(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154555
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231013BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/28 301B
H01L21/28 E
H01L21/78 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063947
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 正助
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正一
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆二
(72)【発明者】
【氏名】油井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】原 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 知巳
【テーマコード(参考)】
4M104
5F063
【Fターム(参考)】
4M104DD34
4M104DD37
4M104DD68
4M104GG04
5F063AA05
5F063BA43
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB13
5F063CB17
5F063CB30
5F063CC49
5F063DD26
5F063DD27
(57)【要約】
【課題】 歩留まり良く半導体装置を製造することができる技術を提案する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法は、複数の素子領域を有する第1表面と前記第1表面の裏側に位置する第2表面とを有する化合物半導体基板の前記第1表面に、前記素子領域の界面に沿ってガス抜き凹部を形成する工程と、前記化合物半導体基板にレーザを照射することによって、前記化合物半導体基板の内部であって前記ガス抜き凹部の深さ範囲に前記化合物半導体基板の前記第1表面に沿って伸びる変質層を形成する工程と、前記化合物半導体基板を前記変質層に沿って前記第1表面側の第1部分と前記第2表面側の第2部分に分割する工程と、前記ガス抜き凹部が露出するように、前記第1部分の分割面を覆う金属膜を形成する工程、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
複数の素子領域(40)を有する第1表面(12a)と前記第1表面の裏側に位置する第2表面(12b)とを有する化合物半導体基板(12)の前記第1表面に、前記素子領域の界面に沿ってガス抜き凹部(14)を形成する工程と、
前記化合物半導体基板にレーザ(112)を照射することによって、前記化合物半導体基板の内部であって前記ガス抜き凹部の深さ範囲に前記化合物半導体基板の前記第1表面に沿って伸びる変質層(16)を形成する工程と、
前記化合物半導体基板を前記変質層に沿って前記第1表面側の第1部分(61)と前記第2表面側の第2部分(62)に分割する工程と、
前記ガス抜き凹部が露出するように、前記第1部分の分割面(61a)を覆う金属膜(71、81、91)を形成する工程、
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記金属膜(71)を形成する前記工程は、
前記ガス抜き凹部の内面と前記分割面のうちの前記ガス抜き凹部の周辺部(40a)とを覆うとともに前記周辺部において第1厚さ(t1)を有するレジスト(70)を形成する工程と、
前記分割面と前記レジストを覆うように前記第1厚さよりも薄い第2厚さ(t2)を有する前記金属膜を形成する工程と、
前記第2厚さを有する前記金属膜を形成する前記工程の後に前記レジストを除去する工程、
を備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属膜(81)を形成する前記工程は、
前記ガス抜き凹部と前記分割面のうちの前記ガス抜き凹部の周辺部(40a)とを覆うように第3厚さ(t3)を有するマスク(80)を配置する工程と、
前記分割面と前記マスクを覆うように前記第3厚さよりも薄い第4厚さ(t4)を有する前記金属膜を形成する工程と、
前記第4厚さを有する前記金属膜を形成する前記工程の後に前記マスクを除去する工程、
を備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属膜(91)を形成する工程は、
前記分割面と前記ガス抜き凹部を覆うように前記金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の表面に、前記ガス抜き凹部と前記ガス抜き凹部の周辺部(40a)の上部に開口部(90a)を有するレジスト(90)を形成する工程と、
前記レジストを介して前記ガス抜き凹部の内部の前記金属膜を除去する工程、
を備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記化合物半導体基板は、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムによって構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1に開示の半導体装置の製造方法では、化合物半導体基板にレーザを照射することによって、化合物半導体基板の内部に変質層を形成する。変質層は、化合物半導体基板の表面に沿って延びるように形成される。このように変質層を形成することで、化合物半導体基板を加工することができる。例えば、変質層に沿って化合物半導体基板を分割することで、より薄い化合物半導体基板を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物半導体基板の内部に変質層を形成するときに、変質層でガスが発生する。発生したガスの圧力によって、化合物半導体基板に意図しない方向にクラックが生じる場合がある。これを回避するために、変質層を形成する前に、化合物半導体基板の第1表面に、変質層を形成する深さまで達するガス抜き部を形成することがある。ここで、化合物半導体基板を変質層に沿って分割した後に、第1表面側の第1部分の分割面に電極等として機能する金属膜を形成する状況を想定する。ガス抜き部は、第1表面から変質層に達する深さまで延びているため、第1部分の分割面には、ガス抜き部により形成される凹部が存在する。このため、分割面に金属膜を形成するときに、金属膜が分割面とガス抜き部内に跨って成膜される。したがって、第1部分をガス抜き部に沿って半導体装置に個片化するときに、ガス抜き部内に形成された金属膜により、各半導体装置に応力が加わり、半導体装置にクラックが生じ得る。本明細書では、歩留まり良く半導体装置を製造することができる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、複数の素子領域(40)を有する第1表面(12a)と前記第1表面の裏側に位置する第2表面(12b)とを有する化合物半導体基板(12)の前記第1表面に、前記素子領域の界面に沿ってガス抜き凹部(14)を形成する工程と、前記化合物半導体基板にレーザ(112)を照射することによって、前記化合物半導体基板の内部であって前記ガス抜き凹部の深さ範囲に前記化合物半導体基板の前記第1表面に沿って伸びる変質層(16)を形成する工程と、前記化合物半導体基板を前記変質層に沿って前記第1表面側の第1部分(61)と前記第2表面側の第2部分(62)に分割する工程と、前記ガス抜き凹部が露出するように、前記第1部分の分割面(61a)を覆う金属膜(71、81、91)を形成する工程、を備える。
【0006】
この製造方法では、化合物半導体基板を変質層に沿って第1部分と第2部分に分割した後に、ガス抜き凹部が露出するように、第1部分の分割面を覆う金属膜を形成する。したがって、第1部分をガス抜き凹部に沿って半導体装置に個片化するときに、各半導体装置に金属膜に起因する応力が印加されない。このため、半導体装置にクラックが生じ難く、歩留まり良く半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】ガス抜き凹部が形成されたGaN基板12の平面図。
【
図12】実施例1の製造工程により製造された半導体装置を下から見た図。
【
図19】変形例の製造工程により製造された半導体装置を下から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記金属膜を形成する前記工程は、前記ガス抜き凹部の内面と前記分割面のうちの前記ガス抜き凹部の周辺部とを覆うとともに前記周辺部において第1厚さを有するレジストを形成する工程と、前記分割面と前記レジストを覆うように前記第1厚さよりも薄い第2厚さを有する前記金属膜を形成する工程と、前記第2厚さを有する前記金属膜を形成する前記工程の後に前記レジストを除去する工程、を備えてもよい。
【0009】
このような構成では、金属膜の厚さである第2厚さが、ガス抜き凹部の周辺部におけるレジストの厚さである第1厚さよりも薄いので、レジストの上面を覆う金属膜を、分割面を覆う金属膜から分離させることができる。このため、レジストの上面に形成された金属膜をレジストとともに除去することができ、ガス抜き凹部の内部へ金属膜が形成されることを防止することができる。また、レジストは精度良く形成することができる。このため、ばらつきの小さい半導体装置を製造することができる。
【0010】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記金属膜を形成する前記工程は、前記ガス抜き凹部と前記分割面のうちの前記ガス抜き凹部の周辺部とを覆うように第3厚さを有するマスクを配置する工程と、前記分割面と前記マスクを覆うように前記第3厚さよりも薄い第4厚さを有する前記金属膜を形成する工程と、前記第4厚さを有する前記金属膜を形成する前記工程の後に前記マスクを除去する工程、を備えてもよい。
【0011】
このような構成では、金属膜の厚さである第4厚さが、ガス抜き凹部の周辺部におけるマスクの厚さである第3厚さよりも薄いので、マスクの上面を覆う金属膜を、分割面を覆う金属膜から分離させることができる。このため、マスクの上面に形成された金属膜をマスクとともに除去することができ、ガス抜き凹部の内部へ金属膜が形成されることを防止することができる。また、マスクはガス抜き凹部とその周辺部を覆うように位置決めされて配置されているだけなので、物理的に除去することができる。このため、金属膜の材料によらず半導体装置を製造することができる。
【0012】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記金属膜を形成する工程は、前記分割面と前記ガス抜き凹部を覆うように前記金属膜を形成する工程と、前記金属膜の表面に、前記ガス抜き凹部と前記ガス抜き凹部の周辺部の上部に開口部を有するレジストを形成する工程と、前記レジストを介して前記ガス抜き凹部の内部の前記金属膜を除去する工程、を備えてもよい。
【0013】
このような構成では、分割面とガス抜き凹部の内部との全体に金属膜を形成した後、レジストを介してガス抜き凹部内の金属膜を除去する。これにより、ガス抜き凹部を露出させることができる。また、レジストは精度良く形成することができる。このため、ばらつきの小さい半導体装置を製造することができる。
【0014】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記化合物半導体基板は、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムによって構成されていてもよい。
【0015】
(実施例1)
実施例1の製造方法では、
図1及び
図2に示す窒化ガリウム基板12(以下、GaN基板12という)から半導体装置を製造する。
図1に示すように、GaN基板12は、中央領域42と外周領域44を有している。中央領域42は、複数の素子領域40を有している。中央領域42では、各素子領域40がマトリクス状に配置されている。図示していないが、各素子領域40には、GaN基板12の第1表面12aに臨む範囲に素子構造が形成されている。各素子領域40内に形成される素子構造は、MOSFET、IGBT、ダイオード等であってよい。外周領域44は、中央領域42の周囲に位置している。外周領域44は、GaN基板12の中央領域42を除く領域である。GaN基板12は、光透過性を有している。
【0016】
(ガス抜き凹部形成工程)
GaN基板12から半導体装置を製造する際には、まず、ガス抜き凹部形成工程を実施する。ガス抜き凹部形成工程では、GaN基板12の第1表面12aにガス抜き溝14を形成する。ここでは、
図3に示すように、第1表面12a側からGaN基板12にレーザ110を照射する。レーザ110は、GaN基板12内で焦点S1を形成するように照射される。レーザ110が照射された位置に、ガス抜き溝14が形成される。ここでは、レーザ110の照射位置を移動させることによって、
図4に示すように、各素子領域40の界面に沿ってガス抜き溝14を形成する。また、ガス抜き溝14は、外周領域44にも形成される。外周領域44では、各素子領域40の界面の延長線上にガス抜き溝14が形成される。すなわち、ここでは、
図4に示すように、GaN基板12の第1表面12a全域が格子状に区画されるようにガス抜き溝14が形成される。なお、ガス抜き凹部形成工程では、第2表面12b側からGaN基板12にレーザ110を照射して、GaN基板12の第1表面12aにガス抜き溝14を形成してもよい。
【0017】
(変質層形成工程)
次に、GaN基板12の内部に変質層16を形成する変質層形成工程を実施する。変質層形成工程では、
図5に示すように、第2表面12b側からGaN基板12にレーザ112を照射する。レーザ112は、GaN基板12の内部で焦点S2を形成するように照射される。焦点S2の位置では、GaN(すなわち、窒化ガリウム)が加熱されて分解される。その結果、焦点S2の位置に、ガリウムの析出層等によって構成された変質層16が形成される。変質層16の強度は、元の窒化ガリウム単結晶よりも低い。したがって、変質層16の強度は、その周囲の窒化ガリウム単結晶よりも低い。ここでは、レーザ112の照射位置をGaN基板12の第1表面12a及び第2表面12bと平行な方向に移動させることで、第1表面12a及び第2表面12bに沿って伸びる変質層16を形成する。また、ここでは、変質層16とガス抜き溝14とが深さ範囲において重複するように変質層16を形成する。言い換えると、GaN基板12の厚み方向における変質層16の範囲16aと、GaN基板12の厚み方向におけるガス抜き溝14の範囲14aとが重複するように、変質層16を形成する。また、ここでは、GaN基板12の横方向(すなわち、GaN基板12の第1表面12a及び第2表面12bと平行な方向)の全体に変質層16を形成する。以下では、GaN基板12のうち、変質層16よりも第1表面12a側の部分を第1部分61といい、変質層16よりも第2表面12b側の部分を第2部分62という。
【0018】
GaN基板12へのレーザ112の照射によってGaNが分解されるとき(すなわち、変質層16が形成されるとき)に、窒素ガス(すなわち、N
2ガス)が発生する。上述したように、変質層16は、ガス抜き溝14と重複する深さ範囲に形成される。このため、
図6の矢印100に示すように、変質層16の形成位置で発生した窒素ガスは、ガス抜き溝14を介してGaN基板12の外部に排出される。これによって、GaN基板12の内部で窒素ガスの圧力が高くなることが防止される。このため、窒素ガスの圧力によってGaN基板12にクラックが生じることが防止される。
【0019】
(支持部材貼り付け工程)
次に、支持部材貼り付け工程を実施する。支持部材貼り付け工程では、
図6に示すように、GaN基板12の第1表面12aに対して支持部材22を貼り付ける。支持部材22は、硬い板材であってもよいし、柔軟性を有するシート状の部材であってもよい。これにより、後の工程において、支持部材22によって、GaN基板12の第1表面12aにキズが入ることが抑制される。なお、支持部材22は、ガス抜き凹部形成工程の前にGaN基板12に貼り付けられてもよいし、変質層形成工程の前にGaN基板12に貼り付けられてもよい。この場合、支持部材22は、GaN基板12にレーザ110を照射するために光透過性を有することが望ましく、また、変質層形成工程で発生する窒素ガスを排出するために通気性を有していることが望ましい。
【0020】
(分割工程)
次に、
図7に示すように、第2部分62に対して第1部分61から離れる方向に力を加えることで、変質層16に沿ってGaN基板12を分割する。すなわち、第2部分62を第1部分61から分離させる。上述したように、変質層16の強度は窒化ガリウム単結晶の強度よりも低いので、変質層16でGaN基板12を分割することができる。その後、必要に応じて、第1部分61の上面61a(すなわち、分割面61a)を研磨及び洗浄する。なお、第1部分61には、第1表面12aから分割面61aまで貫通するガス抜き溝14が格子状に形成されているので、第1部分61は複数の素子領域40に分割された状態となる。各素子領域40は支持部材22によって支持されているので、各素子領域40は支持部材22上に固定されている。
【0021】
(電極形成工程)
次に、電極形成工程を実施する。まず、第1部分61の分割面61a及びガス抜き溝14の内部にレジスト液を塗布した後、露光及び現像を行うことにより、
図8に示すように、第1部分61に対して選択的にレジスト70を形成する。ここでは、
図9に示すように、ガス抜き溝14の内部、及び、分割面61aのうちのガス抜き溝14の周辺部40a(すなわち、各素子領域40の周縁部40a)を覆うようにレジスト70を形成する。分割面61aのうちの各素子領域40の中央部40bには、レジスト70を形成しない。また、
図8に示すように、周辺部40aにおける厚さ(すなわち、分割面61aからレジスト70の上面までの高さ)がt1となるように、レジスト70が形成される。
【0022】
次に、
図10に示すように、分割面61aとレジスト70を覆うように金属膜71を形成する。金属膜71は、スパッタリングや蒸着等、公知の手法により形成することができる。ここでは、金属膜71の厚さt2が、厚さt1よりも薄くなるように、金属膜71を形成する。厚さt2は、厚さt1よりも薄いので、レジスト70の上面に形成される金属膜71は、分割面61aに形成される金属膜71から分離される。
【0023】
次に、
図11に示すように、レジスト70を除去する。レジスト70の上面に形成された金属膜71は、分割面61aに形成された金属膜71から分離されているので、レジスト70を除去すると、分割面61a上の金属膜71が残存した状態となる。分割面61a上に残存した各金属膜71が、半導体装置の電極として機能する。
【0024】
次に、支持部材22を第1部分61から剥離することにより、電極(金属膜71)が形成された複数の素子領域40を得ることができる。その後、各素子領域40の第1表面12aに絶縁層、電極等を形成することで、複数の半導体装置が完成する。
【0025】
なお、本実施例では、電極形成工程において、ガス抜き溝14及び周辺部40aを覆うようにレジスト70が形成される。このため、金属膜71は、分割面61aの全域には形成されない。すなわち、
図12に示すように、完成した半導体装置は、分割面61aの一部(すなわち、周縁部40a)が露出した状態となる。
【0026】
なお、第2部分62は、その後、半導体装置の製造に再利用されてもよい。例えば、第2部分62の分割面62a(
図7参照)を研磨、エッチング等し、その後、分割面62a上にGaN層をエピタキシャル成長させることで、第2部分62の厚みを元のGaN基板12の厚みまで増加させることができる。厚みを増加させた第2部分62をGaN基板12として再利用して、半導体装置の製造を行うことができる。
【0027】
実施例1の製造方法では、金属膜71の厚さt2が、ガス抜き溝14の周辺部40aにおけるレジスト70の厚さt1よりも薄いので、レジスト70の上面を覆う金属膜71を、分割面61aを覆う金属膜71から分離させることができる。このため、レジスト70の上面に形成された金属膜71をレジスト70とともに除去する(いわゆる、リフトオフ)ことができ、ガス抜き溝14の内部へ金属膜71が形成されることを防止することができる。各素子領域40の界面に沿って設けられるガス抜き溝14の内部に金属膜71が形成されないので、支持部材22を剥離して複数の素子領域40を取り出す際に、金属膜71に起因する応力が各素子領域40に印加されない。このため、製造される半導体装置にクラックが生じ難く、歩留まり良く半導体装置を製造することができる。
【0028】
また、実施例1では、レジスト70により、ガス抜き溝14の内部に金属膜71が形成されることを防止する。レジスト70は精度良く形成することができるので、金属膜71の寸法精度のばらつきが小さい半導体装置を製造することができる。
【0029】
(実施例2)
実施例2の製造方法では、電極形成工程が実施例1と異なる。実施例2では、GaN基板12を第1部分61と第2部分62に分割した後、
図13に示すように、まず、マスク80を配置する。ここでは、実施例1と同様に、ガス抜き溝14の内部、及び、分割面61aのうちのガス抜き溝14の周辺部40a(
図9参照)を覆うようにマスク80を配置する。分割面61aのうちの各素子領域40の中央部40bには、マスク80を形成しない。また、ここでは、マスク80の厚さ(すなわち、分割面61aからマスク80の上面までの高さ)がt3であるマスク80を配置する。
【0030】
次に、
図14に示すように、分割面61aとマスク80を覆うように金属膜81を形成する。金属膜81は、スパッタリングや蒸着等、公知の手法により形成することができる。ここでは、金属膜81の厚さt4が、厚さt3よりも薄くなるように、金属膜81を形成する。厚さt4は、厚さt3よりも薄いので、マスク80の上面に形成される金属膜81は、分割面61aに形成される金属膜81から分離される。
【0031】
次に、
図15に示すように、マスク80を除去する。マスク80の上面に形成された金属膜81は、分割面61aに形成された金属膜81から分離されているので、マスク80を除去すると、分割面61a上の金属膜81が残存した状態となる。分割面61a上に残存した各金属膜81が、半導体装置の電極として機能する。その後、実施例1と同様の工程を経ることにより、複数の半導体装置が完成する。
【0032】
実施例2の製造方法では、金属膜81の厚さt4が、ガス抜き溝14の周辺部40aにおけるマスク80の厚さt3よりも薄いので、マスク80の上面を覆う金属膜81を、分割面61aを覆う金属膜81から分離させることができる。このため、マスク80の上面に形成された金属膜81をマスク80とともに除去する(いわゆる、マスク蒸着)ことができ、ガス抜き溝14の内部へ金属膜81が形成されることを防止することができる。
【0033】
また、実施例2では、マスク80により、ガス抜き溝14の内部に金属膜81が形成されることを防止する。マスク80は、ガス抜き溝14とその周辺部40aを覆うように位置決めされて配置されているだけなので、物理的に除去することができる。このため、実施例2では、金属膜81の材料によらず半導体装置を製造することができる。
【0034】
(実施例3)
実施例3の製造方法では、電極形成工程が実施例1及び2と異なる。実施例3では、GaN基板12を第1部分61と第2部分62に分割した後、
図16に示すように、まず、分割面61aとガス抜き溝14を覆うように金属膜91を形成する。ここでは、ガス抜き溝14の内部から分割面61aの全域に跨る範囲に金属膜91を形成する。金属膜91は、スパッタリングや蒸着等、公知の手法により形成することができる。
【0035】
次に、
図17に示すように、金属膜91の表面に、ガス抜き溝14及びガス抜き溝14の周辺部40a(実施例1の
図9参照)の上部に開口部90aを有するレジスト90を形成する。すなわち、金属膜91の表面のうち、素子領域40の中央部40bの上部のみを覆う範囲に選択的にレジスト90を形成する。そして、
図18に示すように、例えば、ドライエッチングやウェットエッチングにより、レジスト90を介してガス抜き溝14の内部の金属膜91を除去する。その後、レジスト90を除去し、実施例1と同様の工程を経ることにより、複数の半導体装置が完成する。
【0036】
実施例3の製造方法では、分割面61aとガス抜き溝14の内部の全体に金属膜91を形成した後、レジスト90を介してガス抜き溝14の内部の金属膜91を除去する。これにより、ガス抜き溝14を露出させることができる。また、実施例3では、レジスト90を介してガス抜き溝14内の金属膜91を除去する。レジスト90は精度良く形成することができるので、金属膜91の寸法精度のばらつきが小さい半導体装置を製造することができる。
【0037】
上述した各実施例では、ガス抜き凹部形成工程において、素子領域40の界面に沿って延びる溝(ガス抜き溝14)を形成した。しかしながら、ガス抜き凹部形成工程では、例えば、素子領域40の界面に沿って断続的に穴を形成してもよい。すなわち、素子領域40の界面に沿ってGaN基板12の第1表面12aに所定の間隔で複数のガス抜き穴を形成してもよい。この場合、金属膜を形成した後に、素子領域40の界面に沿ってダイシングすることで、第1部分61を複数の素子領域40に個片化することができる。なお、本変形例の製造方法により得られる半導体装置は、
図19に示すように、素子領域40の周縁部において、分割面61aの一部が、ガス抜き穴の形状(例えば、円形)に対応する形状で露出した状態となる。
【0038】
また、上述した各実施例では、GaN基板12を使用した。しかしながら、例えば、酸化ガリウム基板等、GaN基板以外の化合物半導体基板を使用して半導体装置を製造してもよい。
【0039】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
12:窒化ガリウム基板、14:ガス抜き溝、16:変質層