(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154626
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】タッチ検出装置、タッチパネルユニットおよびタッチ検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231013BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/041 512
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064074
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】大内田 優理
(57)【要約】
【課題】静電容量式のタッチパネルのタッチ検出に関して、より高い精度で誤検出を抑制することに寄与し得る新たな手法を提供する「タッチ検出装置、タッチパネルユニットおよびタッチ検出方法」を提供する。
【解決手段】タッチ検出装置6は、一のポイントの検出値がタッチ検出閾値以上となった場合、当該一のポイントの検出値が、時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否かを判別するか、または、一のポイントの周辺のポイントの検出値が、一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第2状態であるか否かを判別し、第1状態または第2状態のときはタッチを検出しないタッチ検出部11を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量式のタッチパネルに対するタッチを検出するタッチ検出装置であって、
前記タッチパネルのタッチ面に点在する複数のポイントのそれぞれについて、静電容量に対応する検出値を検出する検出値検出部と、
一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が、タッチを検出するためのタッチ検出閾値を下回っていた状態から前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出される検出値が、時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否かを判別する第1判別処理、または、前記一のポイントの周辺の前記ポイントについて前記検出値検出部により同じタイミングで検出された検出値が、前記一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第2状態であるか否かを判別する第2判別処理を実行し、前記第1判別処理において前記第1状態であると判定した場合または前記第2判別処理において前記第2状態であると判定した場合、タッチを検出しないタッチ検出部とを備える
ことを特徴とするタッチ検出装置。
【請求項2】
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記第1判別処理および前記第2判別処理とは別に、検出値が静電ノイズ閾値(ただし前記静電ノイズ閾値>前記タッチ検出閾値)以上であるか或いは検出値が分布特定用閾値(ただし前記分布特定用閾値≦前記タッチ検出閾値)以上である前記ポイントの分布が特定の態様である正常タッチ逸脱状態であるか否かを判別する基本判別処理を実行し、
前記基本判別処理において前記正常タッチ逸脱状態であると判定した場合は、タッチを検出しない
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチ検出装置。
【請求項3】
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記基本判別処理を実行し、前記基本判別処理において前記正常タッチ逸脱状態であると判定した場合は、タッチを検出せず、
前記基本判別処理において前記正常タッチ逸脱状態ではない判定した場合、前記第1判別処理または前記第2判別処理を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載のタッチ検出装置。
【請求項4】
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記第2判別処理を実行し、前記第2判別処理において前記第2状態であると判定した場合、タッチを検出せず、
前記第2判別処理において前記第2状態ではないと判定した場合、前記基本判別処理を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載のタッチ検出装置。
【請求項5】
前記ポイントの静電容量に変化を与える環境ノイズの大きさを検出する環境ノイズ検出部を更に備え、
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記環境ノイズ検出部により検出された環境ノイズの大きさが予め定められた環境ノイズ閾値以上か否かを判別する環境ノイズ関連判別処理を実行し、
前記環境ノイズ関連判別処理において前記環境ノイズ閾値以上ではないと判定した場合にのみ、前記第1判別処理または前記第2判別処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチ検出装置。
【請求項6】
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記第1判別処理、前記第2判別処理および前記環境ノイズ関連判別処理とは別に、検出値が静電ノイズ閾値(ただし前記静電ノイズ閾値>前記タッチ検出閾値)以上であるか或いは検出値が分布特定用閾値以上である前記ポイントの分布が特定の態様である正常タッチ逸脱状態であるか否かを判別する基本判別処理を実行し、
前記基本判別処理において前記正常タッチ逸脱状態であると判定した場合は、タッチを検出しない
ことを特徴とする請求項5に記載のタッチ検出装置。
【請求項7】
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記基本判別処理を実行し、前記基本判別処理において前記正常タッチ逸脱状態であると判定した場合、タッチを検出せず、
前記基本判別処理において前記正常タッチ逸脱状態ではないと判定した場合、前記環境ノイズ関連判別処理を実行し、前記環境ノイズ関連判別処理において前記環境ノイズ閾値以上であると判定した場合、タッチを検出せず、
前記環境ノイズ関連判別処理において前記環境ノイズ閾値以上はないと判定した場合、前記第1判別処理または前記第2判別処理を実行する
ことを特徴とする請求項6に記載のタッチ検出装置。
【請求項8】
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記環境ノイズ関連判別処理を実行し、前記環境ノイズ関連判別処理において前記環境ノイズ閾値以上であると判定した場合、タッチを検出せず、
前記環境ノイズ関連判別処理において前記環境ノイズ閾値以上はないと判定した場合、前記基本判別処理を実行し、前記基本判別処理において前記正常タッチ逸脱状態であると判定した場合、タッチを検出せず、
前記基本判別処理において前記正常タッチ逸脱状態ではないと判定した場合、前記第1判別処理または前記第2判別処理を実行する
ことを特徴とする請求項6に記載のタッチ検出装置。
【請求項9】
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記環境ノイズ関連判別処理を実行し、前記環境ノイズ関連判別処理において前記環境ノイズ閾値以上であると判定した場合、タッチを検出せず、
前記環境ノイズ関連判別処理において前記環境ノイズ閾値以上はないと判定した場合、前記第2判別処理を実行し、前記第2判別処理において前記第2状態であると判定した場合、タッチを検出せず、
前記第2判別処理において前記第2状態ではないと判定した場合、前記基本判別処理を実行する
ことを特徴とする請求項6に記載のタッチ検出装置。
【請求項10】
前記タッチ検出部は、
前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記タッチ検出閾値以上となったタイミングよりも後のタイミングにおいて、前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が前記タッチ検出閾値以上であるか或いは基準値のマイナス側に設定されたマイナス側閾値以下であるタッチ継続状態であるか否かを判別するタッチ継続判別処理を実行し、
前記タッチ継続判別処理において前記タッチ継続状態であると判定した場合にのみ、前記第1判別処理または前記第2判別処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチ検出装置。
【請求項11】
静電容量式のタッチパネルと、
前記タッチパネルのタッチ面に点在する複数のポイントのそれぞれについて、静電容量に対応する検出値を検出する検出値検出部、および、一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が、タッチを検出するためのタッチ検出閾値を下回っていた状態から前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出される検出値が、時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否かを判別する第1判別処理、または、前記一のポイントの周辺の前記ポイントについて前記検出値検出部により同じタイミングで検出された検出値が、前記一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第2状態であるか否かを判別する第2判別処理を実行し、前記第1判別処理において前記第1状態であると判定した場合または前記第2判別処理において前記第2状態であると判定した場合、タッチを検出しないタッチ検出部を有するタッチ検出装置とを備える
ことを特徴とするタッチパネルユニット。
【請求項12】
静電容量式のタッチパネルのタッチ面に点在する複数のポイントのそれぞれについて、静電容量に対応する検出値を検出する検出値検出部を備えるタッチ検出装置によるタッチ検出方法であって、
前記タッチ検出装置のタッチ検出部が、一のポイントについて前記検出値検出部により検出された検出値が、タッチを検出するためのタッチ検出閾値を下回っていた状態から前記タッチ検出閾値以上となった場合、前記一のポイントについて前記検出値検出部により検出される検出値が、時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否かを判別する第1判別処理、または、前記一のポイントの周辺の前記ポイントについて前記検出値検出部により同じタイミングで検出された検出値が、前記一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第2状態であるか否かを判別する第2判別処理を実行するステップと、
前記タッチ検出装置の前記タッチ検出部が、前記第1判別処理において前記第1状態であると判定した場合または前記第2判別処理において前記第2状態であると判定した場合、タッチを検出しないステップとを含む
ことを特徴とするタッチ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ検出装置、タッチパネルおよびタッチ検出方法に関し、特に静電容量式のタッチパネルに対するタッチを検出するタッチ検出装置、当該タッチパネルと当該タッチ検出装置とを備えるタッチパネルユニット、および、当該タッチ検出装置によるタッチ検出方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
現在、静電容量式のタッチパネルが広く普及している。静電容量式のタッチパネルは、タッチ面に点在するポイントの静電容量の変化に基づいてタッチを検出する。このため各ポイントの静電容量に変化を与える静電ノイズが発生した場合には、静電ノイズに起因して誤検出が発生し得るという特性がある。そして従来、静電容量式のタッチパネルに関して、静電ノイズに起因する誤検出を抑制するための技術が提案されている。
【0003】
例えば静電ノイズによる誤検出を抑制する既存の技術として、以下の技術が存在する。すなわち一のポイントにおける静電容量に基づく検出値がタッチ検出閾値以上となったときに、この時点でタッチを検出するのではなく、検出値が別の閾値(タッチ検出値を上回る閾値であって、通常のタッチに係る検出値では超えない可能性が高いものの、静電ノイズの場合には超える可能性があるような閾値とされる)以上ではないかどうかを判別し、当該別の閾値以上の場合はタッチをしない技術が存在する。また一のポイントの検出値がタッチ検出閾値以上となったときに、検出値が一定以上であるポイントの分布が特定の態様(通常のタッチではならない可能性が高いものの、静電ノイズの場合にはなる可能性があるような態様とされる)であるか否かを判別し、特定の態様である場合はタッチを検出しない技術が存在する。
【0004】
また例えば特許文献1には、静電ノイズに起因する誤検出を抑制するための技術として以下の技術が開示されている。すなわち特許文献1のタッチパネルコントローラ17は、静電容量式のタッチパネル6の各ポイントにおける静電容量の変化に応じた検出値(容量値)を検出可能に構成されている。そしてタッチパネルコントローラ17は、あるポイントにおいて検出値が静電容量閾値C1以上となったときに、この時点ではタッチを検出せず、検出値が静電容量閾値C1以上となってからの経過時間の計測を開始し、所定時間以内に検出値が静電容量閾値C2(>静電容量閾値C1)となった場合には誤タッチとみなし、所定時間以降に検出値が静電容量閾値C2(>静電容量閾値C1)となった場合にのみタッチを検出する。この特許文献1の技術によれば、検出値が静電容量閾値C1となった原因が正常なタッチによる場合と静電ノイズによる場合とで、検出値が静電容量閾値C1となった後の検出値の変化に違いがあることを踏まえ、静電ノイズによる誤検出を抑制することが可能である。
【0005】
なお特許文献2には、静電容量の変化の検出に加え、タッチパネルに加わる加速度の変化を検出し、加速度の変化を加味してタッチを検出することによって誤検出を抑制する技術が記載されている。また特許文献3には、タッチパネルと液晶表示装置とを近接させて使用した際のノイズによる誤動作を防止するため、液晶表示パネル11にノイズ検出用のノイズ検出用配線NDLを形成し、ノイズ検出用配線NDLの検出結果を反映してタッチの位置の検出を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-077755号公報
【特許文献2】特開2013-109636号公報
【特許文献3】特開2011-180401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、静電容量式のタッチパネルのタッチ検出に関し、従来から静電ノイズによる誤検出を抑制する技術が提案されているものの、本分野ではより高い精度で静電ノイズによる誤検出を抑制することが常に求められており、この要求を満たすべく、精度の向上に寄与し得る従来にない新たな手法の提供が求められている。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、静電容量式のタッチパネルのタッチ検出に関して、より高い精度で誤検出を抑制することに寄与し得る新たな手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明は、タッチパネルのタッチ面の一のポイントについて検出された検出値が、タッチを検出するためのタッチ検出閾値を下回っていた状態からタッチ検出閾値以上となった場合、当該一のポイントについて検出される検出値が、時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否かを判別する処理、または、当該一のポイントの周辺のポイントについて検出された検出値の分布が、一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する分布となっている第2状態であるか否かを判別する処理を実行し、第1状態または第2状態であると判定した場合、タッチを検出しないようにしている。
【発明の効果】
【0010】
タッチを検出する最も単純な手法は、一のポイントにおける検出値(静電容量に対応する値)が、予め定められたタッチ検出閾値以上となったときにタッチを検出する方法である。そして発明者らは、静電ノイズに起因して一のポイントの検出値がタッチ検出閾値以上となった場合、以下の現象が生じることを見出した。すなわち当該一のポイントにおける検出値が時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化すること、および、当該一のポイントの周辺のポイントの検出値の分布が、当該一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する分布となることを発明者らは見出した。
【0011】
以上を踏まえ上記のように構成した本発明によれば、一のポイントの検出値がタッチ検出閾値以上となった場合に、当該一のポイントの検出値が時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否か、または、当該一のポイントの周辺のポイントの検出値の分布が、当該一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する分布となっている第2状態であるか否かが判別され、第1状態または第2状態である場合には、タッチを検出しない。このため、静電ノイズが各ポイントの検出値に与える影響の特性を反映した的確な方法で誤検出を抑制することができる。すなわち本発明は、静電容量式のタッチパネルのタッチ検出に関して、より高い精度で誤検出を抑制することに寄与し得る新たな手法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る表示入力装置の正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るタッチ検出装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】検出値フレームデータの内容を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るタッチ検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図8】注目ポイントの検出値の推移を示す図である。
【
図9】注目ポイントの検出値の推移を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るタッチ検出装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るタッチ検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】注目ポイントの周辺のポイントの検出値を示す図である。
【
図13】注目ポイントの周辺のポイントの検出値を示す図である。
【
図14】本発明の第2実施形態の第1変形例に係るタッチ検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の第3実施形態に係るタッチ検出装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係るタッチ検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の第3実施形態の第1変形例に係るタッチ検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図18】本発明の第3実施形態の第2変形例に係るタッチ検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図19】本発明の第3実施形態の第3変形例に係るタッチ検出装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る表示入力装置1の正面図である。表示入力装置1は、液晶ディスプレイや有機ELパネル等の表示パネル2と、この表示パネル2に重ねて配置されたタッチパネル3とを備える。タッチパネル3にはタッチ面4が設けられている。表示入力装置1においてタッチ面4の下方には、電源スイッチなどの各種スイッチが設けられたスイッチパネル5が設けられている。表示入力装置1は、表示パネル2に映像を表示する機能、および、ユーザのタッチ面4へのタッチによる入力を受け付ける機能を少なくとも備えている。本実施形態に係る表示入力装置1は、車両のインストルメンタルパネルの中央部に設けられるものであり、タッチ面4へのタッチは搭乗者が指、その他の指示体により行うことが想定されている。
【0014】
以下の説明では、タッチ面4に関して、
図1中で示すように表示入力装置1を正面視したとき左に向かう向きを「左」とし、正面視したときに右に向かう向きを「右」とし、正面視したときに上に向かう向きを「上」とし、正面視したときに下に向かう向きを「下」とする。
【0015】
図2は、タッチ検出装置6の機能構成例を関連する要素と共に示すブロック図である。
図2で示すように、タッチ検出装置6とタッチパネル3とによりタッチパネルユニット7が構成される。
図2で示すようにタッチ検出装置6は機能構成として、検出値検出部10およびタッチ検出部11を備えている。上各機能ブロック10、11は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記機能ブロック10、11は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。以上のことは他の実施形態の機能ブロックについても同じである。
【0016】
検出値検出部10は、タッチパネル3のタッチ面4に点在する複数のポイントPのそれぞれについて、静電容量に対応する検出値を検出する。以下、検出値検出部10の処理について詳述する。
【0017】
図3は、タッチ面4の一部を説明に適した態様で拡大して示す図である。本実施形態に係るタッチパネル3は、X電極とY電極とが互いに交差するように配列された相互容量方式による静電容量式のタッチパネル3である。
図3で示すようにタッチ面4には、容量結合するX電極とY電極との対(以下、単に「電極」という)ごとにポイントPがマトリックス状に点在している。タッチパネル3は、各ポイントPについて、電極の静電容量に対応する検出信号を所定周期で検出値検出部10に出力する。
【0018】
検出値検出部10は、周期タイミング(周期ごとに訪れるタイミング)ごとに以下の処理を説明する。まず検出値検出部10は、各ポイントPの検出信号をタッチパネル3から入力する。次いで検出値検出部10は、各ポイントPについて、入力した検出信号に基づいて静電容量の変化量を示す検出値(静電容量に対応する検出値)を検出する。検出値検出部10が検出する検出値は、基準値(静電容量のベースライン)を中心としてプラス側の値とマイナス側の値をとり得る。本実施形態では検出値の単位を便宜上、「値」とし、検出値の具体的な値を例えば「0値」や「50値」のように表現する。また説明の単純化のため、検出値は「0値」を基準値として「-100値」~「100値」の範囲で値をとるものとする。つまり検出値検出部10は、各ポイントPについて、「-100値」~「100値」の範囲で値をとり得る検出値を検出する。
【0019】
全てのポイントPについて検出値を検出した後、検出値検出部10は、検出した各ポイントPについての検出値に基づいてバッファ12に記憶された検出値フレームデータ13を更新する。バッファ12はRAM等のワークエリアに形成された一次記憶領域である。検出値フレームデータ13とは、各ポイントPについて、検出値検出部10により検出された検出値が対応づけて登録されたデータである。
【0020】
図4は、検出値フレームデータ13(一部)の内容を、説明に適した態様で模式的に示す図である。
図4では、検出値フレームデータ13において、例えばポイントP-1には「4値」が対応づけて登録されており、ポイントP-2には「5値」が対応づけて登録されていることが示されている。以下の説明で用いる図では、ポイントPごとの検出値を示す場合に、
図4と同じ方法で示す場合がある。
【0021】
以上が周期タイミングで検出値検出部10が実行する処理である。検出値検出部10が周期タイミングごとに以上の処理を行う結果、検出値フレームデータ13において各ポイントPと対応付けられた検出値が、直近で検出値検出部10により検出された検出値により所定周期で更新される。
【0022】
タッチ検出部11は、一のポイントPについて検出値検出部10により検出された検出値が、タッチを検出するためのタッチ検出閾値を下回っていた状態からタッチ検出閾値以上となった場合、一のポイントPについて検出値検出部10により検出される検出値が、時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否かを判別する第1判別処理を実行する。そしてタッチ検出部11は、第1判別処理において第1状態であると判定した場合、タッチを検出しない。
【0023】
以下、フローチャートを用いてタッチ検出部11の動作例について詳細に説明する。
図5のフローチャートFAは、タッチ検出装置6によるタッチ検出方法を示すフローチャートであり、特にタッチ検出部11がある周期タイミングが到来したあとに実行する処理を示している。すなわち、ある周期タイミングが到来し、検出値検出部10により検出値フレームデータ13が更新された後に、タッチ検出部11は、フローチャートFAで示す処理を実行する。以下、フローチャートFAの処理の開始タイミングを周期タイミングT0とし、周期タイミングT0を起点として1周期経るごとに周期タイミングT1、T2・・・のように表現する。また説明の便宜上、周期タイミングT0の1つ前の周期タイミングでは、検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPは1つも存在しない状態(=全てのポイントPについて検出値がタッチ検出閾値を下回っている状態)であるものとする。
【0024】
図5で示すように、タッチ検出装置6のタッチ検出部11は、バッファ12に展開された検出値フレームデータ13(直近で検出値検出部10により更新された検出値フレームデータ13)を参照する(ステップSA1)。次いでタッチ検出部11は、検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPが1つ以上存在するか否かを判別する(ステップSA2)。上述したように検出値フレームデータ13では、ポイントPごとに直近で検出値検出部10により検出された検出値が対応づけて登録されているため、タッチ検出部11は、検出値フレームデータ13を参照することによって各ポイントPの検出値を認識することができる。
【0025】
タッチ検出閾値は、ユーザが指示体(例えば指)により通常の方法でタッチ面4をタッチしたときに、タッチされたポイントPの検出値がこのタッチ検出閾値以上となるような値とされる。ただしユーザが指示体でタッチした場合だけではなく、タッチ面4に対して静電ノイズが発生した場合においても静電ノイズが影響するポイントPの検出値がタッチ検出閾値以上となることがある。
【0026】
検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPが1つも存在しないと判定した場合(ステップSA2:NO)、タッチ検出部11は、タッチを検出せず(ステップSA3)、処理を終了する。この場合、次の周期タイミングが到来したときに、タッチ検出部11は、再びステップSA1の処理を実行する。一方、検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPが1つ以上存在すると判定した場合(ステップSA2:YES)、タッチ検出部11は、検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPのうち、最も検出値が大きいポイントPを「注目ポイントP-A」として決定する(ステップSA4)。検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPが1つのときは、そのポイントPが注目ポイントP-Aに決定される。
【0027】
なお本実施形態では、複数のポイントPについて検出値がタッチ検出閾値以上となっている場合は、最も検出値が大きなポイントPを注目ポイントP-Aとする構成であるが、他の方法で注目ポイントP-Aを決定する構成でもよい。またタッチ検出部11が、所定のルールに従って2つ以上のポイントPを注目ポイントP-Aとして決定し、複数の注目ポイントP-AのそれぞれについてステップSA5以下の処理を実行する構成でもよい。
【0028】
注目ポイントP-Aを決定した後、タッチ検出部11は、基本判別処理を実行する。詳述するとタッチ検出部11は、注目ポイントP-Aの検出値が静電ノイズ閾値(>タッチ検出閾値)以上であるか否かを判別する(ステップSA5)。静電ノイズ閾値とは、ユーザが指示体により通常の方法でタッチ面4をタッチしたときには、タッチされたポイントPの検出値がこの静電ノイズ閾値以上とならない可能性が非常に高いものの、タッチ面4に対して或いはタッチ面4の近傍において静電ノイズが発生した場合には、静電ノイズが影響するポイントPの検出値がこの静電ノイズ閾値以上となる可能性があるような値とされる。
【0029】
注目ポイントP-Aの検出値が静電ノイズ閾値以上であると判定した場合(ステップSA5:YES)、タッチ検出部11は、タッチを検出せず(ステップSA3)、処理を終了する。注目ポイントP-Aの検出値がタッチ検出閾値以上となった原因が、静電ノイズ発生したことである可能性が高いからである。一方、注目ポイントP-Aの検出値が静電ノイズ閾値以上ではない判定した場合(ステップSA5:NO)、タッチ検出部11は、検出値が分布特定用閾値(≦タッチ検出閾値)以上であるポイントPの分布が特定態様であるか否かを判別する(ステップSA6)。以下、検出値が分布特定用閾値以上であるポイントPの分布を特に、「基本判別用分布」という。
【0030】
ステップSA6は、基本判別用分布の態様が、ユーザが指示体により通常の方法でタッチ面4をタッチしたときに出現する分布と明らかに異なるときに、タッチが検出されてしまうことを防止するために行われる。これを踏まえ、特定態様は、静電ノイズにより出現する可能性がある分布である一方で、ユーザが指示体により通常の方法でタッチ面4をタッチしたときに出現する分布とは明確に相違する分布とされる。本実施形態では、特定態様としてピンポイント態様と、ライン態様とが設定されている。
【0031】
ピンポイント態様は、検出値が分布特定用閾値以上のポイントPが1つだけ(つまり注目ポイントP-Aだけ)の分布である。このような分布は、ユーザの通常のタッチに由来するのではなく、静電ノイズに由来して発生する可能性が非常に高いことが確かめられている。例えばタッチ検出閾値が「70値」であり、分布特定用閾値が「50値」であるとする。この場合において
図6(A)で示す基本判別用分布(ただし
図6(A)で検出値が示されたポイントP以外は考慮しないものとする。このことは、後述する同様の図面においても同じ)は、ピンポイント態様である。
図6(A)で示す基本判別用分布は、注目ポイントP-A(検出値:72値)のみから構成される分布だからである。一方、
図6(B)で示す基本判別用分布は、ピンポイント状態ではない。基本判別用分布は、注目ポイントP-1だけではなく、他の複数のポイントPを含んで構成される分布だからである。
【0032】
ライン態様は、検出値が分布特定用閾値以上のポイントPが一定数以上、1つのライン(左右方向に延在する1つの行)上に並んだ状態である。本実施形態では、検出値が分布特定用閾値以上のポイントPが100個以上、1つのライン上に並んだ状態がライン態様の1つとされる。このような状態は、これはユーザの通常のタッチに由来するのではなく、静電ノイズに由来している可能性が非常に高いことが確かめられている。例えば、タッチ検出閾値が「70値」であり、分布特定用閾値が「50値」であるとする。この場合において
図7で示す基本判別用分布は、ライン態様である。検出値が分布特定用閾値(=50値)以上のポイントPが100個以上、1つのライン上に並んだ状態だからである。
【0033】
なお、特定態様は、ピンポイント態様およびライン態様に限られるものではない。またライン態様も例示した態様に限られるものではない。すなわち特定態様は、静電ノイズにより出現する可能性がある分布である一方で、ユーザが指示体により通常の方法でタッチ面4をタッチしたときに出現する分布とは明確に相違する分布であればよい。
【0034】
図5のフローチャートFAのステップSA6において基本判別用分布(検出値が分布特定用閾値以上であるポイントPの分布)が特定態様であると判定した場合(ステップSA6:YES)、タッチ検出部11は、タッチを検出せず(ステップSA3)、処理を終了する。一方、ステップSA6において基本判別用分布が特定態様ではないと判定した場合(ステップSA6:NO)、タッチ検出部11は、処理手順をステップSA7に移行する。
【0035】
ここで、ステップSA5の処理とステップSA6の処理との組み合わせが「基本判別処理」に相当する。この基本判別処理においてタッチ検出部11は、「注目ポイントP-Aの検出値が静電ノイズ閾値(>タッチ検出閾値)以上であるか、或いは、基本判別用分布(検出値が分布特定用閾値(≦タッチ検出閾値)以上であるポイントPの分布)が特定態様である状態」(以下、「正常タッチ逸脱状態」という)であるか否かを判別し、正常タッチ逸脱状態であると判定した場合は、タッチを検出しない。一方、タッチ検出部11は、注目ポイントP-Aの検出値が静電ノイズ閾値以上ではなく、かつ、基本判別用分布が特定態様ではない場合(=正常タッチ逸脱状態ではない場合)、処理手順を次のステップへ移行する。
【0036】
ステップSA7においてタッチ検出部11は、以下の処理を実行する。すなわちタッチ検出部11は、周期タイミングT0の5周期後の周期タイミングT5が到来するまで待機し、周期タイミングT5が到来したタイミングで、注目ポイントP-Aの検出値(つまり周期タイミングT5において注目ポイントP-Aについて検出値検出部10により検出された検出値)が、タッチ検出閾値以上であるか、或いは、マイナス側閾値以下であるかを判別する(ステップSA7)。
【0037】
ここで、本実施形態では、静電気を帯びていない或いは限定的にしか帯びていない指示体(例えば、指)によって通常の方法でタッチ面4がタッチされた場合、周期タイミングT0を起点として少なくとも5周期の間、注目ポイントP-Aの検出値がタッチ検出閾値以上である状態が継続することが確認されている。これを踏まえステップSA7において、「注目ポイントP-Aの検出値が、タッチ検出閾値以上か否かを判別する」ことの意義は、静電気を帯びていない指示体によって通常の方法でタッチ面4がタッチされたかどうか(厳密に言えばタッチされた可能性が高いかどうか)を判別することにある。
【0038】
また静電気を帯びた指示体によって通常の方法でタッチ面4がタッチされた場合、周期タイミングT5では、注目ポイントP-Aの検出値がタッチ検出閾値以上であるケースもあれば、注目ポイントP-Aの検出値がマイナス側の値となっており、しかもマイナス側に設定されたマイナス側閾値以下となるケースもあることが確認されている。これを踏まえステップSA7において、「注目ポイントP-Aの検出値が、マイナス側閾値以下であるか否かを判別する」ことの意義は、静電気を帯びた指示体によって通常の方法でタッチ面4がタッチされたかどうか(厳密に言えばタッチされた可能性が高いかどうか)を判別することにある。
【0039】
以下、ステップSA7の処理は「タッチ継続判別処理」に相当する。以下では「注目ポイントP-Aの検出値が、タッチ検出閾値以上であるか、或いは、マイナス側閾値以下である状態」を、「タッチ継続状態」という。タッチ継続判別処理においてタッチ検出部11は、タッチ継続状態であるか否かを判別し、タッチ継続判別処理においてタッチ継続状態であると判定した場合にのみ、後述する第1判別処理を実行する。
【0040】
なお本実施形態では、周期タイミングT0の5周期後のタイミングで、タッチ検出部11がステップSA7の処理(タッチ継続判別処理)を実行する構成であるが、これはあくまでも一例である。周期タイミングT0から何周期後のタイミングでタッチ継続判別処理を実行するかは、1周期の実際の時間や、ステップSA5、6の基本判別処理に要する時間等を考慮して、事前のシミュレーションやテストの結果に基づいて適切に定められる。またマイナス側閾値の具体的な値についても、正常にタッチが行われている可能性があるか否かを判定できるようにするとの観点の下、事前のシミュレーションやテストの結果に基づいて適切に定められる。
【0041】
ステップSA7において注目ポイントP-Aの検出値がタッチ検出閾値以上ではなく、かつ、マイナス側閾値以下でもないと判定した場合(つまりタッチ継続状態ではないと判定した場合)(ステップSA7:NO)、タッチ検出部11は、タッチを検出せず(ステップSA3)、処理を終了する。一方、ステップSA7において注目ポイントP-Aの検出値がタッチ検出閾値以上であるか、または、マイナス側閾値以下であると判定した場合(つまりタッチ継続状態であると判定した場合)(ステップSA7:YES)、タッチ検出部11は、注目ポイントP-Aの検出値の推移の監視(以下、「注目検出値推移監視」という)を開始する(ステップSA8)。このステップSA8においてタッチ検出部11は、周期数のカウントを開始する。ステップSA8でカウントを開始した後、タッチ検出部11は、ループを抜けるまでの間、所定周期でステップSA9およびステップSA10の処理を繰り返し実行する。以下、ステップSA8の処理のタイミングを監視タイミングM0とし、監視タイミングM0を起点として1周期経るごとに、監視タイミングM1、M2のように表現する。
【0042】
ステップSA9においてタッチ検出部11は、監視期間が終了したか否かを判別する(ステップSA9)。ステップSA9においてタッチ検出部11は、ステップSA8でカウントを開始した周期数が、予め定められた監視周期数(本実施形態では、12周期とする)に至った場合、監視期間が終了したと判定する。監視期間が終了したと判定した場合(ステップSA9:YES)、タッチ検出部11は、タッチを検出し(ステップSA11)、処理を終了する。タッチを検出するとは、ユーザによりタッチが行われたと判定することを意味する。つまり本実施形態ではタッチ検出部11は、監視期間が経過する前に、第1状態とならなかった場合に、タッチを検出する。
【0043】
詳細は省略するが、タッチ検出部11によりタッチが検出されると、タッチ位置の検出や、タッチ位置に対応するアクション(例えば、タッチ位置が特定のアイコンに属する場合に、そのアイコンに対応する予め決められた処理を実行するというアクション)がタッチ検出装置6或いはタッチ検出装置6に接続された装置により実行される。
【0044】
一方、監視期間が終了していないと判定した場合(ステップSA9:NO)、タッチ検出部11は、「注目ポイントP-Aの検出値が時間の経過に応じてプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態」となったか否かを判定する(ステップSA10)。以下、ステップSA10の処理について詳述する。
【0045】
本実施形態において第1状態とは、以下の状態を意味する。すなわち、値がプラスである第1上側閾値(<タッチ検出閾値)と、値がマイナスである第1下側閾値(>マイナス側閾値)とが予め定められている。そして、第1状態とは、以下の何れかの状態であることを意味する。
(1)監視タイミングM0において第1上側閾値を上回る注目ポイントP-Aの検出値が、監視期間が終了する前に時間の経過に応じて、一旦、第1下側閾値以下となり、その後に第1上側閾値以上となった状態(以下「第1-1状態」という)
(2)監視タイミングM0において第1下側閾値を下回る注目ポイントP-Aの検出値が、監視期間が終了する前に時間の経過に応じて、一旦、第1上側閾値以上となり、その後に第1下限閾値以下となった状態(以下「第1-2状態」という)
【0046】
図8は、第1-1状態を説明するため、監視タイミングM0を起点として、時間の経過に伴う注目ポイントP-Aの検出値の推移の一例を示す図である。
図8において横軸は時間の経過を示し、縦軸は検出値を示している。
図8の例において、第1上側閾値は「10値」、第1下側閾値は「-10値」と設定されているものとする。この点は後述する
図9においても同様である。
【0047】
図8では、監視タイミングM0において注目ポイントP-Aの検出値は第1上側閾値以上である。そして監視タイミングM0から4周期後の監視タイミングM4において注目ポイントP-Aの検出値は、第1下側閾値以下となっている。その後、監視タイミングM4の3周期後の監視タイミングM7において注目ポイントP-Aの検出値は、第1上側閾値以上となっている。つまり
図8の例では、監視タイミングM0において第1上側閾値を上回る注目ポイントP-Aの検出値が、監視期間が終了する前に時間の経過に応じて、一旦、監視タイミングM4において第1下側閾値以下となり、その後に監視タイミングM7において第1上側閾値以上となっており、第1-1状態が成立している。
図8の例の場合、タッチ検出部11は、監視タイミングM7で行われるステップSA10の処理において、第1状態となったと判定する。
【0048】
図9は、第1-2状態を説明するため、監視タイミングM0を起点として、時間の経過に伴う注目ポイントP-Aの検出値の推移の一例を示す図である。
図9では、監視タイミングM0において注目ポイントP-Aの検出値は第1下側閾値以下である。そして監視タイミングM0から3周期後の監視タイミングM3において注目ポイントP-Aの検出値は、第1上側閾値以上となっている。その後、監視タイミングM3の2周期後の監視タイミングM5において注目ポイントP-Aの検出値は、第1下側閾値以下となっている。つまり
図9の例では、監視タイミングM0において第1下側閾値を下回る注目ポイントP-Aの検出値が、監視期間が終了する前に時間の経過に応じて、一旦、監視タイミングM3において第1上側閾値以上となり、その後に監視タイミングM5において第1下側閾値以下となっており、第1-2状態が成立している。
図9の例の場合、タッチ検出部11は、監視タイミングM5で行われるステップSA10の処理において、第1状態となったと判定する。
【0049】
ステップSA10において第1状態(第1-1状態または第1-2状態の何れか)となっていないと判定した場合(ステップSA10:NO)、タッチ検出部11は、処理手順をステップSA9に戻し、次の周期でステップSA9の処理を実行する。一方、ステップSA10において第1状態(第1-1状態または第1-2状態)が成立したと判定した場合(ステップSA10:YES)、タッチ検出部11は、タッチを検出せず(ステップSA3)、処理を終了する。
【0050】
ステップSA8~SA11の処理が「第1判別処理」に相当する。上述のとおり、第1判別処理においてタッチ検出部11は、第1状態であるか否か(監視期間中に第1状態となったか否か)を判別し、第1状態であると判別した場合は、タッチを検出しない。
【0051】
以上の通り、本実施形態に係るタッチ検出装置6は、タッチパネル3のタッチ面4の一のポイントPについて検出された検出値が、タッチを検出するためのタッチ検出閾値を下回っていた状態からタッチ検出閾値以上となった場合、当該一のポイントPについて検出される検出値が、時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否かを判別する第1判別処理を実行し、第1状態であると判定した場合、タッチを検出しない。これにより以下の効果を奏する。
【0052】
発明者らは、静電ノイズに起因して一のポイントPの検出値がタッチ検出閾値以上となった場合、当該一のポイントPにおける検出値が時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化することを見出した。以上を踏まえ本実施形態によれば、一のポイントPの検出値がタッチ検出閾値以上となった場合に、当該一のポイントPの検出値が時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第1状態であるか否かが判別され、第1状態である場合には、タッチを検出しない。このため、静電ノイズが各ポイントPの検出値に与える影響の特性を反映した的確な方法で誤検出を抑制することができる。
【0053】
なお本実施形態では、第1状態の内容について具体的に例示したが、第1状態の内容は例示したものに限定されない。すなわち、第1状態は、ポイントPの検出値が時間の経過に応じて基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化するような状態であればよい。また監視期間や、第1上側閾値、第1下側閾値の具体的な値も、例示した値に限定されるものではない。
【0054】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明において第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図10は、本実施形態に係るタッチ検出装置6Aの機能構成例を関連する要素と共に示すブロック図である。
図10で示すようにタッチ検出装置6Aとタッチパネル3とによりタッチパネルユニット7Aが構成される。
図11で示すようにタッチ検出装置6Aは、タッチ検出部11に代えてタッチ検出部11Aを備えている。
【0055】
本実施形態に係るタッチ検出部11Aは、一のポイントPについて検出値検出部10により検出された検出値が、タッチを検出するためのタッチ検出閾値を下回っていた状態からタッチ検出閾値以上となった場合、一のポイントPの周辺のポイントPについて検出値検出部10により同じタイミングで検出された検出値が、一のポイントPから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する第2状態であるか否かを判別する第2判別処理を実行し、第2状態であると判定した場合、タッチを検出しない。以下、タッチ検出部11Aの動作例についてフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0056】
図11のフローチャートFBは、本実施形態に係るタッチ検出装置6Aによるタッチ検出方法を示すフローチャートであり、特にタッチ検出部11Aの処理を示している。本実施形態に係るタッチ検出部11Aは、
図5のフローチャートFAで示す処理に代えて、
図11のフローチャートFBで示す処理を実行する。
図5と
図11との比較で明らかな通り、タッチ検出部11Aは、第1実施形態に係る第1判別処理に代えて第2判別処理を実行する。以下、フローチャートFBを利用して主に第2判別処理を実行するときのタッチ検出部11Aの処理について説明する。
【0057】
図11を参照し、ステップSA7において注目ポイントP-Aの検出値がタッチ検出閾値以上であるか、または、マイナス側閾値以下であると判定した場合(つまりタッチ継続状態であると判定した場合)、タッチ検出部11Aは、以下の処理を実行する。すなわちタッチ検出部11Aは、バッファ12の検出値フレームデータ13を参照し、「注目ポイントP-Aの周辺のポイントPの検出値が、注目ポイントP-Aから外側に向かってプラス側とマイナス側とに交互に変化する第2状態」であるか否かを判定する(ステップSB1)。以下、ステップSB1の処理について詳述する。以下ではステップSB1の処理タイミングを観測タイミングK0とし、観測タイミングK0を起点として1周期経るごとに観測タイミングK1、K2・・・のように表現する。
【0058】
本実施形態において第2状態とは、以下の状態を意味する。すなわち、値がプラスである第2上側閾値(<タッチ検出閾値)と、値がマイナスである第2下側閾値(>マイナス側閾値)とが予め定められている。そして第2状態とは、以下の何れかの状態であることを意味する。
(1)観測タイミングK0において注目ポイントP-Aが第2上側閾値を上回る場合において、注目ポイントP-Aを起点として走査向き(後述)に向かって注目ポイントP-Aの周辺のポイントPの検出値の変化を観測したときに、観測上限個数に至る前に、ポイントPの検出値が一旦、第2下側閾値以下となり、その後に第2上限閾値以上となった状態(以下「第2-1状態」という)
(2)観測タイミングK0において注目ポイントP-Aが第2下側閾値を下回る場合において、注目ポイントP-Aを起点として走査向き(後述)に向かって注目ポイントP-Aの周辺のポイントPの検出値の変化を観測したときに、観測上限個数に至る前に、ポイントPの検出値が一旦、第2上側閾値以上となり、その後に第2下限閾値以下となった状態(以下「第2-2状態」という)
【0059】
まず走査向きについて説明する。
図1を参照し、タッチ検出部11Aは、タッチ面4の左右方向の中心線S1に対して、左側の領域に注目ポイントP-Aが存在する場合には、走査向きを「右向き」とし、右側の領域に注目ポイントP-Aが存在する場合には、走査向きを「左向き」とする。なおタッチ検出部11Aは、注目ポイントP-Aが中心線S1上に存在する場合は、走査向きを「右向き」(ただし、左向きでもよい)とする。例えば
図1において、中心線S1に対して左側に存在するポイントP-3が注目ポイントP-Aのときは、矢印Y1で示すように右向きが走査向きとされ、中心線S1に対して右側に存在するポイントP-4が注目ポイントP-Aのときは、矢印Y2で示すように左向きが走査向きとされる。ただし、走査向きの決め方は一例であり、他の方法で定められてもよい。
【0060】
図12は、第2-1状態を説明するため、注目ポイントP-A周辺のポイントPの検出値を示す図である。
図12では、ポイントP-Q0が注目ポイントP-Aであり、ポイントP-Q0を起点として右向き(=走査向き)にポイントP-Q1~ポイントP-Q10が配置されている。
図12の例では、走査向きは「右向き」であり、個数閾値は「10個」であり、第2上側閾値は「10値」であり、第2下側閾値は「-10値」であるとする。このことは、後述する
図13についても同じである。
【0061】
図12において注目ポイントP-Q0の検出値は「72値」である。そして注目ポイントP-Q0から走査向きに向かって検出値は以下の通り変化している。「50値(ポイントP-Q1)」→「-20値(ポイントP-Q2)」→「-30値(ポイントP-Q3)」→「4値(ポイントP-Q4)」→「25値(ポイントP-Q5)」→「40値(ポイントP-Q6)」→「3値(ポイントP-Q7)」→「-5値(ポイントP-Q8)」→「-14値(ポイントP-Q9)」→「6値(ポイントP-Q10)」。従って、
図12の例では、注目ポイントP-Q0を起点として走査向きに向かってポイントPの検出値の変化を観測したときに、観測上限個数(10個)に至る前に、ポイントP-Q2において検出値が一旦、第2下側閾値以下となり、その後にポイントP-Q5において検出値が第2上限閾値以上となっている。従って、
図12で示す状態は、第2-1状態である。
【0062】
図13は、第2-2状態を説明するため、注目ポイントP-A周辺のポイントPの検出値を示す図である。
図13において注目ポイントP-Q0の検出値は「-72値」である。そして注目ポイントP-Q0から走査向きに向かって検出値は以下の通り変化している。「-30値(ポイントP-Q1)」→「0値(ポイントP-Q2)」→「18値(ポイントP-Q3)」→「40値(ポイントP-Q4)」→「21値(ポイントP-Q5)」→「-9値(ポイントP-Q6)」→「-21値(ポイントP-Q7)」→「-8値(ポイントP-Q8)」→「4値(ポイントP-Q9)」→「15値(ポイントP-Q10)」。
図13の例では、注目ポイントP-Q0を起点として走査向きに向かってポイントPの検出値の変化を観測したときに、観測上限個数(10個)に至る前に、ポイントP-Q3において検出値が一旦、第2上側閾値以上となり、その後にポイントP-Q7において検出値が第2下限閾値以下となっている。従って、
図13で示す状態は、第2-2状態である。
【0063】
ステップSB1において第2状態(第2-1状態または第2-2状態)であると判定した場合(ステップSB1:YES)、タッチ検出部11Aは、タッチを検出せず(ステップSA3)、処理を終了する。一方、ステップSB1において第2状態ではないと判定した場合(ステップSB1:NO)、タッチ検出部11Aは、タッチを検出し(ステップSA11)、処理を終了する。
【0064】
ステップSB1の処理は「第2判別処理」に相当する。上述のとおり、第2判別処理においてタッチ検出部11Aは、第2状態であるか否かを判別し、第2状態であると判別した場合は、タッチを検出しない。
【0065】
以上の通り、本実施形態に係るタッチ検出装置6は、タッチパネル3のタッチ面4の注目ポイントP-Aについて検出された検出値が、タッチを検出するためのタッチ検出閾値を下回っていた状態からタッチ検出閾値以上となった場合、注目ポイントP-Aの周辺のポイントPについて検出値検出部10により同じタイミングで検出された検出値が、注目ポイントP-Aから外側に向かってプラス側とマイナス側とに交互に変化する第2状態であるか否かを判別する第2判別処理を実行する。そしてタッチ検出装置6Aは、第2状態であると判定した場合、タッチを検出しない。これにより以下の効果を奏する。
【0066】
発明者らは、静電ノイズに起因して一のポイントPの検出値がタッチ検出閾値以上となった場合、当該一のポイントの周辺のポイントの検出値の分布が、当該一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する分布となることを見出した。これを踏まえ本実施形態によれば、一のポイントPの検出値がタッチ検出閾値以上となった場合に、当該一のポイントの周辺のポイントの検出値の分布が、当該一のポイントから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化する分布となっている第2状態であるか否かが判別され、第2状態である場合には、タッチを検出しない。このため、静電ノイズが各ポイントPの検出値に与える影響の特性を反映した的確な方法で誤検出を抑制することができる。
【0067】
更に本実施形態によれば、第1実施形態と比較して以下の効果を奏する。すなわち第2実施形態では、タッチ検出部11Aは、第2判別処理を実行したタイミングにおける検出値フレームデータ13の内容に基づいて、即座に第2状態であるか否かを判定できる。このため本実施形態によれば、第1実施形態と比較して、より早い段階でタッチを検出し或いは検出しないことが可能である。なお第1実施形態では、タッチ検出部11は、第1状態であることを判定するためには、注目ポイントP-Aの検出値の時間的な変化を監視する必要があり、その分、判定までに時間を要することになる。
【0068】
なお本実施形態では、第2状態の内容について具体的に例示したが、第2状態の内容は例示したものに限定されない。すなわち第2状態は、一のポイントPの周辺のポイントPについて検出値検出部10により同じタイミングで検出された検出値が、前記一のポイントPから外側に向かって基準値に対してプラス側とマイナス側とに交互に変化するような状態であればよい。また走査向きの決め方や、観測上限個数の具体的な値は、例示したものに限定されない。
【0069】
<第2実施形態の第1変形例>
次に第2実施形態の第1変形例について説明する。
図14のフローチャートFCは、本変形例に係るタッチ検出装置6Aによるタッチ検出方法を示すフローチャートであり、特にタッチ検出部11Aが実行する処理を示している。本変形例では、タッチ検出装置6Aのタッチ検出部11Aは、
図11のフローチャートFBで示す処理に代えて、
図14のフローチャートFCで示す処理を実行する。
図14と
図11との比較で明らかな通り、本変形例では、基本判別処理と第2判別処理とが入れ替わっている。本変形例においても第2判別処理が行われることにより、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0070】
更に本変形例によれば、以下の効果を奏する。すなわち、基本判別処理に先立って、第2判別処理が行われる。上述したように、第2判別処理では、処理が行われたタイミングで即座に第2状態であるか否かが判別される。従って第2判別処理においてタッチ検出部11Aによって第2状態であると判別された場合には、基本判別処理が行わることなく、この段階でタッチを検出しないことが決定される。以上を踏まえ、本変形例によれば、第1実施形態や、第2実施形態と比較して、より早い段階でタッチ検出部11Aによりタッチを検出しないことを決定可能である。
【0071】
<第3実施形態>
次に第3実施形態について説明する。以下の第3実施形態の説明において第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図15は、本実施形態に係るタッチ検出装置6Bの機能構成例を関連する要素と共に示すブロック図である。
図16で示すようにタッチ検出装置6Bとタッチパネル3とによりタッチパネルユニット7Bが構成される。
図15で示すようにタッチ検出装置6Bは、タッチ検出部11に代えてタッチ検出部11Bを備えている。
【0072】
図15で示すように、本実施形態に係るタッチ検出装置6Bは、環境ノイズ検出部20を備えている。環境ノイズ検出部20は、環境ノイズセンサ21と接続されており、環境ノイズセンサ21からの入力に基づいて環境ノイズの大きさを検出する。環境ノイズとは、ポイントPの静電容量に変化を与えるノイズのことである。本実施形態では、環境ノイズは数値で表され、値が大きいほど環境ノイズがポイントPの静電容量に悪影響を及ぼしている状況であるものとする。
【0073】
環境ノイズセンサ21は、一例としてタッチパネル3の筐体に設けられた静電ノイズ検出用のセンサである。この場合、例えば環境ノイズセンサ21は、定電圧を印加した1つ以上のコンデンサの静電容量(静電容量は、静電ノイズが発生の度合いに応じて値が変動する)を示す値を環境ノイズ検出部20に出力し、環境ノイズ検出部20は、環境ノイズセンサ21からの入力に基づいて環境ノイズを導出し、検出する。また例えば環境ノイズセンサ21は、タッチパネル3のグランドを変動させるようなノイズを検出するセンサである。以上2つの例を挙げたが、環境ノイズセンサ21は、ポイントPの静電容量に変化を与えるノイズの大きさを導出できる値を出力するセンサであればよい。
【0074】
本実施形態に係るタッチ検出部11Bは、一のポイントPについて検出値検出部10により検出された検出値がタッチ検出閾値以上となった場合、環境ノイズ検出部20により検出された環境ノイズの大きさが予め定められた環境ノイズ閾値以上か否かを判別する環境ノイズ関連判別処理を実行し、環境ノイズ関連判別処理において環境ノイズ閾値以上ではないと判定した場合にのみ、第1判別処理を実行する。以下、タッチ検出部11Bの動作例についてフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0075】
図16のフローチャートFDは、本実施形態に係るタッチ検出装置6Bによるタッチ検出方法を示すフローチャートであり、特にタッチ検出部11Bの処理を示している。本実施形態に係るタッチ検出部11Bは、
図5のフローチャートFAで示す処理に代えて、
図16のフローチャートFDで示す処理を実行する。
図5と
図16との比較で明らかな通り、タッチ検出部11Bは、ステップSA6とステップSA7との間で、ステップSD1の処理を実行する。
【0076】
ステップSD1においてタッチ検出部11Bは、環境ノイズ検出部20により検出された環境ノイズが予め定められた環境ノイズ閾値以上であるか否か判別する。環境ノイズが環境ノイズ閾値以上であるという状況は、タッチ面4上に検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPが出現した場合であっても、これが静電ノイズにより発生した可能性が非常に高いと言える程度に環境ノイズが大きいという状況である。環境ノイズ閾値の値はこのような観点の下、事前のテストやシミュレーションの結果に基づいて定められる。
【0077】
環境ノイズが環境ノイズ閾値以上であると判定した場合(ステップSD1:YES)、タッチ検出部11Bは、タッチを検出しない(ステップSA3)。一方、環境ノイズが環境ノイズ閾値以上ではないと判定した場合(ステップSD1:NO)、タッチ検出部11Bは、処理手順をステップSA7へ移行する。
【0078】
ステップSD1の処理は、環境ノイズ関連判別処理に相当する。本実施形態に係るタッチ検出部11Bは、環境ノイズ関連判別処理において環境ノイズ閾値以上ではないと判定した場合にのみ、第1判別処理を実行する。
【0079】
本実施形態によれば以下の効果を奏する。すなわち、ステップSD1において環境ノイズが環境ノイズ閾値以上であると判定した場合、タッチ検出部11Bは、第1判別処理を実行することなく、タッチを検出しないことを決定する。このため、検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPが出現した場合であっても、その原因が環境ノイズに起因する可能性が非常に高い状況であるときに、タッチ検出部11Bは、第1判別処理を経由することなく迅速にタッチではないと決定することができる。
【0080】
<第3実施形態の第1変形例>
次に第3実施形態の第1変形例について説明する。
図17のフローチャートFEは、本変形例に係るタッチ検出装置6Bによるタッチ検出方法を示すフローチャートであり、特にタッチ検出部11Bが実行する処理を示している。本変形例では、タッチ検出装置6Bのタッチ検出部11Bは、
図16のフローチャートFDで示す処理に代えて、
図17のフローチャートFEで示す処理を実行する。
図17と
図16との比較で明らかな通り、本変形例では、タッチ検出部11Bは、第1判別処理に代えて第2判別処理を実行する。
【0081】
本変形例によれば、第2判別処理に先立って環境ノイズ関連判別処理が行われるため、第3実施形態と同様の効果を奏し、また、所定の場合には第2判別処理が実行されるため、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0082】
<第3実施形態の第2変形例>
次に第3実施形態の第2変形例について説明する。
図18のフローチャートFFは、本変形例に係るタッチ検出装置6Bによるタッチ検出方法を示すフローチャートであり、特にタッチ検出部11Bが実行する処理を示している。本変形例では、タッチ検出装置6Bのタッチ検出部11Bは、
図16のフローチャートFDで示す処理に代えて、
図18のフローチャートFFで示す処理を実行する。
図18と
図16との比較で明らかな通り、本変形例では、タッチ検出部11Bは、基本判別処理と第1判別処理との間で環境ノイズ関連判別処理を実行するのではなく、基本判別処理の前に環境ノイズ関連判別処理を実行する。
【0083】
本変形例によれば、第1判別処理のみならず、基本判別処理よりも前に環境ノイズ関連判別処理が行われる。このため、ステップSD1において環境ノイズが環境ノイズ閾値以上であると判定した場合、タッチ検出部11Bは、基本判別処理および第1判別処理の双方を実行することなく、タッチを検出しないことを決定する。このため、検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPが出現した場合であっても、その原因が環境ノイズに起因する可能性が非常に状況であるときに、タッチ検出部11Bは、基本判別処理および第1判別処理を経由することなく、第3実施形態と比較してより迅速にタッチではないと決定することができる。
【0084】
なお第3実施形態の第2変形例について、第3実施形態の第1変形例を応用し、タッチ検出部11Bが、第1判別処理に代えて第2判別処理を実行する構成でもよい。
【0085】
<第3実施形態の第3変形例>
次に第3実施形態の第3変形例について説明する。
図19のフローチャートFGは、本変形例に係るタッチ検出装置6Bによるタッチ検出方法を示すフローチャートであり、特にタッチ検出部11Bが実行する処理を示している。本変形例では、タッチ検出装置6Bのタッチ検出部11Bは、
図16のフローチャートFDで示す処理に代えて、
図19のフローチャートFGで示す処理を実行する。
図19と
図16との比較で明らかな通り、本変形例では、環境ノイズ関連判別処理→第2判別処理→タッチ継続判別処理→基本判別処理の順番で処理を実行する。
【0086】
本変形例によれば、第2判別処理および基本判別処理の前に環境ノイズ関連判別処理が行われる。このため、ステップSD1において環境ノイズが環境ノイズ閾値以上であると判定した場合、タッチ検出部11Bは、第2判別処理および基本判別処理を実行することなく、タッチを検出しないことを決定する。従って、検出値がタッチ検出閾値以上のポイントPが出現した場合であっても、その原因が環境ノイズに起因する可能性が非常に状況であるときに、タッチ検出部11Bは、第2判別処理および基本判別処理を経由することなく迅速に、タッチではないと決定することができる。更に基本判別処理に先立って第2判別処理が実行されるため、第2実施形態の第1変形例で説明した効果と同様の効果を奏することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態(変形例を含む)を説明したが、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0088】
タッチパネル3は、車両に搭載されるものであったが、車両に搭載されていなくてもよいことは当然である。例えばタッチパネル3は、タブレット端末に用いられるものや、券売機やATM等の専用機に用いられるものであってもよい。すなわち上記実施形態で説明した技術は、静電容量式のタッチパネル3を制御するタッチ検出装置6或いはタッチパネル3とタッチ検出装置6とを含むタッチパネルユニット7に広く適用可能である。
【0089】
また第1実施形態のタッチ検出装置6の機能ブロックが実行すると説明した処理の一部または全部を、タッチ検出装置6と外部装置とが協働して実行する構成としてもよい。この場合、タッチ検出装置6と外部装置とが協働して特許請求の範囲の「タッチ検出装置」として機能する。一例として、タッチ検出部11のタッチ検出部11の処理の少なくとも一部を、タッチ検出装置6とネットワークを介して通信可能なクラウドサーバが実行する構成としてもよい。
【0090】
また上述した各実施形態では、タッチ検出装置6をタッチパネル3から独立した装置として説明したが、タッチ検出装置6は、単独で流通し得る独立した装置である必要はない。一例として、タッチパネル3と同じ筐体に実装された回路或いはユニットであってもよい。
【0091】
また、各フローチャートで示す処理について、タッチ継続判別処理を行わない構成でもよい。
【符号の説明】
【0092】
3 タッチパネル
6、6A、6B タッチ検出装置
7、7A、7B タッチパネルユニット
10 検出値検出部
11 タッチ検出部
20 環境ノイズ検出部
P ポイント