(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015449
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】コンクリートブロック
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20230125BHJP
E02B 3/14 20060101ALN20230125BHJP
【FI】
E02D29/02 309
E02B3/14
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119236
(22)【出願日】2021-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名 RSウォール パンフレット 発行年月日 令和2年9月29日 [刊行物等] 販売日 令和2年9月29日 販売した場所 有限会社藤本組 (高知県高岡郡佐川町永野1933) [刊行物等] 販売日 令和2年10月6日 販売した場所 株式会社小島組 (高知県宿毛市山奈町山田722) [刊行物等] 販売日 令和3年1月15日 販売した場所 有限会社磯部組 (高知県安芸郡奈半利町乙1633-1) [刊行物等] 販売日 令和3年2月18日 販売した場所 有限会社磯部組 (高知県安芸郡奈半利町乙1633-1) [刊行物等] 販売日 令和3年5月8日 販売した場所 月灘建設株式会社 (高知県幡多郡大月町鉾土604-21) [刊行物等] 販売日 令和3年5月15日 販売した場所 株式会社小島組 (高知県宿毛市山奈町山田722) [刊行物等] 販売日 令和3年6月19日 販売した場所 株式会社谷渕組 (高知県高岡郡津野町北川1) [刊行物等] 販売日 令和3年6月21日 販売した場所 新進・大谷・大石特定建設工事共同企業体 (高知県高知市九反田5-8)
(71)【出願人】
【識別番号】320013953
【氏名又は名称】松井建材有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181571
【弁理士】
【氏名又は名称】栗本 博樹
(72)【発明者】
【氏名】森 有央
【テーマコード(参考)】
2D048
2D118
【Fターム(参考)】
2D048AA82
2D118BA03
2D118FA01
2D118HB09
(57)【要約】
【課題】外部からの支持を必要とせず、コンクリートブロックの内包する空間に生コンク
リートを投入によって発生する浮力に抗し得る軽量で無筋のコンクリートブロック。
【解決手段】水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するコンクリートブロックであって、浮力を受ける壁部材と、該壁部材に対峙する支持部材と、前記壁部材及び支持部材を連結する桁部材を有するブロック体について、固定した下方ブロック体とその上方に連設する上方ブロック体と両部材を連結する連結引張材を係止する桁部材とを備えるコンクリートブロック。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するコンクリートブロックであって、
内空側での水平面との角度が鋭角である壁部材と、該壁部材に対峙する支持部材と、該支持部材及び前記壁部材を連結する桁部材と、を備え、自立するブロック体について、
上下方向に連設する一組のブロック体の一方であり、下方に固定された下方ブロック体と、
前記一組のブロック体の他方であり、前記下方ブロック体の上方に連設する上方ブロック体と、
前記下方ブロック体の桁部材に下端を係止し、前記上方ブロック体の桁部材に上端を係止し、前記下方及び上方ブロック体を連結する連結引張材と、
を備えるコンクリートブロック。
【請求項2】
前記連結引張材により前記上方ブロックの桁部材に作用する全ての引張力が、前記壁部材の方向から正面視する前記上方ブロック体の正面図で該壁部材を二等分する鉛直方向の直線に対して略線対称に存在し、前記正面視に対する側面視で略単一直線上に存在する請求項1のコンクリートブロック。
【請求項3】
前記連結引張材による引張力が鉛直方向である請求項1若しくは請求項2のコンクリートブロック。
【請求項4】
前記上方ブロック体及び下方ブロック体が内部に鉄筋を有しない無筋コンクリートである請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載したコンクリートブロック。
【請求項5】
前記上方ブロック体について、該上方ブロック体の更に上方にあるブロック体を連結する上側連結引張材の下端部を係止する前記桁部材を備えた請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載したコンクリートブロック。
【請求項6】
前記下方ブロック体について、該下方ブロック体の更に下方にあるブロック体を連結する下側連結引張材の上端部を係止する前記桁部材を備えた請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載したコンクリートブロック。
【請求項7】
前記上方ブロック体若しくは下方ブロック体について、前記連結引張材が貫通する連結材貫通孔を有する前記桁部材を備えた請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載したコンクリートブロック。
【請求項8】
前記上方ブロック体が前記連結引張材の引張力並びに前記桁部材、前記壁部材及び前記支持部材に生じる重力によって前記各部材に生じる曲げモーメントによる該部材内部の曲げ引張応力を許容する形状である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載したコンクリートブロック。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載したコンクリートブロックを連設して構築するコンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートによって構築される擁壁、堤防、堰堤等を施工する際のコンクリートブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート構造物築造に関して、高品質で均一な出来高の要求や現場における技術者、高度な技能を有する作業員の不足等から、二次製品の活用が頻繁に行われている。擁壁や堤防などのコンクリート構造物には、コンクリートブロックが多く利用されている。
【0003】
コンクリートブロックは、上下方向や左右方向に連設し、それらを連結することによって構造物を築造する。擁壁、堤防若しくは堰堤の場合、コンクリートブロックの内側及びその間に打設するコンクリートによって該ブロック間を連結し、コンクリートブロックと打設するコンクリートが一体化してコンクリート構造物が築造される。これらには、近年は、自立式の大型のコンクリートブロックが頻繁に用いられる。
【0004】
コンクリートブロックを連設して擁壁等のコンクリート構造物を築造する場合、上下方向に凹凸部を設けて嵌合連結し、左右方向には連結金具で連結一体化する考案が提案されている(例えば、実開昭52-第141806号)。
【0005】
コンクリートブロックの上方への連設に連結部材を使用する場合に、施工時のずれ止めや転倒防止目的で、下段ブロック上面への凸部及び上段ブロック下面への凹部を設け、凹凸部の嵌合に加えて、連結鉄筋棒とその挿入孔によってそれらを連結する発明が提案されている(特許第4576018号)。また、前面と背面の壁材を連設し、内包空間にコンクリートを打設してコンクリート構造体において、下方の壁材と上方の壁材を斜め部材で連結する発明が提案されている(特許第6489568号)。
【0006】
前記のようなコンクリートブロックの施工について、中詰めの生コンクリートの打設
時に作用する浮力によるコンクリートブロックの浮き上りや転倒に関しては、コンクリートブロックの体積が内包空間に対して大きい場合には、コンクリートブロック重量が大きいため浮力等が問題にならなかった。また、前面壁材と後面壁材の内面勾配が同一の場合は、打設する生コンクリートの圧力が相殺され浮力は働かず、偶力による転倒に関しては裏込め材等の支保により対応するため検討する必要がなかった。前面壁材と後面壁材の内面勾配が異なり、中詰め生コンクリートによる浮力が生じる場合には、従来は、生コンクリートの打設を複数回に分けけるなどで対応していた。従って、自立するコンクリートブロックの内包空間に中詰めのコンクリートを投入して、中詰めコンクリートによってブロックが浮き上がりの事態に対する構造上の対応の必要がなかった。
しかしながら、コンクリートブロックの部材厚さを薄くし重量を小さくすると、安価、軽量且つ運搬が容易で、施工性を向上させるなどのメリットがある。このため、自立するコンクリートブロックの前面の壁材や後面の壁材の勾配を自由に設定できるとともに、部材厚さを薄いものにすることを目指そうとすると、必ず中詰めコンクリートの打設時の浮力や生コンクリートの漏出への対応が重要な課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭52-141806号公報
【特許文献2】特許第4576018号公報
【特許文献3】特許第6489568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、自立し、安価で前面及び後面の壁材の勾配を自由に設定でき、施工性が高いコンクリートブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
水平方向若しくは鉛直方向に連設し、内包する空間に充填材を充填することによって、構造物を構築するコンクリートブロックであって、内空側での水平面との角度が鋭角である壁部材と、該壁部材に対峙する支持部材と、該支持部材及び前記壁部材を連結する桁部材と、を備え、自立するブロック体について、
上下方向に連設する一組のブロック体の一方であり、下方に固定された下方ブロック体と、前記一組のブロック体の他方であり、前記下方ブロック体の上方に連設する上方ブロック体と、前記下方ブロック体の桁部材に下端を係止し、前記上方ブロック体の桁部材に上端を係止し、前記下方及び上方ブロック体を連結する連結引張材と、
を備えるコンクリートブロック。
【0010】
前記連結引張材により前記上方ブロックの桁部材に作用する全ての引張力が、前記壁部材の方向から正面視する前記上方ブロック体の正面図で該壁部材を二等分する鉛直方向の直線に対して略線対称に存在し、前記正面視に対する側面視で略単一直線上に存在する請求項1のコンクリートブロック。
【発明の効果】
【0011】
【0012】
数1の図は、内空側にθの傾きを有し、本発明において壁部材に当たる前面壁と支持部材に相当する後面壁と桁部材からなるコンクリートブロックの側面からの模式図であり、桁部材上面までの内空断面に生コンクリートが充填されている状態で加わる圧力と部材に生じる重力を示すものである。壁部材に係る重力及び圧力は、WW及びPWであり、支持部材に係る重力及び圧力は、WS及びPSであり、桁部材に係る重力及び圧力は、WG及びPGである。正面方向からの単位長さについて、重力は、数1の図における部材の面積×単位体積質量ρ×重力加速度の大きさで各部材の図心から鉛直方向に働く。一方、鉛直方向の支持部材の圧力の合力は、1/2×単位体積質量ρ×(高さ)2×重力加速度の大きさで2/3の深さの箇所から内壁面に直角方向に働き、壁部材の圧力の合力は、その内空側の傾きを考慮する必要がある。なお、数1では、壁部材の圧力に関して、水平方向分力をHWとし、垂直方向分力をBWとしている。前記それぞれに生じる力は数1の通りである。桁部材に関しては、重力と圧力が同じであり、計算式は省略している。
【0013】
上述のブロック体は、桁部材を除く重量は、2387N/m(単位長さ当たりの意であり、モーメント表示に関しては単位長さ当たりの表示を省略する。)であり、生コンクリートの圧力による上向き力は、1409N/mである。中詰めの生コンクリート投入による浮き上りとは、コンクリートブロックの重量が作用する浮力より小なる場合のみではない。数1の図に示すような場合、支持部材の踵に当たるM点周りのモーメントについて、検討すると、右回りのモーメントは、浮き上り方向のモーメント(以下浮力モーメントという。)であり、左回りのモーメントは、浮力モーメントに対する抵抗モーメントとなる。支持部材の重力及び内壁面に係る圧力のWS及びPSについて、WSは、抵抗モーメントとして作用し、PSは、浮力モーメントとして作用する。桁部材は、生コンクリート中のコンクリート部材であり、先述のように重力と圧力は相殺される。壁部材の重力WWと圧力PWについて、PWの水平方向分力HWは、抵抗モーメントとして作用し、垂直方向分力をBWは、浮力モーメントとして作用する。そこで、数1に示すWS、HW、WW、PS及びBWの右の数値は、壁部材の高さ0.5m、部材厚0.1mで傾きθが5分勾配(弧度法で1.11)、BWの作用位置L=1mとした場合で、抵抗モーメントは、1799Nm(ニュートン・メートル、以下省略する。)であり、浮力モーメントは、1878Nmになる。浮き上り現象が生じることが理解できる。また、浮力モーメントが抵抗モーメントに対して同等未満の場合であっても、コンクリート打設時には、必ず生コンクリートの締固めとしてバイブレーション等が施されることによって、生コンクリートの上向きの流れによる浮力が生じ、壁部材の下面からの漏出が起こり得る。数1の図に示す桁部材から鉛直下向きに配置された連結引張材の下向きの力であるFが作用することによって、上記の浮き上がりを防止することが理解できる。
本例においては、壁部材の傾きによって浮力が生じる場合についての説明であるが、前記の後面壁(支持部材に相当する。)もが内空側での水平面との角度が鋭角である場合は、後面壁の浮力によって壁部材の爪先部を軸とする回転力が生じる場合も起こり得る。そのような状態を踏まえても側面視で中央部に存在する上記の鉛直下向きの力であるFは、有効であることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、連設されている2組のブロック体の説明図である。(実施例5)
【
図2】
図2は、上方ブロック体の説明図である。(実施例1))
【
図3】
図3は、下方ブロック体の説明図である。(実施例1)
【
図4】
図4は、連結引張材の配置の説明図である。(実施例1)
【
図5】
図5は、連結引張材の引張力に関する説明図である。(実施例1)
【
図6】
図6は、施工手順を示す説明図である。(実施例2)
【
図7】
図7は、千鳥配置のブロック体の説明図である(実施例4)
【
図8】
図8は、
図1の頂部に設置された上方ブロック体の説明図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0015】
コンクリート構造物の擁壁について、空間と接する側を前面側とし、地盤側を後面側とする。堤防等に関しては、何れかの面を前面側とし、その反対を後面側とする。本発明における壁部材とは、前面側若しくは後面側の何れかにおいてブロック体の内空部に投入する生コンクリートに対して、堰となる面を形成し、且つ自立するブロック体の内空側において水平面との角度が鋭角である部材を指す。鋭角であることによって、生コンクリートを投入した時に壁部材には生コンクリートの圧力により浮力が生じる。支持部材とは、壁部材に対峙する部材で、壁部材に生じる前記浮力により生じる浮力モーメントの回転軸になり得る部材である。
これらのコンクリート構造物を構築するためのブロック体について、上下左右に連設するため、正面視の場合、各ブロック体(本発明におけるコンクリートブロックを構成する最小単位である。)が同形であることを前提とし、左右対称を基本としている。なお、正面視とは、自立する状態で前面側若しくは後面側の水平方向から見ることで、平面視とは、正面に対して上方から見ることで、側面視とは、正面に対して左若しくは右から見ることをいう。
実施例では、壁部材前面の勾配を5分勾配のものとする。ここで、5分勾配とは、前面の内空側の内角の傾きを正接で表現した場合に、10/5になる傾きをいう。即ち内角がtanθ=10/5のθであり、度数法で約63.4度になる。
【0016】
本発明は、上下方向の複数個のブロック体の内、連設する一組のブロック体を対象にしたもので、該一組のブロック体の相対的な位置関係で下側に位置するものを下方ブロック体、上側に位置するものを上方ブロック体としている。なお、前記一組のブロック体について、直線状の配列の場合は、1個の上方ブロック体と1個の下方ブロック体で一組のブロック体であるが、実施例4に示す千鳥配置の場合は、上方ブロック体1個に対して、下方ブロック体は2個になり、逆に、下方ブロック体1個に対して、上方ブロック体が2個になる。本発明の構成要素である連結引張材は、前記一組のブロック体を連結する引張材である。
上下方向に前記一組のブロック体を含んで連続する構造である場合、前記下方ブロック体は、更に下側のブロック体に対して、上方ブロック体となり、前記上方ブロック体は、更に上側のブロック体に対して、下方ブロック体となり得る。連結引張材に関しては、前記の一組のブロック体に係る連結引張材に対して、前述の更に下側のブロック体若しくは更に上側のブロック体との連結に係る連結引張材は、前記連結引張材と異なる下側連結引張材若しくは上側連結引張材と呼ぶ。
実施例1は、5分勾配のコンクリートブロックの設置例であり、ブロック体を上下方向に3個連設する事例を示し。構造的な内容を明らかにするものである。実施例2としては、本発明の一組のブロック体によるコンクリートブロックの施工手順を示す。実施例3として、本発明のコンクリートブロックとして、鉄筋を使用しない無筋コンクリート構造のブロック体に係る構造を示す。
【実施例0017】
図2及び
図3は、上下に連設する一組のブロック体2の説明図である。
図2は、上方ブロック体11であり、
図3は、下方ブロック体12である。それぞれの図では、(1)が平面図であり、(2)は正面図であり、(3)は右側面図である。ブロック体の壁部材21と支持部材22及び該両部材を連結する4箇所の桁部材23が示されている。壁部材の前後面は5分勾配、支持部材の前後面は鉛直になっている。
図2(3)及び
図3(3)の側面図に示す壁部材と支持部材の厚さは、同じである。
図2及び
図3のそれぞれの桁部材中央付近には、1つの連結材貫通孔26が配置されている。
図3の下方ブロック体の壁部材と支持部材の上面の間隔と
図2の上方ブロック体の両部材の下面の間隔が等しくなっており、下方ブロック体の上面に上方ブロック体を載置した場合に、両ブロック体の壁部材と支持部材の外壁面が同一平面になり、
図4の状態となる。
【0018】
図4は、上記の上方ブロック体11と下方ブロック体12による一組のブロック体2の連結状況及び連結引張材3を示す。
図4(2)は、連結状況を示す右側面図であり、
図4(1)は、
図4(2)に示すA-A断面における正面断面図である。
図4においては、上方ブロック体と下方ブロック体及び更に下方にあるブロック体との連結状況を示している。下方ブロック体の4箇所の桁部材23の内、両端の桁部材は、下側のブロック体と下側連結引張材35によって連結されている。更に、下側のブロック体の下部には、既にコンクリートが打設され、硬化したコンクリート14によって、基礎部と一体の固定した状態にある。従って、下側連結引張材によって連結された下方ブロック体は、上方ブロック体との連結時においては固定された状態にあるといえる。上方ブロック体と下方ブロック体は、
図2及び
図3に示すように、中央の2つの桁部材に配置された連結材貫通孔26(
図4では表示を省略している。)を貫通した連結引張材によって、連結されている。本例の連結引張材は、全螺子ボルト31を用いているが、該ボルトの下端は、下方ブロック体の桁部材下面のアンカー部24に前記ボルトに螺合するナット32によって、係止されている。上端は、上方ブロック体の桁部材の上面の引張部25においてボルトに螺合するナットを配し係止されており、上下端の何れかを固定して、所定のトルク管理で締付け締結し、一定の引張力が引張部及びアンカー部に作用することとなる。アンカー部及び引張部に示す座金33は、座面保護と緩み止めのために配しているが、連結引張材の引張材として機能は、連結引張材による連結後、投入した生コンクリートが硬化するまでの仮設的なものであり、不可欠なものではない。内包空間を充填材として土砂等で充填する場合等は、この座金を用いるのが望ましい。
【0019】
図5によって、連結引張材3(「0018」の説明における下側連結引張材35であるが、本項においては、更に下側との関係における一組のブロック体2について説明する。)の配置及び該連結引張材によって生じる引張力の合力について、説明する。
図5(1)は、上方ブロック体11の平面図であり、本例では、両端の桁部材23に引張部25を設けて、下向きの引張力を作用させている。このように上方ブロック体の両端の桁部材に引張力が作用するとき、上方ブロック体の壁部材21は、下方ブロック体12上面からの分布荷重による反力を受ける。
図5(3)は、前記引張力の合力が正面視で中心位置に作用した場合の下方ブロック体上面からの反力を示している。反力は下方ブロック体上面から均等に受ける。一方で、
図5(4)に示すように合力が中心線を挟んで1/3の範囲(以下、ミドルサードという。)に入る時は、壁部材の両端部に反力は生じ、
図5(5)に示すようにミドルサードから逸脱する場合、端部に反力が生じない部分が生じる。壁部材は生コンクリートに対して、堰板であり、反力が生じない箇所では生コンクリートの漏出が生じうる。従って、合力は必ず、ミドルサードに入っていなければならない。更に、効率的に最小限の引張荷重を付加する場合には、
図5(3)に示すように内空側に傾きを有する壁部材に作用する圧力、連結引張材の引張力及び重力による合力が中心線上に配置することによって、必要最小限の引張力で浮力対策を行い得ることが理解できる。
図5(3)の場合、2箇所の連結引張材3による引張力は、壁部材の正面図及び平面図で壁部材を2分する図上の中心線である一点鎖線に対して線対象(左右対称)となっている。なお、ミドルサードとは中心から左右1/6の範囲で、底面の1/3の範囲をいう。荷重を受けた面における同一条件での分布荷重による反力の分布に関する理論値で、荷重を受けた擁壁の底面における地盤反力などに利用されている。なお、請求項2の引張力に関する規定について、左右若しくは上下方向に連設するブロック体の重量や生コンクリートからの圧力に関しては、前記中心線に対して線対象に作用する前提で設けられたものである。従って、左右対称でないブロック体の場合は、前述の上方ブロック体の壁部材が下方ブロック体の壁部材上面から受ける反力については、ブロック体の重量、生コンクリートからの圧力及び連結引張材から受ける引張力などすべての荷重を考慮しなければならない。
【0020】
複数の連結引張材3の引張力の方向に関する合力については、実施例1の
図4(2)に示すような場合、鉛直方向に単一の直線上に作用している。複数の力による合力の場合、側面視の
図5(2)に示すように作用点が同じでも異なる方向の力の合力では、効率が悪く、側面視の同一作用点で同一方向に加えることによって、小なる引張力で効果を得ることができる。
図5(2)の場合同じ作用点における同じ大きさの力Pであっても、方向がθ異なることによって、合力F=2×P×cos(θ/2)となる。
本発明にかかるコンクリートブロックを経済的なものにするためには、ブロック体2の部材厚さを小さくし、連結引張材に係る引張力を小さくするためには、必要な合力を生み出すための個々の連結引張材による引張力を出来るだけ小さくし、合力は、中心線に重なるようにする必要がある。そのために「前記連結引張材により前記上方ブロックの桁部材に作用する全ての引張力が、前記壁部材の方向から正面視する前記上方ブロック体の正面図で該壁部材を二等分する鉛直方向の直線に対して略線対称に存在し、前記正面視に対する側面視で略単一直線上に存在する」と規定し、実施例1については、このことを実践するものである。