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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154659
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】放電装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20231013BHJP
   C01B 13/11 20060101ALI20231013BHJP
   H01T 19/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H05H1/24
C01B13/11 B
H01T19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064131
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】西本 秀明
(72)【発明者】
【氏名】日野 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】永沼 智也
【テーマコード(参考)】
2G084
4G042
【Fターム(参考)】
2G084AA25
2G084BB23
2G084BB24
2G084BB25
2G084BB26
2G084BB37
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD12
2G084DD14
2G084DD22
2G084EE14
2G084EE15
2G084HH11
2G084HH34
2G084HH37
2G084HH42
4G042CA01
4G042CC02
4G042CC05
4G042CC20
4G042CE01
4G042CE04
(57)【要約】
【課題】誘電体の上面側に配置される棒状の第1電極と、誘電体の下面側に配置される平面状の第2電極とを備える放電装置において、第1電極と誘電体の間の無声放電を従来よりも広範囲で発生させる。
【解決手段】平面状の第2電極32に非通電領域としての空隙110を形成し、その少なくとも一部を棒状の第1電極31の真下に位置させる。これによれば、第1電極31と第2電極32に高い交流電圧を印加したときに、誘電体33の上面の電荷が第1電極31の真下よりもその両側に多く集まるようになり、その結果、誘電体33の上面の広範囲で放電が発生する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平板状の誘電体(33)と、誘電体(33)の上面側に配置される棒状の第1電極(31)と、誘電体(33)の下面側に配置される平面状の第2電極(32)とを備えており、
第2電極(32)に非通電領域としての空隙(110)が形成されており、
空隙(110)の少なくとも一部が第1電極(31)の真下に位置することを特徴とする放電装置。
【請求項2】
第1電極(31)の伸び方向に水平面内で直交する方向を幅方向と規定するとき、空隙(110)が第1電極(31)よりも幅広に形成されている請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
誘電体(33)が第1電極(31)の上下高さよりも薄く形成されており、
第2電極(32)が誘電体(33)よりも薄く形成されている請求項1または2に記載の放電装置。
【請求項4】
第2電極(32)の長手方向が第1電極(31)の伸び方向に一致する請求項1から3のいずれかひとつに記載の放電装置。
【請求項5】
空隙(110)が第2電極(32)の長手方向に伸びる帯状に形成されている請求項4に記載の放電装置。
【請求項6】
第2電極(32)が、空隙(110)で隔てられる第1領域(111)および第2領域(112)と、両領域(111・112)を繋ぐ架橋部(113)とを備える請求項5に記載の放電装置。
【請求項7】
架橋部(113)が、空隙(110)の長手方向中央部を横切るように配置されている請求項6に記載の放電装置。
【請求項8】
平面視において第2電極(32)が誘電体(33)よりも小さく形成されて、誘電体(33)の周縁部で構成される包囲領域(195)に囲まれている請求項1から7のいずれかひとつに記載の放電装置。
【請求項9】
第2電極(32)を囲む包囲領域(195)が、長辺と短辺を有する矩形環状に形成されており、
包囲領域(195)の長辺が短辺よりも太く設定されている請求項8に記載の放電装置。
【請求項10】
両電極(31・32)と誘電体(33)を収容する放電ケース(34)を備えており、
放電ケース(34)の上面に、第1電極(31)と誘電体(33)を上方へ露出させる放電開口(35)が形成されており、
放電開口(35)の周縁部が、誘電体(33)の包囲領域(195)の上面に密着する上封止部(197)を構成する請求項8または9に記載の放電装置。
【請求項11】
放電ケース(34)の内部に、誘電体(33)の包囲領域(195)の下面に密着する下封止部(198)が設けられている請求項10に記載の放電装置。
【請求項12】
第2電極(32)の下面側にシート状のクッション材(58)が配置されており、
クッション材(58)の周縁部が前記下封止部(198)を構成する請求項11に記載の放電装置。
【請求項13】
放電ケース(34)が、外ケース(37)と内ケース(38)を上下に接合して構成されており、
第1電極(31)と誘電体(33)と第2電極(32)で構成される電極ユニット(71)の全体が、外ケース(37)と内ケース(38)により上下から挟持されている請求項10から12のいずれかひとつに記載の放電装置。
【請求項14】
放電ケース(34)が、第1電極(31)の両端部を支持する一対の電極支持構造(64)を備えており、
各電極支持構造(64)が、外ケース(37)に設けられた上支持部(65)と、内ケース(38)に設けられた下支持部(66)とで構成されており、
第1電極(31)の周面が上支持部(65)と下支持部(66)により上下から挟持される請求項13に記載の放電装置。
【請求項15】
第2電極(32)が誘電体(33)の下面にフィルム状に形成されている請求項1から14のいずれかひとつに記載の放電装置。
【請求項16】
第2電極(32)がチタンで形成されている請求項1から15のいずれかひとつに記載の放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体を間にして棒状の第1電極と平面状の第2電極とが上下に配置されている放電装置に関する。この放電装置は、空気中の放電によりオゾンを発生させるオゾン発生装置(オゾナイザー)や、各種イオン(マイナスイオン、ヒドロキシラジカル等)を発生させるイオン発生装置(イオナイザー)などに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
この種の放電装置に係る先行技術文献としては、例えば特許文献1を挙げることができる。特許文献1には、沿面放電により周囲の酸素をオゾン化させる沿面オゾン発生体が開示されており、この沿面オゾン発生体は、誘電体としてのセラミックス板と、同板の上面側に配置される棒状の第1電極と、同板の下面側に配置される薄板状の第2電極と、両電極に高電圧を印加する高圧電源などで構成されている。具体的には、セラミックス板は横長の矩形状に形成されている。棒状の第1電極の伸び方向はセラミックス板の長手方向に一致しており、同板を幅方向に二分する中心線の上方に第1電極は配置されている。薄板状の第2電極は、セラミックス板よりも一回り小さい横長の矩形状に形成されており、両者の中心線が平面視において重なるように第2電極は配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-272287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の沿面オゾン発生体の両電極に高電圧(交流電圧)を印加すると、第2電極を覆う誘電体の上面と第1電極との間で無声放電(誘電体バリア放電)が生じ、その周囲の空気に含まれる酸素の一部がオゾンに変化する。この放電時に、誘電体の上面の電荷は第2電極の真上に均等に分布するのではなく、その多くは第1電極の近傍すなわち真下に集中する。換言すれば、放電の殆どが第1電極の真下で生じる。この種のオゾン発生体においては、放電をなるべく多量の空気に触れさせることが肝要であり、放電が生じる範囲が狭いと、その分オゾンの発生量は少なくなってしまう。
【0005】
本発明は、棒状の第1電極と誘電体との間で生じる無声放電を、従来よりも広範囲で行わせることができる放電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放電装置は、水平板状の誘電体33と、誘電体33の上面側に配置される棒状の第1電極31と、誘電体33の下面側に配置される平面状の第2電極32とを備える。第2電極32に非通電領域としての空隙110が形成されており、空隙110の少なくとも一部が第1電極31の真下に位置することを特徴とする。
【0007】
第1電極31の伸び方向に水平面内で直交する方向を幅方向と規定するとき、空隙110が第1電極31よりも幅広に形成されている形態を採ることができる。
【0008】
誘電体33が第1電極31の上下高さよりも薄く形成されており、第2電極32が誘電体33よりも薄く形成されている形態を採ることができる。
【0009】
第2電極32の長手方向が第1電極31の伸び方向に一致する形態を採ることができる。
【0010】
空隙110が第2電極32の長手方向に伸びる帯状に形成されている形態を採ることができる。
【0011】
第2電極32が、空隙110で隔てられる第1領域111および第2領域112と、両領域111・112を繋ぐ架橋部113とを備える形態を採ることができる。
【0012】
架橋部113が、空隙110の長手方向中央部を横切るように配置されている形態を採ることができる。
【0013】
平面視において第2電極32が誘電体33よりも小さく形成されて、誘電体33の周縁部で構成される包囲領域195に囲まれている形態を採ることができる。
【0014】
第2電極32を囲む包囲領域195が、長辺と短辺を有する矩形環状に形成されており、包囲領域195の長辺が短辺よりも太く設定されている形態を採ることができる。
【0015】
両電極31・32と誘電体33を収容する放電ケース34を備えており、放電ケース34の上面に、第1電極31と誘電体33を上方へ露出させる放電開口35が形成されており、放電開口35の周縁部が、誘電体33の包囲領域195の上面に密着する上封止部197を構成する形態を採ることができる。
【0016】
放電ケース34の内部に、誘電体33の包囲領域195の下面に密着する下封止部198が設けられている形態を採ることができる。
【0017】
第2電極32の下面側にシート状のクッション材58が配置されており、クッション材58の周縁部が前記下封止部198を構成する形態を採ることができる。
【0018】
放電ケース34が、外ケース37と内ケース38を上下に接合して構成されており、第1電極31と誘電体33と第2電極32で構成される電極ユニット71の全体が、外ケース37と内ケース38により上下から挟持されている形態を採ることができる。
【0019】
放電ケース34が、第1電極31の両端部を支持する一対の電極支持構造64を備えており、各電極支持構造64が、外ケース37に設けられた上支持部65と、内ケース38に設けられた下支持部66とで構成されており、第1電極31の周面が上支持部65と下支持部66により上下から挟持される形態を採ることができる。
【0020】
第2電極32が誘電体33の下面にフィルム状に形成されている形態を採ることができる。
【0021】
第2電極32がチタンで形成されている形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る放電装置においては、誘電体33を間にして棒状の第1電極31と平面状の第2電極32を上下に配置し、このうち第2電極32に非通電領域としての空隙110を形成し、空隙110の少なくとも一部が第1電極31の真下に位置するようにした。これによれば、第1電極31と第2電極32に高い交流電圧を印加したときに、誘電体33の上面と第1電極31との間で生じる無声放電を、従来よりも広範囲で行わせることができる。すなわち、第2電極32に空隙110があることで、誘電体33の上面の電荷が第1電極31の真下よりもその両側(第1電極31の伸び方向に水平面内で直交する幅方向の両側)に多く集まるようになり、その結果、誘電体33の上面の広範囲で放電が発生する。加えて空隙110によれば、放電の障害となる粉塵が堆積しやすい第1電極31の真下において、放電が集中するのを避けることができる。粉塵の堆積が比較的少ない第1電極31の両側で放電を発生させると、比較的長期にわたって放電量が維持されるようになり、その結果、粉塵を除去する清掃をユーザーに促す機会を減らすことができる。
【0023】
空隙110を第1電極31よりも幅広に形成すると、誘電体33の上面で第1電極31の真下に集まる電荷をより少なくして、放電をより広範囲に広げることができる。
【0024】
誘電体33を第1電極31の上下高さよりも薄く形成すると、第2電極32の幅方向の両縁と第1電極31とを結ぶ仮想線を垂直から水平に近付けて、誘電体33の上面の電荷の分布を該両縁に近付けることができ、これにより放電をより広範囲に広げることができる。また、第2電極32を薄く形成すると、放電装置の全体を上下方向にコンパクト化するとともに、第2電極32の材料費を抑えることができる。
【0025】
第2電極32の長手方向を第1電極31の伸び方向に一致させると、第2電極32の全体を第1電極31の比較的近くに配置して、第2電極32の全面を放電に効率良く利用することができる。
【0026】
空隙110を第2電極32の長手方向に伸びる帯状に形成すると、第1電極31の真下の大部分に空隙110を位置させて、第1電極31の真下で放電が生じることを少なくして、放電が生じる範囲をより広げることができる。
【0027】
空隙110で隔てられる第1領域111と第2領域112を繋ぐ架橋部113を設けると、第1領域111と第2領域112の一方に通電体を配置するだけでも、架橋部113を介して他方の領域にも通電して、第2電極32の全体に電圧を供給することができる。つまり、通電体の個数を少なくして放電部16の構成を簡素化することができる。また、第1領域111と第2領域112の両方に通電体を配置する場合には、一方の通電体で接続不良が発生しても、他方の通電体を介して第2電極32の全体に電圧を供給することができる。つまり、放電部16の信頼性を高めることができる。
【0028】
架橋部113を空隙110の長手方向中央部に配置すると、これを空隙110の長手方向両端部に配置する場合に比べて、架橋部113と第1電極31の端部との間で誘電体33を介さずに放電が生じるリスクを下げることができる。
【0029】
平面視において第2電極32を誘電体33よりも小さく形成し、誘電体33の周縁部で構成される包囲領域195で囲むと、第2電極32の全体を誘電体33の周縁の内方に位置させて、誘電体33を介さない電極31・32間の放電を確実に防止することができる。
【0030】
第2電極32を囲む包囲領域195を矩形環状に形成し、その長辺を短辺よりも太く設定すると、第2電極32が誘電体33に対して垂直軸まわりに変位してしまった場合に、第2電極32の端部が誘電体33の周縁に近付かないようにして、電極31・32どうしが誘電体33を介さずに放電するのをよく防止することができる。
【0031】
放電ケース34の放電開口35の周縁部が、誘電体33の包囲領域195の上面に密着する上封止部197を構成していると、第1電極31を誘電体33に加えて上封止部197によっても第2電極32から隔てることができ、誘電体33を介さない電極31・32間の放電をより確実に防止することができる。
【0032】
誘電体33の包囲領域195の下面に密着する下封止部198を設けると、第2電極32を下封止部198で囲んで第1電極31から隔てることができ、誘電体33を介さない電極31・32間の放電をより確実に防止することができる。
【0033】
第2電極32の下面側にシート状のクッション材58を配置すると、第2電極32を誘電体33とクッション材58で上下から挟持して外部衝撃などから保護することができ、また、放電ケース34内における誘電体33の厚み寸法の設計公差をクッション材58で吸収することができる。さらに、クッション材58の周縁部が、誘電体33の包囲領域195の下面に密着する下封止部198を構成していると、誘電体33の下面側をクッション材58で覆って外部衝撃などから保護することができる。
【0034】
第1電極31と誘電体33と第2電極32で構成される電極ユニット71の全体を、放電ケース34の外ケース37と内ケース38により上下から挟持すると、各電極31・32と誘電体33の支持構造を個別に設ける場合に比べて、放電ケース34ひいては放電装置の構造を簡素化することができる。
【0035】
第1電極31の周面を上下から挟持する上支持部65と下支持部66で電極支持構造64を構成すると、第1電極31を上下から上支持部65と下支持部66で挟持するだけの簡単な操作で、放電ケース34に対して第1電極31を固定することができる。
【0036】
第2電極32を誘電体33の下面にフィルム状に形成すると、第2電極32を薄くして放電装置の全体を上下方向にコンパクト化するとともに、第2電極32の材料費を抑えることができる。
【0037】
第2電極32をチタンで形成すると、第2電極32の耐食性を高めて、第2電極32を含む放電装置の全体としての寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態に係る放電装置の電極対の平面図である。
図2】同放電装置を搭載するオゾナイザーを模式的に示す縦断正面図である。
図3】オゾナイザーの制御系を示すブロック図である。
図4】同放電装置の斜視図である。
図5】同放電装置の分解斜視図である。
図6】同放電装置を構成する放電部とベース部の斜視図である。
図7】同放電装置の縦断正面図である。
図8図7におけるB-B線断面図である。
図9】放電部の構成部材の縦断側面図である。
図10図7におけるA-A線断面図である。
図11】分離された放電部とベース部の図7におけるA-A線断面図である。
図12図7におけるC-C線断面図である。
図13】分離された放電部とベース部の図7におけるC-C線断面図である。
図14】ベース部と裏返した放電部の平面図である。
図15】光検出部の検出値に基づく放電装置と報知手段の動作を説明するタイムチャートである。
図16】本発明の第2実施形態に係る放電装置の縦断正面図である。
図17図16におけるD-D線断面図である。
図18】同放電装置の放電部を構成する電極対の平面図である。
図19】本発明の第3実施形態に係る放電装置の電極対の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1実施形態) 本発明に係る放電装置の第1実施形態を図1ないし図14に示す。本実施形態の放電装置は、卓上用のオゾナイザー(オゾン発生装置)に内蔵されて、空気中で放電してオゾンを発生させる役割を担う。本実施形態における前後、左右、上下とは、図2および図4に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。第2実施形態以降においても同様とする。
【0040】
図2に示すように、オゾナイザー1の基体となるケーシング2は、その過半部を占める主ケース3と、主ケース3の上面に着脱自在に接合される副ケース4とからなり、両ケース3・4を接合することによりケーシング2内に略L字状の風路5が形成される。風路5内には、放電によりオゾンを発生させる放電装置6と、発生したオゾンを風路5から放出するための送風ファン7などが設けられる。風路5の吸込口8は主ケース3の右側壁に設けられており、この吸込口8に面して送風ファン7が配置されている。副ケース4の上壁左部は、右から左へ下り傾斜する傾斜面になっており、この傾斜面に風路5の吹出口9が設けられている。送風ファン7は、吸込口8から吹出口9へ向かう左向きの気流を風路5内に形成して、オゾンを含む空気を吹出口9から放出する。
【0041】
風路5は、吸込口8(上流側)から吹出口9(下流側)へ向かって、主ケース3のみで形成される上流部11と、両ケース3・4を上下に接合して形成される中流部12と、副ケース4のみで形成される下流部13とに区分されている。送風ファン7は駆動源であるファンモーター14とともに上流部11に配置され、放電装置6は中流部12に配置されている。放電装置6は、下側のベース部15と上側の放電部16からなり、ベース部15は中流部12の下半部すなわち主ケース3に固定され、放電部16はベース部15に着脱自在に装着されている。ベース部15には、放電部16の装着の有無を検出する装着検出部17(図3参照)が設けられている。放電装置6の詳細については後述する。
【0042】
中流部12の下半部が主ケース3で区画されるのに対し、上半部は副ケース4で区画されている。そのため、主ケース3から副ケース4を分離すると、放電装置6の上面を露出させて、放電装置6のメンテナンスを行うことができる。具体的には、例えば、放電部16をベース部15から分離したうえで、放電部16の表面を清掃することができる。主ケース3における副ケース4との接合面には、副ケース4の接合の有無を機械的に検出する安全スイッチ18が設けられている。
【0043】
主ケース3は、オゾナイザー1の全体を制御する制御部21と、昇圧回路(トランス)22とを内蔵する。また主ケース3は、電源コードを介して商用電源などの電源部23(図3参照)に接続されており、主ケース3の表面(左面)には電源投入用の電源スイッチ24が設けられている。昇圧回路22は、電源部23から供給される例えば100Vの交流電圧を数kVに昇圧し、その高電圧を放電装置6に印加する。また主ケース3には、電源部23から供給される交流電圧を所定値(例えば5V、12V、24Vなど)の直流電圧に変換する不図示のスイッチング電源が内蔵されている。この直流電圧は制御部21のICやファンモーター14の駆動源となる。昇圧回路22は、スイッチング電源から出力される直流電圧を昇圧して放電装置6に印加するものであってもよい。電源部23は直流電圧を出力する電源アダプターであってもよく、その場合も昇圧回路22は直流電圧を昇圧して放電装置6に印加する。
【0044】
電源スイッチ24がユーザーによりオン操作されると、制御部21はまず装着検出部17および安全スイッチ18の出力に基づき放電部16と副ケース4の有無を確認する。放電部16がベース部15に装着されていること、および、副ケース4が主ケース3に接合されていることを確認すると、制御部21は電源部23からファンモーター14と昇圧回路22への通電を開始する。ファンモーター14と昇圧回路22に電力が供給されると、送風ファン7と放電装置6が駆動する。これにより、風路5内を吸込口8から吹出口9へ向かう気流が形成されて、放電装置6の周囲で発生したオゾンを含む空気が吹出口9から吹き出される。副ケース4または放電部16の分離が確認されると、制御部21は昇圧回路22などへの通電を直ちに中断するようになっており、これによれば、昇圧回路22から高電圧が印加されている状態の電極31・32(後述)や端子85・86(後述)などにユーザーが触れてしまう感電事故を確実に防止することができる。
【0045】
なお、ファンモーター14と昇圧回路22への通電を開始するとき、制御部21はランプからなる報知手段27を例えば緑色に点灯させて、オゾナイザー1が駆動中であることをユーザーに知らせるようにしてもよい。また、放電部16と副ケース4の存在を確認できない場合は、報知手段27を例えば赤色に点灯させて、そのことをユーザーに知らせるようにしてもよい。
【0046】
風路5における放電装置6の近傍には、放電部16が放電時に発する青色光を検出する光検出部28が設けられている。光検出部28の具体例としては、フォトダイオードを利用したカラーセンサやカメラなどを挙げることができる。制御部21は、光検出部28が検出する青色光の光量に基づいて、放電部16の汚れ(粉塵などの堆積)の程度を判定することができる。
【0047】
光検出部28の検出値(青色光の光量)が所定値未満、すなわち汚れの程度が大きいと判定した場合、制御部21は報知手段27を作動、例えば黄色に点灯させて、ユーザーに放電装置6の早期の清掃を促すことができる。それと同時に、放電装置6に印加する電圧を上昇させてもよく、これによれば、放電部16の汚れ(粉塵などの堆積)に起因するオゾンの発生量の低下を抑制して、汚れが無い場合に近い量のオゾンを発生させることができる。具体的には、例えば、変圧比が異なる複数の昇圧回路22をオゾナイザー1や放電装置6に搭載しておき、使用する昇圧回路22を切り替えることにより、放電装置6に印加する電圧を上昇させることができる。あるいは、昇圧回路22を構成するスイッチング素子のデューティー比率を制御して、放電装置6に印加する電圧を上昇させることができる。また、放電装置6の電圧を上昇させるのに代えて、放電装置6(昇圧回路22)やファンモーター14への通電を停止してもよい。オゾンの発生量が不十分となるおそれがある状況下で放電装置6等の駆動を続けるよりも、これを停止させることで、無駄な電力の消費を避けることができる。
【0048】
図4に示すように放電装置6は、風路5内に固定されるベース部15と、ベース部15の上側に着脱自在に装着される放電部16とで構成される。ベース部15に対して放電部16が着脱自在であると、比較的汚れやすい放電部16をベース部15から分離した状態で簡便に清掃することができる。また、放電部16が故障した場合に放電部16のみを交換することができ、ベース部15を含む放電装置6の全体を交換する場合に比べて修理コストを削減することができる。放電装置6あるいはオゾナイザー1の製造ラインにおいて作業者が放電部16をベース部15に簡便に装着できる利点もある。放電部16の全体は、垂直軸のまわりに回転対称、厳密には2回対称に形成されている。すなわち、図4に示す放電部16の向きを第1姿勢と定義し、この第1姿勢から放電部16を垂直軸のまわりに180°回転させた状態を第2姿勢と定義するとき、放電部16を第1姿勢と第2姿勢のどちらでもベース部15に対して適正に装着することができる。
【0049】
放電部16は、上下に対向する第1電極31および第2電極32と、両電極31・32の間に介在する誘電体33と、これらを支持する放電ケース34などで構成される。上側の第1電極31は、左右に真っ直ぐに伸びる丸棒状に形成されて、誘電体33の上面に当接している。下側の第2電極32は、スパッタリングなどの成膜法によって誘電体33の下面に形成されたフィルムで構成されている。各電極31・32は、銀や銅、ステンレスなどの任意の金属や合金で形成することができる。本実施形態では、第1電極31と第2電極32を耐食性に優れるチタンで形成した。また、丸棒状の第1電極31の直径を1mm、フィルム状の第2電極32の厚みを50~150nmとした。第2電極32を薄いフィルムとすることにより、放電部16を上下寸法が小さいコンパクトなものとすることができる。
【0050】
誘電体33は、ガラスなどの絶縁体を素材として、左右に長い水平な矩形板状に形成されている。絶縁性のガラスの具体例としては、ホウケイ酸ガラスや石英ガラスを挙げることができる。本実施形態では誘電体33の厚みを0.7mmとした。放電ケース34は絶縁性のプラスチックで形成されており、その上面には第1電極31および誘電体33を上方へ露出させる矩形状の放電開口35が形成されている。
【0051】
図5に示すように放電ケース34は、上下に開口を有する矩形枠状の外ケース37と、下向きに開口する矩形皿状の内ケース38とで構成されており、外ケース37の内側に下方から内ケース38が嵌め込まれている。外ケース37の上側の開口が先の放電開口35として機能し、同ケース37の下側の開口は内ケース38で塞がれる。両ケース37・38の前後壁のそれぞれには、突起39と凹部40からなる係合構造が設けられている(図12参照)。本実施形態では内ケース38の前後壁の外面に突起39を設け、外ケース37の前後壁の内面に凹部40を設けたが、もちろんこの配置は逆であってもよい。係合構造を両ケース37・38の左右壁に設けることもできる。
【0052】
図6に示すように、ベース部15の基体となるベースケース42は、放電ケース34の外ケース37および内ケース38と同様に絶縁性のプラスチック成形品からなり、相対的に小形の上段部43と大形の下段部44を一体に備える矩形かつ段付きの御立ち台状に形成されている。ベースケース42の下段部44は、複数個のビス45で主ケース3に固定される。内ケース38の内部には、上段部43を受け入れて前後および左右から取り囲む下向きの装着凹部46が設けられている。この装着凹部46の底面中央には、下向きの係合凸部47が突出形成されており、これに対応して上段部43の天面中央には、係合凸部47を受け入れる上向きの係合凹部48が凹み形成されている。係合凸部47は横断面が長方形の扁平な突起からなり、係合凹部48は係合凸部47より僅かに大きい長方形状の扁平な凹部で構成されている。
【0053】
放電部16を上方からベース部15に装着すると、図7および図8に示すように、ベースケース42の上段部43が放電ケース34の内ケース38に下方から内嵌して装着凹部46に係合するとともに、係合凸部47が係合凹部48に係合する。これらの係合により、ベース部15に対する放電部16の水平方向のズレ動きと垂直軸まわりの回転とが規制される。なお、係合凸部47と係合凹部48の平面形状は長方形に限られず、例えばその他の多角形や長円形などの非円形状であれば、係合凸部47の周囲を係合凹部48の壁面で隙間無く囲んで、放電部16のズレ動きと回転を規制することができる。なお、複数組の係合凸部47と係合凹部48を設けることもでき、この場合は両者47・48の平面形状にかかわらず、放電部16のズレ動きと回転を規制することができる。
【0054】
放電部16の装着状態においては、内ケース38と上段部43の水平な天壁どうしが上下に対向する。以下では内ケース38の天壁のうち上段部43に対向する部分(左右両端部を除く部分)を上対向壁51と呼称し、上段部43の天壁を下対向壁52と呼称する。これら対向壁51・52には、放電部16がベース部15から上方へ意図せず分離するのを規制して、放電部16を装着状態に保持するための装着保持手段が設けられる。この装着保持手段は、内ケース38の上対向壁51に取り付けられた直方体状の磁石53と、上段部43の下対向壁52に取り付けられた矩形板状の磁性体54とで構成される。
【0055】
具体的には、上対向壁51の上面中央には、上向きに開口して磁石53を収容する上収容凹部55が形成されており、下対向壁52の下面中央には、下向きに開口して磁性体54を収容する下収容凹部56が形成されている。上収容凹部55に収容された磁石53の上面は、上対向壁51の上面と略面一になっている。磁性体54の下面には、磁気センサーからなる先述の装着検出部17が固定されており、装着検出部17は磁性体54とともに下収容凹部56に収容されている。
【0056】
装着保持手段を構成する磁石53は、上対向壁51を挟んで係合凸部47の裏側(上側)に配置されており、また磁性体54は、下対向壁52を挟んで係合凹部48の裏側(下側)に配置されている。そのため、係合凸部47を係合凹部48に係合させたときに、磁石53は磁性体54に近接する真上に位置することになり、磁性体54が磁石53に確実に吸着される。この吸着力により、放電部16のベース部15からの意図しない上方への分離を規制することができる。磁性体54の下側に位置する装着検出部17は、磁石53が発する磁界を検出すると、制御部21へ信号を出力する。制御部21は当該信号を受信することにより、放電部16がベース部15に装着されていると判断することができる。磁性体54をベースケース42の上段部43に配置すると、これを下段部44に配置する場合に比べて、放電装置6が外力を受けたときの衝撃が磁性体54まで届き難くなり、放電部16がベース部15から外れ難くなる。
【0057】
上収容凹部55に収容された磁石53は、上収容凹部55の壁面に前後左右の四方を囲まれることにより、水平方向のズレ動きと垂直軸まわりの回転とを規制されている。同様に、下収容凹部56に収容された磁性体54も、下収容凹部56の壁面に前後左右の四方を囲まれることにより、水平方向のズレ動きと垂直軸まわりの回転とを規制されている。なお、磁石53と磁性体54の平面形状は長方形に限られず、例えばその他の多角形や長円形などの非円形状であれば、その周囲を収容凹部55・56の壁面で囲んで、磁石53と磁性体54のズレ動きや回転を規制することができる。また、本実施形態とは逆に、放電部16に磁性体を配し、ベース部15に磁石を配してもよく、放電部16とベース部15の両方に磁石を配してもよい。ただし、放電部16の側に磁石53を配すると、ベース部15から分離した放電部16をステンレス製のシンクなどに吸着保持させることができ、放電部16を水洗後に乾燥させる際などに便利である。
【0058】
内ケース38の上対向壁51(および磁石53)の上面には、両面テープからなるクッション材58を介して第2電極32と誘電体33が接着固定されている。クッション材58は誘電体33よりも一回り大きい矩形シート状に形成されており、第2電極32は誘電体33とクッション材58によって上下から挟持される。クッション材58の周縁部は弾性変形して誘電体33に密着している。図8に示すように、外ケース37の前後壁の上端部は、棒状の第1電極31に向かって内方へ張り出しており、この張り出し部の下面には、誘電体33の前後縁を受ける上側の内受部59と、クッション材58の前後縁を受ける下側の外受部60とが階段状に形成されている。
【0059】
誘電体33は、外ケース37(内受部59)と内ケース38(上対向壁51)とにより上下から挟持される。誘電体33と内ケース38の間に位置するクッション材58は、上から誘電体33と外受部60、下から内ケース38に押されることで弾性変形して、誘電体33の厚み寸法などの設計公差を吸収する。なお誘電体33は、外ケース37の内受部59と外受部60の間の垂直壁により前後方向に位置決めされる。また図5に示すように、外ケース37の上部には、放電開口35の左右縁を構成する左右一対の上壁61が設けられており、両壁61・61の互いに対向する端面により、誘電体33は左右方向に位置決めされる。
【0060】
棒状の第1電極31は、放電ケース34に設けられた左右一対の電極支持構造64で支持される。電極支持構造64は、外ケース37における放電開口35の左右両側に設けられる上支持部65と、内ケース38の天壁の左右両端部(上対向壁51の左右両側)から突出する下支持部66とで構成される。上支持部65は、外ケース37の各上壁61の前後中央に、左右に伸びるトンネル状に膨出形成されている。上支持部65の内面には、第1電極31の上半部を受ける上半円状の受溝67が凹み形成されており、各受溝67の左右中途部には、後述する第1通電体87の電極接続部90を受け入れる逃げ凹部68が形成されている(図7参照)。各受溝67の左右両端部のうち外側(第1電極31の先端側)が、下支持部66の突端面に凹み形成された下半円状の受部69(図9参照)の真上に位置し、両者67・69が協同して第1電極31を上下から挟持する。外ケース37の左右壁の内面には、受溝67に連続して下向きに伸びる導入溝70(図9参照)が凹み形成されている。放電部16の組み立ての際は、この導入溝70に沿って第1電極31を上方へスライドさせて、これを受溝67に受け止められる位置まで移動させることができる。
【0061】
本実施形態の電極支持構造64は、第1電極31の周面にそれぞれ密着する上支持部65(受溝67)と下支持部66(受部69)で構成されて、第1電極31の上下動と前後動を規制しているが、このことは本発明において必須ではなく、電極支持構造64は第1電極31の多少の遊動を許容するものであってもよい。例えば、受溝67と受部69で囲まれる孔を上下方向の長円形とし、その長さの範囲内で第1電極31の上下動を許容することができる。要は、電極支持構造64は、第1電極31を支持するという最低限の機能を有していればよい。また電極支持構造64は、第1電極31の一端部のみに配置されて、これを片持ち支持するものであってもよい。これによれば、左右一方の電極支持構造64を省略して、その分だけ放電ケース34の構造を簡素化して、放電装置6のコストダウンに寄与することができる。この場合の第1電極31は、直棒状、ジグザグ状、クランク状、蛇行状、渦巻状などに形成することができる。
【0062】
第1電極31と誘電体33と第2電極32の組を電極ユニット71(図8参照)と定義するとき、電極ユニット71は放電ケース34内でクッション材58と共に、外ケース37と内ケース38により上下から挟持される。具体的には、電極ユニット71の上部を構成する第1電極31が、外ケース37の上支持部65により上方から支持され、電極ユニット71の下部を構成する第2電極32と誘電体33が、クッション材58を介して内ケース38の上対向壁51により下方から支持される。
【0063】
なお、第1電極31が誘電体33の上面に当接することは必須ではなく、両者31・33は僅かな隙間を介して上下に正対していてもよい。具体的には、例えば、第1電極31から下方へ離れた位置で誘電体33(および第2電極32)を支持する支持構造を、電極支持構造64とは別に設けることができる。あるいは、第1電極31と誘電体33の間にスペーサーやブッシュを介在させることができる。この場合、後述する第1通電体87で第1電極31を下向きに付勢して、スペーサー等に押し付けるようにしてもよい。
【0064】
放電装置6の駆動すなわち放電に伴って、放電部16の上面、特に第1電極31や誘電体33の表面には、硝酸塩を主成分とする白い粉塵が堆積することがある。オゾン生成時には、空気中の窒素と酸素と水分が反応して硝酸が生じることがあり、これが硝酸塩すなわち粉塵の堆積の原因となる。この粉塵は放電の障害となるため定期的に除去することが望ましく、それには水洗いの他に清掃ブラシを用いることができる。
【0065】
清掃ブラシの移動方向は、第1電極31の伸び方向に一致する左右方向とすることが望ましく、これにより、清掃ブラシの毛先を第1電極31の一端から他端へ向かって移動させて、第1電極31と誘電体33の表面を同時に清掃することができる。図4に示すように、清掃ブラシの毛先を誘電体33の表面へスムーズに導入し、また、該表面の粉塵を捕捉した毛先をスムーズに導出するため、放電ケース34の外ケース37の上面には、誘電体33(放電開口35)の左右両側に隣接する上向きの溝部73が設けられている。誘電体33の上面と溝部73の底面とは面一になっている。そのため、粉塵が誘電体33と溝部73の間に引っ掛かるのを回避して、これを残さず容易に掃き出すことができる。
【0066】
また、放電ケース34の外ケース37の上面には、誘電体33(放電開口35)を間にして、第1電極31と平行に伸びる一対の突条74が突設されている。各突条74の左右中央部の誘電体33に臨む側面は中央ガイド面75を構成し、中央ガイド面75の左右両側に連続する側面は、溝部73を区画する端部ガイド面76を構成する。本実施形態における溝部73は、突条74(端部ガイド面76)と上壁61と上支持部65により区画されており、左右の各上支持部65の前後両側に溝部73が形成されている。
【0067】
各突条74の中央ガイド面75は、清掃ブラシの毛先を左右方向に案内するとともに、該毛先を誘電体33の表面に留めて、該表面の的確な清掃に寄与する。左右の各端部ガイド面76は、中央ガイド面75に滑らかに連続している。これらガイド面75・76によれば、清掃ブラシの毛先を一方の溝部73から誘電体33の表面へスムーズに導入し、該表面から他方の溝部73へスムーズに導出することができる。ユーザーは、例えば左側の溝部73から清掃ブラシを導入し、同ブラシを右方へ真っ直ぐ移動させて粉塵を捕捉し、これを右側の溝部73から掃き出すことができる。この作業を第1電極31の前側と後側のそれぞれで行うと、粉塵の除去すなわち清掃が完了する。
【0068】
以上の清掃作業は、放電部16をベース部15から分離した状態で行われる。これを取り外す際は左右の上支持部65が摘みとして機能する。これら上支持部65が摘みであることをユーザーに示すため、放電ケース34(外ケース37)の左右外側面の前後中央には、突起からなる目印79が設けられている。これによりユーザーは、目印79の直上にある上支持部65が摘みであると認識することができ、例えば一方の上支持部65に親指を、他方の上支持部65に人差し指を宛てがい、放電部16を左右両側から2本の指で摘んで引き上げることにより、これをベース部15から分離することができる。本実施形態に係る放電部16(放電ケース34)の左右寸法は約45mm、前後寸法は約16mmである。
【0069】
第1電極31よりも上方へ大きく突出する上支持部65を摘みとして用いると、ユーザーが第1電極31や誘電体33に触れてこれらに皮脂などが付着することをよく防止できる。上支持部65が摘みであることを目印79で示すと、ユーザーが上支持部65以外の部分、例えば放電ケース34の前後壁を摘み、誤って第1電極31や誘電体33に触れてしまうことをよく防止できる。目印79は放電ケース34に印刷されたマークなどであってもよいが、これを突起とすることで、目印79を滑り止めとしても機能させて、ユーザーに放電ケース34を確りと保持させることができる。
【0070】
また、第1電極31に上方から被さるトンネル状の上支持部65は、第1電極31よりも上方へ大きく突出しているため、放電部16が上下反転して落下した際に床面などに先当たりして、第1電極31に直接の衝撃が及ぶのを防止することができる。つまり上支持部65は、第1電極31を落下衝撃から保護する第1保護部81を兼ねている。また、外ケース37の前後に設けた一対の突条74も、第1保護部81(上支持部65)に比べると突出寸法は小さいものの、第1電極31よりは上方へ突出しており(図7参照)、第1保護部81と同様に床面などに先当たりすることができる。つまり突条74は、第1電極31を落下衝撃から保護する第2保護部82を構成する。
【0071】
次に、各電極31・32への通電構造について説明する。図7に示すようにベース部15には、昇圧回路22から数kVの交流電圧を供給される第1端子85と第2端子86が設けられており、第1電極31は第1通電体87を介して第1端子85に、第2電極32は第2通電体88を介して第2端子86に、それぞれ電気的に接続される。つまり昇圧回路22は、端子85・86および通電体87・88を介して、第1電極31と第2電極32に高い交流電圧を印加する。端子85・86および通電体87・88は、金メッキを施したステンレスなどの金属で形成される。
【0072】
図10に示すように第1通電体87は、1本の導線(金属線)を曲げて成形されており、第1電極31の側すなわち上側から順に、電極接続部90と巻締部91と端子接続部92を一体に備える。電極接続部90は、左右方向を軸心方向とするコイル状に形成されて、第1電極31の周面に密着するように巻き付けられている(図7参照)。巻締部91は、側面視で垂直部分と水平部分を有するL字状に形成されて、該垂直部分に連続する電極接続部90の一端を下向きに付勢する。電極接続部90の一端を巻締部91で下方へ引っ張ることにより、第1電極31の周面に対する電極接続部90の密着性を高めることができる。このように巻締部91がばね性を発揮するのは、巻締部91の水平部分が外ケース37の上壁61の下面すなわち座部94で受け止められているためである。
【0073】
本発明において第1電極31の断面形状は正円に限られず、これ以外の例えば楕円、長円、正多角形、ひし形、十字形、D字形などであってもよい。これらの場合、電極接続部90は第1電極31に対応して、その周面に密着(線接触)が可能な形状に形成される。電極接続部90が巻き付けられる第1電極31の端部のみにDカット等を施して、上記各種の非円形断面とすることもできる。第1電極31の非円形断面部分の周面に電極接続部90を密着(線接触)させると、第1電極31の中心軸まわりの回転を電極接続部90で規制することができる。また第1電極31は、中空の丸パイプ状や角パイプ状に形成されていてもよい。
【0074】
巻締部91の下側に連続する端子接続部92は、上下方向を軸心方向とする圧縮コイルばね状に形成されている。図10に示す放電部16の装着状態においては、端子接続部92の下端が第1端子85の上面に弾性的に密着して、第1通電体87が第1端子85に電気的に接続される。このときの端子接続部92は上下方向に圧縮されており、その上端は巻締部91の水平部分と同様に座部94で受け止められている。端子接続部92の下端すなわち第1接点95は円環状に形成されており、第1端子85の上面には第1接点95に内嵌するばね受部96が突出形成されている。ばね受部96が第1接点95の内側に侵入して係合することにより、第1端子85に対する端子接続部92のズレ動きが規制されて、両者85・92の電気的接続がより安定化する。
【0075】
以上の電極接続部90と巻締部91と端子接続部92を一体に備える第1通電体87によれば、部品点数を少なくして製造時の組立の手間やコストを削減することができる。圧縮状態の端子接続部92が第1端子85に弾性的に密着する形態によれば、両者85・92の電気的接続が安定かつ確実なものとなり、加えて、放電ケース34(外ケース37)とベースケース42などの上下寸法の設計公差を吸収することができる。また端子接続部92は、巻締部91の水平部分を介して、その垂直部分から水平方向(前後方向)に離間している。これによれば、巻締部91の垂直部分から電極接続部90に作用する下向きの付勢力が、端子接続部92の反発力で打ち消されることを防止して、当該付勢力で電極接続部90を第1電極31の周面によく密着させることができる。
【0076】
外ケース37の上壁61の下面には、座部94を囲むように、第1通電体87の端子接続部92用の収納穴98を区画する略円筒状の収納ボス99が下向きに突設される。端子接続部92の上半部が収納穴98に収納されており、このように端子接続部92の上半部の周囲を収納ボス99で取り囲むことにより、該上半部を外力から保護して変形などの破損を防止することができる。収納ボス99の周壁の一部には、巻締部91の水平部分の挿通を許す縦溝が形成されている。
【0077】
内ケース38の天壁には、収納ボス99および端子接続部92の挿通を許す挿通孔100が設けられている。挿通孔100の周面は、収納ボス99の突端部(下端部)の外周面に近接してこれを取り囲んでいる。つまり挿通孔100は、収納ボス99の突端部を外力から保護して変形などの破損を防止することができる。ベースケース42の下段部44の上面には、放電部16の装着時に収納ボス99に対向する端子台101が突設されている。端子台101は上向きに開口する四角筒状に形成されており、その内部に第1端子85のばね受部96が配置されている。
【0078】
図11に示すように、ベース部15から放電部16を分離すると、第1通電体87は放電部16と一体に移動し、端子接続部92は第1端子85から分離することで、圧縮状態から自然長L1に復帰する。この自然長L1に対して、収納穴98の深さ(収納ボス99の高さ)D1は、不等式(L1/2<D1<L1)を満たす寸法に設定される。収納穴98の深さD1が端子接続部92の自然長L1の2分の1より大きい、つまり端子接続部92の上側の過半部が収納穴98に収納されていると、比較的座屈しやすい端子接続部92の上下中央部を収納ボス99で取り囲んで、その座屈を的確に防止することができる。また、端子接続部92は収納穴98の深さD1を超えて(深さD1より短くなるように)縮むことは無いため、この深さD1を端子接続部92の自然長L1の2分の1より大きく設定することで、放電部16の装着時に端子接続部92が過剰に圧縮されないようにして、端子接続部92の劣化を抑えて第1通電体87の寿命を伸ばすことができる。自然長L1における端子接続部92の下端は、放電ケース34の下端よりも上方に位置しており、これによれば、ベース部15から分離した放電部16を卓上などに置いたときに、端子接続部92が卓上に触れない、つまり圧縮されないようにして、端子接続部92の劣化を抑えて寿命を伸ばすことができる。
【0079】
図12および図13に示すように、第2端子86から第2電極32への通電は、前後一対の第2通電体88を介して行われる。各第2通電体88は、1本の導線(金属線)を素材として、上下方向を軸心方向とする圧縮コイルばね状に形成されている。先の第1通電体87が放電部16の第1電極31に連結されて、ベース部15の第1端子85から分離可能であるのに対し、この第2通電体88はベース部15の第2端子86に連結されて、放電部16の第2電極32から分離可能になっている。第2通電体88の下端は第2端子86にかしめ固定されており、これにより第2通電体88は第2端子86により自立状態に支持される。図12に示す放電部16の装着状態においては、各第2通電体88は上下方向に圧縮し、その上端が第2電極32の下面に弾性的に密着する。
【0080】
第2通電体88の上端は円環状に形成されて、第2電極32の下面に線接触しており、これによれば、両者32・88の接触圧を小さくして、第2電極32の摩耗を抑制することができる。また、第2電極32や第2通電体88の表面の一部が経年により酸化したときにも通電不良を生じ難くして、第2電極32に印加される電圧を高いレベルに維持することができる。
【0081】
ベースケース42の下対向壁52には、第2通電体88用の収納穴104を区画する円筒状の収納ボス105・106が、上向きおよび下向きに突設されている。第2通電体88の上端部を除く下側の過半部が収納穴104に収容されており、このように第2通電体88の下側の過半部を収納ボス105・106で取り囲むことにより、該過半部を外力から保護して変形などの破損を防止することができる。下収納ボス106の突端部(下端部)は第2端子86に当接して、第2端子86と第2通電体88の連結(かしめ固定)部分を取り囲んでいる。上収納ボス105の突端部(上端部)は、放電部16をベース部15に装着したときに第2電極32の下面に非接触かつ近接する。またこのとき第2通電体88の上端部は、上収納ボス105の突端すなわち収納穴104の上開口から突出して、第2電極32の下面に密着する。
【0082】
放電部16の内ケース38の上対向壁51およびクッション材58には、上収納ボス105の挿通を許す挿通孔107・108がそれぞれ設けられている。各挿通孔107・108の内周面は、上収納ボス105の外周面に近接してこれを取り囲んでいる。これら挿通孔107・108によれば、第2電極32に対する上収納ボス105の水平方向のズレを防止することができ、これにより第2通電体88を第2電極32の適切な個所へ確実に当接させることができる。また、上収納ボス105の突端部の外周面は、上窄まりのテーパー状に形成されており、その挿通を許す上対向壁51の挿通孔107の下部には、下拡がりテーパー状のガイド面109が形成されている。これらのテーパー面によれば、放電部16をベース部15に装着する際に、上収納ボス105を挿通孔107の内部へ容易に案内することができる。なおガイド面109は、本実施形態のような一定角度の傾斜面以外に、傾きが変化する傾斜面や湾曲面であってもよく、挿通孔107の下端の面取りにより生じるC面やR面であってもよい。
【0083】
図13に示すように、ベース部15から放電部16を分離すると、第2通電体88は第2電極32から分離することで、圧縮状態から自然長L2に復帰する。この自然長L2に対して、収納穴104の深さD2は、不等式(L2/2<D2<L2)を満たす寸法に設定される。収納穴104の深さD2が第2通電体88の自然長L2の2分の1より大きい、つまり第2通電体88の下側の過半部が収納穴104に収納されていると、比較的座屈しやすい第2通電体88の上下中央部を収納穴104で取り囲んで、その座屈を的確に防止することができる。さらに、第2通電体88は収納穴104の深さD2を超えて(深さD2より短くなるように)縮むことは無いため、この深さD2を第2通電体88の自然長L2の2分の1より大きく設定することで、放電部16の装着時に第2通電体88が過剰に圧縮されないようにして、第2通電体88の劣化を抑えて寿命を伸ばすことができる。また、上収納ボス105の高さTは、収納穴104の深さD2の2分の1よりも小さく設定される(T<D2/2)。これによれば、上収納ボス105の下対向壁52からの突出量を小さくして、上収納ボス105が外力を受けたときの変形や破損をよく防止することができる。
【0084】
圧縮状態の第2通電体88が第2電極32に弾性的に密着する形態によれば、両者32・88の電気的接続が安定かつ確実なものとなり、加えて、ベースケース42の上下寸法や誘電体33の上下厚みなどの設計公差を吸収することができる。第2電極32が第2通電体88を受ける面の裏側すなわち上面を、ガラス板からなる誘電体33で支持することにより、第2電極32を補強してその変形などを防止することができる。誘電体33は第2電極32よりも十分に厚いため、第2電極32を確りと補強することができる。第2通電体88から第2電極32を介して誘電体33に作用する上向きの弾性力は、外ケース37の内受部59で確りと受け止められる。
【0085】
一対の第2通電体88で第2電極32と第2端子86を電気的に接続すると、仮に一方の第2通電体88と第2電極32または第2端子86の間で接続不良が発生しても、他方の第2通電体88を介して通電を行えるので、放電装置6の信頼性が向上する。一対の第2通電体88のばね定数は同一であり、これによれば、第2電極32に作用する弾性力を前後どちらかに偏ることなく均一にして、両方の第2通電体88を第2電極32に適切に密着させて、その間の電気的接続を安定化させることができる。また、各第2通電体88から第2電極32に作用する上向きの弾性力は、誘電体33を介して第1電極31にも作用する。この上向きの弾性力と、第1通電体87の巻締部91が電極接続部90の一端を下方へ引っ張る弾性力との相乗効果によって、第1電極31の周面に対する電極接続部90の密着性がより向上する。
【0086】
もちろん、圧縮状態の第2通電体88および第1通電体87の端子接続部92が発揮する上下方向の反発力は、先述の装着保持手段を構成する磁石53と磁性体54の間の吸着力よりは十分に小さく、第2通電体88と端子接続部92の反発力のみによって放電部16がベース部15から分離することは無い。ただし、装着保持手段の吸着力の一部は第2通電体88と端子接続部92の反発力で相殺されるため、ユーザーは放電部16の清掃などの際に、より軽い力でこれをベース部15から分離することができる。
【0087】
図14に示すように、第1端子85(ばね受部96)がベース部15の左右一端部(ここでは左端部)のみに配置されるのに対し、第1通電体87は第1電極31の左右両端部に配置されている。このうち一方の第1通電体87のみが、放電部16の装着時に第1端子85に密着して、第1端子85から第1電極31への通電に寄与する。また、一対の第2通電体88がベース部15の左右一側(ここでは右側)のみに配置されるのに対し、その挿通を許す挿通孔107・108は放電部16の左右両側に配置されている。このうち一方の挿通孔107・108のみが、放電部16の装着時に第2通電体88を挿通させて、第2端子86から第2電極32への通電に寄与する。
【0088】
第1電極31の左右両側に第1通電体87を配置するとともに、放電部16の左右両側に挿通孔107・108を配置したのは、先述のように放電部16が垂直軸のまわりに2回対称であることに起因する。放電部16を第1姿勢でベース部15に装着したときは、左側の第1通電体87と右側の挿通孔107・108がその機能を発揮し、放電部16を第2姿勢で装着したときは、右側の第1通電体87と左側の挿通孔107・108がその機能を発揮する。つまり、2回対称の放電部16を第1姿勢と第2姿勢のどちらでベース部15に装着しても、各電極31・32と各端子85・86が通電体87・88を介して電気的に接続されるようになっており、これによれば、ユーザーが放電部16の装着時にその向きを気にする必要が無いユーザーフレンドリーな放電装置6とすることができる。
【0089】
なお、ベースケース42の平面視における第1端子85(ばね受部96)の対角位置には、端子台101の類は設けられていない。そのため、一方の第1通電体87の端子接続部92が第1端子85に密着するとき、他方の第1通電体87の端子接続部92は、自然長に伸びた状態でベースケース42の下段部44の上面に臨む。つまり、端子接続部92が圧縮されないようにして、その劣化を抑えて寿命を伸ばすことができる。また、放電部16の第1姿勢と第2姿勢とでは、第2電極32が第2通電体88に密着される個所が異なる。これによれば、第2電極32の摩耗を抑えてその寿命を伸ばすことができる。
【0090】
第1通電体87を受ける第1端子85のばね受部96がベースケース42の下段部44に配置されているのに対し、第2端子86から伸びる第2通電体88は同ケース42の上段部43に配置されている。つまり、一対の端子85・86と通電体87・88はベースケース42の上下段部43・44に分かれて配置されている。
【0091】
図1に示すように第2電極32は、誘電体33よりも一回り小さい左右横長の矩形状に形成されており、その前後中央すなわち第1電極31の真下には、非通電領域としての空隙110が設けられている。この空隙110は、第1電極31と平行すなわち左右方向に伸びる帯状に形成されている。第2電極32は、空隙110を境に前側の第1領域111と後側の第2領域112とに区分されており、両領域111・112は左右3個所の架橋部113のみを介して連続している。架橋部113は、空隙110の長手方向中央部および両端部を横切るように配置されている。各架橋部113は第1領域111および第2領域112と同時に形成(成膜)されるが、これら領域111・112とは別体で形成してもよい。
【0092】
第1電極31と第2電極32に高い交流電圧が印加されると、第2電極32を覆う誘電体33の表面(上面)と第1電極31との間で無声放電(誘電体バリア放電)が生じ、その周囲の空気に含まれる酸素の一部がオゾンに変化する。この無声放電を広範囲で行わせてオゾンの発生量を増やすため、第2電極32の前後中央すなわち第1電極31の真下に空隙110が設けられている。この空隙110があることで、誘電体33の表面の電荷が第1電極31の真下よりもその前後(第1領域111および第2領域112の上方)に多く集まるようになり、その結果、誘電体33の表面の広範囲で放電が発生する。加えて空隙110によれば、放電の障害となる白い粉塵(硝酸塩)が堆積しやすい第1電極31の真下において、放電が集中するのを避けることができる。粉塵の堆積が比較的少ない第1電極31の前後で放電を発生させると、比較的長期にわたって放電量が維持されるようになり、その結果、ユーザーに放電部16の清掃を促す機会を減らすことができる。
【0093】
第1電極31の前後方向の幅W1が、その直径に一致する1mmであるのに対し、空隙110の同方向の幅W2は2mmに設定されている。空隙110の幅W2を第1電極31の幅W1よりも大きく設定すると、誘電体33の表面で第1電極31の真下に集まる電荷をより少なくして、放電をより広範囲に広げることができる。また図13に示すように、第1電極31の上下方向の高さH1が、その直径に一致する1mmであるのに対し、誘電体33の上下方向の厚さH2は0.7mmに設定されている。誘電体33の厚さH2を第1電極31の高さH1よりも小さく設定すると、第2電極32の前後縁と第1電極31を結ぶ仮想線を垂直から水平に近付けて、誘電体33の表面の電荷の分布をその前後縁に近付けることができ、これにより放電をより広範囲に広げることができる。
【0094】
図1に示すように、第2端子86から伸びる前後一対の第2通電体88のうち、一方は第2電極32の第1領域111に接続され、他方は第2領域112に接続されている。そのため、仮に架橋部113が無く両領域111・112が離れていても、各領域111・112に電圧を供給することは可能であるが、一方の第2通電体88が劣化して第2電極32または第2端子86との間で接続不良が発生した場合は、第2電極32の半分の領域にしか電圧を供給できないという不利が生じてしまう。この不利を避けるため、本実施形態では第1領域111と第2領域112を架橋部113で繋いでおり、これによれば、一方の第2通電体88で接続不良が発生しても、他方の第2通電体88を介して第2電極32の全体に電圧を供給することができる。
【0095】
平面視において第2電極32の全体は誘電体33の周縁の内方に配置されており、これによれば、誘電体33を介さない電極31・32間の放電を確実に防止することができる。換言すれば、誘電体33の周縁部は、平面視において第2電極32を囲む矩形環状の包囲領域195を構成しており、包囲領域195の長辺の幅W3は短辺の幅W4よりも大きく設定されている。包囲領域195の長辺を短辺よりも太く設定すると、第2電極32が誘電体33に対して垂直軸まわりに変位してしまった場合に、第2電極32の端部が誘電体33の周縁に近付かないようにして、電極31・32どうしが誘電体33を介さずに放電するのをよく防止することができる。
【0096】
図8に示すように、包囲領域195の長辺部の上面は、放電ケース34の放電開口35の周縁部すなわち内受部59で受け止められており、換言すれば内受部59は、包囲領域195の上面に密着する上封止部197を構成する。この上封止部197によれば、第1電極31を誘電体33に加えて上封止部197によっても第2電極32から隔てることができ、誘電体33を介さない電極31・32間の放電をより確実に防止することができる。また、第2電極32と誘電体33の下面側に配置されたクッション材58の周縁部は、包囲領域195の下面に全周にわたって密着する下封止部198を構成する。この下封止部198によれば、第2電極32を下封止部198で囲んで第1電極31から隔てて、誘電体33を介さない電極31・32間の放電をより確実に防止することができる。
【0097】
棒状の第1電極31を左右に真っ直ぐに配置するのに代えて、これを水平面内で傾斜するように、例えば放電開口35の対角線に沿って配置することができる。これによれば、第1電極31を左右に真っ直ぐに配置する場合に比べて、第1電極31の全長を長くして放電の範囲を広げることができる。この場合の空隙110は、放電開口35の対角線に沿って第1電極31と平行に形成することが望ましい。第1電極31(および空隙110)を屈曲、湾曲あるいは蛇行させたり、2本以上の第1電極31(および空隙110)を設けることもでき、これらによっても放電の範囲を広げることができる。このように放電の範囲を広げると、その分だけオゾンの発生量を増やすことができる。
【0098】
以上のように、本実施形態に係る放電装置6においては、誘電体33を間にして棒状の第1電極31と平面状の第2電極32を上下に配置し、このうち第2電極32に非通電領域としての空隙110を形成し、空隙110の少なくとも一部が第1電極31の真下に位置するようにした。これによれば、第1電極31と第2電極32に高い交流電圧を印加したときに、誘電体33の上面と第1電極31との間で生じる無声放電を、従来よりも広範囲で行わせることができる。すなわち、第2電極32に空隙110があることで、誘電体33の上面の電荷が第1電極31の真下よりもその両側(第1電極31の伸び方向に水平面内で直交する幅方向の両側)に多く集まるようになり、その結果、誘電体33の上面の広範囲で放電が発生する。加えて空隙110によれば、放電の障害となる粉塵が堆積しやすい第1電極31の真下において、放電が集中するのを避けることができる。粉塵の堆積が比較的少ない第1電極31の両側で放電を発生させると、比較的長期にわたって放電量が維持されるようになり、その結果、粉塵を除去する清掃をユーザーに促す機会を減らすことができる。
【0099】
空隙110を第1電極31よりも幅広に形成すると、誘電体33の上面で第1電極31の真下に集まる電荷をより少なくして、放電をより広範囲に広げることができる。誘電体33を第1電極31の上下高さよりも薄く形成すると、第2電極32の幅方向の両縁と第1電極31とを結ぶ仮想線を垂直から水平に近付けて、誘電体33の上面の電荷の分布を該両縁に近付けることができ、これにより放電をより広範囲に広げることができる。また、第2電極32を薄く形成すると、放電装置6の全体を上下方向にコンパクト化するとともに、第2電極32の材料費を抑えることができる。
【0100】
第2電極32の長手方向を第1電極31の伸び方向に一致させると、第2電極32の全体を第1電極31の比較的近くに配置して、第2電極32の全面を放電に効率良く利用することができる。空隙110を第2電極32の長手方向に伸びる帯状に形成すると、第1電極31の真下の大部分に空隙110を位置させて、第1電極31の真下で放電が生じることを少なくして、放電が生じる範囲をより広げることができる。
【0101】
空隙110で隔てられる第1領域111と第2領域112を繋ぐ架橋部113を設けると、第1領域111と第2領域112の一方に第2通電体88を配置するだけでも、架橋部113を介して他方の領域にも通電して、第2電極32の全体に電圧を供給することができる。つまり、第2通電体88の個数を少なくして放電部16の構成を簡素化することができる。また、本実施形態のように第1領域111と第2領域112の両方に第2通電体88を配置する場合には、一方の第2通電体88で接続不良が発生しても、他方の第2通電体88を介して第2電極32の全体に電圧を供給することができる。つまり、放電部16の信頼性を高めることができる。
【0102】
平面視において第2電極32を誘電体33よりも小さく形成し、誘電体33の周縁部で構成される包囲領域195で囲むと、第2電極32の全体を誘電体33の周縁の内方に位置させて、誘電体33を介さない電極31・32間の放電を確実に防止することができる。包囲領域195を矩形環状に形成し、その長辺の幅W3を短辺の幅W4よりも大きく(長辺を短辺よりも太く)設定すると、第2電極32が誘電体33に対して垂直軸まわりに変位してしまった場合に、第2電極32の端部が誘電体33の周縁に近付かないようにして、電極31・32どうしが誘電体33を介さずに放電するのをよく防止することができる。
【0103】
放電ケース34の放電開口35の周縁部が、誘電体33の包囲領域195の上面に密着する上封止部197を構成していると、第1電極31を誘電体33に加えて上封止部197によっても第2電極32から隔てることができ、誘電体33を介さない電極31・32間の放電をより確実に防止することができる。
【0104】
誘電体33の包囲領域195の下面に密着する下封止部198を設けると、第2電極32を下封止部198で囲んで第1電極31から隔てることができ、誘電体33を介さない電極31・32間の放電をより確実に防止することができる。第2電極32の下面側にシート状のクッション材58を配置すると、第2電極32を誘電体33とクッション材58で上下から挟持して外部衝撃などから保護することができ、また、放電ケース34内における誘電体33の厚み寸法の設計公差をクッション材58で吸収することができる。さらに、クッション材58の周縁部が下封止部198を構成していると、誘電体33の下面側をクッション材58で覆って外部衝撃などから保護することができる。
【0105】
第1電極31と誘電体33と第2電極32で構成される電極ユニット71の全体を、放電ケース34の外ケース37と内ケース38により上下から挟持すると、各電極31・32と誘電体33の支持構造を個別に設ける場合に比べて、放電ケース34ひいては放電装置6の構造を簡素化することができる。電極ユニット71をクッション材58と共に挟持すると、電極ユニット71をクッション材58に密着させて、その遊動をよく規制することができる。また、クッション材58が弾性変形することにより、電極ユニット71や放電ケース34の設計公差を吸収することができる。第1電極31の周面を上下から挟持する上支持部65と下支持部66で電極支持構造64を構成すると、第1電極31を上下から上支持部65と下支持部66で挟持するだけの簡単な操作で、放電ケース34に対して第1電極31を固定することができる。
【0106】
第2電極32を誘電体33の下面にフィルム状に形成すると、第2電極32を薄くして放電装置6の全体を上下方向にコンパクト化するとともに、第2電極32の材料費を抑えることができる。第2電極32をチタンで形成すると、第2電極32の耐食性を高めて、第2電極32を含む放電装置6の全体としての寿命を向上させることができる。なお第2電極32は、例えば誘電体33と同程度の厚みを有する金属板で構成することもできる。
【0107】
一対の電極31・32の間に誘電体33を配置してなる放電装置6と、放電装置6の放電時の発光を検出する光検出部28と、光検出部28による検出結果を報知する報知手段27とを備えることを特徴とする放電ユニット。光検出部28と報知手段27は、放電装置6とは別体であってもよく、放電装置6に搭載されていてもよい。
放電装置6と光検出部28と報知手段27を備える放電ユニットによれば、まず光検出部28の検出値に基づいて、放電装置6の誘電体33などの表面の汚れ(粉塵などの堆積)の程度を判断することができる。ユーザーが目視で判断する場合のように、ユーザーの主観が入り込む余地が無く、その程度を正確に判断することができる。加えて、光検出部28による検出結果を報知する報知手段27を設けると、放電装置6の放電時の発光量の低下、すなわち誘電体33などの表面における汚れの進行をユーザーに知らせて、放電装置6の早期の清掃を促すことができる。この表面の汚れが放電の妨げとなり、放電量が低下した状態で放電装置6の駆動を続ける不都合を回避することが可能となる。
【0108】
光検出部28は、例えば放電装置6を撮影するカメラで構成することができる。この場合は、正常時すなわち放電装置6の汚れが許容範囲内のときの撮影画像と、異常時すなわち放電装置6の汚れが許容範囲を超えるときの撮影画像とを、図外の記憶部にそれぞれ記憶させておく。そして、カメラで放電装置6を撮影する度に、その撮影画像が正常時と異常時のどちらに分類されるかAI(制御部21)で判断する。
また光検出部28は、放電装置6に臨むフォトダイオードで構成することができる。フォトダイオードを流れる電流の大きさは、その受光量にほぼ比例する。従って、フォトダイオードの電流値に基づいて、放電装置6の放電時の発光量すなわちその表面の汚れの程度を判断することができる。
さらに光検出部28は、放電装置6に臨むカラーセンサで構成することができる。カラーセンサは、投光素子と受光素子を備える光電センサの一種であり、光の三原色すなわち赤色、青色、緑色のそれぞれの受光量を検知し、それに基づいて対象物の色を判別することができる。カラーセンサの受光素子は、上記のフォトダイオードと同様に、受光量に応じた電気信号を出力するから、それに基づいて放電装置6が放電時に発する青色光の光量すなわちその表面の汚れの程度を判断することができる。
【0109】
光検出部28が、受光量に応じた電気信号を出力する素子からなることを特徴とする放電ユニット。
光検出部28を、例えばフォトダイオードやカラーセンサのような、受光量に応じた電気信号を出力する素子で構成すると、これをカメラなどで構成する場合に比べて、光検出部28を安価に構成することができる。
【0110】
放電装置6が、一対の電極31・32および誘電体33を含む放電部16と、放電部16が着脱自在に装着されるベース部15とを備えることを特徴とする放電ユニット。
放電装置6の放電部16がベース部15に対して着脱自在であると、一対の電極31・32と誘電体33を含むため比較的汚れやすい放電部16を、ベース部15から分離した状態で簡便に清掃することができる。また、放電部16が故障した場合に放電部16のみを交換することができ、ベース部15を含む放電装置6の全体を交換する場合に比べて経済的である。
【0111】
光検出部28の検出値が所定の正常範囲から外れた場合に放電装置6の両電極31・32に印加される電圧が、該検出値が正常範囲内の場合に両電極31・32に印加される電圧よりも高く設定されていることを特徴とする放電ユニット。光検出部28の検出値が正常範囲から外れるとは、所定値(下閾値)を下回ることであってもよく、逆に所定値(上閾値)を上回ることであってもよい。
光検出部28の検出値が正常範囲から外れた場合、すなわち放電装置6の表面の汚れの程度が大きい場合に、放電装置6の両電極31・32に印加する電圧を高く設定すると、当該汚れに起因する放電量の低下を抑制して、汚れが少ない場合(光検出部28の検出値が正常範囲内の場合)に近い放電量を維持することができる。
【0112】
光検出部28の検出値が正常範囲から外れた場合に放電装置6を停止させることを特徴とする放電ユニット。
光検出部28の検出値が正常範囲から外れた場合、すなわち放電装置6の表面の汚れの程度が大きい場合に、放電装置6を停止させることができる。汚れにより放電量が不十分となるおそれがある状況下で放電装置6の駆動を続けるよりも、これを停止させることで、無駄な電力の消費を避けることができる。
【0113】
図15のタイムチャートに示すように、光検出部28の検出値に関して、第1の正常範囲と、第1の正常範囲よりも広い第2の正常範囲とが設定されており、
光検出部28の検出値が第1の正常範囲から外れて第2の正常範囲のみに属するようになると、放電装置6の両電極31・32に印加する電圧を上昇させ(時点t1)、該検出値が第2の正常範囲からも外れると放電装置6を停止させる(時点t2)ことを特徴とする放電ユニット。
光検出部28の検出値すなわち放電装置6からの受光量が第2の正常範囲のみに属するとき(時点t1~t2)の電圧は、受光量にかかわらず一定であってもよく、受光量が少なくなるほど線形的あるいは段階的に上昇させてもよい。
光検出部28の検出値が第1の正常範囲から外れて第2の正常範囲のみに属するようになった場合、すなわち放電装置6の表面の汚れの程度が大きくなった場合に、放電装置6の両電極31・32に印加する電圧を上昇させると、当該汚れに起因する放電量の低下を抑制して、汚れが少ない場合(光検出部28の検出値が第1の正常範囲内の場合)に近い放電量を維持することができる。また、光検出部28の検出値が第2の正常範囲からも外れた場合、すなわち、両電極31・32に印加する電圧の上昇によっても放電量の低下を抑制できないほど放電装置6の表面の汚れの程度が大きくなった場合に、放電装置6を停止させると、無駄な電力の消費を避けることができる。
【0114】
光検出部28の検出値によれば、上記のように放電装置6の表面の汚れの程度を判断するのに加えて、放電装置6の電極31・32に係る電気系統の故障の有無を判断することができる。例えば、放電装置6の放電時の発光量の低下に伴い、光検出部28の検出値が正常範囲から外れて、それを知ったユーザーが放電装置6の表面を清掃したにもかかわらず、なお改善されない(放電装置6の発光量が低下したままである)ような場合には、電極31・32に係る電気系統で故障(電圧低下)が生じていると判断することができる。また、放電装置6の放電時の発光量が異常に上昇して、光検出部28の検出値が正常範囲から外れた場合にも、同電気系統で故障(電圧上昇)が生じていると判断することができる。特にオゾナイザー1においては、高濃度のオゾンは人体に有害であるから、電極31・32の電圧上昇の故障を検知する意義は大きく、その検知後に放電装置6を直ちに停止させて、ユーザーの安全を確保することができる。
上記以外に、放電装置6を流れる電流を計測することによっても、電極31・32に係る電気系統の故障の有無を判断することができる。ただし、放電装置6を流れる電流は数mAと非常に小さく、その変動を正確に計測することは容易ではない。つまり、光検出部28の検出値を利用する上記の方法に比べて、故障の判断に必要なシステムの構築コストが高くなるおそれがある。
【0115】
誘電体33の表面側に配置される第1電極31が棒状に形成されており、誘電体33の裏面側に配置される第2電極32が平面状に形成されていることを特徴とする放電ユニット。
誘電体33の表面側の第1電極31を棒状に形成すると、誘電体33の表面のうち第1電極31で覆われる部分を小さくして、誘電体33の表面の大部分を光検出部28に臨ませることができる。つまり、放電装置6の放電時の発光を光検出部28で容易に検出することができる。なお、第1電極31を平面状に形成する場合は、誘電体33の表面の大部分が第1電極31で覆われてしまい、光検出部28で発光を検出することが難しくなる。
誘電体33の裏面側の第2電極32を平面状に形成すると、誘電体33の表面の広範囲で放電とそれに伴う発光を生じさせることができる。上記のように第1電極31を棒状に形成したことと相俟って、光検出部28による発光の検出をさらに容易にすることができる。この作用効果は、第2電極32に非通電領域としての空隙110を形成することによりさらに向上する。なお、両電極31・32を棒状に形成する場合は、放電が生じる範囲が相対的に狭くなり、それに伴う発光を光検出部28で検出することが難しくなる。
また、第1電極31が棒状に形成され、第2電極32が平面状に形成されていると、例えば、両電極31・32の支持構造の設計公差などにより、両電極31・32の相対位置にズレが生じたとしても、両電極31・32間の放電を問題無く発生させることができる。したがって、より安定的に放電を行うことができる。
【0116】
(第2実施形態) 図16ないし図18は、本発明に係る放電装置の第2実施形態を示しており、平面視におけるベース部15の中央に1個の第2通電体88が配置される点などが第1実施形態と相違する。第2電極32は全体として横臥H字状に形成されており、第2電極32の左右中央にのみ架橋部113が設けられている。第2通電体88は、第2電極32の架橋部113の下面に弾性的に密着する上側の通電ピン147と、通電ピン147を第2電極32に向かって上方へ付勢する下側の通電ばね148と、通電ばね148の下端に連続して略水平に延びる通電片149とで構成されており、通電片149の先端が導線などを介して昇圧回路22に接続されている。本実施形態から明らかなように、第2通電体88は少なくともその一部が第2電極32の厚さ方向すなわち上下方向に弾性変形可能であればよい。
【0117】
通電ピン147と通電ばね148は、ベースケース42の中央に上下貫通状に設けられた収納穴104に収納されており、通電ピン147は収納穴104の周面で上下動のみ可能に摺動案内される。通電ピン147は、導電性に優れる任意の金属などを素材として円柱状に形成されており、その先端(上端)は円形の水平面からなり、第2電極32の下面に面接触している。通電ばね148は、上下方向を軸心方向とする圧縮コイルばね状に形成されており、その上端が通電ピン147の下端に連結されている。通電ピン147の先端を第2電極32に面接触させると、両者32・147の接触圧を小さくして、第2電極32の摩耗を抑制するとともに、第2電極32や通電ピン147の表面の一部が経年により酸化したときにも通電不良を生じ難くして、第2電極32に印加される電圧を高いレベルに維持することができる。
【0118】
ベース部15は、ベースケース42に下方から内嵌する底蓋145を含み、収納穴104の下面開口は底蓋145で塞がれている。底蓋145の内面中央には、下収納ボス106の先端部(下端部)を受け入れる円形の係合穴153が凹み形成されており、この係合穴153の底面中央には、下収納ボス106の先端部の内側に侵入する円柱状の係合突起154が突出形成されている。通電ばね148の下端は底蓋145の内面(上面)、厳密には係合突起154の先端面(上面)で支持される。また、下収納ボス106の先端部には、通電片149の挿通を許す縦溝155が形成されている。底蓋145の内面に係合穴153と係合突起154を形成すると、下収納ボス106の先端部に係合突起154と係合穴153を内外から係合させて、底蓋145の位置ズレを確実に規制することができる。また、係合突起154を下収納ボス106の先端部に侵入させると、その分だけ収納穴104の上下寸法が小さくなることから、通電ばね148の小型化によるコストダウンを図ることができる。なお、係合穴153と係合突起154の一方を省略し、底蓋145の内面中央に係合穴153のみ、あるいは係合突起154のみを設けることもできる。
【0119】
第1電極31の両端部を支持する電極支持構造64は、放電ケース34の外ケース37に設けられた上支持部65のみで構成されており、内ケース38の下支持部66は省略されている。各上支持部65は、第1電極31が挿通される上下に長いガイド孔151を備えており、第1電極31はガイド孔151の前後の側面に沿って、誘電体33に対して上下動可能である。このように、第1電極31が誘電体33に対して接離可能であると、第1電極31を誘電体33から離した状態で、第1電極31とその周囲を清掃ブラシなどできれいに清掃することができる。常態における第1電極31は、第1通電体87の巻締部91および上ばね157により下方へ付勢されて、誘電体33の上面に密着する。
【0120】
上ばね157は、上下方向を軸心方向とする圧縮コイルばねからなり、左右の各上支持部65の内側に配置されている。上支持部65の内面には、上ばね157の上部を収容するばね凹部158が設けられている。上ばね157の下端は第1通電体87の電極接続部90の外周面に圧接しており、これにより上ばね157の下向きの付勢力が電極接続部90を介して第1電極31に作用する。巻締部91と上ばね157の付勢力に抗して第1電極31を持ち上げると、第1電極31の下部の周囲を清掃ブラシできれいに清掃することができる。本実施形態のように上ばね157を用いる場合は、第1通電体87から巻締部91を省略してもよい。ただし、巻締部91と上ばね157の両方を用いると、第1電極31を誘電体33により確実に密着させることができる。
【0121】
第1通電体87の端子接続部92は、下拡がりの円錐コイルばね状に形成されている。これによれば、端子接続部92を上下方向に圧縮させたときに、その下端を数周にわたって第1端子85の上面に接触させることができる。つまり、両者85・92の接触面積を大きくして、両者85・92間の電気抵抗を小さくすることができる。端子接続部92を構成するコイルばねは、上記以外に下拡がりのベルマウス形状や、上拡がりかつ下拡がりの鼓形などに形成することができ、これらの場合も上記と同様の作用効果を得ることができる。端子接続部92の下部が下窄まりとなる樽形などに形成してもよく、この場合も端子接続部92の下端を数周にわたって第1端子85に接触させて、上記と同様の作用効果を得ることができる。なお本実施形態では、第1端子85の上面のばね受部96は省略されている。
【0122】
また本実施形態では、放電部16を装着状態に保持するための装着保持手段が、2組の磁石53と磁性体54で構成されている。放電ケース34の内ケース38には左右一対の係合凸部47が設けられており、上対向壁51を挟んで各係合凸部47の裏側(上側)に、磁石53を収容する上収容凹部55が形成されている。同様に、ベースケース42には左右一対の係合凹部48が設けられており、下対向壁52を挟んで各係合凹部48の裏側(下側)に、磁性体54を収容する下収容凹部56が形成されている。下収容凹部56の下面開口は底蓋145により塞がれている。
【0123】
ベースケース42の端子台101は、上段部43から水平方向(左方向)に離れて配置されている。放電部16の内ケース38の下面には周回状の規制リブ159が下向きに突設されており、この規制リブ159の一部は、放電部16の装着時に上段部43と端子台101の間に進入して、端子台101の内面(上段部43と対向する面)に当接する。前述の係合凸部47と係合凹部48の係合に加えて、規制リブ159を端子台101の内面に当接させると、ベース部15に対する放電部16の水平方向のズレ動きと垂直軸まわりの回転とをより確実に規制することができる。
【0124】
本実施形態の第2電極32のように、架橋部113を空隙110の長手方向中央部のみに配置すると、これを空隙110の長手方向両端部に配置する場合に比べて、架橋部113と第1電極31の端部との間で誘電体33を介さずに放電が生じるリスクを下げることができる。他は第1実施形態と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。次の第3実施形態以降においても同様とする。
【0125】
(第3実施形態) 図19は、本発明に係る放電装置の第3実施形態を示しており、第2電極32が全体としてコ字状(横臥U字状)に形成されている点、すなわち、架橋部113が第2電極32の左右一端部(ここでは左端部)のみに設けられている点が第1実施形態と相違する。これ以外に第2電極32は、左右両端部に架橋部113を有する矩形環状に形成されていてもよい。
【0126】
本発明に係る放電装置は、オゾナイザーやイオナイザーへの適用が可能であるから、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals)の目標3(すべての人に健康と福祉を)に貢献することができる。また放電装置は、処理された空気を放出するエアコン、加湿器、空気清浄機などの機器に内蔵することで、放出空気の除菌などに用いることができる。あるいは、冷蔵庫の庫内、クローゼット、トイレなどに設置することで、当該空間の消臭や除菌などに用いることができる。さらに放電装置は、オゾンを水に溶け込ませるオゾン水生成装置にも適用することができる。生成したオゾン水は、洗濯機、水洗トイレ、食品や食器の洗浄、医療機器の洗浄などに用いることができる。
【符号の説明】
【0127】
6 放電装置
31 第1電極
32 第2電極
33 誘電体
34 放電ケース
35 放電開口
37 外ケース
38 内ケース
58 クッション材
64 電極支持構造
65 上支持部
66 下支持部
71 電極ユニット
110 空隙
111 第1領域
112 第2領域
113 架橋部
195 包囲領域
197 上封止部
198 下封止部
図1
図2
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