(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154501
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】油処理方法及び油処理装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/08 20060101AFI20231013BHJP
B26D 3/16 20060101ALI20231013BHJP
B26D 1/16 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B26D7/08 C
B26D3/16 E
B26D1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063836
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】坂野 賀津士
(57)【要約】
【課題】紙材が切断されてなる製品の品質を高める。
【解決手段】紙材5を切断刃32で複数の製品3に切り分ける切断パート30に組み込まれた油処理装置1は、給油部6と拭き取部7とを備える。給油部6は、切断刃32の両側の側面34,35の少なくとも一方にオイルを供給する。拭取部7は、側面34,35に供給されたオイルが製品3に触れる前に、製品3以外の掃除材8で当該オイルを拭き取る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙材を切断刃で複数の製品に切り分ける切断工程において用いられる油処理方法であって、
前記切断刃の両側の側面の少なくとも一方にオイルを供給する給油工程と、
前記側面に供給された前記オイルが前記製品に触れる前に、前記製品以外の掃除材で当該オイルを拭き取る拭取工程と、を備えた
ことを特徴とする油処理方法。
【請求項2】
前記切断工程では、公転する前記切断刃によって前記紙材が複数の前記製品に切り分けられ、
前記給油工程は、前記切断刃が前記紙材の端部であって前記製品とならない耳部を切断する公転周期で、前記耳部の側に位置する前記側面に前記オイルを供給し、
前記拭取工程は、前記切断刃による前記耳部の切断に伴い、前記耳部の側に位置する前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記耳部で拭き取る
ことを特徴とする請求項1に記載の油処理方法。
【請求項3】
前記給油工程は、前記切断刃が前記紙材の一方の前記端部である第一耳部を切断する公転周期で、前記第一耳部の側に位置する一方の前記側面に前記オイルを供給する第一給油工程と、前記切断刃が前記紙材の他方の前記端部である第二耳部を切断する公転周期で、前記第二耳部の側に位置する他方の前記側面に前記オイルを供給する第二給油工程とを含み、
前記拭取工程は、前記切断刃による前記第一耳部の切断に伴い、前記第一給油工程で前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記第一耳部で拭き取る第一拭取工程と、前記切断刃による前記第二耳部の切断に伴い、前記第二給油工程で前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記第二耳部で拭き取る第二拭取工程とを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の油処理方法。
【請求項4】
前記給油工程は、前記紙材の前記製品への切り分けが完了してから次の前記紙材の前記製品への切り分けが開始されるまでの紙材交換期間に、両側の前記側面に前記オイルを供給し、
前記拭取工程は、両側の前記側面に供給された前記オイルを、前記紙材とは異なる前記掃除材としての吸油材で前記紙材交換期間に拭き取る
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の油処理方法。
【請求項5】
前記切断工程では、公転する前記切断刃によって前記紙材が複数の前記製品に切り分けられ、
前記給油工程は、前記切断刃の前記紙材交換期間における最初の公転時に、両側の前記側面に前記オイルを供給する
ことを特徴とする請求項4に記載の油処理方法。
【請求項6】
前記拭取工程は、前記紙材交換期間内であって前記給油工程の実施後に、前記切断刃の公転回数に応じた複数回にわたって前記吸油材で前記オイルを拭き取る
ことを特徴とする請求項5に記載の油処理方法。
【請求項7】
前記給油工程は、前記拭取工程が実施されてから所定数以上の前記製品が切り分けられた後に再び実施される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の油処理方法。
【請求項8】
紙材を切断刃で複数の製品に切り分ける切断パートに組み込まれた油処理装置であって、
前記切断刃の両側の側面の少なくとも一方にオイルを供給する給油部と、
前記側面に供給された前記オイルが前記製品に触れる前に、前記製品以外の掃除材で当該オイルを拭き取る拭取部と、を備えた
ことを特徴とする油処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、紙材を切断刃で切断する際に用いられる油処理方法及び油処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレットペーパーやティシュペーパーといった製品に切り分けられる紙材を切断する種々の手法が知られている。例えば特許文献1には、切断対象となる紙体(紙材)を上下一対の回転するスリッタ刃(切断刃)の間に通すことで紙体を切断する手法が開示されている。特許文献1の手法では、下方のスリッタ刃の刃先部に潤滑剤としての油(オイル)を常時噴霧することで、このスリッタ刃の摩耗を抑えて切れ味を維持し、紙粉の発生を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のようにオイルが常時噴霧される切断刃で紙材を切断すると、切断刃に付着したオイルが紙粉等の汚れと共に紙材に付着する可能性がある。このため、紙材から製造される製品の品質低下を招く虞がある。一方で、切断刃にオイルを供給しなければ、切断刃の切れ味が維持されなくなることで紙材を円滑に切断できなくなる虞がある。よって、この場合も、紙材から製造される製品の品質が低下しうる。
【0005】
本件は、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、紙材が切断されてなる製品の品質を高めることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件の油処理方法は、紙材を切断刃で複数の製品に切り分ける切断工程において用いられる油処理方法であって、前記切断刃の両側の側面の少なくとも一方にオイルを供給する給油工程と、前記側面に供給された前記オイルが前記製品に触れる前に、前記製品以外の掃除材で当該オイルを拭き取る拭取工程と、を備えている。
【0007】
本件の油処理装置は、紙材を切断刃で複数の製品に切り分ける切断パートに組み込まれた油処理装置であって、前記切断刃の両側の側面の少なくとも一方にオイルを供給する給油部と、前記側面に供給された前記オイルが前記製品に触れる前に、前記製品以外の掃除材で当該オイルを拭き取る拭取部と、を備えている。
【0008】
(1)
紙材を切断刃で複数の製品に切り分ける切断工程において用いられる油処理方法であって、
前記切断刃の両側の側面の少なくとも一方にオイルを供給する給油工程と、
前記側面に供給された前記オイルが前記製品に触れる前に、前記製品以外の掃除材で当該オイルを拭き取る拭取工程と、を備えた
ことを特徴とする油処理方法。
(2)
前記切断工程では、公転する前記切断刃によって前記紙材が複数の前記製品に切り分けられ、
前記給油工程は、前記切断刃が前記紙材の端部であって前記製品とならない耳部を切断する公転周期で、前記耳部の側に位置する前記側面に前記オイルを供給し、
前記拭取工程は、前記切断刃による前記耳部の切断に伴い、前記耳部の側に位置する前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記耳部で拭き取る
ことを特徴とする(1)に記載の油処理方法。
(3)
前記給油工程は、前記切断刃が前記紙材の一方の前記端部である第一耳部を切断する公転周期で、前記第一耳部の側に位置する一方の前記側面に前記オイルを供給する第一給油工程と、前記切断刃が前記紙材の他方の前記端部である第二耳部を切断する公転周期で、前記第二耳部の側に位置する他方の前記側面に前記オイルを供給する第二給油工程とを含み、
前記拭取工程は、前記切断刃による前記第一耳部の切断に伴い、前記第一給油工程で前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記第一耳部で拭き取る第一拭取工程と、前記切断刃による前記第二耳部の切断に伴い、前記第二給油工程で前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記第二耳部で拭き取る第二拭取工程とを含む
ことを特徴とする(2)に記載の油処理方法。
(4)
前記給油工程は、前記紙材の前記製品への切り分けが完了してから次の前記紙材の前記製品への切り分けが開始されるまでの紙材交換期間に、両側の前記側面に前記オイルを供給し、
前記拭取工程は、両側の前記側面に供給された前記オイルを、前記紙材とは異なる前記掃除材としての吸油材で前記紙材交換期間に拭き取る
ことを特徴とする(1)~(3)のいずれか一項に記載の油処理方法。
(5)
前記切断工程では、公転する前記切断刃によって前記紙材が複数の前記製品に切り分けられ、
前記給油工程は、前記切断刃の前記紙材交換期間における最初の公転時に、両側の前記側面に前記オイルを供給する
ことを特徴とする(4)に記載の油処理方法。
(6)
前記拭取工程は、前記紙材交換期間内であって前記給油工程の実施後に、前記切断刃の公転回数に応じた複数回にわたって前記吸油材で前記オイルを拭き取る
ことを特徴とする(5)に記載の油処理方法。
(7)
前記給油工程は、前記拭取工程が実施されてから所定数以上の前記製品が切り分けられた後に再び実施される
ことを特徴とする(1)~(6)のいずれか一項に記載の油処理方法。
(8)
紙材を切断刃で複数の製品に切り分ける切断パートに組み込まれた油処理装置であって、
前記切断刃の両側の側面の少なくとも一方にオイルを供給する給油部と、
前記側面に供給された前記オイルが前記製品に触れる前に、前記製品以外の掃除材で当該オイルを拭き取る拭取部と、を備えた
ことを特徴とする油処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、紙材が切断されてなる製品の品質を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】油処理装置が組み込まれた切断パートを含む製造ラインの模式的な斜視図である。
【
図3】複数の製品に切り分けられる紙材(ログ)の正面図である。
【
図4】ログソーの模式的な正面図であり、(a)はログの第一耳部を切断する瞬間を示し、(b)はログの第二耳部を切断する瞬間を示している。
【
図5】ログソーの模式的な正面図であり、(a)はログの第一耳部を切断する公転周期を示し、(b)はログの第二耳部を切断する公転周期を示している。
【
図6】紙材交換期間におけるログソーの模式的な正面図である。
【
図7】油処理方法が用いられる切断工程を含む製造工程のフローチャートである。
【
図8】切断工程で実施される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】切断工程で実施される処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件を実施するための形態を説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、ここで明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
[1.装置]
[1-1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係る油処理装置1は、ロール状の製品3を製造する製造ライン4に適用されている。ここでは、帯状の衛生用紙がロール状に巻回されたトイレットペーパー(トイレットロール)である製品3を例示する。ただし、製品3は、紙材が切り分けられたものであれば特に限定されず、例えば、帯状の衛生用紙(紙材)がロール状に巻回されたキッチンペーパーであってもよいし、枚葉状の衛生用紙(紙材)が積層されたティシュの束であってもよい。
【0013】
製造ライン4には、製品3よりも軸方向に長いロール状のログ5を形成するログ形成パート10と、ログ形成パート10で形成されたログ5を一旦ストックしてログ5の送出タイミングを調整する調整パート20と、調整パート20から送り出されたログ5を複数の製品3に切り分ける切断パート30とが設けられる。さらに、製造ライン4には、切断パート30で切り分けられた製品3を一定数ごとに包装する包装パート40と、包装パート40で包装された製品3のパッケージ9を箱詰めする箱詰めパート50とが設けられる。
【0014】
以下、製造ライン4で実施される各工程の順序に基づいて、上流及び下流を定める。製造ライン4には、上流から下流に向けて、ログ形成パート10,調整パート20,切断パート30,包装パート40,及び箱詰めパート50がこの順で配置されている。
【0015】
ログ形成パート10は、製品3よりも幅広な帯状の原紙11(資材)を巻回した原反ロール12から原紙11を繰り出し、この原紙11をワインダー13で巻き直すことによりログ5を形成する。ログ5は、紙材がロール状に巻回されたもの(すなわち紙材)であって、軸方向の長さが原反ロール12の軸方向の長さと等しく、直径が製品3の直径と等しい形状をなす。
ワインダー13では、原紙11に対してエンボス加工や印刷が施されてもよい。また、原反ロール12は、一枚の紙材からなる単層(1プライ)の原紙11が巻回された一次原反(ジャンボロール)であってもよいし、複数枚の紙材が積層されてなる多層(2プライ以上)の原紙11が巻回された二次原反であってもよい。
【0016】
ワインダー13は、筒状のコア5c(長尺芯管)に原紙11を所定の長さ巻回するごとに切断して、ログ5を連続的に形成する。詳細にいえば、原紙11は、ログ5の内周側(コア5c側)から外周側へ向けて(すなわち、径方向の内側から外側へ向けて)巻回される。そして、所定の長さの原紙11がコア5cの外周に巻回されたら、原紙11の幅方向(長手方向と直交する方向)に沿う直線に沿って原紙11が切断(分断)されることで、ログ5が形成される。各ログ5は、ログ形成パート10の最終工程である糊付パート14において巻き終わり端5aが外周面に糊付け(テールシール)された後、下流の調整パート20へ送られる。
【0017】
調整パート20は、アキュームレーター21で複数のログ5をストックしつつ、下流の切断パート30へログ5を順次送り出す。ここでは、切断パート30へ向けてログ5を二本ずつ送り出す調整パート20を例示する。
切断パート30は、調整パート20から送り出されたログ5を軸方向に所定の間隔をあけてログソー31で切断する。これにより、各ログ5が複数の製品3に切り分けられる。
【0018】
包装パート40は、例えば四個(二個×二段)の製品3を一組として包装袋22に挿入し、包装袋22の開口部19を封着して、パッケージ9を形成する。
箱詰めパート50は、複数個(例えば四個)のパッケージ9を一組として段ボール箱23に梱包する。そして、段ボール箱23に詰められたパッケージ9が出荷される。
【0019】
[1-2.要部構成]
[1-2-1.切断パート]
図2に示すように、切断パート30のログソー31は、鋭利な外周端をもつ円盤状の切断刃32と、切断刃32の中心部36を回転自在に支持する支持アーム33とを有する。切断刃32は、支持アーム33に対し、中心部36を通るとともに切断刃32の厚み方向に延びる回転軸A2まわりに回転する。
【0020】
一方、支持アーム33は、切断刃32が取り付けられた先端部と反対側の基端部において切断刃32の回転軸A2と平行に延びる回転軸A3まわりに回転する。したがって、切断刃32は、回転軸A2まわりに自転するとともに、支持アーム33の回転軸A3まわりに公転するといえる。このことから、以下の説明では、切断刃32の回転軸A2を「自転軸A2」ともいい、支持アーム33の回転軸A3を「公転軸A3」ともいう。
【0021】
上記のように、本実施形態の切断パート30では、自転及び公転する切断刃32によってログ5が複数の製品3に切り分けられる。公転する切断刃32は、切断可能な位置にセットされたログ5に対し、接触(切断)と非接触(離隔)とを交互に繰り返す。すなわち、切断刃32は、公転軸A3まわりに一周する過程で、ログ5がセットされた位置ではログ5を切断(ログ5に接触)し、それ以外の位置ではログ5から離隔する。
なお、ログソー31に設けられる切断刃32の個数は特に限定されない。ログソー31には、同一の公転軸A3まわりに公転する複数の切断刃32が設けられてもよい。また、切断パート30には、複数のログソー31がログ5の軸方向に沿って並設されてもよい。
【0022】
ログ5は、その軸方向が切断刃32の自転軸A2及び公転軸A3と平行に延びる姿勢でログソー31に送り込まれ、公転する切断刃32の軌道上にセットされる。そして、ログ5は、上記のとおり自転及び公転する切断刃32により、径方向に沿って切断(輪切り)される。さらに、ログ5は、切断刃32が公転軸A3まわりに一周する間に、製品3の軸方向の長さに対応する分だけ軸方向に搬送される。これにより、ログソー31は、ログ5の下流側の一端部5b(以下、下流端部5bともいう)から上流側の他端部5d(以下、上流端部5dともいう)に向けて、ログ5の軸方向の異なる位置を切断刃32で順次切断していく。
【0023】
本実施形態の切断パート30では、上記のようにログ5の軸方向への搬送と切断刃32による切断とが繰り返されることで、一本のログ5から予め定められた設定数の製品3が切り出される。そして、ログ5から設定数の製品3が切り出されたら、製品3が下流の包装パート40に搬送されるとともに、調整パート20から切断パート30に次のログ5が送り込まれる。
【0024】
図3に示すように、本実施形態のログ5は、その全体が製品3となるのではなく、その軸方向の両端部である下流端部5b及び上流端部5dが、製品3とならない耳部2(ログ耳)として切断される。ここでは、製品3よりも軸方向の長さが短い耳部2を例示する。耳部2は、ログ5から切断された後に製造ライン4から排出される不用品である。
以下、一本のログ5から切り出される二つの耳部2のうち、ログ5の下流端部5bから切り出される一方の耳部2Aを第一耳部2Aともいい、ログ5の上流端部5dから切り出される他方の耳部2Bを第二耳部2Bともいう。一本のログ5が切断刃32で切断される過程において、第一耳部2Aは、切断刃32によるログ5の最初の切断時に切り出され、第二耳部2Bは、切断刃32によるログ5の最後の切断時に切り出される。
【0025】
図4(a),(b)に示すように、切断刃32の両側の側面34,35は、ログ5の切断時にログ5の断面(製品3の端面又は耳部2の端面)に摺接する。ここでいう側面34,35とは、切断刃32の厚み方向に向く一対の表面である。以下、下流側を向く一方の側面34を「下流面34」ともいい、上流側を向く他方の側面35を「上流面35」ともいう。
【0026】
図4(a)に示すように、第一耳部2Aの切断時には、下流面34が第一耳部2Aの端面に摺接するとともに、上流面35が製品3の端面に摺接する。一方、
図4(b)に示すように、第二耳部2Bの切断時には、上流面35が第二耳部2Bの端面に摺接するとともに、下流面34が製品3の端面に摺接する。また、ログ5の耳部2以外の部分の切断時には、下流面34及び上流面35がいずれも製品3の端面に摺接する。
【0027】
[1-2-2.油処理装置]
図2に示すように、油処理装置1は、切断パート30に組み込まれている。油処理装置1は、切断パート30においてログソー31の切断刃32にオイルを供給するとともに切断刃32に供給したオイルを処理する。油処理装置1は、切断刃32の側面34,35の少なくとも一方にオイルを供給する給油部6と、給油部6で供給されたオイルが製品3に触れる前にこのオイルを拭き取る拭取部7とを備えている。
【0028】
<給油部>
給油部6は、ログ5と干渉しない位置に設けられ、切断刃32がログ5に触れていないときに、側面34,35の少なくとも一方にオイルを供給する。給油部6は、例えば、公転軸A3を基準として切断刃32がログ5を切断する位置の反対側(
図2では上側)でオイルを供給する。給油部6が側面34,35に供給するオイルは、切断刃32の切れ味や滑りをよくする機能をもつ。
【0029】
本実施形態の給油部6は、下流面34にオイルを供給する第一給油部6aと、上流面35にオイルを供給する第二給油部6bとを含む。ここでは、側面34,35にそれぞれ対向するように設けられ、側面34,35にそれぞれオイルを噴霧する噴射器としての第一給油部6a及び第二給油部6bを例示する。ただし、給油部6によるオイルの供給方法は、上記のような噴霧に限定されない。給油部6は、側面34,35に当接するように設けられたロールからオイルを転写させたり、側面34,35に形成された細孔からオイルを染み出させたりすることで、側面34,35にオイルを供給してもよい。
【0030】
本実施形態の給油部6は、所定の給油期間内に側面34,35にオイルを供給する。所定の給油期間には、切断刃32が耳部2を切断する公転周期である第一期間T1と、ログ5の製品3への切り分けが完了してから次のログ5の製品3への切り分けが開始されるまでのログ交換期間(紙材交換期間)である第二期間T2とが含まれる。
第一期間T1は、具体的にいえば、切断刃32が耳部2の切断を完了する時点から、切断刃32が公転軸A3まわりに一周(公転)する分を遡った期間である。すなわち、第一期間T1には、切断刃32が耳部2を切断する直前に、切断刃32がログ5と非接触となるタイミングが含まれる。なお、第一期間T1は、例えば、切断刃32に対するログ5の軸方向の位置や、一本のログ5に対する切断刃32の切断回数を、周知のセンサで検出することにより検知可能である。
【0031】
給油部6は、第一期間T1においては、側面34,35のうち切断刃32が切断する耳部2の側に位置する一方にオイルを供給する。具体的には
図5(a)に示すように、給油部6は、切断刃32が第一耳部2Aを切断する公転周期では、第一耳部2Aの側(下流側)に位置する下流面34に第一給油部6aからオイルを供給する。また、
図5(b)に示すように、給油部6は、切断刃32が第二耳部2Bを切断する公転周期では、第二耳部2Bの側(上流側)に位置する上流面35に第二給油部6bからオイルを供給する。
【0032】
一方、第二期間T2は、具体的にいえば、ログソー31にログ5がセットされていない期間である。すなわち、第二期間T2は、切断刃32がログ5に接することなく公転(いわば空転,空打ち)を続ける期間である。本実施形態の切断刃32は、第二期間T2内に複数回(複数周)公転する。
【0033】
図6に示すように、給油部6は、第二期間T2においては、両側の側面34,35にオイルを供給する。例えば、給油部6は、第二期間T2内に、第一給油部6a及び第二給油部6bから側面34,35に対して同時にオイルを供給する。あるいは、給油部6は、第二期間T2内であれば、第一給油部6a及び第二給油部6bから側面34,35に対して互いに異なるタイミングでオイルを供給してもよい。本実施形態の給油部6は、第二期間T2における切断刃32の最初の公転周期において(最初の空転,空打ち時に)、側面34,35の双方にオイルを供給する。
【0034】
また、本実施形態の給油部6は、側面34,35への過剰なオイル供給を回避するために、上記の第一期間T1及び第二期間T2の全てでオイルを供給するのではなく、拭取部7でオイルが拭き取られてから所定数以上の製品3が切り分けられた後に再びオイルを供給する。換言すると、給油部6による側面34,35へのオイル供給は、拭取部7で側面34,35のオイルが拭き取られてから所定数以上の製品3が切り分けられるまでの第三期間T3の間は禁止される。第三期間T3を規定する上記の所定数は、例えば、一本のログ5から切り分けられる製品3の個数(設定数)の整数倍とされる。
【0035】
このように、給油部6による側面34,35へのオイル供給は、少なくとも第三期間T3の間隔をあけて実施される。本実施形態の給油部6は、第三期間T3が経過した後の最初の第一期間T1又は第二期間T2に、側面34,35の少なくとも一方にオイルを再び供給する。
【0036】
例えば、製品3の切断中(耳部2の切断中を除く)に第三期間T3が経過した場合には、給油部6は、第二耳部2Bが切断される次の第一期間T1に、切断刃32の上流面35にオイルを供給する。それから給油部6は、続く第二期間T2は待機し(オイルを供給せず)、第一耳部2Aが切断される次の第一期間T1に、切断刃32の下流面34にオイルを供給する。一方、第二耳部2Aが切断される第一期間T1及びログ5の交換中に第三期間T3が経過した場合には、給油部6は、続く第二期間T2は待機し(オイルを供給せず)、第一耳部2Aが切断される次の第一期間T1に、切断刃32の下流面34にオイルを供給する。それから給油部6は、製品3の切断中(耳部2の切断中を除く)は待機し、第二耳部2Bが切断される次の第一期間T1に、切断刃32の上流面35にオイルを供給する。なお、第三期間T3の経過後に給油部6がオイルを供給するタイミングは、上記のような第一期間T1に代えて又は加えて、第三期間T3が経過した後の最初の第二期間T2であってもよい。
【0037】
<拭取部>
図2に示すように、拭取部7は、製品3以外の掃除材8により、側面34,35に付着した余計なオイルを拭き取る。掃除材8は、オイルの拭取性と側面34,35に対する緩衝性とを確保するために、好ましくは、吸油性をもつ柔軟な素材で形成される。本実施形態では、給油部6により第一期間T1に供給されたオイルを拭き取る掃除材8としての上記の耳部2と、給油部6により第二期間T2に供給されたオイルを拭き取る掃除材8としての吸油材8Aとが設けられている。
【0038】
図5(a),(b)に示すように、第一期間T1に供給されたオイルを拭き取る掃除材8は、第一期間T1に切断刃32で切断される耳部2である。すなわち、拭取部7は、第一期間T1に側面34,35に供給されたオイルについては、切断刃32による耳部2の切断に伴い、この耳部2でオイルを拭き取る。
【0039】
本実施形態の拭取部7は、第一給油部6aで下流面34に供給されたオイルを第一耳部2Aの切断に伴い第一耳部2Aで拭き取る第一拭取部7Aと、第二給油部6bで上流面35に供給されたオイルを第二耳部2Bの切断に伴い第二耳部2Bで拭き取る第二拭取部7Bとを含む。第一拭取部7A及び第二拭取部7Bは、例えば、耳部2の切断時に耳部2(掃除材8)を支持する図示しない台座等で構成される。
【0040】
図5(a)に示すように、第一拭取部7Aは、第一期間T1に第一給油部6aから下流面34に供給されたオイルを、切断刃32で第一耳部2Aが切断されるときに下流面34に摺接する第一耳部2Aで拭き取る。一方、
図5(b)に示すように、第二拭取部7Bは、第一期間T1に第二給油部6bから上流面35に供給されたオイルを、切断刃32で第二耳部2Bが切断されるときに上流面35に摺接する第二耳部2Bで拭き取る。このように、本実施形態の拭取部7は、耳部2の側に位置する側面34,35に供給されたオイルを、耳部2の切断と同時に掃除材8としての耳部2で拭き取る。
【0041】
図2,6に示すように、第二期間T2に供給されたオイルを拭き取る掃除材8は、ログ5とは異なる吸油材8Aである。すなわち、吸油材8Aは、製品3及び耳部2に切り分けられるログ5とは別の部材として設けられる。ここでは、ログ5とは異なる(製品3にならない)部材であるものの、ログ5と同様に紙材がロール状に巻回された吸油材8Aを例示する。なお、このような吸油材8Aとしては、例えば、何らかの異常があるために製造ライン4から排出された廃棄物としてのログ5や、製品3の製造過程で生じた不用品である耳部2を適用できる。
【0042】
吸油材8Aは、ログ5と干渉しない位置に設けられ、切断刃32がログ5に触れていないときに、側面34,35のオイルを拭き取る。吸油材8Bは、具体的にいえば、切断刃32の下流面34に接する位置と、切断刃32の上流面35に接する位置との二箇所に設けられる。ここでは、公転する切断刃32が給油部6によりオイルを供給されてからログ5を切断するまでに移動する範囲内(切断刃32の軌道上)に配置された一対の吸油材8Aを例示する。
【0043】
一対の吸油材8Aは、切断刃32の厚み方向の寸法よりも小さい間隔をあけて、切断刃32の厚み方向において互いに対向するように配置される。吸油材8Aは、切断刃32が公転するたびに側面34,35に触れる。これにより、吸油材8Aは、切断刃32の公転回数に応じて側面34,35からオイルを拭き取る。なお、このように切断刃32が公転するたびに側面34,35に触れる吸油材8Aは、第二期間T2だけでなく第一期間T1にも側面34,35からオイルを拭き取る。
【0044】
拭取部7は、第二期間T2に供給されたオイルについては、第二期間T2(ログ交換期間)内に側面34,35の双方のオイルを吸油材8Aで拭き取る。具体的にいえば、拭取部7は、第二期間T2内に、下流面34に触れるように設置された一方(下流側)の吸油材8Aで下流面34のオイルを拭き取り、上流面35に触れるように設置された他方(上流側)の吸油材8Aで上流面35のオイルを拭き取る。
【0045】
本実施形態では、上記のとおり切断刃32が第二期間T2内に複数回公転するため、拭取部7は、第二期間T2内であって給油部6によるオイルの供給後に、切断刃32の公転回数に応じた複数回にわたって吸油材8Aでオイルを拭き取る。また、本実施形態の拭取部7は、第一期間T1に供給されたオイルについても、切断刃32が公転するたびに側面34,35に触れる吸油材8Aで拭き取る。ただし、耳部2の切断を伴う拭き取りでは、耳部2の切断を伴わない吸油材8Aによる拭き取りと比べて、掃除材8としての耳部2の端面(断面)が側面34,35に強く押し当てられた状態となることから、オイルの拭取性が高くなる。なお、吸油材8Aは、側面34,35に接する位置に予め固定されている構成に限らず、例えば、より適切かつ確実に側面34,35に接するように、その位置が調整可能に(可動式に)設けられてもよい。
【0046】
[2.方法]
図7に示すように、製造ライン4では、上記の各パートに対応する各工程(製造工程)が実施される。具体的にいえば、製造ライン4では、ログ形成工程S10,調整工程S20,切断工程S30,包装工程S40及び箱詰め工程S50が順に実施される。
上記の各工程では、その名称の「工程」を「パート」に置き換えた装置による処理がそれぞれ実施される。例えば、ログ形成工程S10ではログ形成パート10による処理が実施され、調整工程S20では調整パート20による処理が実施される。
【0047】
本実施形態に係る油処理方法は、切断工程S30で用いられ、上記の油処理装置1によって実施される。油処理方法は、上記の給油部6によって実施される給油工程S1と、上記の拭取部7によって実施される拭取工程S2とを備える。
給油工程S1は、切断刃32の両側の側面34,35の少なくとも一方にオイルを供給する。上記のとおり、本実施形態の給油工程S1は、側面34,35の双方にオイルを供給する。一方、拭取工程S2は、給油工程S1で側面34,35に供給されたオイルが製品3に触れる前に、製品3以外の掃除材8で側面34,35のオイルを拭き取る。
【0048】
本実施形態の切断工程S30では、上記のとおり自転及び公転する切断刃32によってログ5が複数の製品3に切り分けられる。
図8に示すように、切断工程S30では、まず、送り込まれたログ5の下流端部5bである第一耳部2Aが切断刃32で切断される(ステップS31)。続いて、切断刃32の公転に伴い、ログ5が複数の製品3に切り分けられていく(ステップS32)。そして、設定数の製品3がログ5から切り分けられるときに、ログ5の上流端部5dである第二耳部2Bが切断刃32で切断される(ステップS33)。これにより、ログ5の製品3への切り分けが完了する。
【0049】
続いて、ログソー31では、切断するログ5が交換される(ステップS34)。具体的にいえば、ログ5から切り分けられた製品3が下流の包装工程S40に送られるとともに、ログ5から切断された耳部2が製造ライン4から排出され、ログソー31に次のログ5がセットされる。それから、ログソー31では、再び上記のステップS31~34が繰り返される。
【0050】
給油工程S1は、上記のステップS31及びステップS33が実施される第一期間T1に、耳部2の側に位置する側面34,35にオイルを供給する。本実施形態の給油工程S1は、上記のステップS31が実施される第一期間T1に第一給油部6aで実行される第一給油工程S11と、上記のステップS33が実施される第一期間T1に第二給油部6bで実行される第二給油工程S12とを含む。
【0051】
第一給油工程S11は、切断刃32が第一耳部2Aを切断する公転周期で、第一耳部2Aの側に位置する下流面34に第一給油部6aからオイルを供給する。一方、第二給油工程S12は、切断刃32が第二耳部2Bを切断する公転周期で、第二耳部2Bの側に位置する上流面35に第二給油部6bからオイルを供給する。
【0052】
本実施形態の拭取工程S2は、上記の第一期間T1に側面34,35に供給されたオイルについては、切断刃32による耳部2の切断に伴い、掃除材8としての耳部2で側面34,35のオイルを拭き取る。拭取工程S2は、第一給油工程S11で供給されたオイルに対して第一拭取部7Aで実行される第一拭取工程S21と、第二給油工程S12で供給されたオイルに対して第二拭取部7Bで実行される第二拭取工程S22とを含む。
【0053】
第一拭取工程S21は、第一期間T1に第一給油工程S11で下流面34に供給されたオイルを第一耳部2Aの切断に伴い第一耳部2Aで拭き取る。一方、第二拭取工程S22は、第一期間T1に第二給油工程S12で上流面35に供給されたオイルを第二耳部2Bの切断に伴い第二耳部2Bで拭き取る。
【0054】
給油工程S1は、上記のステップS34が実施される第二期間T2には、給油部6で両側の側面34,35にオイルを供給する。本実施形態の給油工程S1は、第二期間T2における切断刃32の最初の公転時に、両側の側面34,35に給油部6からオイルを供給する。
拭取工程S2は、上記の第二期間T2には、給油工程S1で両側の側面34,35に供給されたオイルを掃除材8としての吸油材8Aで拭き取る。本実施形態の拭取工程S2は、第二期間T2であって給油工程S1の実施後に、切断刃32の公転回数に応じた複数回にわたって吸油材8Aでオイルを拭き取る。
【0055】
本実施形態の給油工程S1は、拭取工程S2が実施されてから所定数以上の製品3が切り分けられた後に再び実施される。すなわち、給油工程S1は、上記の第三期間T3の間は実施が禁止される。本実施形態の給油工程S1は、第三期間T3の後の最初の第一期間T1又は第二期間T2に再び実施される。なお、
図8には、給油工程S1(第一給油工程S11及び第二給油工程S12)及び拭取工程S2(第一拭取工程S21及び第二拭取工程S22)が共に第一期間T1に実施されてから第三期間T3が経過した後の最初の第二期間T2に、給油工程S1及び拭取工程S2が再び実施される例を示す。
【0056】
ただし、給油工程S1及び拭取工程S2は、好ましくは
図9に示すように、第三期間T3の経過後の最初の第一期間T1に実施される。
図9には、製品3の切断中(耳部2の切断中を除く)に第三期間T3が経過した場合を例示する。この場合、第三期間T3の経過後であって第二耳部2Bが切断される最初の第一期間T1に、切断刃32の上流面35に対して給油工程S1及び拭取工程S2が順に実施される。そして、続く第二期間T2の経過後、第一耳部2Aが切断される次の第一期間T1に、切断刃32の下流面34に対して給油工程S1及び拭取工程S2が順に実施される。なお、給油工程S1及び拭取工程S2は、第三期間T3が経過した後の最初の第一期間T1と最初の第二期間T2との双方に実施されてもよい。
【0057】
[3.作用及び効果]
(1)上記の油処理装置1及び油処理方法では、切断刃32の側面34,35の少なくとも一方に供給されたオイルが製品3に触れるよりも前に、このオイルを掃除材8で拭き取る。このため、切断刃32にオイルを供給しつつも、このオイルが製品3に触れるよりも前に、側面34,35に付着していた余計なオイルを、側面34,35に付着していた紙粉等の汚れと共に掃除材8で除去できる。したがって、オイルにより切断刃32の切れ味や滑りを向上させつつも、側面34,35から製品3へのオイルや汚れの付着を防止できる。よって、紙材が切断されてなる製品3の品質を高められる。
【0058】
(2)公転する切断刃32による耳部2の切断に伴って耳部2でオイルを拭き取れば、側面34,35に付着していた余計なオイルや汚れを切断時の剪断力により側面34,35から適切に除去できる。すなわち、耳部2の切断を伴う拭き取りによれば、切断を伴わない拭き取り(例えば吸油材8Aによる拭き取り)と比べて、耳部2の端面(断面)と側面34,35との間に作用する剪断力により、側面34,35から余計なオイルや汚れをより確実に拭き取れる。また、製品3とならない耳部2を掃除材8として利用することで、拭き取り専用の掃除材8を耳部2とは別に設ける場合と比べて、掃除材8に吸油性を確保しながらコスト削減及び省スペース化を図れる。
【0059】
(3)上記の油処理装置1及び油処理方法では、第一耳部2Aを切断する公転周期で(上記の第一期間T1に)下流面34に供給したオイルを第一耳部2Aの切断に伴って第一耳部2Aで拭き取り、第二耳部2Bを切断する公転周期で上流面35に供給したオイルを第二耳部2Bの切断に伴って第二耳部2Aで拭き取る。このような構成によれば、ログ5の両側の端部5b,5dである第一耳部2A及び第二耳部2Bをそれぞれ利用して、両側の側面34,35から余計なオイルや汚れを適切に除去できる。このため、コスト削減及び省スペース化を図りながら、製品3の品質を更に高められる。
【0060】
(4)上記の油処理装置1及び油処理方法では、ログ交換期間(上記の第二期間T2)に両側の側面34,35に供給したオイルを、ログ交換期間に吸油材8Aで拭き取る。このように、ログ交換期間を利用して切断刃32へのオイル供給及び余計なオイルや汚れの拭き取りを行なえば、例えばログソー31の稼働やログ5の搬送を一旦停止させて切断刃32へのオイル供給及び拭き取りを行なう場合と比べて、製品3の製造効率を高められる。また、上記のとおり切断刃32がログ5を切断しないログ交換期間を利用することで、切断刃32が製品3に触れない状態で、両側の側面34,35に対して同時にオイル供給や拭き取りを行なうことが容易となる。このため、両側の側面34,35に対してオイル供給や拭き取りを交互に(片面ずつ)行なう場合と比べて時間を節約できる。これによっても、製品3の製造効率を高められる。
【0061】
(5)切断刃32のログ交換期間における最初の公転時(いわば、最初の空打ち時)に両側の側面34,35にオイルを供給すれば、各側面34,35に対するオイル供給及び拭き取りをログ交換期間内に完了する確度を高められる。また、このように両側の側面34,35へのオイル供給をログ交換期間に入ってから速やかに行うことで、各側面34,35からオイルを拭き取る時間をログ交換期間内に確保しやすくなる。このため、側面34,35に付着した余計なオイルや汚れをより確実に除去しやすくなる。よって、製品3の品質をより確実に高められる。
【0062】
(6)ログ交換期間内であって側面34,35へのオイル供給後に、切断刃32の公転回数に応じた複数回にわたって吸油材8Aでオイルを拭き取れば、側面34,35に付着した余計なオイルや汚れをより確実に除去できる。よって、製品3の品質をより確実に高められる。
【0063】
(7)オイルの拭き取りが実施されてから所定数以上の製品3が切り分けられた後に、再び側面34,35へオイルが供給されれば、側面34,35に対するオイル供給と拭き取りとが繰り返される間隔を少なくとも上記の第三期間T3はあけることができる。これにより、側面34,35に対する過剰なオイル供給や過剰な拭取作業を抑制できる。したがって、オイルにより切断刃32の切れ味や滑りを向上させつつも、側面34,35から製品3へのオイルや汚れの付着を防止できるとともに、オイルの過剰消費を抑えられる。よって、製品3の品質を高められるとともに、オイルにかかるコストを抑制できる。
【0064】
[4.変形例]
上記の給油期間は一例である。給油部6及び給油工程S1におけるオイル供給は、例えば、上記の第一期間T1及び第二期間T2のいずれか一方のみに実施されてもよいし、上記の第一期間T1及び第二期間T2以外の期間に実施されてもよい。また、給油部6及び給油工程S1におけるオイル供給は、上記の第三期間T3未満の間隔で繰り返されてもよいし、上記の第三期間T3以外の期間をあけて繰り返されてもよい。
【0065】
給油部6及び給油工程S1は、両側の側面34,35のいずれか一方にのみオイルを供給してもよい。例えば、給油部6及び給油工程S1は、下流面34にのみオイルを供給し、上流面35にはオイルを供給しなくてもよい。この場合には、拭取部7及び拭取工程S2は、下流面34からオイルを拭き取ればよく、上流面35からのオイルの拭き取りは不要となる。このような場合であっても、側面34,35の少なくとも一方に供給されたオイルにより切断刃32の切れ味や滑りを向上させられるとともに、側面34,35の少なくとも一方から製品3へのオイルや汚れの付着を防止できる。
【0066】
切断パート30及び切断工程S30の構成は、上記の例に限定されない。例えば、切断パート30及び切断工程S30では、公転しない切断刃32が用いられてもよい。なお、複数の切断刃32が設けられる場合には、各切断刃32に対して上記の油処理装置1及び油処理方法によるオイル供給及び拭き取りを行なうことが好ましい。例えば、同一の公転軸A3まわりに公転する二つの切断刃32がログソー31に設けられる場合には、あるログ5の切断開始時から次のログ5の切断開始時までに切断刃32がログ5のセットされる位置を通過する回数(通過回数)Nを、奇数に設定すればよい。この通過回数Nは、切断刃32の軌道上にセットされたログ5を切断刃32が切断する回数(切断回数)だけでなく、切断刃32の軌道上にログ5がセットされないログ交換期間中に切断刃32がログ5のセットされる予定位置を通過する回数(空振り回数)も含む。なお、二つの切断刃32が設けられたログソー31では、一つの切断刃32が公転軸A3まわりに一回転するごとに、通過回数Nが2回とカウントされる。
【0067】
このように通過回数Nを奇数に設定したうえで、例えば上記の第一給油工程S11,第一拭取工程S21,第二給油工程S12及び第二拭取工程S22を連続する二つのログ5に対して実施すれば、各切断刃32において上記のとおり切れ味や滑りを向上させつつも、製品3へのオイルや汚れの付着を防止できる。よって、複数の切断刃32が設けられる場合に製品3の品質をより確実に高められる。
【0068】
切断刃32の側面34,35に付着する汚れの多くは、切断刃32の研磨粉であることが想定される。このため、上記の油処理方法の実施タイミングを切断刃32の研磨に合わせれば、側面34,35の汚れを効果的に除去できる。例えば、上記の第一期間T1や第二期間T2内に、切断刃32の研磨を実施したうえで上記の給油工程S1と拭取工程S2とを順に実施してもよい。
【0069】
より具体的にいえば、第二耳部2Bが切断される第一期間T1に切断刃32の上流面35を研磨し、この第一期間T1や続く第二期間T2や第一耳部2Aが切断される次の第一期間T1に、上流面35に対して給油工程S1及び拭取工程S2を順に実施してもよい。また、第一耳部2Aが切断される第一期間T1に切断刃32の下流面34を研磨し、この第一期間T1内に下流面34に対して給油工程S1及び拭取工程S2を順に実施してもよい。なお、ログ交換期間である第二期間T2に、切断刃32の両側の側面34,35に対する研磨と給油工程S1及び拭取工程S2との全てを実施してもよい。このように、切断刃32の研磨と給油工程S1及び拭取工程S2とはいずれも、切断刃32が製品3を切り分けていない期間内に実施されることが好ましい。また、防災の観点から、切断刃32の研磨と給油工程S1とは、同時に実施しないことが望ましい。
なお、切断刃32で切断される対象は、複数の製品に切り分けられる紙材であればよく、上記のログ5に限定されない。
【0070】
[5.付記]
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
紙材を切断刃で複数の製品に切り分ける切断工程において用いられる油処理方法であって、
前記切断刃の両側の側面の少なくとも一方にオイルを供給する給油工程と、
前記側面に供給された前記オイルが前記製品に触れる前に、前記製品以外の掃除材で当該オイルを拭き取る拭取工程と、を備えた
ことを特徴とする油処理方法。
(付記2)
前記切断工程では、公転する前記切断刃によって前記紙材が複数の前記製品に切り分けられ、
前記給油工程は、前記切断刃が前記紙材の端部であって前記製品とならない耳部を切断する公転周期で、前記耳部の側に位置する前記側面に前記オイルを供給し、
前記拭取工程は、前記切断刃による前記耳部の切断に伴い、前記耳部の側に位置する前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記耳部で拭き取る
ことを特徴とする付記1に記載の油処理方法。
(付記3)
前記給油工程は、前記切断刃が前記紙材の一方の前記端部である第一耳部を切断する公転周期で、前記第一耳部の側に位置する一方の前記側面に前記オイルを供給する第一給油工程と、前記切断刃が前記紙材の他方の前記端部である第二耳部を切断する公転周期で、前記第二耳部の側に位置する他方の前記側面に前記オイルを供給する第二給油工程とを含み、
前記拭取工程は、前記切断刃による前記第一耳部の切断に伴い、前記第一給油工程で前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記第一耳部で拭き取る第一拭取工程と、前記切断刃による前記第二耳部の切断に伴い、前記第二給油工程で前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記第二耳部で拭き取る第二拭取工程とを含む
ことを特徴とする付記2に記載の油処理方法。
(付記4)
前記給油工程は、前記紙材の前記製品への切り分けが完了してから次の前記紙材の前記製品への切り分けが開始されるまでの紙材交換期間に、両側の前記側面に前記オイルを供給し、
前記拭取工程は、両側の前記側面に供給された前記オイルを、前記紙材とは異なる前記掃除材としての吸油材で前記紙材交換期間に拭き取る
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の油処理方法。
(付記5)
前記切断工程では、公転する前記切断刃によって前記紙材が複数の前記製品に切り分けられ、
前記給油工程は、前記切断刃の前記紙材交換期間における最初の公転時に、両側の前記側面に前記オイルを供給する
ことを特徴とする付記4に記載の油処理方法。
(付記6)
前記拭取工程は、前記紙材交換期間内であって前記給油工程の実施後に、前記切断刃の公転回数に応じた複数回にわたって前記吸油材で前記オイルを拭き取る
ことを特徴とする付記5に記載の油処理方法。
(付記7)
前記給油工程は、前記拭取工程が実施されてから所定数以上の前記製品が切り分けられた後に再び実施される
ことを特徴とする付記1~6のいずれか一つに記載の油処理方法。
(付記8)
紙材を切断刃で複数の製品に切り分ける切断パートに組み込まれた油処理装置であって、
前記切断刃の両側の側面の少なくとも一方にオイルを供給する給油部と、
前記側面に供給された前記オイルが前記製品に触れる前に、前記製品以外の掃除材で当該オイルを拭き取る拭取部と、を備えた
ことを特徴とする油処理装置。
(付記9)
前記切断パートでは、公転する前記切断刃によって前記紙材が複数の前記製品に切り分けられ、
前記給油部は、前記切断刃が前記紙材の端部であって前記製品とならない耳部を切断する公転周期で、前記耳部の側に位置する前記側面に前記オイルを供給し、
前記拭取部は、前記切断刃による前記耳部の切断に伴い、前記耳部の側に位置する前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記耳部で拭き取る
ことを特徴とする付記8に記載の油処理装置。
(付記10)
前記給油部は、前記切断刃が前記紙材の一方の前記端部である第一耳部を切断する公転周期で、前記第一耳部の側に位置する一方の前記側面に前記オイルを供給する第一給油部と、前記切断刃が前記紙材の他方の前記端部である第二耳部を切断する公転周期で、前記第二耳部の側に位置する他方の前記側面に前記オイルを供給する第二給油部とを含み、
前記拭取部は、前記切断刃による前記第一耳部の切断に伴い、前記第一給油部で前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記第一耳部で拭き取る第一拭取部と、前記切断刃による前記第二耳部の切断に伴い、前記第二給油部で前記側面に供給された前記オイルを前記掃除材としての前記第二耳部で拭き取る第二拭取部とを含む
ことを特徴とする付記9に記載の油処理装置。
(付記11)
前記給油部は、前記紙材の前記製品への切り分けが完了してから次の前記紙材の前記製品への切り分けが開始されるまでの紙材交換期間に、両側の前記側面に前記オイルを供給し、
前記拭取部は、両側の前記側面に供給された前記オイルを、前記紙材とは異なる前記掃除材としての吸油材で前記紙材交換期間に拭き取る
ことを特徴とする付記8~10のいずれか一つに記載の油処理装置。
(付記12)
前記切断パートでは、公転する前記切断刃によって前記紙材が複数の前記製品に切り分けられ、
前記給油部は、前記切断刃の前記紙材交換期間における最初の公転時に、両側の前記側面に前記オイルを供給する
ことを特徴とする付記11に記載の油処理装置。
(付記13)
前記拭取部は、前記紙材交換期間内であって前記給油部による前記オイルの供給後に、前記切断刃の公転回数に応じた複数回にわたって前記吸油材で前記オイルを拭き取る
ことを特徴とする付記12に記載の油処理装置。
(付記14)
前記給油部は、前記拭取部で前記オイルが拭き取られてから所定数以上の前記製品が切り分けられた後に再び前記オイルを供給する
ことを特徴とする付記8~13のいずれか一つに記載の油処理装置。
【符号の説明】
【0071】
1 油処理装置
2 耳部
2A 第一耳部
2B 第二耳部
3 製品
4 製造ライン
5 ログ(紙材)
5a 巻き終わり端
5b 下流端部(一端部)
5c コア
5d 上流端部(他端部)
6 給油部
6a 第一給油部
6b 第二給油部
7 拭取部
7A 第一拭取部
7B 第二拭取部
8 掃除材
8A 吸油材
10 ログ形成パート
11 原紙(資材)
12 原反ロール
13 ワインダー
14 糊付パート
19 開口部
20 調整パート
21 アキュームレーター
22 包装袋
23 段ボール箱
30 切断パート
31 ログソー
32 切断刃
33 支持アーム
34 下流面(側面)
35 上流面(側面)
36 中心部
40 包装パート
50 箱詰めパート
A2 自転軸(切断刃32の回転軸)
A3 公転軸(支持アーム33の回転軸)
T1 第一期間(切断刃32が耳部2を切断する公転周期)
T2 第二期間(ログ〔紙材〕交換期間)
T3 第三期間