(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154476
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】消臭組成物及びその製造方法、該消臭組成物を有する消臭布帛
(51)【国際特許分類】
A61L 9/014 20060101AFI20231013BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20231013BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20231013BHJP
B01J 20/16 20060101ALI20231013BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20231013BHJP
D06M 13/342 20060101ALI20231013BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20231013BHJP
D06M 11/42 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
A61L9/014
B01J20/30
B01J20/10 C
B01J20/16
B01J20/22 A
D06M13/342
D06M11/79
D06M11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063778
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 里恵
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘樹
【テーマコード(参考)】
4C180
4G066
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB02
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB08
4C180BB11
4C180CC16
4C180EA25Y
4C180EA28Y
4C180EA39X
4C180EB16X
4C180FF07
4G066AA30B
4G066AA30C
4G066AB27B
4G066BA03
4G066BA36
4G066CA25
4G066CA52
4G066DA03
4G066FA03
4G066FA12
4G066FA21
4L031AB31
4L031BA09
4L031BA20
4L031DA13
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA53
(57)【要約】
【課題】
アルデヒド系臭気と硫黄系臭気を同時に消臭できる消臭組成物とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
銅化合物と、アミノ酸またはアミノ酸誘導体、無機多孔質体、を有する消臭組成物であって、無機多孔質体の含有量が銅化合物1質量部に対して、0.05~1質量部添加することによって、銅化合物、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が共に失活することなく、アルデヒド系臭気と硫黄系臭気を同時に消臭することができる消臭組成物になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅化合物と、アミノ酸またはアミノ酸誘導体、無機多孔質体、を有する消臭組成物であって、前記無機多孔質体の含有量が銅化合物1質量部に対して0.05~1質量部であることを特徴とする消臭組成物。
【請求項2】
前記無機多孔質体は、シリカ、アルミノケイ酸塩、金属担持アルミノケイ酸塩からなる群から選ばれる一種または二種以上から構成される無機多孔質体である、請求項1に記載の消臭組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の消臭組成物を少なくとも一部に有する消臭布帛。
【請求項4】
消臭組成物の製造方法であって、銅化合物、アミノ酸またはアミノ酸誘導体、無機多孔質体を混合する際の投入順が(a)銅化合物→無機多孔質体→アミノ酸またはアミノ酸誘導体、又は(b)アミノ酸またはアミノ酸誘導体→無機多孔質体→銅化合物、のいずれかであることを特徴とする、請求項1~2に記載の消臭組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド系臭気および、硫化水素、メルカプタン類等の硫黄系臭気に対して、優れた消臭効果を発揮する消臭組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現代人にとって生活臭の問題は大きな関心事となってきている。住宅や自動車、電車、旅客機などの室内空間や、寝具、衣類、特に肌着や靴下など身近な品に対しても消臭の要求が高くなってきている。そのため用途に応じた様々な消臭剤が検討、開発されている。
【0003】
消臭の方法は、活性炭のような多孔質体に吸着させる物理吸着、化学反応によって吸着させる化学吸着、又はマスキングによる消臭等が挙げられる。物理吸着の消臭剤、例えば活性炭を用いた場合では、比較的幅広い臭気に対応することができるが、一旦吸着した臭気物質が再放出される懸念がある。一方で、化学吸着による消臭剤は、共有結合や配位結合などの化学結合により吸着するため、再放出の可能性が少ないことが特徴である。
【0004】
ただし化学吸着は、一般的に消臭すべき対象臭気が異なれば、化学吸着による反応機構が異なるため、対象臭気によって消臭剤を適宜検討する必要があり、またそれが複合臭の場合は複合臭を構成するそれぞれの臭気に対応する消臭成分を組み合わせる必要があった。そのため従来から様々な臭気に対応するべく、消臭成分を組み合わせた多数の消臭剤が検討、開発されてきた。
【0005】
例えば特許文献1(特開2000-279500)では、第1級アミノ基を有する化合物を多孔質二酸化ケイ素に担持させたアルデヒド系ガス消臭剤と、塩基性ガス用消臭剤を組み合わせてアルデヒド系ガス(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等)と塩基性ガス(アンモニア等)を同時に消臭できる消臭剤を開示している。
【0006】
アルデヒド系ガスは主にタバコ臭や冷蔵庫の臭いの成分である。アルデヒド系ガスは吸入量によっては人体に影響を与える可能性があり、またにおいを感知する閾値が低いため低濃度でも不快に感じる。
アルデヒド系の消臭にはアミンが有効で、例えば特許文献2(特開平4-2350)ではアミノ酸金属塩を有効成分としたアルデヒド除去剤が開示されている。
【0007】
また一方で、においを感知する閾値が低く、低濃度でも人間が不快に感じるガスとして、硫化水素やメルカプタン類等の硫黄系臭気がある。いずれも排泄臭、生活臭、生ごみ臭等の原因であるが、人間が不快に感じる臭いとして知られている。硫黄系臭気を消臭する消臭剤としては、例えば特許文献3(特開2005-087630)のように、銅の金属塩を用いることが周知である。
【0008】
アルデヒド系臭気、硫黄系臭気のいずれの臭気も生活に密接した臭気であり、また人が不快に感じ、時には人体に害を及ぼす臭気であるため、それらの臭気が消臭できる消臭剤の開発が望まれている。
本発明者は、薬剤を組み合わせてアルデヒド系臭気と硫黄系臭気を同時に一液で消臭する薬剤を調製しようと試みた。しかし単にアミノ酸と銅化合物を混合した薬剤を調製しようとすると、硫黄系臭気の消臭性能が大幅に低下してしまい、アルデヒド系臭気の消臭性能と硫黄系臭気の消臭性能を同時に満たす消臭剤の開発は困難だった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-279500
【特許文献2】特開平4-2350
【特許文献3】特開2005-087630
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの課題を鑑みて、本発明ではアルデヒド系臭気と硫黄系臭気を同時に消臭できる消臭組成物とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、[1]~[4]の構成からなる。
[1]銅化合物と、アミノ酸またはアミノ酸誘導体、無機多孔質体、を有する消臭組成物であって、前記無機多孔質体の含有量が銅化合物1質量部に対して0.05~1質量部であることを特徴とする消臭組成物。
[2]前記無機多孔質体は、シリカ、アルミノケイ酸塩、金属担持アルミノケイ酸塩からなる群から選ばれる一種または二種以上から構成される無機多孔質体である、前項[1]に記載の消臭組成物。
[3]前項[1]又は[2]に記載の消臭組成物を少なくとも一部に有する消臭布帛。
[4]消臭組成物の製造方法であって、銅化合物、アミノ酸またはアミノ酸誘導体、無機多孔質体を混合する際の投入順が(a)銅化合物→無機多孔質体→アミノ酸またはアミノ酸誘導体、又は(b)アミノ酸またはアミノ酸誘導体→無機多孔質体→銅化合物、のいずれかであることを特徴とする、請求項1~2に記載の消臭組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消臭剤は、アミノ酸またはアミノ酸誘導体(以下、明細書中ではまとめて「アミノ酸類似体」と記載する)と銅化合物を混合する際に、無機多孔質体を添加することでこの添加した無機多孔質体がアミノ酸類似体と銅化合物の間で緩衝的な役割を果たし、銅化合物の硫黄系臭気に対する消臭性能が失活せず、一液でアルデヒド系臭気と硫黄系臭気を同時に消臭することができる消臭組成物となる。以下に、本発明について詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における消臭組成物は、アミノ酸類似体、銅化合物、無機多孔質体を有する消臭組成物であり、アルデヒド系臭気の消臭成分はアミノ酸類似体、硫黄系臭気の消臭成分は銅化合物である。本発明の消臭組成物を布帛に塗布することにより、アルデヒド系臭気および硫黄系臭気に対して消臭性能を発揮する消臭布帛となる。
【0014】
上記で述べたアルデヒド系臭気とは、具体的にはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノネナール、ヘキサナール等を挙げることができる。また硫黄系臭気とは、具体的にはメタンチオール(メチルメルカプタン)、ジメチルスルフィド、チオグリコール酸等を挙げることができる。
【0015】
本明細書におけるアミノ酸類似体は1以上のアミノ基と1以上のカルボキシ基を有する有機化合物であり、基本的な構造が、NH2-Cn(-R)-COOHで表されるアミノ酸、またはアミノ酸誘導体が好ましい。Cnのnはアミノ酸主鎖の炭素数であり、この炭素数nは1~4であることが好ましい。またRはアミノ酸の側鎖であり、このRは炭素数が0~6からなる化合物であることが好ましい。なおRの炭素数が0の場合は、アミノ酸の側鎖に炭化水素以外のものが結合している状態であり、例えば水素やアミノ基などがアミノ酸主鎖の側鎖として結合している状態である。また炭素数nが1のアミノ酸(NH2-C(-R)-COOHで表される)はα-アミノ酸といい、人体のタンパク質を構成するアミノ酸を含んでいる。またアミノ酸主鎖の炭素数nが2~4の場合は側鎖Rが複数存在してもよく、複数存在する場合の側鎖Rは同一の側鎖でもそれぞれ異なる側鎖でもよい。(例えば、NH2-C(R1)-C(R2)-COOH)
【0016】
本発明において使用できるアミノ酸としては例えば、アミノ基や水酸基等の極性基を有する親水性アミノ酸や、中性状態で帯電する解離性アミノ酸が好ましい。また解離性アミノ酸の中でも側鎖Rにアミノ基を有し、中性溶液中で正に帯電する塩基性アミノ酸が好ましい。親水性アミノ酸を用いることで、消臭組成物の調製を容易に行うことができる。また塩基性アミノ酸を用いて消臭組成物を調製した場合は、消臭組成物の液性が中性でも正に帯電するため、布帛に消臭組成物を塗布した消臭布帛とした時、アルデヒド系臭気に対して優れた消臭性能を示すため好ましい。
【0017】
上記親水性アミノ酸としては、例えばアスパラギンやグルタミン等を挙げることができる。また、解離性アミノ酸としては、リシンやアルギニン等を挙げることができる。
【0018】
また本明細書においてアミノ酸誘導体は、例えば前述したアミノ酸の基本的構造(NH2-Cn(-R)-COOH)の一部分に異なる官能基や化合物を導入したもの、またアミノ酸の有する官能基や化学構造の一部分が変化したものを指す。本発明ではアミノ酸に代わってアミノ酸誘導体を用いて消臭組成物を作製することも可能であるし、またアミノ酸とアミノ酸誘導体を組み合わせた消臭組成物を作製することも可能である。
【0019】
また上記アミノ酸類似体は、水等の溶媒に溶解させたものや、シリカなどの多孔質担体に担持させ粉末化したものが好ましく使用できる。中でもシリカなどの多孔質担体に担持させたアミノ酸類似体は、消臭組成物を調製する時に取り扱いが容易なため好ましい。
【0020】
本発明の銅化合物としては、特に限定されないが、例えば銅のケイ酸塩などが挙げられる。また消臭組成物中の消臭成分であるアミノ酸類似体と銅化合物の配合量は、求められる消臭布帛の消臭性能に応じて適宜調整することが可能である。
【0021】
本発明における無機多孔質体は、シリカ、多孔質アルミノケイ酸塩、金属担持アルミノケイ酸塩、もしくはそれらの複合物を挙げることができる。ここでいうシリカは、シリカゲルやメソポーラスシリカ等の主原料が二酸化ケイ素である多孔質体のものをさす。またアルミノケイ酸塩とは、ケイ酸塩の一部の構造をアルミニウムで置換した三次元網目構造を有するもので、自然界に鉱物として多く存在する。多孔質アルミノケイ酸塩の代表的なものとしては、ゼオライトなどが挙げられる。またこの多孔質アルミノケイ酸塩の構造内に、銅や銀、亜鉛などの金属粒子を担持させた金属担持アルミノケイ酸塩も好ましく使用することができる。
【0022】
無機多孔質体を添加せずに銅化合物とアミノ酸類似体を混合すると、硫黄系臭気の消臭能力が大きく低下する。この硫黄性臭気の消臭性能低下の原因は、銅化合物中の銅イオンがアミノ酸類似体に配位し錯体を形成して、銅イオンの量が減少してしまうためと考えられる。しかし銅化合物とアミノ酸類似体の混合段階で無機多孔質体を添加すると、銅化合物もしくはアミノ酸類似体が無機多孔質体に吸着・保護されるため、銅化合物とアミノ酸類似体が直接反応し錯体を形成することが抑制される。そのため銅化合物中の銅イオンが失活せず、硫黄系臭気とアルデヒド系臭気のいずれの臭気も消臭することができる消臭組成物となる。
【0023】
消臭組成物中において、無機多孔質体の含有割合は、銅化合物1質量部に対して、0.05~1質量部が好ましい。その中でも0.25質量部~0.5質量部であると消臭組成物の液性が安定し、調製して時間が経過しても安定した消臭性能を有する消臭組成物になるためさらに好ましい。
0.05質量部未満では、無機多孔質体によって銅化合物由来の銅イオンが充分に保護されず、硫黄系臭気の消臭性能が劣化するため好ましくない。また1質量部を超えると、原理は不明であるが消臭組成物を調製してから時間経過すると、アルデヒド系臭気の消臭性能が大幅に劣化するため好ましくない。
【0024】
また銅化合物とアミノ酸類似体の消臭組成物中の割合は、消臭繊維に付与したい硫黄系臭気ならびにアルデヒド系臭気の消臭性能に合わせて適宜調整することができる。例えば、硫黄系臭気の消臭に特化した消臭組成物を調製する場合は、消臭組成物中の銅化合物の割合を高めることで調整することができ、アルデヒド系臭気の消臭に特化した消臭組成物を調製する場合は消臭組成物中のアミノ酸類似体の割合を高めることで調整できる。
【0025】
消臭布帛に塗布するべき消臭組成物の塗布量は消臭組成物中の銅化合物とアミノ酸類似体のそれぞれの割合によっても変化するが、例えば消臭布帛における銅化合物とアミノ酸類似体のそれぞれの塗布量の和が0.1~10g/m2(乾燥重量)になると、硫黄系臭気ならびにアルデヒド系臭気ともに効果的に消臭できる消臭布帛になるため好ましい。
【0026】
本発明の消臭組成物の調製方法について述べる。本発明の消臭組成物は調製時における銅化合物、アミノ酸、無機多孔質体の投入順も特徴となっている。投入順のフローを
図1に示す。1stステップとして、水に銅化合物もしくはアミノ酸類似体を投入し撹拌を行う。2ndステップとして無機多孔質体を添加し、さらに撹拌を行う。この2ndステップにて、無機多孔質体に銅化合物もしくはアミノ酸類似体を担持させる。次の3rdステップとして、1stステップで銅化合物を投入した場合は3rdステップではアミノ酸類似体を投入し、1stステップでアミノ酸類似体を投入した場合はこの3rdステップで銅化合物を投入し、さらに撹拌を行う。この消臭組成物の調製時に、必要に応じて分散剤や増粘剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0027】
もしアミノ酸類似体→銅化合物、もしくは銅化合物→アミノ酸類似体の順で投入して混合した場合、銅化合物が無機多孔質によって保護されず、直接アミノ酸類似体と反応してしまい、銅化合物による硫黄系臭気の消臭性能が大幅に劣化してしまうため、好ましくない。
【0028】
こうして得られた消臭組成物を布帛に加工することで、硫黄系臭気およびアルデヒド系臭気に対して消臭性能を発揮する消臭布帛となる。布帛への加工方法としては、特に限られたものではなく、例えばスプレー法、浸漬法、コーティング法などが挙げられる。
【0029】
消臭布帛を構成する繊維は、特に限られたものではなく、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、もしくは綿や麻、羊毛などの天然繊維などにも使用できる。
【0030】
また消臭布帛の形態に関しても特に限られたものではなく、消臭組成物は織物や編物、不織布等に使用でき、消臭布帛とすることができる。本発明の消臭組成物で加工した消臭布帛の用途としては、例えば看護または介護用途、生活空間用途向けのフィルターや、その他の身近な繊維製品に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の消臭組成物調製時における、銅化合物、無機多孔質体、アミノ酸類似体の投入順を示す。
【0032】
(実施例)
次に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0033】
<実施例1>
消臭組成物の調製方法について記述する。秤量した水を容器に入れて、分散剤を添加し撹拌機によって撹拌を行った。続いて撹拌は続けたまま、次に銅化合物として銅ケイ酸塩を投入しさらに撹拌した。次に無機多孔質体として含亜鉛アルミノケイ酸塩・シリカ複合物を銅化合物1質量部に対して0.5質量部投入しさらに撹拌を行った。次に、二酸化ケイ素にアミノ酸を担持させた粉末(アミノ酸の含有率は約10%である)(以下、アミノ酸と記載している)を銅ケイ酸塩1質量部に対して5質量部投入して、さらに撹拌した。最後に増粘剤を添加し1時間撹拌し、24時間調製液を静置してから、メッシュをかけて消臭組成物を得た。続いてポリエステル布帛(目付150g/m2)を調製した消臭組成物に浸漬させ、マングルで絞って熱乾燥し消臭布帛を得た。消臭布帛には消臭組成物の塗布量が20g/m2になるように塗布している。消臭布帛中における銅ケイ酸塩とアミノ酸のそれぞれの塗布量の和は、2.4g/m2(乾燥重量)としている。
【0034】
[液性の安定性]
混合した直後の液性の安定性及び、色の変化を観察した。
【0035】
[消臭性試験]
消臭性能の評価は、SEKマーク繊維製品認証基準(JEC301 2021年6月1日改訂、一般社団法人繊維評価技術協議会)に準拠し、実施した。
消臭性試験は、消臭布帛を作製した当日と、消臭布帛を作製して1か月後のサンプルの2回実施した。
消臭性能の評価は、アセトアルデヒドは60%以上を合格、メチルメルカプタンは70%以上を合格とした。
【0036】
<実施例2~3、比較例1~2>
消臭組成物の配合比を表1のようにした以外は、実施例1と同様にして消臭組成物を調製し、消臭布帛を作製した。
実施例1~3および比較例1~2における消臭組成物の塗布量はいずれも20g/m2に統一し、消臭布帛における銅ケイ酸塩とアミノ酸のそれぞれの塗布量の和はすべて2.4g/m2(乾燥重量)に統一している。(表2に記載)
比較例1は、銅ケイ酸塩を投入した直後に、無機多孔質体を添加せずに、そのままアミノ酸を投入し混合し、消臭組成物を調製した。
【0037】
【0038】
【0039】
実施例1および、比較例2の消臭組成物は、見た目の液性は安定していたように見えた。また色の変化も特になく問題なく調製が可能であった。実施例2~3は、消臭組成物の見た目の色が若干分離しているように見えたが安定していた。しかし比較例1は濃青色に変色し、液性も不安定であった。
【0040】
消臭布帛の消臭性能に関しては、実施例1~3および比較例2のように銅ケイ酸塩とアミノ酸に加え無機多孔質体を添加して作製した消臭組成物を塗布した消臭布帛は、メチルメルカプタン及びアセトアルデヒドに対して優れた消臭性能を示した。しかし、比較例1のように無機多孔質体を添加せずに作製した消臭組成物を塗布した消臭布帛は、メチルメルカプタンに対する消臭性能が大きく低下した。比較例1の消臭組成物の色が大きく変化したことから、銅化合物とアミノ酸類似体が錯体形成し、銅イオンが失活したことが考えられる。また実施例1~3の消臭組成物を塗布した消臭布帛は、1か月経過してもメチルメルカプタン及びアセトアルデヒドに対して優れた消臭性能を示した。しかし、比較例2の消臭組成物を塗布した消臭布帛は、1か月経過するとアセトアルデヒドに対する消臭性能が大きく低下した。この原因は詳しくはわかっていないが、過剰量の無機多孔質体がアミノ酸類似体のアミノ基に対し、何らかの阻害をしていると考えられる。
【0041】
以上の結果により、銅化合物とアミノ酸類似体の混合時に無機多孔質体を添加すると、無機多孔質体が銅化合物とアミノ酸類似体の間で緩衝的な作用をし、銅化合物とアミノ酸類似体が反応し銅イオンが失活することを抑制できるため、硫黄系臭気およびアルデヒド系臭気を同時に消臭できる消臭組成物とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の消臭組成物、並びに該消臭組成物を塗布した消臭布帛は、硫黄系臭気及びアルデヒド系臭気を同時に消臭することができる。それにより、例えば看護または介護用途、生活空間用途向けのフィルターや、その他生活空間における身近な繊維製品に使用することができる。