】
図7は、インクジェットヘッド100の制御系の回路図である。
図7に示すように、アクチュエーター6は、第1の外部電極64を個別配線66に接続し、個別配線66を介して駆動IC3の出力端子に接続する。第1の外部電極64と個別配線66の接続点がアクチュエーター6の個別端子である。第2の外部電極65は、共通配線67に接続し、共通配線67を介して共通電位に接続する。第2の外部電極65と共通配線67の接続点がアクチュエーター6のコモン端子である。
【0033】
各アクチュエーター6の個別端子からの個別配線66は、駆動IC3の駆動ドライバD(すなわち、駆動回路)の出力端子にそれぞれ接続する。駆動IC3は、アクチュエーター6に与える駆動電圧V1の電源7及び駆動電圧V2の電源71を接続する。電源7及び電源71は、正極を駆動IC3に接続し、負極をグランド(GND)に接続する。駆動IC3は、インクジェットプリンタ10の制御基板17(
図1参照)から送られてくるプリントデータの信号線と接続する。プリントデータは、制御信号の一例である。各アクチュエーター6のコモン端子からの共通配線67は、グランド(GND)に接続する。
【0034】
続いて、
図8及び
図9を参照しながらインク吐出動作について説明する。駆動IC3の各駆動ドライバDは、駆動電圧V1,V2及びグランド(GND)を使って、各アクチュエーター6の個別端子に駆動波形を与える。電圧V1は例えば20Vである。電圧V2は例えば10Vである。グランド(GND)は例えば0Vである。どのアクチュエーター6を駆動させるかは、例えばプリントデータに基づく。
図8は、アクチュエーター6に与える駆動波形の一例である。
【0035】
図8に示すように、アクチュエーター6は、個別端子に電圧V2を与えて待機状態とする。電圧V2を与えると、圧電体61の分極軸の向きに電界が印加され、
図9(a)に示すように、アクチュエーター6が積層方向(Z方向)に伸長して圧力室42の容積が収縮した状態になる。そして、
図8の時刻t1で個別端子の電位をグランド(GND)に下げることで、
図9(b)に示すように、アクチュエーター6が復帰し、相対的に圧力室42の容積が拡張する。圧力室42の容積が拡張した分、ガイド流路43を介して圧力室42内にインクが流れ込む。そして例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間経過後、
図8の時刻t2において個別端子に電圧V2を与えると、
図9(c)に示すように、アクチュエーター6が積層方向(Z方向)に伸長して圧力室42の容積が収縮することでノズル24からインクの液滴Rが吐出する。そして例えばヘッド部2の圧力振動周期の1/2の時間経過後、
図8の時刻t3において個別端子に電圧V1を与えると、
図9(d)に示すように、アクチュエーター6が積層方向(Z方向)にさらに伸長して圧力室42の容積が収縮し、その後時刻t4でアクチュエーター6と圧力室42を
図9(a)の初期状態に戻すことによって残留振動を減衰させる。このようにアクチュエーター6の積層方向の縦振動に合わせて圧力室42の容積が変わり、インクを吐出することができる。その後、個別端子に電圧V2を与えて待機状態とする。
【0036】
図9(a)~(d)に模式的に示したように、アクチュエーター6が積層方向(Z方向)に収縮すると、振動板41は、特に溝69に対応する部位が変形する。例えばノズル密度が300dpiの場合、圧力室42のピッチは169μmである。圧力室42の幅は約80μm、アクチュエーター6の幅は約40μm、溝69の幅は20μmである。溝69の部分にも硬質粒子50が複数存在している。硬質粒子50とバインダー樹脂51で形成した樹脂層5をアクチュエーター6と接する領域から隣り合う圧力室42を隔てる隔壁40の位置まで外面に形成した振動板41は、たわみ方向にはバインダー樹脂51の弾性によって撓みやすい為、変形を妨げにくい。その後、インクを吐出するためにアクチュエーター6が積層方向(Z方向)に伸長すると、振動板41はアクチュエーター6に押されるが、硬質粒子50とバインダー樹脂51で形成した樹脂層5を外面に形成した振動板41は、厚み方向に硬い為、アクチュエーター6から受ける力が伝わりやすい。その結果、アクチュエーター6からの力を均一に伝えることができる。残留振動を減衰させるためにアクチュエーター6を伸長させたときも同様である。
【0037】
以上説明したように、上述の実施形態によれば、アクチュエーター6からの力を均一に伝えることのできる振動板41を備えたインクジェットヘッド100を提供することが可能である。上述の構成の積層型圧電アクチュエーターは、Z方向の変形量が大きいので、この実施形態による効果は大きい。
【0038】
なお、アクチュエーター6は、複数の圧電体61を積層した積層型に限らない。圧電体61が単一層のアクチュエーターであってもよい。また、駆動電圧を印加したときのアクチュエーターの動作は、縦振動に限らない。さらに、ドロップオンデマンド・ピエゾ方式に限らず、コンティニアス方式に適用してもよい。
【0039】
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出装置の一例として説明したが、液体吐出装置は、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
【0040】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 インクジェットプリンタ
100~103 インクジェットヘッド
2 ヘッド部
24 ノズル
3 駆動IC
41 振動板
50 硬質粒子
51 バインダー樹脂
6 アクチュエーター
60 アクチュエーター(支柱)
D 駆動ドライバ(駆動回路)