(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154660
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】錠剤、錠剤の崩壊性を改善する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20231013BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20231013BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231013BHJP
A23L 29/256 20160101ALN20231013BHJP
A23L 29/206 20160101ALN20231013BHJP
A23L 29/262 20160101ALN20231013BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A23L29/00
A23L33/105
A23L29/256
A23L29/206
A23L29/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064132
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 幸子
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 哲良
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD04
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4B041LH11
4B041LK29
4B041LK42
4B041LP12
(57)【要約】
【課題】本発明は、本発明は、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、十分な崩壊性と所望の硬度を担保すると同時に錠剤設計の自由度を維持できる錠剤を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するために、(A)リンゴ抽出物及び(B)紅麹を含有することを特徴とする、錠剤が提供される。これにより、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、有効成分となり得る紅麹を含有させることで、錠剤の崩壊性を向上させ、所望の錠剤硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を維持し得る錠剤を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リンゴ抽出物及び(B)紅麹を含有することを特徴とする、錠剤。
【請求項2】
前記(B)紅麹の含有量が10~40質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
前記(A)リンゴ抽出物の含有量が5~60質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
前記(A)リンゴ抽出物の含有量に対する前記(B)紅麹の含有量の質量比(B/A)が0.16~8であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項5】
硬度が5kgf以上かつ崩壊時間が40分以内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項6】
(B)紅麹を含有させることを特徴とする、錠剤の崩壊性を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンゴ抽出物及び紅麹を含有する錠剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品やサプリメントには、その薬効を発揮させるために様々な有効成分が配合される。しかし、その有効成分の性質や種類、配合される量によっては崩壊時間が長くなってしまう場合がある。崩壊時間が長くなることで、体内で有効成分が十分に吸収されないという問題があった。
【0003】
医薬品に関しては、日本薬局方の崩壊試験において素性形の医薬品は、30分以内に崩壊しなければならないとされている。他方、サプリメントに関しては、現段階では崩壊時間は厳密には定められていない。しかし、医薬品と同様に有効成分が適切に効果を発揮するよう容易に崩壊する設計が求められており、近年、サプリメントにおいてもその崩壊性が注目されている。
【0004】
リンゴ抽出物(リンゴエキス)は、ポリフェノールを高含有しており、コラーゲン産生促進、血行促進、中性脂肪代謝促進、抗酸化作用等多くの生理作用を有しており、サプリメント等に配合されている。このリンゴ抽出物においても、錠剤とした場合にその崩壊時間が延長し、上記と同様の問題が生じていた。
【0005】
こうした問題に対して特許文献1には、吸湿性の高いサラシア含有組成物を有効成分として、カルボキシメチルセルロースカルシウムと二酸化ケイ素を含有する組成物が開示されている。また、特許文献2には、カシス抽出物及びヒドロキシプロピルセルロースに、さらに結晶セルロースを配合した固形組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-178690号公報
【特許文献2】特開2018-184388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に示した特許文献の方法においても、特定の物質を添加することで、崩壊性の改善や錠剤硬度の向上の効果はみられる。しかしながら、崩壊剤等の多量な添加が、有効成分の配合に制限を与えるという問題がある。特に複数の有効成分を配合することが一般的なサプリメント等においては、有効成分の配合量や種類の制限は、錠剤設計の自由度を著しく損なうこととなる。つまり、リンゴ抽出エキスのような、錠剤の崩壊性を大きく低下させる性質を持つ有効成分を使用した場合に、十分な錠剤の崩壊性と硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を維持することはできていない。
【0008】
そこで、本発明は、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、十分な崩壊性と所望の硬度を担保すると同時に錠剤設計の自由度を維持できる錠剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、リンゴ抽出物と、サプリメント等の有効成分としても使用される紅麹とを含有させることにより、錠剤の崩壊性が向上し、所望の錠剤硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を維持し得るという知見を見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1](A)リンゴ抽出物及び(B)紅麹を含有することを特徴とする、錠剤。
本発明によれば、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、有効成分となり得る紅麹を含有させることにより、錠剤の崩壊性を向上させ、所望の錠剤硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を維持し得る錠剤を提供することができる。
[2]前記(B)紅麹の含有量が10~40質量%であることを特徴とする、[1]に記載の錠剤。
この特徴によれば、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、紅麹の含有量を特定することにより、より確実に錠剤の崩壊性を向上させ、所望の錠剤硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を維持し得る錠剤を提供することができる。
[3]前記(A)リンゴ抽出物の含有量が5~60質量%であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の錠剤。
この特徴によれば、リンゴ抽出物の含有量を特定することにより、より確実に錠剤の崩壊性を向上させ、所望の錠剤硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を維持し得る錠剤を提供することができる。
[4]前記(A)リンゴ抽出物の含有量に対する前記(B)紅麹の含有量の質量比(B/A)が0.16~8であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の錠剤。
この特徴によれば、リンゴ抽出物の含有量に対して使用する紅麹の含有量の比を特定することにより、より確実に錠剤の崩壊性を向上させ、所望の錠剤硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を維持し得る錠剤を提供することができる。
[5]硬度が5kgf以上かつ崩壊時間が40分以内であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の錠剤。
この特徴によれば、錠剤の崩壊時間と硬度を特定することにより、リンゴ抽出物と紅麹を含有する錠剤において、崩壊性と硬度に関して所望の錠剤の性能を担保した錠剤を提供することができる。
[6]
(B)紅麹を含有させることを特徴とする、錠剤の崩壊性を改善する方法。
本発明によれば、錠剤とした時の崩壊性が低い有効成分を用いた錠剤において、錠剤の崩壊性を向上させ、所望の錠剤硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を付与することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、十分な崩壊性と所望の硬度を担保しながら、錠剤設計の自由度を維持できる錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[錠剤]
本発明の錠剤は、(A)リンゴ抽出物及び(B)紅麹を含有することを特徴とする。
【0013】
錠剤に配合される有効成分の多くは、一定量以上配合することにより錠剤の崩壊時間が長くなる傾向にある。崩壊時間が長い場合には、体内で有効成分が十分に吸収されず、期待される効果が得られない可能性がある。リンゴ抽出物を使用した錠剤のおいても、リンゴ抽出物の配合により、錠剤の崩壊時間は延長し、医薬品又はサプリメントとしての使用において同様な問題があった。しかしながら、別途崩壊剤を多量に使用する等、有効成分以外の添加によって崩壊性を向上させると、有効成分の含有量を低減せざるを得ず、錠剤設計の自由度が維持されないという問題が新たに生じていた。
【0014】
本発明者らは、サプリメント等の有効成分としてコレステロール低下作用等の効果を有することが知られている紅麹を添加することにより、錠剤が十分な崩壊性を獲得し得ることを見出した。更に、所望の錠剤硬度も有しており、有効成分以外の添加剤の添加量を最小限とすることにより、錠剤設計の高い自由度を維持することができる。
【0015】
<(A)リンゴ抽出物>
本発明の錠剤はリンゴ抽出物を含有する。食品の添加物や健康食品に配合されるリンゴ抽出物は、ポリフェノールを高含有しており、コラーゲン産生促進、血行促進、中性脂肪代謝促進など多くの生理作用を有している。また強い抗酸化作用を発揮し、生体内に蓄積したフリーラジカルなどスーパーオキサイドを低下させ、老化を抑制することが知られている。近年、リンゴ抽出物が示す、この抗酸化効果や生理作用が注目されている。なお、本発明のリンゴ抽出物は、公知の方法により製造できるほか、市販のリンゴ抽出物を使用することができる。
【0016】
リンゴ抽出物原料の、リンゴ(Malus pumila)の品種は、例えば、ふじ、国光、王林、紅玉、ジョナゴールド、デリシャス、さんさ、千秋などが挙げられ、特に制限されない。リンゴの抽出部位は、特に制限されず、例えば、果実、葉、幹、花などが挙げられ、好ましくは、果実である。前記果実は、例えば、未熟果(幼果)でも良く、完熟果でも良く、特に制限されない。抽出に用いる前記果実の部位は、特に制限されず、例えば、全果、果肉、果皮、種等が挙げられる。リンゴ抽出物は、これらの部位を、単独で、または2種以上を任意に組み合わせて抽出しても良い。
【0017】
リンゴ抽出物を抽出する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。抽出方法の具体例としては、例えば、以下のような方法であっても良い。まず、リンゴの全果を、水洗後、グラインダーなどにより粉砕する。この粉砕物を、ペクチナーゼ処理に供し、遠心分離後、抽出溶媒により分配ろ過して、リンゴ抽出物を調製することができる。前記ペクチナーゼ処理としては、特に制限されないが、例えば、20~60℃の温度条件下で、ペクチナーゼを10~50ppm添加して行うことができる。抽出溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、アルコール、ヘキサン、クロロホルム等が挙げられる。抽出溶媒を除去してリンゴ抽出物を得ることができる。
【0018】
本発明のリンゴ抽出物におけるポリフェノール含有量は、特に制限されないが、リンゴ由来のポリフェノールを5質量%以上含むリンゴ抽出物が好ましい。より好ましくは10質量%以上含むリンゴ抽出物が好ましく、さらに好ましくは15質量%以上含むリンゴ抽出物が好ましい。このようなリンゴ由来のポリフェノールとしては、クロロゲン酸、カテキン、フロリジン、プロシアニジン、アントシアニン、及びタンニンが挙げられる。なかでも、プロシアニジンを含有するリンゴ抽出物が好ましい。
【0019】
本発明のリンゴ抽出物は、ポリフェノールを高濃度に含有するものであっても良い。ポリフェノールを濃縮するための分画方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。ポリフェノールは、例えば、リンゴ抽出物をカラムに通液後、カラムの吸着物を溶出し、この溶出画分を減圧留去濃縮して分画しても良い。また、さらに、この濃縮液に粉末助剤を添加し、凍結乾燥または噴霧乾燥して調製された、ポリフェノール高濃度含有粉末であっても良い。
【0020】
リンゴ抽出物由来のポリフェノール高濃度含有物を本発明のリンゴ抽出物として用いる場合は、例えば、市販のリンゴ由来のポリフェノールとして販売されているものが使用可能である。このような市販品としては、例えば、アリスタヘルスアンドニュートリションサイエンス社製の「ApplePhenon(登録商標) アップルプロシアニジン」(リンゴ由来プロシアニジン18.4%以上含有)、ユニテックフーズ株式会社が販売する「リンゴポリフェノールアップリンAFPOMM9051」、或いは「APPL′IN-POLYPHENOLIC APPLE EXTRACT POWDER」を例示できる。
【0021】
本発明の錠剤におけるリンゴ抽出物の含有量は、特に制限はされないが、5~60質量%であることが好ましい。このリンゴ抽出物の含有量の下限値は、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。リンゴ抽出物の含有量の上限値は、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。リンゴ抽出物の含有量が、5質量%以上であれば、有効成分が期待される効果を奏する。リンゴ抽出物の含有量が、60質量%以下であれば、錠剤が十分な崩壊性を有し、錠剤が所望の硬度を担保できると同時に錠剤設計の自由度を維持することができる。
【0022】
<(B)紅麹>
本発明の錠剤は紅麹を含有する。天然には、紅麹は主に紅藻類から抽出される多糖類である。紅麹は穀類に、糸状菌の一種であるモナスカス(Monascus)属の菌株を繁殖させた麹で、中国、台湾等では古くから食品として利用されている。これらは、血圧降下作用、血中コレステロール低下作用等、様々な機能を有することが知られており、味噌、醤油等の醸造食品の他、パン、麺類等、多様な食品に使用されている。特に、紅麹の発酵中に生成される紅麹ポリケチドであるモナコリンKは、そのコレステロール産生阻害作用が注目されている。
【0023】
本発明の紅麹に係る製麹の原料としては、特に限定されない。例えば、精白米、玄米、麦、粟、コウリャン、ソバ、トウモロコシ、大豆、小豆、山芋等の各種穀類や、それらの糠、フスマ、胚芽、モミガラ等を使用することができる。これらの原料は、単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の紅麹において使用される紅麹菌は、特に制限されない。使用できる紅麹菌としては、モナスカス属(Monascus)に属する糸状菌であればよく、例えば、モナスカス・パープレウス(Monascus purpureus)、モナスカス・アンカ(Monascus anka)、モナスカス・ルーバー(Monascus ruber)、モナスカス・ピローサス(Monascus pilosus)等が挙げられる。なお、これらの紅麹菌は、単独で使用してもよいし、二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の紅麹は、前記製麹原料に前記紅麹菌を植菌し、よく混合した後に、好気的条件下で培養を行うことにより製麹が実施される。製麹の実施の前に、製麹原料を加熱等の公知の手段により殺菌処理してもよい。なお、製麹時の温度条件や培地のpHは特に限定はされない。例えば、20~37℃であり、培地のpHは、培養期間中において4.0~8.0であってもよい。また、当該製麹に要する時間も特に限定されないが、例えば、5~20日間である。
【0026】
前記培養により得られた紅麹菌による培養発酵物が本発明における紅麹であり、得られた培養発酵物をそのまま使用するだけでなく、公知の方法を用いて利用することもできる。例えば、紅麹の乾燥物を粉砕して得られる粉末を使用してもよい。
【0027】
本発明の錠剤における紅麹の含有量は、特に制限はされないが、10~40質量%であることが好ましい。紅麹の含有量の下限値は、より好ましくは20質量%以上である。紅麹の含有量の上限値は、より好ましくは30質量%以下である。紅麹の含有量が、10質量%以上であれば、十分な崩壊性を錠剤に付与することができ、同時に有効成分が期待される効果を十分奏することができる。紅麹の含有量が、40質量%以下であれば、所望の錠剤硬度を担保することができ、同時に錠剤設計における自由度も維持することができる。
【0028】
(B/Aの含有量の比)
本発明の錠剤における、(B)紅麹の含有量に対する、(A)リンゴ抽出物の含有量の比(B/A)は、特に制限はされないが、0.16~8であることが好ましい。(B/A)の下限値は、より好ましくは0.8以上である。(B/A)の上限値は、より好ましくは1以下である。(B/A)が0.16以上であれば、(A)リンゴ抽出物を含有する錠剤に十分な崩壊性を付与することができ、同時に有効成分としてバランスのよい相乗効果が期待できる。(B/A)が8以下であれば、十分な崩壊性を錠剤に付与することができると同時に所望の錠剤硬度を維持することができる。
【0029】
(A+Bの含有量)
本発明の錠剤における、(A)リンゴ抽出物の含有量と(B)紅麹の含有量の合計(A+B)は、特に制限はされないが、30~90質量%であることが好ましい。(A+B)の下限値は、より好ましくは40質量%以上である。(A+B)が30質量%以上であれば、有効成分として生活習慣病等に対するバランスのよい相乗効果が期待できる。(A+B)が90質量%以下であれば、その他の有効成分や添加剤の添加、又は錠剤の小型化が可能となり、錠剤設計の自由度を維持することができる。
【0030】
<用途>
本発明の錠剤は、医薬品、医薬部外品、OTC医薬品、漢方薬、生薬、化粧品、健康食品、栄養機能食品、特定保健用食品、特別用途食品、サプリメント、動物用医薬品等の用途に好ましく使用できる。なかでも、食品用又はサプリメント用途により好ましく使用できる。医薬品等と比較すると、食品やサプリメントにおいては複数の有効成分を含有することが一般的である。こうした場合に、本発明の構成によれば、リンゴ抽出物を含有する錠剤の崩壊性を、有効成分となり得る紅麹によって改善することができ、一般的なその他崩壊剤を添加しないか、又は添加量を減らすことにより、錠剤の小型化や配合可能な有効成分の量や種類の選択肢を拡げることができる。
【0031】
より詳細な用途としては、特に限定はされない。必須成分である、リンゴ抽出物の中性脂肪代謝促進作用や抗酸化作用、及び紅麹の血圧低下作用やコレステロール上昇抑制作用に鑑みると、例えば、生活習慣病予防用、動脈硬化予防用、又はコレステロール上昇抑制用の用途においてこれらの成分の相乗効果が期待でき、好ましく使用可能である。
【0032】
<その他の有効成分>
本発明の錠剤は、(A)リンゴ抽出物及び(B)紅麹以外の有効成分を含有してもよい。有効成分とは、錠剤が体内に取り込まれた場合に、所望の生理活性を示す物質をいう。有効成分となる物質としては、特に限定されるものではなく、例えば、医薬品、医薬部外品、OTC医薬品、漢方薬、生薬、化粧品、健康食品、栄養機能食品、特定保健用食品、特別用途食品、サプリメント、動物用医薬品等に用いられる一般的な生理活性物質であればよい。
【0033】
より具体的なその他の有効成分としては、特に限定されないが、例えば、ビタミン類、ミネラル類、植物エキス末等を目的に応じて配合することができる。前記、生活習慣病予防用、動脈硬化予防用、又はコレステロール上昇抑制用等の用途において相加作用、相乗作用を期待できるものが好ましい。これらその他の有効成分は単独でもよいし、二種以上を任意の組み合わせで使用してもよい。
【0034】
<その他の成分>
本発明の錠剤には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、保存剤、流動化剤、増粘剤、着色剤などの添加剤を配合してもよい。また、本発明の効果を奏する範囲において紅麹以外のその他の崩壊剤を配合してもよい。
【0035】
賦形剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、微結晶セルロース、乳糖、白糖、マンニトール、グルコース、デンプン、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。また、これらの賦形剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。賦形剤を添加することにより、錠剤の硬度を向上させたり、有用物質のかさを調節させたりすることができる。
【0036】
結合剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、マクロゴール、パラフィン、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん、でんぷん分解物、プルランなどが挙げられる。また、これらの結合剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。結合剤を添加することにより、原料の粉末成分に結合力を与えると同時に流動性を高め、安定な錠剤を製造することができる。
【0037】
滑沢剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、タルク、コロイダルシリカ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、パルミチン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ワックス類、硬化植物油、脂肪、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。また、これらの滑沢剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。滑沢剤を添加することにより、錠剤の製造時に、スティッキングなどの打錠障害の発生を抑制することができる。
【0038】
その他の崩壊剤としては、本発明の効果を奏する限り、特に限定されるものではなく、例えば、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、アルギン酸塩などが挙げられる。また、これらの崩壊剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。
【0039】
<錠剤の態様>
(崩壊時間)
本発明の錠剤は、崩壊時間が40分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。崩壊時間が40分以内であれば、消化管内で有効成分が十分に吸収され、すみやかに必要な血中濃度が得られることで、所望の生体利用率が得られると考えられる。なお、錠剤設計において許容される範囲において、別途崩壊剤を添加して、崩壊時間を短縮することもできる。
【0040】
(錠剤硬度)
本発明の錠剤は、5.0kgf以上の硬度を有することが好ましい。当該基準については、実製造で起こりうる「硬度低下」の現象を想定した際に要求される数値として定めた。錠剤硬度が5.0kgf以上であれば、流通時や充填時、又はPTP(Press Through Pack)包装から錠剤を取り出すとき等に錠剤が破損してしまうことを防ぐことができる。なお、錠剤硬度は、原料の選択や錠剤製造時の打錠圧により設定することができ、錠剤設計において許容される範囲において、必要に応じて別途セルロース等を添加して、錠剤硬度を高めることもできる。
【0041】
(大きさと質量)
本発明の錠剤の大きさとしては、特に制限はされない。錠剤の使用目的、その態様、求められる崩壊性や投与対象等に応じて変更可能であるが、例えば、錠剤の直径として6~10mmである。錠剤の直径の下限値は、好ましくは6mm以上である。錠剤の直径の上限値は好ましくは10mm以下である。
錠剤の粒の質量としては、特に制限はされない。有効成分の配合比率、求められる崩壊性、又は錠剤の密度、大きさ等に応じて変更可能であるが、例えば、150~500mgである。粒の質量の下限値は、好ましくは150mg以上である。粒の質量の上限値は好ましくは500mg以下である。
【0042】
(性状)
錠剤の性状としては、本発明の効果を奏する限り特に限定はされず、様々な性状を取り得る。例えば、普通錠、口腔内崩壊錠、膣錠、付着錠、又は舌下錠等が挙げられるが、普通錠、口腔内崩壊錠が好ましく、保存安定性の確保や錠剤硬度の設計のしやすさから普通錠がより好ましい。
【0043】
<錠剤の製造方法>
本発明の錠剤の製造方法については、特に限定はされず、食品または医薬として使用される本発明は、食品又は医薬として許容される公知の添加物を用いて製造することができ、食品又は医薬の分野で採用されている通常の製剤化手法を適用することができる。
【0044】
例えば、有効成分、賦形剤、結合剤、滑沢剤等の各種原料を混合した混合末を打錠する方法や、各種原料を撹拌混合造粒法や流動層造粒法により造粒したのち、滑沢剤を添加・混合し、打錠する方法などが挙げられる。なお、錠剤の成分を添加するタイミングはこれに限定されない。
【0045】
打錠に用いる装置は、例えば、錠剤の製造に用いるロータリー式打錠機等の一般的な打錠成形装置であれば良い。なお直径6~10mmの錠剤の場合、打錠する際の打錠圧は500~2000kgfであることが好ましい。
【0046】
<その他の実施態様>
(錠剤の崩壊性を改善する方法)
本発明においては、錠剤とした時の崩壊性が低い有効成分を用いた組成物、又は錠剤を粉砕した粉砕物等に、崩壊性を付与する方法を提供することもできる。例えば、前記組成物や粉砕物等に紅麹を所定量添加し、造粒、打錠することで、十分な崩壊性と所望の錠剤硬度を有する錠剤を製造することができる。同時に、錠剤にコレステロール低下等の生活習慣病予防の効果を付与できると共に、その他崩壊剤等の添加量を減らすことができ、錠剤設計の自由度を高めるという効果を奏する。なお、紅麹を添加するタイミングは限定されず、添加の方法も特に限定されない。
【0047】
(崩壊剤)
また、紅麹を含有する崩壊剤として、市場に流通させることもできる。例えば、有効成分の配合により崩壊性の低下した錠剤や組成物等に崩壊剤として添加することで、崩壊性を向上させると同時に、有効成分としてコレステロール低下等の生活習慣病予防の効果を錠剤に付与することができる。加えて、その他崩壊剤等の添加量を減らすことができ、錠剤や組成物等の設計の自由度を高めるという効果を奏する。
【実施例0048】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【0049】
(1)試験例1 リンゴ抽出物を含有する錠剤における紅麹の配合による効果
リンゴ抽出物を含有する錠剤における紅麹の配合による効果について試験を行った。より詳細には、表2に示す配合で、実施例1~5と比較例1~3の錠剤を製造し、錠剤硬度と崩壊性について測定及び評価をした。なお、実施例で用いた原料を以下の表1に示す。
【0050】
【0051】
<錠剤の製造>
以下の手順で実施例と比較例の錠剤を製造した。
表3の組成の原料配合比(質量%)で各原料を混合し、倍散及び篩過し、打錠用粉末とした。作製した打錠用粉末を、単発打錠機N-30E(岡田精工社製)により杵形状をφ8mm、R6とし、打錠圧1000kgfで打錠することで、直径約8mm、粒の質量が250mgの錠剤を得た。
【0052】
<錠剤の崩壊性試験>
製造した錠剤について、「第17改正日本薬局方」の一般試験法に記載の「6.09崩壊試験法」に従い、錠剤の崩壊時間を測定した。試験液として、イオン交換水を使用した。崩壊試験機は富山産業(株)の崩壊試験器(NT-610(商品名)、富山産業社製)を使用した。
【0053】
試験液(精製水)の液量は900mLとして試験を行い、37℃の水中における崩壊時間を試料6錠について測定し、平均値を崩壊時間とした。崩壊時間を以下の評価基準に従い、崩壊性を評価した。
【0054】
(崩壊性の評価基準)
〇:崩壊時間が40分以下
△:崩壊時間が40分を超え、60分以下
×:崩壊時間が60分を超える
【0055】
<錠剤硬度の測定>
上記の錠剤の製造において製造された錠剤の硬度をニュースピードチェッカーTS-75N(岡田精工社製)を使用して測定した。試料5錠の平均値を測定し、平均値を錠剤の硬度とした。以下の評価基準に従い、錠剤硬度を評価した。
【0056】
(錠剤硬度の評価基準)
〇:錠剤硬度5.0kgf以上
×:錠剤硬度5.0kgf未満
【0057】
<総合評価>
錠剤の総合評価として、硬度試験、崩壊性試験の基準を両方満たすものを〇とし、それ以外は×とした。
総合評価〇:錠剤硬度試験〇、崩壊性試験〇又は△
総合評価×:錠剤硬度試験〇、崩壊性試験×
総合評価×:錠剤硬度試験×、崩壊性試験〇
【0058】
【0059】
試験の結果、リンゴ抽出物を含有する錠剤は、紅麹を配合した場合(実施例1~5)には、所望の錠剤硬度(5.0kgf以上)を維持しながら十分な崩壊性(崩壊時間40分以内)をも両立できた。他方、紅麹を含有せず、リンゴ抽出物単独である場合(比較例1~3)には、崩壊時間はいずれも60分以上であり、40分以下という基準を満たすことができなかった。
【0060】
(2)参考試験例1 リンゴ抽出物を含有する錠剤における一般的な崩壊剤の配合による効果
リンゴ抽出物を含有する錠剤における一般的な崩壊剤である、寒天及びでんぷんの配合の効果について、表3に示す参考例1~4について、試験例1と同様の方法で錠剤を製造し、錠剤硬度と崩壊性について試験を行った。なお、参考試験例1では、表1に示す材料の寒天及びでんぷんを用いた。
【0061】
【0062】
試験の結果、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、紅麹の代替として、寒天を配合した場合(参考例1、2)には、所望の錠剤硬度(5.0kgf以上)と十分な崩壊性(40分以内)を両立できた。他方、紅麹の代替として、でんぷんを配合した場合(参考例3、4)には、所望の錠剤硬度(5.0kgf以上)は満たすことできたが、崩壊性(40分以内)は基準を下回った。即ち、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、紅麹の崩壊性の向上効果が一般の崩壊剤と比較しても遜色ないことがわかった。
本発明によって、リンゴ抽出物を含有する錠剤において、所望の錠剤硬度を維持しながら、十分な崩壊性有する錠剤を提供することができる。同時に、リンゴ抽出物を含有する崩壊性の十分でない錠剤において、有効成分となり得る紅麹を添加することで、崩壊性を向上させると同時に、錠剤設計の自由度を付与することができる。本発明は、医薬品、医薬部外品、獣医科製品、食品、サプリメント等さまざまな分野において、錠剤の構成の設計において、使用目的に応じて活用できるものである。