(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154725
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20231013BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231013BHJP
H02M 7/493 20070101ALI20231013BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/00 W
H02M7/48 M
H02M7/493
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064245
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】岡林 晃司
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐司
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS17
5H730BB81
5H730BB88
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD41
5H730XX02
5H730XX13
5H730XX22
5H730XX33
5H730XX42
5H770DA22
5H770DA30
5H770HA02W
5H770HA03W
5H770LA03W
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】より簡単な構成で拡大故障を抑制できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】一次側を直列に接続した複数の電力変換回路と、複数の電力変換回路のぞれぞれの一次側に設けられた複数の電荷蓄積素子と、複数の電力変換回路のそれぞれの動作を制御する制御部と、を備え、複数の電力変換回路の一次側は、直列接続の両端において直流電源と接続され、複数の電力変換回路は、直流電源から供給された一次側の直流電力を二次側に対応した別の電力に変換し、変換後の電力を二次側に供給し、制御部は、複数の電力変換回路のいずれかの一次側の短絡故障を検出した場合に、短絡故障を検出した電力変換回路については、動作を停止させ、短絡故障を検出していない電力変換回路については、故障検出時の動作を行わせる電力変換装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側を直列に接続した複数の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路のぞれぞれの一次側に設けられた複数の電荷蓄積素子と、
前記複数の電力変換回路のそれぞれの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の電力変換回路の一次側は、直列に接続されるとともに、直列接続の両端において直流電源と接続され、
前記複数の電力変換回路は、前記直流電源から供給された前記一次側の直流電力を二次側に対応した別の電力に変換し、変換後の電力を前記二次側に供給し、
前記制御部は、前記複数の電力変換回路のそれぞれの動作を制御し、前記一次側から前記二次側への電力の供給を前記複数の電力変換回路に行わせている際に、前記複数の電力変換回路の前記一次側の短絡故障の検出を行い、前記複数の電力変換回路のいずれかの前記一次側の短絡故障を検出した場合に、前記複数の電力変換回路のうち、前記一次側の短絡故障を検出した電力変換回路については、動作を停止させ、前記一次側の短絡故障を検出していない電力変換回路については、故障検出時の動作を行わせ、前記故障検出時の動作の終了の後、動作を停止させる電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の電荷蓄積素子の電圧耐量は、前記複数の電力変換回路のうちのいずれか1つの前記一次側が短絡故障を起こした際にも、前記複数の電力変換回路の残りの電力変換回路に設けられた電荷蓄積素子で、前記直流電源の直流電圧を負担できるように設定される請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の電力変換回路の前記一次側の回路に流れる電流の大きさを検出し、前記一次側の回路に流れる電流の大きさを徐々に小さくする動作を前記故障検出時の動作として実行し、前記一次側の回路に流れる電流の大きさが所定値以下になったことに応じて前記故障検出時の動作を終了する請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一次側を直列に接続した複数の電力変換回路と、複数の電力変換回路のぞれぞれの一次側に設けられた複数の電荷蓄積素子と、を備えた電力変換装置がある。複数の電力変換回路の一次側は、直列に接続されるとともに、直列接続の両端において直流電源と接続される。複数の電力変換回路の二次側は、別の電源や負荷などと接続される。複数の電力変換回路は、直流電源から供給された一次側の直流電力を二次側に対応した別の電力に変換し、変換後の電力を二次側に供給する。
【0003】
このような電力変換装置では、複数の電力変換回路の一次側を直列に接続することにより、直流電源の直流電圧を複数の電力変換回路で分担することができ、複数の電力変換回路に用いられる素子の定格電圧を低下させることができる。このような電力変換装置は、例えば、鉄道車両のき電システムなど、比較的高い直流電圧を扱う電力システムに用いられている。
【0004】
こうした電力変換装置において、複数の電力変換回路のいずれかの一次側が短絡故障を起こした際に、複数の電力変換回路の動作を停止させることが行われている。しかしながら、複数の電力変換回路の一次側から二次側に電力を供給している状態で、複数の電力変換回路の動作を急激に停止させると、複数の電荷蓄積素子のうちの短絡故障を起こしていない電力変換回路に設けられた健全な電荷蓄積素子の電圧が上昇し、健全な電荷蓄積素子の拡大故障を招いてしまう可能性がある。
【0005】
対策として、複数の電荷蓄積素子の容量を増加させたり、複数の電荷蓄積素子の過電圧を抑制する過電圧保護回路を設けたりすることが提案されている。しかしながら、これらの対策では、装置の大型化や装置コストの増加などを招いてしまうことが懸念される。このため、電力変換装置では、より簡単な構成で拡大故障を抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、より簡単な構成で拡大故障を抑制できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によれば、一次側を直列に接続した複数の電力変換回路と、前記複数の電力変換回路のぞれぞれの一次側に設けられた複数の電荷蓄積素子と、前記複数の電力変換回路のそれぞれの動作を制御する制御部と、を備え、前記複数の電力変換回路の一次側は、直列に接続されるとともに、直列接続の両端において直流電源と接続され、前記複数の電力変換回路は、前記直流電源から供給された前記一次側の直流電力を二次側に対応した別の電力に変換し、変換後の電力を前記二次側に供給し、前記制御部は、前記複数の電力変換回路のそれぞれの動作を制御し、前記一次側から前記二次側への電力の供給を前記複数の電力変換回路に行わせている際に、前記複数の電力変換回路の前記一次側の短絡故障の検出を行い、前記複数の電力変換回路のいずれかの前記一次側の短絡故障を検出した場合に、前記複数の電力変換回路のうち、前記一次側の短絡故障を検出した電力変換回路については、動作を停止させ、前記一次側の短絡故障を検出していない電力変換回路については、故障検出時の動作を行わせ、前記故障検出時の動作の終了の後、動作を停止させる電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
より簡単な構成で拡大故障を抑制できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
【0011】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、複数の電力変換回路11、12と、複数の電荷蓄積素子21、22と、制御部30と、を備える。
【0013】
複数の電力変換回路11、12は、一次側を直列に接続する。複数の電荷蓄積素子21、22は、複数の電力変換回路11、12のぞれぞれの一次側に設けられる。この例において、電力変換装置10は、2つの電力変換回路11、12と、2つの電力変換回路11、12のそれぞれに対応する2つの電荷蓄積素子21、22と、を備えている。但し、電力変換装置10に設けられる電力変換回路の数及び電荷蓄積素子の数は、2つに限ることなく、3つ以上でもよい。電力変換回路の数及び電荷蓄積素子の数は、任意の数でよい。
【0014】
電力変換回路11、12の一次側は、直列に接続されるとともに、直列接続の両端において直流電源2と接続される。電力変換回路11は、一対の一次側の端子11a、11bを有する。同様に、電力変換回路12は、一対の一次側の端子12a、12bを有する。電力変換回路11の一方の端子11aは、直流電源2の正極と接続される。電力変換回路11の他方の端子11bは、電力変換回路12の一方の端子12aと接続される。電力変換回路12の他方の端子12bは、直流電源2の負極と接続される。これにより、2つの電力変換回路11、12の一次側が、直列に接続されるとともに、直列接続の両端において直流電源2と接続される。
【0015】
このように、電力変換回路11、12の一次側を、直列に接続するとともに、直列接続の両端において直流電源2と接続することにより、直流電源2の直流電圧を電力変換回路11、12で分担することができる。この例では、電力変換回路11、12のそれぞれの一次側に印加される直流電圧を直流電源2の直流電圧の二分の一とすることができる。これにより、電力変換回路11、12に用いられる素子の定格電圧を低下させることができる。
【0016】
電荷蓄積素子21は、電力変換回路11の一対の一次側の端子11a、11bの間に設けられる。電荷蓄積素子22は、電力変換回路12の一対の一次側の端子12a、12bの間に設けられる。これにより、電荷蓄積素子21、22は、例えば、電力変換回路11、12の一次側に印加される直流電圧を安定化させる。電荷蓄積素子21、22は、例えば、電力変換回路11、12の一次側に印加される直流電圧に重畳するノイズの抑制などを行う。電荷蓄積素子21、22は、例えば、コンデンサである。
【0017】
電力変換回路11、12の二次側は、別の電源や負荷などと接続される。電力変換回路11、12は、直流電源2から供給された一次側の直流電力を二次側に対応した別の電力に変換し、変換後の電力を二次側に供給する。電力変換回路11、12は、例えば、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、電力の変換を行う。但し、電力変換回路11、12の構成は、一次側の直流電力を二次側に対応した別の電力に適切に変換することが可能な任意の構成でよい。
【0018】
電力変換回路11、12が、複数のスイッチング素子を有する場合には、電力変換回路11、12の一次側を直列に接続することで、複数のスイッチング素子の定格電圧を低下させることができる。このように、定格電圧の低いスイッチング素子を用いることで、スイッチング素子のスイッチング時に発生するスイッチング損失を低減させることができる。これにより、例えば、スイッチング素子の発熱を抑制し、スイッチング素子の放熱対策に起因する装置の大型化を抑制することができる。
【0019】
電力変換装置10は、例えば、鉄道車両のき電システムに用いられる。この場合、直流電源2は、例えば、直流の架線である。電力変換回路11、12の二次側は、例えば、蓄電池などを用いた蓄電装置に接続される。また、この場合、電力変換回路11、12の二次側は、互いに並列に接続される。換言すれば、電力変換回路11、12の二次側は、それぞれ蓄電装置の両極に接続される。
【0020】
電力変換回路11、12は、直流電源2(架線)から供給された一次側の直流電力を蓄電装置に対応した別の直流電力に変換し、変換後の直流電力を蓄電装置に供給する。架線の直流電圧は、例えば、1500Vである。蓄電装置の最大電圧は、例えば、750Vである。このように、電力変換装置10は、架線の直流電力を基に蓄電装置に直流電力を供給し、蓄電装置を充電することにより、例えば、余剰回生電力などによる架線電圧の上昇を抑制する。また、この場合、電力変換回路11、12は、蓄電装置の二次側の直流電力を架線に対応した別の直流電力に変換し、変換後の直流電力を架線に供給する機能をさらに有する。これにより、例えば、鉄道車両の運行などにともなう架線電圧の低下を抑制することができる。
【0021】
電力変換回路11、12が直流電力を二次側に出力する場合、電力変換回路11は、一対の二次側の端子11c、11dを有する。同様に、電力変換回路12は、一対の二次側の端子12c、12dを有する。電力変換回路11、12のそれぞれの一方の端子11c、12cは、蓄電装置の正極と接続される。電力変換回路11、12のそれぞれの他方の端子11d、12dは、蓄電装置の負極と接続される。これにより、電力変換回路11、12の二次側が、互いに並列に接続されるとともに、蓄電装置と接続される。
【0022】
また、電力変換回路11、12が直流電力を二次側に出力する場合、電力変換装置10は、例えば、電荷蓄積素子23、24をさらに有する。電荷蓄積素子23、24は、電力変換回路11、12のぞれぞれの二次側に設けられる。電荷蓄積素子23は、電力変換回路11の一対の二次側の端子11c、11dの間に設けられる。電荷蓄積素子24は、電力変換回路12の一対の二次側の端子12c、12dの間に設けられる。これにより、電荷蓄積素子23、24は、例えば、電力変換回路11、12の二次側に供給される直流電圧を安定化させる。電荷蓄積素子23、24は、例えば、電力変換回路11、12の二次側に供給される直流電圧に重畳するノイズの抑制などを行う。
【0023】
但し、電力変換装置10は、鉄道車両のき電システムに用いられるものに限定されるものではない。また、二次側に供給する電力は、直流電力に限ることなく、交流電力などでもよい。二次側に供給する電力は、二次側に対応した任意の電力でよい。電力変換回路11、12は、必ずしも二次側から一次側に電力を供給する機能を有しなくてもよい。電力変換回路11、12の構成は、少なくとも直流電源2から供給された一次側の直流電力を二次側に対応した別の電力に変換し、変換後の電力を二次側に供給可能な任意の構成でよい。
【0024】
制御部30は、複数の電力変換回路11、12のそれぞれの動作を制御する。制御部30は、複数の電力変換回路11、12のそれぞれの動作を制御し、一次側から二次側への電力の供給を複数の電力変換回路11、12に行わせている際に、複数の電力変換回路11、12の一次側の短絡故障の検出を行う。制御部30は、例えば、電荷蓄積素子21、22の短絡故障を電力変換回路11、12の一次側の短絡故障として検出する。但し、電力変換回路11、12の一次側の短絡故障は、電荷蓄積素子21、22の短絡故障に限ることなく、例えば、電力変換回路11、12に設けられたスイッチング素子などの内部の回路に起因する短絡故障でもよい。電力変換回路11、12の一次側の短絡故障は、例えば、一次側の端子11a、11b間、端子12a、12b間に混入した導電性の異物に起因する短絡故障などでもよい。
【0025】
制御部30は、例えば、図示を省略した電圧検出器によって一次側の端子11a、11b間の電圧、及び端子12a、12b間の電圧を検出することにより、電力変換回路11、12の一次側の短絡故障を検出する。制御部30は、例えば、端子11a、11b間の電圧が所定値以下になった際に、電力変換回路11の一次側が短絡故障を起こしていると検出し、端子12a、12b間の電圧が所定値以下になった際に、電力変換回路12の一次側が短絡故障を起こしていると検出する。但し、制御部30による電力変換回路11、12の一次側の短絡故障の検出方法は、上記に限るものではない。制御部30は、例えば、上位のコントローラなどから電力変換回路11、12の一次側の短絡故障の検出信号を受信することにより、電力変換回路11、12の一次側の短絡故障を検出してもよい。電力変換回路11、12の一次側の短絡故障の検出方法は、制御部30が電力変換回路11、12の一次側の短絡故障を適切に検出可能な任意の方法でよい。
【0026】
制御部30は、一次側から二次側への電力の供給を複数の電力変換回路11、12に行わせている際に、複数の電力変換回路11、12のいずれかの一次側の短絡故障を検出した場合、複数の電力変換回路11、12のうち、一次側の短絡故障を検出した電力変換回路については、短絡故障の検出に応じて動作を停止させる。制御部30は、例えば、一次側の短絡故障を検出した電力変換回路については、短絡故障の検出に応じて即座に動作を停止させる。
【0027】
制御部30は、例えば、一次側の短絡故障を検出した電力変換回路の複数のスイッチング素子をオフ状態とすることにより、当該電力変換回路の動作を停止させる。制御部30は、いわゆるゲートブロックを行うことにより、当該電力変換回路の動作を停止させる。但し、電力変換回路の動作を停止させる方法は、上記に限ることなく、電力変換回路の動作を適切に停止させることができる任意の方法でよい。
【0028】
一方、制御部30は、一次側から二次側への電力の供給を複数の電力変換回路11、12に行わせている際に、複数の電力変換回路11、12のいずれかの一次側の短絡故障を検出した場合、複数の電力変換回路11、12のうち、一次側の短絡故障を検出していない電力変換回路については、故障検出時の動作を行わせ、故障検出時の動作の終了の後、動作を停止させる。
【0029】
例えば、一次側から二次側への電力の供給を複数の電力変換回路11、12に行わせている際に、電力変換回路11の一次側(例えば電荷蓄積素子21)が短絡故障を起こしたとする。この場合、制御部30は、電力変換回路11の一次側の短絡故障の検出に応じて電力変換回路11の動作を停止させるとともに、電力変換回路12に故障検出時の動作を行わせる。そして、制御部30は、故障検出時の動作の終了の後、電力変換回路12の動作を停止させる。
【0030】
一次側から二次側への電力の供給を電力変換回路11、12に行わせている状態で、電力変換回路11の一次側が短絡故障を起こした際に、電力変換回路11、12の動作を急激に停止させてしまうと、電荷蓄積素子22の電圧が上昇し、健全な電荷蓄積素子22も拡大故障を起こしてしまう可能性がある。
【0031】
一次側から二次側への電力の供給を電力変換回路11、12に行わせている状態では、電荷蓄積素子21、22が、直流電源2の直流電圧を分担する。この状態で、電力変換回路11の一次側が短絡故障を起こすと、電荷蓄積素子21の分の直流電圧も電荷蓄積素子22に印加されてしまう。すなわち、この例では、電力変換回路11の一次側が短絡故障を起こすと、電荷蓄積素子22に印加される直流電圧が2倍(直流電源2の直流電圧分)になってしまう。
【0032】
そこで、複数の電力変換回路11、12のうちのいずれか1つの一次側が短絡故障を起こした際にも、複数の電力変換回路11、12の残りの電力変換回路に設けられた電荷蓄積素子で、直流電源2の直流電圧を負担できるように、複数の電荷蓄積素子の電圧耐量を設定することが考えられる。この例では、直流電源2の直流電圧分以上に電荷蓄積素子21、22の電圧耐量を設定する。例えば、複数の電荷蓄積素子の数(直列接続された電力変換回路の数)が4つである場合には、1つの電力変換回路の一次側が短絡故障を起こした際にも、残りの3つの電力変換回路に設けられた電荷蓄積素子で直流電源2の直流電圧を負担できるように、複数の電荷蓄積素子の電圧耐量を直流電源2の直流電圧の三分の一以上に設定する。すなわち、複数の電荷蓄積素子のそれぞれの電圧耐量をVc、直流電源2の直流電圧をVe、複数の電荷蓄積素子の数をnとする時、複数の電荷蓄積素子のそれぞれの電圧耐量Vcは、次の式を満たすように設定する。
Vc≧Ve/(n-1)
【0033】
しかしながら、一次側から二次側への電力の供給を電力変換回路11、12に行わせている状態で、複数の電力変換回路11、12のいずれかの一次側が短絡故障を起こした際に、電力変換回路11、12の動作を急激に停止させた場合には、上記のように複数の電荷蓄積素子のそれぞれの電圧耐量を設定したとしても、残りの電荷蓄積素子の電圧が、設定した電圧耐量よりも大きくなり、残りの健全な電荷蓄積素子も拡大故障を起こしてしまうことがある。
【0034】
本願発明者は、鋭意の検討の結果、複数の電荷蓄積素子の電圧上昇が、電力変換回路11、12の一次側の回路上のインダクタンス成分に貯まったエネルギーに起因していることを見出した。電力変換回路11、12の一次側の回路上のインダクタンス成分にエネルギーが貯まった状態で電力変換回路11、12の動作を急激に停止させると、インダクタンス成分に貯まったエネルギーが残りの健全な電荷蓄積素子に流れ込み、残りの健全な電荷蓄積素子の直流電圧が、上記のように設定した電圧耐量よりも上昇してしまう可能性がある。この例では、電荷蓄積素子21が短絡故障を起こした際に、電荷蓄積素子22の直流電圧が、直流電源2の直流電圧よりも高くなってしまう可能性がある。なお、インダクタンス成分とは、例えば、電力変換回路11、12の一次側と直流電源2とを接続する配線経路上に存在する寄生のインダクタンス成分や、電力変換回路11、12の一次側と直流電源2との間に設けられた直流リアクトルのインダクタンス成分などである。
【0035】
このため、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御部30は、一次側から二次側への電力の供給を複数の電力変換回路11、12に行わせている際に、複数の電力変換回路11、12のいずれかの一次側の短絡故障を検出した場合、複数の電力変換回路11、12のうち、一次側の短絡故障を検出していない電力変換回路については、故障検出時の動作を行わせ、故障検出時の動作の終了の後、動作を停止させる。
【0036】
すなわち、制御部30は、複数の電力変換回路11、12のいずれかの一次側の短絡故障が発生した際に、健全な電荷蓄積素子及び電力変換回路については動作を継続させることにより、一次側の回路上のインダクタンス成分に貯まったエネルギーの逃げ場を用意する。そして、一次側の回路上のインダクタンス成分に貯まったエネルギーが十分に下がった状態で、全ての電力変換回路の動作を停止させる。
【0037】
これにより、一次側の回路上のインダクタンス成分に貯まったエネルギーを二次側に流し、健全な電荷蓄積素子の電圧の上昇を抑制することができる。従って、健全な電荷蓄積素子の拡大故障を抑制することができる。電力変換装置10では、複数の電荷蓄積素子21、22の容量を増加させたり、複数の電荷蓄積素子21、22の過電圧を抑制する過電圧保護回路を設けたりする必要がなく、より簡単な構成で健全な電荷蓄積素子の拡大故障を抑制することができる。
【0038】
電力変換装置10において、複数の電荷蓄積素子21、22の電圧耐量は、複数の電力変換回路11、12のうちのいずれか1つの一次側が短絡故障を起こした際にも、複数の電力変換回路11、12の残りの電力変換回路に設けられた電荷蓄積素子で、直流電源2の直流電圧を負担できるように設定される。これにより、一次側が短絡故障した電力変換回路に設けられた電荷蓄積素子の負担分の電圧上昇による残りの電荷蓄積素子の拡大故障を適切に抑制することができる。
【0039】
なお、ここでいう電圧耐量とは、より詳しくは、複数の電力変換回路11、12のいずれかの一次側に短絡故障が発生したタイミングから故障検出時の動作を行って全ての電力変換回路11、12の動作を停止させるまでの比較的短い時間において、故障していない健全な電荷蓄積素子で直流電源2の直流電圧を負担することができる複数の電荷蓄積素子の電圧特性である。電圧耐量は、例えば、複数の電荷蓄積素子の定格電圧としてもよい。但し、複数の電荷蓄積素子は、必ずしも短絡故障した電荷蓄積素子の電圧上昇分を定常的に負担可能である必要はなく、少なくとも上記の比較的短い時間において、電圧上昇分を負担可能であればよい。
【0040】
制御部30は、例えば、図示を省略した電流検出器などによって電力変換回路11、12の一次側の回路に流れる電流の大きさを検出し、一次側の回路に流れる電流の大きさを徐々に小さくする動作を故障検出時の動作として実行する。これにより、一次側の回路上のインダクタンス成分に貯まったエネルギーを徐々に低下させ、インダクタンス成分に貯まったエネルギーに起因する電荷蓄積素子の電圧上昇を適切に抑制することができる。そして、制御部30は、例えば、一次側の回路に流れる電流の大きさが所定値以下になったことに応じて故障検出時の動作を終了し、健全な電力変換回路の動作を停止させる。制御部30は、例えば、一次側の回路に流れる電流の大きさが実質的にゼロになったことに応じて故障検出時の動作を終了する。
【0041】
但し、故障検出時の動作は、上記に限定されるものではない。制御部30は、例えば、図示を省略した電圧検出器などによって電荷蓄積素子の電圧の大きさを検出し、電荷蓄積素子の電圧の大きさを徐々に小さくする動作を故障検出時の動作として実行してもよい。この場合、制御部30は、例えば、電荷蓄積素子の電圧の大きさが所定値以下になったことに応じて故障検出時の動作を終了し、健全な電力変換回路の動作を停止させればよい。
【0042】
例えば、一次側の回路上のインダクタンス成分に貯まるエネルギーの大きさが予測できている場合などには、必ずしも一次側の回路に流れる電流の大きさや電荷蓄積素子の電圧の大きさなどを検出しなくてもよい。例えば、電流や電圧の検出などを行うことなく、予測されたエネルギーの大きさを徐々に減少させる所定の動作を故障検出時の動作として実行してもよい。故障検出時の動作は、上記に限ることなく、一次側の回路上のインダクタンス成分に貯まったエネルギーを二次側に流し、健全な電荷蓄積素子の電圧の上昇を適切に抑制することができる任意の動作でよい。
【0043】
また、上記実施形態では、電力変換回路11、12の二次側を並列に接続している。電力変換回路11、12の二次側の構成は、並列接続に限ることなく、一次側の回路上のインダクタンス成分に貯まったエネルギーを二次側に流すことが可能な任意の構成でよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
2…直流電源、 10…電力変換装置、 11、12…電力変換回路、 21~24…電荷蓄積素子、 30…制御部