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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154531
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/131 20060101AFI20231013BHJP
   F16F 15/134 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
F16F15/131
F16F15/134 A
F16F15/134 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063896
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直孝
(57)【要約】
【課題】入力回転体及び出力回転体の摩耗を抑制する。
【解決手段】ダンパ装置は、入力回転体2、出力回転体3、及び弾性部材4を備える。弾性部材4は、入力回転体2と出力回転体3とを弾性的に連結する。第1収容部は、第1対向面と第1支持面242とを有する。第1対向面は、径方向内側を向く。第1対向面は、弾性部材の第1端部と間隔をあけて配置される。第1支持面242は、径方向外側から弾性部材4の第2端部42を支持する。第2収容部は、第2支持面と第2対向面321a、321bとを有する。第2支持面は、径方向外側から弾性部材4の第1端部を支持する。第2対向面321a、321bは、弾性部材4の第2端部42と間隔をあけて配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転方向に回転するように構成されるダンパ装置であって、
第1収容部を有する入力回転体と、
軸方向視において前記第1収容部と重複するように配置される第2収容部を有し、前記入力回転体と相対回転可能に配置される出力回転体と、
前記第1収容部及び前記第2収容部内に収容され、前記入力回転体と前記出力回転体とを弾性的に連結する弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材は、前記第1回転方向側に配置される第1端部と、前記第1回転方向と反対方向の第2回転方向側に配置される第2端部と、を有し、
前記第1収容部は、径方向内側を向き前記弾性部材の前記第1端部と間隔をあけて配置される第1対向面と、径方向外側から前記弾性部材の前記第2端部を支持するように構成される第1支持面と、を有し、
前記第2収容部は、径方向外側から前記弾性部材の前記第1端部を支持するように構成される第2支持面と、径方向内側を向き前記弾性部材の前記第2端部と間隔をあけて配置される第2対向面と、を有する、
ダンパ装置。
【請求項2】
前記弾性部材の前記第2端部の軸方向移動を規制するように構成される規制機構をさらに備え、
前記出力回転体は、軸方向に間隔をあけて配置される一対の出力プレートを有し、
前記入力回転体は、前記一対の出力プレートの間に配置される、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記規制機構は、軸方向において前記入力回転体側を向き前記弾性部材を軸方向において支持するように構成される第3支持面と、軸方向において前記入力回転体を基準に前記第3支持面の反対側に配置されており且つ前記軸方向において前記入力回転体側を向き前記弾性部材を軸方向において支持するように構成される第4支持面とを有する、
請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記規制機構は、前記一対の出力プレートと前記入力回転体との間に配置されて前記入力回転体と一体的に回転するように構成される一対の規制プレートを有する、
請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記入力回転体は、前記第3支持面及び前記第4支持面を含む支持部を有する、
請求項3に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記出力プレートは、前記弾性部材に対して径方向外側に配置されて前記弾性部材の軸方向移動を規制するように構成される切り起こし部を有する、
請求項2から5のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記弾性部材の前記第1端部の軸方向移動を規制するように構成される規制機構をさらに備え、
前記入力回転体は、軸方向に間隔をあけて配置される一対の入力プレートを有し、
前記出力回転体は、前記一対の入力プレートの間に配置される、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項8】
前記規制機構は、軸方向において前記出力回転体側を向き前記弾性部材を軸方向において支持するように構成される第3支持面と、軸方向において前記出力回転体を基準に前記第3支持面の反対側に配置されており且つ軸方向において前記出力回転体側を向き前記弾性部材を軸方向において支持するように構成される第4支持面とを有する、
請求項7に記載のダンパ装置。
【請求項9】
前記規制機構は、前記一対の入力プレートと前記出力回転体との間に配置されて前記出力回転体と一体的に回転するように構成される一対の規制プレートを有する、
請求項7に記載のダンパ装置。
【請求項10】
前記出力回転体は、前記第3支持面及び前記第4支持面を含む支持部を有する、
請求項8に記載のダンパ装置。
【請求項11】
前記入力プレートは、前記弾性部材に対して径方向外側に配置されて前記弾性部材の軸方向移動を規制するように構成される切り起こし部を有する、
請求項7から10のいずれかに記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダンパ装置が搭載された自転車が開示されている。この自転車に搭載されたダンパ装置は、第1回転方向のみに回転し、第2回転方向には回転しない。このダンパ装置は、入力プレート、出力プレート、及び弾性部材を有している。入力プレートは、入力窓部を有し、出力プレートは出力窓部を有している。この入力窓部と出力窓部内に弾性部材が配置されている。
【0003】
このように構成されたダンパ装置は、弾性部材を介して入力プレートから出力プレートへ回転が伝達されるため、駆動輪の回転を安定化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-59347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダンパ装置が回転すると弾性部材が遠心力によって径方向外側に移動する。そして、弾性部材は、入力プレートや出力プレートと摺動するため、入力プレート及び出力プレートが摩耗するという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、入力回転体及び出力回転体の摩耗を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係るダンパ装置は、第1回転方向に回転するように構成されている。このダンパ装置は、入力回転体と、出力回転体と、弾性部材とを備える。入力回転体は、第1収容部を有する。出力回転体は、入力回転体と相対回転可能に配置される。出力回転体は、第2収容部を有する。第2収容部は、軸方向視において第1収容部と重複するように配置される。弾性部材は、第1収容部及び第2収容部内に収容される。弾性部材は、入力回転体と出力回転体とを弾性的に連結する。弾性部材は、第1端部と第2端部とを有する。第1端部は、第1回転方向側に配置される端部である。第2端部は、第2回転方向側に配置される端部である。なお、第2回転方向とは、第1回転方向と反対方向の回転方向を意味する。第1収容部は、第1対向面と第1支持面とを有する。第1対向面は、径方向内側を向く。第1対向面は、弾性部材の第1端部と間隔をあけて配置される。第1支持面は、径方向外側から弾性部材の第2端部を支持するように構成される。第2収容部は、第2支持面と第2対向面とを有する。第2支持面は、径方向外側から弾性部材の第1端部を支持するように構成される。第2対向面は、径方向内側を向く。第2対向面は、弾性部材の第2端部と間隔をあけて配置される。
【0008】
この構成によれば、ダンパ装置が第1回転方向に回転すると、弾性部材は、第1端部において出力回転体の第2支持面に支持され、第2端部において入力回転体の第1支持面に支持される。このため、弾性部材の第1端部は、入力回転体と相対回転し、弾性部材の第2端部は出力回転体と相対回転する。ここで、弾性部材の第1端部は、相対回転する入力回転体の第1対向面と対向しているが、第1対向面は第1端部と間隔をあけている。このため、弾性部材の第1端部は入力回転体と摺動しない。したがって、入力回転体の摩耗を抑制できる。また、弾性部材の第2端部は、相対回転する出力回転体の第2対向面と対向しているが、第2対向面は第2端部と間隔をあけて配置されている。このため、弾性部材の第2端部は出力回転体と摺動しない。したがって、出力回転体の摩耗を抑制できる。
【0009】
第2態様に係るダンパ装置は、第1態様に係るダンパ装置において、規制機構をさらに備える。規制機構は、弾性部材の第2端部の軸方向移動を規制するように構成される。出力回転体は、軸方向に間隔をあけて配置される一対の出力プレートを有する。入力回転体は、前記一対の出力プレートの間に配置される。
【0010】
第3態様に係るダンパ装置は、第2態様に係るダンパ装置において、規制機構は、第3支持面と第4支持面とを有する。第3支持面は、軸方向において入力回転体側を向き弾性部材を軸方向において支持するように構成される。第4支持面は、軸方向において入力回転体を基準に第3支持面の反対側に配置されている。第4支持面は、軸方向において入力回転体側を向き弾性部材を軸方向において支持するように構成される。
【0011】
第4態様に係るダンパ装置は、第2又は第3態様に係るダンパ装置において、規制機構が一対の規制プレートを有する。一対の規制プレートは、一対の出力プレートと入力回転体との間に配置される。一対の規制プレートは、入力回転体と一体的に回転するように構成される。
【0012】
第5態様に係るダンパ装置は、第2又は第3態様に係るダンパ装置において、入力回転体は、第3支持面及び第4支持面を含む支持部を有する。
【0013】
第6態様に係るダンパ装置は、第2から第5態様のいずれかに係るダンパ装置において、出力プレートは、切り起こし部を有する。切り起こし部は、弾性部材に対して径方向外側に配置されて弾性部材の軸方向移動を規制するように構成される。
【0014】
第7態様に係るダンパ装置は、第1態様に係るダンパ装置において、規制機構をさらに備える。規制機構は、弾性部材の第1端部の軸方向移動を規制するように構成される。入力回転体は、一対の入力プレートを有する。一対の入力プレートは、軸方向に間隔をあけて配置される。出力回転体は、一対の入力プレートの間に配置される。
【0015】
第8態様に係るダンパ装置は、第7態様に係るダンパ装置において、規制機構は、第3支持面と第4支持面とを有する。第3支持面は、軸方向において出力回転体側を向き弾性部材を軸方向において支持するように構成される。第4支持面は、軸方向において出力回転体を基準に第3支持面の反対側に配置される、第4支持面は、軸方向において出力回転体側を向き弾性部材を軸方向において支持するように構成される。
【0016】
第9態様に係るダンパ装置は、第7又は第8態様に係るダンパ装置において、規制機構は、一対の規制プレートを有する。一対の規制プレートは、一対の入力プレートと出力回転体との間に配置される。一対の規制プレートは、出力回転体と一体的に回転するように構成される。
【0017】
第10態様に係るダンパ装置は、第7又は第8態様に係るダンパ装置において、出力回転体は、第3支持面及び第4支持面を含む支持部を有する。
【0018】
第11態様に係るダンパ装置は、第7から第10態様のいずれかに係るダンパ装置において、入力プレートは、切り起こし部を有する。切り起こし部は、弾性部材に対して径方向外側に配置されて弾性部材の軸方向移動を規制するように構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、入力回転体及び出力回転体の摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ダンパ装置の正面図。
図2図1のII-II線断面図。
図3】第1出力プレートを取り外した状態のダンパ装置の正面図。
図4】第1収容部の拡大正面図。
図5図1のV-V線断面図。
図6】第2収容部の拡大正面図。
図7図1のVII-VII線断面図。
図8】第1出力プレート、第1規制プレート、及び入力回転体を取り外した状態のダンパ装置の正面図。
図9】回転した状態の第1収容部、第2収容部、及び弾性部材の配置関係を示す正面図。
図10】変形例に係るダンパ装置の図5に相当する断面図。
図11】変形例に係るダンパ装置の図7に相当する断面図。
図12】変形例に係るダンパ装置の図5に相当する断面図。
図13】変形例に係るダンパ装置の図5に相当する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態に係るダンパ装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、ダンパ装置の回転軸が延びる方向である。また、周方向とは、回転軸を中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸を中心とした円の径方向である。また、第1回転方向R1とは、ダンパ装置が回転する方向であり、第2回転方向R2とは第1回転方向と反対側の回転方向である。
【0022】
図1はダンパ装置の正面図、図2図1のII-II線断面図である。図1及び図2に示すように、ダンパ装置100は、入力回転体2、出力回転体3、複数の弾性部材4、規制機構5を有している。また、ダンパ装置100は、複数のストップピン6を有している。
【0023】
ダンパ装置100は、例えば、自転車に搭載される。ダンパ装置100は、クランク軸(図示省略)からのトルクを駆動輪(図示省略)へと伝達するように構成されている。ダンパ装置100は、第1回転方向R1に回転するように構成されている。なお、ダンパ装置100は、第2回転方向R2には回転しない。本実施形態では、図1の時計回りが第1回転方向R1であり、図1の反時計回りが第2回転方向R2である。
【0024】
[入力回転体]
図3は、後述する第1出力プレート31aを取り外した状態のダンパ装置100の正面図である。図3に示すように、入力回転体2は、第1回転方向R1に回転可能に配置されている。なお、入力回転体2は、第2回転方向R2には回転しない。
【0025】
入力回転体2は、クランク軸からトルクが入力される。入力回転体2は、クランク軸と一体的に回転するように構成されている。例えば、入力回転体2は、円板状であって、中央部にスプライン孔21を有している。このスプライン孔21に、クランク軸がスプライン嵌合している。
【0026】
入力回転体2は、ハブ部22とフランジ部23とを有している。ハブ部22は、軸方向に延びる円筒状である。ハブ部22は、スプライン孔21を有している。フランジ部23は、ハブ部22から径方向外側に延びている。
【0027】
入力回転体2は、複数の第1収容部24を有している。なお、本実施形態では、入力回転体2は、3つの第1収容部24を有している。各第1収容部24は、周方向に間隔をあけて配置されている。各第1収容部24は、等間隔に配置されている。第1収容部24は、フランジ部23に形成されている。
【0028】
入力回転体2は、ストッパ面25を有している。なお、本実施形態では、入力回転体2は、3つのストッパ面25を有している。ストッパ面25は、第2回転方向R2を向いている。
【0029】
入力回転体2は、例えば、鉄や、ステンレス、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などによって構成することができる。
【0030】
[出力回転体]
図1及び図2に示すように、出力回転体3は、第1回転方向R1に回転可能に配置されている。出力回転体3は、入力回転体2と相対回転可能に配置されている。なお、出力回転体3は、第2回転方向R2に回転しない。
【0031】
出力回転体3は、第1及び第2出力プレート31a、31bを有している。なお、以下の説明では、第1及び第2出力プレート31a、31bをまとめて一対の出力プレート31a、31bとも称する。また、第1及び第2出力プレート31a,31bは、互いに実質的に同じ構成であるため、以下では第1出力プレート31aについて説明し、第2出力プレート31bの詳細な説明を省略する。また、第1出力プレート31aと第2出力プレート31bとの区別をするため、第1出力プレート31aに関するものは符号の末尾に「a」を付し、第2出力プレート31bに関するものは符号の末尾に「b」を付す。
【0032】
一対の出力プレート31a、31bは、軸方向において互いに間隔をあけて配置されている。この一対の出力プレート31a、31bの間に、入力回転体2が配置されている。詳細には、入力回転体2のフランジ部23が、軸方向において一対の出力プレート31a、31bの間に配置されている。
【0033】
一対の出力プレート31a、31bは、複数のストップピン6で互いに固定されている。このため、一対の出力プレート31a、31bは、互いに一体的に回転する。ストップピン6は、入力回転体2の切欠き部を介して軸方向に延びている。ストップピン6がストッパ面25と当接することによって、入力回転体2が出力回転体3に対して、中立位置から第2回転方向R2に相対回転することを規制する。なお、中立位置とは、ダンパ装置100にトルクが入力されていないときにおける各部材の位置を意味する。
【0034】
第1出力プレート31aは、円板状であって、中央部に貫通孔を有している。この出力プレート31aの貫通孔内を、入力回転体2のハブ部22が軸方向に延びている。
【0035】
第1出力プレート31aは、複数の第2収容部32aを有している。なお、本実施形態では、第1出力プレート31aは3つの第2収容部32aを有している。第2収容部32aは、第1出力プレート31aの外周部に配置されている。
【0036】
第2収容部32aは、第1出力プレート31aを軸方向に貫通している。第2収容部32aは、周方向に延びている。各第2収容部32aは、実質的に同じ円周上に配置されている。第2収容部32aは、第1収容部24と対向するように配置されている。すなわち、軸方向視において、第2収容部32aは、第1収容部24と重複するように配置されている。
【0037】
第1出力プレート31aは、第1切り起こし部33aと、第2切り起こし部34aとを有している。第1切り起こし部33a、及び第2切り起こし部34aは、第1出力プレート31aの一部を切り起こすことによって形成されている。
【0038】
第1切り起こし部33aは、弾性部材4に対して径方向外側に配置されている。第1切り起こし部33aは、弾性部材4の軸方向移動を規制するように構成されている。具体的には、第1切り起こし部33aは、軸方向視において、弾性部材4と重複するように配置されている。なお、第1切り起こし部33aは、一部領域を除いて、弾性部材4と間隔をあけて配置されており、接触していない。
【0039】
第1切り起こし部33aは、軸方向視において、第1収容部24の外周端部と重複している。なお、第1収容部24の外周端部とは、第1収容部24のうち、径方向外側の端部を意味する。
【0040】
第1切り起こし部33aは、周方向に延びている。第1切り起こし部33aは、径方向外側から径方向内側に向かって延びている。また、第1切り起こし部33aは、径方向内側に行くにしたがって、入力回転体2から離れる方向に延びている。
【0041】
第2切り起こし部34aは、弾性部材4に対して径方向内側に配置されている。第2切り起こし部34aは、弾性部材4の軸方向移動を規制するように構成されている。具体的には、第2切り起こし部34aは、軸方向視において、弾性部材4と重複するように配置されている。なお、第2切り起こし部34aは、一部領域を除いて、弾性部材4と間隔をあけて配置されており、接触していない。
【0042】
第2切り起こし部34aは、軸方向視において、第1収容部24の内周端部と重複している。なお、第1収容部24の内周端部とは、第1収容部24のうち、径方向内側の端部を意味する。
【0043】
第2切り起こし部34aは、周方向に延びている。第2切り起こし部34aは、径方向内側から径方向外側に向かって延びている。また、第2切り起こし部34aは、径方向外側に行くにしたがって、入力回転体2から離れる方向に延びている。
【0044】
第1出力プレート31aは、例えば、鉄や、ステンレス、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などによって構成することができる。
【0045】
出力回転体3には、スプロケット(図示省略)が取り付けられている。例えば、スプロケットは、第1出力プレート31a又は第2出力プレート31bに取り付けられている。スプロケットは外周端部に複数の歯を有している。このスプロケットにはチェーンが掛けられており、チェーンなどを介してスプロケットから駆動輪(図示省略)へとトルクが伝達される。
【0046】
[弾性部材]
図1図3に示すように、弾性部材4は、第1収容部24、及び第2収容部32a、32b内に収容されている。弾性部材4は、例えばコイルスプリングである。弾性部材4は、周方向において、第1端部41と、第2端部42とを有している。第1端部41は、弾性部材4の第1回転方向R1側の端部である。第2端部42は、弾性部材4の第2回転方向R2側の端部である。
【0047】
弾性部材4は、入力回転体2と、出力回転体3とを弾性的に連結している。すなわち、入力回転体2からのトルクが、弾性部材4を介して出力回転体3へ伝達される。また、弾性部材4は、入力回転体2及び出力回転体3とともに回転する。
【0048】
[各収容部の詳細]
図4は、第1収容部24の拡大正面図である。図4に示すように、第1収容部24は、周方向に延びている。第1収容部24は、入力回転体2を厚さ方向に貫通している。第1収容部24は、正面視において、略矩形状である。
【0049】
第1収容部24は、第1対向面241と、第1支持面242とを有している。第1対向面241及び第1支持面242は、第1内壁面243の一部である。なお、第1内壁面243は、第1収容部24を画定している面の一部である。第1内壁面243は径方向内側を向いている。
【0050】
第1対向面241は、第1内壁面243の第1回転方向R1側の端部に配置されている。第1対向面241は、径方向内側を向いている。第1対向面241は、弾性部材4の第1端部41と径方向において間隔をあけて配置されている。
【0051】
第1支持面242は、第1内壁面243の第2回転方向R2側の端部に配置されている。第1支持面242は、径方向内側を向いている。すなわち、第1支持面242は、径方向において弾性部材4の第2端部42と対向している。
【0052】
図5は、図1のV-V線断面図である。図4及び図5に示すように、第1支持面242は、弾性部材4の第2端部42を径方向外側から支持するように構成されている。具体的には、第1支持面242は、弾性部材4の第2端部42が遠心力によって径方向外側に移動したときに、弾性部材4の第2端部42を支持する。
【0053】
ダンパ装置100が回転しておらず停止している状態において、第1支持面242は、弾性部材4の第2端部42と接触していてもよいし、接触していなくてもよい。なお、第1支持面242が第2端部42と接触していない場合、第1支持面242と第2端部42との間隔は、後述する第2対向面321a、321bと第2端部42との間隔よりも小さい。このため、ダンパ装置100が回転して弾性部材4の第2端部42が径方向外側に移動したとき、第2端部42は、第1支持面242と接触し、第2対向面321a、321bとは接触しない。
【0054】
図6は、第2収容部32bの拡大正面図である。なお、もう一方の第2収容部32aも構成は同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0055】
図6に示すように、第2収容部32bは、周方向に延びている。第2収容部32bは、出力プレート31bを厚さ方向に貫通している。第2収容部32bは、正面視において、略矩形状である。
【0056】
第2収容部32bは、第2対向面321bと、第2支持面322bとを有している。第2対向面321b及び第2支持面322bは、第2内壁面323bの一部である。なお、第2内壁面323bは、第2収容部32bを画定している面の一部である。第2内壁面323bは径方向内側を向いている。
【0057】
第2対向面321bは、第2内壁面323bの第2回転方向R2側の端部に配置されている。第2対向面321bは、径方向内側を向いている。第2対向面321bは、弾性部材4の第2端部42と径方向において間隔をあけて配置されている。
【0058】
第2支持面322bは、第2内壁面323bの第1回転方向R1側の端部に配置されている。第2支持面322bは、径方向内側を向いている。すなわち、第2支持面322bは、径方向において弾性部材4の第1端部41と対向している。
【0059】
図7は、図1のVII-VII線断面図である。図6及び図7に示すように、第2支持面322a、322bは、弾性部材4の第1端部41を径方向外側から支持するように構成されている。具体的には、第1出力プレート31aの第2支持面322aと、第2出力プレート31bの第2支持面322bとは、弾性部材4の第1端部41が遠心力によって径方向外側に移動したときに、弾性部材4の第1端部41を支持する。
【0060】
第2支持面322a、322bは、弾性部材4の第1端部41と接触していてもよいし、接触していなくてもよい。なお、第2支持面322a、322bが第1端部41と接触していない場合、第2支持面322a、322bと第1端部41との間隔は、第1対向面241と第1端部41との間隔よりも小さい。このため、ダンパ装置100が回転して弾性部材4の第1端部41が径方向外側に移動したとき、第1端部41は、第2支持面322a、322bと接触し、第1対向面241とは接触しない。
【0061】
[規制機構]
図8は、第1出力プレート31a、第1規制プレート51a、及び入力回転体2を取り外した状態のダンパ装置100の正面図である。図3図5、及び図8に示すように、規制機構5は、弾性部材4の第2端部42の軸方向移動を規制するように構成されている。
【0062】
規制機構5は、第1及び第2規制プレート51a、51bを有している。なお、以下の説明では、第1及び第2規制プレート51a、51bをまとめて一対の規制プレート51a、51bとも称する。また、第1及び第2規制プレート51a,51bは、互いに実質的に同じ構成であるため、以下では第1規制プレート51aについて説明し、第2規制プレート51bの詳細な説明を省略する。また、第1規制プレート51aと第2規制プレート51bとの区別をするため、第1規制プレート51aに関するものは符号の末尾に「a」を付し、第2規制プレート51bに関するものは符号の末尾に「b」を付す。
【0063】
入力回転体2は、軸方向において、一対の規制プレート51a、51bの間に配置されている。一対の規制プレート51a、51bは、入力回転体2と一体的に回転するように構成されている。詳細には、入力回転体2に複数の挿入孔が形成されている。そして、一対の規制プレート51a、51bは、その挿入孔に嵌合する突起部52a、52bが形成されている。
【0064】
一対の規制プレート51a、51bは、一対の出力プレート31a、31bと入力回転体2との間に配置されている。詳細には、第1規制プレート51aは、第1出力プレート31aと入力回転体2との間に配置されている。また、第2規制プレート51bは、第2出力プレート31bと入力回転体2との間に配置されている。
【0065】
第1規制プレート51aは、円環状である。第1規制プレート51aは、複数の規制部53aを有している。各規制部53aは、弾性部材4の第2端部42と対向する位置に配置されている。各規制部53aは、第1規制プレート51aのうち、径方向外側に突出する部分である。
【0066】
各規制部53aは、第3支持面54aを有している。第3支持面54aは、弾性部材4の第2端部42を軸方向において支持するように構成されている。詳細には、第3支持面54aは、軸方向において入力回転体2側を向いている。また、第3支持面54aは、径方向外側を向いている。このように構成されているため、弾性部材4の第2端部42が入力回転体2を基準に軸方向において第1出力プレート31a側に移動することを第3支持面54aによって規制することができる。
【0067】
第2規制プレート51bの各規制部53bは、第4支持面54bを有している。第4支持面54bは、弾性部材4の第2端部42を軸方向において支持するように構成されている。なお、第4支持面54bは、軸方向において第3支持面54aとは反対側から第2端部42を支持するように構成されている。
【0068】
詳細には、第4支持面54bは、軸方向において入力回転体2を基準に第3支持面54aの反対側に配置されている。第4支持面54bは、軸方向において入力回転体2側を向いている。また、第4支持面54bは、径方向外側を向いている。このように構成されているため、弾性部材4の第2端部42が入力回転体2を基準に軸方向において第2出力プレート31b側に移動することを第4支持面54bによって規制することができる。
【0069】
以上のように、弾性部材4の第2端部42は、第1支持面242と第3支持面54aと第4支持面54bとの3点で支持されるように構成されている。
【0070】
[動作]
上述したように構成されたダンパ装置100の動作について説明する。まず、運転者がペダルを漕ぐことなどによって入力回転体2にトルクが入力されると、入力回転体2は第1回転方向R1に回転する。そして、入力回転体2から出力回転体3へ弾性部材4を介してトルクが伝達される。この結果、出力回転体3が第1回転方向R1に回転し、駆動輪へとトルクが伝達される。
【0071】
このようにダンパ装置100が第1回転方向R1側に回転すると、入力回転体2は出力回転体3に対して第1回転方向R1に相対回転する。図9は、このダンパ装置100が第1回転方向R1に回転した状態の第1収容部24と第2収容部32a、32bと弾性部材4との位置関係を示す図である。なお、第1収容部24を実線で示し、第2収容部32a、32bを二点鎖線で示している。
【0072】
図9に示すように、ダンパ装置100が第1回転方向R1に回転すると、弾性部材4の第1端部41は出力回転体3に支持され、弾性部材4の第2端部42は入力回転体2に支持される。ここで、弾性部材4は遠心力によって径方向外側に移動するため、弾性部材4の第1端部41は、主に第2支持面322a、322bによって支持される。一方、弾性部材4の第2端部42は、主に第1支持面242によって支持される。
【0073】
ここで、第1対向面241は、弾性部材4の第1端部41と間隔をあけて配置されているため、第1対向面241は弾性部材4とは摺動しない。このため、入力回転体2が摩耗することを防止することができる。また、第2対向面321a、321bは、弾性部材4の第2端部42と間隔をあけて配置されているため、第2対向面321a、321bは弾性部材4とは摺動しない。このため、出力回転体3が摩耗することを防止することができる。
【0074】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の各変形例は、基本的には同時に適用することができる。
【0075】
(a)上記実施形態では、出力回転体3が一対の出力プレート31a、31bを有し、入力回転体2が一対の出力プレート31a、31bの間に配置されているが、ダンパ装置100の構成はこれに限定されない。例えば、図10図11に示すように、入力回転体2が一対の入力プレート21a、21bを有し、出力回転体3が一対の入力プレート21a、21b間に配置されていてもよい。すなわち、上記実施形態の入力回転体と出力回転体とを入れ替える構成としてもよい。なお、図10は、上記実施形態の図5に相当する図であり、図11は、上記実施形態の図7に相当する図である。
【0076】
この変形例において、入力回転体2は、弾性部材4の第2端部42を支持するための第1支持面222a、222bを有している。そして、出力回転体3は、弾性部材4の第1端部41を支持するための第2支持面342を有している。また、入力回転体2は、弾性部材4の第1端部41と間隔をあけて配置される第1対向面221a、221bを有している。そして、出力回転体3は、弾性部材4の第2端部42と間隔をあけて配置される第2対向面341を有している。
【0077】
図11に示すように、この変形例では、一対の規制プレート51a、51bは、一対の入力プレート21a、21bと出力回転体3との間に配置されている。そして、一対の規制プレート51a、51bは、出力回転体3と一体的に回転するように構成されている。
【0078】
規制機構5は、弾性部材4の第1端部41の軸方向移動を規制するように構成されている。第3支持面54aは、弾性部材4の第1端部41を軸方向において支持するように構成されている。詳細には、第3支持面54aは、軸方向において出力回転体3側を向いている。また、第3支持面54aは、径方向外側を向いている。このように構成されているため、弾性部材4の第1端部41が出力回転体3を基準に軸方向において第1入力プレート21a側に移動することを第3支持面54aによって規制することができる。
【0079】
第4支持面54bは、弾性部材4の第1端部41を軸方向において支持するように構成されている。なお、第4支持面54bは、軸方向において第3支持面54aとは反対側から第1端部41を支持するように構成されている。
【0080】
詳細には、第4支持面54bは、軸方向において出力回転体3を基準に第3支持面54aの反対側に配置されている。第4支持面54bは、軸方向において出力回転体3側を向いている。また、第4支持面54bは、径方向外側を向いている。このように構成されているため、弾性部材4の第1端部41が出力回転体3を基準に軸方向において第2入力プレート21b側に移動することを第4支持面54bによって規制することができる。
【0081】
以上のように、この変形例では、弾性部材4の第1端部41は、第2支持面342と第3支持面54aと第4支持面54bとの3点で支持されるように構成されている。
【0082】
また、入力プレート21a、21bは、第1切り起こし部23a、23bを有している。第1切り起こし部23a、23bは、弾性部材4の軸方向移動を規制するように構成されている。
【0083】
(b)上記実施形態では、規制機構5は、一対の規制プレート51a、51bによって構成されているが、規制機構5の構成はこれに限定されない。例えば、図12に示すように、入力回転体2は、支持部26を有している。支持部26は、断面がY字状に形成されている。そして、この支持部26は、第3支持面54aと、第4支持面54bとを有している。なお、入力回転体2と一対の出力プレート31a、31bとの軸方向間に、規制プレートの代わりにスペーサ7a、7bが配置されている。
【0084】
なお、支持部26は、弾性部材4を径方向内側から支持するように構成されているが、図13に示すように、支持部26は弾性部材4を径方向外側から支持するように構成されていてもよい。この場合、第1支持面242と、第3支持面54aと、第4支持面54bとが、連続して滑らかに連結されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
2 :入力回転体
24 :第1収容部
241 :第1対向面
242 :第1支持面
26 :支持部
3 :出力回転体
31a :第1出力プレート
31b :第2出力プレート
32a、32b :第2収容部
321a、321b :第2対向面
322a、322b :第2支持面
33a、33b :第1切り起こし部
4 :弾性部材
41 :第1端部
42 :第2端部
5 :規制機構
51a :第1規制プレート
51b :第2規制プレート
54a :第3支持面
54b :第4支持面
100 :ダンパ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13