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特開2023-154689電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び画像形成装置
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  • 特開-電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び画像形成装置 図1
  • 特開-電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び画像形成装置 図2
  • 特開-電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び画像形成装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154689
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20231013BHJP
   G03G 5/07 20060101ALI20231013BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20231013BHJP
   G03G 5/047 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G03G5/147 505
G03G5/147 502
G03G5/147 504
G03G5/147 503
G03G5/07
G03G5/05 102
G03G5/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064197
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 一国
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聖二郎
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼村 友子
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA03
2H068AA04
2H068AA09
2H068AA10
2H068AA29
2H068AA35
2H068BA12
2H068BB07
2H068BB08
2H068BB31
2H068BB59
2H068CA06
2H068CA37
2H068EA14
2H068EA16
2H068FA03
2H068FA11
(57)【要約】
【課題】長期使用における耐摩耗性と高画質化を両立する電子写真感光体、その製造方法、及び当該電子写真感光体を備える画像形成装置を提供することである。
【解決手段】本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも電荷輸送層及び保護層が順次積層されてなる電子写真感光体であって、前記保護層が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を含有する組成物の硬化物を含有し、前記電荷輸送層と前記保護層が、当該両層の成分が相溶する混合層を間に有して、連続的に積層されており、前記混合層の厚さが、0.1~1.0μmの範囲内であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、少なくとも電荷輸送層及び保護層が順次積層されてなる電子写真感光体であって、
前記保護層が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を含有する組成物の硬化物を含有し、
前記電荷輸送層と前記保護層が、当該両層の成分が相溶する混合層を間に有して、連続的に積層されており、
前記混合層の厚さが、0.1~1.0μmの範囲内である
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化1】
[一般式(1)において、アリール基の置換基Xは、アリール基との間にアルキレン基、オキシアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基を有していてもよい、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す。nは、1~3の整数を表す。アリール基が有する水素原子は、置換基X以外にも、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、及びハロゲノ基のいずれかで置換されていてもよい。]
【請求項3】
前記保護層が、無機微粒子を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記保護層が、潤滑性有機微粒子を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
導電性支持体上に、少なくとも電荷輸送層及び保護層を順次積層して電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
少なくともバインダー樹脂を含有する前記電荷輸送層上に、前記保護層を形成するための保護層形成用塗布液を塗布する工程を有し、
前記保護層形成用塗布液が、少なくとも連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、溶剤1、及び溶剤2を含有し、
前記バインダー樹脂の溶解度パラメータδ[(cal/cm1/2]と、前記溶剤1の溶解度パラメータδS1[(cal/cm1/2]と、前記溶剤2の溶解度パラメータδS2[(cal/cm1/2]とが、下記(式1)及び(式2)を満たす
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
(式1) -3.3≦δS1-δ≦-1.3
(式2) -1.3<δS2-δ≦0.7
【請求項6】
前記保護層形成用塗布液の塗布方法が、スライドホッパー法又は浸漬コーティング法である
ことを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
電子写真感光体を備える画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子写真感光体である
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、及び画像形成装置に関する。
より詳しくは、長期使用における耐摩耗性と高画質化を両立する電子写真感光体等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)の耐摩耗性と高画質化を両立するために、連鎖重合性基を有する電荷輸送性化合物を硬化反応させた保護層が知られている(特許文献1~3参照。)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の保護層を用いた場合は、保護層の強度が不十分なため、耐摩耗性を十分に確保できなかった。また、特許文献2及び3に記載の保護層を用いた場合は、保護層の強度が向上して耐摩耗性を確保できたものの、感光層の正孔輸送能がまだ不十分であり、画像メモリが発生しやすく、画質が不十分であった。
【0004】
このように、従来技術では耐摩耗性及び高画質化において十分満足できる電子写真感光体を得ることができず、電子写真感光体にはなお一層の高耐摩耗性、高画質化技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-66424号公報
【特許文献2】特開2005-292560号公報
【特許文献3】特開2004-302451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、長期使用における耐摩耗性と高画質化を両立する電子写真感光体、その製造方法、及び当該電子写真感光体を備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した結果、保護層に、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を含有する組成物の硬化物を含有させ、電荷輸送層と保護層の界面厚さを、0.1~1.0μmの範囲内にすることで、長期使用における耐摩耗性と高画質化を両立する電子写真感光体を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.導電性支持体上に、少なくとも電荷輸送層及び保護層が順次積層されてなる電子写真感光体であって、
前記保護層が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を含有する組成物の硬化物を含有し、
前記電荷輸送層と前記保護層が、当該両層の成分が相溶する混合層を間に有して、連続的に積層されており、
前記混合層の厚さが、0.1~1.0μmの範囲内である
ことを特徴とする電子写真感光体。
【0009】
2.前記連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物が、下記一般式(1)で表される構造を有する
ことを特徴とする第1項に記載の電子写真感光体。
【化1】
[一般式(1)において、アリール基の置換基Xは、アリール基との間にアルキレン基、オキシアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基を有していてもよい、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す。nは、1~3の整数を表す。アリール基が有する水素原子は、置換基X以外にも、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、及びハロゲノ基のいずれかで置換されていてもよい。]
【0010】
3.前記保護層が、無機微粒子を含有する
ことを特徴とする第1項に記載の電子写真感光体。
【0011】
4.前記保護層が、潤滑性有機微粒子を含有する
ことを特徴とする第1項に記載の電子写真感光体。
【0012】
5.導電性支持体上に、少なくとも電荷輸送層及び保護層を順次積層して電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
少なくともバインダー樹脂を含有する前記電荷輸送層上に、前記保護層を形成するための保護層形成用塗布液を塗布する工程を有し、
前記保護層形成用塗布液が、少なくとも連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、溶剤1、及び溶剤2を含有し、
前記バインダー樹脂の溶解度パラメータδ[(cal/cm1/2]と、前記溶剤1の溶解度パラメータδS1[(cal/cm1/2]と、前記溶剤2の溶解度パラメータδS2[(cal/cm1/2]とが、下記(式1)及び(式2)を満たす
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
(式1) -3.3≦δS1-δ≦-1.3
(式2) -1.3<δS2-δ≦0.7
【0013】
6.前記保護層形成用塗布液の塗布方法が、スライドホッパー法又は浸漬コーティング法である
ことを特徴とする第5項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0014】
7.電子写真感光体を備える画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子写真感光体である
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記手段により、長期使用における耐摩耗性と高画質化を両立する電子写真感光体等を提供することができる。
【0016】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推測している。
【0017】
上述のとおり、特許文献1に記載の感光体では保護層の強度が低下するため十分な耐摩耗性を確保できず、特許文献2及び3に記載の感光体では感光層の正孔輸送能が不十分で画像メモリが発生しやすい。これらの理由について、感光体の製造方法、特に保護層形成用塗布液溶剤の溶解度パラメータδ(solubility parameter:SP値)及び保護層形成用塗布液の塗布方法を鑑みて、以下のように推測した。
【0018】
特許文献1に記載の感光体は、保護層形成用塗布液溶剤としてクロロベンゼン(SP値9.5)及びジクロロメタン(SP値9.7)を用いて製造されている。これらの溶剤は、電荷輸送層の結着樹脂として用いたポリカーボネート(SP値9.9)にSP値が近い。そのため、保護層形成用塗布液を電荷輸送層上に浸漬コーティング法で塗布した際に、前記溶剤が電荷輸送層の表層側を溶解して、厚さ1μmを超える混合層を形成する。
【0019】
このとき、電荷輸送層に存在する非反応性電荷輸送性化合物(連鎖重合性官能基を有しない電荷輸送性化合物)の一部が溶出して、保護層にまで拡散すると予想される。一般に、電荷輸送層に存在する電荷輸送性化合物は紫外線を吸収しやすく、このような状況下では保護層を硬化するための紫外線による光重合反応を阻害することとなる。結果として、特許文献1に記載の感光体は、保護層の強度が低下し、十分な耐摩耗性を確保することができなくなる。
【0020】
一方で、特許文献2に記載の感光体は、保護層形成用塗布液溶剤の主成分としてヘプタフルオロシクロペンタン(SP値7.2)を用いて製造されており、一部の実施例ではSP値11.5~12.7の低級アルコール類が併用されているが、どちらも電荷輸送層の結着樹脂として用いたポリカーボネート(SP値9.9)からSP値が大きく離れている。そのため、保護層形成用塗布液を電荷輸送層上に浸漬コーティング法で塗布した際に、前記溶剤が電荷輸送層の表層側をほとんど溶解せず、電荷輸送層と保護層の両層の成分が相溶する混合層の厚さは0.1μm未満になる。
【0021】
また、特許文献3に記載の感光体は、スプレー塗工法により保護層を形成しているが、この場合は、保護層形成用塗布液溶剤の大半が電荷輸送層に付着する際に気化してしまうため、電荷輸送層と保護層はほとんど相溶することなく、混合層の厚さは0.1μm未満になる。
【0022】
感光体中の各領域の正孔伝導準位は、その領域に存在する電荷輸送性化合物のHOMO準位で決まるため、電荷輸送性化合物が異なる電荷輸送層と保護層では正孔伝導準位が異なる。また、電荷輸送層と保護層の間にある混合層の厚さが0.1μm未満である場合、感光体厚さ方向に対して正孔伝導準位が急激に変化する領域が存在することになる。この領域では、正孔のホッピング伝導に対するエネルギー障壁が存在する割合が増加し、いわゆるキャリア移動のトラップサイトが増加する。この現象による電荷輸送層の正孔輸送能低下は、画像メモリ発生を引き起こしやすく、十分な画質が得られない原因となる。
【0023】
本発明の電子写真感光体は、電荷輸送層と保護層の間の混合層の厚さを0.1~1.0μmとしている。混合層の厚さが1.0μm以下であるため、電荷輸送層に存在する非反応性電荷輸送性化合物(連鎖重合性官能基を有しない電荷輸送性化合物)の保護層への溶出は十分に抑制でき、その結果十分な耐摩耗性を確保できる。また、混合層の厚さが0.1μm以上であるため、電荷輸送のエネルギー障壁が緩和され、電荷輸送層の正孔輸送能が向上し、画像メモリ発生を抑制することができる。
【0024】
このような機構により、本発明の電子写真感光体は耐摩耗性と高画質化を両立することができると推察している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の電子写真感光体の一例を示す概略断面図
図2】実施例の感光体1における混合層の厚さを測定するために作成したグラフ
図3】本発明の電子写真感光体を備える画像形成装置の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも電荷輸送層及び保護層が順次積層されてなる電子写真感光体であって、前記保護層が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を含有する組成物の硬化物を含有し、前記電荷輸送層と前記保護層が、当該両層の成分が相溶する混合層を間に有して、連続的に積層されており、前記混合層の厚さが、0.1~1.0μmの範囲内であることを特徴とする。
この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0027】
本発明の電子写真感光体の実施形態としては、前記連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物が、上記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。これによって、電荷輸送性能が十分な保護層を、簡便な方法である光硬化反応を適用して形成できる。
【0028】
本発明の電子写真感光体の実施形態としては、前記保護層が、無機微粒子を含有することが好ましい。これによって、保護層の耐摩耗性をさらに向上できる。
【0029】
本発明の電子写真感光体の実施形態としては、前記保護層が、潤滑性有機微粒子を含有することが好ましい。これによって、保護層の耐摩耗性をさらに向上できる。
【0030】
本発明の電子写真感光体の製造方法は、導電性支持体上に、少なくとも電荷輸送層及び保護層を順次積層して電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、少なくともバインダー樹脂を含有する前記電荷輸送層上に、前記保護層を形成するための保護層形成用塗布液を塗布する工程を有し、前記保護層形成用塗布液が、少なくとも連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、溶剤1、及び溶剤2を含有し、前記バインダー樹脂の溶解度パラメータδ[(cal/cm1/2]と、前記溶剤1の溶解度パラメータδS1[(cal/cm1/2]と、前記溶剤2の溶解度パラメータδS2[(cal/cm1/2]とが、下記(式1)及び(式2)を満たすことを特徴とする。
(式1) -3.3≦δS1-δ≦-1.3
(式2) -1.3<δS2-δ≦0.7
【0031】
本発明の電子写真感光体の製造方法の実施形態としては、前記保護層形成用塗布液の塗布方法が、スライドホッパー法又は浸漬コーティング法であることが好ましい。これによって、電荷輸送層と保護層の両層の成分の相溶が適度に起こりやすくなり、混合層の厚さを0.1μm以上に調整しやすくなる。これによって、電荷輸送層と保護層の間の領域における電荷輸送のエネルギー障壁が緩和され、電荷輸送層の正孔輸送能が向上し、画像メモリ発生を抑制することができる。
【0032】
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体を備える画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、本発明の電子写真感光体であることを特徴とする。
【0033】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0034】
<電子写真感光体の概要>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも電荷輸送層及び保護層が順次積層されてなる電子写真感光体であって、前記保護層が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を含有する組成物の硬化物を含有し、前記電荷輸送層と前記保護層が、当該両層の成分が相溶する混合層を間に有して、連続的に積層されており、前記混合層の厚さが、0.1~1.0μmの範囲内であることを特徴とする。
【0035】
本発明において、電荷輸送層は、電荷発生物質を含有して電荷発生層を兼ねる層であってもよい。電荷輸送層が電荷発生層を兼ねる場合は、導電性支持体と電荷輸送層との間に、電荷輸送層とは別に電荷発生層を有する必要はない。
【0036】
また、本発明の感光体は、上記の各層以外の他の層をさらに含んでいてもよい。他の層としては、例えば導電性支持体上に積層される中間層が挙げられる。中間層は、例えばバリアー機能や接着機能を有する。
【0037】
本発明の感光体の具体的な層構成の例を以下に示す。
(1)導電性支持体/電荷発生層/電荷輸送層/混合層/保護層
(2)導電性支持体/電荷発生層を兼ねる電荷輸送層/混合層/保護層
(3)導電性支持体/中間層/電荷発生層/電荷輸送層/混合層/保護層
(4)導電性支持体/中間層/電荷発生層を兼ねる電荷輸送層/混合層/保護層
【0038】
本発明の電子写真感光体の層構成は、上記(1)~(4)の層構成のいずれでも良く、これらの中でも、上記(3)の層構成が特に好ましい。
【0039】
図1は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す断面図である。図1に示す電子写真感光体1は、導電性支持体101上に、中間層102、電荷発生層103、電荷輸送層104及び保護層106が順次積層されており、さらに、電荷輸送層104と保護層106の間に混合層105を有している。
【0040】
なお、本発明の電子写真感光体は、有機感光体であり、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能が有機化合物によって発現される電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とを高分子錯体で構成した感光体などを含むものとする。
【0041】
<保護層>
本発明の感光体は、保護層が、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を含有する組成物(以下、「保護層形成用組成物」ともいう。)の硬化物を含有することを特徴とする。
【0042】
本発明において、「組成物の硬化物」とは、組成物中の硬化性成分が硬化してマトリックスを形成して得られる硬化物のことをいう。当該硬化物は、組成物中に粒子等の固形分が含まれる場合には、マトリックスと当該固形分から構成される。
【0043】
以下、保護層形成用組成物が含有する各成分について説明する。
【0044】
(連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物)
本発明に係る「連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物」とは、電荷輸送性化合物を基本骨格として、連鎖重合性官能基を少なくとも1つ以上有する化合物のことをいう。
【0045】
「電荷輸送性化合物」とは、電荷輸送性を示す化合物のことをいう。「連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物」の基本骨格となり得る電荷輸送性化合物としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体等を挙げることができる。
【0046】
上記電荷輸送性化合物の中でも、トリフェニルアミン誘導体であることが好ましい。また、トリフェニルアミン誘導体において、フェニル基の1つがビフェニル基であることが好ましい。
【0047】
「連鎖重合性官能基」とは、連鎖重合による反応が可能な官能基のことをいう。連鎖重合には、主に付加重合と開環重合がある。
【0048】
「付加重合」とは、ラジカル、イオン等によって、例えばC=C、C≡C、C=O、C=N、C≡N等の不飽和部分を有する官能基が連鎖重合する反応である。主にはC=Cを有する官能基が連鎖重合する反応である。
【0049】
付加重合性官能基の具体例を以下に示す。構造式中、*は、結合部位を示す。また、Rは、水素原子又はアルキル基、アラルキル基、アリール基等の置換基を示す。
【0050】
【化2】
【0051】
「開環重合」とは、立体的にひずみの大きい環状構造が開環して連鎖重合する反応である。開環重合性官能基の具体例を以下に示す。構造式中、*は、結合部位を示す。また、Rは、水素原子又はアルキル基、アラルキル基、アリール基等の置換基を示す。
【0052】
【化3】
【0053】
上述の連鎖重合性官能基の中でも、付加重合性官能基が好ましく、アクリロイルオキシ基(CH=CHCOO-)又はメタクリロイルオキシ基(CH=C(CH)COO-)がより好ましい。
【0054】
本発明に係る「連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物」は、特定の化合物に限定されず、基本骨格となる電荷輸送性化合物と連鎖重合性官能基のいずれの組み合わせからなる化合物であってもよい。また、その他の置換基や連結基を有していてもよい。
【0055】
本発明に係る「連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物」は、上述のとおり特定の化合物に限定されるものではないが、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。一般的な電子写真感光体の電荷輸送性化合物には、電荷輸送性能を向上させる観点から、一般にはπ共役系の比較的大きい骨格を有する化合物が用いられる。しかし、このような一般的な電子写真感光体の電荷輸送性化合物は、光硬化反応で好適に用いられる波長360~400nmの光の吸収が強いため、当該化合物を含有する層の形成に光硬化反応を適用することが困難である。それに対して、一般式(1)で表される構造は、波長360~400nmの光を吸収せず、かつ電荷輸送性能が一般的な電子写真感光体の電荷輸送性化合物と同等レベルである。そのため、一般式(1)で表される構造を有する電荷輸送性化合物を用いる場合は、電荷輸送性能が十分な保護層を、簡便な方法である光硬化反応を適用して形成できる。
【0056】
【化4】
【0057】
[一般式(1)において、アリール基の置換基Xは、アリール基との間にアルキレン基、オキシアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基を有していてもよい、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す。nは、1~3の整数を表す。アリール基が有する水素原子は、置換基X以外にも、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、及びハロゲノ基のいずれかで置換されていてもよい。]
【0058】
置換基Xは、連鎖重合性官能基であるアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表すが、アリール基との間にアルキレン基、オキシアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基を有していてもよい。
【0059】
置換基Xが有していてもよいアルキレン基は、-(CH-で表される構造を有する連結基である。置換基Xがアルキレン基を有する場合、-(CH-におけるnは、1~6の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましい。
【0060】
置換基Xが有していてもよいオキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基は、-(OCHCH-で表される構造を有する連結基である。-(OCHCH-におけるnが1の場合はオキシアルキレン基といい、nが2以上の場合はポリオキシアルキレン基という。置換基Xがオキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を有する場合、-(OCHCH-におけるnは、1~6の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましい。
【0061】
アリール基が有する水素原子が置換され得る炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の低級アルキル基が好ましい。
【0062】
アリール基が有する水素原子が置換され得る炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec-ヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec-ノニルオキシ基、tert-ノニルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec-デシルオキシ基、tert-デシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
【0063】
アリール基が有する水素原子が置換され得るハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
【0064】
本発明に係る「連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物」の構造を以下に例示する。これらのうち、T-1~T-13は、一般式(1)で表される構造に該当する。
【0065】
【化5】
【0066】
【化6】
【0067】
【化7】
【0068】
連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、公知の方法を利用して合成できる。例えば構造T-3を有する化合物は、下記の反応式に示すように、ヒドロキシ基を有するN,N-ジフェニル-N-ビフェニルアミン誘導体とアクリル酸クロリドとのエステル化反応により合成できる。
【0069】
【化8】
【0070】
保護層形成用組成物における連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の含有割合は、保護層形成用組成物全量に対し、10~90質量%の範囲内が好ましく、20~80質量%の範囲内であることがより好ましい。上記含有割合が、10質量%以上であることで、十分な電荷輸送性が得られ、それにより十分な耐メモリ性が得られる。また、90質量%以下であることで、十分な保護層の架橋密度が得られ、それにより十分な耐摩耗性が得られる。
【0071】
保護層が連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を含有する組成物の硬化物を含有することは、保護層をアルカリ加水分解して得られたアルカリ加水分解物を、NMR、IR、質量分析等、公知の機器分析に供することにより確認することが可能である。
【0072】
(3官能以上の重合性モノマー)
本発明に係る保護層形成用組成物は、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物とは別に、3官能以上の重合性モノマーを含有することが好ましい。「重合性モノマー」とは、重合性基を有し、紫外線、可視光線、電子線等の活性エネルギー線の照射により、又は加熱等のエネルギーの付加により、重合(硬化)する化合物を表す。
【0073】
3官能以上の重合性モノマーは、3官能以上の重合性モノマーの分子同士のみで重合して保護層のマトリックスに3次元の網目構造を導入する化合物であってもよい。また、3官能以上の重合性モノマーは、電荷輸送性化合物と一体となって重合して保護層のマトリックスに3次元の網目構造を導入する化合物であってもよい。これにより、保護層のマトリックスの架橋密度が高くなり、高硬度、かつ、高弾性な保護層が得られ、より高い耐摩耗性及び耐傷性を達成することができる。
【0074】
3官能以上の重合性モノマーが有する重合性基としては、付加重合性官能基であることが好ましい。付加重合性官能基の中でも、少ない光量又は短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイルオキシ基(CH=CHCOO-)又はメタクリロイルオキシ基(CH=C(CH)COO-)であることが特に好ましい。
【0075】
3官能以上の重合性モノマーにおける重合性基以外の部分は、電荷輸送能を有しないことが好ましい。すなわち、3官能以上の重合性モノマーは電荷輸送能を有しないことが好ましい。このような観点から、3官能以上の重合性モノマーにおける重合性基以外の部分は、典型的には、炭素原子間に酸素原子を有してもよい脂肪族炭化水素基、イソシアヌル環等が好ましい。
【0076】
3官能以上の重合性モノマーの含有割合は、保護層形成用組成物全量に対して、20~80質量%の範囲内が好ましく、30~70質量%の範囲内であることがより好ましい。3官能以上の重合性モノマーの含有割合が20質量%以上であると、得られる保護層のマトリックスは十分な架橋密度を有する構成となり、保護層の耐摩耗性が十分に向上する。3官能以上の重合性モノマーの含有割合が80質量%以下であると、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の含有量が低下することなく、保護層の電荷輸送能力が十分となり、耐メモリ性に優れる。
【0077】
3官能以上の重合性モノマーとして、具体的には、以下のM1~M11に構造を示す化合物(化合物M1~化合物M11)が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
下記の各式中、Rはアクリロイル基(CH=CHCO-)を表し、R′はメタクリロイル基(CH=C(CH)CO-)を表す。
【0079】
【化9】
【0080】
3官能以上の重合性モノマーは、合成品であってもよいし市販品であってもよい。また、3官能以上の重合性モノマーは、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(重合開始剤)
重合開始剤は、保護層形成用組成物が含有する必須成分である連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、及び任意成分である3官能以上の重合性モノマー等の重合性化合物を重合させる際に使用されるものである。
【0082】
重合開始剤は、保護層形成用組成物が含有する重合性化合物の種類に応じて適宜選択される。本発明において、重合開始剤は、熱重合開始剤であっても、光重合開始剤であってもよいが、光重合開始剤であることが好ましい。特にラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0083】
ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず公知のものを用いることができ、その例としては、アルキルフェノン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。これらの中でも、α-アミノアルキルフェノン構造又はアシルホスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましく、アシルホスフィンオキサイド構造を有する化合物がより好ましい。アシルホスフィンオキサイド構造を有する化合物の一例としては、Omnirad819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。重合開始剤は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0084】
保護層形成用組成物中における重合開始剤の含有量は、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物及び3官能以上の重合性モノマーを含む重合性化合物の合計量100質量部に対して0.1~20質量部の範囲内で含有されることが好ましく、0.5~10質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0085】
(無機微粒子)
本発明に係る保護層形成用組成物は、無機微粒子を含有することが好ましい。これによって、保護層の耐摩耗性をさらに向上できる。
【0086】
無機微粒子の数平均一次粒径は、例えば、1~300nmの範囲内であることが好ましく、3~100nmの範囲内であることが特に好ましい。
【0087】
無機微粒子の粒径(数平均一次粒径)は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた。)を自動画像処理解析装置「ルーゼックス AP(LUZEX(登録商標)AP)」((株)ニレコ製)ソフトウェアVer.1.32を使用して、2値化処理し、それぞれ水平方向フェレ径を算出、その平均値を数平均一次粒径として算出する。ここで、水平方向フェレ径とは、無機微粒子の画像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0088】
また、保護層形成用組成物における無機微粒子の含有割合は、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物及び3官能以上の重合性モノマーを含む重合性化合物の合計量100質量部に対して1~100質量部の範囲内であることが好ましく、5~80質量部の範囲内であることがより好ましい。無機微粒子の含有割合が上記範囲内であることにより、硬度、及び保護層の光透過性を十分に満たすことが可能となる。無機微粒子の含有割合が、1質量部以上であると、保護層の硬度向上によりさらなる耐摩耗性が得られる。100質量部以下であると、光透過性の低下による潜像形成への影響や、無機微粒子の凝集に伴う画像欠陥が発生しにくくなる。
【0089】
本発明に係る無機微粒子は、金属酸化物粒子であることが耐摩耗性の観点から好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物からなる粒子が例示される。中でも、硬度、保護層の光透過性の観点から、シリカ粒子又は酸化スズ粒子が好ましい。
【0090】
上記金属酸化物粒子は、表面修飾剤により、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物及び3官能以上の重合性モノマーを含む重合性化合物と反応する官能基を有する表面が得られるように表面修飾された金属酸化物粒子であることが好ましい。これにより、当該表面修飾された金属酸化物粒子は、保護層形成の際に重合性化合物と反応できる。これによって、金属酸化物粒子がマトリックスに固定され、より強固な保護層を形成することができる。
【0091】
表面修飾剤は、重合性化合物と反応する官能基に加えて、金属酸化物粒子表面のヒドロキシ基と反応する官能基を有することが好ましい。金属酸化物粒子表面のヒドロキシ基と反応する官能基としては、加水分解性シリル基が挙げられる。このような表面修飾剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
【0092】
例えば重合性化合物の重合性基が付加重合性官能基である場合、表面修飾剤としては、付加重合性官能基と加水分解性シリル基とを有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。このような表面修飾剤としては、下記に記すような化合物が例示される。
【0093】
S-1 CH=CHSi(CH)(OCH
S-2 CH=CHSi(OCH
S-3 CH=CHSiCl
S-4 CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S-5 CH=CHCOO(CHSi(OCH
S-6 CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S-7 CH=CHCOO(CHSi(OCH
S-8 CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S-9 CH=CHCOO(CHSiCl
S-10 CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S-11 CH=CHCOO(CHSiCl
S-12 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S-13 CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S-14 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S-15 CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S-16 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S-17 CH=C(CH)COO(CHSiCl
S-18 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S-19 CH=C(CH)COO(CHSiCl
S-20 CH=CHSi(C)(OCH
S-21 CH=C(CH)Si(OCH
S-22 CH=C(CH)Si(OC
S-23 CH=CHSi(OCH
S-24 CH=C(CH)Si(CH)(OCH
S-25 CH=CHSi(CH)Cl
S-26 CH=CHCOOSi(OCH
S-27 CH=CHCOOSi(OC
S-28 CH=C(CH)COOSi(OCH
S-29 CH=C(CH)COOSi(OC
S-30 CH=C(CH)COO(CHSi(OC
【0094】
【化10】
【0095】
これらの表面修飾剤は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。また、表面修飾剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、修飾前の金属酸化物粒子100質量部に対して、0.1~100質量部の範囲内であることが好ましい。
【0096】
金属酸化物粒子の表面修飾は、具体的には、修飾前の金属酸化物粒子と表面修飾剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、金属酸化物粒子を微細化すると同時に粒子の表面修飾を進行させ、その後、溶剤を除去して粉体化することによって行うことができる。
【0097】
スラリーの湿式粉砕に用いる装置としては、湿式メディア分散型装置が挙げられる。湿式メディア分散型装置とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、更に回転軸と垂直に取り付けられた撹拌ディスクを高速回転させることにより、金属酸化物粒子の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置である。その構成としては、金属酸化物粒子に表面修飾を行う際に金属酸化物粒子を十分に分散させ、かつ表面修飾できる形式であれば問題ない。例えば、縦型・横型、連続式・回分式等、種々の様式のものを用いることができる。具体的には、サンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミル等を使用することができる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズ等の粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、剪断、ズリ応力等によって微粉砕及び分散が行われる。
【0098】
湿式メディア分散型装置で用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石等を原材料としたボールを用いることができるが、特にジルコニア製やジルコン製のものを用いることが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1~2mm程度のものを使用するが、本発明では、例えば、0.1~1.0mm程度のものを用いることが好ましい。
【0099】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、例えば、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製等種々の素材のものを使用することができるが、本発明では特にジルコニア又はシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁であることが好ましい。
【0100】
(潤滑性有機微粒子)
本発明に係る保護層形成用組成物は、潤滑性有機微粒子を含有することが好ましい。これによって、保護層の耐摩耗性をさらに向上できる。
【0101】
潤滑性有機微粒子としては、例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を用いることができる。フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂及びこれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが好ましい。特に四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0102】
潤滑性有機微粒子の粒径は、数平均一次粒径が0.01~1μmのものが好ましい。特に好ましくは、0.05~0.5μmのものである。潤滑性有機微粒子の数平均一次粒径は、無機微粒子と同様の方法で測定される。
【0103】
保護層形成用組成物中の潤滑性有機微粒子の割合は、上記重合性化合物の合計量100質量部に対して、5~70質量部の範囲内が好ましく、10~60質量部の範囲内がより好ましい。
【0104】
(その他の成分)
本発明に係る保護層形成用組成物は、必須成分である連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、及び任意の成分である3官能以上の重合性モノマー、重合開始剤、無機微粒子、潤滑性有機微粒子等の他に、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、安定剤、シリコーンオイル等が挙げられる。酸化防止剤については特開2000-305291号公報等に開示されているものが好ましい。
【0105】
酸化防止剤、安定剤、シリコーンオイル等については、それぞれ、上記重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~50質量部、より好ましくは0.01~40質量部の割合で用いることができる。
【0106】
電荷輸送層が電荷発生層を兼ねる場合は、電荷輸送層は後述の電荷発生剤を含有する。
【0107】
保護層の厚さは、0.2~10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~6μmである。
【0108】
<電荷輸送層>
本発明に係る電荷輸送層は、非反応性電荷輸送性化合物及びバインダー樹脂(以下、「電荷輸送層用バインダー樹脂」ともいう。)が含有されてなる層である。
【0109】
「非反応性電荷輸送性化合物」とは、連鎖重合性官能基を有しない電荷輸送性化合物のことである。連鎖重合性官能基及び電荷輸送性化合物については、上述のとおりである。
【0110】
電荷輸送層用バインダー樹脂は、公知の樹脂を用いることができ、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられるが、ポリカーボネート樹脂が好ましい。さらにはBPA(ビスフェノールA)型、BPZ(ビスフェノールZ)型、ジメチルBPA型、BPA-ジメチルBPA共重合体型のポリカーボネート樹脂等が耐クラック、耐摩耗性、帯電特性の点で好ましい。
【0111】
電荷輸送層中の非反応性電荷輸送性化合物の含有割合は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して10~500質量部であることが好ましく、より好ましくは20~250質量部である。
【0112】
電荷輸送層は、酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイル等を含有していてもよい。酸化防止剤については特開2000-305291号公報、電子導電剤は特開昭50-137543号公報、同58-76483号公報等に開示されているものが好ましい。
【0113】
電荷輸送層の厚さは、非反応性電荷輸送性化合物の特性、電荷輸送層用バインダー樹脂の特性及び含有割合等によって異なるが、5~40μmであることが好ましく、よりに好ましくは10~30μmである。
【0114】
<保護層と電荷輸送層の成分が相溶する混合層>
本発明の感光体は、電荷輸送層と保護層が、当該両層の成分が相溶する混合層を間に有して、連続的に積層されており、混合層の厚さが、0.1~1.0μmの範囲内であることを特徴とする。
【0115】
混合層の厚さが1.0μm以下であることによって、電荷輸送層に存在する非反応性電荷輸送性化合物の保護層への溶出を十分に抑制でき、その結果十分な耐摩耗性を確保できると考えられる。また、混合層の厚さが0.1μm以上であることによって、電荷輸送のエネルギー障壁が緩和され、電荷輸送層の正孔輸送能が向上し、画像メモリ発生を抑制することができると考えられる。これによって、本発明の感光体は、長期使用における耐摩耗性と高画質化を両立できる。
【0116】
当該混合層の厚さは、0.1~1.0μmの範囲内であることを特徴とするが、耐摩耗性と高画質化をより高いレベルで両立する観点から、0.2~0.6μmの範囲内であることが好ましい。
【0117】
混合層の厚さは、以下の方法で測定できる。
【0118】
ToF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)装置を用いて、感光体表面をスパッタリングにより一定速度で削り取りながら、感光体の厚さ方向の各領域における質量分析ピーク強度を測定する。
【0119】
測定した質量分析ピーク強度に基づいて、保護層と電荷輸送層のうちいずれかの層にのみ含有される化学構造のうち、その化学構造が含有される層をスパッタしたときのフラグメントピーク強度I[count.]が最も大きい化学構造を、厚さ測定用の化学構造として選択する。
【0120】
横軸をスパッタ時間t[sec]、縦軸をフラグメントピーク強度I[count.]の対数にして、選択した厚さ測定用の化学構造のフラグメントピーク強度をプロットする。プロットを基に近似曲線を作成し、図2に示すようなグラフを作成する。横軸はスパッタを開始した時点を0とする。近似曲線の作成には、マイクロソフト・エクセル2013の「散布図(平滑線)」を用いることができる。
【0121】
なお、図2に示すグラフは、実施例の感光体1における測定のグラフである。このときのスパッタ速度は0.02μm/secであった。また、厚さ測定用の化学構造としては、トリメチロールプロパントリメタクリレートが有するメタクリル基由来の化学構造を選択した。そのため、図2に示すグラフは、メタクリル基由来の化学構造に起因するm/z=69のフラグメントピーク強度のグラフである。
【0122】
作成したグラフから、フラグメントピーク強度が大きく変化するスパッタ時間tの範囲を求め、このスパッタ時間tの範囲を混合層をスパッタしていた時間とみなす。具体的には、まず、d(log(I))/dtの絶対値が最大となる点を、変曲点として求める。なお、d(log(I))/dtの値を算出する際には、log(I)の値として前後2点を含めた計5点の平均値を使用する。これにより、強度Iの値が小さく測定ノイズにより見かけ上d(log(I))/dtが大きくなるデータ点を除外することができる。次いで、変曲点の前後の、傾きd(log(I))/dtの絶対値が、変曲点におけるd(log(I))/dtの絶対値の1/4以上となる、スパッタ時間tの範囲を求める。この範囲を、混合層をスパッタしていた時間とみなす。
【0123】
例えば図2に示すグラフの場合は、t=176secで変曲点を迎える。この変曲点におけるd(log(I))/dtは-2.84であり、この値の1/4は0.71である。そのため、d(log(I))/dtの絶対値が0.71以上となるスパッタ時間tの範囲を、混合層をスパッタしていた時間とみなす。d(log(I))/dtの絶対値が0.71以上となるスパッタ時間tの範囲は、t=162~184secであるため、混合層をスパッタしていた時間は、162secから184secまでの22secとみなすことができる。
【0124】
混合層をスパッタしていた時間と、スパッタ速度から、混合層の厚さを算出する。
【0125】
例えば図2に示すグラフの場合は、混合層をスパッタしていた時間が22secで、スパッタ速度が0.02μm/secであるから、混合層の厚さは0.44μmと求められる。
【0126】
なお、変曲点が不明瞭で観測できない場合は、保護層と電荷輸送層の相溶の程度が大き過ぎると判断し、混合層の厚さが1.0μmを超えているとみなす。
【0127】
<電荷発生層>
電荷発生層は、電荷輸送剤及びバインダー樹脂(以下、「電荷発生層用バインダー樹脂」ともいう。)が含有されてなる層である。
【0128】
電荷発生剤としては、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルー等のアゾ顔料、ピレンキノン、アントアントロン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴ等のインジゴ顔料、ピランスロン、ジフタロイルピレン等の多環キノン顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのなかでも、多環キノン顔料、チタニルフタロシアニン顔料が好ましい。これらの電荷発生剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0129】
電荷発生層用バインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ-ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのなかでも、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0130】
電荷発生層中の電荷発生剤の含有割合は、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して1~600質量部であることが好ましく、より好ましくは50~500質量部である。
【0131】
電荷発生層の厚さは、電荷発生剤の特性、電荷発生層用バインダー樹脂の特性、含有割合等により異なるが、0.01~5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05~3μmである。
【0132】
<中間層>
中間層は、導電性支持体と電荷発生層又は電荷発生層を兼ねる電荷輸送層との間のバリアー性又は接着性を高める機能を有する。本発明の感光体において中間層は必須の構成ではないが、種々の故障防止等を考慮すると、中間層を設けることが好ましい。
【0133】
このような中間層は、例えば、バインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)及び必要に応じて導電性粒子や金属酸化物粒子が含有されてなる層である。
【0134】
中間層用バインダー樹脂としては、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン-アクリル酸コポリマー、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチン等が挙げられる。これらのなかでもアルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。
【0135】
中間層には、抵抗調整の目的で各種の導電性粒子又は金属酸化物粒子を含有させることができる。金属酸化物粒子としては、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム等の各種金属酸化物粒子を用いることができる。スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズのように複合金属酸化物の粒子を用いてもよい。
【0136】
このような金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、10~300nmであることが好ましく、より好ましくは20~100nmである。
【0137】
導電性粒子又は金属酸化物粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を混合した場合には、固溶体又は融着の形をとってもよい。
【0138】
導電性粒子又は金属酸化物粒子の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して20~400質量部であることが好ましく、より好ましくは50~350質量部である。
【0139】
中間層の厚さは、0.1~15μmであることが好ましく、より好ましくは0.3~10μmである。
【0140】
<導電性支持体>
本発明の実施形態に係る感光体を構成する導電性支持体は、導電性を有する支持体であればよい。
【0141】
導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレス等の金属をドラム又はシート状に成形したものが挙げられる。また、アルミニウム又は銅等の金属からなる金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム又は酸化スズ等をプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独又はバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙等が挙げられる。
【0142】
<感光体の製造>
本発明の電子写真感光体は、例えば、導電性支持体上に、感光体を構成する各層を順次形成することで製造できる。各層の形成は、各層を構成する固形分(又はその原料成分)と溶剤を含む塗布液からなる塗膜を形成する工程と、当該塗膜を硬化させる工程により行われる。本発明の感光体の具体的な製造方法について、図1に示す感光体1の製造方法を例にして、以下に説明する。
【0143】
感光体1は、例えば、下記工程を経ることにより製造することができる。
工程(1):導電性支持体101上に中間層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、中間層102を形成する工程。
工程(2):導電性支持体101上に形成された中間層102の表面に電荷発生層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷発生層103を形成する工程。
工程(3):中間層102上に形成された電荷発生層103の表面に電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷輸送層104を形成する工程。
工程(4):電荷輸送層104上に、保護層形成用の塗布液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることにより、混合層105及び保護層106を形成する工程。
【0144】
〔工程(1):中間層の形成〕
中間層102は、溶剤中に中間層用バインダー樹脂を溶解させて塗布液(以下、「中間層形成用塗布液」ともいう。)を調製し、必要に応じて導電性粒子又は金属酸化物粒子を分散させた後、当該塗布液を導電性支持体101上に一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0145】
中間層形成用塗布液中に導電性粒子又は金属酸化物粒子を分散する手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
中間層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法(円形スライドホッパー法を含む。)等の公知の方法が挙げられる。なお、円形スライドホッパー法は、円筒状又は円柱状の物品の外周面を被塗布面とする塗布に用いられる方法である。円形スライドホッパー法は、ドラム状の導電性支持体の外周面に中間層形成用塗布液を塗布する方法として用いることができる。
【0147】
塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類、塗膜の厚さに応じて適宜選択することができるが、熱乾燥が好ましい。
【0148】
中間層102の形成工程において使用する溶剤としては、導電性粒子又は金属酸化物粒子を良好に分散し、中間層用バインダー樹脂を溶解するものであればよい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール等の炭素数1~4のアルコール系溶剤が、バインダー樹脂の溶解性と塗布性能に優れ好ましい。また、保存性、粒子の分散性を向上するために、前記溶剤と併用でき、好ましい効果を得られる助溶剤としては、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0149】
中間層形成用塗布液中の中間層用バインダー樹脂の濃度は、中間層102の厚さや生産速度に合わせて適宜選択される。
【0150】
〔工程(2):電荷発生層の形成〕
電荷発生層103は、溶剤中に電荷発生層用バインダー樹脂を溶解させた溶液中に、電荷発生剤を分散して塗布液(以下、「電荷発生層形成用塗布液」ともいう。)を調製し、当該塗布液を中間層102上に一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0151】
電荷発生層形成用塗布液中に電荷発生剤を分散する手段としては、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法(円形スライドホッパー法を含む。)等の公知の方法が挙げられる。
【0153】
塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類、塗膜の厚さに応じて適宜選択することができるが、熱乾燥が好ましい。
【0154】
電荷発生層103の形成に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2-ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸t-ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
〔工程(3):電荷輸送層の形成〕
電荷輸送層104は、溶剤中に電荷輸送層用バインダー樹脂及び電荷輸送剤を溶解させた塗布液(以下、「電荷輸送層形成用塗布液」ともいう。)を調製し、当該塗布液を電荷発生層103上に一定の厚さに塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0156】
電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法(円形スライドホッパー法を含む。)等の公知の方法が挙げられる。
【0157】
塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類、塗膜の厚さに応じて適宜選択することができるが、熱乾燥が好ましい。
【0158】
電荷輸送層104の形成に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2-ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
〔工程(4):混合層及び保護層の形成〕
混合層105及び保護層106の形成には、典型的には、保護層形成用組成物に溶剤を添加した塗布液(「保護層形成用塗布液」ともいう。)を用いる。
【0160】
保護層形成用塗布液は、保護層形成用組成物における必須成分である連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、及び任意成分である3官能以上の重合性モノマー、重合開始剤、無機微粒子、潤滑性有機微粒子等を任意の溶剤に添加して調製される。
【0161】
なお、保護層形成用組成物が、電荷輸送層上に塗布可能な粘度を有する液状組成物である場合は、溶剤を用いる必要はなく、保護層形成用組成物自体を保護層形成用塗布液として用いる。ただし、本発明の感光体は、電荷輸送層104と保護層106の成分が相溶する混合層105を0.1~1.0μmの範囲内の厚さで有することを特徴とするため、このような混合層105を形成するためには、保護層形成用塗布液が電荷輸送層の成分を溶かす溶剤を含有することが好ましい。
【0162】
保護層形成用塗布液の調製は、上記各成分を溶剤に溶解又は分散させることで行う。上記成分のうち表面修飾金属酸化物粒子は溶剤に分散して用いられる。表面修飾金属酸化物粒子を溶剤に分散する手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
保護層の形成に用いられる溶剤としては、上記各成分を溶解又は分散させることができればいずれの溶剤も使用できる。例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0164】
これらの溶剤の中でも、保護層形成用塗布液が、下記(式1)及び(式2)を満たす溶剤1及び溶剤2を含有することが好ましい。
【0165】
(式1) -3.3≦δS1-δ≦-1.3
(式2) -1.3<δS2-δ≦0.7
【0166】
δ:電荷輸送層用バインダー樹脂の溶解度パラメータ[(cal/cm1/2
δS1:溶剤1の溶解度パラメータ[(cal/cm1/2
δS2:溶剤2の溶解度パラメータ[(cal/cm1/2
【0167】
溶解度パラメータδ(solubility parameter:SP値)は、物質同士の相溶性の尺度となる物性値であり、分子凝集エネルギーEと分子容Vを用いて以下の式で与えられる値である。
δ=(E/V)1/2
δ:溶解度パラメータ[(cal/cm1/2
E:分子凝集エネルギー[cal/mol]
V:分子容[cm/mol]
【0168】
本発明において、溶剤の溶解度パラメータは、下記公知文献AのTable 1bに記載のδ(Hildebrand solubility parameter)を引用できる。ただし、公知文献AのTable 1bには、単位が(MPa)1/2(=(J/cm1/2)である値が記載されているため、この値を単位が(cal/cm1/2である値に変換するためには、2.05で除する必要がある。
【0169】
公知文献A:CRITICAL COMPILATION OF SCALES OF SOLVENT PARAMETERS. PART I. PURE, NON-HYDROGEN BOND DONOR SOLVENTS, Technical Report, J.-L.M.Abboud, R.Notario, Pure Appl. Chem., Vol.71, No.4, pp.645-718,1999.
【0170】
また、本発明において、電荷輸送層用バインダー樹脂の溶解度パラメータは、下記公知文献Bに記載の値を引用できる。
【0171】
公知文献B:特開2003-89920号公報
【0172】
保護層形成用塗布液が、(式1)及び(式2)を満たす溶剤1及び溶剤2を含有することで、電荷輸送層と保護層の両層の成分の相溶を適度に抑制することができ、混合層の厚さを1.0μm以下に調整できる。これによって、電荷輸送層に存在する非反応性電荷輸送性化合物の保護層への溶出を抑制でき、その結果十分な耐摩耗性を確保できる。
【0173】
また、溶剤1及び溶剤2は、下記(式1′)及び(式2′)を満たすことがより好ましい。
【0174】
(式1′) -2.0≦δS1-δ≦-1.3
(式2′) -1.0≦δS2-δ≦0.0
【0175】
次いで、得られた保護層形成用塗布液を工程(3)により形成された電荷輸送層104の表面に塗布して塗膜を形成する。
【0176】
保護層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、スライドホッパー法(円形スライドホッパー法を含む。)、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法等の公知の方法が挙げられる。
【0177】
これらの塗布方法の中でも、スライドホッパー法又は浸漬コーティング法が好ましい。保護層形成用塗布液の塗布方法がスライドホッパー法又は浸漬コーティング法であると、電荷輸送層と保護層の両層の成分の相溶が適度に起こりやすくなり、混合層の厚さを0.1μm以上に調整しやすくなる。これによって、電荷輸送層と保護層の間の領域における電荷輸送のエネルギー障壁が緩和され、電荷輸送層の正孔輸送能が向上し、画像メモリ発生を抑制することができる。
【0178】
スライドホッパー法による塗布装置としては、例えば、特開昭58-189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型塗布装置を用いることができる。
【0179】
その後、塗膜中の反応成分を反応させて塗膜を硬化することにより、保護層106を形成することができる。また、保護層106の形成と同時に、電荷輸送層104と保護層106の間に混合層105が形成される。
【0180】
上記反応成分には、重合性化合物の他に、表面に反応性有機基を有する金属酸化物粒子のような成分も含まれ得る。保護層形成用組成物が表面に反応性有機基を有する金属酸化物粒子を含有する場合、重合性化合物と金属酸化物粒子表面の反応性有機基が反応し、マトリックスと金属酸化物粒子の界面に強固な結合が形成される。
【0181】
塗膜に対しては、乾燥させることなく硬化処理を行ってもよいが、自然乾燥又は熱乾燥を行ってから硬化処理を行うことが好ましい。
【0182】
乾燥の条件は、溶剤の種類、塗膜の厚さ等によって適宜選択できる。乾燥温度は、好ましくは室温(25℃)~180℃の範囲内であり、特に好ましくは80~140℃の範囲内である。乾燥時間は、好ましくは1~200分間であり、特に好ましくは5~100分間である。
【0183】
塗膜を硬化させるための硬化処理においては、塗膜に紫外線を照射してラジカルを発生させ、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を重合反応させる。あるいは、保護層形成用組成物が3官能以上の重合性モノマーを含有する場合には、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を3官能以上の重合性モノマーとともに重合反応させる。保護層形成用組成物が3官能以上の重合性モノマーを含有する場合には、架橋反応による架橋結合を形成させて硬化させることにより、得られる保護層のマトリックスに3次元の網目構造が導入され、架橋密度が高く、高硬度、かつ、高弾性な保護層が得られる。
【0184】
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン等を用いることができる。
【0185】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、例えば、紫外線の照射量は、通常5~500mJ/cmの範囲内、好ましくは5~100mJ/cmの範囲内である。ランプの電力は、好ましくは0.1~5kWの範囲内であり、特に好ましくは0.5~3kWの範囲内である。必要な紫外線の照射量を得るための照射時間としては、例えば、0.1秒間~10分間が好ましく、作業効率の観点から0.1秒間~5分間がより好ましい。
【0186】
保護層の形成の工程においては、紫外線を照射する前後、及び紫外線を照射中に乾燥を行うことができ、乾燥を行うタイミングはこれらを組み合わせて適宜選択できる。
【0187】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上記した電子写真感光体を備えて構成される。本発明の画像形成装置は、さらに、例えば、当該電子写真感光体の表面を帯電させる第1帯電手段と、当該電子写真感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を転写材(画像を担持する画像支持体であり、例えば普通紙、透明シート等)に転写する転写手段と、転写材にトナー像を転写した後に電子写真感光体の表面を帯電させる第2帯電手段と、当該電子写真感光体上の残存トナーを除去するクリーニング手段とを備えるものが好ましい。
【0188】
図3は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bk、中間転写体ユニット7、給紙手段21、定着手段24等を備えている。画像形成装置100の装置本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0189】
イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、ドラム状の感光体1Yの周囲に感光体1Yの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写ローラー5Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、ドラム状の感光体1Mの周囲に感光体1Mの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写ローラー5M、第2帯電手段9M及びクリーニング手段6Mを有する。
【0190】
シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、ドラム状の感光体1Cの周囲に感光体1Cの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写ローラー5C、第2帯電手段9C及びクリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成ユニット10Bkは、ドラム状の感光体1Bkの周囲に感光体1Bkの回転方向に沿って順次配置された、第1帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写ローラー5Bk、第2帯電手段9Bk及びクリーニング手段6Bkを有する。感光体1Y、1M、1C、1Bkとしては、上記した本発明の電子写真感光体を用いる。
【0191】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bk上に形成するトナー像の色が異なるのみで、同様に構成される。したがって、画像形成ユニット10Yを例にとって詳細に説明し、画像形成ユニット10M、10C、10Bkの説明を省略する。
【0192】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、第1帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写ローラー5Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。また、本実施形態においては、画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、第1帯電手段2Y、現像手段4Y、第2帯電手段9Y及びクリーニング手段6Yが一体化されて設けられている。
【0193】
第1帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段であって、例えば、コロナ放電型の帯電器が用いられる。
【0194】
露光手段3Yは、第1帯電手段2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成
する手段である。露光手段3Yとしては、例えば、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又はレーザー光学系が用いられる。
【0195】
現像手段4Yは、例えば、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び感光体1Yとこの現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0196】
一次転写ローラー5Yは、感光体1Y上に形成されたトナー像を無端ベルト状の中間転写体70に転写する手段である。一次転写ローラー5Yは、中間転写体70と当接して配置されている。
【0197】
第2帯電手段9Yは、中間転写体70にトナー像を転写した後に感光体1Yの表面を帯電(除電)させる除電手段であり、プレクリーニング部材として設けられている。第2帯電手段9Yとしては、例えば、コロナ放電型の帯電器が用いられる。
【0198】
本発明の画像形成装置100によれば、本発明の電子写真感光体を備えることに加え、第2帯電手段9Yが設けられていることにより、十分な感光体の長寿命及び高画質を得ることができる。また、画像形成装置100は本発明の電子写真感光体を備えていることにより、第2帯電手段9Yが設けられていない、又は第2帯電手段9Yを使用しない画像形成条件においても、十分な感光体の長寿命及び高画質を得ることができる。
【0199】
クリーニング手段6Yは、クリーニングブレードと、このクリーニングブレードより上流側に設けられたブラシローラーとにより構成される。
【0200】
中間転写体ユニット7は、複数のローラー71、72、73、74により巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状の中間転写体70を有する。中間転写体ユニット7には、中間転写体70上にトナーを除去するクリーニング手段6bが配置されている。
【0201】
また、上記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkと、中間転写体ユニット7とにより筐体8が構成されている。筐体8は、装置本体Aから支持レール82L、82Rを介して引き出し可能に構成されている。
【0202】
画像形成装置100は、中間転写体70上に形成されたカラー画像を転写材Pに転写する二次転写ローラー5bを備える。給紙手段21は、二次転写ローラー5bに転写材Pを供給するための手段である。給紙手段21は、転写材Pを収容する給紙カセット20と、転写材Pを二次転写ローラー5bに搬送するための複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、及びレジストローラー23を備える。
【0203】
定着手段24は、転写材Pに転写されたカラー画像を転写材Pに定着させる手段であり、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。画像形成装置100は、画像形成された転写材Pを取り出すための排紙トレイ26を有し、定着手段24の下流に、定着処理された転写材Pを、排紙トレイ26に搬送する排紙ローラー25を備える。
【0204】
なお、上記した実施形態においては、画像形成装置100が、カラーのレーザープリンターであるものとしたが、モノクロのレーザープリンター、コピー機、複合機等であっても良い。また、露光光源は、レーザー以外の光源、例えばLED光源等であってもよい。
【0205】
<画像形成方法>
画像形成方法は、本発明の電子写真感光体を用いて行うことが好ましい。
具体的には、本発明の電子写真感光体を備える上記画像形成装置100を用いて以下のようにして行うことができる。
【0206】
すなわち、まず、第1帯電手段2Y、2M、2C、2Bkにより感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面に放電して負に帯電させる。次いで、露光手段3Y、3M、3C、3Bkで、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段4Y、4M、4C、4Bkにより、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面にトナーを付与して現像し、トナー像を形成する。
【0207】
次いで、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkにより、感光体1Y、1M、1C、1Bk上にそれぞれ形成した各色のトナー像を、回動する中間転写体70上に逐次転写(一次転写)させて、中間転写体70上にカラー画像を形成する。
【0208】
そして、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面を第2帯電手段9Y、9M、9C、9Bkによって除電する。その後、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面に残存したトナーを、クリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkで除去する。そして、次の画像形成プロセスに備えて、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkにより感光体1Y、1M、1C、1Bkを負に帯電させる。
【0209】
一方、給紙カセット20から給紙手段21により転写材Pを給紙し、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て二次転写ローラー5bに搬送する。そして、二次転写ローラー5bにより、転写材P上にカラー画像を転写(二次転写)する。
【0210】
このようにしてカラー画像が転写された転写材Pを、定着手段24で定着処理した後、排紙ローラー25で挟持して装置外に排紙し、排紙トレイ26上に載置する。また、転写材Pが中間転写体70から分離された後、クリーニング手段6bにより中間転写体70上の残存トナーを除去する。
以上のようにして、転写材P上に画像を形成することができる。
【実施例0211】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0212】
[電子写真感光体の作製]
以下の方法で、図1に示す感光体の層構成と同様の層構成の感光体を作製した。
【0213】
<保護層が含有する電荷輸送性化合物>
当該実施例においては、保護層が含有する電荷輸送性化合物として、下記のT-3、T-7、T-102、及びN-1で表される構造を有する化合物を用いた。T-3、T-7、及びT-102で表される構造を有する化合物は、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物である。N-1で表される構造を有する化合物は、比較として用いた、連鎖重合性官能基を有さない電荷輸送性化合物(非反応性電荷輸送性化合物)である。
【0214】
【化11】
【0215】
これらの電荷輸送性化合物は、特開2006-143720号公報に記載の合成方法と、T-3を例とした上述の合成方法を用いて合成した。
【0216】
<感光体1の作製>
下記のようにして感光体1を作製した。
【0217】
(導電性支持体の用意)
直径60mmの円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5μmの導電性支持体を用意した。
【0218】
(中間層の形成)
ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製)1質量部、酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製)3質量部、メタノール20質量部組成の混合物を、サンドミルを用いてバッチ式で10時間の分散を行った。一夜静置後にリジメッシュ5μmフィルター(日本ポール社製)を使用して濾過し、中間層形成用塗布液を調製した。この中間層形成用塗布液を、導電性支持体上に、乾燥後の厚さが2μmとなるように浸漬コーティング法で塗布した。これにより、中間層を形成した。
【0219】
(電荷発生層の形成)
電荷発生剤であるチタニルフタロシアニン顔料(Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で、少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)20質量部、ポリビニルブチラール樹脂(#6000-C:電気化学工業社製)10質量部、酢酸t-ブチル700質量部、4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン300質量部を混合し、サンドミルを用いて10時間分散して電荷発生層形成用塗布液を調製した。この電荷発生層形成用塗布液を、中間層上に、乾燥後の厚さが0.3μmとなるように浸漬コーティング法で塗布した。これにより、電荷発生層を形成した。
【0220】
(電荷輸送層の形成)
ビスフェノールZの共重合体であるポリカーボネート樹脂Z-300(三菱ガス化学社製、溶解度パラメータδ=9.9)100質量部をバインダー樹脂として用い、下記の化学構造CTM-(1)で示される電荷輸送性化合物50質量部、酸化防止剤(Irganox1010:BASFジャパン社製)2質量部、テトラヒドロフラン540質量部、トルエン135質量部、シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製)0.3質量部を混合し、溶解して電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層の上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように浸漬コーティング法で塗布した。これにより、電荷輸送層を形成した。なお、厚さ25μmには、保護層の成分と相溶して混合層となる部分も含まれる。
【0221】
【化12】
【0222】
(保護層の形成)
下記成分を混合撹拌し、十分に溶解・分散し、保護層形成用塗布液を調製した。
【0223】
溶剤1:シクロヘキサン(δS1=8.2) 100質量部
溶剤2:テトラヒドロフラン(δS2=9.1) 100質量部
電荷輸送性化合物:化学構造T-3 50質量部
3官能以上の重合性モノマー:SR350(サートマー社製) 50質量部
光重合開始剤:Omnirad819(IGM Resins B.V.社製) 5質量部
【0224】
3官能以上の重合性モノマーとして用いたSR350(サートマー社製)は、上記化学構造M1で表されるトリメチロールプロパントリメタクリレートである。
【0225】
調製した保護層形成用塗布液を、電荷輸送層上に、乾燥後の厚さが3.5μmとなるように円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布した。次いで、メタルハライドランプを用いて紫外線を1分間照射した後、110℃で70分間乾燥を行った。これにより、保護層を形成した。なお、厚さ3.5μmには、電荷輸送層の成分と相溶して混合層となる部分も含まれる。
【0226】
<感光体2~9の作製>
上記感光体1の保護層の形成において、溶剤1、溶剤2、及び電荷輸送性化合物の種類を下記表に記載のとおりにそれぞれ変更した以外は同様にして、感光体2~9を作製した。
【0227】
<感光体10の作製>
シリカ粒子(AEROSIL RM50、日本アエロジル社製、数一次平均粒径40nm)100部、上記表面修飾剤S-15(メタクリル化合物)30部、トルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)の混合溶媒300部の混合液を、ジルコニアビーズとともにサンドミルに入れ約40℃で、回転速度1500rpmで撹拌した。混合物を取り出し、ヘンシェルミキサーに投入して回転速度1500rpmで15分間撹拌した後、120℃で3時間乾燥した。シリカ粒子の表面が表面修飾剤S-15により被覆されていることを、蛍光X線分析装置(XRF-1700、島津製作所社製)を用いて、Siのピークを検出することにより確認した。
【0228】
上記感光体1の保護層形成用塗布液のうち、テトラヒドロフランの量を20質量部に変更した塗布液を調製した。無機微粒子として、上記表面修飾したシリカ粒子20質量部を、テトラヒドロフラン80質量部中で超音波分散した分散液を上記の溶液と混合して、保護層形成用塗布液を調製した。以下感光体1の作製と同様の操作により、感光体10を作製した。
【0229】
<感光体11の作製>
上記感光体2の保護層形成用塗布液のうち、テトラヒドロフランの量を20質量部に変更した塗布液を調製した。無機微粒子として、上記表面修飾したシリカ粒子20質量部を、テトラヒドロフラン80質量部中で超音波分散した分散液を上記の溶液と混合して、保護層形成用塗布液を調製した。以下感光体2の作製と同様の操作により、感光体11を作製した。
【0230】
<感光体12の作製>
酸化スズ粒子(CIKナノテック社製、数一次平均粒径20nm、体積抵抗率1.05×10Ω・cm)100部、上記表面修飾剤S-15(メタクリル化合物)30部、トルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)の混合溶媒300部の混合液を、ジルコニアビーズとともにサンドミルに入れ約40℃で、回転速度1500rpmで撹拌した。混合物を取り出し、ヘンシェルミキサーに投入して回転速度1500rpmで15分間撹拌した後、120℃で3時間乾燥した。酸化スズ粒子の表面が表面修飾剤S-15により被覆されていることを、蛍光X線分析装置(XRF-1700、島津製作所社製)を用いて、Siのピークを検出することにより確認した。
【0231】
上記感光体1の保護層形成用塗布液のうち、テトラヒドロフランの量を20質量部に変更した塗布液を調製した。無機微粒子として、上記表面修飾した酸化スズ粒子40質量部を、テトラヒドロフラン80質量部中で超音波分散した分散液を上記の溶液と混合して、保護層形成用塗布液を調製した。以下感光体1の作製と同様の操作により、感光体12を作製した。
【0232】
<感光体13の作製>
上記感光体1の保護層形成用塗布液に、分散剤としてフッ素原子含有高分子(GF-300、東亞合成社製)0.5質量部、潤滑性有機微粒子として4フッ化エチレン樹脂粒子(PTFE、ルブロンL-2、ダイキン工業社製)10質量部を加え、超音波分散して保護層形成用塗布液を調製した。以下感光体1の作製と同様の操作により、感光体13を作製した。
【0233】
<感光体14の作製>
上記感光体1の保護層の形成において、塗布方法を浸漬コーティング法に変更した以外は同様にして、感光体14を作製した。
【0234】
<感光体15の作製>
上記感光体2の電荷輸送層の形成において、バインダー樹脂をポリアリレート樹脂(M-2040、ユニチカ社製、溶解度パラメータδ=9.2)100質量部に変更した以外は同様にして、感光体15を作製した。
【0235】
<感光体16の作製>
上記感光体11の電荷輸送層の形成において、バインダー樹脂をポリアリレート樹脂(M-2040、ユニチカ社製、溶解度パラメータδ=9.2)100質量部に変更した以外は同様にして、感光体16を作製した。
【0236】
<比較例:感光体17~21の作製>
上記感光体1の保護層の形成において、溶剤1、溶剤2、及び電荷輸送性化合物の種類を下記表に記載のとおりにそれぞれ変更した以外は同様にして、感光体17~21を作製した。
【0237】
<比較例:感光体22の作製>
上記感光体18の保護層の形成において、塗布方法をスプレーコーティング法に変更した以外は同様にして、感光体22を作製した。
【0238】
<比較例:感光体23の作製>
上記感光体1の保護層の形成において、塗布方法をスプレーコーティング法に変更した以外は同様にして、感光体23を作製した。
【0239】
<混合層の厚さの測定>
以下の方法で混合層の厚さを測定した。
【0240】
ToF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)装置であるPHI TRIFT V nanoTOF (アルバック・ファイ社製)を用いて、感光体表面をスパッタリングにより一定速度(スパッタ速度:0.02μm/sec)で削り取りながら、感光体の厚さ方向の各領域における質量分析ピーク強度を測定した。
【0241】
測定した質量分析ピーク強度に基づいて、保護層にのみ含有されるトリメチロールプロパントリメタクリレートが有するメタクリル基由来の化学構造を、厚さ測定用の化学構造として選択した。
【0242】
横軸をスパッタ時間t[sec]、縦軸をフラグメントピーク強度I[count.]の対数にして、メタクリル基由来の化学構造に起因するm/z=69のフラグメントピーク強度のグラフを、マイクロソフト・エクセル2013の「散布図(平滑線)」を用いて作成した。
【0243】
作成したグラフから、フラグメントピーク強度が大きく変化する範囲のうちd(log(I))/dtの絶対値が最大となる点を、変曲点として求めた。なお、d(log(I))/dtの値を算出する際には、log(I)の値として前後2点を含めた計5点の平均値を使用した。次いで、変曲点の前後の、傾きd(log(I))/dtの絶対値が、変曲点におけるd(log(I))/dtの絶対値の1/4以上となるスパッタ時間tの範囲を求め、この範囲を混合層をスパッタしていた時間とみなした。
【0244】
混合層をスパッタしていた時間と、スパッタ速度(0.02μm/sec)から、混合層の厚さを算出した。算出した値は下記表に示すとおりである。
【0245】
【表1】
【0246】
[電子写真感光体の評価]
市販のフルカラープロダクションプリント機「bizhub PRESS C1070」(コニカミノルタ社製)に感光体1~23をそれぞれ搭載し、耐摩耗性及び画像メモリの評価を行った。結果を下記表に示す。
【0247】
<耐摩耗性の評価>
耐久試験の前後で、保護層の厚さを測定した。耐久試験は、温度23℃、湿度50%RHの環境下において、画像比率5%の文字画像をA4横送りで、30万枚両面連続で印刷する条件で行った。保護層の厚さは、均一部分(塗布の先端部及び後端部の厚さ変動部分を除いた部分)を膜厚測定器(EDDY560C、HELMUT FISCHER GMBTE CO社製、渦電流方式)によってランダムに10ケ所測定し、その平均値を採用した。耐久試験前後の、100krot(10万回転)あたりの保護層の厚さの差を、減耗量[μm/100krot]として求めた。
【0248】
<画像メモリの評価>
上記条件の耐久試験の前後で、以下の画像メモリの評価を行った。
【0249】
温度10℃、湿度15%RHの環境下において、縦方向の帯ベタ画像(帯状の領域を塗りつぶした画像)を、転写材(A3/PODグロスコート、100g/m、王子製紙社製)上に20枚連続印刷し、続けて全面ベタ画像(全面を塗りつぶした画像)を3枚印刷した。得られた全面ベタ画像の、帯ベタ部の履歴発生、すなわち画像メモリの発生を、以下の評価基準に従って評価した。濃度計(RD-918、グレタグ・マクベス社製)を用いて、得られた全面ベタ画像のうち帯ベタ履歴部に該当する領域の反射濃度と、帯ベタ履歴部に該当しない領域の反射濃度を測定した。そして、測定された2つの反射濃度差(ΔID)を算出した。
【0250】
(評価基準)
A:全面ベタ画像のΔIDが0.005未満(合格)
B:全面ベタ画像のΔIDが0.005以上0.010未満(合格)
C:全面ベタ画像のΔIDが0.010以上0.030未満(不合格)
D:全面ベタ画像のΔIDが0.030以上(不合格)
【0251】
【表2】
【0252】
上記の評価結果から、本発明の感光体が長期使用における耐摩耗性と高画質化を両立できることを確認できた。
【符号の説明】
【0253】
101:導電性支持体
102:中間層
103:電荷発生層
104:電荷輸送層
105:混合層
106:保護層
100:画像形成装置
1、1Y、1M、1C、1Bk:感光体
2Y、2M、2C、2Bk:第1帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk:露光手段
4Y、4M、4C、4Bk:現像手段
5Y、5M、5C、5Bk:一次転写ローラー
5b:二次転写ローラー
6Y、6M、6C、6Bk、6b:クリーニング手段
7:中間転写体ユニット
8:筐体
9Y、9M、9C、9Bk:第2帯電手段
10Y、10M、10C、10Bk:画像形成ユニット
21:給紙手段
20:給紙カセット
22A、22B、22C、22D:中間ローラー
23:レジストローラー
24:定着手段
25:排紙ローラー
26:排紙トレイ
70:中間転写体
71、72、73、74:ローラー
82L、82R:支持レール
P:転写材
図1
図2
図3