(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154525
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】車両情報提示方法及び車両情報提示装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20231013BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063880
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】堀畑 友希
(72)【発明者】
【氏名】高木 徹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無症状のうちに車両の不具合の初期症状発生を予知してユーザに通知する車両情報提示方法及び車両情報提示装置を提供する。
【解決手段】車両情報提示装置10は、車両が正常の走行状態の時と異なる音、振動、温度、匂いのうち少なくとも1つの症状を発生したことを示す症状情報と、症状を発生した部品の部品情報と、症状が出たときの車両の走行状態情報とを含む車両の不具合情報を取得し、不具合情報に基づいて、症状が発生する症状発生範囲を特定し、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、特定した症状発生範囲に基づいて、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定し、予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を生成し、症状発生情報を外部装置へ送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が正常の走行状態の時と異なる音、振動、温度、匂いのうち少なくとも1つの症状を発生したことを示す症状情報と、前記症状を発生した部品の部品情報と、前記症状を発生した時の前記車両の走行状態情報とを含む前記車両の不具合情報を取得し、
前記不具合情報に基づいて、前記症状が発生する症状発生範囲を特定し、
前記症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、特定した前記症状発生範囲に基づいて、前記対象車両が前記症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定し、
前記予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を生成し、
前記症状発生情報を外部装置へ送信する
ことを特徴とする車両情報提示方法。
【請求項2】
前記症状情報と前記部品情報と前記車両の走行状態情報とに基づいて、前記不具合情報を分類し、
分類した前記不具合情報毎に、走行状態に対して前記症状が発生する確率を表す症状発生確率分布を生成し、
前記症状発生確率分布において前記確率が閾値以上となる範囲を前記症状発生範囲として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両情報提示方法。
【請求項3】
症状発生時または症状発生時より前に計測された前記車両の車両信号を取得し、
前記対象車両の車両信号の予測値を取得し、
前記車両の車両信号と、前記対象車両の車両信号の予測値との類似度を算出し、
前記類似度が閾値以上となる範囲を前記予測症状発生範囲として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両情報提示方法。
【請求項4】
前記車両の不具合情報は、前記車両の走行履歴情報をさらに含み、
前記対象車両の走行履歴情報をさらに取得し、
前記車両の中から、前記対象車両と最も走行履歴情報が類似する車両を類似車両として特定し、
前記類似車両の車両信号と、前記対象車両の車両信号の予測値との類似度を算出し、
前記類似度が閾値以上となる範囲を前記予測症状発生範囲として設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両情報提示方法。
【請求項5】
前記車両の車両信号を取得し、
症状発生時に計測された前記車両の車両信号と、前記車両が正常状態の時の前記車両の車両信号を示す基準車両信号との第1乖離度を算出し、
前記対象車両の車両信号の予測値を取得し、
前記対象車両の車両信号の予測値と、前記基準車両信号との第2乖離度を算出し、
前記第2乖離度が、前記第1乖離度以上となる範囲を、前記予測症状発生範囲として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両情報提示方法。
【請求項6】
前記基準車両信号は、前記車両が正常状態であった時に計測された前記車両の車両信号であることを特徴とする請求項5に記載の車両情報提示方法。
【請求項7】
前記症状発生情報は、異常を検出した前記対象車両の部品の情報を含む
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両情報提示方法。
【請求項8】
前記症状発生情報は、前記対象車両の異常を検出した時から、前記対象車両が前記予測症状発生範囲に到達するまでの間に送信される
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両情報提示方法。
【請求項9】
前記不具合情報は、前記車両の車種、製造国、製造工場及び製造時期のうち少なくとも1つを示す車両情報をさらに含み、
前記車両情報が、前記対象車両の車両情報と一致する前記車両の前記不具合情報に基づいて、前記予測症状発生範囲を設定する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両情報提示方法。
【請求項10】
前記不具合情報は、データベース上に蓄積されている、前記車両の症状情報が記載された報告書のデータ、前記車両に関する会話内容を記録した音声データまたは前記会話内容を文章化したデータ、前記車両から遠隔で取得されたデータ、インターネット上に投稿された前記車両に関する情報のうち少なくとも1つから取得される
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両情報提示方法。
【請求項11】
前記不具合情報は、サーバ上またはインターネット上から、前記車両の不具合に関する情報を検索して取得した情報を含む
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両情報提示方法。
【請求項12】
車両が正常の走行状態の時と異なる音、振動、温度、匂いのうち少なくとも1つの症状を発生したことを示す症状情報と、前記症状を発生した部品の部品情報と、前記症状を発生した時の前記車両の走行状態情報とを含む前記車両の不具合情報を取得する不具合情報取得部と、
前記不具合情報に基づいて、前記症状が発生する症状発生範囲を特定する症状発生範囲特定部と、
前記症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、特定した前記症状発生範囲に基づいて、前記対象車両が前記症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定する予測症状発生範囲設定部と、
前記予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を生成する症状発生情報生成部と、
前記症状発生情報を外部装置へ送信する送信部と
を備えることを特徴とする車両情報提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車両情報提示方法及び車両情報提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予測された修理要時期と修理要部位に基づいて車両修理の提案書または見積書を作成する車両見積方法が開示されている。特許文献1は、各種車両が故障した場合の当該車両の属性情報と症状情報を受け付ける。そして、各種車両に発生するであろうと予測される不具合発生の時期と、その時期に対応した不具合の程度を予め記憶しておき、対象車両についての属性情報および症状情報に基づいて修理対象車両の修理要時期と修理要部位を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1は、異音、振動、異臭などの何らかの不具合の初期症状が発生した修理対象車両に対して、対象車両の属性情報および症状情報に基づいて修理要時期を見積もる。このため、無症状のうちに車両の不具合の初期症状発生を予知してユーザに通知することができていない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、無症状のうちに車両の不具合の初期症状発生を予知してユーザに通知することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る車両情報提示方法は、車両が正常の走行状態の時と異なる音、振動、温度、匂いのうち少なくとも1つの症状を発生したことを示す症状情報と、症状を発生した部品の部品情報と、症状が出たときの車両の走行状態情報とを含む車両の不具合情報を取得し、不具合情報に基づいて、症状が発生する症状発生範囲を特定し、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、特定した症状発生範囲に基づいて、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定し、予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を生成し、症状発生情報を外部装置へ送信する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無症状のうちに車両の異音、振動、異臭などの不具合の初期症状発生を予知してユーザに通知できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両情報提示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る車両情報提示装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態に係る車両情報提示装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係る車両情報提示装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の第4実施形態に係る車両情報提示装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施形態に係る車両情報提示装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の第1実施形態に係る車両情報提示装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1実施形態に係る車両情報提示装置により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示装置により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示装置により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3実施形態及び第4実施形態に係る車両情報提示装置により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の第3実施形態及び第4実施形態に係る車両情報提示装置により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
【
図15A】
図15Aは、本発明の実施形態に係る車両情報提示装置により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
【
図15B】
図15Bは、本発明の実施形態に係る車両情報提示装置により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に係る車両情報提示装置により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
[第1実施形態]
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る車両情報提示装置及びその周辺機器の全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報データベース20と、対象車両情報データベース40と、外部装置50に接続されている。
【0011】
車両情報提示装置10は、不具合情報データベース20から、不具合を発生した不具合車両に関する不具合情報を取得する。不具合情報は、例えば、症状情報と、部品情報と、走行状態情報を含む。症状情報は、例えば異音、振動、異臭、高温状態などの、不具合車両の部品または不具合車両の構成要素に故障が発生する前の兆候として表れる初期症状(以下、症状という)に関する情報であり、不具合車両が正常の走行状態の時とは異なる音、振動、温度、匂いのうち少なくとも1つの症状を発生したことを示す情報である。部品情報は、症状を発生した部品の情報であり、症状が発生したと考えられる少なくとも1つ以上の部品または構成要素の情報である。部品情報は、症状が発生した部品または構成要素に加えて、症状発生後にメンテナンス・修理を実施した部品や交換部品の情報であってもよい。走行状態情報は、不具合車両が症状を発生した時から故障した時までの残り走行可能距離、残り走行可能時間、累積走行可能距離、累積走行可能時間などの距離区間または時間に関する少なくとも1つ以上の情報である。
【0012】
また、不具合情報には、不具合車両の車両情報が含まれる。車両情報は、車両の車種、製造国、製造工場、製造時期など車両の生産に関する少なくとも1つ以上の情報である。生産に関する情報は、少なくとも1つ以上あればよいが、多い方が望ましい。
【0013】
不具合情報データベース20は、例えば、ユーザが不具合車両をディーラーや修理工場に持ち込んだ時の、不具合車両の症状情報が記載された報告書のデータ、カスタマーサポートセンターに届いた不具合に関する問合せのレポート内容及び不具合車両に関する会話内容を記録した音声データまたは会話内容を文章化したデータ、不具合車両から遠隔で取得された情報、インターネットやSNS上に投稿された口コミなどの不具合車両に関する情報を蓄積したデータベースであって、情報源は様々である。なお、不具合情報データベース20は、単一のデータベースから構成されてもよく、複数のデータベースから構成されてもよい。
【0014】
車両情報提示装置10は、不具合情報データベース20から取得した不具合情報に基づいて、不具合の初期症状が発生する症状発生範囲を特定する。症状発生範囲とは、蓄積された複数の不具合情報から、車両に不具合の初期症状が発生すると予測される、車両の走行距離又は走行時間の範囲である。
【0015】
また、車両情報提示装置10は、対象車両情報データベース40から、不具合車両とは異なる車両である対象車両に関する対象車両情報を取得する。対象車両情報は、例えば、対象車両の走行状態情報と、対象車両の車両情報と、対象車両の車両信号とを含む。車両信号とは、例えば、エンジン回転数やエンジン温度を含んだ時系列データのような、対象車両の部品や構成要素から送信される信号情報である。車両情報提示装置10は、対象車両の車両信号に基づいて、対象車両の異常を検出する。
【0016】
対象車両情報データベース40は、対象車両から取得された対象車両情報を蓄積したデータベースである。対象車両情報データベース40には、例えば、対象車両の走行状態情報と、対象車両の車両情報と、対象車両の車両信号とが蓄積されている。
【0017】
車両情報提示装置10は、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、特定した症状発生範囲に基づいて、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定する。
【0018】
車両情報提示装置10は、予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を生成し、生成した症状発生情報を外部装置50へ送信する。なお、外部装置50は、例えば対象車両のユーザが所有するスマートフォンやパーソナルコンピュータなどの任意のデバイスであってもよく、複数の端末であってもよい。症状発生情報の表示の有無及び送信先は、特に限定されない。
【0019】
上記構成により、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、特定した症状発生範囲に基づいて、対象車両が症状を発生する症状発生範囲を予測することができる。これにより、対象車両が無症状のうちに異音、振動、悪臭のような対象車両の不具合の初期症状の発生を予知してユーザに通知することができる。
【0020】
次に、
図1及び
図2を参照して、車両情報提示装置10の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報取得部11と、情報分類部12と、症状発生確率分布生成部13と、症状発生範囲特定部14と、対象車両情報取得部15と、異常検出部16と、予測症状発生範囲設定部17と、症状発生情報生成部18と、送信部19とを備える。
【0021】
不具合情報取得部11は、不具合情報データベース20から、不具合情報を取得する。不具合情報には、前述したように、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報とが含まれる。
【0022】
情報分類部12は、症状情報、部品情報、走行状態情報及び車両情報に基づいて、取得した不具合情報を分類する。情報分類部12は、例えば、症状情報、部品情報、走行状態情報及び車両情報に基づいて、取得した不具合情報を分類したデータセット群を生成する。データセット群の生成方法の詳細については、後述する。
【0023】
症状発生確率分布生成部13は、情報分類部12で分類した不具合情報毎に、走行状態に対して症状が発生する確率(以下、症状発生確率という)を表す症状発生確率分布を生成する。症状発生確率分布生成部13は、例えば、情報分類部12で生成したデータセット群毎に、走行状態の区間毎の症状発生件数の累積件数を算出し、累積件数をデータセット群のデータ件数で割ることにより、データセット群毎の症状発生確率分布を生成する。また、症状発生確率分布生成部13は、データセット群毎に、走行状態の区間毎の症状発生件数の累積件数を算出し、累積件数をデータセット群の車両情報と一致する車両の販売台数または生産台数で割ることにより、データセット群毎の症状発生確率分布を生成してもよい。なお、症状発生確率分布生成部13は、データセット群毎に、走行状態の区間毎の症状発生件数の累積件数分布を作成してもよい。症状発生確率分布の詳細については、後述する。
【0024】
症状発生範囲特定部14は、分類した不具合情報毎の症状発生確率分布において、症状発生確率が予め設定された閾値以上となる範囲を、症状が発生する症状発生範囲として特定する。症状発生範囲特定部14は、例えば、生成されたデータセット群毎の症状発生確率分布において、症状発生確率が予め設定された閾値以上となる範囲を、症状発生範囲として特定する。なお、閾値には、データセット群毎に異なる閾値が設定されてもよく、一律の閾値が設定されてもよい。また、閾値には、例えばデータセット群に分類された不具合車両の車種毎、不具合車両が製造された製造工場毎、症状が発生した部品情報毎など、不具合車両の任意の情報毎に設定されてもよい。症状発生範囲の特定方法の詳細については、後述する。
【0025】
対象車両情報取得部15は、対象車両情報データベース40から対象車両情報を取得する。対象車両情報には、前述したように、例えば対象車両の走行状態情報と、対象車両の車両情報と、対象車両の車両信号とが含まれる。車両信号とは、例えば、エンジン回転数やエンジン温度を含んだ時系列データのような、対象車両の部品や構成要素から送信される信号情報である。
【0026】
異常検出部16は、取得した対象車両の車両信号に基づいて、対象車両の異常を検出する。対象車両の異常検出方法は、例えば、エンジン回転数やエンジン温度を含んだ時系列データなどに対して、所定の条件に倣って各信号の閾値からの外れ値を検出する手法や、インバリアント分析(複数の信号の相関関係をみて、一部の相関関係が崩れたタイミングを検出する方法)や機械学習を用いて車両の状態(正常or異常)を判定する手法など様々である。対象車両の異常検出方法については、既知の技術であるため、詳細な説明は省略する。対象車両の異常検出方法は、ここで挙げた手法に限定されず、車両の部品及び構成要素の異常を検出する手法であれば、どのような手法でも構わない。
【0027】
異常検出部16は、対象車両の異常を検出した場合に、対象車両の走行状態情報を推定する。対象車両の走行状態情報とは、対象車両が修理を実施せず走行を継続した場合に、現時点(異常を検出した時点)から故障発生までに走行可能な残り走行可能距離、残り走行可能時間、累積走行距離又は累積走行時間などの少なくとも1つ以上の距離または時間の範囲である。さらに、異常検出部16は、異常を検出した対象車両の部品または構成要素(以下、故障部品という)を推定する。
【0028】
予測症状発生範囲設定部17は、異常検出部16が、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、分類した不具合情報毎に特定した症状発生範囲に基づいて、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定する。予測症状発生範囲設定部17は、車両情報が、対象車両の車両情報と一致する不具合車両の不具合情報に基づいて、予測症状発生範囲を設定する。予測症状発生範囲設定部17は、例えば、データセット群毎に特定した症状発生範囲の中から、対象車両の走行状態情報、故障部品及び車両情報に基づいて対象車両と最も一致度が高い不具合車両のデータセット群を特定し、特定したデータセット群の症状発生範囲を、対象車両の予測症状発生範囲として設定する。予測症状発生範囲の設定方法は、後述する。
【0029】
症状発生情報生成部18は、予測症状発生範囲設定部17により設定された予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を生成する。症状発生情報は、異常を検出した対象車両の部品の情報を含んでもよい。症状発生情報には、異常検出部16により検出された対象車両の故障部品の情報、予測される対象車両の症状情報、対象車両の走行状態情報及び対象車両の車両情報などが含まれてもよく、症状発生情報に含まれる情報及び表示形態については特に限定されない。なお、症状発生情報の表示例については、
図10~
図16を参照して後述する。
【0030】
送信部19は、症状発生情報生成部18で生成された症状発生情報を、外部装置50に送信する。送信部19は、対象車両の異常を検出した時から、対象車両が予測症状発生範囲に到達するまでの間に、症状発生情報を外部装置へ送信する。なお、外部装置50は、例えばユーザや車両所有者や車両管理者が所有する端末や対象車両に搭載される表示装置などであり、症状発生情報が送信される外部装置50は単一でも複数でもよい。
【0031】
上記構成とすることにより、第1実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合の初期症状が出ていない対象車両の異常を検出した場合に、取得した過去の不具合車両の不具合情報に基づいて、対象車両に症状が発生すると予測される予測症状発生範囲を設定することができる。予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を外部装置50に送信することにより、対象車両が無症状のうちに異音、振動、悪臭のような対象車両の不具合の初期症状の発生をユーザに通知することができる。
【0032】
図3に示すフローチャートを参照して、第1実施形態に係る車両情報提示装置10の処理の流れの一例を説明する。
【0033】
まず、ステップS101において、不具合情報取得部11は、不具合情報データベース20から、不具合情報を取得する。不具合情報には、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報とが含まれる。ここでは、走行状態情報として、不具合車両に症状が発生した時点での残り走行可能距離を取得する。症状が発生した時点での残り走行可能距離とは、不具合車両が症状を発生した時の当該不具合車両の累積走行距離と、このまま走行を継続した場合に、故障もしくは異常が発生しうる時の、当該不具合車両の累積走行距離との差分である。例えば、症状が発生した時点での累積走行距離を1200km、このまま走行を継続した場合に故障もしくは異常が発生しうる時の累積走行距離を1250kmとする。この場合、症状が発生した時点での残り走行可能距離は1250(km)―1200(km)=50(km)である。
【0034】
以上のようにして、症状が発生した時点での残り走行可能距離を走行状態情報として取得することができる。なお、ここで説明した走行状態情報の取得方法は一例であり、この方法には限定されない。走行状態情報の取得方法は、不具合車両が症状を発生した時から、故障もしくは異常が発生しうる時までの距離又は時間の差分を算出する手法であればよい。
【0035】
処理はステップS102に進み、情報分類部12は、症状情報、部品情報、走行状態情報及び車両情報に基づいて、取得した不具合情報を分類する。具体的には、情報分類部12は、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報とを紐づける。そして、症状情報、部品情報及び車両情報が一致する不具合情報を分類する。処理はステップS103に進み、情報分類部12は、分類した不具合情報毎に、データセット群を生成する。なお、不具合情報の分類条件は、不具合車両の症状情報、部品情報、走行状態情報、車両情報の中の単一要素または複数要素の条件で分類してもよいが、正確に症状が発生する症状発生範囲を特定するためには、条件は多い方が望ましい。
【0036】
(不具合情報の分類方法)
ここで、第1実施形態における不具合情報の分類方法の一例について説明する。以下の説明では、例えば、不具合情報取得部11は、第1~第5の不具合情報を取得したとする。第1の不具合情報の内容は、症状情報が「異音、ガタガタ音」であり、部品情報が「エンジン」であり、車両情報の車種が「車種A」、製造工場が「工場A」、製造時期が「2019年」であり、残り走行可能距離(走行状態情報)が「10km」であるとする。第2の不具合情報の内容は、症状情報が「振動」であり、部品情報が「エンジン」であり、車両情報の車種が「車種B」、製造工場が「工場A」、製造時期が「2018年」であり、残り走行可能距離が「14km」であるとする。第3の不具合情報の内容は、症状情報が「高温状態」であり、部品情報が「バッテリー」であり、車両情報の車種が「車種A」、製造工場が「工場B」、製造時期が「2016年」であり、残り走行可能距離が「17km」であるとする。第4の不具合情報の内容は、症状情報が「異音、ガタガタ音」であり、部品情報が「エンジン」であり、車両情報の車種が「車種C」、製造工場が「工場C」、製造時期が「2017年」であり、残り走行可能距離が「5km」であるとする。第5の不具合情報の内容は、症状情報が「異音、ガタガタ音」であり、部品情報が「エンジン」であり、車両情報の車種が「車種A」、製造工場が「工場A」、製造時期が「2019年」であり、残り走行可能距離が「14km」であるとする。
【0037】
上記の第1~第5の不具合情報を、症状情報、部品情報、車両情報が一致するように分類すると、第1~第5の不具合情報は、以下のように、第1~第4のデータセット群に分類される。第1の不具合情報及び第5の不具合情報は、第1のデータセット群に分類される。第2の不具合情報は、第2のデータセット群に分類される。第3の不具合情報は、第3のデータセット群に分類される。第4の不具合情報は、第4のデータセット群に分類される。
【0038】
以上のようにして、情報分類部12は、不具合情報を分類する。なお、ここで説明した不具合情報の分類方法及び不具合情報の内容は一例であり、この方法及び内容に限定されるものではない。
【0039】
処理は
図2のステップS104に進み、症状発生確率分布生成部13は、生成されたデータセット群毎に、症状発生確率分布を生成する。例えば、症状発生確率分布生成部13は、不具合車両に症状が発生した時点での走行状態情報と、症状の累積発生件数と、不具合情報のデータ件数に基づいて、症状発生確率分布を生成する。症状発生確率分布生成部13は、データセット群に分類された不具合情報の症状の発生件数を、少なくとも1つ以上の走行状態情報の区間(階級)毎に集計することにより、走行状態情報の区間毎の症状の累積発生件数を求める。そして、走行状態情報の区間毎の累積発生件数を、データセット群に分類された不具合情報のデータ件数で割ることにより、走行状態情報の区間毎の症状発生確率を算出して、症状発生確率分布を生成する。
【0040】
(症状発生確率分布の生成方法及び症状発生範囲の特定方法)
ここで、症状発生確率分布の生成方法及び症状発生範囲の特定方法の一例について説明する。以下の説明では、例えば、情報分類部12は、あるデータセット群に、6つの不具合情報を分類したとする。このとき、6つの不具合情報の各々の残り走行可能距離は、15.0km、15.6km、14.0km、15.5km、16.0km、18.0kmであるとする。
【0041】
上記の例のデータセット群において、残り走行可能距離の区間1kmごとに症状の累積発生件数を集計すると、残り走行可能距離の区間毎の症状の累積発生件数は、次のように集計される。17.0km<残り走行可能距離≦18.0kmとなる区間における症状の累積発生件数は1件である。16.0km<残り走行可能距離≦17.0kmとなる区間における症状の累積発生件数は0件である。15.0km<残り走行可能距離≦16.0kmとなる区間における症状の累積発生件数は3件である。14.0km<残り走行可能距離≦15.0kmとなる区間における症状の累積発生件数は1件である。13.0km<残り走行可能距離≦14.0kmとなる区間における症状の累積発生件数は1件である。
【0042】
残り走行可能距離の区間毎に求めた累積発生件数を、データセット群のデータ件数で割ることにより、残り走行可能距離の区間毎の症状発生確率を算出する。上記の例のデータセット群においては、データ件数は6件であるため、残り走行可能距離の区間毎の症状発生確率は次のように算出される。17.0km<残り走行可能距離≦18.0kmとなる区間における症状発生確率は1件/6件=15%である。16.0km<残り走行可能距離≦17.0kmとなる区間の症状発生確率は、0件/6件=0%である。15.0km<残り走行可能距離≦16.0kmとなる区間の症状発生確率は、3件/6件=50%である。14.0km<残り走行可能距離≦15.0kmとなる区間の症状発生確率は、1件/6件=15%である。13.0km<残り走行可能距離≦14.0kmとなる区間の症状発生確率は、1件/6件=15%である。
【0043】
処理はステップS105に進み、症状発生範囲特定部14は、生成されたデータセット群毎の症状発生確率分布において、症状発生確率が予め設定された閾値以上となる区間を、症状発生範囲として特定する。また、不具合の症状は、走行距離及び走行時間が長くなるほど悪化することが予想される。したがって、症状発生範囲特定部14は、生成されたデータセット群毎の症状発生確率分布において、症状発生確率が最初に閾値以上となる区間以降の区間を、データセット群毎の症状発生範囲として特定してもよい。
【0044】
例えば、症状発生確率の閾値を50%とすると、上記の例のデータセット群においては、15.0km<残り走行可能距離≦16.0kmとなる区間において、症状発生確率が最初に閾値以上となる。この場合、症状発生範囲特定部14は、残り走行可能距離が16km以降の区間(残り走行距離が16km~0kmの区間)を、症状発生範囲として特定する。
【0045】
以上のようにして、症状発生確率分布生成部13は、分類された不具合情報毎に、症状発生確率分布を生成する。また、症状発生範囲特定部14は、分類した不具合情報毎に、症状発生範囲を特定する。なお、ここで説明した症状発生確率分布の生成方法及び症状発生範囲の特定方法は一例であり、これらの方法には限定されない。また、走行状態情報は、残り走行可能距離だけでなく、症状が発生した時点での不具合車両の残り走行可能時間、累積走行可能距離、累積走行可能時間などの距離区間または時間に関する情報であってもよい。また、症状発生確率分布の代わりに、症状発生件数分布を生成してもよい。
【0046】
処理はステップS106に進み、対象車両情報取得部15は、対象車両情報データベース40から、対象車両情報を取得する。対象車両情報には、対象車両の走行状態情報と、対象車両の車両情報と、対象車両の車両信号とが含まれる。
【0047】
処理はステップS107に進み、異常検出部16は、取得した対象車両の車両信号に基づいて、対象車両の異常を検出する。異常検出部16が、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合には、処理はステップS108に進み、異常検出部16は、異常が検出された対象車両の走行状態情報を推定する。処理はステップS109に進み、異常検出部16は、取得した車両信号に基づいて、異常を検出した対象車両の故障部品を推定する。
【0048】
処理はステップS110に進み、予測症状発生範囲設定部17は、特定した症状発生範囲に基づいて、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定する。予測症状発生範囲設定部17は、例えば、データセット群毎に特定した症状発生範囲の中から、不具合車両の部品情報及び車両情報が、対象車両の故障部品及び車両情報と最も一致する不具合車両のデータセット群を特定し、特定したデータセット群の症状発生範囲を、対象車両の予測症状発生範囲として設定する。
【0049】
処理はステップS111に進み、症状発生情報生成部18は、設定された予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を生成する。処理はステップS112に進み、送信部19は、症状発生情報を外部装置50に送信して、
図2の処理を終了する。外部装置50は、送信部19から送信された症状発生情報を受信し、ユーザに通知と表示を行う。なお、症状発生情報に含まれる情報及び、症状発生情報の表示例については、
図10~16を参照して後述する。
【0050】
(第1実施形態の作用効果)
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、車両が正常の走行状態の時と異なる音、振動、温度、匂いのうち少なくとも1つの症状を発生したことを示す症状情報と、症状を発生した部品の部品情報と、症状を発生した時の車両の走行状態情報とを含む車両の不具合情報を取得する。不具合情報に基づいて、症状が発生する症状発生範囲を特定する。症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、特定した症状発生範囲に基づいて、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定する。予測症状発生範囲を通知するための症状発生情報を生成し、症状発生情報を外部装置へ送信する。
【0051】
症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、不具合情報に基づいて特定した症状発生範囲に基づいて、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定して、ユーザに通知することができる。これにより、対象車両が無症状のうちに異音、振動、悪臭のような対象車両の不具合の初期症状の発生を予知してユーザに通知することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、症状情報と部品情報と不具合車両の走行状態情報とに基づいて、不具合情報を分類する。分類した不具合情報毎に、走行状態に対して症状が発生する確率を表す症状発生確率分布を生成する。症状発生確率分布において症状発生確率が閾値以上となる範囲を症状発生範囲として設定する。これにより、対象車両が無症状のうちに、異音、振動、悪臭のような対象車両の不具合の初期症状の症状発生確率をユーザに通知することができる。対象車両が無症状のうちに、ユーザに分かりやすく初期症状に関する情報を伝えることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、症状発生情報は、異常を検出した対象車両の部品の情報を含む。これにより、今後症状が発生する対象車両の部品の情報をユーザに通知することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、症状発生情報は、対象車両の異常を検出した時から、対象車両が症状発生範囲に到達するまでの間に送信される。これにより対象車両が無症状のうちに異音、振動、悪臭のような対象車両の不具合の初期症状の発生をユーザに通知できる。また、他の通知情報と重複した場合に、時間をずらして対象車両の不具合の初期症状の発生を通知することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、不具合車両の車種、製造国、製造工場及び製造時期のうち少なくとも1つを示す車両情報をさらに含み、車両情報が、対象車両の車両情報と一致する不具合車両の不具合情報に基づいて、予測症状発生範囲を設定する。対象車両と車種、製造国、製造工場、製造時期が同じ不具合車両の不具合情報に基づいて、予測症状発生範囲を設定できる。これにより、対象車両の不具合の初期症状の発生を予知する精度を向上できる。
【0056】
また、本実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、不具合情報は、データベース上に蓄積されている、不具合車両の症状情報が記載された報告書のデータ、不具合車両に関する会話内容を記録した音声データまたは会話内容を文章化したデータ、不具合車両から遠隔で取得されたデータ、インターネット上に投稿された不具合車両に関する情報のうち少なくとも1つから取得される。これにより、多様な情報源から不具合情報を取得することができ、効率よくデータを収集することができる。また、症状発生確率分布の精度を向上することができる。
【0057】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の第2実施形態に係る情報提示装置及びその周辺機器について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0058】
図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示装置及びその周辺機器の構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報データベース20と、対象車両情報データベース40と、外部装置50と、車両信号データベース60に接続されている。
【0059】
第2実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報データベース20から、不具合を発生した不具合車両に関する不具合情報を取得する。不具合情報は、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報に加えて、少なくとも1つ以上の不具合車両の走行履歴情報を含む。走行履歴情報とは、車両の走行頻度と、走行している国又は地域と、高地、沿岸部、住宅街などの走行エリアと、一般道と高速道路の走行比率(高速道路利用比率)のような、不具合車両の過去の走行環境や走行の特性に関する情報である。走行履歴情報は、例えば、不具合車両又は不具合車両のカーナビゲーションシステムに記録された走行履歴から取得してもよいし、販売店または車両販売会社が提供するサービスに登録されている車両所有者の情報(自宅や勤務地の住所)、車両所有者が保持するスマートフォン等の外部端末から取得してもよい。
【0060】
また、第2実施形態に係る車両情報提示装置10は、車両信号データベース60から、不具合車両に症状が発生した症状発生時又は症状発生時より前に計測された不具合車両の車両信号を取得する。車両信号とは、例えば、エンジン回転数やエンジン温度を含んだ時系列データのような、不具合車両の部品や構成要素から送信される信号情報である。不具合車両の車両信号は、例えば、ディーラーが不具合車両を不具合診断機器に接続した際に取得してもよく、不具合報告又は不具合相談時に不具合車両が遠隔で送信した車両信号を取得してもよい。
【0061】
車両信号データベース60は、不具合車両から取得された不具合車両の車両信号を蓄積したデータベースである。車両信号データベース60には、症状発生時又は症状発生時より前に計測された不具合車両の車両信号が蓄積されている。
【0062】
さらに、第2実施形態に係る車両情報提示装置10は、対象車両情報データベース40から、対象車両に関する対象車両情報を取得する。対象車両情報は、対象車両の走行状態情報と、対象車両の車両情報と、対象車両の車両信号に加えて、少なくとも1つ以上の対象車両の走行履歴情報を含む。
【0063】
対象車両情報データベース40は、対象車両から取得された対象車両情報を蓄積したデータベースである。対象車両情報データベース40には、対象車両の走行状態情報と、対象車両の車両情報と、対象車両の車両信号に加えて、対象車両の走行履歴情報とが蓄積されている。
【0064】
図3に示すように、第2実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報取得部11と、情報分類部12と、対象車両情報取得部15と、異常検出部16と、類似車両特定部71と、推定車両信号取得部72と、信号類似度算出部73と、予測症状発生範囲設定部17と、症状発生情報生成部18と、送信部19とを備える。異常検出部16と、症状発生情報生成部18と、送信部19の機能及び構成は、第1実施形態に係る車両情報提示装置10と同様であるため、説明は省略する。
【0065】
不具合情報取得部11は、不具合情報データベース20から、不具合情報を取得する。不具合情報は、前述したように、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報に加えて、少なくとも1つ以上の走行履歴情報を含む。
【0066】
また、不具合情報取得部11は、車両信号データベース60から、不具合車両の症状発生時又は症状発生時より前に計測された不具合車両の車両信号を取得する。不具合情報取得部11は、症状発生時又は症状発生時より前に計測された不具合車両の車両信号から、任意の時間幅における車両信号を取得する。不具合情報取得部11は、例えば、症状が発生する2時間前の時点から症状が発生した時までの不具合車両の車両信号を取得してもよく、症状が発生する2時間前の時点から症状が発生する15分前までの不具合車両の車両信号を取得してもよい。
【0067】
なお、症状発生時の車両信号の振る舞いや兆候が明らかであれば、その車両信号の振る舞いや兆候が発生した時間帯を含んだ不具合車両の車両信号を取得することが望ましい。また、不具合車両の車両信号を取得する時間幅を考慮する際に、不具合車両の使用時間(稼働時間)を基準にしてもよいし、不具合車両が走行していない時間帯を含めて車両信号を取得してもよい。さらに、取得する車両信号の時間幅は一律の条件を定めてもよいし、各不具合車両によって、異なる条件にするなど柔軟に条件を設定してもよい。
【0068】
情報分類部12は、症状情報、部品情報、走行状態情報、車両情報及び走行履歴情報に基づいて、取得した不具合情報を分類する。情報分類部12は、例えば、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報と、車両信号とを紐づけて記憶する。
【0069】
対象車両情報取得部15は、対象車両情報データベース40から、対象車両情報を取得する。対象車両情報には、対象車両の走行状態情報と、車両情報と、車両信号と、走行履歴情報とが含まれる。
【0070】
類似車両特定部71は、異常検出部16が、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、対象車両と最も類似する不具合車両(以下、類似車両という)を特定する。類似車両特定部71は、異常が検出された対象車両の故障部品と部品情報が同じ不具合車両の中から、対象車両と最も車両情報及び走行履歴情報が類似する不具合車両を、類似車両として特定する。類似車両特定部71は、不具合車両の中から、類似車両を少なくとも1台以上特定する。なお、類似車両の特定方法の詳細については、後述する。
【0071】
推定車両信号取得部72は、異常検出部16が、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、対象車両の異常を検出した時点以降の、対象車両の車両信号の予測値(以下、推定車両信号という)を取得する。なお、取得する推定車両信号は、類似車両の部品情報と同じ故障部品から取得した、類似車両の車両信号と同じ種類の車両信号である。取得する推定車両信号は、類似車両の車両信号と同じ種類の車両信号であれば、単一信号であってもよく、複数信号であってもよい。なお、推定車両信号の算出方法については、既知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0072】
信号類似度算出部73は、不具合車両の車両信号と、対象車両の推定車両信号との類似度を算出する。より具体的には、信号類似度算出部73は、類似車両特定部71により特定された類似車両の車両信号と、推定車両信号取得部72により取得された対象車両の推定車両信号との類似度を算出する。類似度は、例えば相関分析やテンプレートマッチングのような方法で算出する。類似度の算出方法の詳細については、後述する。
【0073】
予測症状発生範囲設定部17は、算出した類似度に基づいて、予測症状発生範囲を設定する。予測症状発生範囲設定部17は、算出した類似度が閾値以上となる範囲を、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲として設定する。なお、閾値には、全ての不具合症状に対して一定の閾値を設けてもよいし、例えば車種毎、製造工場(工場所在地のエリア)毎、故障部品毎に閾値を設定してもよい。予測症状発生範囲の設定方法の詳細については、後述する。
【0074】
上記構成とすることにより、第2実施形態に係る車両情報提示装置10は、例えば新車種やモデルチェンジ直後の車両など、不具合情報の蓄積が不十分な車両に対しても、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定して、ユーザに通知することができる。
【0075】
図4に示すフローチャートを参照して、第2実施形態に係る車両情報提示装置10の処理の流れの一例を説明する。
図4のステップS205~ステップS207及びステップS212~ステップS213の処理は、
図2のステップS107~ステップS109及びステップS111~ステップS112の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
まず、ステップS201において、不具合情報取得部11は、不具合情報データベース20から、不具合情報を取得する。不具合情報には、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報とが含まれる。ここでは、走行状態情報として、不具合車両に症状が発生した時点での残り走行可能距離を取得する。
【0077】
処理はステップS202に進み、不具合情報取得部11は、車両信号データベース60から、不具合車両の症状発生時又は症状発生時より前に計測された不具合車両の車両信号を取得する。
【0078】
処理はステップS203に進み、情報分類部12は、症状情報、部品情報、走行状態情報、車両情報、走行履歴情報に基づいて、取得した不具合情報を分類する。具体的には、情報分類部12は、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報と、車両信号とを紐づけて記憶する。
【0079】
処理はステップS204に進み、対象車両情報取得部15は、対象車両情報データベース40から、対象車両情報を取得する。対象車両情報には、対象車両の車両信号と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報とが含まれる。
【0080】
ステップS205~ステップS207において、異常検出部16が、症状が発生していない対象車両の異常を検出した場合に、処理はステップS208に進み、推定車両信号取得部72は、対象車両の異常を検出した時点以降の対象車両の推定車両信号を取得する。
【0081】
処理はステップS209に進み、類似車両特定部71は、異常が検出された対象車両の故障部品と故障部品が同じ不具合車両の中から、対象車両と最も車両情報及び走行履歴情報が類似する不具合車両を、類似車両として特定する。
【0082】
(類似車両の特定方法)
ここで、類似車両の特定方法の一例について説明する。以下の説明では、例えば、不具合情報取得部11は、異常が検出された対象車両の故障部品と同じ部品情報をもつ3台の不具合車両の不具合情報として、第1~第3の不具合情報を取得したとする。第1の不具合情報の内容の一部は、車両情報の車種が「車種A」、製造工場が「工場A」、製造時期が「2019年」であり、走行履歴情報の走行頻度が「週5日」、走行地域が「地域A」、走行エリアが「高地」、高速道路利用率が「30%~40%」であるとする。第2の不具合情報の内容の一部は、車両情報の車種が「車種B」、製造工場が「工場A」、製造時期が「2018年」であり、走行履歴情報の走行頻度が「週7日」、走行地域が「地域B」、走行エリアが「沿岸」、高速道路利用率が「60%~70%」であるとする。第3の不具合情報の内容の一部は、車両情報の車種が「車種A」、生産工場が「工場A」、生産時期が「2019年」であり、走行履歴情報の走行頻度が「週2日」、走行地域が「地域C」、走行エリアが「住宅街・都心部」、高速道路利用率が「20%~30%」であるとする。
【0083】
そして、上記の場合に、異常が検出された対象車両の車両情報の車種が「車種A」、生産工場が「工場A」、生産時期が「2019年」であり、走行履歴情報の走行頻度が「週2日」、走行地域が「地域C」、走行エリアが「住宅街・都心部」、高速道路利用率が「30%~40%」であるとする。
【0084】
この場合、類似車両特定部71は、第1~第3の不具合情報の中から、異常が検出された対象車両と車両情報及び走行履歴情報が類似する第1の不具合情報と第3の不具合情報を抽出する。そして、第1の不具合情報と第3の不具合情報の走行履歴情報の項目の一致度を算出する。第1の不具合情報の走行履歴情報は、対象車両の走行履歴情報に対して4項目中1項目(高速道路利用率)が一致しているため、第1の不具合情報の走行履歴情報の一致度は1/4である。一方、第3の不具合情報対象車両の走行履歴情報に対しては、対象車両の走行履歴情報に対して4項目中3項目(走行頻度、走行地域、走行エリア)が一致しているため、第3の不具合情報の一致度は3/4である。類似車両特定部71は、第1~第3の不具合情報の中から、車両情報が一致しており、かつ、走行履歴情報の一致度が最も高い第3の不具合情報の不具合車両を、類似車両として特定する。
【0085】
以上のようにして、類似車両特定部71は、異常が検出された対象車両の故障部品と部品情報が同じ不具合車両の中から、対象車両と最も車両情報及び走行履歴情報が類似する類似車両を特定する。なお、ここで説明した類似車両の特定方法、不具合情報の内容及び対象車両情報の内容は一例でありこの方法や内容には限定されるものではない。
【0086】
処理はステップS210に進み、信号類似度算出部73は、類似車両の車両信号と、対象車両の推定車両信号との類似度を算出する。
【0087】
(類似度の算出方法及び予測症状発生範囲の設定方法)
ここで、類似車両の車両信号と、対象車両の推定車両信号との類似度の算出方法及び予測症状発生範囲の設定方法の一例について説明する。以下の説明では、類似車両の車両信号は、症状発生時より5秒前から、症状発生時までの信号(サンプリングレート:1秒)であるとする。症状発生時より前の5秒間の類似車両の車両信号の値が「1」、「2」、「3」、「4」、「5」であり、症状発生時の類似車両の車両信号の値が「6」であるとする。
【0088】
さらに、上記の場合に、対象車両の推定車両信号の11秒間の値が、「2」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」であるとする(サンプリングレート:1秒)。信号類似度算出部73は、類似車両の車両信号の区間(時間窓)を1秒毎にずらして、区間毎に類似車両の車両信号と対象車両の推定車両信号の相関係数を算出することにより、類似車両の車両信号と対象車両の推定車両信号との類似度を算出する。上記の例においては、信号類似度算出部73は、対象車両の推定車両信号の1~6秒の区間の類似度を-0.65、2~7秒の区間の類似度を0.65、3~8秒の区間の類似度を0.83、4~9秒の区間の類似度を0.93、5~10秒の区間の類似度を0.98、6~11秒の区間の類似度を1.00と算出する。
【0089】
なお、対象車両の推定車両信号の値が変わらない場合(例えば一律で2の値をとる等)は、類似度を0としてもよい。また、相関係数が負の値をとる場合は、類似度0としてもよい。さらに、上記例では時間窓が重複しているが、重複せずに時間窓をずらしながら類似度を算出してもよい。
【0090】
処理は
図4のステップS211に進み、予測症状発生範囲設定部17は、算出した類似度に基づいて、予測症状発生範囲を設定する。予測症状発生範囲設定部17は、算出した類似度が閾値以上となる範囲を、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲として設定する。
【0091】
例えば、類似度の閾値を0.9とすると、上記の例においては、対象車両の推定車両信号の4~9秒の区間、5~10秒の区間、6~11秒の区間において、類似度が閾値以上となる。この場合、予測症状発生範囲設定部17は、4~11秒の区間を予測症状発生範囲として設定する。また、不具合の症状は、走行距離及び走行時間が長くなるほど悪化することが予想される。したがって、予測症状発生範囲設定部17は、類似度が最初に閾値以上となる区間以降の区間を予測症状発生範囲として設定してもよい。
【0092】
以上のようにして、信号類似度算出部73は、類似車両の車両信号と、対象車両の推定車両信号との類似度を算出する。また、予測症状発生範囲設定部17は、類似度に基づいて、予測症状発生範囲を設定する。なお、ここで説明した方法及び車両信号の値は一例であり、この方法や値に限定されるものではない。
【0093】
(第2実施形態の作用効果)
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、症状発生時または症状発生時より前に計測された不具合車両の車両信号を取得し、対象車両の車両信号の予測値を取得し、不具合車両の車両信号と、対象車両の車両信号の予測値との類似度を算出し、類似度が閾値以上となる範囲を予測症状発生範囲として設定する。これにより、不具合情報の蓄積が少ない場合でも、対象車両が無症状のうちに異音、振動、悪臭のような対象車両の不具合の初期症状の発生を予知してユーザに通知することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、不具合車両の不具合情報は、不具合車両の走行履歴情報をさらに含み、対象車両の走行履歴情報をさらに取得し、不具合車両の中から、対象車両と最も走行履歴情報が類似する不具合車両を類似車両として特定し、類似車両の車両信号と、対象車両の車両信号の予測値との類似度を算出し、類似度が閾値以上となる範囲を予測症状発生範囲として設定する。これにより、不具合情報の蓄積が少ない場合であっても、対象車両の症状発生範囲を特定できる。対象車両が無症状のうちに異音、振動、悪臭のような対象車両の不具合の初期症状の発生を予知する精度を向上できる。
【0095】
[第3実施形態]
以下、本発明を適用した第3実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の第3実施形態に係る車両情報提示装置及びその周辺機器について、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0096】
図5を参照して、本発明の第3実施形態に係る車両情報提示装置及びその周辺機器の構成について説明する。
【0097】
第3実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報データベース20から、不具合を発生した不具合車両に関する不具合情報を取得する。不具合情報は、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、少なくとも1つ以上の不具合車両の走行履歴情報に加えて、不具合車両が正常状態の時の不具合車両の車両信号を示す基準車両信号を含む。基準車両信号とは、不具合車両と車両情報が一致する車両が正常状態の時の、当該車両(以下、正常車両という)の車両信号である。基準車両信号は、例えば、車両情報毎に予め不具合情報データベース20に記録された信号モデルである。なお、基準車両信号は、不具合車両と車両情報が一致する正常車両の車両信号を、例えばサーバや外部端末などのデバイスからリクエストを送信することにより取得されてもよい。
【0098】
図5に示すように、第3実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報取得部11と、第1乖離度算出部74と、情報分類部12と、対象車両情報取得部15と、異常検出部16と、類似車両特定部71と、推定車両信号取得部72と、第2乖離度算出部75と、乖離度判定部76と、予測症状発生範囲設定部17と、症状発生情報生成部18と、送信部19とを備える。対象車両情報取得部15と、異常検出部16と、類似車両特定部71と、推定車両信号取得部72と、症状発生情報生成部18と、送信部19の機能及び構成は、第2実施形態に係る車両情報提示装置10と同様であるため、説明は省略する。
【0099】
不具合情報取得部11は、不具合情報データベース20から、不具合情報を取得する。不具合情報は、前述したように、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、少なくとも1つ以上の走行履歴情報に加えて、基準車両信号を含む。
【0100】
第1乖離度算出部74は、不具合車両の車両信号と、基準車両信号との第1乖離度を算出する。第1乖離度算出部74は、例えば、不具合車両の車両信号の値と、基準車両信号の値の平均値の差から、第1乖離度を導出する。なお、第1乖離度の算出方法の詳細については後述する。
【0101】
情報分類部12は、症状情報、部品情報、走行状態情報、車両情報、走行履歴情報に基づいて、取得した不具合情報を分類する。情報分類部12は、例えば、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報と、車両信号と、基準車両信号と、第1乖離度とを紐づけて記憶する。
【0102】
第2乖離度算出部75は、推定車両信号取得部72により取得した対象車両の推定車両信号と、類似車両特定部71により特定した、車両情報が一致する類似車両の不具合情報に記憶されている基準車両信号との第2乖離度を算出する。第2乖離度算出部75は、例えば、対象車両の推定車両信号の値と、基準車両信号の平均値の差から、第2乖離度を算出する。また、第2乖離度算出部75は、例えば、対象車両の車両情報と車両情報が一致する正常車両の基準車両信号を取得して、対象車両の推定車両信号の値と、基準車両信号の平均値の差から、第2乖離度を算出してもよい。なお、第2乖離度の算出方法の詳細については後述する。
【0103】
乖離度判定部76は、第2乖離度が、第1乖離度以上となる範囲があるか否かを判定する。
【0104】
予測症状発生範囲設定部17は、乖離度判定部76が、第2乖離度が第1乖離度以上となる範囲があると判定した場合に、第2乖離度が第1乖離度以上となる範囲を、予測症状発生範囲として設定する。なお、予測症状発生範囲の設定方法の詳細については後述する。
【0105】
上記構成とすることにより、本発明の第3実施形態に係る車両情報提示装置10は、例えば新車種やモデルチェンジ直後の車両など、不具合情報の蓄積が不十分な車両に対しても、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定して、ユーザに通知することができる。
【0106】
図6に示すフローチャートを参照して、第3実施形態に係る車両情報提示装置10の処理の流れの一例を説明する。
図6のステップS302、ステップS305~ステップS310及びステップS313~ステップS314の処理は、
図4のステップS202、ステップS204~ステップS209及びステップS212~ステップS213の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0107】
まず、ステップS301において、不具合情報取得部11は、不具合情報データベース20から、不具合情報を取得する。不具合情報には、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報と、基準車両信号とが含まれる。ここでは、走行状態情報として、不具合車両に症状が発生した時点での残り走行可能距離を取得する。
【0108】
ステップS303において、第1乖離度算出部74は、不具合車両の車両信号と、基準車両信号との第1乖離度を算出する。第1乖離度算出部74は、例えば、不具合車両の車両信号の値と、基準車両信号の値の平均値の差から、第1乖離度を算出する。第1乖離度は、不具合情報毎に1つの値が算出される。
【0109】
(第1乖離度の算出方法)
ここで、第1乖離度の算出方法の一例について説明する。以下の説明では、基準車両信号の値の平均値が「1」であるとする。また、不具合車両の車両信号は、症状発生時より5秒前から、症状発生時までの信号(サンプリングレート:1秒)であるとする。症状発生時より前の5秒間の類似車両の車両信号の値が「1」、「2」、「3」、「4」、「5」であり、症状発生時の類似車両の車両信号の値が「6」であるとする。
【0110】
第1乖離度算出部74は、症状発生時の類似車両の車両信号の値と、基準車両信号の値の平均値との差分を第1乖離度として算出する。上記の場合に、第1乖離度算出部74は、症状発生時の類似車両の車両信号の値「6」と、基準車両信号の値の平均値「1」との差分「5」を第1乖離度として算出する。
【0111】
また、第1乖離度算出部74は、症状発生時の類似車両の車両信号の値と基準車両信号の値の平均値との差分だけでなく、類似車両の車両信号のすべての区間または任意の区間において、類似車両の車両信号の値と基準車両信号の値の平均値との差分を算出し、それらの差分の平均値を第1乖離度としてもよい。すなわち、上記の場合に、第1乖離度算出部74は、症状発生時より前の5秒間の類似車両の車両信号「1」、「2」、「3」、「4」、「5」と基準車両信号の平均値「1」の値との差分「0」「1」「2」「3」「4」と、症状発生時の類似車両の車両信号の値「6」と基準車両信号の値の平均値「1」との差分「5」を算出し、これらの差分「0」「1」「2」「3」「4」「5」の平均値「2.5」を算出して、第1乖離度としてもよい。
【0112】
以上のようにして、第1乖離度算出部74は、類似車両の車両信号と、基準車両信号との第1乖離度を算出する。なお、ここで説明した方法及び車両信号の値は一例であり、この方法や値に限定されるものではない。
【0113】
処理はステップS304に進み、情報分類部12は、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報と、車両信号と、基準車両信号と、第1乖離度とを紐づけて記憶する。
【0114】
ステップS311において、第2乖離度算出部75は、推定車両信号取得部72により取得された対象車両の推定車両信号と、類似車両特定部71により特定した、車両情報が一致する類似車両の不具合情報に記憶されている基準車両信号との第2乖離度を算出する。第2乖離度算出部75は、例えば、対象車両の推定車両信号の値と、基準車両信号の平均値の差から、第2乖離度を導出する。第2乖離度は、推定車両信号の区間毎に算出される。
【0115】
(第2乖離度の算出方法及び予測症状発生範囲の設定方法)
ここで、第2乖離度の算出方法及び予測症状発生範囲の設定方法の一例について説明する。以下の説明では、基準車両信号の値の平均値が「1」であるとする。また、推定車両信号の6秒間の値が「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」であるとする(サンプリングレート:1秒)。この場合、第2乖離度算出部75は、推定車両信号のすべての区間において、推定車両信号の値と基準車両信号の値の平均値との差分を算出することにより、第2乖離度を算出する。すなわち、上記の例においては、第2乖離度算出部75は、推定車両信号の6秒間の値「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」と基準車両信号の平均値「1」の値との差分「0」、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」を、推定車両信号の6秒間の第2乖離度として算出する。
【0116】
処理は
図6のステップS312に進み、乖離度判定部76は、第2乖離度が、第1乖離度以上となる範囲があるか否かを判定する。乖離度判定部76が、第2乖離度が第1乖離度以上となる範囲があると判定した場合に、処理はステップS313に進み、予測症状発生範囲設定部17は、第1乖離度及び第2乖離度に基づいて、予測症状発生範囲を設定する。予測症状発生範囲設定部17は、第2乖離度が第1乖離度以上となる範囲を、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲として設定する。
【0117】
例えば、上記の例において、第1乖離度が「2.5」とすると、対象車両の推定車両信号の第2乖離度「0」、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」は、4~6秒の区間(「3」、「4」、「5」)において、第1乖離度「2.5」以上となる。この場合、予測症状発生範囲設定部17は、4~6秒の区間を予測症状発生範囲として設定する。また、不具合の症状は、走行距離及び走行時間が長くなるほど悪化することが予想される。したがって、予測症状発生範囲設定部17は、第2乖離度が最初に第1乖離度以上となる区間以降の区間を予測症状発生範囲として設定してもよい。すなわち、上記の例では、予測症状発生範囲設定部17は、第2乖離度が最初に第1乖離度以上となる4秒の区間以降の区間を、予測症状発生範囲として設定してもうよい。
【0118】
以上のようにして、第2乖離度算出部75は、対象車両の推定車両信号と、基準車両信号との第2乖離度を算出する。また、予測症状発生範囲設定部17は、第1乖離度及び第2乖離度に基づいて、予測症状発生範囲を設定する。なお、ここで説明した方法及び車両信号の値は一例であり、この方法や値に限定されるものではない。
【0119】
(第3実施形態の作用効果)
以上説明したように、本発明の第3実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、不具合車両の車両信号を取得し、症状発生時に計測された不具合車両の車両信号と、不具合車両が正常状態の時の車両の車両信号を示す基準車両信号との第1乖離度を算出し、対象車両の車両信号の予測値を取得し、対象車両の車両信号の予測値と、基準車両信号との第2乖離度を算出し、第2乖離度が、第1乖離度以上となる範囲を、予測症状発生範囲として特定する。
【0120】
これにより、不具合情報の蓄積が少ない場合かつ、車両の不具合情報に記録されておらず、症状発生時の車両信号が未知の場合であっても、対象車両の症状発生範囲を特定できる。対象車両が無症状のうちに異音、振動、悪臭のような対象車両の不具合の初期症状の発生を予知する精度を向上できる。
【0121】
[第4実施形態]
以下、本発明を適用した第4実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の第4実施形態に係る情報提示装置及びその周辺機器について、第3実施形態との相違点を中心に説明する。
【0122】
第3実施形態に係る車両情報提示装置10では、基準車両信号として、車両情報毎に予め記録されている、不具合車両と車両情報が一致する正常車両の車両信号を用いた。これに対し、第4実施形態に係る車両情報提示装置10では、不具合車両が正常状態であった時に計測された、不具合車両の過去の車両信号を取得して、基準車両信号として用いる。
【0123】
図7に示すように、第4実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報取得部11と、正常/症状発生区間取得部77と、第1乖離度算出部74と、情報分類部12と、対象車両情報取得部15と、異常検出部16と、類似車両特定部71と、推定車両信号取得部72と、第2乖離度算出部75と、乖離度判定部76と、予測症状発生範囲設定部17と、症状発生情報生成部18と、送信部19とを備える。異常検出部16と、類似車両特定部71と、推定車両信号取得部72と、第2乖離度算出部75と、乖離度判定部76と、予測症状発生範囲設定部17と、症状発生情報生成部18と、送信部19の機能及び構成は、第3実施形態に係る車両情報提示装置10と同様であるため、説明は省略する。
【0124】
不具合情報取得部11は、不具合情報データベース20から、不具合情報を取得する。不具合情報は、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、少なくとも1つ以上の走行履歴情報を含む。また、不具合情報取得部11は、車両信号データベース60から、不具合車両の症状発生時及び症状発生時より前に計測された不具合車両の車両信号を取得する。
【0125】
正常/症状発生区間取得部77は、取得した不具合車両の車両信号において、不具合車両が正常状態であった正常区間と、不具合車両に症状が発生した症状発生区間を推定する。正常区間の推定方法は、例えば、車両情報毎に予め記憶されている車両信号の正常モデルとの類似度が最も高い区間としてもよく、不具合車両の修理・メンテナンスまたは車検直後から再度修理・メンテナンスすることなく走行できた所定の期間及び距離区間であってもよい。また、購入直後から所定の期間及び距離区間であってもよく、方法は様々である。
【0126】
第1乖離度算出部74は、基準車両信号として、不具合車両の正常区間の車両信号と、不具合車両の症状発生区間の車両信号との第1乖離度を算出する。第1乖離度の算出方法は、基準車両信号が不具合車両の正常区間の車両信号である点を除けば、第3実施形態に係る車両情報提示装置10と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0127】
情報分類部12は、症状情報、部品情報、走行状態情報、車両情報、走行履歴情報に基づいて、取得した不具合情報を分類する。情報分類部12は、例えば、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報と、車両信号と、基準車両信号(不具合車両の正常区間の車両信号)と、第1乖離度とを紐づけて記憶する。
【0128】
上記構成とすることにより、本発明の第4実施形態に係る車両情報提示装置10は、単一の不具合車両の車両信号に基づいて、予測症状発生範囲を設定できるようになり、例えば新車種やモデルチェンジ直後の車両など、不具合情報の蓄積が不十分な車両に対しても、対象車両が症状を発生すると予測される予測症状発生範囲を設定して、ユーザに通知することができる。
【0129】
図8に示すフローチャートを参照して、第4実施形態に係る車両情報提示装置10の処理の流れの一例を説明する。
図8のステップS406~ステップS415の処理は、
図6のステップS305~ステップS314の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0130】
まず、ステップS401において、不具合情報データベース20から、不具合情報を取得する。不具合情報には、前述したように、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、少なくとも1つ以上の走行履歴情報を含む。
【0131】
処理はステップS402に進み、不具合情報取得部11は、車両信号データベース60から、不具合車両の症状発生時及び症状発生時より前に計測された不具合車両の車両信号を取得する。
【0132】
処理はステップS403に進み、正常/症状発生区間取得部77は、取得した不具合車両の車両信号において、不具合車両が正常状態であった正常区間と、不具合車両に症状が発生した症状発生区間を推定する。
【0133】
処理はステップS404に進み、第1乖離度算出部74は、不具合車両の正常区間の車両信号と、不具合車両の症状発生区間の車両信号との第1乖離度を算出する。
【0134】
処理はステップS405に進み、情報分類部12は、不具合車両の症状情報と、部品情報と、走行状態情報と、車両情報と、走行履歴情報と、車両信号と、基準車両信号(不具合車両の正常区間の車両信号)と、第1乖離度とを紐づけて記憶する。
【0135】
(第4実施形態の作用効果)
以上説明したように、本発明の第4実施形態に係る車両情報提示方法及びその装置では、基準車両信号は、不具合車両が正常状態であった時に計測された不具合車両の車両信号である。これにより、不具合情報の蓄積がより少ない場合かつ、車両の不具合情報に記録されておらず、症状発生時の車両信号が未知の場合であっても、対象車両の予測症状発生範囲を特定することができる。
【0136】
[変形例]
以下、本発明を適用した第1実施形態の変形例について、図面を参照して説明する。第1実施形態に係る車両情報提示装置10は、不具合情報データベース20に蓄積された情報から、不具合情報を取得した。車両情報提示装置10は、不具合情報データベース20に蓄積された情報に加えて、サーバ上またはインターネット上から、不具合車両の不具合に関する情報を検索して取得してもよい。例えば、配車サービスや無人タクシーなど、車両所有者と車両の乗員が異なる車両の不具合の初期症状は、車両の乗員が直接ディーラー等に不具合を報告する可能性が低いと考えられる。したがって、サーバ上またはインターネット上から、不具合車両の症状に関する情報を検索して取得することにより、不具合車両に関する不具合情報を効率良く収集できるようになる。
【0137】
図9に示すように、第1実施形態の車両情報提示装置10は、不具合情報取得部11と、不具合報告探索部78と、情報分類部12と、症状発生確率分布生成部13と、症状発生範囲特定部14と、対象車両情報取得部15と、異常検出部16と、予測症状発生範囲設定部17と、症状発生情報生成部18と、送信部19とを備えてもよい。
【0138】
不具合報告探索部78は、例えば、インターネット上やSNS、アプリケーション等に記載された不具合車両に関する報告、口コミ、投稿記事などから、不具合車両の症状に関する情報を探索して取得する。検索時の検索ワードとしては、例えば、不具合車両の車種名や、配車サービス名や、不具合車両が利用されているイベント名などが考えられる。なお、不具合報告探索部78は、例えば不具合車両の乗員同士の会話内容を記録した音声データ、不具合車両に搭載されたカメラの動画データ・画像データなどの、不具合車両の症状及び車両情報が記載された任意のフォーマットのデータから、不具合車両の症状に関する情報を探索して取得してもよい。また、動画データ、画像データまたは音声データから認識した車両情報及び症状、部品をテキストデータに置き換えるなどして、不具合情報を検索してもよい。
【0139】
不具合報告探索部78は、探索した不具合車両の症状に関する情報から、症状情報、部品情報、走行状態情報、車両情報の少なくとも1つを取得する。
【0140】
上記構成とすることにより、サーバインターネット上から不具合車両の不具合症状に関する情報を検索して取得するため、さらに不具合情報を効率よく収集することができる。また、配車サービス名、車両が出展されているイベント名など、車両情報が直接記載されていない情報源からも不具合情報を取得することができる。
【0141】
[症状発生情報の表示例]
本発明の実施形態に係る車両情報提示装置10により生成される症状発生情報の表示例について、
図10~
図16を参照して説明する。
【0142】
図10は、本発明の第1実施形態に係る車両情報提示装置10により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
図10に示すように、本発明の第1実施形態に係る車両情報提示装置10は、対象車両の異常を検知した時点(異常予知時点)から、対象車両に故障が発生すると予測した時点(故障発生)までの残り走行可能距離と、残り走行可能距離に対する症状発生確率分布と、無症状の区間及び予測症状発生範囲(異音発生区間)とを通知するための症状発生情報を生成する。また、
図10の表示例おいては、例えば、対象車両の異常予知時点から故障発生までの残り走行可能距離と、対象車両の異常予知時点から異音発生区間までの残り走行可能距離が、「残り走行可能距離50km」「異音発生区間まで20km」というメッセージにより通知される。
【0143】
図11及び
図12は、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示装置10により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
図11に示すように、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示装置10は、対象車両と最も類似する類似車両として特定された不具合車両の車両情報(車種、生産場所、生産時期)と、類似車両の症状情報(不具合症状)と、部品情報(症状発生部品)と、走行履歴情報と、類似車両の車両信号とを通知するための症状発生情報を生成してもよい。
【0144】
さらに、
図12に示すように、本発明の第2実施形態に係る車両情報提示装置10は、対象車両の異常を検知した時点から、対象車両に故障が発生すると予測した時点(故障発生)までの残り走行可能距離と、残り走行可能距離における対象車両の推定車両信号(予測された信号値)と、予測症状発生範囲(異音発生区間)とを通知するための症状発生情報を生成してもよい。また、
図12の表示例においては、類似車両の車両信号の信号値と、対象車両の推定車両信号の信号値との類似度が閾値よりも高い範囲Aが表示される。さらに、
図12の表示例おいては、例えば、対象車両の異常を検知した時点から、故障発生までの残り走行可能距離と、対象車両の異常予知時点から異音発生区間までの残り走行可能距離が、「残り走行可能距離50km」「異音発生区間まで20km」というメッセージにより通知される。
【0145】
図13及び
図14は、本発明の第3実施形態及び第4実施形態に係る車両情報提示装置10により生成される症状発生情報の表示例を示す図である。
図13に示すように、第3実施形態及び第4実施形態に係る車両情報提示装置10は、対象車両と最も類似する類似車両として特定された不具合車両の車両情報(車種、生産場所、生産時期)と、類似車両の症状情報(不具合症状)と、部品情報(症状発生部品)と、走行履歴情報と、基準車両信号と類似車両信号との第1乖離度(乖離度)を通知するための症状発生情報を生成してもよい。
【0146】
また、
図14に示すように、本発明の第3実施形態及び第4実施形態に係る車両情報提示装置10は、対象車両の異常を検知した時点から、対象車両に故障が発生すると予測した時点までの残り走行可能距離と、残り走行可能距離における対象車両の推定車両信号と基準車両信号との第2乖離度と、第2乖離度の閾値となる第1乖離度の値と、予測症状発生範囲(異音発生区間)とを通知するための症状発生情報を生成してもよい。また、
図14の表示例においては、例えば、対象車両の異常を検知した時点から、故障発生までの残り走行可能距離と、対象車両の異常予知時点から異音発生区間までの残り走行可能距離が、「残り走行可能距離50km」「異音発生区間まで20km」というメッセージにより通知される。
【0147】
さらに、本発明の実施形態に係る車両情報提示装置10は、
図15A、
図15B及び
図16に示すように、予測症状発生範囲及び走行状態情報を視覚的に認識できるように通知するための症状発生情報を生成してもよい。例えば、
図15A及び
図15Bに示すように、対象車両が残り走行可能距離において無症状の区間を走行している場合と、対象車両が残り走行可能距離において予測症状発生範囲を走行している場合とで、残り走行可能距離を異なる色で表示する。さらに、対象車両の異常を検知した時点から、故障発生までの残り走行可能距離と、対象車両が無症状の区間を走行しているか、予測症状発生範囲を走行しているかを通知するメッセージを表示するようにしてもよい。また、
図16に示すように、残り走行可能距離における無症状の区間と、予測症状発生範囲とを識別できるように、異なる色で表示するようにしてもよい。これにより、ユーザの誤認識を防ぎつつ、適切に予測症状発生範囲を認識させることができる。
【0148】
また、図示は省略するが、本発明の実施形態に係る車両情報提示装置10は、例えば、対象車両の異常を検出したこと、異常を検出した対象車両の部品の情報、対象車両の異常予知時点から故障発生までの残り走行可能距離、対象車両の異常予知時点から予測症状発生範囲までの残り走行可能距離などを通知するための症状発生情報を生成してもよい。例えば、「車両の異常を検出しました。故障部品はエンジンです。故障までの残り走行可能距離は現在50kmですが、残り走行可能距離30km付近で異音が発生すると予測されます。」といったメッセージを表示してもよい。また、「車両の異常を検出しました。故障部品はエンジンです。故障までの残り走行可能距離は現在50kmですが、残り走行可能距離30km付近では異音の発生確率が70%と高い数値になっております。それ以降の運転は十分にお気を付け下さい。」といったメッセージを表示してもよい。
【0149】
また、図示は省略するが、本発明に係る車両情報提示装置10は、例えば、対象車両の異常を検出した部品または車両要素の部品情報、対象車両の異常を検出した部品の位置または場所、交換部品の部品番号または型番、部品費用などを通知するための症状発生情報を生成してもよい。
【0150】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0151】
11 不具合情報取得部
14 症状発生範囲特定部
17 予測症状発生範囲設定部
18 症状発生情報生成部
19 送信部
10 車両情報提示装置