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特開2023-154570吸音材、吸音方法及び吸音材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154570
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】吸音材、吸音方法及び吸音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20231013BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20231013BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G10K11/168
G10K11/16 120
G10K11/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063982
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】591270257
【氏名又は名称】クミ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】森山 貞雄
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA06
5D061AA22
5D061BB21
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】吸音率が高く、且つ、優れた復元率を示し、メルトブローン方式で生産される吸音材より吸音率の低下が少ない吸音材、及び吸音方法、並びに吸音材の製造方法を提供する。
【解決手段】メルトブローン不織布層(11)と、中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を含むフェルト層(12)とを有する吸音材(1)であって、メルトブローン不織布層(11)は、厚さが0.1~0.4mmであり、JIS L1096:2010に準拠して測定される圧力差125Paにおける通気性が250~700mm/sであり、フェルト層(12)は、目付が80~600g/mであり、厚さが10~50mmであり、フェルト層(12)の総質量に対して、繊度3~10dtexである中空短繊維を20~40質量%、繊度0.5~3dtexの非中空短繊維を20~40質量%、繊度2~5dtexの芯鞘型複合短繊維を20~40質量%含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトブローン不織布層と、中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を含むフェルト層とを有する吸音材であって、
前記メルトブローン不織布層は、厚さが0.1~0.4mmであり、JIS L1096:2010に準拠して測定される圧力差125Paにおける通気性が250~700mm/sであり、
前記フェルト層は、目付が80~600g/mであり、厚さが10~50mmであり、
前記フェルト層の総質量に対して、繊度3~10dtexである中空短繊維を20~40質量%、繊度0.5~3dtexの非中空短繊維を20~40質量%、繊度2~5dtexの芯鞘型複合短繊維を20~40質量%含む、吸音材。
【請求項2】
前記中空短繊維が、ポリエステル系繊維、アクリル繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記中空短繊維の中空率が20~30%である、請求項1に記載の吸音材。
【請求項4】
前記芯鞘型複合短繊維は、芯成分がポリエステル及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、鞘成分が融点180℃以下であって、ポリエステル及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の吸音材。
【請求項5】
前記メルトブローン不織布層と前記フェルト層との間にさらに接着層を有し、前記接着層を構成する樹脂の融点が90~120℃である、請求項1に記載の吸音材。
【請求項6】
前記吸音材を50%の厚さに168時間圧縮した後、圧縮を開放して1時間後の前記吸音材の厚さDが、初期の前記吸音材の厚さDに対して、80%以上である、請求項1に記載の吸音材。
【請求項7】
前記メルトブローン不織布層を音源側に向けて、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸音材を配置する、吸音方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の吸音材の製造方法であって、
前記フェルト層に前記メルトブローン不織布層を積層する、吸音材の製造方法。
【請求項9】
前記フェルト層が、前記中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を混綿した後に解繊しながら目付が8~40g/mのウエブを少なくとも2枚積層して形成されたものである、請求項8に記載の吸音材の製造方法。
【請求項10】
前記フェルト層及び前記メルトブローン不織布層の積層後に、140~200℃に30秒~10分間加熱し、続いて冷却する工程を有する、請求項8に記載の吸音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材、吸音方法及び吸音材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等では、静かで快適な車室内環境をもたらすことが要望されており、空気層を含むポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等の多孔質発泡体又は、フェルト・不織布等の繊維状物からなる吸音材が広く用いられている。
特に、自動車用途では、より軽量で且つ吸音性能に優れる吸音材が求められることから、例えば、メルトブローン不織布層とニードルパンチ不織布層を積層した吸音材が多く採用されている。
【0003】
特許文献1には、音源側にメルトブローン不織布を設置する吸音方法が開示されており、特許文献2には、非通気性の樹脂発泡体又は樹脂フィルム体からなる共振層と、熱可塑性フェルトからなる吸音層とを積層してなる吸音材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-200687号公報
【特許文献2】特開2005-227747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ほとんどの自働車メーカーで採用されている音源側に配置されるメルトブローン方式で生産される不織布は、ポリエステル繊維及びポリプロピレン繊維のマイクロファイバー(繊度0.1~0.8dtexの極細繊維)から構成されており、総目付150~450g/m、嵩高(厚さ)13~45mmのウエブ積層体が使用されている。
【0006】
しかし、この極細繊維から構成されるウエブ積層体の不織布は、ロール巻き取り製品化、プレス打ち抜き加工、箱詰等の加圧過程でウエブ厚が薄くなるため、800~2000Hzの低・中周波数帯域の吸音率が大幅に悪化する欠点が判明した。
【0007】
本発明は、800~2000Hzの低・中周波数帯域における吸音率が高く、且つ、荷重を掛けて圧縮し、開放した後の優れた復元率を示し、メルトブローン方式で生産される吸音材より吸音率の低下が少ない吸音材、及び吸音方法、並びに吸音材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を有する。
[1] メルトブローン不織布層と、中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を含むフェルト層とを有する吸音材であって、
前記メルトブローン不織布層は、厚さが0.1~0.4mmであり、JIS L1096:2010に準拠して測定される圧力差125Paにおける通気性が250~700mm/sであり、
前記フェルト層は、目付が80~600g/mであり、厚さが10~50mmであり、
前記フェルト層の総質量に対して、繊度3~10dtexである中空短繊維を20~40質量%、繊度0.5~3dtexの非中空短繊維を20~40質量%、繊度2~5dtexの芯鞘型複合短繊維を20~40質量%含む、吸音材。
[2] 前記中空短繊維が、ポリエステル系繊維、アクリル繊維からからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の吸音材。
[3] 前記中空短繊維の中空率が20~30%である、[1]又は[2]に記載の吸音材。
[4] 前記芯鞘型複合短繊維は、芯成分がポリエステル及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、鞘成分が融点180℃以下であって、ポリエステル及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の吸音材。
[5] 前記メルトブローン不織布層と前記フェルト層との間にさらに接着層を有し、前記接着層を構成する樹脂の融点が90~120℃である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の吸音材。
[6] 前記吸音材を50%の厚さに168時間圧縮した後、圧縮を開放して1時間後の前記吸音材の厚さDが、初期の前記吸音材の厚さDに対して、80%以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の吸音材。
[7] 前記メルトブローン不織布層を音源側に向けて、[1]~[6]のいずれか一項に記載の吸音材を配置する、吸音方法。
[8] [1]~[6]のいずれか一項に記載の吸音材の製造方法であって、
前記フェルト層に前記メルトブローン不織布層を積層する、吸音材の製造方法。
[9] 前記フェルト層が、前記中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を混綿した後に解繊しながら目付が8~40g/mのウエブを少なくとも2枚積層して形成されたものである、[8]に記載の吸音材の製造方法。
[10] 前記フェルト層及び前記メルトブローン不織布層の積層後に、140~200℃に30秒~10分間加熱し、続いて冷却する工程を有する、[8]又は[9]に記載の吸音材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、800~2000Hzの低・中周波数帯域における吸音率が高く、且つ、荷重を掛けて圧縮し、開放した後の優れた復元率を示し、メルトブローン方式で生産される吸音材より吸音率の低下が少ない吸音材、及び吸音方法、並びに吸音材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る吸音材の概略断面図である。
図2】復元率の測定方法を説明する概略断面図である。
図3】実施例及び比較例の吸音率低下率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<吸音材>
本発明の吸音材を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の吸音材1である。吸音材1はメルトブローン不織布層11と、中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を含むフェルト層12とを有する。
【0013】
メルトブローン不織布層11は、厚さが0.1~0.4mmであり、JIS L1096:2010に準拠して測定される圧力差125Paにおける通気性が250~700mm/sである。
【0014】
メルトブローン不織布層11は、溶融した熱可塑性樹脂をノズルより吐出するとともにガスを吹き付けて繊維化し、捕集して得られる。
【0015】
メルトブローン不織布層11を構成する樹脂としては、不織布を形成し得る熱可塑性樹脂であれば、特に限定はされず、公知のものを用いることができる。
【0016】
メルトブローン不織布層11を構成する樹脂は、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0017】
メルトブローン不織布層11を構成するポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0018】
メルトブローン不織布層11を構成するポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテン等のα-オレフィンの単独重合体若しくは共重合体であるポリオレフィン系重合体が挙げられる。より具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(すなわち、LLDPE)、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体等のエチレンの単独重合体あるいはエチレン・α-オレフィン共重合体等のエチレン系重合体;プロピレンの単独重合体(すなわち、ポリプロピレン)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(すなわち、ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体等のプロピレン系重合体;1-ブテン単独重合体、1-ブテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体等の1-ブテン系重合体;ポリ4-メチル-1-ペンテン単独重合体、4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体あるいは4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体等の4-メチル-1-ペンテン系重合体等が挙げられる。
【0019】
メルトブローン不織布層11を構成するポリアミドとしては、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等が挙げられる。
【0020】
メルトブローン不織布は、吸音材の通気性を制御することができ、表面積を大きくする目的でエンボス加工されているものであってもよい。
【0021】
フェルト層12は、目付が80~600g/mであり、厚さが10~50mmである。フェルト層12の目付は90~500g/mであることが好ましく、100~400g/mであることがより好ましく、110~300g/mであることがさらに好ましい。フェルト層12の厚さは12~48mmであることが好ましく、14~46mmであることがより好ましく、16~44mmであることがさらに好ましい。
【0022】
フェルト層12は、中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を含む。フェルト層12は、フェルト層12の総質量に対して、繊度3~10dtexである中空短繊維を20~40質量%の割合で含み、繊度0.5~3dtexの非中空短繊維を20~40質量%の割合で含み、繊度2~5dtexの芯鞘型複合短繊維を20~40質量%の割合で含む。本実施形態の吸音材1は、フェルト層12がこれらの構成を有することにより、低・中周波数帯域における吸音率が高く、且つ、優れた復元率を発現することができる。
【0023】
フェルト層12において、中空短繊維の繊度は3~10dtexであり、4~9dtexであることが好ましく、5~8dtexであることがより好ましい。中空短繊維の平均長さは、特に限定されないが、51~64mmが好ましい。
フェルト層12において、非中空短繊維の繊度は0.5~3dtexであり、0.6~2.5dtexであることが好ましく、0.7~2.0dtexであることがより好ましい。非中空短繊維の平均長さは、特に限定されないが、51~64mmが好ましい。
フェルト層12において、芯鞘型複合短繊維の繊度は2.0~5.0dtexであり、2.5~4.8dtexであることが好ましく、3.0~4.6dtexであることがより好ましい。芯鞘型複合短繊維の平均長さは、特に限定されないが、51~64mmが好ましい。
【0024】
フェルト層12に、中空短繊維を含むことにより復元率の向上に寄与する。
フェルト層12において、中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維の繊度は、吸音材1の吸音性能に影響し、細い方が高周波数帯域における吸音率が大きくなる。
【0025】
フェルト層12に含まれる中空短繊維としては、特に限定はされず、公知のものを用いることができる。中空短繊維としては、ポリエステル系繊維、アクリル繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0026】
フェルト層12に含まれる中空短繊維の中空率は20~30%であることが好ましい。中空繊維の中空率とは、繊維の断面積に占める中空部分の面積比をいう。より具体的には、中空繊維の断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、中空部分の面積比を測定することができる。
【0027】
フェルト層12に含まれる芯鞘型複合短繊維は、芯成分がポリエステル及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、鞘成分が融点180℃以下であって、ポリエステル及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0028】
芯鞘型複合短繊維の芯成分としてのポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、及びこれらとイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸等の酸成分や、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール等のグリコール成分、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール等との共重合体、並びにこれらのエラストマーが挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0029】
芯鞘型複合短繊維の芯成分は、前記ポリエステル又はポリプロピレンに加えて、他の樹脂を含んでもよい。前記他の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前記ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。前記ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン-1、及びこれらとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和カルボン酸のエステル、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、マレイン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種以上を共重合したもの、グラフト重合したもの、並びにこれらのエラストマー等が挙げられる。前記ポリアミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0030】
芯鞘型複合短繊維の鞘成分に含まれる融点180℃以下のポリエステルとしては、公知の、低融点ポリエステルを用いることができる。低融点ポリエステルは、例えば、酸成分として、テレフタル酸を主成分とするものであり、ジオール成分として、エチレングリコールと1,4-ブタンジオール(いずれもエステル形成性誘導体を含む)を主成分とし、エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとのモル比が、80/20~30/70、好ましくは70/30~40/60であるものが挙げられる。
【0031】
フェルト層12に含まれる芯鞘型複合短繊維は、例えば、前記芯成分と前記鞘成分が実質的に同心円状に配置された同心円構造を有する複合短繊維である。前記芯成分は、前記鞘成分の融点よりも5℃以上高い融点を有することが好ましく、10℃以上高い融点を有することが好ましく、20℃以上高い融点を有することが好ましい。
【0032】
前記メルトブローン不織布層と前記フェルト層との間にさらに接着層を有し、前記接着層を構成する樹脂の融点が90~120℃であることが好ましい。前記接着層は、前記メルトブローン不織布層及び前記フェルト層を接合する。
【0033】
前記吸音材の厚さDは、特に限定されないが、10.1~50.4mmが好ましく、12~48mmがより好ましく、14~46mmがさらに好ましい。
【0034】
前記吸音材を50%の厚さに168時間圧縮した後、圧縮を開放して1時間後の前記吸音材の厚さDが、初期の前記吸音材の厚さDに対して、80%以上であることが好ましい。
【0035】
<吸音方法>
本発明の吸音方法は、前記メルトブローン不織布層を音源側に向けて、前記吸音材を配置する。
前記吸音材を、フロアマットアンダー、ダッシュインシュレーター等の自動車部材の吸音材として用いることができ、このとき、前記メルトブローン不織布層を音源側に向けて、前記吸音材を配置する。
また、前記吸音材を、掃除機外装遮音樹脂カバーの内面の吸音材として用いることもでき、このとき、前記メルトブローン不織布層を音源側に向けて、前記吸音材を配置する。
【0036】
<吸音材の製造方法>
本発明の吸音材の製造方法は、前記吸音材の製造方法であって、前記フェルト層に前記メルトブローン不織布層を積層する。
【0037】
本発明の吸音材の製造方法において、前記メルトブローン不織布層は、厚さが0.1~0.4mmであり、JIS L1096:2010に準拠して測定される圧力差125Paにおける通気性が250~700mm/sである。
【0038】
本発明の吸音材の製造方法において、前記フェルト層は、目付が80~600g/mであり、厚さが10~50mmである。前記フェルト層は、前記フェルト層の総質量に対して、繊度3~10dtexである中空短繊維を20~40質量%、繊度0.5~3dtexの非中空短繊維を20~40質量%、繊度2~5dtexの芯鞘型複合短繊維を20~40質量%含む。
【0039】
本発明の吸音材の製造方法において、フェルト層は、中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を含む。
【0040】
本発明の吸音材の製造方法において、前記フェルト層は、前記中空短繊維、非中空短繊維及び芯鞘型複合短繊維を混綿した後に解繊しながら目付が8~40g/mのウエブを少なくとも2枚積層して形成することができる。
【0041】
本発明の吸音材の製造方法において、前記フェルト層及び前記メルトブローン不織布層の積層後に、140~200℃に30秒~10分間加熱し、続いて冷却する工程を有することが好ましい。前記フェルト層及び前記メルトブローン不織布層の積層後に、160~180℃に1~3分間加熱し、続いて冷却する工程を有することがより好ましい。
【0042】
本発明の吸音材の製造方法において、前記メルトブローン不織布層を構成する樹脂が、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0043】
本発明の吸音材の製造方法において、前記中空短繊維が、ポリエステル系繊維、アクリル繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0044】
本発明の吸音材の製造方法において、前記中空短繊維の中空率が20~30%であることが好ましい。
【0045】
本発明の吸音材の製造方法において、前記芯鞘型複合短繊維は、芯成分がポリエステル及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、鞘成分が融点180℃以下であって、ポリエステル及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0046】
本発明の吸音材の製造方法において、前記メルトブローン不織布層と前記フェルト層との間にさらに接着層を有し、前記接着層を構成する樹脂の融点が90~120℃であることが好ましい。
【0047】
本発明の吸音材の製造方法において、前記吸音材を50%の厚さに168時間圧縮した後、圧縮を開放して1時間後の前記吸音材の厚さDが、初期の前記吸音材の厚さDに対して、80%以上であることが好ましい。
【実施例0048】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
本実施例において、次の略号を用いる。
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
【0050】
メルトブローン不織布層の通気性は、フラジール型通気度測定装置を用いて、メルトブローン不織布について、圧力差125Paにおける空気流量を測定して求めたものである。
【0051】
<吸音材の作製>
[実施例1]
PBT製のメルトブローン不織布(厚さ0.157mm、目付15g/m、通気性630mm/s、密度95.5kg/m、株式会社クラレ製、クラフレックス(登録商標))と、カードにてウエブを形成しクロスレイヤーにて10枚積層したウエブ積層体(厚さ20mm、目付120g/m、密度6.0kg/m、繊度7.7dtexのPET製の中空短繊維(中空率20%)40質量%、繊度4.4dtexのPET製の芯鞘型複合短繊維(コンジュゲート型芯鞘PET繊維、芯部融点260℃、鞘部融点110℃)30質量%、0.99dtexのレギュラーPET繊維30質量%)とを、オレフィン系エラストマー接着剤(融点100℃、15g/m)を介して積層し、ネット状のコンベア上で熱風(170℃×2min)を通すことで層の接着及びウエブ積層体の嵩高性を維持させた。その後、コンベア上で常温送風により冷却して、厚さ18.94mmm、総目付150g/mの実施例1の吸音材(メルトブローン不織布と嵩高層)を製作した。
【0052】
[実施例2]
PBT製のメルトブローン不織布(厚さ0.201mm、目付25g/m、通気性360mm/s、密度124.4kg/m、株式会社クラレ製、クラフレックス(登録商標))と、カードにてウエブを形成しクロスレイヤーにて22枚積層したウエブ積層体(厚さ41mm、目付260g/m、密度6.3kg/m、繊度7.7dtexのPET製の中空短繊維(中空率20%)40質量%、繊度4.4dtexのPET製の芯鞘型複合短繊維(コンジュゲート型芯鞘PET繊維、芯部融点260℃、鞘部融点110℃)30質量%、0.99dtexのレギュラーPET繊維30質量%)とを、オレフィン系エラストマー接着剤(融点100℃、15g/m)を介して積層し、ネット状のコンベア上で熱風(170℃×2min)を通して接着した。その後、コンベア上で常温送風により冷却して、厚さ39.28mmm、総目付300g/mの実施例2の吸音材(メルトブローン不織布と嵩高層)を製作した。
【0053】
[比較例1]
ポリエステル繊維及びポリプロピレン繊維のマイクロファイバー(繊度0.1~0.8dtexの極細繊維)から構成されるメルトブローン不織布(厚さ12.31mm、目付150g/m、密度11.5kg/m)を、比較例1の吸音材とした。
【0054】
[比較例2]
ポリエステル繊維及びポリプロピレン繊維のマイクロファイバー(繊度0.1~0.8dtexの極細繊維)から構成されるメルトブローン不織布(厚さ38.91mm、目付340g/m、密度8.3kg/m)を、比較例2の吸音材とした。
【0055】
[復元率測定]
実施例1~2及び比較例1~2の吸音材をそれぞれ100mm×100mmに切断し、初期状態の吸音材の中央部の厚さ(すなわち、初期厚さD)をハイトゲージで測定した。次に、図2に示すように、吸音材の厚さが初期厚さDの50%になるように、荷重を掛けて168時間圧縮した。圧縮状態の吸音材の厚さ(すなわち、圧縮厚さD)は、0.5×Dである。荷重を開放して1時間後の吸音材の中央部の厚さ(すなわち、復元厚さD)をハイトゲージで測定した。初期厚さDに対する、復元厚さDの割合(すなわち、復元率)を次式で求めた。
復元率(%)=D/D×100
得られた復元率の測定結果を表1に示す。
比較例1及び2の復元率は80%未満であったのに対して、実施例1及び2の吸音材の復元率は、80%以上と優れていた。
【0056】
【表1】
【0057】
[吸音率測定]
復元率測定における、圧縮前の吸音材、及び、圧縮して解放後の吸音材について、メルトブローン不織布層を音源側に向けて、垂直入射吸音率測定装置「ブリュエル・ケアー社製4206型」を用い、ISO 10534-2に準拠し、周波数500~4000Hzにおける試験片に平面音波が垂直に入射するときの垂直入射吸音率を測定した。
圧縮前の吸音材の垂直入射吸音率(すなわち、圧縮前吸音率)、及び、圧縮して解放後の吸音材の垂直入射吸音率(すなわち、圧縮後吸音率)の測定結果を表2に示す。
【0058】
総目付150g/mの実施例1及び比較例1の吸音材を比較したとき、500~4000Hzの周波数帯域において、圧縮前吸音率も、圧縮後吸音率も、実施例1の吸音材の方が大きく優れていた。特に、800~2000Hzの低・中周波数帯域において、圧縮前吸音率も、圧縮後吸音率も、実施例1の吸音材の方が大きく優れていた。
総目付300g/mの実施例2及び総目付340g/mの比較例2の吸音材を比較したときも、500~4000Hzの周波数帯域において、圧縮前吸音率も、圧縮後吸音率も、実施例2の吸音材の方が大きく優れていた。特に、800~2000Hzの低・中周波数帯域において、圧縮前吸音率も、圧縮後吸音率も、実施例2の吸音材の方が大きく優れていた。
【0059】
【表2】
【0060】
圧縮前吸音率R(%)及び圧縮後吸音率R(%)の結果から、吸音率低下率(%)を次式で求めた。
吸音率低下率(%)=(R-R)/R×100
得られた吸音率低下率(%)の結果を図3に示す。
【0061】
総目付150g/mの実施例1及び比較例1の吸音材を比較したとき、500~4000Hzの周波数帯域において、実施例1の吸音率低下率の方が小さく優れていた。特に、800~2000Hzの低・中周波数帯域において、実施例1の吸音率低下率の方が小さく優れていた。
総目付300g/mの実施例2及び総目付340g/mの比較例2の吸音材を比較したときも、500~4000Hzの周波数帯域において、実施例2の吸音率低下率の方が小さく優れていた。特に、800~2000Hzの低・中周波数帯域において、実施例2の吸音率低下率の方が小さく優れていた。
【0062】
実施例1~2、及び比較例1~2の吸音材の、圧縮前吸音率(%)及び圧縮後吸音率(%)を、圧縮前の総目付当たりの吸音率(%・m/kg)及び圧縮後の総目付当たりの吸音率(%・m/kg)に換算した結果を表3に示す。
【0063】
実施例1~2の吸音材の圧縮前の総目付当たりの吸音率(%・m/kg)は、特に、800~2000Hzの低・中周波数帯域において、比較例1~2の吸音材の圧縮前の総目付当たりの吸音率(%・m/kg)よりも優れていることが示された。
実施例1~2の吸音材の圧縮後の総目付当たりの吸音率(%・m/kg)は、特に、800~2000Hzの低・中周波数帯域において、比較例1~2の吸音材の圧縮後の総目付当たりの吸音率(%・m/kg)よりも優れていることが示された。
【0064】
【表3】
【0065】
各実施例における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施例によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、所望の周波数帯域の吸音率が調整可能であり、自動車の車外騒音規制に適応する、自動車用吸音材、吸音方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…吸音材、11…メルトブローン不織布層、12…フェルト層
図1
図2
図3