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特開2023-154552コンクリートの打設方法及びコンクリート打設用配管ユニット
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  • 特開-コンクリートの打設方法及びコンクリート打設用配管ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154552
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】コンクリートの打設方法及びコンクリート打設用配管ユニット
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
E04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063940
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】塚原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】岸野 綱人
(72)【発明者】
【氏名】坂口 淳
(72)【発明者】
【氏名】中島 和亮
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA31
2E172HA01
(57)【要約】
【課題】作業効率を向上することができるコンクリートの打設方法及びコンクリート打設用配管ユニットを提供する。
【解決手段】コンクリートが圧送される本管部23と、本管部から分岐した分岐部24と、分岐部に設けられ、分岐部の流路を開閉する開閉バルブ25と、開閉バルブを開閉駆動する油圧装置26と、を備えたコンクリート打設用配管ユニット22を複数用いたコンクリートの打設方法であって、複数のコンクリート打設用配管ユニットをクレーンにより所定位置に運搬して設置する運搬工程と、複数の分岐部のうちから選択された少なくとも一つにおける開閉バルブを油圧装置により開くバルブ操作工程と、本管部に圧送されたコンクリートを選択された分岐部から打設する打設工程と、打設工程の完了後に、コンクリート打設用配管ユニットを解体せずに本管部および分岐部を清掃する清掃工程と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートが圧送される本管部と、前記本管部から分岐した分岐部と、前記分岐部に設けられ、該分岐部の流路を開閉する開閉バルブと、前記開閉バルブを開閉駆動する油圧装置と、を備えたコンクリート打設用配管ユニットを複数用いたコンクリートの打設方法であって、
複数のコンクリート打設用配管ユニットをクレーンにより所定位置に運搬して設置する運搬工程と、
複数の前記分岐部のうちから選択された少なくとも一つにおける前記開閉バルブを前記油圧装置により開くバルブ操作工程と、
前記本管部に圧送された前記コンクリートを選択された前記分岐部から打設する打設工程と、
前記打設工程の完了後に、前記コンクリート打設用配管ユニットを解体せずに前記本管部および前記分岐部を清掃する清掃工程と、を有する、コンクリートの打設方法。
【請求項2】
前記清掃工程では、
前記本管部の一端に清掃用スポンジを収容し、
全ての前記開閉バルブを閉状態にした後に、前記本管部の一端から圧縮給気を供給して前記清掃用スポンジで前記本管部内を清掃し、
前記分岐部の一の前記開閉バルブを開にした状態で、清掃用スポンジを圧縮空気で前記分岐部内を移動させて該分岐部内を清掃する請求項1に記載のコンクリートの打設方法。
【請求項3】
コンクリートが圧送される本管部と、
前記本管部から分岐した分岐部と、
前記分岐部に設けられ、該分岐部の流路を開閉する開閉バルブと、
前記開閉バルブを開閉駆動する油圧装置と、
を備えた、コンクリート打設用配管ユニット。
【請求項4】
前記開閉バルブは、前記分岐部に設けられたバルブ本体部と、前記バルブ本体部の摺動部に摺動可能に配置され、前記分岐部の流路を開閉するシャッターと、を備え、前記摺動部と前記シャッターとの間にパッキンが介装されている、請求項3に記載のコンクリート打設用配管ユニット。
【請求項5】
前記本管部の内周面および前記分岐部の内周面の少なくとも一方は、硬質クロームメッキ処理が施されている、請求項3または請求項4に記載のコンクリート打設用配管ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設方法及びコンクリート打設用配管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを打設するために、配管によりコンクリートを所定の打設位置まで圧送して打設するように構成された打設装置及び打設方法が知られている(例えば、下記特許文献1,2参照)。大型の構造物を施工する場合、コンクリートを流通させる本管と、本管から複数の打設箇所にコンクリートを流通させる分岐管と、各分岐管へのコンクリートの流通をコントロールする開閉バルブと、を備えたコンクリート打設用配管ユニットが知られている。このようなコンクリート打設用配管ユニットでは、作業者が分岐管の開閉バルブを手動で開くことで、所望の分岐管の端部からコンクリートを流出させてコンクリート打設を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-69448号公報
【特許文献2】特開2020-153074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記コンクリート打設用配管ユニットを用いてコンクリートを打設した後、ユニット化された配管の一部を解体し、水洗い洗浄を行っており、作業労務に手間を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業効率を向上することができるコンクリートの打設方法及びコンクリート打設用配管ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンクリートの打設方法は、コンクリートが圧送される本管部と、前記本管部から分岐した分岐部と、前記分岐部に設けられ、該分岐部の流路を開閉する開閉バルブと、前記開閉バルブを開閉駆動する油圧装置と、を備えたコンクリート打設用配管ユニットを複数用いたコンクリートの打設方法であって、複数のコンクリート打設用配管ユニットをクレーンにより所定位置に運搬して設置する運搬工程と、複数の前記分岐部のうちから選択された少なくとも一つにおける前記開閉バルブを前記油圧装置により開くバルブ操作工程と、前記本管部に圧送された前記コンクリートを選択された前記分岐部から打設する打設工程と、前記打設工程の完了後に、前記コンクリート打設用配管ユニットを解体せずに前記本管部および前記分岐部を清掃する清掃工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明のコンクリートの打設方法によれば、複数のコンクリート打設用配管ユニットを所定位置にクレーンで運搬して設置し、複数の分岐部のうちから選択された分岐部の開閉バルブを油圧装置により開いてコンクリートを打設することができる。そのため大型の構造物を施工する際、複数の打設位置毎に配管する必要がなく、設置作業や開閉バルブの開閉作業などの労務が軽減される。また打設位置に対応する分岐部を選択してコンクリートを打設できるため、コンクリートを確実に必要な部位に打設することができる。さらに、コンクリート打設用配管ユニットを解体せずに清掃することができるため、作業効率を向上することができる。
【0008】
本発明のコンクリートの打設方法では、前記清掃工程において、前記本管部の一端に清掃用スポンジを収容し、全ての前記開閉バルブを閉状態にした後に、前記本管部の一端から圧縮給気を供給して前記清掃用スポンジで前記本管部内を清掃し、前記分岐部の一の前記開閉バルブを開にした状態で、清掃用スポンジを圧縮空気で前記分岐部内を移動させて該分岐部内を清掃してもよい。
【0009】
本発明のコンクリートの打設方法によれば、本管部内および分岐部内を、清掃用スポンジを圧縮空気で移動させることで配管内を清掃するようにした。つまり、水を使用せずに圧縮空気を用いて清掃するようにしたため、現場周囲が汚れるのを抑制でき、簡易な構成で確実にコンクリート打設用配管ユニットを清掃することができる。
【0010】
本発明のコンクリート打設用配管ユニットは、コンクリートが圧送される本管部と、本管部から分岐した分岐部と、分岐部に設けられ、分岐部の流路を開閉する開閉バルブと、開閉バルブを開閉駆動する油圧装置と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明のコンクリート打設用配管ユニットによれば、分岐部の流路を開閉するための開閉バルブが、油圧装置により開閉駆動されるため、開閉バルブが油圧による十分な力で開閉できる。つまり、作業者が開閉バルブを手動で操作する必要がなくなり、作業者の作業労務を軽減できる。
【0012】
本発明のコンクリート打設用配管ユニットでは、前記開閉バルブは、前記分岐部に設けられたバルブ本体部と、前記バルブ本体部の摺動部に摺動可能に配置され、前記分岐部の流路を開閉するシャッターと、を備え、前記摺動部と前記シャッターとの間にパッキンが介装されていてもよい。
【0013】
この発明によれば、バルブ本体部の摺動部とシャッターとの間にパッキンが介装されている。そのためパッキンが摺動部とシャッターとに十分な圧力で圧接することで、圧送されたコンクリートのセメントペーストが摺動部とシャッターとの間から外部に漏洩することを防止できる。セメントペーストの漏洩を防止する程度の圧力でパッキンがシャッターに圧接していても、シャッターが油圧により駆動されるため、確実に開閉できる。そのため開閉バルブからのセメントペーストの漏洩を防止しつつ開閉バルブが確実に動作可能である。
【0014】
本発明のコンクリート打設用配管ユニットでは、前記本管部の内周面および前記分岐部の内周面の少なくとも一方は、硬質クロームメッキ処理が施されていてもよい。
【0015】
この発明によれば、本管部の内周面および分岐部の内周面の少なくとも一方が硬質クロームメッキ処理によりコンクリートを付着し難くできる。そのためコンクリート打設用配管ユニットの内部の清掃が容易である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンクリートの打設方法及びコンクリート打設用配管ユニットによれば、作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート打設用配管ユニットが所定の打設位置付近に設置された状態を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンクリート打設用配管ユニットの正面図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンクリート打設用配管ユニットの動作を説明するための図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
図4】本発明の実施形態に係る複数のコンクリート打設用配管ユニットを設置する工程を説明する図である。
図5】本発明の実施形態に係る複数のコンクリート打設用配管ユニットを用いてコンクリートを打設する工程を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る複数のコンクリート打設用配管ユニットを清掃する工程を説明する模式図であり、(a)は清掃前、(b)は本管部の清掃時、(c)は分岐部の清掃時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るコンクリート打設用配管ユニット及びコンクリートの打設方法について図を用いて詳細に説明する。
図1は、例えば大型の円筒状又は壁状の構造物などを構築する際、コンクリート打設用の配管ユニット22が所定の打設位置付近(打設位置上方)に設置された状態を示している。
【0019】
打設位置付近には、一対の型枠11,11が立設され、型枠11,11間に構造物の形状に対応した打設空間12が形成されている。打設空間12には多数の鉄筋13が配置されている。打設空間12の上部には、水平方向に連続する上部開口14が形成されている。本実施形態では上部開口14は例えば、平面視で湾曲した円環状に形成されている。上部開口14の上端には網状体15が一対の型枠11,11間に架設して配置されている。
【0020】
打設空間12の上部開口14には、コンクリートの打設装置20が設置されている。打設装置20は、コンクリートを横方向に圧送するための水平配管21と、コンクリート打設用の配管ユニット22と、を複数備えている。配管ユニット22は架台41に支持された状態で網状体15の上方に配置された支持部材51に固定されている。詳細な図示は省略しているが、水平配管21と配管ユニット22とは交互に直列に接続されている。架台41の上部には運搬時に使用される吊環27が設けられている。
【0021】
図2及び図3は、本実施形態のコンクリート打設用の配管ユニット22を示している。配管ユニット22は、本管部23と、分岐部24と、開閉バルブ25と、油圧装置26と、を備えている。
【0022】
本管部23は、両端に水平配管21との接続部23a,23bが設けられた管状体からなる。本管部23は鋼管で構成され、例えば、内周面には硬質クロームメッキ処理が施されている。
【0023】
本管部23の下部には、本管部23から分岐する分岐部24が設けられている。分岐部24の一部は本管部23と一体に設けられている。
【0024】
分岐部24は、本管部23から突出するように本管部23と一体に設けられた突出部31と、突出部31に接続されて下方に延びる縦管32と、を有する。突出部31の端部には縦管32との接続部31aが設けられている。縦管32の上端は突出部31の接続部31aに接続され、下端は開口している。突出部31及び縦管32には本管部23の流路から連続した分岐部24の流路が設けられている。突出部31及び縦管32は鋼管で構成され、例えば、突出部31及び縦管32の内周面には硬質クロームメッキ処理が施されている。
【0025】
開閉バルブ25は、分岐部24の流路と本管部23の流路との間を開閉するもので、突出部31に設けられている。本実施形態の開閉バルブ25はシャッターバルブからなる。開閉バルブ25は、バルブ本体36と、シャッター33と、パッキン35と、を有する。
【0026】
バルブ本体36はシャッター33を開閉可能に支持するもので、突出部31に取り付けられている。バルブ本体36にはシャッター33を摺動可能に収容する収容部36aが形成されている。シャッター33は、分岐部24の流路を遮蔽可能な板状体を有する。シャッター33は、バルブ本体36の収容部36aに対して一軸方向(水平方向)に摺動可能に配置されている。
【0027】
バルブ本体36の収容部36aは側方に開口して設けられている。収容部36aからシャッター33の一端部が外部に突出して配置されている。シャッター33の一端部が油圧装置26により進退駆動されることで、シャッター33が分岐部24の流路を完全に閉塞する位置と全開する位置との間で摺動する。
【0028】
パッキン35は、収容部36aとシャッター33との間に介装されている。パッキン35の形状は適宜選択でき、例えば収容部36aの開口部位においてシャッター33の側周囲に圧接する形状で構成されている。なお、パッキン35は、収容部36aの開口部位の周囲に外側から圧接する形状であってもよい。
【0029】
油圧装置26は、開閉バルブ25を油圧により開閉駆動するものである。本実施形態の油圧装置26は、開閉バルブ25付近の本管部23の外側に装着された油圧シリンダ37と、油圧シリンダ37に接続された油圧供給部38と、を有する。油圧供給部38には図示しない油圧ポンプ等の油圧源、油圧回路、制御部等が含まれている。
【0030】
次に、このような構成のコンクリート打設用配管ユニット22を用いたコンクリートの打設方法について説明する。図4は複数の配管ユニット22を設置する工程を示し、図5は配管ユニット22を設置してコンクリートを打設する工程を示している。
【0031】
まず打設装置20を所定の打設位置付近に設置する。
図4に示すように、複数の配管ユニット22が複数の架台41上に固定され、複数の配管ユニット22の本管部23同士が水平配管21により直列に接続される。最下流に配置される配管ユニット22の下流側には水平配管21と同等の径を有する延長部42が設けられ、端末が閉塞されている。延長部42は、後述する清掃の際に圧縮空気の供給部として用いられる。
【0032】
直列に連結された複数の配管ユニット22及び複数の水平配管21は、吊下げ治具43を用いて図示しないクレーンにより吊り下げられる。吊下げ治具43は連続した形鋼等により長尺に形成され、複数の配管ユニット22及び水平配管21に対応する長さを有する。吊下げ治具43は、平面視で打設空間12の上部開口14の形状に対応する湾曲形状に形成されている。
【0033】
クレーンのワイヤ44により吊下げ治具43が吊下げられ、吊下げ治具43と架台41の吊環27とが連結ワイヤ45により吊下げられる。この状態でクレーンにより複数の配管ユニット22及び複数の水平配管21が吊下げられ、所定の打設位置上方まで運搬される。
【0034】
図5に示すように、打設位置上では、複数の配管ユニット22を固定した複数の架台41が、打設空間12の上部開口14に配置された支持部材51にそれぞれ固定される。これにより複数の配管ユニット22及び複数の水平配管21が打設空間12の上部開口14の上部に、上部開口14に沿って設置される。
【0035】
また図示しない圧送用ポンプ等のコンクリートの圧送源に水平配管21が接続され、複数の配管ユニット22の油圧シリンダ37には油圧供給部38が接続される。なお、このとき開閉バルブ25は閉じた状態に保持している。
【0036】
各配管ユニット22の分岐部24は、各本管部23から下方に垂下させ、それぞれ打設空間12内に配置される。各分岐部24の縦管32は、鋼管で構成されている。なお、縦管32は、適宜可撓性のチューブやホース等を用いることができ、打設空間12の深さや形状等の諸条件に応じて本管部23からの長さや位置等が調整される。この状態で打設装置20を設置する工程が完了する。
【0037】
打設時には、例えば、図5の端部(図面で右端)の水平配管21に図示しないコンクリートの圧送源を接続し、当該圧送源からコンクリートが水平配管21を介して複数の本管部23に圧送される。
【0038】
コンクリートを配管ユニット22に圧送する際、複数の分岐部24のうちから、コンクリートを打設する箇所に対応した配管ユニット22を選択する。油圧供給部38における制御により、選択された配管ユニット22の油圧シリンダ37が駆動する。すると、開閉バルブ25のシャッター33が油圧により後退し、分岐部24の流路が閉状態から開状態になる。
【0039】
これにより選択された配管ユニット22の本管部23に圧送されたコンクリートが、分岐部24の縦管32に案内され、縦管32の下端から流出する。コンクリートを継続して流出させることで、所定の打設位置における一対の型枠11,11で囲まれた打設空間12にコンクリートが供給される。
【0040】
打設空間12に所望量のコンクリートが充填された時点で、油圧供給部38における制御により油圧シリンダ37が駆動される。油圧シリンダ37が駆動すると、開閉バルブ25のシャッター33が油圧により前進し、分岐部24の流路が開状態から閉状態になる。シャッター33により分岐部24の流路が閉状態になったことでコンクリートの打設工程が完了する。なお、開閉バルブ25が稼働する際に、収容部36aとシャッター33との間にパッキン35が介装されているため、コンクリートが開閉バルブ25から漏洩することが防止される。
【0041】
次いで、コンクリートの打設工程が完了した後に行う打設装置20の清掃工程について説明する。
図6(a)に示すように、打設装置20の清掃は、配管ユニット22を解体せずに行う。打設装置20の清掃は、直列に連結した配管ユニット22及び水平配管21の最下流に配置された延長部42から行う。延長部42に清掃用スポンジ61を収容し、延長部42の端部に圧縮空気を供給可能な図示しない空気供給部47を接続する。
【0042】
図6(b)に示すように、まず全ての配管ユニット22の開閉バルブ25を閉じ、水平配管21の最上流側を開口する。空気供給部47を制御して圧縮空気を打設装置20の配管内に導入する。すると、複数の配管ユニット22における本管部23の流路と複数の水平配管21の流路とに残留したコンクリートが清掃用スポンジ61とともに最上流側の水平配管21の開口から排出されて流路内が清掃される。
【0043】
次いで図6(c)に示すように、水平配管21の最上流側の開口を閉塞し、選択された1つの配管ユニット22の開閉バルブ25を全開にする。再び延長部42に清掃用スポンジ61を収容するとともに、延長部42の端部に空気供給部47を接続し、延長部42に圧縮空気を供給する。選択された一つの配管ユニット22から延びる分岐部24の流路に残留したコンクリートが清掃用スポンジ61とともに縦管32の下端から排出されて分岐部24の流路内が清掃される。その後、この清掃作業を順次全ての配管ユニット22の分岐部24に施すことで、清掃工程を完了することができる。
【0044】
以上のような本実施形態の配管ユニット22によれば、分岐部24の流路を開閉するための開閉バルブ25が、油圧装置26により開閉駆動されるので、開閉バルブ25が油圧により十分な力で開閉される。これにより作業者が開閉バルブ25を手動で操作する必要がなく、作業者の作業労務を軽減できる。
【0045】
また開閉バルブ25が油圧により十分な力で開閉されるので、開閉バルブ25の開閉部分にパッキン35を設けて、高い圧力でシールしていても確実に開閉することができる。そのため圧送されたコンクリートのセメントペーストが開閉バルブ25から漏洩することを防止できる。したがって、コンクリートのセメントペーストの漏洩を防止して作業者の作業労務を軽減することが可能である。さらに、配管ユニット22の本管部23、分岐部24、開閉バルブ25及び油圧装置26が一体化しているため、配管ユニット22の設置作業や撤去作業の作業労務も軽減できる。
【0046】
本実施形態の配管ユニット22では、開閉バルブ25が、分岐部24に設けられたバルブ本体36と、バルブ本体36の収容部36aに摺動可能に配置され分岐部24の流路を開閉するシャッター33と、を備えたシャッターバルブであり、収容部36aとシャッター33との間にパッキン35が介装されている。そのため、パッキン35が収容部36aとシャッター33とに十分な圧力で圧接することで、分岐部24に圧送されたコンクリートのセメントペーストが収容部36aとシャッター33のとの間から外部に漏洩することを防止できる。セメントペーストの漏洩を防止する程度の圧力でパッキン35がシャッター33に圧接していても、シャッター33が油圧により駆動されるため、確実に開閉できる。そのため開閉バルブ25からのセメントペーストの漏洩を防止しつつ開閉バルブ25が確実に動作可能である。
【0047】
また、本管部23の内周面および分岐部24の内周面は、硬質クロームメッキ処理が施されている。そのため本管部23の内周面および分岐部24の内周面に、コンクリートを付着し難くできる。結果として、水を用いず、清掃用スポンジ61を圧縮空気を利用して配管内を移動させて清掃する際にも効率よく配管内の汚れを除去することができる。
【0048】
また、上述のような本実施形態のコンクリート打設用配管ユニット22を複数用いたコンクリートの打設方法によれば、複数のコンクリート打設用配管ユニット22を所定位置にクレーンで運搬して設置する運搬工程と、複数の分岐部24のうちから選択された分岐部24の開閉バルブ25を油圧装置26により開くバルブ操作工程と、本管部23に圧送されたコンクリートを選択された分岐部24から打設する打設工程と、打設工程の完了後に、配管ユニット22を解体せずに本管部23および分岐部24を清掃する清掃工程と、を備えている。このように構成することにより、大型の構造物を施工する際、複数の打設位置毎に配管を設置する必要がなく、設置作業などの労務が軽減される。また打設位置に対応する分岐部24を選択してコンクリートを打設できるため、コンクリートを確実に必要な部位に必要な量の打設をすることができる。さらに、配管ユニット22を解体せずに清掃することができるため、作業効率を向上することができる。
【0049】
また、清掃工程において、本管部23の一端に清掃用スポンジ61を収容し、全ての開閉バルブ25を閉状態にした後に、本管部23の一端から圧縮給気を供給して清掃用スポンジ61で本管部23内を清掃し、分岐部24の一の開閉バルブ25を開にした状態で、清掃用スポンジ61を圧縮空気で分岐部24内を移動させて該分岐部24内を清掃するようにした。そのため、本管部23内および分岐部24内を、清掃用スポンジ61を圧縮空気で移動させることで配管内を清掃するようにした。つまり、水を使用せずに圧縮空気を用いて清掃するようにしたため、現場周囲が汚れるのを抑制でき、簡易な構成で確実に配管ユニット22を清掃することができる。
【0050】
なお上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば上記実施形態では、構築される構造物として大型の円筒状又は壁状の構造物などの例を用いて説明したが、構築される構造物は何ら限定されるものではない。
【0051】
また上記の打設装置20では、配管ユニット22及び水平配管21が交互に直列に連結されていたが、連結する配管ユニット22の数及び水平配管21の数は何ら限定されない。例えば配管ユニット22及び水平配管21をそれぞれ単数用いたものであってもよい。また交互に連結されていなくてもよく、例えば配管ユニット22だけを複数連結することも可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、本管部23の内周面および分岐部24の内周面に硬質クロームメッキ処理を施したが、必ずしも硬質クロームメッキ処理する必要はない。
【0053】
さらに、上記実施形態では、配管ユニット22に吊環27を設けたが、他に配管ユニット22を移動させる手段があれば吊環27はなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
22 配管ユニット(コンクリート打設用配管ユニット)
23 本管部
24 分岐部
25 開閉バルブ
26 油圧装置
27 吊環
33 シャッター
35 パッキン
36 バルブ本体(バルブ本体部)
61 清掃用スポンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6