(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154512
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】原板シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20231013BHJP
B32B 3/02 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063858
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅
(72)【発明者】
【氏名】嶋▲崎▼ 太貴
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 栞
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA01D
4F100AA01H
4F100AA14B
4F100AA14H
4F100AA19B
4F100AA19H
4F100AA20B
4F100AA20H
4F100AD06B
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4F100AK01B
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4F100AK33B
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4F100AK42C
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA23B
4F100DB01
4F100DE01B
4F100DE01H
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EJ34A
4F100GB41
4F100JG04B
4F100JG04D
4F100JL14C
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落を抑制することができる原板シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る原板シートは、少なくとも1枚の絶縁放熱シートを切り出すために用いられる原板シートであって、基材層上に絶縁層が積層された積層シートである第1シートと、該第1シートの前記絶縁層上に積層された第2シートと、を備え、前記絶縁層が、樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物で構成され、前記第1シートの少なくとも一部が前記第2シートよりも外側に延出し、前記絶縁層には前記第2シートの外周縁よりも外側で露出されている露出部が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚の絶縁放熱シートを切り出すために用いられる原板シートであって、
基材層上に絶縁層が積層された積層シートである第1シートと、
該第1シートの前記絶縁層上に積層された第2シートと、を備え、
前記絶縁層が、樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物で構成され、
前記第1シートの少なくとも一部が前記第2シートよりも外側に延出し、前記絶縁層には前記第2シートの外周縁よりも外側で露出されている露出部が設けられている
原板シート。
【請求項2】
前記第1シートと前記第2シートとがいずれも平面視において矩形であり、
前記第1シートの1つの辺と前記第2シートの1つの辺とが距離を隔てて並行し、かつ、前記第2シートの前記辺が前記第1シートの前記辺よりも内側に位置するように、前記第1シートと前記第2シートとが積層されており、
二つの前記辺の間に前記露出部が設けられている
請求項1に記載の原板シート。
【請求項3】
前記第2シートは、前記絶縁層から剥離可能に設けられたセパレータシートである
請求項1または2に記載の原板シート。
【請求項4】
前記第2シートが前記第1シートと同じ前記積層シートであり、
前記第1シートと前記第2シートとが対角線方向に位置ずれして積層され、
前記第2シートの絶縁層にも前記第1シートの外側において露出した露出部が設けられている
請求項2に記載の原板シート。
【請求項5】
前記第2シートの前記露出部が前記第1シートよりも外向きに延出している長さが最大10mmである
請求項4に記載の原板シート。
【請求項6】
前記第1シートの前記露出部が前記第2シートよりも外向きに延出している長さが最大10mmである
請求項1、2、4、または、5に記載の原板シート。
【請求項7】
前記第1シートの前記露出部が前記第2シートよりも外向きに延出している長さが最大10mmである
請求項3に記載の原板シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原板シートに関し、より詳しくは、絶縁放熱シートを切り出すために用いられる原板シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクス分野において、半導体モジュール等での絶縁性を確保するために、絶縁シートを用いることが知られている(例えば、下記特許文献1)。
この絶縁シートとして、従来、樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物によって良好な熱伝導性を有する絶縁層が形成された絶縁放熱シートが知られている。
前記絶縁放熱シートとしては、例えば、熱伝導性と電気絶縁性とに優れた絶縁層が2枚の銅箔の間に介装されたものが知られている。
前記絶縁放熱シートは、半導体モジュールと放熱器との間に着脱自在に介装されて用いられる他に、一方または両方の銅箔を絶縁層から剥離して当該絶縁層を半導体モジュールや放熱器に接着させて用いられることがある。
そのため、前記絶縁層は、接着性に優れるエポキシ樹脂と熱伝導性に優れる無機フィラーとを含む樹脂組成物で構成される場合がある。
【0003】
絶縁放熱シートを半導体モジュールや放熱器などといった被着体に接着させることが想定されるような場合、前記絶縁放熱シートにおいて、一方または両方の前記銅箔が離型紙や離型フィルムなどのセパレータシートに置き換えられることがある。
上記のような絶縁放熱シートは、一旦、当該絶縁放熱シートよりも大きな原板シートを作製した後、パンチングプレスなどの手法によって前記原板シートから切り出されて作製されたりしている。
【0004】
前記原板シートは、例えば、銅箔などで構成された基材層と、樹脂組成物で構成された絶縁層とを備える積層シートを用いて作製される。
前記原板シートは、前記積層シートである第1シートと、これとは別の第2シートとが積層されることにより作製される。
前記第2シートには、前記第1シートと同じ積層シートやセパレータシートが用いられる。
すなわち、前記原板シートは、積層シートを含む2枚のシートを積層することによって作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
絶縁放熱シートには優れた熱伝導性が求められるため、通常、前記絶縁層での無機フィラーの含有量は高い。
前記原板シートを作製する際には、前記絶縁層を構成する樹脂組成物を堅くすべく前記原板シートを厚さ方向に圧縮することがあり、このような場合、前記絶縁層を構成する樹脂組成物が銅箔やセパレータシートなどよりも外側にはみ出すことがある。
無機フィラーの含有量が高い樹脂組成物は、通常、樹脂単体よりも脆い。
そのため、原板シートの端縁部においてはみ出した樹脂組成物は、基材層に支持されている樹脂組成物に比べて原板シートから脱落し易い。
脱落した樹脂組成物は異物となって種々の問題を引き起こすおそれがある。
【0007】
これまで、絶縁層を構成する樹脂組成物がこのような形で異物の発生原因になっていることについては着目されておらず、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落防止については十分な対策が講じられていない。
そのため、従来の原板シートでは、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落を抑制することが困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決すべく、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落を抑制することができる原板シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る原板シートは、
少なくとも1枚の絶縁放熱シートを切り出すために用いられる原板シートであって、
基材層上に絶縁層が積層された積層シートである第1シートと、
該第1シートの前記絶縁層上に積層された第2シートと、を備え、
前記絶縁層が、樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物で構成され、
前記第1シートの少なくとも一部が前記第2シートよりも外側に延出し、前記絶縁層には前記第2シートの外周縁よりも外側で露出されている露出部が設けられている。
【0010】
斯かる構成によれば、前記第1シートの少なくとも一部が前記第2シートよりも外側に延出し、前記絶縁層には前記第2シートの外周縁よりも外側で露出された露出部が設けられているので、前記原板シートを作製する際に前記原板シートを厚さ方向に圧縮したときに、前記露出部を前記第2シートと重ならない部分に向けて移動させることができる。
これにより、原板シートを作製する際に、絶縁層を構成する樹脂組成物が基材層よりも外側にはみ出すことを抑制することができる。
その結果、原板シートにおいて、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落を抑制することができる。
【0011】
上記原板シートでは、
前記第1シートと前記第2シートとがいずれも平面視において矩形であり、
前記第1シートの1つの辺と前記第2シートの1つの辺とが距離を隔てて並行し、かつ、前記第2シートの前記辺が前記第1シートの前記辺よりも内側に位置するように、前記第1シートと前記第2シートとが積層されており、
二つの前記辺の間に前記露出部が設けられている、ことが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、二つの並行する辺の間に前記露出部が設けられているので、前記原板シートを作製する際に前記原板シートを厚さ方向に圧縮したときに、前記露出部を前記第2シートと重ならない部分に向けて均一に移動させ易くなる。
これにより、原板シートを作製する際に、絶縁層を構成する樹脂組成物が基材層よりも外側にはみ出すことをより一層抑制することができる。
その結果、原板シートにおいて、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落をより一層抑制することができる。
【0013】
上記原板シートでは、
前記第2シートは、前記絶縁層から剥離可能に設けられたセパレータシートである、ことが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、前記第2シートはセパレータシートであり、積層シートのように樹脂組成物で構成された絶縁層を備えるものではないので、前記原板シートを作製する際に前記原板シートを厚さ方向に圧縮したときに、樹脂組成物に由来する幅方向への変形を抑制することができる。
そのため、前記原板シートを作製する際に前記原板シートを厚さ方向に圧縮したときに、前記露出部を前記第2シートの側端縁に沿わせて移動させ易くなる。
これにより、原板シートを作製する際に、絶縁層を構成する樹脂組成物が基材層よりも外側にはみ出すことをより十分に抑制することができる。
その結果、原板シートにおいて、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落をより十分に抑制することができる。
【0015】
上記原板シートでは、
前記第2シートが前記第1シートと同じ前記積層シートであり、
前記第1シートと前記第2シートとが対角線方向に位置ずれして積層され、
前記第2シートの絶縁層にも前記第1シートの外側において露出した露出部が設けられている、ことが好ましい。
【0016】
斯かる構成によれば、前記原板シートを作製する際に前記原板シートを厚さ方向に圧縮したときに、前記露出部を前記第2シートと重ならない部分に向けてより一層均一に移動させ易くなる。
これにより、原板シートを作製する際に、絶縁層を構成する樹脂組成物が基材層よりも外側にはみ出すことをより一層抑制することができる。
その結果、原板シートにおいて、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落をより一層抑制することができる。
【0017】
上記原板シートでは、
前記第2シートの前記露出部が前記第1シートよりも外向きに延出している長さが最大10mmである、ことが好ましい。
【0018】
斯かる構成によれば、前記原板シートを作製する際に前記原板シートを厚さ方向に圧縮したときに、前記露出部を前記第2シートと重ならない部分に向けてより十分に移動させ易くなる、
これにより、原板シートを作製する際に、絶縁層を構成する樹脂組成物が基材層よりも外側にはみ出すことをより一層抑制することができる。
その結果、原板シートにおいて、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落をより一層抑制することができる。
【0019】
上記原板シートでは、
前記第1シートの前記露出部が前記第2シートよりも外向きに延出している長さが最大10mmである、ことが好ましい。
【0020】
斯かる構成によれば、前記原板シートを作製する際に前記原板シートを厚さ方向に圧縮したときに、前記露出部を前記第2シートと重ならない部分に向けてより十分に移動させ易くなる。
これにより、原板シートを作製する際に、絶縁層を構成する樹脂組成物が基材層よりも外側にはみ出すことをより一層抑制することができる。
その結果、原板シートにおいて、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落を抑制することができる原板シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)本発明の第一実施形態に係る原板シートの全体構成を示す斜視図。(b)本発明の第一実施形態に係る原板シートのy軸方向からの側面図。
【
図2】(a)本発明の第二実施形態に係る原板シートの全体構成を示す斜視図。(b)本発明の第二実施形態に係る原板シートのy軸方向からの側面図。(c)本発明の第に実施形態に係る原板シートのx軸方向からの側面図。
【
図3】第一実施形態に係る原板シートを厚さ方向に圧縮した様子を示すy軸方向からの側面図。
【
図4】(a)第二実施形態に係る原板シートを厚さ方向に圧縮した様子を示すy軸方向からの側面図。(b)第二実施形態に係る原板シートを厚さ方向に圧縮した様子を示すx軸方向からの側面図。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る原板シートの別の全体構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る原板シートについて説明する。
本発明に係る原板シートは、少なくとも1枚の絶縁放熱シートを切り出すために用いられる。
本発明に係る原板シートは、基材層上に絶縁層が積層された積層シートである第1シートと、該第1シートの前記絶縁層上に積層された第2シートと、を備える。
本発明に係る原板シートでは、前記絶縁層が、樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物で構成されている。
本発明に係る原板シートでは、前記第1シートの少なくとも一部が前記第2シートよりも外側に延出し、前記絶縁層には前記第2シートの外周縁よりも外側で露出されている露出部が設けられている。
【0024】
原板シートの平面視における寸法は、1枚の絶縁放熱シートを切り出すことができる大きさであってもよい。
また、原板シートの平面視における寸法は、複数の絶縁放熱シートを切り出すことができる大きさであってもよい。
原板シートの平面視における寸法は、目的に応じた適当な大きさとされる。
【0025】
本発明に係る原板シートでは、前記第1シートと前記第2シートとがいずれも平面視において矩形であることが好ましい。
また、本発明に係る原板シートでは、前記第1シートの1つの辺と前記第2シートの1つの辺とが距離を隔てて並行し、かつ、前記第2シートの前記辺が前記第1シートの前記辺よりも内側に位置するように、前記第1シートと前記第2シートとが積層されており、二つの前記辺の間に前記露出部が設けられている、ことが好ましい。
【0026】
(第一実施形態)
以下では、まず、
図1(a)及び(b)を参照しながら、本発明の第一実施形態に係る原板シートとして、前記第1シートと前記第2シートとがいずれも平面視において矩形であり、前記第2シートがセパレータシートである態様を例に挙げて説明する。
なお、
図1(a)では、z軸方向を高さ方向とし、y軸方向を幅方向とし、x軸方向を長さ方向として、本発明の第一実施形態に係る原板シート10について説明する。
【0027】
図1(a)及び(b)に示したように、第一実施形態に係る原板シート10は、基材層1a上に絶縁層1bが積層された積層シートである第1シート1と、第1シート1の絶縁層1b上に積層された第2シート2と、を備えている。
なお、上で説明したように、第一実施形態に係る原板シート10では、第2シートは、セパレータシートである。
【0028】
第一実施形態に係る原板シート10では、第1シート1及び第2シート2は、平面視において略同一寸法の矩形状に構成されている。
図1(a)に示したように、第1シート1は、x軸方向において距離を隔てられて配され、y軸方向に沿って並行して延びる第1辺E1a及び第2辺E1bと、y軸方向において距離を隔てられて配され、x軸方向に沿って並行して延びる第3辺E1c及び第4辺E1dとを備える。
そして、第1辺E1a及び第2辺E1bと、第3辺E1c及び第4辺E1dとは、平面視において、互いに直角をなすように結合されて、第1シート1の平面視における矩形を形成している。
第2シート2も、第1シート1と同様に、x軸方向において距離を隔てて配され、y軸方向に沿って並行して延びる第1’辺E2a及び第2’辺E2bと、y軸方向において距離を隔てて配され、x軸方向に沿って並行して延びる第3’辺E2c及び第4’辺E2dとを備える。
そして、第1’辺E2a及び第2’辺E2bと、第3’辺E2cと第4’辺E2dとは、平面視において、互いに直角をなすように結合されて、第2シート2の平面視における矩形を形成している。
【0029】
図1(a)及び(b)に示したように、第一実施形態に係る原板シート10では、第2シート2は、幅方向(y軸方向)に距離を隔てて配される第3’辺E2c及び第4’辺E2dを、幅方向(y軸方向)に距離を隔てて配される第1シート1の第3辺E1c及び第4辺E1dにそれぞれ重ねた状態で、長さ方向(x軸方向)において第1シート1と位置ずれされている。
すなわち、第一実施形態に係る原板シート10では、長さ方向の一方側において、第1シート1の第1辺E1aと第2シート2の第1’辺E2aとは、第1’辺E2aが第1辺E1aよりも内側に位置するように距離を隔てて並行しており、第1辺E1aと第1’辺E2aとの間に、第1シート1の露出部Ex1が設けられている。
そして、第一実施形態に係る原板シート10では、このような露出部Ex1が設けられることにより、第1シート1の絶縁層1bの一部が表面露出している。
なお、第一実施形態に係る原板シート10では、長さ方向の他方側において、第1シート1の第2辺E1bと第2シート2の第2’辺E2bとの間に、第2シート2の露出部Ex2が設けられており、このような露出部Ex2が設けられることにより、第2シート2たるセパレータシートにおける第1シート1と積層される側の面の一部が表面露出されている。
【0030】
第1シート1の露出部Ex1が第2シート2よりも外向きに延出している長さは、最大10mmであることが好ましい。
前記長さは、8mm以下であってもよく、7mm以下であってもよく、6mm以下であってもよい。
また、前記長さは、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよく、4mm以上であってもよい。
【0031】
第1シート1の基材層1aは、各種公知の基材シートによって構成される。
前記基材シートとしては、例えば、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリイミドフィルムなどの樹脂フィルム;銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔などの金属箔などを用いることができる。
金属箔は複数の金属層を有するクラッド材であってもよい。
また、前記ポリエステル樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられ、前記ポリオレフィン樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、外形加工性の良く安価であるという観点から、基材層1aを構成する前記基材シートには、ポリエチレンテレフタレート樹脂で構成された樹脂フィルムを用いることが好ましい。
基材層1aを構成する前記基材シートは、絶縁層1bに積層される側の面に粗面化処理(マット処理)や離型処理などが施されていてもよい。
あるいは、前記基材シートは、未処理の状態であってもよい。
前記基材シートに離型処理を施すことにより、第1シート1において、絶縁層1bから基材層1aを剥離し易くなる。
また、前記基材シートに粗面化処理を施しておくことにより、第1シート1において、基材層1aに絶縁層1bをより十分に保持させることができる。
【0032】
なお、前記第2シートたるセパレータシートとしても、上記したのと同様の樹脂フィルムを用いることができる。
【0033】
また、熱伝導性に優れるものとする観点から、基材層1aは、金属箔を用いることが好ましく、金属箔の中でも、銅箔及びアルミニウム箔を用いることがより好ましい。
前記銅箔は、黒化処理などの酸化処理が施されたものであってもよく、ブラスト処理などのマット処理(粗面化処理)が施されたものであってもよい。
前記アルミニウム箔は、リン酸アルマイト処理や硫酸アルマイト処理などのアルマイト処理が施されたものであってもよいし、封孔処理などが施されたものであってもよい。
【0034】
基材層1aの厚さは特に限定されない。
基材層1aの厚さは、例えば、0.02mm(20μm)以上とすることができる。
基材層1aの厚さは、0.05mm以上であってもよく、0.1mm以上であってもよく、0.2mm以上であってもよく、0.3mm以上であってもよく、0.4mm以上であってもよい。
基材層1aの厚さは、0.5mm以上であってもよく、0.8mm以上であってもよい。
基材層1aの厚さは、例えば、10mm以下とすることができる。
基材層1aの厚さは、8mm以下であってもよく、6mm以下であってもよく、4mm以下であってもよい。
基材層1aの厚さは、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよい。
基材層1aの厚さは、マイクロメータなどを用いて測定することができる。
具体的には、マイクロメータなどを用いて、基材層1aの無作為に選んだ10箇所の厚さを測定し、これら測定値を算術平均することにより求めることができる。
【0035】
上で説明したように、第一実施形態に係る原板シート10では、第1シート1の絶縁層1bは、樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物で構成されている。
【0036】
前記樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0037】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルアミドイミド樹脂、ポリエーテルアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。
また、前記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。
【0038】
前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの各種エポキシ樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
前記フェノール樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ノボラックフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、トリフェニルメタン型フェノール樹脂は、耐熱性において有利であり、フェノールアラルキル樹脂は、絶縁放熱シートを被着体に接着する場合に、被着体との間に良好な接着性を示す点で好ましく用いられる。
【0039】
前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、前記樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂の熱硬化性を調整する観点から、前記エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤を含んでいてもよい。
前記硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
また、前記硬化剤としては、ノボラックフェノール型フェノール樹脂なども用いることができる。
前記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類やアミン類などを用いることができる。前記アミン類としては、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどが挙げられる。
【0040】
前記熱硬化性樹脂として前記フェノール樹脂を用いる場合、前記樹脂組成物は、前記フェノール樹脂の熱硬化性を調整する観点から、前記フェノール樹脂の硬化剤を含んでいてもよい。
前記硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、各種の2官能以上のエポキシ化合物、イソシアネート類、トリオキサン、及び、環状ホルマールなどが挙げられる。
【0041】
前記無機フィラーとしては、前記樹脂よりも熱伝導率が高いものであれば特に限定されない。
前記無機フィラーとしては、無機窒化物フィラー、無機酸化物フィラー、ダイヤモンド、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
前記無機窒化物フィラーとしては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などが挙げられる。
前記無機酸化物フィラーとしては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などが挙げられる。
これらの中でも、前記無機フィラーは、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び、酸化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記無機フィラーは、窒化ホウ素及び酸化アルミニウムを含む混合品、窒化ホウ素及び酸化ケイ素を含む混合品、または、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び、酸化ケイ素を含む混合品であることが好ましい。
前記混合品において、窒化ホウ素の含有量は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0042】
絶縁層1bが前記無機フィラーとして窒化ホウ素を含む場合、絶縁層1bにおける窒化ホウ素の含有量は、30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることがさらに好ましい。
窒化ホウ素の含有量が30体積%以上であることにより、絶縁層1bは熱伝導性に優れるものとなる。
一方で、絶縁層1bに優れた接着性、機械的強度、及び、電気絶縁性を発揮させる観点から、窒化ホウ素の含有量は75体積%以下であることが好ましい。
なお、絶縁層1bにおける窒化ホウ素の含有量は、20℃における値を意味する。
【0043】
絶縁層1bを構成するための前記樹脂組成物は、各種添加剤を含んでいてもよい。
前記添加剤としては、分散剤、粘着性付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、顔料といったプラスチック配合薬品として一般に用いられるものが挙げられる。
【0044】
第一実施形態に係る原板シート10において、絶縁層1bは、熱伝導率が5W/m・K以上であることが好ましく、7W/m・K以上であることがより好ましく、10W/m・K以上であることがさらに好ましい。
なお、上で説明したように、絶縁層1bに優れた接着性、機械的強度、及び、電気絶縁性を発揮させる観点から、絶縁層1bにおける前記無機フィラーの含有量は制限される。
そのため、絶縁層1bの熱伝導率の上限値は、通常、30W/m・Kである。
【0045】
第一実施形態に係る原板シート10において、絶縁層1bは、体積抵抗率が1×1012Ω・cm以上であることが好ましく、体積抵抗率が1×1013Ω・cm以上であることが好ましい。
体積抵抗率が1×1012Ω・cm以上であることにより、絶縁層1bは電気絶縁性を十分に発揮することができる。
なお、絶縁層1bには前記無機フィラーが高充填されるため、絶縁層1bに過度な電気絶縁性を期待することは難しい。
そのため、絶縁層1bでは、体積抵抗率の上限値は、通常、1×1018Ω・cmである。
【0046】
絶縁層1bの厚さは特に限定されない。
絶縁層1bの厚さは、例えば、30μm以上とすることができる。
絶縁層1bの厚さは、50μm以上であってもよいし、100μm以上であってもよいし、150μm以上であってもよいし、200μm以上であってもよいし、250μm以上であってもよい。
絶縁層1bの厚さは、例えば、1000μm以下とすることができる。
絶縁層1bの厚さは、750μm以下であってもよいし、600μm以下であってもよいし、450μm以下であってもよい。
絶縁層1bの厚さは、上で説明した基材層1aの厚さと同様にして測定することができる。
【0047】
第2シート2は、絶縁層1bから剥離可能に設けられている。
第一実施形態に係る原板シート10において、第2シート2たるセパレータシートは、各種公知の樹脂フィルムから構成することができる。
前記樹脂フィルムとしては、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルムなどが挙げられる。
絶縁層1bからの剥離性を向上させる観点から、前記樹脂フィルムには、絶縁層1bに積層される側の面に離型処理が施されていてもよい。
【0048】
第一実施形態に係る原板シート10において、第2シート2たるセパレータシートの厚さは、特に限定されない。
セパレータシートの厚さは、例えば、25μm以上とすることができる。
セパレータシートの厚さは、50μm以上であってもよく、75μm以上であってもよい。
セパレータシートの厚さは、例えば、500μm以下とすることができる。
セパレータシートの厚さは、250μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。
セパレータシートの厚さは、上で説明した基材層1aの厚さと同様にして測定することができる。
【0049】
(第二実施形態)
次に、
図2(a)及び(b)を参照しながら、本発明の第二実施形態に係る原板シートとして、前記第1シートと前記第2シートとがいずれも平面視において矩形であり、第2シートが前記第1シートと同じ積層シートである態様を例に挙げて説明する。
【0050】
図2(a)及び(b)に示したように、第二実施形態に係る原板シート10’は、第一実施形態に係る原板シート10と同様に、基材層1a上に絶縁層1bが積層された積層シートである第1シート1と、第1シート1の絶縁層1b上に積層された第2シート2と、を備えている。
第二実施形態に係る原板シート10’においても、基材層1a、基材層2a、絶縁層1b、及び、絶縁層2bは、第一実施形態に係る原板シート10において説明したのと同様に構成されているので、これらの説明については繰り返さない。
【0051】
上で説明したように、第二実施形態に係る原板シート10’では、第2シート2は、第1シート1と同じ積層シートであり、基材層2a上に絶縁層2bが積層された積層シートである(
図2(a)及び(b)を参照)。
図2(a)及び(b)に示したように、第二実施形態に係る原板シート10’では、第2シート2は、絶縁層2bを第1シート1の絶縁層1bに当接させた状態で、第1シート1の絶縁層1b上に積層される。
すなわち、第二実施形態に係る原板シート10’は、絶縁層どうし(絶縁層1b及び絶縁層2b)を当接させた状態で二枚の積層シートを重ねることにより構成されている。
そのため、第二実施形態に係る原板シート10’では、2層の基材層(基材層1a及び基材層2a)の間に、絶縁層の積層体(絶縁層1b及び絶縁層2bの積層体)が介装されている。
【0052】
第二実施形態に係る原板シート10’では、第1シート1及び第2シート2は、平面視において略同一寸法の矩形状に構成されている。
図2(a)に示したように、第二実施形態に係る原板シート10’では、第1シート1と第2シート2とは、対角線方向Dd(図中において矢印で示した方向)に位置ずれして積層されている。
【0053】
第二実施形態に係る原板シート10’は、上記のように構成されているので、第1シート1の絶縁層1bに加えて、第2シート2の絶縁層2bにも第1シート1の外側において露出した露出部Ex2’が設けられている。
具体的には、第二実施形態に係る原板シート10’では、
図2(b)に示したように、長さ方向(x軸方向)の一方側において、第1シート1の第1辺E1aと第2シート2の第1’辺E2aとの間に第1シート1の絶縁層1bの露出部Ex1が設けられていることに加えて、長さ方向(x軸方向)の他方側において、第1シート1の第2辺E1bと第2シート2の第2’辺E2bとの間に第2シート2の絶縁層2bの露出部Ex2’が設けられている。
また、第二実施形態に係る原板シート10’では、
図2(c)に示したように、幅方向(y軸方向)の一方側において、第1シート1の第4辺E1dと第2シート2の第4’辺E2dとの間に第1シート1の絶縁層1bの露出部Ex1が設けられていることに加えて、幅方向(y軸方向)の他方側において、第1シート1の第3辺E1cと第2シート2の第3’辺E2cとの間に第2シートの絶縁層2bの露出部Ex2’が設けられている。
【0054】
すなわち、第二実施形態に係る原板シート10’では、露出部Ex1及び露出部Ex2’は、L字状をなし、かつ、対角線方向Ddを基準として面対称となる箇所に設けられている。
【0055】
第一実施形態に係る原板シート10と同様に、第二実施形態に係る原板シート10’においても、第1シート1の露出部Ex1が第2シート2よりも外向きに延出している長さは、最大10mmであることが好ましい。
前記長さは、8mm以下であってもよく、7mm以下であってもよく、6mm以下であってもよい。
また、前記長さは、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよく、4mm以上であってもよい。
【0056】
第二実施形態に係る原板シート10’においては、第2シート2の露出部Ex2’が第1シート1よりも外向きに延出している長さは、最大10mm以下であることが好ましい。
前記長さは、8mm以下であってもよく、7mm以下であってもよく、6mm以下であってもよい。
また、前記長さは、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよく、4mm以上であってもよい。
【0057】
第一実施形態に係る原板シート10は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0058】
まず、上記した樹脂組成物を有機溶媒と混合して、塗布用組成物を調製する。
前記有機溶媒としては、前記樹脂組成物に含まれる樹脂を溶解可能なものが用いられる。このような有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
塗布用組成物の調製は、上記した樹脂組成物と有機溶媒とを撹拌装置を用いて混合することにより実施できる。
前記撹拌装置としては、ボールミル、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、三本ロールミルなどが挙げられる。
【0059】
次に、基材層1aの一表面に、前記塗布用組成物を所望の厚さで塗布する。
前記塗布用組成物の塗布は、コーティング装置を用いて実施することができる。
前記コーティング装置としては、グラビヤロールコータ、リバースロールコータ、キスロールコータ、ナイフコータ、コンマコータ、ダイレクトコータなどが挙げられる。
なお、上記のごときコーティング装置を用いて塗布を実施する場合、基材層1aは、通常、ロール状に巻き取られた状態で前記コーティング装置に装着される。
【0060】
次に、前記塗布用組成物が塗布された基材層1aを乾燥炉に導入して、前記塗布用組成物中に含まれる前記有機溶媒を除去して、基材層1a上に絶縁層1bが積層された積層シート(第1シート1)を得る。
前記有機溶媒の除去は、例えば、前記塗布用組成物が塗布された基材層1aを一般的な加熱乾燥炉を所定の時間をかけて通過させることにより実施することができる。
【0061】
次に、第1シート1の絶縁層1bの一部が表面露出するように、第1シート1の絶縁層1b上に第2シート2たるセパレータシートを積層させる。
具体的には、
図1(a)に示したように、幅方向(y軸方向)に距離を隔てて配される第2シート2の第3’辺E2c及び第4’辺E2dを、幅方向(y軸方向)に距離を隔てて配される第1シート1の第3辺E1c及び第4辺E1dにそれぞれ重ねた状態で、長さ方向(x軸方向)において第1シート1と位置ずれするように、第1シート1の絶縁層1b上に第2シート2たるセパレータシートを積層させる。
これにより、第1シート1の第1辺E1aと第2シートの第1’辺E2aとの間に露出部Ex1が設けられた原板シート10を得ることができる。
なお、第1シート1の絶縁層1b上への第2シート2たるセパレータシートの積層は、各種公知のシート積層装置を用いて実施することができる。
【0062】
また、第二実施形態に係る原板シート10’は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0063】
まず、第一実施形態に係る原板シート10の製造において説明したのと同様にして、基材層上に絶縁層が積層された一組の積層シートを得る。
具体的には、基材層1a上に絶縁層1bが積層された第1シート1と、基材層2a上に絶縁層2bが積層された第2シート2とを得る。
【0064】
次に、
図2(a)に示したように、対角線方向Dd(図中において矢印で示した方向)に位置ずれさせて、第1シート1に第2シート2を積層させる。
第1シート1への第2シート2の積層は、第1シート1の絶縁層1b上に第2シート2の絶縁層2bを当接させるように実施する。
これにより、L字状をなした第1シート1の絶縁層1bの露出部Ex1と、L字状をなした第2シート2の絶縁層2bの露出部Ex2’とが、対角線方向Ddを基準として面対称となる箇所に設けられた原板シート10’を得ることができる。
なお、第1シート1の絶縁層1b上への第2シート2の絶縁層2bの積層は、各種公知のシート積層装置を用いて実施することができる。
【0065】
上で説明した、第一実施形態に係る原板シート10及び本発明の第二実施形態に係る原板シート10’は、絶縁放熱シートを得るために用いられる。
前記絶縁放熱シートは、ポンチ及びダイスを用いたパンチングプレスなどによって、原板シート10及び原板シート10’を所定の形状及び大きさに切断することによって得られる。
ここで、絶縁放熱シートとされたときに該絶縁放熱シートの熱伝導性を高める観点から、原板シート10の絶縁層1bを構成する樹脂組成物、並びに、原板シート10’の絶縁層1bを構成する樹脂組成物及び原板シート10’の絶縁層2bを構成する樹脂組成物には、通常、無機フィラーが高充填されている。
そのため、上記のごとき樹脂組成物は、非常に脆く崩れやすいので、原板シート10及び原板シート10’をこのままの状態でパンチングプレスなどによって切断すると、切断中に原板シート10の絶縁層1bや原板シート10’の絶縁層1b及び絶縁層2bが崩れてしまい、良好な切断を実施できなくなることがある。
したがって、原板シート10及び原板シート10’をパンチングプレスなどによって切断する前に、原板シート10の絶縁層1bを構成する樹脂組成物、並びに、原板シート10’の絶縁層1bを構成する樹脂組成物及び絶縁層2bを構成する樹脂組成物を十分な堅さを有するものとすべく、原板シート10及び原板シート10’を厚さ方向に圧縮することがある。
【0066】
ここで、第一実施形態に係る原板シート10では、
図1(a)及び
図1(b)に示したように、第1シート1の第1辺E1aと第2シートの第1’辺E2aとの間に露出部Ex1が設けられている。
すなわち、第一実施形態に係る原板シート10では、第2シート2たるセパレータシートのx軸方向(長さ方向)における端縁よりも外側で露出されるように、第1シート1の絶縁層1bが設けられているので、
図3に示したように、原板シート10を厚さ方向に圧縮した場合において、第2シートたるセパレータシートのx軸方向における端縁よりも外側に露出している絶縁層1bの一部を厚さ方向に移行させることができる。
これにより、基材層1aのx軸方向における端縁よりも外側に絶縁層1bの一部がはみ出すことを抑制できるので、絶縁層1bを構成する樹脂組成物が原板シート10から脱落することを抑制することができる。
【0067】
また、第二実施形態に係る原板シート10’では、
図2(a)~
図2(c)に示したように、L字状をなした第1シート1の絶縁層1bの露出部Ex1と、L字状をなした第2シート2の絶縁層2bの露出部Ex2’とが、対角線方向Ddを基準として面対称となる箇所に設けられている。
すなわち、第二実施形態に係る原板シート10’では、第1シート1の絶縁層1bは、第2シートたる積層シートのx軸方向(長さ方向)及びy軸方向(幅方向)における一端縁よりも外側に露出されるように設けられ、第2シート2の絶縁層2bは、第1シート1たる積層シートのx軸方向(長さ方向)及びy軸方向(幅方向)における他端縁よりも外側に露出されるように設けられている。
そのため、
図4(a)及び4(b)に示したように、原板シート10’を厚さ方向に圧縮した場合において、x軸方向(長さ方向)及びy軸方向(幅方向)における一端縁よりも外側に露出している絶縁層1bの一部を厚さ方向に移行させることができ、さらに、x軸方向(長さ方向)及びy軸方向(幅方向)における他端縁よりも外側に露出している絶縁層2bの一部を厚さ方向に移行させることができる。
これにより、基材層1aのx軸方向及びy軸方向の一端縁よりも外側に絶縁層1bの一部がはみ出すことを抑制できることに加えて、基材層2aのx軸方向及びy軸方向の他端縁よりも外側に絶縁層2bの一部がはみ出すことを抑制できるので、絶縁層1bを構成する樹脂組成物及び絶縁層2bを構成する樹脂組成物が、原板シート10’から脱落することを抑制することができる。
すなわち、絶縁層1b及び絶縁層2bの積層体を構成する樹脂組成物が原板シート10’から脱落することを抑制することができる。
【0068】
なお、第一実施形態に係る原板シート10において、第2シート2たるセパレータシートのx軸方向(長さ方向)における端縁よりも外側で露出している絶縁層1b部分については、絶縁放熱シートを構成するためには使用されずに、原板シート10から少なくとも1つの絶縁放熱シートが切り出された後に、廃棄などされる。
また、第二実施形態に係る原板シート10’において、第2シートたる積層シートのx軸方向(長さ方向)及びy軸方向(幅方向)における一端縁よりも外側に露出している絶縁層1b部分、及び、第1シート1たる積層シートのx軸方向(長さ方向)及びy軸方向(幅方向)における他端縁よりも外側に露出している絶縁層2b部分についても、絶縁放熱シートを構成するためには使用されず、原板シート10’から少なくとも1つの絶縁放熱シートが切り出された後に、廃棄などされる。
【0069】
本発明に係る原板シートは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る原板シートは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る原板シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
上記第一実施形態に係る原板シート10では、第2シート2がセパレータシートで構成されていて、
図1(a)に示したように、第2シート2は、幅方向(y軸方向)に距離を隔てて配される第3’辺E2c及び第4’辺E2dを、幅方向(y軸方向)に距離を隔てて配される第1シート1の第3辺E1c及び第4辺E1dにそれぞれ重ねた状態で、長さ方向(x軸方向)において第1シート1と位置ずれされている例について説明したが、第2シート2がセパレータシートで構成されている場合の位置ずれの態様はこれに限定されるものではない。
例えば、第2シート2がセパレータシートで構成されている場合においても、
図2(a)に示したように、原板シート10は、第1シート1と第2シート2とが対角線方向(
図2(a)において矢印で示した方向)に位置ずれするように積層されていてもよい。
あるいは、
図5に示したように、第2シート2を第1シート1よりも平面寸法が小さい平面視矩形状の構成し、第2シート2の四辺よりも外側で絶縁層1bが露出するように、第1シート1と第2シート2とを位置ずれさせてもよい。
【0071】
上記第二実施形態に係る原板シート10’では、第2シート2が第1シート1と同じ積層シートで構成されていて、
図2(a)に示したように、第1シート1と第2シート2とが対角線方向(
図2(a)において矢印で示した方向)に位置ずれするように積層されていている例について説明したが、第2シート2が積層シートで構成されている場合の位置ずれの態様はこれに限定されるものではない。
例えば、第2シート2が積層シートで構成されている場合においても、
図1に示したように、第2シート2は、幅方向(y軸方向)に距離を隔てて配される第3’辺E2c及び第4’辺E2dを、幅方向(y軸方向)に距離を隔てて配される第1シート1の第3辺E1c及び第4辺E1dにそれぞれ重ねた状態で、長さ方向(x軸方向)において第1シート1と位置ずれされていてもよい。
【0072】
要すれば、第一実施形態に係る原板シート10においては、第1シート1の絶縁層1bの少なくとも一部が露出するように、第1シート1及び第2シート2が積層されていればよく、第二実施形態に係る原板シート10’においては、第1シート1の絶縁層1bの少なくとも一部、及び、第2シート2の絶縁層2bの少なくとも一部が露出するように、第1シート1及び第2シートが積層されていればよい。
【0073】
また、上記第一実施形態及び上記第二実施形態では、第1シート1及び第2シート2が平面視において矩形状をなす例について説明したが、第1シート1及第2シート2の平面視における形状は、矩形状には限られない。
第1シート1及び第2シート2の平面視における形状は、矩形を除く多角形状(例えば、五角形状、六角形状、八角形状)などであってもよいし、円形状や楕円形状などであってもよい。
【実施例0074】
(実施例1)
[第1シート]
略全体が凝集粒子となっている窒化ホウ素粒子(メジアン径:24μm)、酸化アルミニウム粒子(メジアン径:0.9μm)、及び、酸化ケイ素粒子(一次粒子径:0.007μm)の合計が、固形分に占める割合が55体積%となるように、窒化ホウ素粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化ケイ素粒子、エポキシ樹脂(トリフェニルメタン(TMP)型エポキシ樹脂)、フェノール樹脂(フェノールアラルキル型フェノール樹脂)、及び、リン系硬化促進剤(TPP-K)を有機溶媒に分散させてワニスを調製した。
なお、窒化ホウ素粒子、酸化アルミニウム粒子、及び、酸化ケイ素粒子の合計に占める窒化ホウ素粒子の体積比率(BN比率)は、50%とした。
サンドブラストによってマット処理されたPETフィルム(基材層。平面寸法500mm×500mm、厚み100μm)に、前記ワニスを塗布・乾燥して前記PETフィルム上に熱硬化性樹脂組成物からなる乾燥被膜を形成した。
なお、前記ワニスは、前記PETフィルムにおけるマット処理された側に塗布し、乾燥被膜(絶縁層)の厚さは100μmであった。
これにより、実施例1に係る第1シートを得た。
[第2シート]
実施例1に係る第2シートとして、サンドブラストによってマット処理されたPETフィルム(平面寸法500mm×500mm、厚み100μm)を準備した。
[原板シート]
図1(a)及び(b)に示したように、前記第1シートと前記第2シートとを重ね合せて第1積層体を得た後、該第1積層体を厚さ方向に圧縮して、実施例1に係る原板シートを得た。
前記第1シートと前記第2シートとは、前記第1シートの絶縁層と前記第2シートのマット処理面が当接するように重ね合せた。
また、前記第1シートの露出部(
図1(a)及び(b)においてはEx1)が前記第2シートよりも外向きに延出している長さは、5mmであった。
さらに、前記第1積層体の厚さ方向への圧縮は、温度120℃の環境下において、圧力5MPaで20分間実施した。
【0075】
(実施例2)
前記第1シートの露出部(
図1(a)及び(b)においてはEx1)が前記第2シートよりも外向きに延出している長さを10mmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る原板シートを得た。
【0076】
(比較例1)
前記第1シートの露出部(
図1(a)及び(b)においてはEx1)が前記第2シートよりも外向きに延出している長さを0mmとした以外、すなわち、露出部がないように前記第1シートと前記第2シートとを重ね合せた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る原板シートを得た。
【0077】
(実施例3)
[第1シート]
実施例1と同様にして、第1’シートを準備した。
[第2シート]
実施例3に係る第2’シートとして、実施例1の第1シートと同様のPETフィルム上に絶縁層が形成されたシートを準備した。
[原板シート]
図2(a)~(c)に示したように、前記第1’シートと前記第2’シートとを重ね合せて第2積層体を得た後、該第2積層体を厚さ方向に圧縮して、実施例3に係る原板シートを得た。
前記第1’シートと前記第2’シートとは、前記第1’シートの絶縁層と前記第2’シートの絶縁層とが当接するように重ね合せた。
また、前記第1’シートの露出部(
図2(a)~(c)においてはEx1)が前記第2’シートよりも外向きに延出している長さ、及び、前記2’シートの露出部(
図2(a)~(c)においてはEx2’)が前記第1’シートよりも外向きに延出している長さは、共に、5mmであった。
さらに、前記第2積層体の厚さ方向への圧縮は、実施例1と同じ条件で実施した。
【0078】
(実施例4)
第1’シートの露出部(
図2(a)~(c)においてはEx1)が前記第2’シートよりも外向きに延出している長さ、及び、前記第2’シートの露出部(
図2(a)~(c)においてはEx2’)が前記第1’シートよりも外向きに延出している長さを、共に、10mmとした以外は、実施例3と同様にして、実施例4に係る原板シートを得た。
【0079】
(比較例2)
第1’シートの露出部(
図2(a)~(c)においてはEx1)が前記第2’シートよりも外向きに延出している長さ、及び、第2’シートの露出部(
図2(a)~(c)においてはEx2’)が前記第1’シートよりも外向きに延出している長さを、共に、0mmとした以外、すなわち、露出部がないように前記第1’シートと前記第2’シートとを重ね合せた以外は、実施例3と同様にして、比較例2に係る原板シートを得た。
【0080】
<原板シートの端縁からの絶縁層のはみ出し量>
各例に係る原板シートについて、原板シートの端縁からの絶縁層のはみ出し量を測定した結果を、以下の表1に示した。
原板シートの端縁からの絶縁層のはみ出し量は、ノギスを用いて、任意の5箇所について測定を行い、その測定値を算術平均することにより求めた。
【0081】
【0082】
上記表1より、
図1(a)及び(b)に示した露出部Ex1、並びに、
図2(a)~(c)に示した露出部Ex1及びEx2’を設けることにより、得られる原板シート(実施例1~4の原板シート)は、絶縁層のはみ出し量が抑制されたものとなることが確認された。
このことから、実施例1~4の原板シートでは、絶縁層を構成する樹脂組成物の脱落を抑制することができると考えられる。