(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154631
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】水素冷却装置及び水素供給システム
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20231013BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20231013BHJP
F25B 9/06 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F17C5/06
F25B9/00 301
F25B9/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064081
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】高山 蹊男
(72)【発明者】
【氏名】森宗 歩
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA02
3E172BD03
3E172EA02
3E172EA13
3E172EA23
3E172EA35
3E172EB02
3E172EB17
3E172KA03
3E172KA19
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】環境負荷、構造の複雑化及び操作の複雑化を抑制しつつ、水素充填対象へ流れる水素を所望の冷凍能力で十分に冷却し易くなる水素冷却装置を提供する。
【解決手段】一実施の形態に係る水素冷却装置CD1は、圧縮機11と、冷却器12と、膨張機14と、液冷却熱交換器15とを含み、圧縮機11から流出する自然冷媒である空気が冷却器12、膨張機14及び液冷却熱交換器15をこの順で通過した後、圧縮機11に循環し、圧縮機11と膨張機14とが共通の駆動軸17Aで連結される冷凍サイクル装置10と、液冷却熱交換器15で空気によって冷却される水素冷却液を循環させ、水素冷却液と水素供給対象である燃料電池車FCVへ流れる水素とを熱交換させる水素冷却熱交換器23を含む冷却液循環装置20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、冷却器と、膨張機と、液冷却熱交換器とを含み、前記圧縮機から流出する自然冷媒が前記冷却器、前記膨張機及び前記液冷却熱交換器をこの順で通過した後、前記圧縮機に循環し、前記圧縮機と前記膨張機とが共通の駆動軸で連結される冷凍サイクル装置と、
前記液冷却熱交換器で前記自然冷媒によって冷却される水素冷却液を循環させ、前記水素冷却液と水素供給対象へ流れる水素とを熱交換させる水素冷却熱交換器を含む冷却液循環装置と、を備える、水素冷却装置。
【請求項2】
前記冷却液循環装置は、前記液冷却熱交換器に接続される第1液回路と、前記水素冷却熱交換器を含む第2液回路と、前記第1液回路と前記第2液回路とを接続する液タンクと、を含み、
前記第1液回路及び前記第2液回路はそれぞれ、同じ前記水素冷却液を前記液タンクを介して循環させる、請求項1に記載の水素冷却装置。
【請求項3】
前記冷却液循環装置は、複数の前記水素冷却熱交換器と、複数の前記液冷却熱交換器のいずれかに接続される複数の前記第2液回路と、を含む、請求項2に記載の水素冷却装置。
【請求項4】
前記冷却液循環装置は、前記液冷却熱交換器に接続され、前記自然冷媒により直接的に冷却される作動液を循環させる第1液回路と、前記水素冷却熱交換器を含み、前記水素冷却液を循環させる第2液回路と、前記第1液回路及び前記第2液回路に接続し、前記作動液と前記水素冷却液とを熱交換させる中間熱交換器と、を含む、請求項1に記載の水素冷却装置。
【請求項5】
前記冷却液循環装置は、前記第1液回路における前記液冷却熱交換器の下流側であって前記中間熱交換器の上流側の部分と、前記第1液回路における前記液冷却熱交換器の上流側であって前記中間熱交換器の下流側の部分とを接続するバイパス流路を含む、請求項4に記載の水素冷却装置。
【請求項6】
冷却用熱交換器を含む一つ又は複数の他の冷凍サイクル装置をさらに備え、
前記他の冷凍サイクル装置は、前記冷却用熱交換器により前記水素冷却液を冷却する、請求項1に記載の水素冷却装置。
【請求項7】
水素を充填する水素貯蔵タンクと、
前記水素貯蔵タンクに接続され、前記水素貯蔵タンクから流出する水素を通流させる配管部材と、
前記配管部材に接続されるディスペンサと、
請求項1に記載の水素冷却装置と、を備え、
前記水素冷却液と前記配管部材を通流する水素とを熱交換させる、水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、水素冷却装置及びこれを備える水素供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車の普及とともに、水素ステーションの整備が進められつつある。水素ステーションでは、水素貯蔵タンクに配管部材を介してディスペンサが接続され、ディスペンサから燃料電池車の水素タンクに水素が供給される。水素貯蔵タンクには水素が高圧の状態で貯蔵されている。
【0003】
上記のような水素ステーションで水素を供給する場合、配管部材を通過中の水素の温度が上昇し得る。このような温度上昇は、燃料電池車の水素タンクの温度上昇を招くため、抑制することが求められる。そのため、水素ステーションには、通常、配管部材を流れる水素を冷却するプレクール装置と呼ばれる装置が設けられている。本件出願人は、このようなプレクール装置に関する技術を特許文献1及び特許文献2において提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5632065号公報
【特許文献2】特開2017-129259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なプレクール装置では、フロン系冷媒を循環させる冷凍サイクル装置によって水素が冷却される。しかしながら、フロン系冷媒は、例えば地球温暖化の問題により、将来的に使用を制限される虞がある。したがって、環境負荷の少ないプレクール装置の実現が望まれる。
【0006】
また、最近、乗用車サイズの燃料電池車だけなく、バスやトラックなどの大型の燃料電池車も増えつつある。現在、乗用車サイズの車両に対しては、5~10分程度で十分な量の水素を充填することが可能になっている。一方で、大型の燃料電池車に関しては、エンプティ状態から満充填までの水素充填に30分程度かかっており、充填時間の短縮化が強く求められている。
【0007】
大型の燃料電池車への充填時間は、ディスペンサから供給する水素の流量を増加させることで短縮できる。しかしながら、水素の流量を増加させつつ燃料電池車の水素タンクの温度上昇を十分に抑えるためには、乗用車サイズの場合よりも、プレクール装置の冷凍能力を増加させることが求められる。
【0008】
高い冷凍能力を確保する技術に関して、フロン系冷媒を循環させる冷凍サイクル装置では、例えば多元冷凍などの技術が十分に確立している。しかしながら、多元式の冷凍装置は、サイズが大きくなり且つ構造が複雑になる。そのため、民生分野に近い水素ステーションへ適用された場合、多元式の冷凍装置は必ずしも有効に機能するとは言えない。また、環境負荷の問題が残る。
【0009】
また、乗用車サイズの燃料電池車と大型の燃料電池車とで、望ましいプレクール装置の仕様が異なる場合、それぞれの専用のディスペンサに対応して別々のプレクール装置が設けられてもよい。しかしながら、この場合、設備コストやプレクール装置の占有面積が増加する。そのため、プレクール装置は、乗用車サイズの燃料電池車と大型の燃料電池車とで共有されてもよい。しかしながら、この場合には、プレクール装置に高い冷凍能力を確保することが求められる。また、一方から他方への冷凍能力の切り換えを柔軟に且つ早期に実施できるようにするための工夫が求められる。
【0010】
以上の事情に鑑みて、本発明の課題は、環境負荷、構造の複雑化及び操作の複雑化を抑制しつつ、水素充填対象へ流れる水素を所望の冷凍能力で十分に冷却し易くなる水素冷却装置及び水素供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る水素冷却装置は、圧縮機と、冷却器と、膨張機と、液冷却熱交換器とを含み、前記圧縮機から流出する自然冷媒が前記冷却器、前記膨張機及び前記液冷却熱交換器をこの順で通過した後、前記圧縮機に循環し、前記圧縮機と前記膨張機とが共通の駆動軸で連結される冷凍サイクル装置と、前記液冷却熱交換器で前記自然冷媒によって冷却される水素冷却液を循環させ、前記水素冷却液と水素供給対象へ流れる水素とを熱交換させる水素冷却熱交換器を含む冷却液循環装置と、を備える。
【0012】
前記冷却液循環装置は、前記液冷却熱交換器に接続される第1液回路と、前記水素冷却熱交換器を含む第2液回路と、前記第1液回路と前記第2液回路とを接続する液タンクと、を含み、前記第1液回路及び前記第2液回路はそれぞれ、同じ前記水素冷却液を前記液タンクを介して循環させてもよい。
【0013】
前記冷却液循環装置は、複数の前記水素冷却熱交換器と、複数の前記液冷却熱交換器のいずれかに接続される複数の前記第2液回路と、を含んでもよい。
【0014】
前記冷却液循環装置は、前記液冷却熱交換器に接続され、前記自然冷媒により直接的に冷却される作動液を循環させる第1液回路と、前記水素冷却熱交換器を含み、前記水素冷却液を循環させる第2液回路と、前記第1液回路及び前記第2液回路に接続し、前記作動液と前記水素冷却液とを熱交換させる中間熱交換器と、を含んでもよい。
【0015】
前記冷却液循環装置は、前記第1液回路における前記液冷却熱交換器の下流側であって前記中間熱交換器の上流側の部分と、前記第1液回路における前記液冷却熱交換器の上流側であって前記中間熱交換器の下流側の部分とを接続するバイパス流路を含んでもよい。
【0016】
一実施の形態に係る水素冷却装置は、冷却用熱交換器を含む一つ又は複数の他の冷凍サイクル装置をさらに備え、前記他の冷凍サイクル装置は、前記冷却用熱交換器により前記水素冷却液を冷却してもよい。
【0017】
また、本発明の一実施の形態に係る水素供給システムは、水素を充填する水素貯蔵タンクと、前記水素貯蔵タンクに接続され、前記水素貯蔵タンクから流出する水素を通流させる配管部材と、前記配管部材に接続されるディスペンサと、前記の水素冷却装置と、を備え、前記水素冷却液と前記配管部材を通流する水素とを熱交換させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、環境負荷、構造の複雑化及び操作の複雑化を抑制しつつ、水素充填対象へ流れる水素を所望の冷凍能力で十分に冷却し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施の形態に係る水素供給システムを概略的に示す図である。
【
図2】第2の実施の形態に係る水素供給システムを概略的に示す図である。
【
図3】第3の実施の形態に係る水素供給システムを概略的に示す図である。
【
図4】第4の実施の形態に係る水素供給システムを概略的に示す図である。
【
図5】第5の実施の形態に係る水素供給システムを概略的に示す図である。
【
図6】第6の実施の形態に係る水素供給システムを概略的に示す図である。
【
図7】第7の実施の形態に係る水素供給システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付の図面を参照して、各実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係る水素供給システムS1を概略的に示す図である。
図1に示される水素供給システムS1は、自然冷媒を循環させる冷凍サイクル装置10と、水素冷却液を循環させる冷却液循環装置20と、水素を水素供給対象に供給するための水素ディスペンサユニット30と、制御装置40と、を備えている。
【0022】
冷凍サイクル装置10は、冷却液循環装置20が循環させる水素冷却液を自然冷媒で冷却する。冷却液循環装置20は、水素ディスペンサユニット30が水素供給対象に向けて通流させる水素を水素冷却液で冷却する。水素ディスペンサユニット30が通流させる水素は、水素冷却液で冷却された後、水素供給対象に供給される。本実施の形態では、冷凍サイクル装置10、水素冷却液を循環させる冷却液循環装置20及び制御装置40が、水素冷却装置CD1を構成する。
【0023】
水素供給対象は、図示の例では燃料電池車FCVであり、詳しくは、燃料電池車FCVに設けられる水素タンクである。水素ディスペンサユニット30は、高圧の状態で貯蔵された水素を燃料電池車FCVに向けて通流させる。この通流過程で、水素の温度は上昇する。この際、冷却液循環装置20が水素冷却液で水素を冷却することで、水素タンクに至る又は水素タンク内の水素の温度が過剰に高温になることが回避される。
【0024】
なお、燃料電池車FCVは、乗用車サイズの車両でもよいし、バスやトラックなどの大型車両でもよいし、二輪車などの小型車両でもよい。また、水素供給対象は、燃料電池を搭載した電車でもよいし、タンク単体でもよい。
【0025】
冷凍サイクル装置10は、本実施の形態では自然冷媒としての空気を循環させる。すなわち、冷凍サイクル装置10は、空気冷媒サイクル装置である。
【0026】
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11と、冷却器12と、回収熱交換器13と、膨張機14と、液冷却熱交換器15とを含む。そして、冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、冷却器12、回収熱交換器13、膨張機14及び液冷却熱交換器15を空気がこの順で循環するように冷媒循環路16で接続する。空気は、圧縮機11で圧縮された後、冷却器12及び回収熱交換器13で段階的に冷却され、その後、膨張機14に流入する。その後、空気は膨張機14で膨張させられて、膨張機14から流出する。
【0027】
冷凍サイクル装置10は、膨張機14で膨張させた空気を例えば-10℃~-110℃までの範囲で降温させて液冷却熱交換器15に流入させることが可能となっている。液冷却熱交換器15は、冷却液循環装置20に接続されている。そして、液冷却熱交換器15は、流入した低温の空気で冷却液循環装置20が循環させる水素冷却液を冷却する。空気は、液冷却熱交換器15で水素冷却液を冷却した後、液冷却熱交換器15から流出して圧縮機11に循環する。
【0028】
液冷却熱交換器15から流出した空気は、圧縮機11に戻る前に、回収熱交換器13で冷却器12を流出した空気と熱交換する。これにより、膨張機14に流入する前の空気が、冷却器12及び回収熱交換器13で段階的に冷却される。冷却器12は、例えば冷却水によって圧縮機11から流出する高圧の空気を冷却してもよい。冷却器12は液冷式の冷却器でもよいし、空冷式の冷却器でもよいし、特に限られるものではない。
【0029】
圧縮機11と膨張機14とは、共通のモータ17の駆動軸17Aで連結されている。これにより、駆動軸17Aの回転によって圧縮機11と膨張機14とが連動して回転する。
【0030】
また、冷媒循環路16における圧縮機11の下流側であって冷却器12の上流側の部分と、冷媒循環路16における膨張機14の下流側の部分であって回収熱交換器13との接続位置の上流側の部分とは、空気を通流させるホットバイパス路18で接続され、ホットバイパス路18には空気の通流を制御する調節バルブ19が設けられている。これにより、調節バルブ19を開くことで、ホットバイパス路18を通して高温の空気を液冷却熱交換器15から流出した空気に混ぜることができる。このような操作により、液冷却熱交換器15の下流側における空気の凍結を抑制できる。
【0031】
なお、本実施の形態では冷凍サイクル装置10が空気冷媒サイクル装置であるが、その他の形式の装置でもよい。冷凍サイクル装置10は、自然冷媒として、窒素などを用いる冷凍サイクル装置でもよい。
【0032】
冷却液循環装置20は、水素冷却液を通流させる流路21と、流路21上に設けられた冷却液ポンプ22及び水素冷却熱交換器23と、流路21の上流端と下流端とを接続する液タンク24とを含む。水素冷却液が通流する方向で、冷却液循環装置20は、流路21及び液タンク24により構成される閉回路において水素冷却液を循環させる。
【0033】
冷却液ポンプ22は、水素冷却液を循環させるための駆動力を発生させる。冷却液ポンプ22は吐出する水素冷却液の流量を変更できる。本実施の形態では、冷却液ポンプ22が液タンク24の下流側で且つ水素冷却熱交換器23の上流側に設けられているが、その配置位置は特に限られるものでない。水素冷却液は、冷却液ポンプ22から吐出された後、液冷却熱交換器15に流入して低温の空気によって冷却される。その後、液冷却熱交換器15から流出した水素冷却液は、水素冷却熱交換器23に流入して、水素を冷却する。そして、水素冷却熱交換器23から流出した水素冷却液は、液タンク24に流入し、冷却液ポンプ22に循環する。
【0034】
液タンク24は、所定量の水素冷却液を貯留することが可能となっている。液タンク24は保温タンクであり、液冷却熱交換器15で冷却済みの水素冷却液の昇温を抑制するように水素冷却液を貯留できる。このような液タンク24において冷却済みの水素冷却液を貯留した場合には、水素冷却熱交換器23で出力する冷凍能力を柔軟に調節することが可能となる。
【0035】
液タンク24の貯留空間の体積は、流路21の上流端から下流端までの流路体積の20倍以上でもよい。ここで言う流路体積には、冷却液ポンプ22及び水素冷却熱交換器23における水素冷却液の流路空間の体積も含まれる。本実施の形態では、液タンク24の貯留空間の体積が流路21の上流端から下流端までの流路体積の20倍以上に設定されている。本件発明者らは、流路21の上流端から下流端までの流路体積の20倍以上の冷却済みの水素冷却液を液タンク24に貯留した場合、水素冷却熱交換器23で所望の冷凍能力を所望の期間にわたり十分に維持できることを知見している。具体的には、例えば乗用車サイズの車両に適した冷凍能力で水素を冷却する状態から、バスなどの大型車に適した冷凍能力で水素を冷却する状態に切り換える場合に、大型車に適した冷凍能力を大型車に十分に水素が供給されるまで維持できる。また、不意に水素の冷却状態が停止された場合でも、車両に十分に水素が充填されるまで所望の冷凍能力を維持できる。ただし、液タンク24の貯留空間の体積は特に限られるものではない。
【0036】
水素冷却液は、一例としてエーテル系液体である。詳しくは、本実施の形態では、水素冷却液として、ハイドロフルオロエーテル系液体(流体)が用いられている。ただし、水素冷却液は特に限られるものではなく、ハイドロフルオロエーテル系液体とは異なるフッ素系液体でもよいし、エーテル系液体でもよいし、シリコーンオイルでもよい。
【0037】
また、冷却液循環装置20は、流路21における液冷却熱交換器15との接続位置の下流側であって水素冷却熱交換器23の上流側の部分と、流路21における水素冷却熱交換器23の下流側であって液タンク24よりも上流側の部分とを接続する水素冷却液バイパス路25を備える。水素冷却液バイパス路25には、水素冷却液バイパス路25における水素冷却液の通流の許容及び遮断を制御する切換制御バルブ26が設けられる。切換制御バルブ26は開度を調節可能でもよい。水素冷却熱交換器23に水素冷却液を送らずに、液タンク24において冷却済みの水素冷却液を貯留することが望まれる場合、水素冷却液バイパス路25における水素冷却液の通流が許容されてもよい。この場合、冷却液ポンプ22の負荷が抑制され得ることで、エネルギー消費量の抑制を図ることができる。
【0038】
水素ディスペンサユニット30は、水素を充填する水素貯蔵タンク31と、水素貯蔵タンク31に接続され、水素貯蔵タンク31から流出する水素を通流させる配管部材32と、配管部材32に接続されるディスペンサ33と、を含む。
【0039】
水素貯蔵タンク31には水素が高圧の状態で充填されている。水素貯蔵タンク31内での水素の圧力は40MPaや、82MPaでもよい。配管部材32は、一端で水素貯蔵タンク31に接続し、他端でディスペンサ33に接続する。配管部材32は、ディスペンサ33よりも上流側の部分で水素冷却熱交換器23に接続される。
【0040】
ディスペンサ33は燃料電池車FCVの水素充填口に接続される。ディスペンサ33が燃料電池車FCVの水素充填口に接続された場合、本実施の形態では、水素貯蔵タンク31内部の圧力と燃料電池車FCVの水素タンク内部の圧力との差圧により、水素貯蔵タンク31内の水素が、燃料電池車FCVに向けて配管部材32を通流する。配管部材32を通流する水素は、ディスペンサ33に至る前に水素冷却熱交換器23で水素冷却液により冷却される。これにより、燃料電池車FCVの水素タンクに至る又は水素タンク内の水素の温度が過剰に高温になることが回避され得る。
【0041】
制御装置40は、冷凍サイクル装置10におけるモータ17(駆動軸17A)の回転数制御、調節バルブ19の開閉制御、及び調節バルブ19の開度制御を行う。制御装置40は、冷却液循環装置20における冷却液ポンプ22の吐出流量制御、切換制御バルブ26の開閉制御、及び切換制御バルブ26の開度制御を行う。また、制御装置40は、水素ディスペンサユニット30における配管部材32に設けられる図示しない開閉バルブを制御する。
【0042】
例えば、制御装置40は、水素冷却熱交換器23に水素冷却液を送らずに、液タンク24において冷却済みの水素冷却液を貯留することが望まれる場合、冷凍サイクル装置10を運転させ且つ冷却液を循環させつつ、切換制御バルブ26を開いてもよい。そして、制御装置40は、このような切換制御バルブ26を開いた状態を所定の時間帯で継続させ、所定の時間帯が終了した後に切換制御バルブ26を閉じる定常運転に移行してもよい。所定の時間帯は、例えば夜間である。そして、切換制御バルブ26を開く所定の時間帯では、冷却液ポンプ22から吐出される水素冷却液の流量を、定常運転時の流量よりも下げてもよい。このような運転を行った場合には、水素冷却の需要がない時間帯に効率的に冷却済みの水素冷却液を液タンク24に貯留できる。
【0043】
制御装置40は、例えばCPU、ROMなどを含むコンピュータで構成されてもよく、この場合、ROMに格納されたプログラムに従い、各種処理を行う。また、制御装置40は、その他のプロセッサや電気回路(例えばFPGA(Field Programmable Gate Alley)など)で構成されてもよい。
【0044】
本実施の形態にかかる水素供給システムS1の動作の一例を説明する。水素供給システムS1を動作させる際、ここで説明する例では、まず、冷凍サイクル装置10におけるモータ17が駆動される。冷凍サイクル装置10における液冷却熱交換器15を通過する空気が所定温度以下まで下がった際に、冷却液循環装置20における冷却液ポンプ22が駆動される。このとき、切換制御バルブ26が開かれてもよい。そして、冷却液ポンプ22の駆動開始から所定時間が経過した場合に、切換制御バルブ26が閉じられてもよい。
【0045】
以上に説明した本実施の形態では、水素冷却装置CD1が、圧縮機11と、冷却器12と、膨張機14と、液冷却熱交換器15とを含み、圧縮機11から流出する自然冷媒である空気が冷却器12、膨張機14及び液冷却熱交換器15をこの順で通過した後、圧縮機11に循環し、圧縮機11と膨張機14とが共通の駆動軸17Aで連結される冷凍サイクル装置10と、液冷却熱交換器15で空気によって冷却される水素冷却液を循環させ、水素冷却液と水素供給対象である燃料電池車FCVへ流れる水素とを熱交換させる水素冷却熱交換器23を含む冷却液循環装置20と、を備える。
【0046】
この水素冷却装置CD1では、水素の冷却のために自然冷媒を用いるため、環境負荷が抑えられる。また、自然冷媒を用いる冷凍サイクル装置10では、自然冷媒を極めて低温域まで降温できるため、高い冷凍能力を確保し易い。また、自然冷媒を用いる冷凍サイクル装置10は単元のサイクルであるため、構造が過度に複雑ではなく、且つ操作対象も少ないため操作も複雑ではない。例えば膨張機14から流出する自然冷媒の冷凍能力及び/又は温度は、圧縮機11と膨張機14とを接続する駆動軸17Aの回転数を調節することにより簡易に調節され得る。したがって、環境負荷、構造の複雑化及び操作の複雑化を抑制しつつ、水素充填対象(本例では、燃料電池車FCV)へ流れる水素を所望の冷凍能力で十分に冷却できる。そして、水素充填対象に至る水素の温度が水素の流速によらず不所望に高くなることを回避できる。
【0047】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態における構成部分のうちの第1の実施の形態と同じものには、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図2は、第2の実施の形態に係る水素供給システムS2を概略的に示す図である。
図2に示される水素供給システムS2では、冷凍サイクル装置10、冷却液循環装置20及び制御装置40が、水素冷却装置CD2を構成する。そして、本実施の形態では、冷却液循環装置20の構造が第1の実施の形態と異なる。
【0048】
本実施の形態における冷却液循環装置20は、液冷却熱交換器15に接続される第1液回路211と、水素冷却熱交換器23を含む第2液回路212と、第1液回路211と第2液回路212とを接続する液タンク241と、を含む。そして、第1液回路211及び第2液回路212はそれぞれ、同じ水素冷却液を液タンク241を介して循環させるように構成されている。
【0049】
第1液回路211は上流端及び下流端を有し、その上流端及び下流端を液タンク241に接続させる。第1液回路211には第1冷却液ポンプ221が設けられる。第1冷却液ポンプ221は、液タンク241から水素冷却液を引き込んで、液冷却熱交換器15を通過させる。そして、液冷却熱交換器15を流出する水素冷却液は、液タンク241に循環する。なお、第1冷却液ポンプ221の位置は液冷却熱交換器15の下流側でもよいし、液タンク241内でもよい。
【0050】
第2液回路212は上流端及び下流端を有し、その上流端及び下流端を液タンク241に接続させる。第2液回路212には第2冷却液ポンプ222が設けられる。第2冷却液ポンプ222は、液タンク241から水素冷却液を引き込んで、水素冷却熱交換器23を通過させる。そして、水素冷却熱交換器23を流出する水素冷却液は、液タンク241に循環する。なお、第2冷却液ポンプ222の位置は水素冷却熱交換器23の下流側でもよいし、液タンク241内でもよい。
【0051】
液タンク241は保温タンクであり、液冷却熱交換器15で冷却済みの水素冷却液の昇温を抑制するように水素冷却液を貯留できる。液タンク241の貯留空間の体積は、第2液回路212の上流端から下流端までの流路体積の20倍以上でもよい。ここで言う流路体積には、第2冷却液ポンプ222及び水素冷却熱交換器23における水素冷却液の流路空間の体積も含まれる。液タンク241に上記のような体積を設定する場合の利点は、第1の実施の形態と同様である。
【0052】
本実施の形態にかかる水素供給システムS2の動作の一例を説明する。水素供給システムS2を動作させる際、ここで説明する例では、まず、冷凍サイクル装置10におけるモータ17が駆動される。冷凍サイクル装置10における液冷却熱交換器15を通過する空気が所定温度以下まで下がった際に、第1液回路211における第1冷却液ポンプ221が駆動される。そして、第1冷却液ポンプ221の駆動開始から所定時間が経過した場合に、第2液回路212における第2冷却液ポンプ222が駆動される。
【0053】
以上に説明した第2の実施の形態では、液冷却熱交換器15により冷却した水素冷却液を液タンク241に溜めておくことができる。そして、第2液回路212は、液タンク241に溜められた水素冷却液を水素冷却熱交換器23に送ることができる。これにより、水素冷却熱交換器23による水素の冷却を速やかに行うことができる。また、第2液回路212において水素冷却熱交換器23を通過する冷却液の流量を変更することで、冷凍能力を柔軟に且つ速やかに調節できる。具体的には、乗用車サイズの車両に適した冷凍能力とバスなどの大型車に適した冷凍能力とを柔軟に且つ速やかに調節できる。そして、乗用車サイズの車両に供給する水素の冷却と大型車に供給する水素の冷却とを共通の水素冷却装置で行うことが可能となる。そして水素ステーションにおける水素冷却装置の占有範囲を抑えることができる。
【0054】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態における構成部分のうちの第1及び第2の実施の形態と同じものには、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図3は、第3の実施の形態に係る水素供給システムS3を概略的に示す図である。
図3に示される水素供給システムS3では、冷凍サイクル装置10、冷却液循環装置20及び制御装置40が、水素冷却装置CD3を構成する。そして、本実施の形態では、冷却液循環装置20の構造が第1及び第2の実施の形態と異なる。
【0055】
本実施の形態における冷却液循環装置20は、液冷却熱交換器15に接続され、自然冷媒である空気により直接的に冷却される作動液を循環させる第1液回路211’と、水素冷却熱交換器23を含み、水素冷却液を循環させる第2液回路212’と、第1液回路211’及び第2液回路212’に接続し、作動液と水素冷却液とを熱交換させる中間熱交換器28と、を含む。
【0056】
第1液回路211’は上流端及び下流端を有し、その上流端及び下流端を中間熱交換器28に接続させる。第1液回路211’には第1冷却液ポンプ221が設けられる。第1冷却液ポンプ221は、吐出する作動液が液冷却熱交換器15及び中間熱交換器28を通過して第1冷却液ポンプ221に循環するように作動液を通流させる。なお、第1冷却液ポンプ221の位置は液冷却熱交換器15の下流側でもよい。
【0057】
また、冷却液循環装置20は、第1液回路211’における液冷却熱交換器15との接続位置の下流側であって中間熱交換器28との接続位置の上流側の部分と、第1液回路211’における液冷却熱交換器15との接続位置の上流側であって中間熱交換器28の下流側の部分とを接続するバイパス流路29Aを含む。バイパス流路29Aには、バイパス流路29Aにおける作動液の通流の許容及び遮断を制御するバイパス制御バルブ29Bが設けられる。バイパス制御バルブ29Bは開度を調節可能でもよい。これにより、中間熱交換器28から流出した作動液を液冷却熱交換器15を通過させないようにバイパスできる。
【0058】
作動液は、本実施の形態ではシリコーンオイルである。ただし、作動液は特に限られるものではなく、例えばフッ素系液体でもよいし、エーテル系液体でもよい。
【0059】
第2液回路212’は上流端及び下流端を有し、その上流端及び下流端を中間熱交換器28に接続させる。第2液回路212’には第2冷却液ポンプ222が設けられる。第2冷却液ポンプ222は、吐出する水素冷却液が中間熱交換器28及び水素冷却熱交換器23を通過して第2冷却液ポンプ222に循環するように水素冷却液を通流させる。なお、第2冷却液ポンプ222の位置は中間熱交換器28の下流側でもよい。
【0060】
また、第2液回路212’には、第1の実施の形態で説明した液タンク24、水素冷却液バイパス路25及び切換制御バルブ26が設けられている。液タンク24は、中間熱交換器28の上流側であって水素冷却熱交換器23の下流側の位置に設けられている。水素冷却液バイパス路25は、第2液回路212’における中間熱交換器28の下流側であって水素冷却熱交換器23の上流側の部分と、第2液回路212’における水素冷却熱交換器23の下流側であって液タンク24の上流側の部分とを接続している。
【0061】
本実施の形態における水素冷却液も、一例としてエーテル系液体である。詳しくは、水素冷却液は、ハイドロフルオロエーテル系液体(流体)である。ただし、水素冷却液は特に限られるものではなく、ハイドロフルオロエーテル系液体とは異なるフッ素系液体でもよいし、エーテル系液体でもよいし、シリコーンオイルでもよい。
【0062】
本実施の形態にかかる水素供給システムS3の動作の一例を説明する。水素供給システムS3を動作させる際、ここで説明する例では、まず、冷凍サイクル装置10におけるモータ17が駆動される。冷凍サイクル装置10における液冷却熱交換器15を通過する空気が所定温度以下まで下がった際に、第1液回路211’における第1冷却液ポンプ221が駆動されるとともに、第2液回路212’における第2冷却液ポンプ222が駆動される。この際、第1液回路211’におけるバイパス制御バルブ29Bは閉じられる。また、第2液回路212’における切換制御バルブ26は開かれる。そして、第1冷却液ポンプ221の駆動開始から所定時間が経過した場合に、第2液回路212’における切換制御バルブ26が閉じられる。
【0063】
また、例えば水素冷却液の過剰な冷却の回避が望まれる場合、水素冷却熱交換器23の冷凍能力の低下が望まれる場合、水素供給システムS3を停止させる場合などに、第1液回路211’におけるバイパス制御バルブ29Bが開かれてもよい。
【0064】
以上に説明した第3の実施の形態では、自然冷媒である空気によって冷却された作動液により水素冷却液が冷却される。これにより、水素冷却液が過剰に冷却されるのを抑制し易くなる。また、作動液と水素冷却液とを互いに異なる熱媒体にでき、例えば安全性の高い水素冷却装置を作製することが可能となる。
【0065】
また、バイパス流路29Aにより液冷却熱交換器15を通過させないように作動液をバイパスすることで中間熱交換器28の冷凍能力を低下する側に調節できる。これにより、例えば冷凍サイクル装置10の運転状態を変えずに又は大きく変えずに安定した運転状態を維持しつつ、水素冷却液が過剰に冷却されるのを安定的に回避できる。また、水素冷却熱交換器23の冷凍能力を容易に低下させる側に調節できたりする。
【0066】
<第4の実施の形態>
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第3の実施の形態と同じものには、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図4は、第4の実施の形態に係る水素供給システムS4を概略的に示す図である。
図4に示される水素供給システムS4では、冷凍サイクル装置10、冷却液循環装置20及び制御装置40が、水素冷却装置CD4を構成する。そして、本実施の形態では、冷却液循環装置20及び水素ディスペンサユニット30の構造が第1乃至第3の実施の形態と異なる。
【0067】
本実施の形態における冷却液循環装置20は、複数の水素冷却熱交換器23を備える。そして、冷却液循環装置20は、水素冷却液を通流させる主流路部21Aと、主流路部21Aから分岐する複数の分岐流路部21Bとを備える流路21’を含む。そして、複数の分岐流路部21Bのそれぞれに水素冷却熱交換器23が設けられている。
【0068】
主流路部21Aは上流端UEと下流端DEとを有する。そして、主流路部21Aは、上流端UEと下流端DEとの間に液タンク24及び冷却液ポンプ22を備える。主流路部21Aは、冷却液ポンプ22の駆動に応じて、上流端UEから受け入れた水素冷却液を液タンク24、冷却液ポンプ22及び液冷却熱交換器15を通過させて下流端DEまで通流させる。
【0069】
複数の分岐流路部21Bは、主流路部21Aの下流端DEから分岐し、それぞれの下流端を主流路部21Aの上流端UEの手前で合流させる。複数の分岐流路部21Bは、主流路部21Aの下流端DEから受け入れた水素冷却液を主流路部21Aの上流端UEに流入させる。そして、複数の分岐流路部21Bにはそれぞれ、水素冷却液の通流及び遮断を切り換える開閉バルブ21Cが設けられている。開閉バルブ21Cは、分岐流路部21Bにおいて水素冷却熱交換器23の上流側に設けられている。開閉バルブ21Cは、制御装置40によって開閉を制御される。
【0070】
水素ディスペンサユニット30は、複数の水素貯蔵タンク31を収容する水素貯蔵ユニット31Uと、複数の配管部材32と、複数の配管部材32のそれぞれに設けられたディスペンサ33とを含む。配管部材32はそれぞれ、複数の水素冷却熱交換器23のいずれかに接続されている。
【0071】
本実施の形態にかかる水素供給システムS4の動作の一例を説明する。水素供給システムS4を動作させる際、ここで説明する例では、まず、冷凍サイクル装置10におけるモータ17が駆動される。冷凍サイクル装置10における液冷却熱交換器15を通過する空気が所定温度以下まで下がった際に、冷却液循環装置20における冷却液ポンプ22が駆動される。このとき、複数の分岐流路部21Bにおける開閉バルブ21Cのうちの少なくとも1つが開かれる。なお、このとき、圧損抑制の観点で、1つの開閉バルブ21Cのみ開かれるのが好ましい。その後、水素ディスペンサユニット30による水素充填が望まれる状況に応じて、複数の分岐流路部21Bにおける開閉バルブ21Cのうちの全部が開かれるか、又は、一部が開かれる。
【0072】
自然冷媒を用いる冷凍サイクル装置10は、一般に大冷凍応力を確保できる。以上に説明した第4の実施の形態では、自然冷媒を用いる冷凍サイクル装置10が出力し得る大冷凍能力を有効活用し、複数の燃料電池車FCVに供給される水素を1つの水素冷却装置CD4により同時に冷却できる。また、一部の水素冷却熱交換器23を稼働させ、他の水素冷却熱交換器23を停止させることができる。そして、稼働中の水素冷却熱交換器23で高い冷凍能力を出力できる。これにより、複数の水素冷却熱交換器23での水素の冷却を可能としつつ、乗用車サイズの車両に適した冷凍能力とバスなどの大型車に適した冷凍能力とを柔軟に且つ速やかに切り換えることができる。そして、複数の水素ディスペンサユニット30が水素冷却装置CD4を共通することで、水素ステーションにおける水素冷却装置CD4の占有範囲を効果的に抑えることができる。
【0073】
<第5の実施の形態>
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第4の実施の形態と同じものには、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図5は、第5の実施の形態に係る水素供給システムS5を概略的に示す図である。
図5に示される水素供給システムS5では、冷凍サイクル装置10、冷却液循環装置20及び制御装置40が、水素冷却装置CD5を構成する。そして、本実施の形態では、冷却液循環装置20及び水素ディスペンサユニット30の構造が第1乃至第4の実施の形態と異なる。
【0074】
本実施の形態における冷却液循環装置20は、第2の実施の形態で説明した第1液回路211、第2液回路212及び液タンク241を備える。ただし、本実施の形態における冷却液循環装置20は、複数の第2液回路212を備える。そして、複数の第2液回路212にはそれぞれ、水素冷却熱交換器23が設けられる。
【0075】
また、本実施の形態における第2液回路212には、第2冷却液ポンプ222の下流側に開閉バルブ224が設けられる。開閉バルブ224は、制御装置40により開閉を制御される。
【0076】
本実施の形態にかかる水素供給システムS5の動作の一例を説明する。水素供給システムS5を動作させる際、ここで説明する例では、まず、冷凍サイクル装置10におけるモータ17が駆動される。冷凍サイクル装置10における液冷却熱交換器15を通過する空気が所定温度以下まで下がった際に、第1液回路211における第1冷却液ポンプ221が駆動される。そして、第1冷却液ポンプ221の駆動開始から所定時間が経過した場合に、第2液回路212における第2冷却液ポンプ222が駆動される。このとき、複数の第2液回路212における開閉バルブ224のうちの少なくとも1つが開かれる。なお、このとき、圧損抑制の観点で、1つの開閉バルブ224のみ開かれるのが好ましい。その後、水素ディスペンサユニット30による水素充填が望まれる状況に応じて、複数の第2液回路212における開閉バルブ224のうちの全部が開かれるか、又は、一部が開かれる。
【0077】
以上に説明した第5の実施の形態では、自然冷媒を用いる冷凍サイクル装置10が出力し得る大冷凍能力を有効活用し、複数の燃料電池車FCVに供給される水素を1つの水素冷却装置CD5により同時に冷却できる。また、一部の水素冷却熱交換器23を稼働させ、他の水素冷却熱交換器23を停止させることができる。そして、稼働中の水素冷却熱交換器23で高い冷凍能力を出力できる。これにより、例えば冷却された水素が燃料電池車FCVに供給される場合において、乗用車サイズの車両に適した冷凍能力で、複数の車両に供給する水素を複数の水素冷却熱交換器23で冷却できる。また、複数の水素冷却熱交換器23での水素の冷却を可能としつつ、乗用車サイズの車両に適した冷凍能力とバスなどの大型車両に適した冷凍能力とを柔軟に且つ速やかに切り換えることができる。そして、複数の水素ディスペンサユニット30が水素冷却装置CD5を共通することで、水素ステーションにおける水素冷却装置の占有範囲を効果的に抑えることができる。
【0078】
<第6の実施の形態>
次に、第6の実施の形態について説明する。本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第5の実施の形態と同じものには、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図6は、第6の実施の形態に係る水素供給システムS6を概略的に示す図である。
図6に示される水素供給システムS6では、冷凍サイクル装置10、冷却液循環装置20及び制御装置40が、水素冷却装置CD6構成する。そして、本実施の形態では、冷却液循環装置20の構造が第1乃至第5の実施の形態と異なる。一方で、水素ディスペンサユニット30は、第5の実施の形態と同じである。
【0079】
本実施の形態における冷却液循環装置20は、第5の実施の形態における冷却液循環装置20における第2液回路212に対応する部分が、第5の実施の形態と異なる。詳しくは、本実施の形態における第2液回路212は、第2側主流路部212Aと、第2側主流路部212Aの下流端から分岐する複数の第2側分岐流路部212Bと、複数の第2側分岐流路部212Bのそれぞれに設けられる水素冷却熱交換器23と、を含む。
【0080】
そして、第2側主流路部212Aに第2冷却液ポンプ222が設けられる。第2側分岐流路部212Bのそれぞれに、開閉バルブ224が設けられる。
【0081】
以上に説明した第6の実施の形態では、第5の実施の形態で得られる効果と同様の効果が得られる。
【0082】
<第7の実施の形態>
次に、第7の実施の形態について説明する。本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第6の実施の形態と同じものには、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図7は、第7の実施の形態に係る水素供給システムS7を概略的に示す図である。
図7に示される水素供給システムS7は、第5の実施の形態における水素供給システムS5に、他の冷凍サイクル装置10’がさらに設けられている。本実施の形態では、冷凍サイクル装置10、他の冷凍サイクル装置10’、冷却液循環装置20及び制御装置40が、水素冷却装置CD7構成する。
【0083】
他の冷凍サイクル装置10’は冷却用熱交換器150を備える。そして、冷却用熱交換器150は、冷却液循環装置20が循環させる水素冷却液を冷却する。本実施の形態では、第1液回路211に沿って冷凍サイクル装置10の液冷却熱交換器15と、他の冷凍サイクル装置10’の冷却用熱交換器150とが並ぶ。
【0084】
本実施の形態では、他の冷凍サイクル装置10’が、冷凍サイクル装置10と同じ構成であり、空気冷凍サイクル装置として構成されている。ただし、他の冷凍サイクル装置10’の形式は特に限られず、フッ素系冷媒を循環させる冷凍サイクル装置でもよい。
【0085】
本実施の形態では、複数の冷凍サイクル装置10,10’の全部で水素冷却液を冷却できるとともに、複数の冷凍サイクル装置10,10’の一部で水素冷却液を冷却できる。これにより、水素冷却熱交換器23の冷凍能力を広い範囲で調節できる。そして、例えば冷却された水素が燃料電池車に供給される場合において、車両のサイズに適した冷凍能力で柔軟に水素を冷却できる。また、複数の車両に供給する水素を複数の熱交換器(15,150)で冷却できる。また、複数の冷凍サイクル装置10,10’のサイズを抑えることで使用上の利便性を確保できる。例えば冷凍サイクル装置のサイズが大きい場合には、資格などにより無資格者の使用が制限されることがある。本構成では、このような制限が課されない水素ステーションなどの設備設計を行うことができる。
【0086】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0087】
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7…水素供給システム
CD1,CD2,CD3,CD4,CD5,CD6,CD7…水素冷却装置
10…冷凍サイクル装置
10’…他の冷凍サイクル装置
11…圧縮機
12…冷却器
13…回収熱交換器
14…膨張機
15…液冷却熱交換器
16…冷媒循環路
17…モータ
17A…駆動軸
20…冷却液循環装置
21,21’…流路
21A…主流路部
21B…分岐流路部
21C…開閉バルブ
211,211’…第1液回路
212,212’…第2液回路
212A…第2側主流路部
212B…第2側分岐流路部
22…冷却液ポンプ
221…第1冷却液ポンプ
222…第2冷却液ポンプ
23…水素冷却熱交換器
24,241…液タンク
25…水素冷却液バイパス路
26…切換制御バルブ
28…中間熱交換器
29A…バイパス流路
29B…バイパス制御バルブ
30…水素ディスペンサユニット
31…水素貯蔵タンク
31U…水素貯蔵ユニット
32…配管部材
33…ディスペンサ
40…制御装置
150…冷却用熱交換器
FCV…燃料電池車