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特開2023-154517ベルトコンベヤ停止装置、及び異常個所検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154517
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ベルトコンベヤ停止装置、及び異常個所検知システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20231013BHJP
   E21F 13/08 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
E21D9/12 B
E21F13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063867
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】592093833
【氏名又は名称】青山機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大介
(72)【発明者】
【氏名】副島 幸也
(72)【発明者】
【氏名】山中 純士
(72)【発明者】
【氏名】土門 修一
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB03
2D054AC20
2D054BA30
2D054DA04
2D054GA06
2D054GA17
2D054GA58
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわちベルトコンベヤの異常個所を検知することができるベルトコンベヤ停止装置とこれを備えた異常個所検知システムを提供することである。
【解決手段】本願発明のベルトコンベヤ停止装置は、稼働中のベルトコンベヤを停止する装置であって、引綱を有する「引綱スイッチ」と可視光を出力する「検知灯」を備えたものである。このうち引綱スイッチは、引綱が引張されるとベルトコンベヤを停止させるものであり、引綱スイッチに接続される検知灯は、引綱スイッチがベルトコンベヤを停止すると可視光を出力するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼働中のベルトコンベヤを停止する装置であって、
引綱を有する引綱スイッチと、
前記引綱スイッチに接続され、可視光を出力する検知灯と、を備え、
前記引綱スイッチは、前記引綱が引張されるとベルトコンベヤを停止し、
前記検知灯は、前記引綱スイッチがベルトコンベヤを停止すると可視光を出力する、
ことを特徴とするベルトコンベヤ停止装置。
【請求項2】
前記引綱スイッチは、接点切替スイッチと2以上のケーブル接点を有し、
前記検知灯に接続される2本の点灯用ケーブルは、それぞれ異なる前記ケーブル接点に接続され、
前記引綱が引張されると、前記点灯用ケーブルが接続された前記ケーブル接点間を前記接点切替スイッチが接続することによって、前記検知灯が可視光を出力する、
ことを特徴とする請求項1記載のベルトコンベヤ停止装置。
【請求項3】
前記検知灯は、着脱可能に2本の前記点灯用ケーブルに取り付けられるとともに、携行可能であり、
前記点灯用ケーブルから取り外された前記検知灯は、電源操作を行うことで可視光を出力する、
ことを特徴とする請求項2記載のベルトコンベヤ停止装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の前記ベルトコンベヤ停止装置を利用して、ベルトコンベヤの異常個所を検知するシステムであって、
ベルトコンベヤと、
ベルトに沿って間隔を設けたうえで複数個所に設置される前記ベルトコンベヤ停止装置と、を備え、
ベルトコンベヤを停止した前記引綱スイッチに係る前記検知灯が可視光を出力することによって、ベルトコンベヤの異常個所を検知することができる、
ことを特徴とする異常個所検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、トンネル掘削によって生じたズリを坑口方面に送り出すベルトコンベヤに関するものであり、より具体的には、ベルトコンベヤに異常が発生したときにその異常個所を検知することができるベルトコンベヤ停止装置とこれを備えた異常個所検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の国土は、およそ2/3が山地であるといわれており、そのため道路や線路など(以下、「道路等」という。)は必ずといっていいほど山地部を通過する区間がある。この山地部で道路等を構築するには、斜面の一部を掘削する切土工法か、地山の内部をくり抜くトンネル工法のいずれかを採用するのが一般的である。トンネル工法は、切土工法に比べて施工単価(道路等延長当たりの工事費)が高くなる傾向にある一方で、切土工法よりも掘削土量(つまり排土量)が少なくなる傾向にあるうえ、道路等の線形計画の自由度が高い(例えば、ショートカットできる)といった特長があり、これまでに建設された国内のトンネルは10,000を超えるといわれている。
【0003】
山岳トンネルの施工方法としては、昭和50年代までは鋼アーチ支保工に木矢板を組み合わせて地山を支保する「矢板工法」が主流であったが、現在では地山強度を積極的に活かすNATM(New Austrian Tunneling Method)が主流となっている。NATMは、地山が有する強度(アーチ効果)に期待する設計思想が主な特徴であり、そのため従来の矢板工法に比べトンネル支保工の規模を小さくすることができ、しかも施工速度を上げることができることから施工コストを減縮することができる。
【0004】
また我が国におけるNATMは、本格的に実施されて以来、飛躍的に掘削技術が進歩しており、種々の補助工法が開発されることによって様々な地山に対応することができるようになり、さらに発破掘削のほか機械掘削も選択できるようになった。発破掘削によって生じた岩砕(発破により岩盤が小割されたもの)や土砂(以下、これらを総称して「ズリ」という。)を坑外に搬出する方法にもいくつかの種類があり、ダンプトラック等に積載してズリを搬送する「タイヤ式」や、坑内に敷設したレールを利用してズリを搬送する「レール式」、同じく坑内に設置した連続ベルトコンベヤシステムによってズリを搬送する「ベルトコンベヤ式」などが挙げられる。
【0005】
このうちベルトコンベヤ式によるズリ搬送は、概ねトンネル全長(掘削長さ)分の設備を設置する必要があるものの、他の工程(例えば、コンクリート吹付など)との並行実施が可能であることから掘進サイクルを短縮することができるうえ、ダンプトラックのように化石燃料を使用することがないため環境(特に、坑内環境)に悪影響を及ぼすことがなく、また掘削延長が長い場合は他の方式よりも経済的に有利であるといった特長がある。そのため、新幹線(例えば、リニア中央新幹線)や高速道路など比較的延長が長いトンネルでは、ズリ搬送方式としてベルトコンベヤ式を採用する傾向にある。
【0006】
通常、連続ベルトコンベヤシステムは、ベルトコンベヤと、移動式破砕機(移動式クラッシャー)、テールピース台車、ベルトストレージ装置、メインドライブ装置等によって構成される。このベルトコンベヤは、坑口側のヘッドプーリーと切羽側のテールプーリー(テールピース台車)の間を巡回する無端ベルトであり、つまりヘッドプーリーとテールプーリーが無端ベルトの反転部として機能する。より詳しくは、坑口側のヘッドプーリーで無端ベルトが上面から下面に移るとともに坑口方面の移動から切羽方面への移動に反転し、切羽側のテールプーリーで無端ベルトが下面から上面に移るとともに切羽方面の移動から坑口方面への移動に反転する。これにより、無端ベルトの上面に載せられたズリが坑口近くまで搬送されるわけである。
【0007】
発破では岩盤を比較的大きな塊状に小割りするだけであり、この状態のままベルトコンベヤによって搬送することはできない。そのため、移動式破砕機が発破によって生じた岩塊をさらに細かく破砕する。そして移動式破砕機が破砕した岩砕(ズリ)はテールピース台車のズリ投入部(投入ホッパー)に投入され、さらにベルトコンベヤに載せられて坑口方面に搬送される。テールピース台車にはクローラやタイヤといった自走手段が装備されており、切羽の進行に伴い移動(進行)することができる。テールピース台車が前進するとベルトコンベヤが牽引され、これに伴ってあらかじめベルトストレージ装置に貯蔵されたベルトを順次繰り出しベルトコンベヤを延伸していく。
【0008】
ところで、連続ベルトコンベヤシステムでは、配置された無端ベルトの平面線形、あるいは積み荷(つまりズリ)の状態によって無端ベルトが一方のフレームに接近するいわゆる「片寄り(蛇行)」が発生することがある。そして、この片寄りが顕著である場合、無端ベルトの傾斜に伴う荷こぼれが生じたり、フレームと接触することで無端ベルトが損傷したりするなど正常なズリ搬送が困難になることもあるうえ、作業者等が負傷するなど労働災害が生ずるおそれさえある。
【0009】
そこで「労働安全衛生規則」では、ベルトコンベヤに非常引綱スイッチを設置することを義務付けている。非常引綱スイッチは、その引綱が引かれるとベルトコンベヤを停止させるものであり、事故が発生したときにベルトコンベヤを緊急停止させることによって労働災害などを未然に防ぐわけである。そして特許文献1などの従来技術では、坑外に設置された制御盤を利用して非常引綱スイッチの稼働状況を把握していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-21363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非常引綱スイッチは、所定の間隔を設けたうえで、ベルトコンベヤに沿って配置される。したがって長距離トンネルに適用する場合、数多くの非常引綱スイッチを配置することになる。また、非常引綱スイッチの引綱は、作業者が自身の判断で引綱を引くこともあれば、運搬物(トンネルの場合は、ズリ)が落下することによって引かれることもある。ベルトコンベヤが緊急停止するとその異常個所を把握する必要があり、そのためどこの非常引綱スイッチが稼働したのか特定しなければならない。もちろん作業者が引綱を引いたときはその異常個所を特定することができるが、ズリが落下して引綱が引かれたときは直ちに異常個所を特定することができない。従来、作業者によらず引綱が引かれたときは、郊外の制御盤で確認するか、あるいは坑内に構築されたネットワークを介して確認するほかなかった。
【0012】
ところが、従来の確認手法、つまり制御盤や坑内ネットワークによる確認手法は、作動した非常引綱スイッチの大まかな位置を示すに過ぎず、詳細な異常個所を特定することができなかった。そのため、制御盤等によって得られた大まかな位置を頼りに、作業者が現地に赴いたうえで作動した非常引綱スイッチを探索しているのが実情である。確かに、作動した非常引綱スイッチはそのフックの向きなどが変わるため目視によって確認することができるものの、図6(特に、矢印)に示すようにその変化は微細であり、粉塵などが滞留しやすい坑内環境でフックの向きなどを発見することはそれほど容易ではない。特に、昨今では坑内スペースを有効活用すべく比較的高い位置にベルトコンベヤを配置する傾向にあり、非常引綱スイッチの変化(図6)を発見することをより困難にしている。
【0013】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわちベルトコンベヤの異常個所を検知することができるベルトコンベヤ停止装置とこれを備えた異常個所検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、引綱スイッチがベルトコンベヤを停止させるべく作動したとき、その引綱スイッチに係る検知灯に可視光を出力させる、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0015】
本願発明のベルトコンベヤ停止装置は、稼働中のベルトコンベヤを停止する装置であって、引綱を有する「引綱スイッチ」と可視光を出力する「検知灯」を備えたものである。このうち引綱スイッチは、引綱が引張されるとベルトコンベヤを停止させるものであり、引綱スイッチに接続される検知灯は、引綱スイッチがベルトコンベヤを停止すると可視光を出力するものである。
【0016】
本願発明のベルトコンベヤ停止装置は、引綱スイッチが「接点切替スイッチ」と2以上の「ケーブル接点」を有するものとすることもできる。この場合、検知灯に接続される2本の「点灯用ケーブル」は、それぞれ異なるケーブル接点に接続される。そして引綱が引張されると、点灯用ケーブルが接続されたケーブル接点間を接点切替スイッチが接続することによって、電流が生じた検知灯が可視光を出力する。
【0017】
本願発明のベルトコンベヤ停止装置は、携行可能な検知灯を備えたものとすることもできる。この場合、着脱可能に2本の点灯用ケーブルに検知灯が取り付けられる。そして点灯用ケーブルから取り外された検知灯は、電源操作を行うことで可視光を出力する。
【0018】
本願発明の異常個所検知システムは、本願発明のベルトコンベヤ停止装置を利用してベルトコンベヤの異常個所を検知するシステムであって、ベルトコンベヤとベルトコンベヤ停止装置を備えたものである。なおベルトコンベヤ停止装置は、ベルトに沿って間隔を設けたうえで複数個所に設置される。ベルトコンベヤを停止した引綱スイッチに係る検知灯が可視光を出力することによって、ベルトコンベヤの異常個所を検知することができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明のベルトコンベヤ停止装置、及び異常個所検知システムには、次のような効果がある。
(1)新設(つまり、これから掘削を開始するトンネル)の連続ベルトコンベヤシステムはもちろん、既存の(つまり、運用中の)連続ベルトコンベヤシステムに対しても事後的に設置することができる。
(2)検知灯を携行可能とすることで、結果的に一定間隔で懐中電灯が配置されることとなる。そのため、坑内で照明が途切れたときなどに、この検知灯を有効に活用することができる。
(3)懐中電灯として使用する検知灯は、電池式とすることができる。そのため、検知灯のための配線設備が不要であり、その設置場所にも特段の制約がなく、すなわち特段の障害がなく容易に坑内に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明のベルトコンベヤ停止装置を模式的に示すトンネル断面図。
図2】(a)は点灯用ケーブルを介して引綱スイッチに接続される検知灯を模式的に示す側面図、(b)は接続治具によって着脱可能に連結される点灯用ケーブルを模式的に示す部分側面図。
図3】下方ケーブルと上方ケーブル、中間ケーブルからなる点灯用ケーブルによって接続された引綱スイッチと検知灯を模式的に示す側面図。
図4】(a)は引綱スイッチに電気が流れている状況を模式的に示すモデル図、(b)は引綱スイッチに電気が流れていない状況を模式的に示すモデル図。
図5】本願発明の異常個所検知システムを模式的に示す側面図。
図6】引綱が引張されて作動した非常引綱スイッチを模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明のベルトコンベヤ停止装置、及び異常個所検知システムの実施の例を図に基づいて説明する。なお本願発明は、土砂や岩砕を搬送する土工事現場や採石場、製品をラインで製造する工場、配送品を仕分けする物流拠点など、連続ベルトコンベヤシステムを使用する様々な場所や施設に適用することができ、また無端ベルトのほか通常のベルト(無端ではないベルト)にも適用することができるが、便宜上ここではトンネル掘削におけるズリ搬出用の連続ベルトコンベヤシステム(無端ベルト)に適用する例で説明する。
【0022】
1.ベルトコンベヤ停止装置
本願発明のベルトコンベヤ停止装置について、図を参照しながら説明する。なお、本願発明の異常個所検知システムは、ベルトコンベヤ200に沿って複数個所にベルトコンベヤ停止装置を配置したものである。したがって、まずは本願発明のベルトコンベヤ停止装置について説明し、その後に本願発明の異常個所検知システムについて説明する。
【0023】
図1は、本願発明のベルトコンベヤ停止装置100を模式的に示す図であり、トンネルを鉛直面で切断した断面図である。この図に示すように本願発明のベルトコンベヤ停止装置100は、引綱スイッチ110と検知灯120を含んで構成され、さらに点灯用ケーブル130を含んで構成することもできる。
【0024】
以下、本願発明のベルトコンベヤ停止装置100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0025】
(引綱スイッチ)
引綱スイッチ110は、既述したようにその引綱が引かれるとベルトコンベヤ200を停止させるものである。そのため引綱スイッチ110は、ベルトコンベヤ200の側方に配置される。例えば図1では、連続ベルトコンベヤシステムを構成するベルトコンベヤ200がベルトコンベヤ用架台MBの上に設置されており、引綱スイッチ110もベルトコンベヤ200の側方となるようにこのベルトコンベヤ用架台MBの上に設置されている。また引綱スイッチ110の設置高を調整するときは、図1に示すように引綱スイッチ用架台MSの上に引綱スイッチ110を設置することもできる。
【0026】
本願発明のベルトコンベヤ停止装置100に用いる引綱スイッチ110は、専用のものとして製造することもできるし、従来用いられている汎用的な非常引綱スイッチを利用することもできる。なお、一般的な非常引綱スイッチは手動復帰型と自動復帰型に大別されるが、いずれも引綱スイッチ110として利用することができる。
【0027】
(検知灯)
検知灯120は、引綱スイッチ110が作動したとき、すなわちベルトコンベヤ200を停止させたときに、可視光を出力するものである。そのため検知灯120は、図2(a)に示すように点灯用ケーブル130を介して引綱スイッチ110に接続される。また検知灯120は、図1に示すようにトンネルの覆工コンクリートLC(通常は、2次吹付コンクリート)に取り付けられた検知灯用架台MFの上に設置することができる。この場合、ベルトコンベヤ200の下方であって、人の手が届く位置(高さ)に検知灯用架台MF(つまり、検知灯120)を配置するとよい。
【0028】
人の手が届く位置に検知灯120が配置され、また引綱スイッチ110(つまり、ベルトコンベヤ200)が比較的高い位置に配置された場合、相当の長さの点灯用ケーブル130を用意する必要がある。このとき、連続する1本の点灯用ケーブル130で引綱スイッチ110と検知灯120を接続することもできるし、中間ケーブルを利用して引綱スイッチ110と検知灯120を接続することもできる。具体的には図3に示すように、下方ケーブル131と上方ケーブル132、中間ケーブル133によって点灯用ケーブル130を構成し、下方ケーブル131の一端を検知灯120に接続するとともに、上方ケーブル132の一端を引綱スイッチ110に接続したうえで、中間ケーブル133の両端に下方ケーブル131と上方ケーブル132の他端をそれぞれ接続するわけである。
【0029】
点灯用ケーブル130どうし(例えば、下方ケーブル131と中間ケーブル133)を接続するには、図2(b)に示すように接続治具CNを利用するとよい。この図に示す接続治具CNは、凹側治具CNaと凸側治具CNbによって構成され、凸側治具CNbの一部を凹側治具CNaに貫入することによって双方が連結される構造であり、すなわち着脱自在に点灯用ケーブル130どうしを接続することができるものである。例えば、下方ケーブル131の先端に凹側治具CNaを取り付けるとともに、中間ケーブル133の先端に凸側治具CNbを取り付けたうえで、凸側治具CNbと凹側治具CNaを連結すると、下方ケーブル131と中間ケーブル133が電気的に接続される。なお、点灯用ケーブル130どうしを電気的に接続することができれば、図2(b)に示す構造に限らず、クリップ式など従来用いられている種々の構造の接続治具CNを利用することができる。
【0030】
以下、引綱スイッチ110が作動したときに、検知灯120が可視光を出力する仕組みについて説明する。引綱スイッチ110は、例えば坑外に設置された電源装置から電気が供給され、すなわち引綱スイッチ110には電気が流れる(電流が生じる)構成とされる。また引綱スイッチ110は、接点切替スイッチ111と2以上のケーブル接点112を有しており、電源装置からのケーブルがこのケーブル接点112に接続されている。例えば図4では、引綱スイッチ110が3つのケーブル接点112(第1ケーブル接点112aと第2ケーブル接点112b、第3ケーブル接点112c)を有しており、2本のケーブル(引綱用ケーブルEC1と引綱用ケーブルEC2)が電源装置に接続され、さらに一方の引綱用ケーブルEC1が第1ケーブル接点112aに接続されるとともに、他方の引綱用ケーブルEC2が第3ケーブル接点112cに接続されている。
【0031】
図4は、引綱スイッチ110と電流との関係を模式的に示すモデル図であり、(a)は引綱スイッチ110に電気が流れている状況を示し、(b)は引綱スイッチ110に電気が流れていない状況を示している。また、図4(a)は引綱スイッチ110が作動していない通常の状態(ベルトコンベヤ200が停止していない状態)を表し、図4(b)は引綱スイッチ110が作動した状態(ベルトコンベヤ200が停止した状態)を表している。図4(a)では、接点切替スイッチ111が第1ケーブル接点112aと第3ケーブル接点112cを接続していることから、電源装置~引綱スイッチ110~電源装置からなる電気回路が閉じており、すなわち引綱スイッチ110に電気が流れる状態となる。
【0032】
そして引綱スイッチ110の引綱が引張されると、ベルトコンベヤ200を停止させるとともに、接点切替スイッチ111が切り替えられる。具体的には図4(b)に示すように、第1ケーブル接点112aと第3ケーブル接点112cを接続していた状態から、第2ケーブル接点112bと第3ケーブル接点112cを接続する状態に、接点切替スイッチ111が切り替える。これにより、電源装置~引綱スイッチ110~電源装置からなる電気回路が開放され、すなわち引綱スイッチ110には電気が流れない状態となる。
【0033】
一方、検知灯120には2本の点灯用ケーブル130(第1点灯用ケーブル130aと第2点灯用ケーブル130b)が接続され、それぞれケーブル接点112に接続される。例えば図4では、一方の第1点灯用ケーブル130aが第2ケーブル接点112bに接続されるとともに、他方の第2点灯用ケーブル130bが第3ケーブル接点112cに接続されている。
【0034】
図4(a)に示すように引綱スイッチ110が作動していない状態では、接点切替スイッチ111が第1ケーブル接点112aと第3ケーブル接点112cを接続していることから、検知灯120~第2ケーブル接点112b~第3ケーブル接点112c~検知灯120からなる電気回路が開放されており、すなわち引綱スイッチ110には電気が流れない状態とされる。このとき、当然ながら検知灯120は可視光を出力しない。
【0035】
これに対して、図4(b)に示すように引綱スイッチ110が作動した状態では、接点切替スイッチ111が第2ケーブル接点112bと第3ケーブル接点112cを接続していることから、検知灯120~第2ケーブル接点112b~第3ケーブル接点112c~検知灯120からなる電気回路が閉じており、すなわち引綱スイッチ110に電気が流れる状態とされる。そして、検知灯120は乾電池などの電源を具備しているため、検知灯120が点灯し、すなわち可視光を出力する。
【0036】
なお図4では、引綱スイッチ110が作動していない状態で引綱スイッチ110に電気が流れ、引綱スイッチ110が作動した状態では引綱スイッチ110に電気が流れない構成としてるが、これに限らず、引綱スイッチ110が作動した状態で引綱スイッチ110に電気が流れ、引綱スイッチ110が作動していない状態では引綱スイッチ110に電気が流れない構成とすることもできる。いずれにしろ検知灯120は、引綱スイッチ110が作動したときに可視光を出力する構成とされる。
【0037】
検知灯120は、携行可能とし、すなわち懐中電灯のように利用できるものとすることもできる。この場合、点灯用ケーブル130は、図2(b)に示すように着脱自在に検知灯120に接続される構成とする。また検知灯120は、制御スイッチによって内部に設けられた電気回路が開閉する構成とされる。したがって作業者は、点灯用ケーブル130から切り離した検知灯120を携行することができ、また制御スイッチを操作する(つまり、電源操作を行う)ことによって検知灯120を点灯させる(可視光を出力する)こともできる。
【0038】
2.異常個所検知システム
続いて本願発明の異常個所検知システムについて、図を参照しながら説明する。なお本願発明の異常個所検知システムは、ここまで説明したベルトコンベヤ停止装置100をベルトコンベヤ200に沿って配置したものである。したがってベルトコンベヤ停止装置100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の異常個所検知システムに特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.ベルトコンベヤ停止装置」で説明したものと同様である。
【0039】
本願発明の異常個所検知システム300は、図5に示すように、ベルトコンベヤ200と、このベルトコンベヤ200の側方に配置されるベルトコンベヤ停止装置100を備えたものである。より詳しくは、ベルトコンベヤ200に沿って、しかもベルトコンベヤ200の軸方向に所定の間隔を設けたうえで、複数のベルトコンベヤ停止装置100が設置されたものである。
【0040】
ここまで説明したように、引綱スイッチ110が作動してベルトコンベヤ200を停止させると、検知灯120が可視光を出力する。したがって、粉塵などが滞留しやすい坑内環境でも、あるいは坑内スペースを有効活用すべく比較的高い位置にベルトコンベヤ200を配置するケースでも、可視光を出力する検知灯120を容易に発見することができ、すなわちベルトコンベヤ200の異常個所を容易に把握することができる。例えば図5では、左から3番目の検知灯120が点灯しており、その検知灯120に係る引綱スイッチ110がベルトコンベヤ200を停止させたと判断できる。このように異常個所検知システム300によれば、数多くの引綱スイッチ110が設置されていたとしても、時間をかけることなく速やかに作動した引綱スイッチ110を特定することができ、その結果、ベルトコンベヤ200の異常個所を容易に把握することができるわけである。また、検知灯120を携行可能にすることによって、所定の間隔で坑内に懐中電灯が配置されることとなり、坑内で照明が途切れたときなどにもこの検知灯120を有効活用することができて好適となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本願発明のベルトコンベヤ停止装置、及び異常個所検知システムは、鉄道トンネルや道路トンネルなど様々な用途のトンネル掘削に利用できるほか、採石場など岩盤を掘削して搬送するあらゆる状況で利用することができる。トンネル構造物という社会基盤(社会インフラストラクチャ)をより安全に構築することができることを考えると、本願発明は産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0042】
100 本願発明のベルトコンベヤ停止装置
110 引綱スイッチ
112 ケーブル接点
111 接点切替スイッチ
112a 第1ケーブル接点
112b 第2ケーブル接点
112c 第3ケーブル接点
120 検知灯
130 点灯用ケーブル
130a 第1点灯用ケーブル
130b 第2点灯用ケーブル
131 下方ケーブル
132 上方ケーブル
133 中間ケーブル
200 ベルトコンベヤ
CN 接続治具
CNa 凹側治具
CNb 凸側治具
LC 覆工コンクリート
MB ベルトコンベヤ用架台
MF 検知灯用架台
MS 引綱スイッチ用架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6