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  • 特開-ワッシャとこれを用いた締結方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154740
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ワッシャとこれを用いた締結方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20231013BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F16B43/00 Z
F16B5/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064261
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若原 聡仁
【テーマコード(参考)】
3J001
3J034
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA06
3J001JA10
3J034AA20
3J034BA12
3J034BA13
3J034CA03
3J034DA06
3J034EA01
(57)【要約】
【課題】フランジボルトにより被締結物を締結する際に、供回りが生じても異物を発生させることがないワッシャとこれを用いた締結方法を提供する。
【解決手段】フランジボルト30と被締結物11との間に配置されるワッシャ20であって、フランジボルト30の軸部33を貫通させる中心孔24を備えた円形の底面部21の外周に、フランジボルトのフランジ部32を包むように内側に向けて曲面状に曲げ加工した折曲げ部22を形成したものである。締結時にフランジボルト30とワッシャ20との間で発生する異物14をワッシャ20の内部に留めることができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジボルトと被締結物との間に配置されるワッシャであって、
フランジボルトの軸部を貫通させる中心孔を備えた円形の底面部の外周に、フランジボルトのフランジ部を包むように内側に向けて曲面状に曲げ加工した折曲げ部を形成したことを特徴とするワッシャ。
【請求項2】
前記折曲げ部の曲げ角度を、120度以上としたことを特徴とする請求項1に記載のワッシャ。
【請求項3】
フランジボルトと被締結物との間に、フランジボルトの軸部を貫通させる中心孔を備えた円形の底面部の外周に、フランジボルトのフランジ部を包むように内側に向けて曲面状に曲げ加工した折曲げ部を形成したワッシャを配置し、締結時にフランジボルトとワッシャとの間で発生する異物をワッシャの内部に留めることを特徴とするフランジボルトによる締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワッシャとこれを用いた締結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、ベース部材10に被締結物11をフランジボルト12とナット13を用いて締結する場合に、回転するフランジボルト12が被締結物11の表面を削り、微細な異物14を発生させることがある。例えば被締結物11が銅製のバスバであり、その下方に電子基板15があるような場合には、発生した導電性の異物14が電子基板15の表面に落下し、短絡などの不具合を引き起こす可能性がある。
【0003】
そこで図2に示すように、平ワッシャ16を被締結物11とフランジボルト12との間に介在させることも行われている。この場合にはフランジボルト12が被締結物11の表面を直接削ることはない。しかし平ワッシャ16がフランジボルト12と供回りした場合には、平ワッシャ16が被締結物11の表面を削り、微細な異物14を発生させることがある。
【0004】
平ワッシャ16は板材を打ち抜いて製造されるものであり、ダイとパンチとによって剪断される外周縁部に微細なダレやエッジが発生し易い。その場合には特に、平ワッシャ16と接触する被締結物11の表面が疵付き、異物が発生し易くなる。
【0005】
なおワッシャの形状としては、特許文献1や特許文献2に示されるように、周縁部に起立部を備えたものも提案されている。図3図4にそれらの形状を示した。このような構造のワッシャ17を用いれば、フランジボルト12とワッシャ17との間で異物が発生しても、起立部18により落下が防止されることとなる。しかしワッシャ17の座面のコーナーがエッジ19となっているため、図2に示した場合と同様に、エッジ19が被締結物11の表面を削り、微細な異物14の発生を完全に防止できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1-89453号公報
【特許文献2】特開2014-114880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、フランジボルトにより被締結物を締結する際に、供回りが生じても異物を発生させることがないワッシャとこれを用いた締結方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明のワッシャは、フランジボルトと被締結物との間に配置されるワッシャであって、フランジボルトの軸部を貫通させる中心孔を備えた円形の底面部の外周に、フランジボルトのフランジ部を包むように内側に向けて曲面状に曲げ加工した折曲げ部を形成したことを特徴とするものである。なお、前記折曲げ部の曲げ角度を、120度以上とすることが好ましい。
【0009】
また、本発明のフランジボルトによる締結方法は、フランジボルトと被締結物との間に、フランジボルトの軸部を貫通させる中心孔を備えた円形の底面部の外周に、フランジボルトのフランジ部を包むように内側に向けて曲面状に曲げ加工した折曲げ部を形成したワッシャを配置し、締結時にフランジボルトとワッシャとの間で発生する異物をワッシャの内部に留めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のワッシャは、円形の底面部の外周に内側に向けて曲面状に曲げ加工した折曲げ部を備えるものであるから、フランジボルトとワッシャとの間で異物が発生しても折曲げ部により外部への飛散が防止され、異物をワッシャの内部に留めることができる。しかもこの折曲げ部は内側に向けて曲面状に曲げ加工されたものであり、ワッシャの底面部と折曲げ部との間に尖った部分が形成されない。このため、フランジボルトを回転させる際にワッシャが供回りした場合にも、ワッシャの底面部が被締結物の表面を削ることがなく、異物を発生させるおそれがない。よって、異物の落下によるトラブルを完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術の問題点を示す断面図である。
図2】他の従来技術の問題点を示す断面図である。
図3】特許文献1に示された締結構造を示す断面図である。
図4】特許文献2に示された締結構造を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態を示す断面図である。
図6】本発明のワッシャを用いた締結構造を示す断面図である。
図7】曲げ角度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図5は本発明の実施形態を示す断面図であり、図6は締結状態を示す断面図である。図5において、20は本発明の実施形態のワッシャ、30はワッシャ20と組み合わせて使用されるフランジボルトである。フランジボルト30は従来と同様のものであり、頭部31とフランジ部32と軸部33を備え、軸部33にはおねじ34が形成されている。図5に示された頭部31は六角形であるがこれに限定されるものではなく、円形の頭部31の上面にドライバを係合させる十字穴や、トルクレンチを係合させる六角穴等を形成したものであってもよい。
【0013】
ワッシャ20は薄板の金属板をダイとパンチとによって打ち抜いて製造されるものであり、円形の底面部21と、その外周に形成された折曲げ部22を備える。ワッシャ20の底面部21には、フランジボルト30の軸部33を貫通させる中心孔24が形成されている。打ち抜きを行う際にダイとパンチとによって剪断される外周縁部に微細なダレやエッジが発生することは従来と同様であるが、その部分は折曲げ部22の先端部23となり、フランジボルト30とも、図6に示す被締結物12とも接触しない。
【0014】
この折曲げ部22は、円形の底面部21の外周部をフランジボルト30のフランジ部32を包むように内側に向けて曲面状に曲げ加工したものである。その曲げ角度は、120度以上とすることが好ましい。図5の実施形態では折曲げ部22の曲げ角度は約180度となっている。ここでいう曲げ角度は、図7に示すように、折曲げ部22の先端部23の接線が、底面部21に対してなす外側角度θを意味するものとする。
【0015】
折曲げ部22の曲げ角度を図3図4のように90度とするよりも内向きに更に曲げることにより、ワッシャ20とフランジボルト30との間で発生した異物14をワッシャ20の内部に留める効果を高めることができる。例えば締結物10と被締結物11が垂直面にあり、フランジボルト30を水平方向にねじ込むような場合、図3に示した従来構造では異物14を落下させるおそれがあるが、図5図6に示した実施形態の構造とすれば、異物14を落下させるおそれをなくすることができる。曲げ加工のコストを考慮すると、好ましい曲げ角度は120~200度の範囲である。
【0016】
図5図6に示すように、折曲げ部22はフランジボルト30のフランジ部32を包むように内側に向けて曲面状に曲げ加工されている。このように折曲げ部22を形成することによって異物14をワッシャ20の内部に留める効果を高めることができる。この折曲げ部22の高さを大きくするとフランジボルト30の頭部31をレンチやスパナによって回転させる際に折曲げ部22が障害となるので、折曲げ部22の高さはフランジ部32の高さを僅かに超える程度とすることが好ましい。ただしフランジボルト30が、その頭部31の上面にドライバを係合させる十字穴や、トルクレンチを係合させる六角穴等を形成したものである場合にはこの限りではない。
【0017】
また図3図4に示した従来品とは異なり、本発明のワッシャ20の底面部21は曲面状に折り曲げられており、ワッシャ20の底面部21と被締結物11との接触部には角部が存在しない。このためワッシャ20が供回りした場合にも、被締結物11の表面がワッシャ20で削られて異物14が発生することがない。このため本発明のワッシャ20を用いれば、下側に電子基板15等がある場合にも、短絡その他のトラブルを発生させることがない。
【0018】
以上に説明したように、本発明のワッシャは供回りが生じた場合にも異物を発生させるおそれがなく、下方に電子基板がある位置で銅製のバスバを締結するような場合にも安心して使用することができる利点がある
【符号の説明】
【0019】
10 ベース部材
11 被締結物
12 フランジボルト
13 ナット
14 異物
15 電子基板
16 平ワッシャ
17 起立部のあるワッシャ
18 起立部
19 エッジ
20 本発明のワッシャ
21 底面部
22 折曲げ部
23 先端部
24 中心孔
30 フランジボルト
31 頭部
32 フランジ部
33 軸部
34 おねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7