(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154638
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20231013BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20231013BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/08 322Z
G03G21/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064094
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】角谷 穂高
(72)【発明者】
【氏名】小林 直道
(72)【発明者】
【氏名】樋上 和馬
(72)【発明者】
【氏名】中島 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅文
(72)【発明者】
【氏名】入山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】村野 智史
(72)【発明者】
【氏名】福田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】安田 敬
【テーマコード(参考)】
2H077
2H270
【Fターム(参考)】
2H077AC04
2H077AD35
2H077DA15
2H077DA18
2H077DA31
2H077DB08
2H270LA26
2H270LA27
2H270LA28
2H270LA29
2H270LA63
2H270LA80
2H270LA91
2H270LA99
2H270LB08
2H270LD15
2H270MA01
2H270MA14
2H270MB43
2H270MH01
2H270NB02
2H270NB06
2H270SA09
2H270SB15
2H270SB17
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】現像カートリッジ内温度、現像カートリッジ内湿度を演算して、画像形成条件を制御することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置(1)は、機内温度(Ti)、機外温度(To)、機外湿度(Ho)、および現像カートリッジ(10)内のトナー残量(M)に基づいて、カートリッジ内温度(Tc)、およびカートリッジ内湿度(Hc)を演算し、カートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度に基づいて、画像形成条件を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを収容するトナー収容部と、現像ローラと、を有する、現像カートリッジと、
シートを加熱する加熱部を有する定着器と、
前記現像カートリッジおよび前記定着器を収容する筐体と、
前記筐体内の空気の温度である、機内温度を測定する機内温度センサと、
前記筐体外の空気の温度である、機外温度を測定する機外温度センサと、
前記筐体外の空気の湿度である、機外湿度を測定する機外湿度センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記機内温度、前記機外温度、前記機外湿度、および前記現像カートリッジ内のトナー残量に基づいて、前記現像カートリッジ内の空気の温度である、カートリッジ内温度、および前記現像カートリッジ内の空気の湿度である、カートリッジ内湿度を演算し、
前記演算された前記カートリッジ内温度および前記カートリッジ内湿度に基づいて、画像形成条件を制御する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像形成条件として、前記現像ローラに印加される現像バイアスを制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
感光ドラムと、
前記感光ドラムを帯電させる帯電器と、を備え、
前記制御部は、前記画像形成条件として、前記帯電器に印加される帯電バイアスを制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記演算された前記カートリッジ内温度が閾値を超える場合は、前記帯電器に印加される帯電バイアスを低下させる、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記演算された前記カートリッジ内湿度が閾値を超える場合は、前記帯電器に印加される帯電バイアスを低下させる、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記機内温度、前記機外温度、前記機外湿度、前記現像カートリッジ内のトナー残量、および前記現像ローラの駆動状態に基づいて、前記カートリッジ内温度および前記カートリッジ内湿度を演算する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前回演算したカートリッジ内温度、前記機内温度、前記機外温度、および前記現像カートリッジ内のトナー残量に基づいて、所定時間おきに、前回の演算から今回の演算までの前記カートリッジ内温度の変化量を演算し、
前回演算したカートリッジ内温度と、前記カートリッジ内温度の変化量と、の和を今回の演算でのカートリッジ内温度とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前回演算したカートリッジ内湿度、前回演算したカートリッジ内温度、前記機内温度、前記機外温度、前記機外湿度、および前記現像カートリッジ内のトナー残量に基づいて、所定時間おきに、前回の演算から今回の演算までの前記現像カートリッジ内での水蒸気量の変化を演算することで、今回の演算でのカートリッジ内湿度を求める、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記筐体は、外部から空気を取り込むための吸気口を有し、
前記機外温度センサおよび前記機外湿度センサは、前記吸気口に対面して配置される、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記機内温度センサは、前記現像ローラと前記定着器との間に配置される、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像カートリッジ、感光体ドラム、転写ローラ、および帯電器を有するプロセスカートリッジと、
前記定着器の上方に配置され、前記筐体内の空気を吸引して外部に排出するファンと、をさらに備え、
前記筐体は、外部から空気を取り込むための吸気口を有し、
前記吸気口は、前記定着器の下方、かつ、水平方向において、前記定着器を挟んで前記プロセスカートリッジと反対側に配置され、
前記機内温度センサは、上下方向において、前記ファンと前記吸気口の間、かつ、前記水平方向において、前記現像ローラと前記定着器との間に配置され、
前記機内温度センサと前記定着器との間の距離が、30mm以上である、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記画像形成装置の電源オン時の機内温度と、前記電源オン時の機外温度と、の差の絶対値が第1の閾値以下であると判定した場合、
前記電源オン時のカートリッジ内温度を前記電源オン時の機内温度に設定し、
前記電源オン時のカートリッジ内湿度を前記電源オン時の機外湿度に設定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記機内温度、前記カートリッジ内温度、および前記カートリッジ内湿度を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記画像形成装置の電源オフ時にカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を演算して、前記記憶部に記憶させ、
前記画像形成装置の電源オフ時の機内温度を前記記憶部に記憶させ、
前記電源オン時の機内温度と、前記電源オン時の機外温度と、の差の絶対値が前記第1の閾値より大きく、かつ、前記電源オン時の機内温度と、前記記憶部に記憶された機内温度と、の差の絶対値が第2の閾値以下と判定した場合、
前記電源オン時のカートリッジ内温度を前記記憶部に記憶されたカートリッジ内温度に設定し、
前記電源オン時のカートリッジ内湿度を前記記憶部に記憶されたカートリッジ内湿度に設定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記機内温度、前記カートリッジ内温度、および前記カートリッジ内湿度を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記画像形成装置の電源オフ時にカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を演算して、前記記憶部に記憶させ、
前記画像形成装置の電源オフ時の機内温度を前記記憶部に記憶させ、
前記電源オン時の機内温度と、前記電源オン時の機外温度と、の差の絶対値が前記第1の閾値より大きく、かつ、前記電源オン時の機内温度と、前記記憶部に記憶された機内温度と、の差の絶対値が第2の閾値より大きいと判定した場合、
前記電源オン時のカートリッジ内温度を前記電源オン時の機内温度に設定し、
前記電源オン時のカートリッジ内湿度を、前記電源オン時の機外湿度と、前記記憶部に記憶されたカートリッジ内湿度と、の平均値に設定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記現像カートリッジは、前記筐体に対して、取り付けおよび取り外し可能であり、
前記制御部は、前記現像カートリッジが前記筐体に取り付けられたことを検知した場合、現在のカートリッジ内温度を現在の機外温度に設定し、現在のカートリッジ内湿度を現在の機外湿度に設定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記筐体は、前記現像カートリッジを取り付けおよび取り外すための開口部と、前記開口部に設けられるドアとを備え、
前記制御部は、
前記ドアが、開放されて所定時間以上が経過した後に、閉じられたことを検知した場合、前記カートリッジ内温度および前記カートリッジ内湿度を演算し、
前記演算されたカートリッジ内温度と、現在の機内温度と、の差の絶対値が所定値より大きいと判定した場合、現在のカートリッジ内温度を現在の機内温度に設定し、かつ、現在のカートリッジ内湿度を現在の機外湿度に設定し、
前記絶対値が前記所定値より小さいと判定した場合、現在のカートリッジ内温度を前記演算されたカートリッジ内温度に設定し、現在のカートリッジ内湿度を前記演算されたカートリッジ内湿度に設定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機内温度、機外温度、機外湿度、および現像カートリッジ内のトナー残量に基づいてカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を演算して画像形成条件を制御する電子写真式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、筐体内の温度、筐体外の温度、および、現像ローラの駆動状態に基づいて現像部の温度を演算し、現像部の冷却制御を実行することで、現像剤の劣化を抑制する画像形成装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の画像形成装置は、現像部の温度を演算し、その冷却制御を実行するに留まる。すなわち、特許文献1は、冷却制御を実行して現像剤の劣化を抑制するのみで、画像形成条件を変更する考え方は示されない。また、特許文献1は、湿度の影響を考慮してはいない。すなわち、トナーの帯電特性は、現像器内の温度だけではなく湿度にも影響を受けるが、特許文献1の技術では、湿度に対応して、画像形成条件を変更する考えが示されない。
【0005】
本開示は、現像カートリッジ内温度、現像カートリッジ内湿度を演算して、画像形成条件を制御することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の画像形成装置は、トナーを収容するトナー収容部と、現像ローラと、を有する、現像カートリッジと、シートを加熱する加熱部を有する定着器と、前記現像カートリッジおよび前記定着器を収容する筐体と、前記筐体内の、前記筐体内の空気の温度である機内温度を測定する機内温度センサと、前記筐体外の空気の温度である、機外温度を測定する機外温度センサと、前記筐体外の空気の湿度である、機外湿度を測定する機外湿度センサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記機内温度、前記機外温度、前記機外湿度、および前記現像カートリッジ内のトナー残量に基づいて、前記現像カートリッジ内の空気の温度である、カートリッジ内温度、および前記現像カートリッジ内の空気の湿度である、カートリッジ内湿度を演算し、前記演算された前記カートリッジ内温度および前記カートリッジ内湿度に基づいて、画像形成条件を制御する。
【0007】
上記構成によれば、機内温度、機外温度、機外湿度、および現像カートリッジ内のトナー残量に基づいて、カートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を演算して、画像形成条件を制御することで、良好な画像形成が可能となる。
【0008】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記画像形成条件として、前記現像ローラに印加される現像バイアスを制御する。
【0009】
上記構成によれば、現像バイアスを制御することで、良好な画像形成が可能となる。
【0010】
本開示の画像形成装置は、感光ドラムと、前記感光ドラムを帯電させる帯電器と、を備え、前記制御部は、前記画像形成条件として、前記帯電器に印加される帯電バイアスを制御する。
【0011】
上記構成によれば、帯電バイアスを制御することで、良好な画像形成が可能となる。
【0012】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記演算された前記カートリッジ内温度が閾値を超える場合は、前記帯電器に印加される帯電バイアスを低下させる。
【0013】
上記構成によれば、カートリッジ内温度の変化に応じて適切な帯電バイアスを印可して印刷できるから、印刷物の画質が良好となる。
【0014】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記演算された前記カートリッジ内湿度が閾値を超える場合は、前記現像ローラに印可する帯電バイアスを低下させる。
【0015】
上記構成によれば、カートリッジ内湿度の変化に応じて適切な帯電バイアスを印可して印刷できるから、印刷物の画質が良好となる。
【0016】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記機内温度、前記機外温度、前記機外湿度、前記現像カートリッジ内のトナー残量、および前記現像ローラの駆動状態に基づいて、前記カートリッジ内温度および前記カートリッジ内湿度を演算する。
【0017】
上記構成によれば、現像ローラの駆動状態を考慮したより精度の高いカートリッジ内温度および前記カートリッジ内湿度の演算が可能となる。
【0018】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前回演算したカートリッジ内温度、前記機内温度、前記機外温度、および前記現像カートリッジ内のトナー残量に基づいて、所定時間おきに、前回の演算から今回の演算までの前記カートリッジ内温度の変化量を演算し、前回演算したカートリッジ内温度と、前記カートリッジ内温度の変化量と、の和を今回の演算でのカートリッジ内温度とする。
【0019】
上記構成によれば、前回演算したカートリッジ内温度を考慮したより精度の高いカートリッジ内温度の演算が可能となる。
【0020】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前回演算したカートリッジ内湿度、前回演算したカートリッジ内温度、前記機内温度、前記機外温度、前記機外湿度、および前記現像カートリッジ内のトナー残量に基づいて、所定時間おきに、前回の演算から今回の演算までの前記カートリッジ内湿度の変化量を演算し、前回演算したカートリッジ内湿度と、前記カートリッジ内湿度の変化量と、の和を今回の演算でのカートリッジ内湿度とする。
【0021】
上記構成によれば、前回演算したカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を考慮したより精度の高いカートリッジ内湿度の演算が可能となる。
【0022】
本開示の画像形成装置において、前記筐体は、外部から空気を取り込むための吸気口を有し、前記機外温度センサおよび前記機外湿度センサは、前記吸気口に対面して配置される。
【0023】
上記構成によれば、機外温度および機外湿度の適切な測定が可能となる。
【0024】
本開示の画像形成装置において、前記機内温度センサは、前記現像ローラと前記定着器との間に配置される。
【0025】
上記構成によれば、機内温度の適切な測定が可能となる。
【0026】
本開示の画像形成装置は、前記現像カートリッジ、感光体ドラム、転写ローラ、および帯電器を有するプロセスカートリッジと、前記定着器の上方に配置され、前記筐体内の空気を吸引して外部に排出するファンと、をさらに備え、前記筐体は、外部から空気を取り込むための吸気口を有し、前記吸気口は、前記定着器の下方、かつ、水平方向において、前記定着器を挟んで前記プロセスカートリッジと反対側に配置され、前記機内温度センサは、上下方向において、前記ファンと前記吸気口の間、かつ、前記水平方向において、前記現像ローラと前記定着器との間に配置され、前記機内温度センサと前記定着器との間の距離が、30mm以上である。
【0027】
上記構成によれば、機内温度のより適切な測定が可能となる。
【0028】
本開示の画像形成装置において、前記制御部は、前記画像形成装置の電源オン時の機内温度と、前記電源オン時の機外温度と、の差の絶対値が第1の閾値以下であると判定した場合、前記電源オン時のカートリッジ内温度を前記電源オン時の機内温度に設定し、前記電源オン時のカートリッジ内湿度を前記電源オン時の機外湿度に設定する。
【0029】
上記構成によれば、電源オン時におけるカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を適切に設定できる。
【0030】
本開示の画像形成装置は、前記機内温度、前記カートリッジ内温度、および前記カートリッジ内湿度を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記画像形成装置の電源オフ時にカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を演算して、前記記憶部に記憶させ、前記画像形成装置の電源オフ時の機内温度を前記記憶部に記憶させ、前記電源オン時の機内温度と、前記電源オン時の機外温度と、の差の絶対値が前記第1の閾値より大きく、かつ、前記電源オン時の機内温度と、前記記憶部に記憶された機内温度と、の差の絶対値が第2の閾値以下と判定した場合、前記電源オン時のカートリッジ内温度を前記記憶部に記憶されたカートリッジ内温度に設定し、前記電源オン時のカートリッジ内湿度を前記記憶部に記憶されたカートリッジ内湿度に設定する。
【0031】
上記構成によれば、電源オン時におけるカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を適切に設定できる。
【0032】
本開示の画像形成装置は、前記機内温度、前記カートリッジ内温度、および前記カートリッジ内湿度を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記画像形成装置の電源オフ時にカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を演算して、前記記憶部に記憶させ、前記画像形成装置の電源オフ時の機内温度を前記記憶部に記憶させ、前記電源オン時の機内温度と、前記電源オン時の機外温度と、の差の絶対値が前記第1の閾値より大きく、かつ、前記電源オン時の機内温度と、前記記憶部に記憶された機内温度と、の差の絶対値が第2の閾値より大きいと判定した場合、前記電源オン時のカートリッジ内温度を前記電源オン時の機内温度に設定し、前記電源オン時のカートリッジ内湿度を、前記電源オン時の機外湿度と、前記記憶部に記憶されたカートリッジ内湿度と、の平均値に設定する。
【0033】
上記構成によれば、電源オン時におけるカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を適切に設定できる。
【0034】
本開示の画像形成装置において、前記現像カートリッジは、前記筐体に対して、取り付けおよび取り外し可能であり、前記制御部は、前記現像カートリッジが前記筐体に取り付けられたことを検知した場合、現在のカートリッジ内温度を現在の機外温度に設定し、現在のカートリッジ内湿度を現在の機外湿度に設定する。
【0035】
上記構成によれば、現像カートリッジの取り付け時におけるカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を適切に設定できる。
【0036】
本開示の画像形成装置において、前記筐体は、前記現像カートリッジを取り付けおよび取り外すための開口部と、前記開口部に設けられるドアとを備え、前記制御部は、前記ドアが、開放されて所定時間以上が経過した後に、閉じられたことを検知した場合、前記カートリッジ内温度および前記カートリッジ内湿度を演算し、前記演算されたカートリッジ内温度と、現在の機内温度と、の差の絶対値が所定値より大きいと判定した場合、現在のカートリッジ内温度を現在の機内温度に設定し、かつ、現在のカートリッジ内湿度を現在の機外湿度に設定し、前記絶対値が前記所定値より小さいと判定した場合、現在のカートリッジ内温度を前記演算されたカートリッジ内温度に設定し、現在のカートリッジ内湿度を前記演算されたカートリッジ内湿度に設定する。
【0037】
上記構成によれば、ドアの開閉時におけるカートリッジ内温度およびカートリッジ内湿度を適切に設定できる。
【発明の効果】
【0038】
本開示の一態様によれば、現像カートリッジ内温度、現像カートリッジ内湿度を演算して、画像形成条件を制御することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を表す図である。
【
図3】起動時の画像形成装置の動作手順の一例を表すフロー図である。
【
図4】起動時の画像形成装置の動作手順の一例を表すフロー図である。
【
図5】印刷可能な状態の画像形成装置の動作手順の一例を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本開示の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、本開示の画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1の全体構成を説明した後、本開示の特徴部分について詳細に説明することとする。
【0041】
以下の説明において、方向は、
図1の紙面に向かって右側を「前側」、紙面に向かって左側を「後側」とし、紙面に向かって奥側を「右側」、紙面に向かって手前側を「左側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0042】
図1に示すように、レーザプリンタ1は、筐体2と、シートPを画像形成部4に供給するための供給部3と、シートPに画像を形成するための画像形成部4と、搬送部9と、を備えている。本開示のレーザプリンタ1は、シートPの一例である、普通紙、薄紙、厚紙、コート紙、樹脂シート、布、はがき、および封筒などに画像を形成することができる。
【0043】
筐体2は、内部に供給部3や画像形成部4を収容しており、主に、左右一対の本体フレーム21と、各本体フレーム21の上部を連結する上パネル22と、各本体フレーム21に対して回動可能に設けられるドアの一例としてのフロントカバー23と、リアカバー24と、を備えている。上パネル22には、筐体2外に排出されるシートPを載置するための排出トレイ22Aが形成されている。
【0044】
フロントカバー23は、筐体2の前側に形成される開口部2Aを開閉するドアであり、下端部に配置された回動軸23Bを中心として回動可能に設けられている。リアカバー24は、筐体2の後部を開閉するドアであり、下端部に配置された回動軸24Bを中心として回動可能に設けられている。レーザプリンタ1は、リアカバー24を開放することで、画像形成部4から搬送されるシートPを筐体2の後部から後方へ排出可能となっている。
【0045】
供給部3は、筐体2内の下部に設けられ、前側から着脱可能に装着される供給トレイ31と、供給トレイ31内に設けられた圧板32とを備えている。また、供給部3は、供給トレイ31内に積載されるシートPの前端部の上方に設けられるピックアップローラ33と、ピックアップローラ33に対してシートPの搬送方向における下流側に設けられる分離ローラ34および分離パッド35とを備えている。
【0046】
さらに、供給部3は、分離ローラ34の搬送方向における下流側に設けられるダスト取りローラ36と、ダスト取りローラ36の搬送方向における下流側に設けられるレジストローラ37とを備えている。なお、ダストは、シートPの滓、一例として、紙粉である。
【0047】
そして、このように構成される供給部3では、供給トレイ31内のシートPが、圧板32によってピックアップローラ33に向けて付勢され、このピックアップローラ33で送り出されて分離ローラ34および分離パッド35で分離される。その後、シートPは、ダスト取りローラ36でダストが除去された後、レジストローラ37によって先端位置が揃えられるとともに適正なタイミングで画像形成部4に搬送される。
【0048】
画像形成部4は、スキャナユニット5と、現像部の一例としてのプロセスカートリッジ6と、定着器7とを備えている。
【0049】
スキャナユニット5は、筐体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部と、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。このスキャナユニット5では、レーザビームを走査して、後述する感光ドラム61の表面を露光する。
【0050】
プロセスカートリッジ6は、フロントカバー23の開放により形成される開口部2Aを通して筐体2に対して着脱可能に構成されている。プロセスカートリッジ6は、感光ドラム61と、感光ドラム61に対向する転写ローラ62と、帯電器63と、現像カートリッジ10とを備えている。帯電器63は、ワイヤW、グリッドGを有し、感光ドラム61を帯電させる。帯電器63のグリッドGに帯電バイアスとして、グリッドバイアスVgが印加される。
【0051】
現像カートリッジ10は、現像ローラ123と、供給ローラ122と、現像ローラ123に接する層厚規制ブレード124と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部111とを主に備えている。
【0052】
レーザプリンタ1は、現像カートリッジ10に搭載されたカートリッジメモリ10Aの情報を読み出す読取部30を備えている。カートリッジメモリ10Aは、現像カートリッジ10内のトナーの消費量に対応するドットカウントD、現像ローラ123の(累積する)回転数の情報、および現像カートリッジ10が新品であるか否かを表す状態情報を記憶する。ドットカウントDは、画像データを構成するドット(画素)のうち、トナー像を形成した場合にトナーが付着するドットの数である。これらのドットカウントD、回転数の情報、および状態情報は、現像カートリッジ10を使用することで、更新される。レーザプリンタ1(後述の制御部100)は、読取部30を介して、カートリッジメモリ10AからドットカウントD、回転数の情報、状態情報を読み取る。この結果、後述のように、ドットカウントDに基づくトナー残量Mの算出、現像カートリッジ10が実質的に新品であるか否かの判定が可能となる。
【0053】
プロセスカートリッジ6では、回転する感光ドラム61の表面が、帯電器63により一様に帯電された後、スキャナユニット5からのレーザビームの走査により露光される。これにより、感光ドラム61の表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部111内のトナーは、まず供給ローラ122に供給され、次いで供給ローラ122から現像ローラ123に供給される。そして、現像ローラ123に供給されたトナーは、現像ローラ123の回転に伴って、現像ローラ123と層厚規制ブレード124の間で層厚が規制されて現像ローラ123上に担持される。
【0054】
現像ローラ123上に担持されたトナーは、現像ローラ123から感光ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光ドラム61上に現像剤像の一例としてのトナー像が形成される。その後、感光ドラム61と転写ローラ62の間をシートPが搬送されることで感光ドラム61上のトナー像がシートP上に転写される。
【0055】
定着器7は、シートPを加熱するための加熱部71と、加圧ローラ72とを備えている。このように構成される定着器7では、トナー像が転写されたシートPを加熱部71と加圧ローラ72との間に搬送することで、トナー像が熱定着される。
【0056】
搬送部9は、画像形成部4から搬送されたシートPを筐体2の外部に排出する排出機構として機能するとともに、画像形成部4により一方の面に画像が形成されたシートPの裏表を反転させた状態で当該シートPを画像形成部4へ再度搬送する再搬送手段として機能している。具体的に、搬送部9は、搬送経路91と、排出ローラ92と、再搬送経路93と、を主に備えている。
【0057】
搬送経路91は、定着器7の後方から上方に向けて延びた後、進路を前方へ湾曲させるように延びている。
【0058】
排出ローラ92は、正逆両方に回転可能に構成されており、正回転時には画像形成部4から搬送されたシートPを筐体2の外部に向けて排出し、逆回転時にはシートPを筐体2内に引き込むように搬送する。
【0059】
再搬送経路93は、画像形成部4により一方の面に画像が形成されたシートPを、画像形成部4の下を通って再び画像形成部4へ搬送するように構成されている。
【0060】
搬送部9では、画像形成が終了した場合には、画像形成部4から搬送されたシートPは、搬送経路91を搬送され、正回転する排出ローラ92によって筐体2の外部に排出されて排出トレイ22A上に載置される。また、一方の面に画像が形成されたシートPの他方の面に画像を形成する場合には、シートPの全体が筐体2の外部に完全に排出される前に排出ローラ92が逆回転することで、シートPは再度筐体2内に引き戻され、搬送経路91から再搬送経路93に搬送される。その後、破線で示すように、シートPは、再搬送経路93を搬送され、供給部3によって再び画像形成部4に搬送される。
【0061】
筐体2は、ファン81、吸気口82、機内温度センサSti、機外温度センサSto、および機外湿度センサShoを有している。
【0062】
ファン81は、定着器7の上方、ここでは、前斜め上方に配置されている。ファン81は、筐体2内の空気を吸引して外部に排出するように構成され、左右一対の本体フレーム21の片側の本体フレーム21に設けられている。
【0063】
吸気口82は、筐体2の後部に設けられた外部から空気を取り込むための開口であり、左右一対の本体フレーム21の一方に形成されている。具体的には、吸気口82は、前後方向(水平方向)において定着器7を挟んでプロセスカートリッジ6と反対側に配置されている。また、吸気口82は、上下方向において定着器7よりも下方に配置されている。すなわち、吸気口82は、定着器7およびプロセスカートリッジ6が発生する熱の影響を受けにくい位置に配置されている。
【0064】
機内温度センサStiは、例えば、サーミスタであり、筐体2内の空気の温度である機内温度Tiを検知する。より具体的には、機内温度センサStiが検知する機内温度Tiは、筐体2内の現像カートリッジ10が収容される空間内の空気の温度である。以下、筐体2内の現像カートリッジ10が収容される空間を「収容空間SP」ともいう。すなわち、現像カートリッジ10は、この収容空間SP内の空気と熱をやり取りすることから、現像カートリッジ10内のカートリッジ内温度Tcは、機内温度Tiの影響を受ける。この収容空間SPを
図1に示す。
【0065】
また、機内温度センサStiは、左右一対の本体フレーム21の一方に配置され、かつ前後方向において筐体2内の定着器7と現像ローラ123との間に配置されている。ここで、機内温度センサStiは、定着器7、現像ローラ123、または後述のモータ125に近接しないことが好ましい。定着器7、現像ローラ123、またはモータ125に近接する空気は、局所的に高温になり、カートリッジ内温度Tcに影響を与える代表的な温度の測定対象としては好ましくない。
【0066】
このため、機内温度センサStiは、上下方向においてファン81と吸気口82の間、かつ、前後方向(水平方向)において現像ローラ123と定着器7との間に配置されると共に、機内温度センサStiと定着器7間の距離が所定値L0(例えば、30mm)以上であることが好ましい。すなわち、機内温度センサStiは、定着器7が発する熱の影響を受けにくい位置に配置されている。加えて、機内温度センサStiは、現像カートリッジ10を着脱するとき現像カートリッジ10が通過する領域の外に配置することが好ましい。すなわち、機内温度センサStiは、現像カートリッジ10を着脱するときに、現像カートリッジ10と機内温度センサStiが接触または衝突しない位置に配置されている。
図1に、定着器7からの熱の影響を受け難く、かつ現像カートリッジ10の着脱を阻害しない位置範囲の一例を空間SP0として例示する。
【0067】
機外温度センサStoは、例えば、サーミスタであり、筐体2外の空気の温度である、機外温度Toを測定する。機外温度センサStoは、吸気口82の内側に対面して配置されている。この機外温度センサStoは、吸気口82から取り込まれた空気の温度を検知することで、筐体2外の温度である機外温度Toを検知する。
【0068】
機外湿度センサShoは、筐体2外の空気の湿度である、機外湿度Hoを測定する。機外湿度センサShoは、機外温度センサStoと同様、吸気口82の内側に対面して配置されている。この機外湿度センサShoは、吸気口82から取り込まれた空気の湿度を検知することで、機外湿度Hoを検知する。機外湿度センサShoとして、容量方式または抵抗方式の機外湿度センサを用いることができる。容量方式の機外湿度センサでは、湿度に応じて絶縁特性が変化する、板状の感湿材料の両側に一対の電極が設置され、一対の電極間の電気容量を計測することで、湿度が測定される。抵抗方式の機外湿度センサでは、板状の感湿材料の片側に複数の電極が設置され、複数の電極間の電気抵抗を計測することで、湿度が測定される。
【0069】
レーザプリンタ1は、
図2に示すように、フロントカバー23の開閉を検知するドア開閉センサ23Aと、制御部100と、記憶部110と、現像バイアス印加回路126と、帯電バイアス印加回路64とをさらに備えている。
【0070】
ドア開閉センサ23Aは、フロントカバー23が閉じているときフロントカバー23の一部が当たって制御部100にオン信号を出力し、フロントカバー23が開いているときフロントカバー23が離間して制御部100にオフ信号を出力する。
【0071】
制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)から構成され、記憶部110に記憶されたプログラムに基づいて、画像形成部4を制御する。記憶部110は、RAM、ROMなどから構成され、制御部100を動作させるためのプログラム等を記憶する。制御部100の動作の詳細は後述する。
【0072】
記憶部110は、カートリッジ内温度Tcまたはカートリッジ内湿度Hcの演算に影響を与える後述のパラメータ(発熱量Qb(n))と現像ローラ123の駆動状態との関係を記憶する。これにより、制御部100は、現像ローラ123の駆動状態を考慮して、カートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcを演算できる。この詳細は後述する。
【0073】
記憶部110は、カートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcと、現像バイアスとの対応関係(例えば、後述の表1)、およびカートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcと、帯電バイアスとの対応関係(例えば、後述の表2)を記憶する。これにより、制御部100は、画像形成条件として、適切な現像バイアス、帯電バイアスを設定できる。この詳細は後述する。
【0074】
記憶部110は、必要に応じて、種々の情報を記憶する。記憶部110は、例えば、機内温度Ti、機外温度To、機外湿度Ho、カートリッジ内温度Tc、カートリッジ内湿度Hc(以下、「機内温度Ti等」という)、一例として、電源オフ時における、機内温度Ti等を記憶する。これにより、制御部100は、レーザプリンタ1の起動時(電源オン時)でのカートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcの初期値を適正化できる。この詳細は後述する。
【0075】
現像バイアス印加回路126は、現像ローラ123に現像バイアスVbを印加するための回路である。現像バイアス印加回路126からの現像バイアスVbの値は、制御部100によって制御される。帯電バイアス印加回路64は、帯電器63に帯電バイアス(グリッドバイアスVg)を印加するための回路である。帯電バイアス印加回路64からのグリッドバイアスVgの値は、制御部100によって制御される。
【0076】
制御部100は、機内温度Ti、機外温度To、機外湿度Ho、および現像カートリッジ内のトナー残量M等に基づいて、カートリッジ内温度Tc、カートリッジ内湿度Hcを演算する。
【0077】
制御部100は、機内温度Ti、機外温度To、機外湿度Ho、およびトナー残量Mに基づいて、カートリッジ内温度Tc、およびカートリッジ内湿度Hcを演算する。このとき、制御部100は、カートリッジ内温度Tc、およびカートリッジ内湿度Hcを順に演算する。すなわち、制御部100は、機内温度Ti、機外温度To、およびトナー残量Mに基づいて、カートリッジ内温度Tcを演算し、機内温度Ti、機外温度To、演算したカートリッジ内温度Tc、およびトナー残量Mに基づいて、カートリッジ内湿度Hcを演算する。
【0078】
(カートリッジ内温度Tcの演算)
カートリッジ内温度Tcは、機外温度Toおよび機内温度Tiとは一致しないため、カートリッジ内温度Tcを推定するための演算が必要となる。すなわち、カートリッジ内温度Tcは、機外温度Toの変化に対して遅れて変化する。一例として、次の(C1)、(C2)の場合、機外温度Toは急上昇するが、機内温度Tiとカートリッジ内温度Tcは遅れて徐々に機外温度Toに向かって上昇する。
(C1)冷房が効いた気温が低い部屋にプリンタが置かれた状態で、部屋の扉が開けられ、室外の高温の空気がプリンタに吹き付けた場合
(C2)暖房が切れて気温が低い部屋にプリンタが置かれた状態で、暖房機器が起動し、高温の空気がプリンタに吹き付けた場合
【0079】
別の例として、次の(C3)、(C4)の場合、機外温度Toは急降下するが、機内温度Tiとカートリッジ内温度Tcは遅れて徐々に機外温度Toに向かって降下する。
(C3)暖房が効いた気温が低い部屋にプリンタが置かれた状態で、部屋の扉があけられ、室外の低温の空気がプリンタに吹き付けた場合
(C4)冷房が切れて気温が高い部屋にプリンタが置かれた状態で、冷房機器が起動し、低温の空気がプリンタに吹き付けた場合
【0080】
以上のように、カートリッジ内温度Tcは機外温度Toに向かって徐々に変化するため、機外温度Toが急激に変化した場合は機外温度Toと乖離し易い。
【0081】
現像カートリッジ10の熱容量Ccはトナー残量Mによって変化する。そのため、カートリッジ内温度Tcが機外温度Toに向かって変化する速さは、トナー残量Mにも影響を受ける。なお、詳細は後述するが、カートリッジ内温度Tcは、現像ローラ123が回転している場合、現像ローラ123と層厚規制ブレード124との間の摩擦による発熱にも影響を受ける。
【0082】
本開示では、制御部100は、機内温度Tiとカートリッジ内温度Tcとの温度差と、カートリッジ内温度Tcと層厚規制ブレード124の(推定)温度Tbとの温度差と、トナー残量Mと、からカートリッジ内温度Tcを演算する。機内温度Tiとカートリッジ内温度Tcとの温度差は、後述の「Ti(n-1)-Tc(n-1)」である。カートリッジ内温度Tcと層厚規制ブレード124の(推定)温度Tbとの温度差は、後述の「Tc(n-1)-Tb(n-1)」である。これらの温度差によって、カートリッジ内温度Tcの変化速度が変化する。また、トナー残量Mによって現像カートリッジ10内の熱容量Ccが変化する。以下、カートリッジ内温度Tcの演算について、詳細に説明する。
【0083】
基本的には、制御部100は、前回演算したカートリッジ内温度Tc(n-1)、機内温度Ti、機外温度T0、およびトナー残量Mに基づいて、所定時間Δtおきに、前回の演算から今回の演算までの前記カートリッジ内温度の変化量ΔTcを演算する。制御部100は、前回演算したカートリッジ内温度Tc(n-1)と、カートリッジ内温度Tcの変化量ΔTcと、の和を今回の演算でのカートリッジ内温度Tc(n)とする。
【0084】
但し、前回の演算から今回の演算までの時間Δt[s]は、通常時と省電力モード時などで異なる値であってもよく、演算時にΔt[s]を取得することで、任意の時間間隔で演算が可能である。すなわち、所定時間が経過するまでの間、印字動作を行わなかった場合は、省電力モードとして、演算の時間間隔を長く設定することが可能となる。
【0085】
今回の演算でのカートリッジ内温度Tc(n)は、次の式(1)、(2)で表される。
Tc(n)=ΔTc(n-1)+Tc(n-1) …(1)
ΔTc(n-1)
=(ΔEic(n-1)+ΔEbc(n-1))/Cc(n-1) …(2)
Tc(n-1)[K]: 前回演算されたカートリッジ内温度Tc
ΔTc(n-1)[K]: 前回と今回の演算の間でのカートリッジ内温度Tcの変化量(差分)
ΔEic(n-1)[W・s]: 前回と今回の演算の間に、収容空間SPの空気から現像カートリッジ10が受け取る熱量
ΔEbc(n-1)[W・s]: 前回と今回の演算の間に、層厚規制ブレード124から現像カートリッジ10が受け取る熱量
Cc(n-1)[J/K]:現像カートリッジ10の熱容量
【0086】
熱量ΔEic、ΔEbcは、次の式(3)、(4)で表される。
ΔEic(n-1)=(Ti(n-1)-Tc(n-1))・Δt/Ric …(3)
ΔEbc(n-1)=(Tb(n-1)-Tc(n-1))・Δt/Rbc …(4)
Ti(n-1)[K]:前回の演算時の機内温度Ti
Tc(n-1)[K]:前回の演算で求められたカートリッジ内温度Tc
Tb(n-1)[K]:前回の演算で求められた層厚規制ブレード124の(予測)温度
Ric[K/W]: 収容空間SPと現像カートリッジ10間の熱抵抗
Rbc[K/W]: 層厚規制ブレード124と現像カートリッジ10間の熱抵抗
ここで、熱抵抗Ricは、現像カートリッジ10の構造により決まる定数であり、Rbcは、層厚規制ブレード124および現像カートリッジ10の構造により決まる定数である。
【0087】
式(1)~(4)より、次の式(5)が成立する。
Tc(n)
=(Ti(n-1)-Tc(n-1))・Δt/(Cc(n-1)・Ric)
+(Tb(n-1)-Tc(n-1))・Δt/(Cc(n-1)・Rbc)
+ Tc(n-1) …(5)
【0088】
ここで、今回の演算での層厚規制ブレード124の(予測)温度Tb(n)は、次の式(6)、(7)によって表される。
Tb(n)=ΔTb(n-1)+Tb(n-1) …(6)
ΔTb(n-1)=(ΔEib(n-1)+ΔEbc(n-1)+Qb(n-1)・Δt)/Cb …(7)
ΔTb(n-1)[K]: 前回と今回の演算の間での層厚規制ブレード124の温度Tbの変化量(差分)
ΔEib(n-1): 前回と今回の演算の間に、収容空間SPから層厚規制ブレード124が受け取る熱量
Qb(n)[W]: 層厚規制ブレード124の発熱量
Cb[J/K]:層厚規制ブレード124の熱容量
【0089】
ここで、層厚規制ブレード124の発熱量Qb(n)は、現像ローラ123の駆動状態によって異なる。現像ローラ123が回転すると、現像ローラ123と層厚規制ブレード124との間の摩擦により発熱するためである。現像ローラ123の駆動状態は、本実施形態では、現像ローラ123を駆動するためのモータ125の駆動、停止、および、現像ローラ123の回転速度である。
【0090】
熱量ΔEib(n-1)は、次の式(8)で表される。熱量ΔEbc(n-1)は、既述の式(4)で表される。
ΔEib(n-1)=(Ti(n-1)-Tb(n-1))・Δt/Rib…(8)
Ric[K/W]: 収容空間SPと層厚規制ブレード124間の熱抵抗
【0091】
式(6)に式(7)、(8)、(4)を代入することで、次の式(9)が得られる。
Tb(n)=(Ti(n-1)-Tb(n-1))・Δt/(Cb・Rib)
+(Tb(n-1)-Tc(n-1))・Δt/(Cb・Rbc)
+Qb(n-1)・Δt/Cb+Tb(n-1) …(9)
【0092】
現像カートリッジ10の熱容量Cc(n-1)[J/K]は、次の式(11)に示すように、現像カートリッジ10内の空気の体積V(n-1)、トナー残量M(n-1)などから算出される。
Cc(n-1)=ρ・V(n-1)・Ca+M(n-1)・Ct …(11)
ρ[kg/m3]: 空気の密度
V(n-1)[m3]:現像カートリッジ10内の空気の体積
M(n-1)[kg]: トナー残量
Ca[J/(kg・K)]: 空気の比熱
Ct[J/(kg・K)]: トナーの比熱
【0093】
ここで、現像カートリッジ10内の空気の体積V(n)[m3]、トナー残量M(n)[kg]は、次の式(12)、(13)によって表される。
V(n)=V0+M(n)/ρt …(12)
M(n)=Ms-α・D(n) …(13)
V0[m3]: 初期の現像カートリッジ10内の空気の体積
M(n)[kg]: 現像カートリッジ10内のトナー残量
ρt[kg/m3]: トナーの密度
Ms[kg]: 現像カートリッジ10内の初期トナー充填量
D(n): ドットカウント、すなわち、画像を構成するためのドットの個数
α[kg]: ドットカウントDとトナーの消費量の関係を表す係数、すなわち、ドット1個当たりのトナーの質量
【0094】
ここで、ドットカウントDは、現像カートリッジ10内のトナーの消費量に対応する量として、カートリッジメモリ10Aに記憶されている。すなわち、制御部100は、式(13)に基づいて、カートリッジメモリ10A内のドットカウントDからトナー残量Mを算出できる。また、制御部100は、式(5)、(9)、(11)、(12)に基づいて、前回演算したカートリッジ内温度Tc(n-1)、機内温度Ti、機外温度T0、およびトナー残量Mに基づいて、所定時間Δtおきに、今回のカートリッジ内温度Tc(n)を演算する。
【0095】
既述のように、層厚規制ブレード124の発熱量Qb(n)は、現像ローラ123の駆動状態、例えば、モータ125の駆動、停止、または、現像ローラ123の回転速度によって異なる。制御部100は、現像ローラ123の回転速度を、モータ125の動作状態から判定してもよい。記憶部110は、このように現像ローラ123の駆動状態によって変化する発熱量Qb(n)と、現像ローラ123の駆動状態との対応関係を記憶する。制御部100は、記憶部110に記憶される対応関係に基づいて、発熱量Qb(n)を変化させることで、カートリッジ内温度Tcの演算の際に、現像ローラ123の駆動状態の影響を繰り入れることができる。
【0096】
以上のように、制御部100は、機内温度Ti、機外温度To、現像カートリッジ10内のトナー残量M、および現像ローラ123の駆動状態に基づいて、カートリッジ内温度Tcを演算する。
【0097】
制御部100は、演算したカートリッジ内温度Tc、演算に用いた機内温度Ti、機外温度Toなどを記憶部110に記憶させる。この点は、カートリッジ内湿度Hc、機外湿度Hoについても同様である。
【0098】
(カートリッジ内湿度Hcの演算)
カートリッジ内湿度Hcは、機外湿度Hoとは一致しないため、カートリッジ内温度Tcと同様、カートリッジ内湿度Hcを推定するための演算が必要となる。すなわち、カートリッジ内湿度Hcは機外湿度Hoに向かって徐々に変化するため、機外湿度Hoと乖離し易い。
【0099】
カートリッジ内湿度Hcは、機外湿度Hoと演算したカートリッジ内湿度Hcの湿度差と現像カートリッジ10内の空気の体積Vを用いて演算される。湿度差が大きくなると、現像カートリッジ10の内外間を移動する水蒸気の量が増える。また、現像カートリッジ10内の空気の体積Vが大きくなると、現像カートリッジ10外から現像カートリッジ10内に蒸気が入っても現像カートリッジ10内の湿度が上昇しにくくなる。以下、カートリッジ内湿度Hcの演算について、詳細に説明する。
【0100】
基本的には、制御部100は、前回演算したカートリッジ内湿度Hc(n-1)、前回演算したカートリッジ内温度Tc(n-1)、機内温度Ti、機外温度To、機外湿度Ho、および現像カートリッジ10内のトナー残量Mに基づいて、所定時間(Δt)おきに、前回の演算から今回の演算までのカートリッジ内湿度Hcの変化量ΔHcを演算する。前回演算したカートリッジ内湿度Hc(n-1)と、カートリッジ内湿度の変化量ΔHcと、の和を今回の演算でのカートリッジ内湿度Hc(n)とする。
【0101】
カートリッジ内湿度Hc[%]は、次の式(21)によって表される。
Hc(n)=(Gc(n)/(Dc(n)・V(n)))・100 …(21)
Gc(n)[kg]:現像カートリッジ10内の水蒸気量
V(n)[kg/m3]:現像カートリッジ10内の空気の体積であり、既述の式(12)で表される。
Dc(n)[kg/m3]:現像カートリッジ10内の飽和水蒸気量
【0102】
水蒸気量Gc(n)は、次の式(22)、(23)によって表される。
Gc(n)=Goc(n)+Gc(n-1) …(22)
Goc(n)
=(Po(n-1)-Pc(n-1))・S・W・Δt(n-1) …(23)
Goc(n)[kg]: 筐体2外から現像カートリッジ10内に移動した水蒸気量
Po(n-1)[Pa]: 前回の演算時の筐体2外の水蒸気圧
Pc(n-1)[Pa]: 前回の演算で求めた現像カートリッジ10内の水蒸気圧
W[kg/(m2・s・Pa)]:筐体2外と現像カートリッジ10との間の透湿係数
S[m2]: 筐体2外と現像カートリッジ10との間を水蒸気が通過する面積
Δt(n-1)[s]: 前回の演算から今回の演算までの時間
【0103】
水蒸気圧Po(n-1)、Pc(n-1)は、次の式(24)、(25)によって表される。
Po(n-1)=611・107.5・(To(n-1)-273.15)/(To(n-1)-35.85)・Ho(n-1)/100
…(24)
Pc(n-1)=611・107.5・(Tc(n-1)-273.15)/(Tc(n-1)-35.85)・Hc(n-1)/100
…(25)
【0104】
現像カートリッジ10内の飽和水蒸気量Dc(n-1)[kg]は、次の式(26)によって表され、水蒸気量Gc(n-1)[kg]は、次の式(27)によって表される。
Dc(n-1)=217・611・107.5・(Tc(n-1)-273.15)/(Tc(n-1)-35.85)/Tc(n-1) …(26)
Gc(n-1)=Dc(n-1)・Hc(n-1)・V(n-1)/100…(27)
【0105】
式(21)に式(22)、(23)を代入すると次の式(28)となる。
Hc(n)=(Goc(n-1)+Dc(n-1)・Hc(n-1)・V(n-1))・100/(Dc(n-1)・V(n-1)) …(28)
この式(28)は、次の式(29)と等価である。
Hc(n)=((Po(n-1)-Pc(n-1))・S・W・Δt+Gc(n-1))・100/(Dc(n-1)・V(n-1)) …(29)
【0106】
また、式(29)は、次の式(30)として表すことができる。
Hc(n)=(ΔHc(n-1)+Hc(n-1))・100 …(30)
ΔHc(n-1): 前回と今回の演算の間でのカートリッジ内湿度Hcの変化量(差分)
Hc(n-1): 前回の演算で求めたカートリッジ内湿度Hc
ΔHc(n-1)=((Po(n-1)-Pc(n-1))・S・W・Δt)/(Dc(n-1)・V(n-1)) …(31)
Hc(n-1)=Gc(n-1)/(Dc(n-1)・V(n-1))…(32)
【0107】
式(30)に示されるように、式(29)は、カートリッジ内湿度Hcの変化量ΔHcを算出し(式(31))、前回の演算で求められたカートリッジ内湿度Hc(n-1)(式(32))に加算することを意味する。
【0108】
既述のように、現像カートリッジ10内の空気の体積Vは、トナー残量Mによって変化する。この結果、制御部100は、式(28)または(29)に基づいて、前回演算したカートリッジ内温度Tc(n-1)、カートリッジ内湿度Hc(n-1)、機外温度To、機外湿度Hoおよびトナー残量Mに基づいて、所定時間Δtおきに、今回のカートリッジ内湿度Hc(n)を演算する。
【0109】
既述のように、カートリッジ内温度Tcの演算に影響を与えるパラメータ、すなわち、発熱量Qb(n)は、現像ローラ123の駆動状態などによって異なる。カートリッジ内湿度Hcの演算は、カートリッジ内温度Tcの演算を前提とすることから、現像ローラ123の駆動状態の影響を受ける。すなわち、制御部100は、機内温度Ti、機外温度To、機外湿度Ho、現像カートリッジ10内のトナー残量M、および現像ローラ123の駆動状態に基づいて、カートリッジ内湿度Hcを演算する。
【0110】
以上のように、制御部100は、機内温度Ti、機外温度To、機外湿度Ho、現像カートリッジ10内のトナー残量M、および現像ローラ123の駆動状態に基づいて、カートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcを演算する。
【0111】
(初期値の設定)
制御部100は、レーザプリンタ1の電源がオンになったとき、電源オン時の機内温度Ti_onと、電源オン時の機外温度To_onと、の差の絶対値が第1の閾値Tha以下であるか否かを判定する(第1の判定)。制御部100は、この判定結果が「Yes」の場合、電源オン時のカートリッジ内温度Ti_onを電源オン時の機内温度Ti_onに設定し、電源オン時のカートリッジ内湿度Hc_onを電源オン時の機外湿度Ho_onに設定する。
【0112】
制御部100は、前述の第1の判定の結果が「No」の場合(電源オン時の機内温度Ti_onと、電源オン時の機外温度To_onと、の差の絶対値が第1の閾値Thaより大きい場合)、電源オン時の機内温度Ti_onと、電源オフ時の(記憶部110に記憶された)機内温度Ti_offと、の差の絶対値が第2の閾値Thb以下か否かを判定する(第2の判定)。
【0113】
制御部100は、この第2の判定の結果が「Yes」であった場合、電源オン時のカートリッジ内温度Tc_onを電源オフ時の(記憶部110に記憶された)カートリッジ内温度Tc_offに設定し、電源オン時のカートリッジ内湿度Hc_onを電源オフ時の(記憶部110に記憶された)カートリッジ内湿度Hc_offに設定する。
【0114】
制御部100は、この第2の判定の結果が「No」であった場合(電源オン時の機内温度と、記憶部110に記憶された機内温度Toと、の差の絶対値が第2の閾値より大きいと判定した場合)、電源オン時のカートリッジ内温度Tc_onを電源オン時の機内温度Ti_onに設定し、電源オン時のカートリッジ内湿度Hc_onを、電源オン時の機外湿度Ho_onと、記憶部110に記憶されたカートリッジ内湿度Hc_offと、の平均値に設定する。
【0115】
これにより、印字後にレーザプリンタ1の電源がオフとなり、機内温度が十分に下がる前に再度電源がオンにされた場合であっても、適切な演算結果を得ることが可能である。
【0116】
制御部100は、現像カートリッジ10が筐体2に取り付けられたことを検知した場合、現在のカートリッジ内温度Tcを現在の機外温度Toに設定し、現在のカートリッジ内湿度Hcを現在の機外湿度Hoに設定する。これにより、現像カートリッジ10を交換して、前回演算したときよりも温度の低い現像カートリッジ10が装着されても、適切な演算結果を得ることが可能である。
【0117】
制御部100は、フロントカバー23が開放されて所定時間以上(例えば、3分以上)経過した後に、閉じられたことを検知した場合、カートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcを演算する。そして、制御部100は、演算されたカートリッジ内温度Tcと、現在の機内温度Tiと、の差の絶対値が所定値Thcより大きいか否かを判定する。制御部100は、この判定結果が「Yes」の場合、現在のカートリッジ内温度Tcを現在の機内温度Tiに設定し、かつ、現在のカートリッジ内湿度Hcを現在の機外湿度Hoに設定する。制御部100は、この判定結果が「No」の場合(前述の絶対値が所定値Thcより小さいと判定した場合)、現在のカートリッジ内温度Tcを演算されたカートリッジ内温度Tcに設定し、現在のカートリッジ内湿度Hcを演算されたカートリッジ内湿度Hcに設定する。これにより、長時間フロントカバー23を開放することで、現像カートリッジ10の温度が前回演算したときより下がっていても、適切な演算結果を得ることが可能である。
【0118】
(画像形成条件の設定)
制御部100は、演算したカートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcに基づいて、画像形成条件を設定する。本実施形態では、制御部100は、画像形成条件として、現像ローラ123に印加される現像バイアスまたは帯電器63に印加される帯電バイアスを制御する。現像バイアスは、現像ローラ123に印加されるバイアス電圧である。帯電バイアスは、感光ドラム61を帯電させる帯電器63、特に、グリッドに印加されるバイアス電圧である。
【0119】
表1は、カートリッジ内湿度Hcと、バイアス調整値Vctとの関係を表わす。表2は、カートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcと、バイアス調整値ΔVとの対応関係を表わす。これらの対応関係は、記憶部110に記憶される。
【表1】
【表2】
【0120】
現像バイアスVbは、現像バイアス基準値Vb0とバイアス調整値Vctの和として表される(Vb=Vb0+Vct)。表1に示すように、制御部100は、カートリッジ内湿度Hcと機外湿度Hoとの湿度差ΔH(=Hc-Ho)に基づき、バイアス調整値Vct、結局は、現像バイアスVbを制御する。現像バイアスVbを制御することで、良好な画像形成が可能となる。すなわち、制御部100は、湿度差ΔHが正の閾値(ここでは、10%)を越える度に、現像バイアスVbを順次低下させる。また、制御部100は、湿度差ΔHが負の閾値(ここでは、-10%)以下となる度に、現像バイアスVbを順次増加させる。これにより、カートリッジ内湿度Hcと、機外湿度Hoと、の湿度差の変化に応じて適切な現像バイアスVbを印可して印刷できるから、印刷物の画質が良好となる。
【0121】
グリッドバイアスVgは、グリッドバイアスVgと現像バイアスVbとの差がグリッドバイアス調整値ΔVとなるように制御される。つまり、グリッドバイアスVgは、現像バイアスVbとバイアス調整値ΔVの和として表される(Vg=Vb+ΔV)。表2に示すように、制御部100は、カートリッジ内温度Tcとカートリッジ内湿度Hcに基づき、バイアス調整値ΔV、結局は、グリッドバイアスVg(帯電バイアス)を制御する。グリッドバイアスVgと現像バイアスVbとの差が好ましい値となるように、帯電バイアスを制御することで、良好な画像形成が可能となる。
【0122】
制御部100は、カートリッジ内湿度Hcが閾値Th1(ここでは、35[%]、または60[%])を越えると、帯電バイアスを低下させる。カートリッジ内湿度Hcの変化に応じて適切な帯電バイアスを印可して印刷できるから、印刷物の画質が良好となる。この閾値Th1は、カートリッジ内温度Tcに依存する。カートリッジ内温度Tcが30[℃]より小さい場合、閾値Th1は60[%]であるが、カートリッジ内温度Tcが30[℃]以上の場合、閾値Th1は35[%]、60[%]となる。
【0123】
以上は、基本的に、カートリッジ内湿度Hcの変化に着目している。カートリッジ内湿度Hcの変化に着目すると、制御部100は、カートリッジ内温度Tcが閾値Th2(ここでは、15[℃]、または30[℃])を越えると、帯電バイアスを低下させる。カートリッジ内温度Tcの変化に応じて適切な帯電バイアスを印可して印刷できるから、印刷物の画質が良好となる。この閾値Th2は、カートリッジ内湿度Hcに依存する。カートリッジ内湿度Hcが35[%]以上で60[%]より小さい場合、閾値Th2は30[℃]であるが、カートリッジ内温度Tcが60[%]以上の場合、閾値Th2は15[℃]となる。一方、カートリッジ内湿度Hcが35[%]より小さい場合には、閾値Th2は存在しない。
【0124】
(レーザプリンタ1の動作手順)
以下、レーザプリンタ1の動作手順を説明する。
図3は、起動時におけるレーザプリンタ1の動作手順の一例を表すフロー図である。
【0125】
レーザプリンタ1の起動時(電源オン時)において、制御部100は、現像カートリッジ10が実質的に新品であるか否かを判定する(ステップS1、S2)。制御部100は、カートリッジメモリ10Aから現像ローラ123の回転数の情報を取り出し、現像ローラ123の回転数が所定の閾値以下であるか否かを判定する。制御部100は、この判定結果が「Yes」の場合、その現像カートリッジ10のトナーが実質的に未使用であるとして、ステップS3に進む。
【0126】
制御部100は、この判定結果が「No」の場合、カートリッジメモリ10Aを参照して、現像カートリッジ10が新品であるか否かを判定し、現像カートリッジ10が新品である場合には、ステップS3に進む。
【0127】
その後、制御部100は、機外温度To(電源オン時の機外温度To_on)、機外湿度Ho(電源オン時の機外湿度Ho_on)を測定する(ステップS3)。制御部100は、カートリッジ内温度Tc(電源オン時のカートリッジ内温度Tc_on)をオン時の機外湿度Ho_onに、カートリッジ内湿度Hc(電源オン時のカートリッジ内湿度Hc_on)をオン時の機外湿度Ho_onに設定する(ステップS4)。現像カートリッジ10が実質的に新品であるため、カートリッジ内温度Tc、カートリッジ内湿度Hcは、それぞれ、機外温度To、機外湿度Hoと実質的に等しいと考えられる。
【0128】
その後、制御部100は、トナー残量Mを初期トナー充填量Msに等しいと判定して(ステップS5)、画像形成条件を設定する(ステップS6)。
【0129】
制御部100は、ステップS2での判定結果が「No」であった場合、機外温度To(電源オン時の機外温度To_on)、機外湿度Ho(電源オン時の機外湿度Ho_on)を測定し(ステップS7)、トナー残量Mを確認する(ステップS8)。カートリッジメモリ10AからドットカウントDを読み出し、式(13)を適用することで、トナー残量Mを求めることができる。
【0130】
制御部100は、カートリッジ内温度Tc(電源オン時のカートリッジ内温度Tc_on)、カートリッジ内湿度Hc(電源オン時のカートリッジ内湿度Hc_on)を設定し(ステップS9)、画像形成条件を設定する(ステップS6)。
【0131】
図4は、ステップS9でのカートリッジ内温度Tc、カートリッジ内湿度Hcの設定の詳細を表すフロー図である。
【0132】
制御部100は、電源オン時の機内温度Ti_onと、電源オン時の機外温度To_onと、の差の絶対値が第1の閾値Tha以下であるか否かを判定する(ステップS11)。制御部100は、この判定結果が「Yes」の場合、電源オン時のカートリッジ内温度Ti_onを電源オン時の機内温度Ti_onに設定し、電源オン時のカートリッジ内湿度Hc_onを電源オン時の機外湿度Ho_onに設定する(ステップS12)。
【0133】
制御部100は、ステップS11での判定結果が「No」の場合、電源オン時の機内温度Ti_onと、電源オフ時の(記憶部に記憶された)機内温度Ti_offと、の差の絶対値が第2の閾値Thb以下か否かを判定する(ステップS13)。制御部100は、この判定の結果が「Yes」であった場合、電源オン時のカートリッジ内温度Tc_onを電源オフ時の(記憶部に記憶された)カートリッジ内温度Tc_offに設定し、電源オン時のカートリッジ内湿度Hc_onを電源オフ時の(記憶部に記憶された)カートリッジ内湿度Hc_offに設定する(ステップS14)。
【0134】
制御部100は、ステップS11での判定結果が「No」の場合、電源オン時のカートリッジ内温度Tc_onを電源オン時の機内温度Ti_onに設定し、電源オン時のカートリッジ内湿度Hc_onを、電源オン時の機外湿度Ho_onと、記憶部に記憶されたカートリッジ内湿度Hc_offと、の平均値に設定する(ステップS15)。
【0135】
以上のような起動時での動作が終了すると、レーザプリンタ1は印刷可能状態(Ready状態)になり、印刷ジョブに応じて、印刷を行う。
【0136】
図5は、レーザプリンタ1での印刷、画像形成条件の設定の手順を表すフロー図である。既述のように、レーザプリンタ1は印刷可能状態(Ready状態)とする。制御部100は、印刷ジョブがあるか否かを判定し(ステップS21)、印刷ジョブがあれば、印刷ジョブに応じた印刷を行う(ステップS22)。
【0137】
その後、制御部100は、カートリッジ内温度Tc、カートリッジ内湿度Hcの前回の演算の後に、印刷を行ったか否かを判定する(ステップS23)。制御部100は、この判定の結果が「Yes」であれば、カートリッジメモリ10Aを参照して、トナー残量Mを確認する(ステップS24)。この判定の結果が「No」であれば、トナーは消費されていないので、トナー残量Mの確認は不要である。すなわち、前回の演算時のトナー残量Mを利用できる。
【0138】
制御部100は、機外温度To、機内温度Ti、機外湿度Hoを測定し(ステップS25)、この測定結果に基づいて、カートリッジ内温度Tc、カートリッジ内湿度Hcを演算する(ステップS26)。制御部100は、演算したカートリッジ内温度Tc、カートリッジ内湿度Hcに基づいて、画像形成条件を設定する(ステップS26)。
【0139】
制御部100は、この測定、演算、設定(ステップS25~S27)を繰り返し行う。すなわち、ある程度の時間間隔を置いて、カートリッジ内温度Tc、カートリッジ内湿度Hcを繰り返し演算する。この結果、レーザプリンタ1の環境条件が変化した場合であっても、適正な画像形成条件を設定することができる。
【0140】
以上のように、本開示では、機内温度Ti、機外温度To、機外湿度Ho、および現像カートリッジ10内のトナー残量Mに基づいて、カートリッジ内温度Tcおよびカートリッジ内湿度Hcを演算して、画像形成条件を設定することで、良好な画像形成が可能となる。
【0141】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
1 レーザプリンタ
2 筐体
2A 開口部
4 画像形成部
125 モータ
7 定着器
10 現像カートリッジ
10A カートリッジメモリ
23 フロントカバー
23A ドア開閉センサ
61 感光ドラム
63 帯電器
64 帯電バイアス印加回路
71 加熱部
100 制御部
110 記憶部
123 現像ローラ
124 層厚規制ブレード
126 現像バイアス印加回路