(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154469
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05B 45/60 20220101AFI20231013BHJP
G09G 3/3216 20160101ALI20231013BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231013BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231013BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231013BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20231013BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H05B45/60
G09G3/3216
G09G3/20 691D
G09G3/20 612R
G09G3/20 612A
G09G3/20 642D
H05B33/14 A
H01L27/32
G06F3/041 410
G06F3/041 512
G06F3/044 124
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063766
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遼河
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC41
3K107EE66
3K107HH02
5C080AA06
5C080DD01
5C080DD12
5C080DD25
5C080DD28
5C080JJ02
5C080JJ07
5C080KK20
5C080KK23
5C080KK43
5C380AA01
5C380AB21
5C380AB28
5C380AC13
5C380BA08
5C380BA28
5C380BB22
5C380CC71
5C380CD010
5C380CE01
5C380CF01
5C380CF62
5C380CF66
5C380FA02
(57)【要約】
【課題】電気エネルギーの変換を連続的に行いながら検出対象の検出を行う電子機器を提供する。
【解決手段】表示入力装置1は、陽電極20と、陰電極22と、陽電極20及び陰電極22間に流れる電流の電気エネルギーを他のエネルギーに変換する変換部と、陰電極22に流れる電流を制限電流値I
LIMに制限する電流制限部4と、第1の電流I
Aを生成し、陽電極20に供給する第1の電流生成部6と、陽電極20を充電させるために第1の電流I
Aの電圧より大きい電圧を有する第2の電流I
Bを生成し、第1の電流I
Aに第2の電流I
Bを重畳して陽電極20に供給する第2の電流生成部7と、第1の電流I
Aに重畳する第2の電流I
Bを制御し、変換部による電気エネルギーの変換と並行して陽電極20の電圧を計測した計測結果に基づいて操作指9の接近又は接触を判定する制御部8と、を備えて概略構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象が接近又は接触する操作入力面の下方に配置された陽電極と、
前記陽電極と電気的に接続される陰電極と、
前記陽電極と前記陰電極の間に電気的に接続され、前記陽電極及び前記陰電極間に流れる電流の電気エネルギーを他のエネルギーに変換する変換部と、
前記陰電極に電気的に接続され、前記陽電極及び前記変換部を介して前記陰電極に流れる電流を制限電流値に制限する電流制限部と、
前記陽電極と電気的に接続され、前記変換部の前記電気エネルギーとなる第1の電流を生成し、前記陽電極に供給する第1の電流生成部と、
前記陽電極と電気的に接続され、前記陽電極を充電させるために前記第1の電流の電圧より大きい電圧を有する第2の電流を生成し、前記第1の電流に前記第2の電流を重畳して前記陽電極に供給する第2の電流生成部と、
前記第2の電流生成部を制御して前記第1の電流に重畳する前記第2の電流を制御し、前記変換部による前記電気エネルギーの変換と並行して前記陽電極の電圧を計測した計測結果に基づいて前記検出対象の接近又は接触を判定する制御部と、
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記第1の電流生成部は、少なくとも前記制限電流値以上の電流値を有する前記第1の電流を前記陽電極に供給する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第2の電流生成部は、前記制御部の制御によって電圧値が高い第1の状態と前記第1の状態より電圧値が低い第2の状態を有するパルス電流である前記第2の電流を生成し、
前記制御部は、前記第2の電流が前記第1の状態にある場合に計測された前記陽電極の電圧と前記制限電流値を有する電流の電圧との差分が予め定められたしきい値以上に小さい場合、前記検出対象の接近又は接触がなされたと判定する、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記陽電極の電圧を計測する際のノイズをフィルタするハイパスフィルタを含むフィルタ部と、
前記フィルタ部を介して前記陽電極の電圧を計測する電圧計測部と、
を備える、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記変換部は、前記電気エネルギーを光エネルギーに変換する有機EL層である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、発光機能とタッチ検出機能を有するパッシブマトリックス型有機エレクトロルミネッセンスディスプレイが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このパッシブマトリックス型有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、複数のカソードと、複数のアノードと、カーソドとアノードとに挟まれ、発光層を含む有機機能層ユニットと、を有する有機EL(Electro-Luminescence)素子を備えている。パッシブマトリックス型有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、カソードとアノードがタッチ検出電極として機能し、有機EL素子の発光期間と、タッチ検出電極によるタッチ検出期間が時間的に分離、つまり発光期間とタッチ検出期間とが交互に切り替わるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来のパッシブマトリックス型有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、発光期間とタッチ検出期間とが交互に切り替わるので、切り替わらない場合と比べて、発光期間が短くなって輝度が低下すると共に、タッチ検出期間が短くなってタッチ操作の検出精度が低下する問題がある。また例えば、有機機能層が電気エネルギーを光エネルギー以外のエネルギーに変換する場合、電気エネルギーの変換期間とタッチ検出期間とが交互に切り替わり、電気エネルギーの変換が断続的に行われる問題がある。
【0006】
従って本発明の目的は、電気エネルギーの変換を連続的に行いながら検出対象の検出を行う電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、検出対象が接近又は接触する操作入力面の下方に配置された陽電極と、陽電極と電気的に接続される陰電極と、陽電極と陰電極の間に電気的に接続され、陽電極及び陰電極間に流れる電流の電気エネルギーを他のエネルギーに変換する変換部と、陰電極に電気的に接続され、陽電極及び変換部を介して陰電極に流れる電流を制限電流値に制限する電流制限部と、陽電極と電気的に接続され、変換部の電気エネルギーとなる第1の電流を生成し、陽電極に供給する第1の電流生成部と、陽電極と電気的に接続され、陽電極を充電させるために第1の電流の電圧より大きい電圧を有する第2の電流を生成し、第1の電流に第2の電流を重畳して陽電極に供給する第2の電流生成部と、第2の電流生成部を制御して第1の電流に重畳する第2の電流を制御し、変換部による電気エネルギーの変換と並行して陽電極の電圧を計測した計測結果に基づいて検出対象の接近又は接触を判定する制御部と、を備えた電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気エネルギーの変換を連続的に行いながら検出対象の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、表示入力装置の一例を示す図であり、
図1(c)は、表示入力装置のブロック図の一例である。
【
図2】
図2は、表示入力装置の第2の電流がLoの際の動作の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、表示入力装置の第2の電流がHiの際の動作の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、表示入力装置の第2の電流がHiからLoに移行する際の動作の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、表示入力装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る電子機器は、検出対象が接近又は接触する操作入力面の下方に配置された陽電極と、陽電極と電気的に接続される陰電極と、陽電極と陰電極の間に電気的に接続され、陽電極及び陰電極間に流れる電流の電気エネルギーを他のエネルギーに変換する変換部と、陰電極に電気的に接続され、陽電極及び変換部を介して陰電極に流れる電流を制限電流値に制限する電流制限部と、陽電極と電気的に接続され、変換部の電気エネルギーとなる第1の電流を生成し、陽電極に供給する第1の電流生成部と、陽電極と電気的に接続され、陽電極を充電させるために第1の電流の電圧より大きい電圧を有する第2の電流を生成し、第1の電流に第2の電流を重畳して陽電極に供給する第2の電流生成部と、第2の電流生成部を制御して第1の電流に重畳する第2の電流を制御し、変換部による電気エネルギーの変換と並行して陽電極の電圧を計測した計測結果に基づいて検出対象の接近又は接触を判定する制御部と、を備えて概略構成されている。
【0011】
この電子機器は、変換部に常に電流が供給されるので、電気エネルギーの変換期間と検出期間とを交互に行う場合と比べて、電気エネルギーの変換を連続的に行いながら検出対象の検出を行うことができる。
【0012】
[実施の形態]
(表示入力装置1の概要)
図1(a)及び
図1(b)は、実施の形態に係る表示入力装置の一例を示す図であり、
図1(c)は、表示入力装置のブロック図の一例である。
図2は、実施の形態に係る表示入力装置の第2の電流がLoの際の動作の一例を示す図である。
図3は、実施の形態に係る表示入力装置の第2の電流がHiの際の動作の一例を示す図である。
図4は、実施の形態に係る表示入力装置の第2の電流がHiからLoに移行する際の動作の一例を示す図である。
【0013】
図2~
図4は、制御信号S
2、第2の電流I
B、第1の電流I
A+第2の電流I
B(IA+IB)、電流I
C、電流I
D及び計測電圧Vの簡易的なグラフを図示している。制御信号S2のグラフは、横軸が時間、縦軸が電圧値である。第2の電流I
B、第1の電流I
A+第2の電流I
B、電流I
C及び電流I
Dのグラフは、横軸が時間、縦軸が電流値である。計測電圧Vのグラフは、横軸が時間、縦軸が電圧値である。
【0014】
なお以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率や形状は、実際の比率や形状とは異なる場合がある。また
図1(c)~
図4では、主な信号、情報や電流などの流れを矢印で示している。さらに数値範囲などを示す「A~B」は、A以上B以下の意味で用いるものとする。
【0015】
電子機器としての表示入力装置1は、一例として、車両に搭載されている。この表示入力装置1は、一例として、
図1(a)に示すように、後述する複数の有機EL素子2を有し、車両の車載装置の表示部として車載装置に関する表示画像10を表示する表示部の機能と、表示画像10として表示されたアイコン11に対する操作入力を受け付ける機能と、を備えている。この表示入力装置1は、一例として、
図1(c)に示すように、表示させる画像の情報である表示画像情報S
1に基づいて表示画像10を表示する機能を有している。
【0016】
操作入力とは、例えば、検出対象としての操作指9による、操作入力面30に対する接近又は接触によるタッチ操作などである。なお操作入力面30に対する接近とは、検出対象の感度が高い際、検出対象が操作入力面30に接触する前のフローティング状態で検出することを示している。また本実施の形態では、検出対象は、ユーザの操作指9とするがこれに限定されず、スタイラスペンなどの検出可能なものであっても良い。
【0017】
車載装置は、一例として、車両全体の設定や自動運転機能の制御を行う車両制御装置、車室内の温度を調整する空調装置、現在地の地図や目的地までの誘導を行うナビゲーション装置、シートの位置や傾きなどを制御するシート装置、音楽や映像を再生する音楽及び映像再生装置などである。
【0018】
また表示入力装置1は、一例として、
図1(b)に示すように、タッチ操作によって予め定められた機能がオン状態とオフ状態とに切り替わるスイッチであっても良い。この表示入力装置1は、意匠12を有し、有機EL素子2を照明として使用することにより、操作入力面30に意匠12を表示する。この意匠12は、一例として、操作入力面30に形成された遮光膜をレーザなどで除去して形成される。なお意匠12は、タッチ操作を受け付ける場所が複数の場合、その場所に応じて複数設けられる。
【0019】
表示入力装置1は、
図1(c)に示すように、操作指9が接近又は接触する操作入力面30の下方に配置された陽電極20と、陽電極20と電気的に接続される陰電極22と、陽電極20と陰電極22の間に電気的に接続され、陽電極20及び陰電極22間に流れる電流の電気エネルギーを他のエネルギーに変換する変換部と、陰電極22に電気的に接続され、陽電極20及び変換部を介して陰電極22に流れる電流を制限電流値I
LIMに制限する電流制限部4と、陽電極20と電気的に接続され、変換部の電気エネルギーとなる第1の電流I
Aを生成し、陽電極20に供給する第1の電流生成部6と、陽電極20と電気的に接続され、陽電極20を充電させるために第1の電流I
Aの電圧より大きい電圧を有する第2の電流I
Bを生成し、第1の電流I
Aに第2の電流I
Bを重畳して陽電極20に供給する第2の電流生成部7と、第2の電流生成部7を制御して第1の電流I
Aに重畳する第2の電流I
Bを制御し、変換部による電気エネルギーの変換と並行して陽電極20の電圧を計測した計測結果に基づいて操作指9の接近又は接触を判定する制御部8と、を備えて概略構成されている。
【0020】
本実施の形態の変換部は、一例として、電気エネルギーを光エネルギーに変換する有機EL層21である。なお変換部は、有機EL層21に限定されず、有機EL層21とは別の構成で電気エネルギーを光エネルギーに変換するものであっても良いし、電気エネルギーを熱エネルギーや機械エネルギーなどに変換するものであっても良い。一例として、変換部は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する電熱線などであっても良い。また一例として、変換部は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するモータなどであっても良い。
【0021】
表示入力装置1は、常に電気エネルギーを光エネルギーに変換しつつ操作指9のタッチ操作を検出するため、主に以下に記載する方法を採用している。
【0022】
・有機EL素子2に電流を流している間に電極GND間容量15(タッチ容量150及び寄生容量151)のみ限定して充電する方法について
表示入力装置1は、有機EL素子2に流れる電流を制限した状態で、制限以上の電流を有機EL素子2に供給し、電極GND間容量15を充電する。
表示入力装置1は、有機EL素子2の発光用の通電とタッチ操作の検出用の充電が同時に成立する。
【0023】
・常時有機EL素子2に通電する方法、及びタッチ操作検出後の充電された電荷の放電方法について
表示入力装置1は、パルス電流である第2の電流IBを生成する第2の電流生成部7と、この第2の電流IBの最大電圧より低い電圧を有する第1の電流IAを生成する第1の電流生成部6と、を並列して接続することで、第2の電流IBがLoの時、第1の電流生成部6から第1の電流IAが有機EL素子2に流れる。
表示入力装置1は、第2の電流IBがHiからLoに切り替わった直後、電極GND間容量15に充電された電荷が有機EL素子2に流れ、有機EL素子2の陽電極20と陰電極22の間の電圧が第1の電流生成部6から流れこむ電圧まで降下することで、電極GND間容量15に充電された電荷を放電する。
【0024】
電極GND間容量15は、
図2に示すように、陽電極20からGND間の静電容量を示し、操作指9を介してGNDと有機EL素子2との間に生じるタッチ容量150と、GNDと陽電極20の間に不可避的に生じる寄生容量151と、を含んでいる。この電極GND間容量15は、有機EL素子2の素子容量212以外の静電容量を包括するものである。ここで陽電極20の電圧とは、電極GND間容量15に基づく電圧である。
【0025】
(有機EL素子2の構成)
表示入力装置1は、複数の有機EL素子2を備えている。この有機EL素子2は、
図1(c)に示すように、陽電極20と、有機EL層21と、陰電極22と、を備え、保護部3によって保護されている。
【0026】
陽電極20は、一例として、透明電極であり、ITO(スズドープ酸化インジウム:Indium Tin Oxide)を用いて板形状に形成されている。
【0027】
有機EL層21は、ホール輸送層、発光層及び電子注入層などが積層され、陽電極20と陰電極22とに挟まれている。この有機EL層21は、陽電極20と陰電極22間に流れる電流IDによって発光し、光211を陽電極20及び保護部3を介して出力する。
【0028】
図1(c)では、有機EL層21の発光機能を発光素子210で示し、有機EL層21の寄生容量成分を素子容量212として表している。
【0029】
陰電極22は、例えば、銅やアルミニウムなどを用いた導電性金属や導電性合金によって板形状に形成されている。陰電極22は、複数の有機EL素子2ごとに設けられている。この陰電極22は、
図1(c)に示すように、接地回路5と電気的に接続されている。
【0030】
(保護部3の構成)
保護部3は、一例として、ポリカーボネートなどの透明樹脂やガラスなどによって板形状に形成されている。保護部3は、表面が操作入力面30となっている。また保護部3の裏面31側には、複数の有機EL素子2が配置されている。
【0031】
(電流制限部4の構成)
電流制限部4は、陰電極22と接地回路5の間に電気的に接続されている。電流制限部4は、予め定められた制限電流値ILIM以上の電流を流さないように構成されている。
【0032】
(接地回路5の構成)
接地回路5は、表示入力装置1の電位の基準を定める回路として構成されている。
【0033】
(第1の電流生成部6の構成)
第1の電流生成部6は、制御部8と陽電極20の間のノード17を介して有機EL素子2と電気的に接続されている。第1の電流生成部6は、少なくとも制限電流値I
LIM以上の電流値を有する第1の電流I
Aを陽電極20に供給するように構成されている。この第1の電流生成部6は、
図2に示すように、定電圧源60と、電流調整用の抵抗61と、電流の流れる方向を定めるダイオード62と、を備えて構成されている。
【0034】
定電圧源60は、
図2に示すように、定電圧LVを生成する。第1の電流生成部6は、電流制限部4によって定められた制限電流値I
LIMに基づいて第1の電流I
Aを出力する。この定電圧LVは、一例として、8Vである。
【0035】
(第2の電流生成部7の構成)
第2の電流生成部7は、制御部8と陽電極20の間であって、ノード16を介して有機EL素子2と電気的に接続されている。なお第2の電流生成部7は、第1の電流生成部6よりも制御部8側、つまり制御部8とノード17の間に接続されても良いし、有機EL素子2とノード17の間に接続されても良い。
【0036】
第2の電流生成部7は、制御部8の制御によって電圧値が高い第1の状態としてのHiとHiより電圧値が低い第2の状態としてのLoを有するパルス電流である第2の電流IBを生成するように構成されている。制御部8は、第2の電流IBがHiにある場合に計測された陽電極20の電圧V2と制限電流値ILIMを有する電流IDの電圧V1との差分が予め定められたしきい値82以上に小さい場合、操作指9の接近又は接触がなされたと判定する。なお後述するように電圧V1は、オフセット電圧としてフィルタ部80によって取り除かれるので、実質的に電圧計測部81が計測する電圧V2としきい値82とが比較される。
【0037】
第2の電流生成部7は、
図2に示すように、定電圧源70と、定電流部71と、パルス電流を生成するためのスイッチ部72と、電流の流れる方向を定めるダイオード73と、を備えて構成されている。
【0038】
定電圧源70は、
図2に示すように、定電圧HVを生成する。この定電圧HVは、一例として、10Vである。定電流部71は、定電流として第2の電流I
Bを生成する。
【0039】
スイッチ部72は、制御部8と電気的に接続され、制御部8から出力される制御信号S
2に基づいてONとOFFを切り替える。第2の電流生成部7は、
図2及び
図3に示すように、スイッチ部72がONである場合、電流値I
PLSの第2の電流I
Bが陽電極20に供給され、スイッチ部72がOFFである場合、第2の電流I
Bの供給が停止される。
【0040】
従って第2の電流生成部7は、スイッチ部72のONとOFFによってパルス電流である第2の電流I
Bを生成する。
図2~
図4に示す第2の電流I
Bのグラフは、縦軸が電流値、横軸が時間である。
【0041】
(制御部8の構成)
制御部8は、例えば、記憶されたプログラムに従って、取得したデータに演算、加工などを行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるマイクロコンピュータである。このROMには、例えば、制御部8が動作するためのプログラムが格納されている。RAMは、例えば、一時的に演算結果などを格納する記憶領域として用いられる。また制御部8は、その内部にクロック信号を生成する手段を有し、このクロック信号に基づいて動作を行う。
【0042】
制御部8は、陽電極20の電圧を計測する際のノイズをフィルタするハイパスフィルタを含むフィルタ部80と、フィルタ部80を介して陽電極20の電圧を計測する電圧計測部81と、を備えている。なお変形例としてフィルタ部80と電圧計測部81は、回路として制御部8の外に設けられても良い。
【0043】
制御部8は、CPU、RAM、ROM、フィルタ部80及び電圧計測部81が集積化されたIC(Integrated Circuit)とされている。
【0044】
制御部8は、電極GND間容量15を充電し、電位の変化からタッチ操作の有無を判定する、自己容量方式のタッチ検出を行うように構成されている。
【0045】
制御部8は、第2の電流IBをパルス電流とするため、制御信号S2によって第2の電流生成部7のスイッチ部72を周期的にON、OFFするように構成されている。
【0046】
電圧計測部81は、陽電極20を介して電極GND間容量15に基づく電圧を測定する。電圧V1は、電流制限部4において制限電流値ILIMに制限された際の電圧である。また電圧V2は、タッチ操作がなく、第1の電流IAと第2の電流IBが陽電極20に供給された際の電圧である。従って電圧計測部81は、理想的には、電圧V1より小さい電圧、及び電圧V2より大きい電圧を計測する必要がない。
【0047】
ここでタッチ操作の有無により変化する電圧は、電流IBがHiの間の電圧上昇量(=V2-V1)であるため、電圧計測部81に計測される計測電圧Vに、V2を入力した場合、オフセット電圧となる電圧V1分だけタッチ検出時の感度が低下する。電圧計測部81は、一例として、ADC(Analog to digital converter)であり、入力されたアナログ電圧を決められたbit数の分解能でデジタル数値化するように構成されている。従ってタッチ操作の有無によって変化する電圧は、上記のように、電流IBがHiの間の電圧上昇量であるので、分解能を高めるためには電圧上昇量のみを電圧計測部81に入力できるのが理想的である。しかし、電圧計測部81の分解能は、計測電圧Vに電圧V2をそのまま入力すると電圧上昇量(=V2-V1)に対してオフセット電圧V1分低下することになる。そのため、電圧計測部81は、ハイパスフィルタでオフセット電圧である電圧V1を取り除いた電圧を計測するように構成されている。なお分解能は、一例として、10bitである。
【0048】
以上より、制御部8は、オフセット電圧となる電圧V1を取り除くためのハイパスフィルタを有するフィルタ部80を備えている。なお変形例としてフィルタ部80は、さらに電圧V2以上の信号を通さないようにハイカットフィルタを備えても良い。
【0049】
制御部8は、電圧計測部81が計測する電圧V2が予め定められたしきい値82よりも小さい場合、タッチ操作がなされたと判定する。制御部8は、タッチ操作が検出された際、タッチ操作が検出された位置などの情報である操作情報S3を生成して電気的に接続された車載装置に出力する。
【0050】
以下では、第2の電流I
BのLo、Hi及びHiからLoの表示入力装置1の動作について説明する。
図2~
図4では、制御信号S
2、第2の電流I
B、重畳された第1の電流I
Aと第2の電流I
B、電流I
C、電流I
D、及び計測された計測電圧Vの現在のグラフの値を黒点で示している。
【0051】
・第2の電流I
BがLoの場合
制御部8は、制御信号S
2を出力してスイッチ部72をOFFにして陽電極20への第2の電流I
Bの供給を停止する。スイッチ部72がOFFになることにより、第2の電流I
Bは、
図2に示すように、ゼロとなる。
【0052】
第1の電流I
Aは、常に陽電極20に供給されている。従って第1の電流I
A+第2の電流I
B(I
A+I
B)は、
図2に点線で示すように、第1の電流I
Aのみとなる。この第1の電流I
Aは、制限電流値I
LIM分の電流I
Dが陽電極20、有機EL層21、陰電極22及び電流制限部4を介して接地回路5に流れる。なお第1の電流I
Aの電流値が制限電流値I
LIMである場合、第1の電流I
Aが電流I
Dとなる。
【0053】
電極GND間容量15は、電流値IPLSから有機EL素子2に流れた制限電流値ILIMを引いた電流ICが流れる。しかし電流ICは、第1の電流IAが有機EL素子2に流れ、第2の電流IBがゼロであるので、電流値IPLSがゼロとなり、ゼロとなる。つまり電極GND間容量15は、充電されない。
【0054】
従って第2の電流IBがLoの際、電圧計測部81は、電圧V1を計測する。
【0055】
・第2の電流I
BがHiの場合
制御部8は、制御信号S
2を出力してスイッチ部72をOFFからONにして陽電極20に第2の電流I
Bを供給する。スイッチ部72がONになることにより、第2の電流I
Bは、
図3に示すように、LoからHiとなり電流値がゼロから電流値I
PLSとなる。
【0056】
第2の電流I
BがLoからHiに切り替わる際、第2の電流生成部7は、有機EL素子2に第2の電流I
Bを流そうとするものの電流制限部4によって制限される。つまり有機EL素子2には、電流I
Dが流れているが制限を超えた余剰の電流の電荷は、
図3に点線で示すように、電極GND間容量15に充電され、陽電極20の電位が上昇し始める。陽電極20の電位は、
図3の計測電圧Vのグラフに示すように、電極GND間容量15の大きさに関連する傾きで上昇し続ける。
【0057】
陽電極20の電位が第1の電流生成部6の第1の電流IAの電圧以上となると、第1の電流生成部6から第1の電流IAが流れなくなる。つまり第2の電流IBがLoの際、第1の電流IAの電流値が制限電流値ILIMになり、電流IDとして有機EL素子2に流れる。また第2の電流IBがHiの際、第2の電流IBの一部が電流IDとして有機EL素子2に流れると共に、電極GND間容量15を充電する。
【0058】
そのため、第2の電流I
BがHiに切り替わると、第1の電流I
A+第2の電流I
B(I
A+I
B)は、
図3に示すように、電流値I
PLSとなる。この際、電圧計測部81は、陽電極20の計測電圧Vとして電圧V
2を計測する。
【0059】
ここでタッチ操作がなされている場合、電圧計測部81は、ピーク時の電圧V2より低い電圧V2(>V1)を計測する。制御部8は、計測された電圧V2としきい値82と比較してタッチ操作の有無を判定する。
【0060】
・第2の電流I
BがHiからLoに切り替わる場合
制御部8は、制御信号S
2を出力してスイッチ部72をOFFにして陽電極20への第2の電流I
Bの供給を停止する。スイッチ部72がOFFになることにより、第2の電流I
Bは、
図4に示すように、HiからLoに切り替わる。
【0061】
電極GND間容量15に充電された電荷は、
図4に点線で示すように、有機EL素子2に流れ、充電された電荷に基づく電位が低下し始める。この電位が第1の電流生成部6の電圧付近まで下降した後、再度第1の電流生成部6から第1の電流I
Aが流れ始め、電流制限部4により制限される制限電流値I
LIMまで上昇する。
【0062】
表示入力装置1は、第2の電流IBがHiからLoに切り替わることにより、電極GND間容量15に充電した電荷を、有機EL素子2を介して接地回路5に流し、放電することができる。
【0063】
以下に、本実施の形態の表示入力装置1の動作の一例について
図5のフローチャートに従って説明する。表示入力装置1は、電源が投入された際、第2の電流I
BがLoであるものとしている。
【0064】
(動作)
表示入力装置1の制御部8は、電源が投入されると、第1の電流生成部6をONにして第1の電流IAを陽電極20に供給する(Step1)。
【0065】
制御部8は、時間の計測を開始し、第2の電流IBをLoからHiに切り替えるか否かを判定する。制御部8は、ステップ2の「Yes」が成立する、つまり第2の電流IBをLoからHiに切り替えるタイミングになると(Step2:Yes)、制御信号S2をスイッチ部72に出力し、スイッチ部72をOFFからONに切り替えて第2の電流IBをLoからHiに切り替える(Step3)。
【0066】
制御部8は、第2の電流IBがHiからLoに切り替り、電極GND間容量15を充電するのに十分な時間として定められた一定時間が経過するか監視する。制御部8は、ステップ4の「Yes」が成立する、つまり一定時間が経過した場合(Step4:Yes)、電圧計測部81を制御して計測電圧Vを取得する(Step5)。
【0067】
制御部8は、計測電圧Vを取得した後、制御信号S2をスイッチ部72に出力し、スイッチ部72をONからOFFに切り替えて第2の電流IBをHiからLoに切り替える(Step6)。
【0068】
制御部8は、電圧計測部81の計測結果に基づいてタッチ操作の有無を判定する。制御部8は、タッチ操作が検出された場合(Step7:Yes)、判定したタッチ操作に基づいて操作情報S3を電気的に接続された車載装置に出力し(Step8)、ステップ2に処理を進める。
【0069】
ここで制御部8は、ステップ7においてタッチ操作が検出されない場合(Step7:No)、ステップ2に処理を進める。
【0070】
(実施の形態の効果)
本実施の形態の表示入力装置1は、電気エネルギーの変換を連続的に行いながら検出対象の検出を行うことができる。具体的には、表示入力装置1は、有機EL層21によって電気エネルギーを光エネルギーに変換しつつ検出対象の検出を行うことができるので、電気エネルギーの変換期間と検出期間とを交互に行う場合と比べて、有機EL素子2による表示や照明を連続的に行いながら検出対象の検出を行うことができる。
【0071】
電気エネルギーの変換期間と検出期間とを交互に行う場合は、各期間に割り当てられる期間が半減し、輝度や検出精度が低下する。しかし表示入力装置1は、表示や照明を連続的に行いながら検出対象の検出を行うので、検出期間を長く取ることが可能となり、高輝度化や検出精度を向上させることができる。
【0072】
表示入力装置1は、タッチ操作の検出のための検出電極を必要としないので、別途検出電極を設ける場合と比べて、製造工程を簡略化でき、また薄型化することができる。
【0073】
表示入力装置1は、有機EL素子2から出力された光211をタッチ検出のための検出電極を経由せずに出力することができるので、別途検出電極を設ける場合と比べて、透過率が向上して光を効率よく利用でき、高輝度化が容易となる。
【0074】
上述の実施の形態及び変形例に係る表示入力装置1は、例えば、用途に応じて、その一部が、コンピュータが実行するプログラム、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)などによって実現されても良い。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…表示入力装置、2…有機EL素子、4…電流制限部、6…第1の電流生成部、7…第2の電流生成部、8…制御部、20…陽電極、21…有機EL層、22…陰電極、30…操作入力面、80…フィルタ部、81…電圧計測部