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  • 特開-動物監視ロボット 図1
  • 特開-動物監視ロボット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154494
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】動物監視ロボット
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/00 20110101AFI20231013BHJP
【FI】
A01M29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063820
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 歩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰貴
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121CC21
2B121CC31
2B121DA25
2B121DA33
2B121DA52
2B121DA58
2B121DA62
2B121DA63
2B121DA70
2B121EA21
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】害獣被害を食い止めること
【解決手段】本発明は、自律走行部と監視部と威嚇・忌避部を備え、前記自律走行部は、監視領域を自走するものであり、前記監視部は、動物または動物の痕跡を検出するものであり、前記威嚇・忌避部は、動物または動物の痕跡を検出すると、威嚇または忌避剤を散布するものであることを特徴とする動物監視ロボットとすることで、課題を解決することができた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行部と監視部と威嚇・忌避部を備え、
前記自律走行部は、監視領域や経路を自律走行するものであり、
前記監視部は、動物または動物の痕跡を検出するものであり、
前記威嚇・忌避部は、動物または動物の痕跡を検出すると、威嚇または忌避剤を散布するものであることを特徴とする動物監視ロボット。
【請求項2】
カメラと記憶部を備え、
前記カメラは、動物または動物の痕跡を撮影し、
前記記憶部は、動物がいた位置または動物の痕跡があった位置と前記カメラの撮像した撮像画像を紐づけて記憶することを特徴とする請求項1記載の動物監視ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野山に生息する動物を監視し威嚇するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
田畑に対する害獣による被害は年々増しており、様々な方法で動物を威嚇し忌避させる装置が開発されてきた。例えば、特許文献1は有害獣追い払い装置を仕掛けて置き、害獣が検出されたとき威嚇する威嚇装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3213836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェンスに囲まれているゴルフコースであっても、害獣がフェンスの下に穴を掘って侵入すること、または、フェンスを破壊して侵入することがあり、毎日そして特に夜間に見回りをしないと侵入路の特定は困難であった。そのため、適切な位置に害獣追い払い装置を仕掛けることができず、有効な対策が取れなかった。
また田畑においても、害獣がどこから田畑に侵入するか分からず、被害が出てから威嚇装置を設置するのでは対策が後手に回らざるを得なかった。
特に夜間に
【0005】
本発明は、害獣被害を食い止めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自律走行部と監視部と威嚇・忌避部を備え、前記自律走行部は、監視領域や経路を自律自走するものであり、前記監視部は、動物または動物の痕跡を検出するものであり、前記威嚇・忌避部は、動物または動物の痕跡を検出すると、威嚇または忌避剤を散布するものであることを特徴とする動物監視ロボットとすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
移動しながら動物や動物の痕跡を発見でき、威嚇や忌避など適切な処置を行えるようになった。また、記憶部を設けた場合は、動物の種類や侵入路を特定するためのデータを収集できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】動物監視ロボットの概念図。
図2】フェンスで囲われたゴルフ場の説明図。(A)ゴルフ場の平面図。(B)フェンスの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
図1は動物監視ロボット1の概念図である。動物監視ロボット1は自律走行部11と本体部12を備えている。本体部12には、検出部3と威嚇・忌避部4と監視部5などが取り付けられている。自律走行部11は不整地でも走行できるような性能を備えたタイヤが採用されている。
動物監視ロボット1は自律走行車両であり、監視領域や監視経路を人が操縦せずとも走行できるようになっている。
【0011】
(監視領域・監視経路)
本発明の動物監視ロボット1は、監視経路や監視領域が予め定められている。動物監視ロボット1の監視範囲は、監視経路や監視領域内に限られる。
【0012】
(検出部)
検出部3は、走行に必要なデータなどが集められる。例えば、動物監視ロボット1と人や障害物とが衝突しないように監視する近接センサ33や距離センサ34などである。夜間のゴルフ場2のように、人がそもそもおらず、人との衝突が想定できない場所で使用する場合には、近接センサ33や距離センサ34などの人との衝突を監視するセンサ類を省くことができる。
これらの様々なセンサや検出装置は、その目的に適した位置に取り付けられる。
検出部3は、走行のみならず動物の検出に使用してもよく、監視部5として使用することを妨げない。
【0013】
(位置情報取得部)
位置情報取得部6は、自律走行に必要な位置情報61や動物の侵入路を特定するためのデータを得るものである。位置情報取得部6は、動物監視ロボット1の現在の位置情報61を取得するために使われる。動物監視ロボット1の特定の監視経路上の位置や監視領域内の位置を表す位置情報61は、走行制御部13や記憶部7へと送られる。
【0014】
実施例の位置情報取得部6では、簡易でコストの安い位置情報取得部6としている。図2(B)はフェンスFの拡大図であり、フェンスFには、「B12」「B13」「B14」などの文字板が付けられたポール62が立設されている。このような準備をしておくと、単なる撮像装置(図示せず)を位置情報取得部6とすることもできる。つまり、動物監視ロボット1に、フェンスFを常に向いている撮像装置(図示せず)取り付けて、フェンスFのポール62が少なくとも一つ画角に入るように撮影する。撮像装置で撮影された画像に「B12」「B13」「B14」などの文字板が撮像されることで位置を特定できる。
コストを削減するためには、文字を解析して「B12」であると認識することは必要でなく、画像に「B12」という文字が撮像されていれば足りる。
例えば、後述の動物検出センサが動物を検出または動物のいた痕跡を検出した場合には、当該検出箇所に最も近い「B12」「B13」「B14」などの文字板が撮像された画像データを紐づけて記憶部7に記憶するだけで位置の特定が可能となるデータを得られる。
【0015】
また、位置情報取得部6はGNSS測位装置とすることもできる。GNSS測位装置は、経度と緯度の組み合わせを位置情報61として取得できるものであり、きわめて精度が高い装置である。GNSS、Global Navigation Satellite Systemの頭文字であり、その一種としてGPSが良く知られているが、GPSに加えてQZSS(愛称「みちびき」)などを受信できるGNSS測位装置を搭載してもよい。より正確に動物監視ロボット1の位置を特定できる。
【0016】
(自律走行部)
自律走行部11は走行制御部13の制御を受ける。例えば、図2(A)は、フェンスFで囲まれたゴルフ場2の説明図である。動物監視ロボット1は、位置情報取得部6でフェンスFとの距離を測定し、フェンスFをガイドとして走行制御部13により自律走行部11を制御してもよい。例えば、フェンスFに対して、2mの間隔を維持して走行するなど複雑な制御を要することなく自律走行することが可能である。
例えば、走行制御部13は、フェンスFから一定距離、例えば、2mを維持して走行するよう制御を行う。
【0017】
また、走行制御部13は、地図情報記憶部132から地図情報133を呼び寄せ、位置情報取得部6から動物監視ロボット1の現在位置を示す位置情報61から取得する。そして、走行制御部13は、地図情報133内の予め決められた監視経路や監視領域内を自由に走行するように、走行制御信号131を自律走行部11に向けて送る。
位置情報取得部6は、GNSS測位装置とすることができ、測位情報により走行制御部13を制御することも可能である。
【0018】
(監視部)
実施例の監視部5は、静止画または動画を撮像するカメラ51で構成されている。撮像装置は、夜間に使用するのであれば、動物の発する赤外線を撮像できるものであることが好ましい。
カメラ51は、360°の視野や360°回転可能なものが好ましいが、フェンスF方向だけを監視対象とする場合、カメラ51は、360°より狭い視野や狭い範囲で回転可能なものでもよい。
監視部5の撮像した撮像画像52は、リアルタイムで画像解析部8へと送られる。画像解析部8は、撮像画像52を分析し、動物が撮影されているか否かを解析する。夜間、赤外線を強く発するのは、動物に限られる、夜間に人がフェンスFの内側を歩いていることはあり得ないため、赤外線を発する物体が撮像された場合、画像解析部8は直ちに動物と判断し、判断結果を解析情報81として出力するように構成してもよい。特段、複雑な画像解析は必要なく、コスト削減に寄与する。
【0019】
画像解析部8は、少なくとも動物を検出できれば良いが、動物の大きさ等から、シカ、イノシシ、アライグマ、サルなどを認識できるものとしてもよい。動物の種類に応じて、威嚇の方法を変えたり、忌避剤などの種類を切り替えたりするのに解析情報81が使われる。また、画像解析部8は、人と動物を判別できるようにしてもよく、画像解析部8が人であると判別した場合は、人に向かって威嚇することを防ぐことができる。
【0020】
監視部5に電子鼻(電子的に臭気を検出し臭気の種類を識別するセンサ)(図示せず)を監視部5として採用することもできる。これまで、臭いは人間が測定せざるを得なかった。しかし,その感じ方に個人差があり,特にあいまいな感性量という認識が強く,その定量化が可能かということさえ議論の対象になるものであった。近年、様々な異なる臭いを検出可能なセンサを多数並べてアレイ化した高性能の電子鼻が急速に発展してきている。また、監視部5は、臭い解析用AIを搭載して動物の種類を特定できるようにしてもよい。
動物のマーキング(縄張りを示すための、木や建造物に尿や糞をかける行為)などの臭いを分析することで、動物の歩く経路を特定することもできる。また、糞や尿の臭いにより動物を特定することも可能となる。
【0021】
監視部5の臭気による解析は、動物の特定のみならず、動物自体を検出できなかったとしても、獣道と呼ばれる動物の侵入路を特定するのに役立つ。獣道の特定は、忌避剤を効率よく散布するのに有用である。また、何種類かの忌避剤を動物監視ロボット1に搭載しておき、動物の種類が判明すれば、当該動物に適した忌避剤を使用できるようにしてもよい。
【0022】
監視部5が動物を見失った場合、制御部9は、所定の動物探索モード(見失った位置の周囲を動き回る)に入るように走行制御部13に指令を出すことができる。また、実施例の動物監視ロボット1は、監視部5が動物を検出すると、作業者の携帯電話等に直ちに報知を行う通信部15を付加してもよい。送られる情報は、記憶部7に記憶された、撮像画像52、位置情報61と解析情報81である。その際、報知を受けた作業者が、携帯電話等から動物監視ロボット1を手動で動かせるようにしてもよい。作業者は、携帯電話に送られた撮像画像52、位置情報61と解析情報81から動物の種類を判別することができる。そして、作業者は、携帯電話を通して動物監視ロボット1を操縦し、効果的な威嚇や撮像画像52の収集、追跡などが可能となる。
【0023】
(撮像画像)
実施例は、監視部5としてカメラ51を用いており、画像解析部8は、動物の種類を検出できるようにしたものであるが、動物の種類を検出できなくとも、動物がいたかどうかを判別する程度の能力の画像解析部8を採用できる。例えば、夜間のみに使用する動物監視ロボット1のカメラ51として赤外線カメラを用いれば、ゴルフ場2内で夜間に人はおらず、赤外線を発するのは動物であると直ちに判断できる。そのように構成する場合、画像解析部8は、赤外線をカメラ51が検知したかどうかという至極単純にできる。コスト削減に有効である。カメラ51が撮像した記憶部7は、動物や痕跡が撮影された撮像画像52が記憶されており、作業者が撮像画像52を再生することで動物を特定することができる。動物監視ロボット1が夜間の監視業務を終えて基地に戻った後、作業者は、記憶部7から撮像画像52を読み出し、撮像画像52と紐づけられた位置情報61を用いて、現場に行くことができる。撮像画像52を観た作業者が動物の特定を行えば、当該発見された動物に適した捕獲装置を設置することや忌避剤などを散布することが可能となる。
【0024】
(威嚇・忌避部)
画像解析部8は、動物発見または動物がいた痕跡を発見すると、解析情報81を制御部9に送る。制御部9は、威嚇・忌避部4を作動させるべく、威嚇・忌避制御信号91を液体噴射装置43に送り、発見された動物や痕跡などに向けて忌避剤などを噴射する。併せて、制御部9は、威嚇・忌避制御信号91をパトランプ41やスピーカー42に送り威嚇を行う。
【0025】
威嚇・忌避部4の威嚇手段は、たとえば、生分解性プラスチック製の弾丸を発射する発射装置でもよい。音だけでは慣れてしまう動物であっても、音とともに弾丸発射装置などの攻撃が伴う場合は、音を聞いただけで逃げるような効果を期待できる。
【0026】
制御部9は、動物を発見すると、直ちに威嚇・忌避制御信号91を発することなく、停止するように制御されることが好ましい。このようにすると、動物監視ロボット1が停止している間に、動物の行動をしばらく監視部5で監視し多くの情報を集めることができる。制御部9は、予め設定した所定時間経過したと判断した場合や動物を特定するのに必要な撮像画像52が十分に集まったと判断した場合、威嚇・忌避制御信号91を発するように威嚇・忌避部4を制御してもよい。
しかし、田畑やフェアウエイ内に動物が浸入した場合に限り、制御部9は、直ちに威嚇・忌避部4の作動させるように設定してもよい。
【0027】
(記憶部)
実施例は、記憶部7を有しており、監視部5としてカメラ51を用いている。カメラ51(監視部5)が発見した動物や痕跡の撮像画像52は、位置情報61と紐づけられて記憶部7に記憶される。
記憶部7は、解析した動物の種類などの解析情報81を併せて紐づけて記憶してもよい。記憶部7は、日時をさらに紐付けして記憶してもよい。
【0028】
作業者は、記憶部7で記憶されたデータを見るだけで、瞬時に発見された動物や痕跡の位置を位置情報61から知ることができる。さらに、当該位置情報61で監視部5が発見した撮像画像52を知ることができる。
夜間に撮像したデータをすべて見るには、早送りするにしても面倒である。実施例の記憶部7は、重要な撮像画像52と位置情報61を紐づけて記憶しているため、動物や痕跡が発見された撮像画像52だけを素早く見ることができる。
【0029】
(記憶部で蓄えられた情報の活用)
動物の出現時間、出現場所を地図上に表示できることが好ましい。本体部12が送信したデータをパソコンに蓄積し、パソコンに分析させてもよい。
【0030】
(追尾)
監視部5が動物を発見した場合、制御部9は追尾指令を走行制御部13に送り、動物を追尾するようにしてもよい。この態様は、威嚇効果を高める。監視経路を大幅に外れない程度に動物を追尾することができるようにしてもよい。
【0031】
(圃場での実施)
本発明は、実施例に示したゴルフ場2だけに限られない。圃場など適宜な作業領域において、動物侵入を監視し、被害を未然に防止できる。
【0032】
(SDGsへの貢献)
近年、過疎化が進み、代わりに害獣が農地やゴルフ場2に侵入することが頻発するようになった。農地の害獣被害は非常に大きく、電気柵などの設置を強いられることが多くなっている。ゴルフ場2や農地を夜間警備しないとならないこともある。さらに、農作を諦めてしまう高齢者もいる。そのような中で、本発明は、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標:略称SDGs)の「住み続けられるまちづくりを」という目標11に寄与できるものである。
【0033】
以上、実施例を説明し、そして随所で変更し得る例を説明してきたが、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 動物監視ロボット
11 自律走行部
12 本体部
13 走行制御部
131 走行制御信号
132 地図情報記憶部
133 地図情報
15 通信部
2 ゴルフ場
3 検出部
33 近接センサ
34 距離センサ
4 威嚇・忌避部
41 パトランプ
42 スピーカー
43 液体噴射装置
5 監視部
51 カメラ
52 撮像画像
6 位置情報取得部
61 位置情報
62 ポール
7 記憶部
8 画像解析部
81 解析情報
9 制御部
91 威嚇・忌避制御信号
F フェンス
図1
図2