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特開2023-154527修正装置、修正方法、及びロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154527
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】修正装置、修正方法、及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B25J9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063883
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 真彰
(72)【発明者】
【氏名】北島 薫
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS09
3C707KS17
3C707KS35
3C707KT01
3C707KT06
3C707LS14
3C707LT11
(57)【要約】
【課題】 機構誤差パラメータに含まれる角度誤差としての関節たわみとバックラッシとを弁別して同定できるようにして、キャリブレーションの精度を向上させる。
【解決手段】 修正装置は、ロボットの機構を表すロボット機構モデル情報、及び前記ロボットに設けられたエンドエフェクタに関するエンドエフェクタ情報に基づき、前記ロボットの姿勢に対応する複数の候補点を前記ロボットの可動範囲内に生成し、生成した前記複数の候補点のうち、前記候補点にそれぞれ対応する前記姿勢における前記ロボットの各関節の関節トルクτが所定の閾値以上となる前記候補点を測定点に決定する測定点生成部と、前記測定点に対応する前記姿勢における前記エンドエフェクタの計算位置と実測位置との位置誤差を算出し、算出した前記位置誤差が最小となるように機構誤差パラメータを同定するパラメータ同定部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの機構を表すロボット機構モデル情報、及び前記ロボットに設けられたエンドエフェクタに関するエンドエフェクタ情報に基づき、前記ロボットの姿勢に対応する複数の候補点を前記ロボットの可動範囲内に生成し、生成した前記複数の候補点のうち、前記候補点にそれぞれ対応する前記姿勢における前記ロボットの各関節の関節トルクτが所定の閾値以上となる前記候補点を測定点に決定する測定点生成部と、
前記測定点に対応する前記姿勢における前記エンドエフェクタの計算位置と実測位置との位置誤差を算出し、算出した前記位置誤差が最小となるように機構誤差パラメータを同定するパラメータ同定部と、
を備える修正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の修正装置であって、
前記パラメータ同定部は、
算出した前記位置誤差が最小となるように、前記機構誤差パラメータとしての、リンク長誤差ΔL、組立誤差Δα、及び角度誤差を同定し、
同定した前記各関節における前記角度誤差、及び前記関節トルクτに基づいて、関節たわみcτの係数c、角度オフセット誤差Δθ、及びバックラッシωを推定する
修正装置。
【請求項3】
請求項1に記載の修正装置であって、
前記測定点生成部は、前記ロボットの動作を制御するためのロボット動作プログラムを解析し、ロボット動作プログラムに対応する動作を終えるまでの前記ロボットの姿勢に対応する教示点と所定の距離以内の前記候補点を前記測定点に決定する
修正装置。
【請求項4】
請求項1に記載の修正装置であって、
前記実測位置を測定する測定点実測部、
を備える修正装置。
【請求項5】
請求項1に記載の修正装置であって、
前記ロボットの動作を制御するためのロボット動作プログラムに従って前記ロボットを動作させた場合の前記エンドエフェクタの位置誤差を、前記機構誤差パラメータに基づいて推定する位置誤差推定部、
を備える修正装置。
【請求項6】
請求項5に記載の修正装置であって、
前記位置誤差推定部は、推定した前記位置誤差に基づいて、前記ロボット動作プログラムを修正する
を備える修正装置。
【請求項7】
修正装置による修正方法であって、
ロボットの機構を表すロボット機構モデル情報、及び前記ロボットに設けられたエンドエフェクタに関するエンドエフェクタ情報に基づき、前記ロボットの姿勢に対応する複数の候補点を前記ロボットの可動範囲内に生成し、生成した前記複数の候補点のうち、前記候補点にそれぞれ対応する前記姿勢における前記ロボットの各関節の関節トルクτが所定の閾値以上となる前記候補点を測定点に決定する測定点生成ステップと、
前記測定点に対応する前記姿勢における前記エンドエフェクタの計算位置と実測位置との位置誤差を算出し、算出した前記位置誤差が最小となるように機構誤差パラメータを同定するパラメータ同定ステップと、
を含む修正方法。
【請求項8】
ロボットと、
前記ロボットの動作を制御するためのロボット動作プログラムを修正する修正装置と、備えるロボットシステムであって、
前記修正装置は、
前記ロボットの機構を表すロボット機構モデル情報、及び前記ロボットに設けられたエンドエフェクタに関するエンドエフェクタ情報に基づき、前記ロボットの姿勢に対応する複数の候補点を前記ロボットの可動範囲内に生成し、生成した前記複数の候補点のうち、前記候補点にそれぞれ対応する前記姿勢における前記ロボットの各関節の関節トルクτが所定の閾値以上となる前記候補点を測定点に決定する測定点生成部と、
前記測定点に対応する前記姿勢における前記エンドエフェクタの計算位置と実測位置との位置誤差を算出し、算出した前記位置誤差が最小となるように機構誤差パラメータを同定するパラメータ同定部と、
前記ロボット動作プログラムに従って前記ロボットを動作させた場合の前記エンドエフェクタの位置誤差を、前記機構誤差パラメータに基づいて推定し、推定した前記位置誤差に基づいて、前記ロボット動作プログラムを修正する位置誤差推定部と、
修正した前記ロボット動作プログラムに基づいて前記ロボットを制御するロボット制御部と、
を備えるロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修正装置、修正方法、及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを制御する場合、ロボットに対して命令した目標位置と、当該命令に従ってロボットが動作したときの実測位置との位置誤差を修正するためのキャリブレーションが必要となる。
【0003】
ロボットのキャリブレーションに関する技術として、例えば特許文献1には、ロボットの可動範囲内に第1の計測領域と第2の計測領域とを設定すること、第1の計測領域と第2の計測領域それぞれにおいて、キャリブレーションを実行して機構誤差パラメータを同定すること、ロボットを動作プログラムに従って動作させる際に、当該動作プログラムに含まれる各教示点に対し、その教示点に最も近い計測領域でのキャリブレーションによって同定された機構誤差パラメータを適用して当該動作プログラムを修正すること、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6568172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットの目標位置と実測位置との位置誤差の要因としては、ロボットの機構誤差、エンドエフェクタの加工誤差、及び組立誤差、ワークを固定する治具の設置誤差、並びにワークの加工誤差、及び組立誤差が知られている。このうち、ロボットの機構誤差の影響が最も大きい。ロボットの機構誤差の要因となる機構誤差パラメータとしては、リンク長誤差、リンク組立誤差、並びに、角度誤差としての関節たわみ、角度オフセット誤差、及びバックラッシが存在する。
【0006】
角度誤差としての関節たわみ、角度オフセット誤差、及びバックラッシのうち、関節たわみ、及びバックラッシは、関節トルクの方向に依存する。このため、引用文献1の記載の技術等の従来技術では、関節たわみとバックラッシとを弁別して同定することが困難である。そして、関節たわみとバックラッシとを弁別して同定できないことが、キャリブレーションの精度低下の一因となっている。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、機構誤差パラメータに含まれる角度誤差としての関節たわみとバックラッシとを弁別して同定できるようにして、キャリブレーションの精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下の通りである。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る修正装置は、ロボットの機構を表すロボット機構モデル情報、及び前記ロボットに設けられたエンドエフェクタに関するエンドエフェクタ情報に基づき、前記ロボットの姿勢に対応する複数の候補点を前記ロボットの可動範囲内に生成し、生成した前記複数の候補点のうち、前記候補点にそれぞれ対応する前記姿勢における前記ロボットの各関節の関節トルクτが所定の閾値以上となる前記候補点を測定点に決定する測定点生成部と、前記測定点に対応する前記姿勢における前記エンドエフェクタの計算位置と実測位置との位置誤差を算出し、算出した前記位置誤差が最小となるように機構誤差パラメータを同定するパラメータ同定部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機構誤差パラメータに含まれる角度誤差としての関節たわみとバックラッシとを弁別して同定することができ、キャリブレーションの精度を向上させることが可能となる。
【0011】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るロボットシステムの構成例を示す図である。
図2図2は、記憶部に格納された情報の一例を示す図である。
図3図3は、動作プログラム修正処理の一例を説明するための図である。
図4図4は、測定点生成処理の一例を説明するフローチャートである。
図5図5は、測定点生成処理を説明するための図である。
図6図6は、機構誤差パラメータ同定処理の一例を説明するフローチャートである。
図7図7は、関節たわみの係数、角度オフセット誤差、及びバックラッシの推定方法を説明するための図である。
図8図8は、入出力画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除しない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含む。
【0014】
<本発明の一実施形態に係るロボットシステム10の構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットシステム10の構成例を示している。
【0015】
ロボットシステム10は、修正装置20、ロボットコントローラ30、ロボット40、及び撮像装置50を備える。
【0016】
修正装置20は、ロボット40の機構誤差パラメータを同定する。また、修正装置20は、同定した機構誤差パラメータを用い、ロボット動作プログラム223を修正する。
【0017】
ロボットコントローラ30は、ネットワーク31を介して修正装置20に接続されている。ロボットコントローラ30は、修正装置20によって修正されたロボット動作プログラム223に従い、ロボット40の動作を制御する。
【0018】
撮像装置50は、ネットワーク31を介して修正装置20に接続されている。撮像装置50は、修正装置20からの制御に従い、エンドエフェクタ42を含むロボット40の全体を撮像する。
【0019】
修正装置20は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、SDRAM(Static Random Access Memory)等のメモリ、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)等のストレージ、通信モジュール、入力装置、表示装置を備えるパーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータから成る。
【0020】
修正装置20は、演算部21、記憶部22、入力部23、表示部24、及び通信部25を備える。
【0021】
演算部21は、コンピュータのプロセッサにより実現される。演算部21は、情報取得部211、測定点生成部212、測定点実測部213、パラメータ同定部214、位置誤差推定部215、表示制御部216、及びロボット制御部217の各機能ブロックを有する。これらの機能ブロックは、コンピュータのプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0022】
情報取得部211は、入力部23を用いてユーザから入力されるロボット機構モデル情報221、エンドエフェクタ情報222、及びロボット動作プログラム223を取得して記憶部22に格納する。
【0023】
測定点生成部212は、ロボット機構モデル情報221、及びエンドエフェクタ情報222に基づき、ロボット40の機構誤差パラメータを算出するために必要な、ロボット40の可動範囲内における姿勢を表す複数の測定点を生成する。なお、測定点の生成方法については後述する。
【0024】
測定点実測部213は、各測定点に対応する姿勢をロボット40にとらせた場合におけるエンドエフェクタ42の実際の位置(以下、実測位置と称する)を、撮像装置50によって撮像された画像に基づいて測定する。なお、測定点実測部213を省略し、人手により実測位置を測定してもよい。
【0025】
パラメータ同定部214は、各測定点に対応する姿勢をロボット40にとらせた場合におけるエンドエフェクタ42の計算上の位置(以下、計算位置と称する)を算出する。また、パラメータ同定部214は、各測定点にそれぞれ対応する計算位置と実測位置との位置誤差を算出する。さらに、パラメータ同定部214は、例えば、非線形最小二乗法を用い、各測定点にそれぞれ対応する当該位置誤差が最小となる機構誤差パラメータを同定する。
【0026】
位置誤差推定部215は、ロボット動作プログラム223に含まれる軌道情報を解析してエンドエフェクタ42の目標位置を特定する。また、位置誤差推定部215は、機構誤差パラメータ情報225に基づき、エンドエフェクタ42の目標位置と、実際に動作させた場合の位置誤差を推定する。さらに、位置誤差推定部215は、推定した位置誤差に基づいて目標位置を補正することにより、ロボット動作プログラム223に含まれる軌道情報を修正する。
【0027】
表示制御部216は、表示部24に入出力画面500(図8)を表示させる。ロボット制御部217は、修正済みのロボット動作プログラム223を記憶部22から読み出す。また、ロボット制御部217は、読み出した修正済みのロボット動作プログラム223を、通信部25、及びネットワーク31を介してロボットコントローラ30に出力する。
【0028】
記憶部22は、コンピュータのメモリ及びストレージにより実現される。記憶部22には、ユーザから入力されたロボット機構モデル情報221、エンドエフェクタ情報222、及びロボット動作プログラム223が格納される。また、記憶部22には、演算部21から入力された測定点情報224、及び機構誤差パラメータ情報225が格納される。
【0029】
入力部23は、コンピュータの入力装置により実現される。入力部23は、ユーザからの各種の入力操作を受け付ける。
【0030】
表示部24は、コンピュータの表示装置により実現される。表示部24は、例えば、ユーザが各種の入力を行ったり、同定された機構誤差パラメータを表示したりする入出力画面500等を表示する。
【0031】
通信部25は、コンピュータの通信モジュールにより実現される。通信部25は、インターネットや携帯電話通信網等のネットワーク31を介してロボットコントローラ30と接続し、各種のデータを通信する。
【0032】
ロボット40は、多関節ロボットである。ロボット40は、アーム41の先端にエンドエフェクタ42を有する。ロボット40は、ロボットコントローラ30からの制御に従って所定の動作、作業を実行する。
【0033】
<機構誤差パラメータについて>
次に、ロボット40の機構誤差パラメータについて説明する。ロボット40の姿勢は、各関節の位置を示す次式(1)によって表すことができる。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、Pk,i+1は、測定点kに対応する姿勢となるようにロボット40を動作させたときの静止状態におけるi+1番目の関節の位置を示す。Rは、i番目の関節とi+1番目の関節とを接続するi番目のリンク長L(不図示)に作用する、既知の回転行列である。リンク長Lには、リンク長(既知の設計値)Lに対してリンク長誤差ΔLiを含み得る。i番目の関節に対してi番目のリンクを組み立てる際の組立角(既知の設計値)αには、組立角αに対して組立誤差Δαを含み得る。測定点kに対応するi番目の関節の関節角θk,iには、関節角(既知の指令値)θに対して関節たわみcτk,i、角度オフセット誤差Δθ、及びバックラッシωを含み得る。
【0036】
以下、リンク長誤差ΔLi、組立誤差Δα、関節たわみcτk,i、角度オフセット誤差Δθ、及びバックラッシωを機構誤差パラメータと称する。また、関節たわみcτk,i、角度オフセット誤差Δθ、及びバックラッシωを一括して角度誤差と称する。
【0037】
<各種情報について>
次に、図2は、記憶部22に格納されたロボット機構モデル情報221、エンドエフェクタ情報222、測定点情報224、及び機構誤差パラメータ情報225の一例を示している。
【0038】
ロボット機構モデル情報221は、ロボット40をDH(Denavit hartenberg)モデルとして表記している。ロボット機構モデル情報221は、各関節軸に対応付けて、組立角α、関節角θ、リンク長Lを表すa,d、及び質量が記録される。
【0039】
エンドエフェクタ情報222には、エンドエフェクタ42の質量、及び重心座標が記録される。
【0040】
測定点情報224には、測定点のIDに対応付けて、1番目からn番目までの各関節の関節角θ、関節トルクτ、関節たわみcτ、及びバックラッシωが記録される。
【0041】
機構誤差パラメータ情報225には、各関節に対応付けて、リンク長誤差ΔLを表すΔa,Δd、組立誤差Δα、角度オフセット誤差Δθ、関節たわみcτの係数c、及びバックラッシωが記録される。
【0042】
<修正装置20による動作プログラム修正処理>
次に、図3は、修正装置20による動作プログラム修正処理の一例を説明するフローチャートである。
【0043】
該動作プログラム修正処理は、例えば、入出力画面500(図8)の計算実行ボタン505に対するユーザの操作に応じて開始される。
【0044】
始めに、情報取得部211が、入力部23を用いてユーザから入力されるロボット機構モデル情報221、エンドエフェクタ情報222、及びロボット動作プログラム223を取得して記憶部22に格納する(ステップS1)。
【0045】
次に、測定点生成部212が、測定点生成処理を実行する(ステップS2)。
【0046】
図4は、測定点生成処理の一例を説明するフローチャートである。図5は、測定点生成処理を説明するための図であり、ロボット40を構成する各関節の関節角θ~θnを座標軸とする理論上のn次元空間を表している。
【0047】
まず、第1の制約として、測定点生成部212が、ロボット機構モデル情報221に基づいて、ロボット40の可動領域内を特定し、当該可動領域内において、ランダムに複数の候補点を生成する(ステップS11)。
【0048】
次に、測定点生成部212が、各候補点に対応する姿勢をロボット40にとらせた状態の各関節における関節角θを特定する。また、測定点生成部212が、ロボット機構モデル情報221、及びエンドエフェクタ情報222を参照し、各関節について、当該関節からエンドエフェクタ42側のアーム41、及びエンドエフェクタ42の質量と、それらの重心までの距離とを用いて、当該状態での静止時の関節トルクτを計算する(ステップS12)。
【0049】
次に、第2の制約として、測定点生成部212が、複数の候補点のうち、ロボット40の各関節における関節トルクτが閾値以上である候補点を測定点に決定する。なお、閾値については、各関節それぞれに適切な値を設定すればよい。そして、測定点生成部212が、記憶部22の測定点情報224に、各測定点を識別するIDに対応付けて各関節における関節角θ、及び関節トルクτを記録する(ステップS13)。以上で、測定点生成処理は終了される。
【0050】
測定点生成処理によれば、角度誤差における関節たわみが支配的であってバックラッシを無視できる姿勢に対応する測定点を生成できる。
【0051】
図3に戻る。次に、測定点実測部213が、生成された各測定点にそれぞれ対応する実測位置を測定する(ステップS3)。
【0052】
次に、パラメータ同定部214が、機構誤差パラメータ同定処理を実行する(ステップS4)。
【0053】
図6は、機構誤差パラメータ同定処理の一例を説明するフローチャートである。まず、パラメータ同定部214が、記憶部22に格納された機構誤差パラメータ情報225を初期化する(ステップS21)。次に、パラメータ同定部214が、次式(2)に従い、各測定点に対応する姿勢をロボット40にとらせた場合におけるエンドエフェクタ42の計算位置を算出する(ステップS22)。
【0054】
【数2】
【0055】
上述したように、測定点では、角度誤差は関節たわみが支配的である。これにより、式(2)は式(1)と比較して、測定点kに対応するi番目の関節の関節角θk,iを表す式から、角度オフセット誤差Δθ、及びバックラッシωが省略されている。
【0056】
次に、パラメータ同定部214が、各測定点にそれぞれ対応する計算位置と実測位置との位置誤差を算出する。また、パラメータ同定部214が、例えば、非線形最小二乗法を用い、各測定点にそれぞれ対応する当該位置誤差が最小となるリンク長誤差ΔLi、組立誤差Δα、角度誤差(関節たわみcτ)を同定する(ステップS23)。ただし、各測定点においては、角度誤差における関節たわみが支配的であるので、同定した角度誤差を関節たわみcτとみなすことができる。
【0057】
次に、パラメータ同定部214が、各関節における関節たわみcτの係数c、角度オフセット誤差Δθ、及びバックラッシωを推定する(ステップS24)。
【0058】
図7は、係数c、角度オフセット誤差Δθ、及びバックラッシωの推定方法を説明するための図である。同図において、X軸は関節トルク、Y軸は角度誤差を示している。
【0059】
まず、パラメータ同定部214は、関節毎に、各測定点にそれぞれ対応して、関節トルクτをX軸、角度誤差(関節たわみcτ)をY軸にプロットして、関節トルクτに依存して変化する角度誤差(関節たわみcτ)を表す2本の直線を推定して係数cを算出する。次に、パラメータ同定部214は、X>0,Y>0の領域における直線の第1のY切片(角度オフセット誤差Δθ+バックラッシω)を算出する。また、パラメータ同定部214は、X<0,Y<0の領域における直線の第2のY切片(-バックラッシω)を算出する。さらに、パラメータ同定部214は、第1のY切片の値から第2のY切片の絶対値を減算して角度オフセット誤差Δθを算出し、第1のY切片の値から角度オフセット誤差Δθを減算してバックラッシωを算出する。以上で機構誤差パラメータ同定処理は終了される。
【0060】
図3に戻る。次に、パラメータ同定部214が、同定した機構誤差パラメータを機構誤差パラメータ情報225として記憶部22に格納する。また、パラメータ同定部214が、同定した機構誤差パラメータのうち、関節たわみcτ、及びバックラッシωを記憶部22の測定点情報224に記録する(ステップS5)。
【0061】
次に、位置誤差推定部215が、記憶部22に格納されている現状のロボット動作プログラム223を機構誤差パラメータ情報225に基づいて修正する(ステップS6)。以上で、修正装置20による動作プログラム修正処理は終了される。
【0062】
以上に説明した動作プログラム修正処理によれば、機構誤差パラメータに含まれる角度誤差としての関節たわみcτとバックラッシωとを弁別して同定できる。これにより、キャリブレーションの精度を向上させることができる。
【0063】
<入出力画面500の表示例>
次に、図8は、表示部24に表示され、ユーザに提示される入出力画面500の表示例を示している。入出力画面500には、機構誤差パラメータ表示領域501、測定点情報表示領域502、ロボット機構モデル入力ボタン503、エンドエフェクタ情報入力ボタン504、及び計算実行ボタン505が設けられている。
【0064】
機構誤差パラメータ表示領域501には、記憶部22に格納された機構誤差パラメータ情報225に基づき、同定された機構誤差パラメータが表示される。また、機構誤差パラメータ表示領域501には、記憶部22に格納されたロボット機構モデル情報221に基づき、ロボットの機構を表すロボット機構モデルが表示される。測定点情報表示領域502には、記憶部22の格納された測定点情報224に基づき、関節毎に、各測定点に対応する関節角θ、関節トルクτ、関節たわみcτ、及びバックラッシωが表示される。
【0065】
ロボット機構モデル入力ボタン503は、ロボット機構モデル情報221の選択、読み出しをユーザが指示するための操作ボタンである。エンドエフェクタ情報入力ボタン504は、エンドエフェクタ情報222の選択、読み出しをユーザが指示するための操作ボタンである。計算実行ボタン505は、ユーザが機構誤差パラメータ同定処理の開始を指示するための操作ボタンである。
【0066】
入出力画面500において、ユーザは、ロボット機構モデル情報221、及びエンドエフェクタ情報222を選択して、その読み取りを指示することができる。また、ユーザは、同定された機構誤差パラメータ、及び生成された測定点情報を確認できる。
【0067】
<変形例>
測定点生成部212による測定点の生成に関し、上述した第1及び第2の制約に対して、第3の制約を追加してもよい。すなわち、測定点生成部212は、第3の制約として、ロボット動作プログラム223を解析し、ロボット40が動作を終えるまでに通過する教示点との距離が近い(距離が所定の閾値以下である)候補点を測定点に決定してもよい。第3の制約を追加することにより、より高い精度で機構誤差パラメータを同定できる。
【0068】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えたり、追加したりすることが可能である。
【0069】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10・・・ロボットシステム、20・・・修正装置、21・・・演算部、211・・・情報取得部、212・・・測定点生成部、213・・・測定点実測部、214・・・パラメータ同定部、215・・・位置誤差推定部、216・・・表示制御部、217・・・ロボット制御部、22・・・記憶部、221・・・ロボット機構モデル情報、222・・・エンドエフェクタ情報、223・・・ロボット動作プログラム、224・・・測定点情報、225・・・機構誤差パラメータ情報、23・・・入力部、24・・・表示部、25・・・通信部、30・・・ロボットコントローラ、31・・・ネットワーク、40・・・ロボット、41・・・アーム、42・・・エンドエフェクタ、50・・・撮像装置、500・・・入出力画面
図1
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図8