(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154492
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
F16H61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063818
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】相川 史壮
(72)【発明者】
【氏名】芹口 祐太
(72)【発明者】
【氏名】小川 純平
(72)【発明者】
【氏名】二谷 啓允
(72)【発明者】
【氏名】森山 修司
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大形 勇介
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552MA07
3J552MA26
3J552MA29
3J552NA01
3J552NB01
3J552NB05
3J552NB08
3J552PA20
3J552PA66
3J552QA06A
3J552QA26A
3J552QA42A
3J552QB03
3J552QB05
3J552SA03
3J552SA07
3J552UA04
(57)【要約】
【課題】コストダウンを図ることが可能で、かつ応答性も良好にすることが可能な車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】車両用駆動装置の油圧制御装置(12)において、上流切換え部(21)が前進レンジ圧出力状態で、かつ下流切換え部(23)が前進状態である場合、下流切換え部(23)が前進レンジ圧を係合圧調圧部(SL2)に供給可能となり、上流切換え部(21)が後進レンジ圧出力状態で、かつ下流切換え部(23)が後進状態である場合、下流切換え部(23)が後進レンジ圧を係合圧調圧部(SL2)に供給可能となり、上流切換え部(21)が後進レンジ圧出力状態で、かつ下流切換え部(23)が前進状態である場合、下流切換え部(23)が係合圧調圧部(SL2)に対して後進レンジ圧を遮断する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進時に係合される第1係合要素と、後進時に係合される第2係合要素と、供給される油圧により前記第1係合要素を係合させる第1油圧サーボと、供給される油圧により前記第2係合要素を係合させる第2油圧サーボと、を有し、入力された回転を変速して出力する変速機構と、
前記変速機構を油圧制御する油圧制御装置と、を備え、
前記油圧制御装置は、
元圧を生成する元圧生成部と、
第1信号圧を出力する第1信号圧出力部と、
第2信号圧を出力する第2信号圧出力部と、
前記第1油圧サーボと前記第2油圧サーボとに供給する係合圧を調圧して出力する係合圧調圧部と、
前記第1信号圧に応じて、前記元圧を前進レンジ圧として出力する前進レンジ圧出力状態と、前記元圧を後進レンジ圧として出力する後進レンジ圧出力状態と、に切換えられる上流切換え部と、
前記元圧生成部に対して前記上流切換え部よりも下流に配置され、前記第2信号圧に応じて、前記係合圧を前記第1油圧サーボに供給する前進状態と、前記係合圧を前記第2油圧サーボに供給する後進状態と、に切換えられる下流切換え部と、を有し、
前記上流切換え部が前記前進レンジ圧出力状態で、かつ前記下流切換え部が前記前進状態である場合、前記下流切換え部が前記前進レンジ圧を前記係合圧調圧部に供給可能となり、
前記上流切換え部が前記後進レンジ圧出力状態で、かつ前記下流切換え部が前記後進状態である場合、前記下流切換え部が前記後進レンジ圧を前記係合圧調圧部に供給可能となり、
前記上流切換え部が前記後進レンジ圧出力状態で、かつ前記下流切換え部が前記前進状態である場合、前記下流切換え部が前記係合圧調圧部に対して前記後進レンジ圧を遮断する、
車両用駆動装置。
【請求項2】
前記変速機構は、前進時に係合される第3係合要素と、前進時に係合される第4係合要素と、供給される油圧により前記第3係合要素を係合させる第3油圧サーボと、供給される油圧により前記第4係合要素を係合させる第4油圧サーボと、を有し、
前記油圧制御装置は、
第3信号圧を出力する第3信号圧出力部を有し、
前記係合圧調圧部は、
前記第1油圧サーボと前記第3油圧サーボとに供給する係合圧を調圧して出力する第1調圧ソレノイドバルブと、
前記第2油圧サーボと前記第4油圧サーボとに供給する係合圧を調圧して出力する第2調圧ソレノイドバルブと、を有し、
前記上流切換え部は、
前記第1信号圧に応じて、前記元圧を前進レンジ圧として出力する前進レンジ圧出力位置と、前記元圧を後進レンジ圧として出力する後進レンジ圧出力位置と、に切換えられる第1切換えバルブを有し、
前記下流切換え部は、
前記第2信号圧に応じて、前記第2調圧ソレノイドバルブの係合圧を前記第2油圧サーボに供給する第1位置と、前記第2調圧ソレノイドバルブの係合圧を前記第4油圧サーボに供給する第2位置と、に切換えられる第2切換えバルブと、
前記第3信号圧に応じて、前記第1調圧ソレノイドバルブの係合圧を前記第1油圧サーボに供給する第3位置と、前記第1調圧ソレノイドバルブの係合圧を前記第3油圧サーボに供給する第4位置と、に切換えられる第3切換えバルブと、を有し、
前記第1切換えバルブが前記前進レンジ圧出力状態として前記前進レンジ圧出力位置で、かつ前記第2切換えバルブが前記前進状態として前記第2位置である場合、前記第2切換えバルブが前記第3切換えバルブに前記前進レンジ圧を供給し、前記第3切換えバルブが前記前進レンジ圧を前記第1調圧ソレノイドバルブに供給可能となり、
前記第1切換えバルブが前記後進レンジ圧出力状態として前記後進レンジ圧出力位置で、かつ前記第2切換えバルブが前記後進状態として前記第1位置である場合、前記第2切換えバルブが前記後進レンジ圧を前記第2調圧ソレノイドバルブに供給可能となり、
前記第1切換えバルブが前記後進レンジ圧出力状態として前記後進レンジ圧出力位置で、かつ前記第2切換えバルブが前記前進状態として前記第2位置である場合、前記第2切換えバルブが前記第2調圧ソレノイドバルブに対して前記後進レンジ圧を遮断する、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記変速機構は、
入力回転が入力される入力部材と、
出力回転を出力する出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材とを連結可能な第1動力伝達経路に介在され、前記入力回転をギヤ列により変速して前記出力部材に伝達する第1変速部と、
前記第1動力伝達経路に介在され、前記入力回転を正転又は逆転して出力する前後進切換え部と、
前記入力部材と前記出力部材とを連結可能な第2動力伝達経路に介在され、前記入力回転を無段変速して前記出力部材に伝達する第2変速部と、
前進時に係合される第5係合要素と、
供給される油圧により前記第4係合要素を係合させる第5油圧サーボと、を有し、
前記第1係合要素は、係合することにより前記前後進切換え部を正転させる係合要素と係合することにより前記第2変速部を動力伝達させる係合要素との一方であり、
前記第2係合要素は、係合することにより前記前後進切換え部を逆転させる係合要素であり、
前記第3係合要素は、係合することにより前記第1変速部を動力伝達させる係合要素であり、
前記第4係合要素は、係合することにより駆動源と前記入力部材とを駆動連結する係合要素であり、
前記第5係合要素は、係合することにより前記前後進切換え部を正転させる係合要素と係合することにより前記第2変速部を動力伝達させる係合要素との他方であり、
請求項2に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機構を油圧制御する油圧制御装置を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動変速機等の車両の駆動力を伝達する車両用駆動装置にあっては、変速機構を油圧制御する油圧制御装置を備えており、油圧制御装置は、例えば運転席に設けられたシフトレバーの操作によって選択されたレンジ(例えばP(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ等)に応じて、変速機構の動力伝達状態を制御する。従来、シフトレバーは、油圧制御装置に配設されたマニュアルバルブに機械的に連結されており、マニュアルバルブをDレンジに位置させるとライン圧を前進レンジ圧として出力し、Rレンジに位置させるとライン圧を後進レンジ圧として出力し、PレンジやNレンジに位置させた状態ではライン圧を遮断してそれらのレンジ圧を出力しないように構成されている。なお、前進レンジ圧は、前進時に係合される係合要素(クラッチやブレーキ)の油圧サーボに対して係合圧を供給するソレノイドバルブ(電磁弁)に元圧として供給され、同様に後進レンジ圧は、後進時に係合される係合要素(クラッチやブレーキ)の油圧サーボに対して係合圧を供給するソレノイドバルブ(電磁弁)に元圧として供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、シフトレバーの配置の自由度を向上したり、マニュアルバルブを機械的に駆動する機構を省略したりする目的で、シフトレバーの信号に応じて電気的にソレノイドバルブを制御し、マニュアルバルブと同等の機能を油圧制御装置に設ける、所謂油圧式シフトバイワイヤの構造が考えられている。このように油圧制御装置においてマニュアルバルブと同等の機能を達成するためには、前進レンジ圧を出力するDレンジ相当の状態と、後進レンジ圧を出力するRレンジ相当の状態と、これらのレンジ圧を遮断するPレンジ又はNレンジ相当の状態と、を形成する必要があるため、例えば前進レンジ圧と後進レンジ圧とを選択的に出力する上流の切換えバルブと、それら出力された前進レンジ圧と後進レンジ圧とを遮断する下流の切換えバルブと、それらを独立して切換えるための2本の信号圧出力用ソレノイドバルブと、を設けることが考えられる。
【0005】
また、係合要素の油圧サーボへ供給する係合圧を調圧するリニアソレノイドバルブは高価であるため、2つの係合要素に対して1本のリニアソレノイドバルブの係合圧を振り分け用の切換えバルブで2つの油圧サーボに振り分けて供給することで、コストダウンを図ることが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記のように上流の切換えバルブと下流の切換えバルブと振り分け用の切換えバルブとを備えることは、切換えバルブの本数が多く、それを切換えるための信号圧出力用ソレノイドバルブをそれぞれに設けることを考えると、コストダウンの妨げとなる。また、例えば振り分け用の切換えバルブを例えば前進レンジ圧(又は後進レンジ圧)で切換えることも考えられるが、このように構成すると、信号圧出力用ソレノイドバルブを減じることができるものの、振り分け用の切換えバルブにおける切換えの応答時間が遅くなり、つまりシフトレバーの操作から変速機構の動力伝達状態が設定されるまでの応答が遅れ、運転者に違和感を与える虞がある。
【0007】
そこで本発明は、コストダウンを図ることが可能で、かつ応答性も良好にすることが可能な車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両用駆動装置において、
前進時に係合される第1係合要素と、後進時に係合される第2係合要素と、供給される油圧により前記第1係合要素を係合させる第1油圧サーボと、供給される油圧により前記第2係合要素を係合させる第2油圧サーボと、を有し、入力された回転を変速して出力する変速機構と、
前記変速機構を油圧制御する油圧制御装置と、を備え、
前記油圧制御装置は、
元圧を生成する元圧生成部と、
第1信号圧を出力する第1信号圧出力部と、
第2信号圧を出力する第2信号圧出力部と、
前記第1油圧サーボと前記第2油圧サーボとに供給する係合圧を調圧して出力する係合圧調圧部と、
前記第1信号圧に応じて、前記元圧を前進レンジ圧として出力する前進レンジ圧出力状態と、前記元圧を後進レンジ圧として出力する後進レンジ圧出力状態と、に切換えられる上流切換え部と、
前記元圧生成部に対して前記上流切換え部よりも下流に配置され、前記第2信号圧に応じて、前記係合圧を前記第1油圧サーボに供給する前進状態と、前記係合圧を前記第2油圧サーボに供給する後進状態と、に切換えられる下流切換え部と、を有し、
前記上流切換え部が前記前進レンジ圧出力状態で、かつ前記下流切換え部が前記前進状態である場合、前記下流切換え部が前記前進レンジ圧を前記係合圧調圧部に供給可能となり、
前記上流切換え部が前記後進レンジ圧出力状態で、かつ前記下流切換え部が前記後進状態である場合、前記下流切換え部が前記後進レンジ圧を前記係合圧調圧部に供給可能となり、
前記上流切換え部が前記後進レンジ圧出力状態で、かつ前記下流切換え部が前記前進状態である場合、前記下流切換え部が前記係合圧調圧部に対して前記後進レンジ圧を遮断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、コストダウンを図ることができるものでありながら、応答性も良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係る自動変速機を示すスケルトン図。
【
図2】第1の実施の形態に係る自動変速機の係合表。
【
図3】第1の実施の形態に係る油圧制御装置の一部を示す油圧回路図。
【
図4】第2の実施の形態に係る油圧制御装置の一部を示す油圧回路図。
【
図5】比較例に係る油圧制御装置の一部を示す油圧回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態に係る車両用駆動装置としての自動変速機10を、
図1乃至
図3を用いて説明する。なお、本明細書中で駆動連結とは、互いの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、それら回転要素が一体的に回転するように連結された状態、あるいはそれら回転要素がクラッチ等を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いる。
【0012】
[自動変速機の概略構成]
図1に示すように、自動変速機10を備える車両1は、駆動源としてのエンジン16と、自動変速機10と、を備えている。自動変速機10は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプで構成され、エンジン16の駆動力を伝達して左右の前輪である車輪(不図示)を駆動する。この自動変速機10は、入力部材としての入力軸10Aに入力されるエンジン16からの入力回転を変速して出力する変速機構10Tを備えており、変速機構10Tは、エンジン16に駆動連結されたトルクコンバータ17と、トルクコンバータ17に駆動連結された入力軸2と、前後進切換え装置3と、無段変速機構4と、減速ギヤ機構5と、出力部材としての出力軸60を有する出力ギヤ部6と、カウンタシャフト部7と、ディファレンシャル装置8と、これらを収容するケースであるミッションケース9と、を備えて構成されている。また、自動変速機10は、機械式オイルポンプ(MOP)18と、電動オイルポンプ19と、シフトレバー13のシフトポジションを検出するシフトポジション検出部14と、制御部(ECU)11と、油圧制御装置(V/B)12と、を備えている。なお、トルクコンバータ17は、エンジン16からの入力回転を流体伝動する流体伝動部17Aと、流体伝動部17Aの入力部と出力部とをロックアップするロックアップクラッチLUとを備えており、ロックアップクラッチLUが係合されると、入力軸10Aと入力軸2と直結し、入力軸2にエンジン16の回転をそのまま伝達する。
【0013】
なお、詳しくは後述する油圧制御装置12には、シフトポジション検出部14の検出に基づきシフトレンジ(P,R,N,D)を油圧制御装置12に設定するレンジ切換部20が備えられている。このレンジ切換部20は、詳しくは後述するように、所謂油圧式のシフトバイワイヤシステムで構成されている。
【0014】
また、自動変速機10は、エンジン16により駆動される入力軸2と、車輪(不図示)に回転を出力する出力軸60と、を連結する動力伝達経路A1,A2とを備えている。動力伝達経路A1,A2としては、後述する噛合式クラッチD1及びブレーキB1が介在され、入力軸2と出力軸60とを前進時及び後進時に前後進切換え装置3及び減速ギヤ機構5からなるギヤ列によって連結可能な第1動力伝達経路A1と、入力軸2と出力軸60とを第1動力伝達経路A1とは別の経路で前進時に無段変速機構4によって連結可能な第2動力伝達経路A2とが設けられている。また、自動変速機10は、第1軸AX1~第5軸AX5までの互いに平行な軸を備えている。
【0015】
第1軸AX1は、エンジン16の出力軸(クランク軸)と同軸に配置されている。この第1軸AX1上には、その出力軸に連結される自動変速機10の入力軸10A、トルクコンバータ17、入力軸2、前後進切換え部としての前後進切換え装置3、第2変速部としての無段変速機構4の第1プーリとしてのプライマリプーリ41が配置され、具体的に、前後進切換え装置3のプラネタリギヤDPと第1のクラッチC1とブレーキB1とが同軸上に配置されている。
【0016】
また、第2軸AX2上には、第1変速部としての減速ギヤ機構5が配置されている。第3軸AX3(回転軸)上には、無段変速機構4の第2プーリとしてのセカンダリプーリ42、第2のクラッチC2、出力ギヤ部6が配置されている。第4軸AX4上には、カウンタシャフト部7が配置されている。第5軸AX5上には、ディファレンシャル装置8、それぞれ左右の車輪(不図示)に駆動連結された左右のドライブシャフト81L,81Rが配置されている。
【0017】
エンジン16の出力軸に連結される自動変速機10の入力軸10Aは、トルクコンバータ17を介して入力軸2に連結されている。前後進切換え装置3は、入力軸2に駆動連結されたえプラネタリギヤDPと、ブレーキB1と、第1のクラッチC1とを備え、車両の走行方向により回転方向を正転又は逆転するように切り換えて伝達する。入力軸2は、プラネタリギヤDPの内周側を通って無段変速機構4のプライマリプーリ41に接続されていると共に、プラネタリギヤDPのキャリヤCRに接続されている。プラネタリギヤDPは、サンギヤS、リングギヤR、サンギヤSに噛合するピニオンP1及びリングギヤRに噛合するピニオンP2を回転自在に支持するキャリヤCRを有している所謂ダブルピニオンプラネタリギヤで構成されている。このうちのリングギヤRは、ブレーキB1によりミッションケース9に対して回転を係止自在に構成されている。また、サンギヤSは中空軸30に直接的に連結され、キャリヤCRは第1のクラッチC1を介して中空軸30に接続され、中空軸30は正逆回転出力ギヤ31に連結されている。なお、中空軸30は、第1のクラッチC1のクラッチドラム32にも連結されており、これら正逆回転出力ギヤ31と、中空軸30と、クラッチドラム32とが一体となって回転する。
【0018】
第1のクラッチC1は、係合時に車両の前進方向の回転(正転)を伝達させる経路を形成し、ブレーキB1は、係合時に車両の後進方向の回転を伝達させる経路を形成する。正逆回転出力ギヤ31は、減速ギヤ機構5の入力ギヤ51に噛合している。ブレーキB1は、第1の動力伝達経路A1に介在され、油圧が供給されることにより入力軸10Aからの回転を逆転させて動力伝達を接続するためのものである。
【0019】
減速ギヤ機構5は、第2軸AX2上に配置される第1の回転軸50と、第1の回転軸50に設けられる入力ギヤ51と、第1の回転軸50に設けられ第1の動力伝達経路A1に介在される噛合式クラッチ(シンクロメッシュ機構付き噛合式クラッチ)と、第1の回転軸50に対して相対回転可能な中空軸からなる第2の回転軸53及び出力ギヤ56とを備えている。入力ギヤ51は、第1の回転軸50の一方側に一体的に固定され連結されている。第2の回転軸53は、第1の回転軸50の他方側の外周側に、例えばニードルベアリング(不図示)により相対回転自在に支持されている。即ち、第2の回転軸53は、第1の回転軸50と軸方向に重なる二重軸として配置されている。第2の回転軸53には、出力ギヤ56が一体的に固定されて連結されている。出力ギヤ56は、出力ギヤ部6の入力ギヤ61に噛合されている。
【0020】
噛合式クラッチD1は、ドライブギヤ52と、ドリブンギヤ55と、シンクロメッシュ機構S1(シンクロナイザ)と、スリーブ57と、シフトフォーク58と、付勢ばね59と、を備えており、第1の回転軸50と第2の回転軸53とを係脱可能である。噛合式クラッチD1は、第1の動力伝達経路A1に介在され、油圧が供給されることにより動力伝達を接続する。
【0021】
ドライブギヤ52は、入力ギヤ51よりも小径で、第1の回転軸50の一方側に一体的に固定されて連結されている。ドリブンギヤ55は、ドライブギヤ52と同径、かつ出力ギヤ56よりも小径で、第2の回転軸53に一体的に固定されて連結されている。シンクロメッシュ機構S1は、ドリブンギヤ55のドライブギヤ52側に配設され、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とを嵌合する際に回転を同期させる同期機構として作用する。なお、シンクロメッシュ機構S1としては、公知あるいは新規の適宜な機構を適用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0022】
スリーブ57は、内周面に歯面が形成され、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55との外周側に軸方向に移動可能に配設されている。スリーブ57は、不図示の油圧サーボにより駆動されるシフトフォーク58により軸方向に移動駆動されることで、ドライブギヤ52だけに噛合する位置と、ドライブギヤ52及びドリブンギヤ55に跨って両方に噛合する位置とにスライド駆動される。これにより、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とは、解放状態(切離し状態)又は係合状態(駆動連結状態)に切換自在にされる。
【0023】
付勢ばね59は、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とが解放状態になる方向にシフトフォーク58に付勢力を与える。このため、不図示の油圧サーボに係合圧が供給されると、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とを係合状態にするように、油圧サーボが付勢ばね59の付勢力に抗してシフトフォーク58を移動させる。また、油圧サーボの係合圧が排出されると、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とを解放状態にするように、付勢ばね59がシフトフォーク58を移動させる。
【0024】
無段変速機構4は、変速比を連続的に変更可能であり、本実施の形態ではベルト式無段変速機構を採用している。無段変速機構4は、入力軸2に接続されたプライマリプーリ41と、セカンダリプーリ42と、該プライマリプーリ41及び該セカンダリプーリ42に巻回された無端状のベルト43とを備えて構成されている。プライマリプーリ41は、それぞれが対向する円錐状に形成された壁面を有し、入力軸2に対して軸方向移動不能に固定された固定シーブ41aと、入力軸2に対して軸方向移動可能に支持された可動シーブ41bとを有しており、これら固定シーブ41aと可動シーブ41bとによって形成された断面V字状となる溝部によりベルト43を挟持している。
【0025】
同様に、セカンダリプーリ42は、それぞれが対向する円錐状に形成された壁面を有し、中心軸44に対して軸方向移動不能に固定された固定シーブ42aと、中心軸44に対して軸方向移動可能に支持された可動シーブ42bとを有しており、これら固定シーブ42aと可動シーブ42bとによって形成された断面V字状となる溝部によりベルト43を挟持している。これらプライマリプーリ41の固定シーブ41aとセカンダリプーリ42の固定シーブ42aとは、ベルト43に対して軸方向反対側となるように配置されている。
【0026】
また、プライマリプーリ41の可動シーブ41bの背面側には、第1油室としての油圧サーボ45が配置されており、セカンダリプーリ42の可動シーブ42bの背面側には、第2油室としての油圧サーボ46が配置されている。油圧サーボ45には、不図示のプライマリ圧コントロールバルブからプライマリ圧が作動油圧として供給され、油圧サーボ46には、不図示のセカンダリ圧コントロールバルブからセカンダリ圧が作動油圧として供給される。そして、これら油圧サーボ45,46は、各作動油圧が供給されることにより負荷トルクに対応するベルト挟圧力を発生させると共に、変速比を変更又は固定するための挟圧力を発生させるように構成されている。
【0027】
セカンダリプーリ42の中心軸44は、第2のクラッチC2のクラッチドラム47に駆動連結されており、第2のクラッチC2を介して、出力ギヤ部6の出力軸60に接続されている。即ち、第2のクラッチC2は、第2の動力伝達経路A2に介在されている。出力ギヤ部6は、出力軸60と、該出力軸60の一端側に固定されて連結された入力ギヤ61と、該出力軸60の他端側に固定されて連結されたカウンタギヤ62と、を有して構成されており、カウンタギヤ62は、カウンタシャフト部7のドリブンギヤ71に噛合されている。
【0028】
カウンタシャフト部7は、カウンタシャフト70と、該カウンタシャフト70に固定されて連結されたドリブンギヤ71と、カウンタシャフト70に固定されて連結されたドライブギヤ72と、を有して構成されており、ドライブギヤ72は、ディファレンシャル装置8のデフリングギヤ80に噛合されている。
【0029】
ディファレンシャル装置8は、デフリングギヤ80の回転をそれぞれ左右のドライブシャフト81L,81Rにそれらの差回転を吸収しつつ伝達するように構成されており、左右のドライブシャフト81L,81Rは、それぞれ左右の車輪(不図示)に連結されている。なお、デフリングギヤ80がドライブギヤ72に噛合し、ドリブンギヤ71がカウンタギヤ62に噛合していることから、出力ギヤ部6の出力軸60、カウンタシャフト部7のカウンタシャフト70、ディファレンシャル装置8は、左右のドライブシャフト81L,81Rを介して車輪と駆動連結されており、常に車輪に連動していることになる。即ち、出力軸60は、車輪に駆動連結されて出力回転を出力する。
【0030】
一方、機械式オイルポンプ18は、入力軸2に駆動連結され、エンジン16の駆動力により駆動されることで、各種の油圧の元圧を生成して油圧制御装置12に供給可能である。なお、電動オイルポンプ19は、機械式オイルポンプ18とは独立して電動で駆動可能であり、エンジン16の停止時において油圧制御装置12に油圧を供給することが可能である。
【0031】
以上のように構成された自動変速機10は、
図1のスケルトン図に示す第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、噛合式クラッチD1及びブレーキB1が、
図2の係合表に示す組み合わせで係脱されることにより、前進の非無段モード、前進の無段モード、後進の非無段モードが達成される。前進の非無段モードにおいて自動変速機10は、第1のクラッチC1及び噛合式クラッチD1を係合状態にして入力軸2と出力軸60とを第1の動力伝達経路A1により接続して回転伝達する。前進の無段モードにおいて自動変速機10は、第2のクラッチC2を係合状態にして入力軸2と出力軸60とを第2の動力伝達経路A2により接続して回転伝達する。後進の非無段モードにおいて自動変速機10は、噛合式クラッチD1及びブレーキB1を係合状態にして入力軸2と出力軸60とを第1の動力伝達経路A1により接続して回転伝達する。なお、本実施の形態では、前進又は後進の非無段モードは、駆動力を第1の動力伝達経路A1により回転伝達する前進1速段又は後進1速段であるが、これに限らず、多段変速を行うものであってもよい。
【0032】
[油圧制御装置の構成]
つづいて、第1の実施の形態に係る自動変速機10の油圧制御装置12の構成について
図3を用いて説明する。また、本第1の実施の形態に係る油圧制御装置12と対比説明するため、
図5に示す比較例の油圧制御装置についても説明する。
図3は第1の実施の形態に係る油圧制御装置の一部を示す油圧回路図であり、
図5は比較例に係る油圧制御装置の一部を示す油圧回路図である。なお、以下の説明においては、油圧制御装置12の第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、ブレーキB1の係合状態を制御する制御部分について説明し、その他の部分については、既知の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0033】
なお、
図3及び
図5に示されていない他の部分としては、ライン圧PLの背圧に基づきセカンダリ圧を調圧する部分、ライン圧PLを一定圧にしたラインプレッシャモジュレータ圧を調圧する部分、ライン圧PLを一定圧にしたソレノイドプレッシャモジュレータ圧を調圧する部分、等の各種油圧を調圧する部分がある。また、
図3及び
図5に示されていない他の部分としては、上記無段変速機構4におけるプライマリプーリ41の油圧サーボ45に供給する油圧を調圧する部分、上記無段変速機構4におけるセカンダリプーリ42の油圧サーボ46に供給する油圧を調圧する部分、等の無段変速機構4を制御する部分がある。さらに、
図3及び
図5に示されていない他の部分としては、上記ロックアップクラッチLUの係合状態(解放、スリップ、係合のいずれかの状態)を制御する部分、噛合式クラッチD1のスリーブ57の移動駆動を制御する部分、等の部分がある。
【0034】
[比較例の構成]
まず、
図5に示す比較例に係る油圧制御装置について説明する。
図5に示すように、比較例に係る油圧制御装置においては、ソレノイドバルブSC1と、ソレノイドバルブSC12と、レンジ圧切換えバルブ21と、レンジ圧設定切換えバルブ222、振分け切換えバルブ223と、リニアソレノイドバルブSL1と、リニアソレノイドバルブSL2とを備えている。なお、
図5においては、元圧としてオイルポンプが発生する油合に基づきライン圧PLを調圧する元圧生成部としてライン圧調圧部90を簡易的に示している。このライン圧調圧部90は、例えばプライマリレギュレータバルブ等によって構成される。
【0035】
ソレノイドバルブSC1とソレノイドバルブSC12とは、例えばノーマルクローズタイプからなり、ライン圧PLを一定圧の調圧したソレノイドプレッシャモジュレータ圧を入力し、オン制御されると、入力されているソレノイドプレッシャモジュレータ圧を信号圧として出力し、オフ制御されると、入力されているソレノイドプレッシャモジュレータ圧を遮断して信号圧を出力しないように構成されている。
【0036】
レンジ圧切換えバルブ21は、スプール21pと、そのスプール21pを一方に付勢するスプリング21sとを有しており、上記ソレノイドバルブSC1の信号圧PSC1が出力されていない場合はスプリング21sの付勢力によりスプール21pが付勢された位置(図中上位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)となり、入力ポート21bに入力されたライン圧PLを出力ポート21dから油路b1に向けて前進レンジ圧PDとして出力する。また、上記ソレノイドバルブSC1の信号圧PSC1が油路g1を介して作動油室21aに入力されると、スプリング21sの付勢力に抗してスプール21pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となり、入力ポート21bに入力されたライン圧PLを出力ポート21cから油路c1に向けて後進レンジ圧PRとして出力する。
【0037】
レンジ圧設定切換えバルブ222は、スプール222pと、そのスプール222pを一方に付勢するスプリング222sとを有しており、上記ソレノイドバルブSC12の信号圧PSC12が出力されていない場合はスプリング222sの付勢力によりスプール222pが付勢された位置(図中上位置)の状態(前進レンジ圧連通状態)となり、入力ポート222bに入力された前進レンジ圧PDを出力ポート222dから油路t1に向けて出力し、この状態で後進レンジ圧PRが入力ポート222cに入力された場合はそれを遮断する。また、上記ソレノイドバルブSC12の信号圧PSC12が油路v1を介して作動油室222aに入力されると、スプリング222sの付勢力に抗してスプール222pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(後進レンジ圧連通状態)となり、入力ポート222cに入力された後進レンジ圧PRを出力ポート222eから油路u1に向けて出力し、この状態で前進レンジ圧PDが入力ポート222bに入力された場合はそれを遮断する。
【0038】
このように、DレンジとしてソレノイドバルブSC1とソレノイドバルブSC12とが両方ともオフ制御されると、油路t1に前進レンジ圧PDが出力され、RレンジとしてソレノイドバルブSC1とソレノイドバルブSC12とが両方ともオン制御されると、油路u1に後進レンジ圧PRが出力され、Nレンジ或いはPレンジとしてソレノイドバルブSC1とソレノイドバルブSC12との一方がオフ制御で他方がオン制御されると、前進レンジ圧PD及び後進レンジ圧PRが遮断される。従って、ソレノイドバルブSC1とレンジ圧切換えバルブ21とソレノイドバルブSC12とレンジ圧設定切換えバルブ222とにより、従来のように手動で駆動するマニュアルバルブと同等のレンジ設定が可能となる機能が達成されている。
【0039】
次に、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、ブレーキB1の係合を制御する部分について説明する。リニアソレノイドバルブSL1は、詳しくは後述するように前進レンジ圧PDを入力ポートSL1aに入力し、第1のクラッチC1の係合圧を自在に調圧して出力ポートSL1bから出力する。また、リニアソレノイドバルブSL2は、詳しくは後述するように前進レンジ圧PD又は後進レンジ圧PRを入力ポートSL2aに入力し、第2のクラッチC2の係合圧又はブレーキB1の係合圧を自在に調圧して出力ポートSL2bから出力する。
【0040】
振分け切換えバルブ223は、リニアソレノイドバルブSL2により調圧される第2のクラッチC2の係合圧とブレーキB1の係合圧とを振分けるバルブである。この振分け切換えバルブ223は、スプール223pと、そのスプール223pを一方に付勢するスプリング223sとを有しており、上記前進レンジ圧PDが油路t4に出力されていない場合はスプリング223sの付勢力によりスプール223pが付勢された位置(図中上位置)でリニアソレノイドバルブSL2の係合圧を第2のクラッチC2に供給する状態となり、上記前進レンジ圧PDが油路t4に出力された場合はスプリング223sの付勢力に抗してスプール223pが切換えられた位置(図中下位置)でリニアソレノイドバルブSL2の係合圧をブレーキB1に供給する状態となる。
【0041】
上記DレンジとしてソレノイドバルブSC1とソレノイドバルブSC12とが両方ともオフ制御され、レンジ圧設定切換えバルブ222から油路t1に前進レンジ圧PDが出力されると、油路t3,t5を介してリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aに入力され、リニアソレノイドバルブSL1により第1のクラッチC1の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL1bから油路e2を介して第1のクラッチC1の油圧サーボ91に供給される。これにより、第1のクラッチC1の係合状態がリニアソレノイドバルブSL1の係合圧に基づき自在に制御される。
【0042】
また、油路t1に前進レンジ圧PDが出力された場合、油路t4を介して振分け切換えバルブ223の作動油室223aに入力され、振分け切換えバルブ223は、スプール223pが切換えられた位置(図中下位置)となる。すると、油路t2を介して振分け切換えバルブ223の入力ポート223cに入力される前進レンジ圧PDが出力ポート223fから油路d1に出力され、リニアソレノイドバルブSL2の入力ポートSL2aに入力される。すると、リニアソレノイドバルブSL2により第2のクラッチC2の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL2bから油路d2を介して振分け切換えバルブ223の入力ポート223dに入力され、さらに、出力ポート223gから油路f1に出力され、第2のクラッチC2の油圧サーボ92に供給される。これにより、第2のクラッチC2の係合状態がリニアソレノイドバルブSL2の係合圧に基づき自在に制御される。
【0043】
一方、油路u1に後進レンジ圧PRが出力された場合、振分け切換えバルブ223は、スプリング223sの付勢力によりスプール223pが付勢された位置(図中上位置)となる。すると、油路u1を介して振分け切換えバルブ223の入力ポート223bに入力される後進レンジ圧PRが出力ポート223fから油路d1に出力され、リニアソレノイドバルブSL2の入力ポートSL2aに入力される。すると、リニアソレノイドバルブSL2によりブレーキB1の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL2bから油路d2を介して振分け切換えバルブ223の入力ポート223dに入力され、さらに、出力ポート223hから油路f2に出力され、ブレーキB1の油圧サーボ93に供給される。これにより、ブレーキB1の係合状態がリニアソレノイドバルブSL2の係合圧に基づき自在に制御される。
【0044】
なお、上記のようにNレンジ又はPレンジとしてレンジ圧設定切換えバルブ222から前進レンジ圧PD及び後進レンジ圧PRが出力されない場合、リニアソレノイドバルブSL1とリニアソレノイドバルブSL2とに油圧が供給されないため、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、ブレーキB1が係合されることはなく、自動変速機10は動力伝達を行わないニュートラル状態となる。
【0045】
以上のように比較例の油圧制御装置では、Dレンジで第1のクラッチC1及び第2のクラッチC2を、RレンジでブレーキB1を係合制御することができる。しかしながら、例えば他のレンジからDレンジに切換えられた場合において、例えばソレノイドバルブSC1がオン制御からオフ制御に切換えられ、レンジ圧切換えバルブ21を切換えて前進レンジ圧PDを油路b1に出力してから、その前進レンジ圧PDをレンジ圧設定切換えバルブ222を介して振分け切換えバルブ223の作動油室223aに入力し、前進レンジ圧PDが振分け切換えバルブ223を切換えるために圧力変化する可能性があるため、振分け切換えバルブ223を切換えてから、第1のクラッチC1の係合制御を開始することになる。従って、例えば運転者がシフトレバーをDレンジに選択操作してから、実際に自動変速機10がDレンジとして前進走行を可能になるまでの応答性として良好ではなく、運転者に違和感を与える虞がある。これは、例えば他のレンジからRレンジに切換えられた場合においても同様である。また、応答性を良好にするため、振分け切換えバルブ223を切換える信号圧を出力するためのソレノイドバルブを設けることも考えられるが、ソレノイドバルブの本数が増えてコストダウンの妨げになる。そこで、これらの課題を解決する構成として、以下に第1の実施の形態を説明する。
【0046】
[第1の実施の形態に係る油圧制御装置]
続いて、
図3に示す第1の実施の形態に係る油圧制御装置について説明する。
図3に示すように、本第1の実施の形態に係る油圧制御装置12においては、第1信号圧出力部としてのソレノイドバルブSC1と、第2信号圧出力部としてのソレノイドバルブSC3と、上流切換え部としてのレンジ圧切換えバルブ21と、下流切換え部としての振分け切換えバルブ23と、リニアソレノイドバルブSL1と、係合圧調圧部としてのリニアソレノイドバルブSL2とを備えている。なお、
図3においても同様に、元圧としてオイルポンプが発生する油合に基づきライン圧PLを調圧する元圧生成部としてライン圧調圧部90を簡易的に示している。このライン圧調圧部90は、例えばプライマリレギュレータバルブ等によって構成される。また、レンジ圧切換えバルブ21はライン圧調圧部90に対して振分け切換えバルブ23よりも上流に配置され、反対に、振分け切換えバルブ23はライン圧調圧部90に対してレンジ圧切換えバルブ21よりも下流に配置されている。
【0047】
ソレノイドバルブSC1とソレノイドバルブSC3とは、例えばノーマルクローズタイプからなり、ライン圧PLを一定圧以下となるように調圧したソレノイドプレッシャモジュレータ圧を入力し、オン制御されると、入力されているソレノイドプレッシャモジュレータ圧を信号圧(それぞれ第1信号圧、第2信号圧)として出力し、オフ制御されると、入力されているソレノイドプレッシャモジュレータ圧を遮断して信号圧を出力しないように構成されている。
【0048】
リニアソレノイドバルブSL1は、詳しくは後述するように油路e1を介して前進レンジ圧PDを入力ポートSL1aに入力し、第5係合要素としての第1のクラッチC1の係合圧を自在に調圧して出力ポートSL1bから油路e2を介して油圧サーボ91(第5油圧サーボ)に出力する。また、リニアソレノイドバルブSL2は、詳しくは後述するように油路d1を介して前進レンジ圧PD又は後進レンジ圧PRを入力ポートSL2aに入力し、第1係合要素としての第2のクラッチC2の係合圧又は第2係合要素としてのブレーキB1の係合圧を自在に調圧して出力ポートSL2bから油路d2を介して油圧サーボ92(第1油圧サーボ)又は油圧サーボ93(第2油圧サーボ)に出力する。
【0049】
レンジ圧切換えバルブ21は、スプール21pと、そのスプール21pを一方に付勢するスプリング21sとを有しており、上記ソレノイドバルブSC1の信号圧PSC1(第1信号圧)が出力されていない場合はスプリング21sの付勢力によりスプール21pが付勢された位置(図中上位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)となり、また、上記ソレノイドバルブSC1の信号圧PSC1(第1信号圧)が油路g1を介して作動油室21aに入力されると、スプリング21sの付勢力に抗してスプール21pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となる。
【0050】
振分け切換えバルブ23は、リニアソレノイドバルブSL2により調圧される第2のクラッチC2の係合圧とブレーキB1の係合圧とを振分けるバルブである。この振分け切換えバルブ23は、スプール23pと、そのスプール23pを一方に付勢するスプリング23sとを有しており、上記ソレノイドバルブSC3の信号圧PSC3(第2信号圧)が出力されていない場合はスプリング23sの付勢力によりスプール23pが付勢された位置(図中上位置)の状態(後進状態)となり、また、上記ソレノイドバルブSC3の信号圧PSC3(第2信号圧)が油路h1を介して作動油室23aに入力されると、スプリング23sの付勢力に抗してスプール23pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(前進状態)となる。
【0051】
(Dレンジの状態)
例えば運転者がシフトレバーによりDレンジを選択すると、ソレノイドバルブSC1がオフ制御され、ソレノイドバルブSC3がオン制御される。すると、レンジ圧切換えバルブ21は、スプリング21sの付勢力によりスプール21pが付勢された位置(図中上位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)となり、入力ポート21bに入力されたライン圧PL(元圧)を出力ポート21dから油路b1に向けて前進レンジ圧PDとして出力し、油路b2を介して振分け切換えバルブ23の入力ポート23eに前進レンジ圧PDが入力されると共に、油路b3を介して振分け切換えバルブ23の入力ポート23cにも前進レンジ圧PDが入力される。
【0052】
振分け切換えバルブ23は、ソレノイドバルブSC3の信号圧PSC3によりスプール23pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(前進状態)となるので、入力ポート23eに入力された前進レンジ圧PDを、出力ポート23iから油路e1を介してリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aに入力し、リニアソレノイドバルブSL1により第1のクラッチC1の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL1bから油路e2を介して第1のクラッチC1の油圧サーボ91に供給される。これにより、第1のクラッチC1の係合状態がリニアソレノイドバルブSL1の係合圧に基づき自在に制御される。従って、自動変速機10は、上述したように前進の非無段モードでの走行が可能となる。
【0053】
また、振分け切換えバルブ23は、ソレノイドバルブSC3の信号圧PSC3によりスプール23pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(前進状態)であるので、入力ポート23cに入力された前進レンジ圧PDを、出力ポート23fから油路d1を介してリニアソレノイドバルブSL2の入力ポートSL2aに入力し、リニアソレノイドバルブSL2により第2のクラッチC2の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL2bから油路d2を介して振分け切換えバルブ23の入力ポート23dに入力され、さらに、出力ポート23gから油路f1を介して第2のクラッチC2の油圧サーボ92に供給される。これにより、第2のクラッチC2の係合状態がリニアソレノイドバルブSL2の係合圧に基づき自在に制御される。従って、自動変速機10は、上述したように前進の無段モードでの走行が可能となる。
【0054】
なお、このDレンジの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ21においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール21pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となっていたとしても、後進レンジ圧PRが出力ポート21cから油路c1に出力されるが、振分け切換えバルブ23の入力ポート23bが遮断されており、後進レンジ圧PRがリニアソレノイドバルブSL2に供給されることはなく、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0055】
また、このDレンジの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ21においてスプリング21sの付勢力によりスプール21pが付勢された位置(図中上位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)で、振分け切換えバルブ23においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール23pがスプリング23sに付勢された位置(図中上位置)の状態(後進状態)となっていたとしても、振分け切換えバルブ23の入力ポート23c及び入力ポート23eが遮断され、前進レンジ圧PDがリニアソレノイドバルブSL1及びリニアソレノイドバルブSL2に供給されることがなくなるだけで、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0056】
(Rレンジの状態)
例えば運転者がシフトレバーによりRレンジを選択すると、ソレノイドバルブSC1がオン制御され、ソレノイドバルブSC3がオフ制御される。すると、レンジ圧切換えバルブ21は、ソレノイドバルブSC1の信号圧PSC1によりスプール21pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となり、入力ポート21bに入力されたライン圧PL(元圧)を出力ポート21cから油路c1に向けて後進レンジ圧PRとして出力し、油路c1を介して振分け切換えバルブ23の入力ポート23bに後進レンジ圧PRが入力される。
【0057】
振分け切換えバルブ23は、スプール23pがスプリング23sに付勢された位置(図中上位置)の状態(後進状態)となるので、入力ポート23bに入力された後進レンジ圧PRを、出力ポート23fから油路d1を介してリニアソレノイドバルブSL2の入力ポートSL2aに入力し、リニアソレノイドバルブSL2によりブレーキB1の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL2bから油路d2を介して振分け切換えバルブ23の入力ポート23dに入力され、さらに、出力ポート23hから油路f2を介してブレーキB1の油圧サーボ93に供給される。これにより、ブレーキB1の係合状態がリニアソレノイドバルブSL2の係合圧に基づき自在に制御される。従って、自動変速機10は、上述したように後進の非無段モードでの走行が可能となる。
【0058】
なお、このRレンジの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ21においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール21pがスプリング21sに付勢された位置(図中上位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)となると、前進レンジ圧PDが出力ポート21dから油路b1に出力されるが、振分け切換えバルブ23の入力ポート23c及び入力ポート23eが遮断されており、前進レンジ圧PDがリニアソレノイドバルブSL1及びリニアソレノイドバルブSL2に供給されることはなく、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0059】
また、このRレンジの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ21においてスプール21pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)で、振分け切換えバルブ23においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール23pが切換えられた位置(図中下位置)の状態(前進状態)となっていたとしても、振分け切換えバルブ23の入力ポート23bが遮断され、後進レンジ圧PRがリニアソレノイドバルブSL2に供給されることがなくなるだけで、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0060】
(Nレンジ又はPレンジ)
例えば運転者がシフトレバーによりNレンジ又はPレンジを選択すると、ソレノイドバルブSC1及びソレノイドバルブSC3が両方ともオフ制御される。この場合、レンジ圧切換えバルブ21においてスプール21pがスプリング21sに付勢された位置(図中上位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)となり、振分け切換えバルブ23においてスプール23pがスプリング23sに付勢された位置(図中上位置)の状態(後進状態)となる。従って、前進レンジ圧PDは、振分け切換えバルブ23の入力ポート23c及び入力ポート23eで遮断され、前進レンジ圧PDがリニアソレノイドバルブSL1及びリニアソレノイドバルブSL2に供給されることはなく、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、ブレーキB1が係合されることはなく、自動変速機10は動力伝達を行わないニュートラル状態となる。
【0061】
[第1の実施の形態のまとめ]
以上説明したように、ソレノイドバルブSC1、レンジ圧切換えバルブ21、ソレノイドバルブSC3、振分け切換えバルブ23によって、Dレンジ、Rレンジ、Nレンジ又はPレンジをそれぞれ形成することができ、従来のように手動で駆動するマニュアルバルブと同等のレンジ設定が可能となる機能が達成されている。従って、他のレンジからDレンジに切換えられた場合に、2本の切換えバルブの切換えをそれぞれ2本のソレノイドバルブで切換えるので、上記比較例で説明したように3本の切換えバルブの切換えを行うものよりも、応答性を良好にすることができる。また、信号圧を出力するソレノイドバルブを2本にすることができるので、コストダウンも図ることができる。要するに、本第1の実施の形態に係る油圧制御装置によれば、従来のマニュアルバルブと同様の機能を達成し、かつ第2のクラッチC2とブレーキB1の係合圧を1本のリニアソレノイドバルブSL2で振り分けて供給することができる機能を達成するものであって、コストダウンを図ることができるものでありながら、応答性も良好にすることができる。
【0062】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について
図4を用いて説明する。上記第1の実施の形態においては、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、ブレーキB1の3つの係合要素を油圧制御するものを説明したが、本第2の実施の形態に係る自動変速機10の油圧制御装置12においては、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、ブレーキB1、噛合式クラッチD1、ロックアップクラッチLUの5つの係合要素を油圧制御するものである。
【0063】
詳細には、
図4に示すように、油圧制御装置12においては、ラインプレッシャモジュレータバルブ124と、第1信号圧出力部としてのソレノイドバルブSC1と、第3信号圧出力部としてのソレノイドバルブSC2と、第2信号圧出力部としてのソレノイドバルブSC3と、上流切換え部或いは第1切換えバルブとしてのレンジ圧切換えバルブ121と、下流切換え部或いは第3切換えバルブとしての第1振分け切換えバルブ122と、下流切換え部或いは第2切換えバルブとしての第2振分け切換えバルブ123と、係合圧調圧部或いは第1調圧ソレノイドバルブとしてのリニアソレノイドバルブSL1と、リニアソレノイドバルブSL2と、係合圧調圧部或いは第2調圧ソレノイドバルブとしてのリニアソレノイドバルブSLUと、を備えている。
【0064】
なお、
図4においては、元圧としてオイルポンプが発生する油合に基づきライン圧PLを調圧するライン圧調圧部90を簡易的に示している。このライン圧調圧部90は、例えばプライマリレギュレータバルブ等によって構成される。また、本第2の実施の形態においては、ライン圧調圧部90と後述のラインプレッシャモジュレータバルブ124とによって元圧生成部を構成する。また、レンジ圧切換えバルブ121はライン圧調圧部90及びラインプレッシャモジュレータバルブ124に対して第1振分け切換えバルブ122及び第2振分け切換えバルブ123よりも上流に配置され、反対に、第1振分け切換えバルブ122及び第2振分け切換えバルブ123はライン圧調圧部90及びラインプレッシャモジュレータバルブ124に対してレンジ圧切換えバルブ121よりも下流に配置されている。
【0065】
ラインプレッシャモジュレータバルブ124は、スプール124pと、そのスプール124pを一方に付勢するスプリング124sとを有しており、入力ポート124bに入力されたライン圧PLを出力ポート124cから油路j1,j2,j3に出力すると共に油路j3の油圧をフィードバック油室124aに入力してスプリング124sの付勢力に抗してフィードバックすることで、一定圧以下のラインプレッシャモジュレータ圧PLmodに調圧する。
【0066】
ソレノイドバルブSC1とソレノイドバルブSC2とソレノイドバルブSC3とは、例えばノーマルクローズタイプからなり、ライン圧PLを一定圧以下となるように調圧したソレノイドモジュレータ圧PSLmodを入力し、オン制御されると、入力されているソレノイドモジュレータ圧PSLmodを信号圧として出力し、オフ制御されると、入力されているソレノイドモジュレータ圧PSLmodを遮断して信号圧を出力しないように構成されている。
【0067】
リニアソレノイドバルブSL1は、詳しくは後述するように油路m1を介して前進レンジ圧PD又はラインプレッシャモジュレータ圧PLmodを入力ポートSL1aに入力し、第1係合要素としての第1のクラッチC1の係合圧又は第3係合要素としての噛合式クラッチD1の係合圧を自在に調圧して出力ポートSL1bから油路m2を介して油圧サーボ91(第1油圧サーボ)又は油圧サーボ94(第3油圧サーボ)に出力する。また、リニアソレノイドバルブSL2は、詳しくは後述するように油路p1を介して前進レンジ圧PDを入力ポートSL2aに入力し、第5係合要素としての第2のクラッチC2の係合圧を自在に調圧して出力ポートSL2bから油路p2を介して油圧サーボ92(第5油圧サーボ)に出力する。また、リニアソレノイドバルブSLUは、詳しくは後述するように油路q1を介して後進レンジ圧PR又はソレノイドモジュレータ圧PSLmodを入力ポートSLUaに入力し、第2係合要素としてのブレーキB1の係合圧又は第4係合要素としてのロックアップクラッチLUの係合圧を自在に調圧して出力ポートSLUbから油路q2を介して油圧サーボ93(第2油圧サーボ)又は油圧サーボ95(第4油圧サーボ)に出力する。
【0068】
レンジ圧切換えバルブ121は、スプール121pと、そのスプール121pを一方に付勢するスプリング121sとを有しており、上記ソレノイドバルブSC1の信号圧PSC1(第1信号圧)が出力されていない場合はスプリング121sの付勢力によりスプール121pが付勢された位置(図中左半位置、第1前進レンジ圧出力位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)となり、また、上記ソレノイドバルブSC1の信号圧PSC1(第1信号圧)が油路x1を介して作動油室121aに入力されると、スプリング121sの付勢力に抗してスプール121pが切換えられた位置(図中右半位置、後進レンジ圧出力位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となる。
【0069】
第1振分け切換えバルブ122は、後述のリニアソレノイドバルブSL1により調圧される第1のクラッチC1の係合圧と噛合式クラッチD1の係合圧とを振分けるバルブである。この第1振分け切換えバルブ122は、スプール122pと、そのスプール122pを一方に付勢するスプリング122sとを有しており、上記ソレノイドバルブSC2の信号圧PSC2(第3信号圧)が出力されていない場合はスプリング122sの付勢力によりスプール122pが付勢された位置(図中左半位置、第3位位置)となり、また、上記ソレノイドバルブSC3の信号圧PSC3(第3信号圧)が油路y1を介して作動油室122aに入力されると、スプリング122sの付勢力に抗してスプール122pが切換えられた位置(図中右半位置、第4位置)となる。
【0070】
第2振分け切換えバルブ123は、後述のリニアソレノイドバルブSLUにより調圧されるブレーキB1の係合圧とロックアップクラッチLUの係合圧とを振分けるバルブである。この第2振分け切換えバルブ123は、スプール123pと、そのスプール123pを一方に付勢するスプリング123sとを有しており、上記ソレノイドバルブSC3の信号圧PSC3(第2信号圧)が出力されていない場合はスプリング123sの付勢力によりスプール123pが付勢された位置(図中左半位置、第1位置)となり、また、上記ソレノイドバルブSC3の信号圧PSC3(第2信号圧)が油路z1を介して作動油室123aに入力されると、スプリング123sの付勢力に抗してスプール123pが切換えられた位置(図中右半位置、第2位置)となる。
【0071】
(前進の非無段モードの状態)
例えば運転者がシフトレバーによりDレンジを選択し、不図示の制御部が車速やアクセル開度(要求駆動力)に応じて前進の非無段モードを判断すると(
図1、
図2参照)、ソレノイドバルブSC1がオフ制御され、ソレノイドバルブSC2がオン制御され、ソレノイドバルブSC3がオフ制御される。すると、レンジ圧切換えバルブ121は、スプリング121sの付勢力によりスプール121pが付勢された位置(図中左半位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)となり、入力ポート121bに入力されたラインプレッシャモジュレータ圧PLmod(元圧)を出力ポート121dから油路k1に向けて前進レンジ圧PDとして出力し、油路k2を介して第2振分け切換えバルブ123の入力ポート123bに前進レンジ圧PDが入力されると共に、油路k3を介して第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122eにも前進レンジ圧PDが入力される。
【0072】
第2振分け切換えバルブ123は、スプリング123sの付勢力によりスプール123pが付勢された位置(図中左半位置、第2位置)の状態(前進状態)となるので、入力ポート123bに入力された前進レンジ圧PDを、出力ポート123gから油路k4,k6を介して第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122dに供給する。また、この際、第2振分け切換えバルブ123は、油路k4,k5を介して作動油室123eに前進レンジ圧PDを入力し、例えばソレノイドバルブSC1の信号圧PSC3が出力されて作動油室123aに入力されたとしても作動油室123eの前進レンジ圧PDで相殺し、つまりスプール123pが付勢された位置(図中左半位置)にロックする。
【0073】
また、スプール123pが付勢された位置(図中左半位置)にある第2振分け切換えバルブ123は、入力ポート123cに入力されるソレノイドモジュレータ圧PSLmodを出力ポート123jから油路q1を介してリニアソレノイドバルブSLUの入力ポートSLUaに入力し、リニアソレノイドバルブSLUによりロックアップクラッチLUの係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSLUbから油路q2を介して入力ポート123fに入力され、さらに出力ポート123iから油路s1を介してロックアップクラッチLUの油圧サーボ95に供給される。これにより、ロックアップクラッチLUの係合状態がリニアソレノイドバルブSLUの係合圧に基づき自在に制御される。従って、自動変速機10は、前進走行におけるトルクコンバータ17のロックアップが走行状態に応じて自在に可能となる。
【0074】
一方、第1振分け切換えバルブ122は、ソレノイドバルブSC2の信号圧PSC2によりスプール122pが切換えられた位置(図中右半位置、第3位置)の状態となるので、上記第2振分け切換えバルブ123から入力ポート122dに入力された前進レンジ圧PDを、出力ポート122jから油路m1を介してリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aに入力し、リニアソレノイドバルブSL1により第1のクラッチC1の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL1bから油路m2を介して入力ポート122fに入力され、さらに出力ポート122hから油路n1を介して第1のクラッチC1の油圧サーボ91に供給される。また、油路j3を介して入力ポート122cに入力されるライン圧PLが、出力ポート122iから油路o1を介して噛合式クラッチD1の油圧サーボ94に供給される。従って、自動変速機10は、上述したように前進の非無段モードでの走行が可能となる。
【0075】
なお、第1振分け切換えバルブ122は、ソレノイドバルブSC2の信号圧PSC2によりスプール122pが切換えられた位置(図中右半位置、第3位置)の状態となるので、油路k3を介して入力ポート122eに入力されている前進レンジ圧PDを出力ポート122kから油路p1を介してリニアソレノイドバルブSL2の入力ポートSL2aに入力し、リニアソレノイドバルブSL2により第2のクラッチC2の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL2bから油路p2を介して第2のクラッチC2の油圧サーボ92に供給することが可能となる。従って、この前進の非無段モードから後述する前進の無段モードに移行する際に、第1のクラッチC1と同時に第2のクラッチC2を係合することが可能となっている。
【0076】
また、このDレンジにおける前進の非無段モードの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ121においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール121pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となると、後進レンジ圧PRが出力ポート121cから油路l1に出力されるが、第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122bが遮断されており、後進レンジ圧PRが第2振分け切換えバルブ123及びリニアソレノイドバルブSLUに供給されることはなく、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0077】
また、このDレンジにおける前進の非無段モードの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ121においてスプリング121sの付勢力によりスプール121pが付勢された位置(図中左半位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)で、第2振分け切換えバルブ123においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール123pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態(後進状態)となっていたとしても、前進レンジ圧PDが入力される第2振分け切換えバルブ123の入力ポート123bが遮断され、第1振分け切換えバルブ122に供給されることがなくなるだけで、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0078】
また、このDレンジにおける前進の非無段モードの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ121においてスプリング121sの付勢力によりスプール121pが付勢された位置(図中左半位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)で、第2振分け切換えバルブ123においてスプール123pがスプリング123sにより付勢された位置(図中左半位置)の状態(前進状態)で、第1振分け切換えバルブ122においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール122pがスプリング122sで付勢された位置(図中左半位置)の状態となっていたとしても、後述する前進の無段モードの状態となり、前進の無段モードによる走行が可能となる。
【0079】
(前進の無段モードの状態)
例えば運転者がシフトレバーによりDレンジを選択し、不図示の制御部が車速やアクセル開度(要求駆動力)に応じて前進の非無段モードから前進の無段モードへの切換えを判断すると(
図1、
図2参照)、ソレノイドバルブSC1がオフ制御され、ソレノイドバルブSC3がオフ制御された状態で、上述したようにリニアソレノイドバルブSL2の係合圧を第2のクラッチC2の油圧サーボ92に供給した状態としてから、ソレノイドバルブSC2がオン制御からオフ制御に切換えられる。
【0080】
すると、第1振分け切換えバルブ122は、スプリング122sの付勢力によりスプール122pが付勢された位置(図中左半位置、第4位置)の状態となるので、入力ポート122cに入力されたライン圧PLを、出力ポート122jから油路m1を介してリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aに入力し、リニアソレノイドバルブSL1により噛合式クラッチD1の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL1bから油路m2を介して入力ポート122fに入力され、さらに出力ポート122iから油路o1を介して噛合式クラッチD1の油圧サーボ94に供給される。これにより、噛合式クラッチD1は係合されている状態に維持される。なお、前進の無段モードでは噛合式クラッチD1の係合を維持する必要は無いので、係合圧を低下させることで解放(噛合が解除)された状態となるようにしても構わない。
【0081】
また、上記第2振分け切換えバルブ123から入力ポート122dに入力された前進レンジ圧PDは、出力ポート122jから油路p1を介してリニアソレノイドバルブSL2の入力ポートSL2aに入力され、引き続きリニアソレノイドバルブSL2により第2のクラッチC2の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL2bから油路p2を介して第2のクラッチC2の油圧サーボ92に供給される。従って、自動変速機10は、上述したように前進の無段モードでの走行が可能となる。
【0082】
なお、このDレンジにおける前進の無段モードの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ121においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール121pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となると、後進レンジ圧PRが出力ポート121cから油路l1に出力され、第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122bから出力ポート122gに出力され、油路l2を介して第2振分け切換えバルブ123の入力ポート123dに入力されるが、その入力ポート123dが遮断されており、後進レンジ圧PRがリニアソレノイドバルブSLUに供給されることはなく、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0083】
また、このDレンジにおける前進の無段モードの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ121においてスプリング121sの付勢力によりスプール121pが付勢された位置(図中左半位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)で、第2振分け切換えバルブ123においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール123pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態(後進状態)となっていたとしても、前進レンジ圧PDが入力される第2振分け切換えバルブ123の入力ポート123bが遮断され、第1振分け切換えバルブ122に供給されることがなくなるだけで、前進の無段モードの状態が維持される。
【0084】
また、このDレンジにおける前進の非無段モードの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ121においてスプリング121sの付勢力によりスプール121pが付勢された位置(図中左半位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)で、第2振分け切換えバルブ123においてスプール123pがスプリング123sにより付勢された位置(図中左半位置)の状態(前進状態)で、第1振分け切換えバルブ122においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール122pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態となっていたとしても、前進の非無段モードの状態となり、前進の非無段モードによる走行が可能となる。なお、この場合に車速が高車速であれば、リニアソレノイドバルブSL1によって係合圧を低下させ、第1のクラッチC1を解放し、ニュートラル状態とすることも可能である。
【0085】
(Rレンジの状態)
例えば運転者がシフトレバーによりRレンジを選択すると、ソレノイドバルブSC1がオン制御され、ソレノイドバルブSC2がオフ制御され、ソレノイドバルブSC3がオン制御される。すると、レンジ圧切換えバルブ121は、ソレノイドバルブSC1の信号圧PSC1によりスプール121pが切換えられた位置(図中右半位置、後進レンジ圧出力位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となり、入力ポート121bに入力されたラインプレッシャモジュレータ圧PLmod(元圧)を出力ポート121cから油路l1に向けて後進レンジ圧PRとして出力し、油路l1を介して第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122bに後進レンジ圧PRが入力される。
【0086】
第1振分け切換えバルブ122は、スプリング122sの付勢力によりスプール122pが付勢された位置(図中左半位置、第4位置)の状態となるので、入力ポート122bに入力された後進レンジ圧PRを、出力ポート122gから油路l2を介して第2振分け切換えバルブ123の入力ポート123dに入力する。また、入力ポート122cに入力されたライン圧PLを、出力ポート122jから油路m1を介してリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aに入力し、リニアソレノイドバルブSL1により噛合式クラッチD1の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSL1bから油路m2を介して入力ポート122fに入力され、さらに出力ポート122iから油路o1を介して噛合式クラッチD1の油圧サーボ94に供給され、噛合式クラッチD1が係合される。
【0087】
一方、第2振分け切換えバルブ123は、ソレノイドバルブSC3の信号圧PSC3によりスプール123pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態(後進状態)となるので、入力ポート123dに入力された後進レンジ圧PRを、出力ポート123jから油路q1を介してリニアソレノイドバルブSLUの入力ポートSLUaに入力し、リニアソレノイドバルブSLUによりブレーキB1の係合圧が調圧され、その係合圧は出力ポートSLUbから油路q2を介して第2振分け切換えバルブ123の入力ポート123fに入力され、さらに、出力ポート123hから油路r1を介してブレーキB1の油圧サーボ93に供給される。これにより、ブレーキB1の係合状態がリニアソレノイドバルブSLUの係合圧に基づき自在に制御される。従って、自動変速機10は、上述したように後進の非無段モードでの走行が可能となる。
【0088】
なお、このRレンジの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ121においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール121pがスプリング121sに付勢された位置(図中左半位置)の状態(前進レンジ圧出力状態)となると、前進レンジ圧PDが出力ポート121dから油路k1,k2に出力されるが、第2振分け切換えバルブ123の入力ポート123b及び第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122eが遮断されており、前進レンジ圧PDがリニアソレノイドバルブSL1及びリニアソレノイドバルブSL2に供給されることはなく、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0089】
また、このRレンジの状態として制御している場合にあって、レンジ圧切換えバルブ121においてスプール121pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)で、第1振分け切換えバルブ122においてバルブスティック等の異常が生じ、スプール122pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態(前進状態)となっていたとしても、第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122bが遮断され、後進レンジ圧PRが第2振分け切換えバルブ123及びリニアソレノイドバルブSLUに供給されることがなくなるだけで、つまりNレンジ(Pレンジ)と同じ状態となる。
【0090】
(Nレンジ又はPレンジ)
例えば運転者がシフトレバーによりNレンジ又はPレンジを選択すると、ソレノイドバルブSC1がオン制御され、ソレノイドバルブSC2がオン制御され、ソレノイドバルブSC3がオフ制御される。この場合、レンジ圧切換えバルブ121においてスプール121pが切換えられた位置(図中右半位置)の状態(後進レンジ圧出力状態)となり、第1振分け切換えバルブ122においてスプール122pが切換えられた位置(図中右半位置、第3位置)の状態となり、第2振分け切換えバルブ123においてスプール123pがスプリング123sに付勢された位置(図中左半位置、前進位置)の状態となる。従って、後進レンジ圧PRは、第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122bで遮断され、後進レンジ圧PRがリニアソレノイドバルブSLUに供給されることはない。なお、第2振分け切換えバルブ123の入力ポート123cに入力されるソレノイドモジュレータ圧PSLmodがリニアソレノイドバルブSLUに供給され、ロックアップクラッチLUに供給可能な状態となるが、リニアソレノイドバルブSLUにより係合圧を低下させることでロックアップクラッチLUを解放することが可能である。また、第1振分け切換えバルブ122の入力ポート122cに入力されるラインプレッシャモジュレータ圧PLmodが噛合式クラッチD1の油圧サーボ94に供給され、噛合式クラッチD1が係合されても、第1のクラッチC1及びブレーキB1が解放されているので、動力伝達を行うことはない。従って、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、ブレーキB1が係合されることはなく、自動変速機10は動力伝達を行わないニュートラル状態となる。
【0091】
[第2の実施の形態のまとめ]
以上説明したように、ソレノイドバルブSC1、レンジ圧切換えバルブ121、ソレノイドバルブSC2、第1振分け切換えバルブ122、ソレノイドバルブSC3、第2振分け切換えバルブ123によって、Dレンジ、Rレンジ、Nレンジ又はPレンジをそれぞれ形成することができ、従来のように手動で駆動するマニュアルバルブと同等のレンジ設定が可能となる機能が達成されている。
【0092】
また、第2の実施の形態に係る油圧制御装置12と同等の機能を従来のように構成すると、リニアソレノイドバルブSL1により調圧する第1のクラッチC1と噛合式クラッチD1との係合圧を振分ける切換えバルブ、リニアソレノイドバルブSLUにより調圧するブレーキB1とロックアップクラッチLUとの係合圧を振分ける切換えバルブ、のように2本の振分け切換えバルブと、比較例(
図5参照)のようにレンジ圧を設定するための、レンジ圧切換えバルブ、レンジ圧設定切換えバルブ、のように2本の切換えバルブと、を必要とし、これらの切換えバルブの切換えの応答性を考慮して、4本のソレノイドバルブを設けることになる。
【0093】
しかしながら、上記第2の実施の形態に係る油圧制御装置12では、他のレンジからDレンジに切換えられた場合に、3本の切換えバルブの切換えをそれぞれ3本のソレノイドバルブで切換えるので、上記のように4本の切換えバルブの切換えを行うものよりも、応答性を良好にすることができる。また、信号圧を出力するソレノイドバルブを3本にすることができるので、コストダウンも図ることができる。要するに、本第2の実施の形態に係る油圧制御装置によれば、従来のマニュアルバルブと同様の機能を達成し、かつ第1のクラッチC1と、噛合式クラッチD1と、ブレーキB1と、ロックアップクラッチLUとの係合圧を2本のリニアソレノイドバルブSL1及びリニアソレノイドバルブSLUで振り分けて供給することができる機能を達成するものであって、コストダウンを図ることができるものでありながら、応答性も良好にすることができる。
【0094】
<別の実施の形態の可能性>
以上説明した本第1及び第2の実施の形態においては、ベルト式の無段変速機構4を備える自動変速機10を一例として説明したが、これに限らず、有段式の変速機構を備える自動変速機やハイブリッド駆動装置、モータ・ジェネレータだけを駆動源として変速機構でその回転を変速する電気自動車用駆動装置など、どのような車両用駆動装置でも構わない。
【0095】
また、上記第1の実施の形態においては3つの係合要素を油圧制御するものを説明したが、噛合式クラッチD1やロックアップクラッチLUの油圧制御の説明を省略したものであり、第1の実施の形態でも同様に5つの係合要素を油圧制御するものである。また、上記第2の実施の形態においては5つの係合要素を油圧制御するものを説明したが、これに限らず、さらに多くの係合要素を油圧制御する場合には、他のリニアソレノイドバルブや下流側切換え部として他の振分け切換えバルブを設けることで対応することも可能である。
【符号の説明】
【0096】
10A…入力部材(入力軸)
3…前後進切換え部(前後進切換え装置)
4…第2変速部(無段変速機構)
5…第1変速部(減速ギヤ機構)
10…車両用駆動装置(自動変速機)
10T…変速機構
12…油圧制御装置
21…上流切換え部(レンジ圧切換えバルブ)
23…下流切換え部、第1切換えバルブ(振分け切換えバルブ)
60…出力部材(出力軸)
90…元圧生成部(ライン圧調圧部)
図3の91、
図4の92…第5油圧サーボ(油圧サーボ)
図3の92、
図4の91…第1油圧サーボ(油圧サーボ)
93…第2油圧サーボ(油圧サーボ)
94…第3油圧サーボ(油圧サーボ)
95…第4油圧サーボ(油圧サーボ)
121…上流切換え部(レンジ圧切換えバルブ)
122…下流切換え部、第3切換えバルブ(第1振分け切換えバルブ)
123…下流切換え部、第2切換えバルブ(第2振分け切換えバルブ)
124…元圧生成部(ラインプレッシャモジュレータバルブ)
A1…第1動力伝達経路
A2…第2動力伝達経路
B1…第2係合要素
図3のC1、
図4のC2…第5係合要素(
図3の第1のクラッチ、
図4の第2のクラッチ)
図3のC2、
図4のC1…第1係合要素(
図3の第2のクラッチ、
図4の第1のクラッチ)
D1…第3係合要素(噛合式クラッチ)
LU…第4係合要素(ロックアップクラッチ)
PSC1…第1信号圧(信号圧)
PSC2…第3信号圧(信号圧)
PSC3…第2信号圧(信号圧)
SC1…第1信号圧出力部(ソレノイドバルブ)
SC2…第3信号圧出力部(ソレノイドバルブ)
SC3…第2信号圧出力部(ソレノイドバルブ)
SL1…係合圧調圧部、第1調圧ソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)
SL2…係合圧調圧部(リニアソレノイドバルブ)
SLU…係合圧調圧部、第2調圧ソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)