(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154749
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】平面アンテナ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20231013BHJP
H01Q 5/40 20150101ALI20231013BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q5/40
H01P11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064291
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】板垣 賢二
(72)【発明者】
【氏名】▲渋▼谷 裕三
【テーマコード(参考)】
5J045
【Fターム(参考)】
5J045AA03
5J045AA27
5J045BA03
5J045CA04
5J045DA10
5J045EA07
5J045EA08
5J045GA05
(57)【要約】
【課題】本開示は、複数の放射導体を用いて、共振周波数が大きく離れたマルチバンドアンテナを提供可能にすることを目的とする。
【解決手段】本開示は、絶縁基板31の一方の面に、第1の給電部12から給電され、第1の周波数で基本モードが共振する矩形導体11と、第1の給電部とは異なる第2の給電部22から給電され、前記矩形導体11の基本モードよりも低い第2の周波数で基本モードが共振する環状導体21と、を備える平面アンテナである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の一方の面に、
第1の給電部から給電され、第1の周波数で基本モードが共振する矩形導体と、
第1の給電部とは異なる第2の給電部から給電され、前記矩形導体の基本モードよりも低い第2の周波数で基本モードが共振する環状導体と、
を備える平面アンテナ。
【請求項2】
前記第1の周波数での基本モードがTM10モードであり、
前記第2の周波数での基本モードがTM11モードである、
請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
複数の周波数帯において共振周波数を有する平面アンテナの製造方法であって、
基本モードの共振周波数が高周波側の周波数帯域に一致する矩形導体、及び基本モードの共振周波数が低周波側の周波数帯域に一致する環状導体を、絶縁基板の一方の面に搭載し、
前記矩形導体及び前記環状導体のそれぞれに給電部を設ける、
平面アンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平面アンテナ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
帯域が大きく離れたマルチバンドアンテナが求められている。従来使用されている矩形又は円形の放射導体を用いると、基本モードの周波数から離れた第2の周波数に複数の高次モードが発生する(例えば、特許文献1及び2参照。)。このため、複数の高次モードが第2の周波数用のアンテナに干渉してしまい、第2の周波数における放射パターン及び反射特性の劣化を引き起こしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4227089号公報
【特許文献2】特開平01-243704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の放射導体を用いて、共振周波数が大きく離れたマルチバンドアンテナを提供可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の平面アンテナは、絶縁基板の一方の面に、
第1の給電部から給電され、第1の周波数で基本モードが共振する矩形導体と、
第1の給電部とは異なる第2の給電部から給電され、前記矩形導体の基本モードよりも低い第2の周波数で基本モードが共振する環状導体と、
を備える。
【0006】
本開示の平面アンテナの製造方法は、
複数の周波数帯において共振周波数を有する平面アンテナの製造方法であって、
基本モードの共振周波数が高周波側の周波数帯域に一致する矩形導体、及び基本モードの共振周波数が低周波側の周波数帯域に一致する環状導体を、絶縁基板の一方の面に搭載し、
前記矩形導体及び前記環状導体のそれぞれに給電部を設ける。
【0007】
本開示では、前記第1の周波数での基本モードがTM10モードであり、前記第2の周波数での基本モードがTM11モードであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の放射導体を用いて、共振周波数が大きく離れたマルチバンドアンテナを提供可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図9】矩形導体の電流方向と電界分布の一例であり、(a)は基本モードTM
10を示し、(b)は第2の高次モードTM
02を示し、(c)は第3の高次モードTM
21を示し、(d)は第4の高次モードTM
30を示し、(e)は第5の高次モードTM
23を示す。
【
図11】環状導体の電流方向と電界分布の一例であり、(a)は基本モードTM
11を示し、(b)は第2の高次モードTM
21を示し、(c)は第3の高次モードTM
31を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0011】
図1及び
図2に、本開示の平面アンテナの構成例を示す。本実施形態の平面アンテナは、複数の周波数帯において共振周波数を有するマルチバンドアンテナであり、絶縁基板31の上面に放射導体として機能する矩形導体11及び環状導体21を備える。環状導体21の内縁及び外縁は、矩形導体11の外形と相似形を有する。
【0012】
図3は
図1のA-A’断面構成例を示す。絶縁基板31の上面には、給電部12及び22が配置され、絶縁基板31の裏面には、グランド導体33が配置されている。給電部12は、絶縁基板31の裏面に接続されている同軸コネクタ(不図示)とビア導体14で接続されている。給電部22は、絶縁基板31の裏面に接続されている同軸コネクタ(不図示)とビア導体24で接続されている。これにより、本開示の平面アンテナは、単層構造の平面アンテナにおいて、矩形導体11及び環状導体21への電力供給を独立して制御可能になっている。
【0013】
図4及び
図5に、本開示の平面アンテナの構成例を示す。
図6は
図4のB-B’断面構成例を示す。
図4及び
図5の例では、多層構造の絶縁基板31及び32となっており、絶縁基板31及び32の間に給電部12及び22が配置されている。給電部12は、絶縁基板32の裏面に接続されている同軸コネクタ(不図示)とビア導体14で接続されている。給電部22は、絶縁基板32の裏面に接続されている同軸コネクタ(不図示)とビア導体24で接続されている。これにより、本開示の平面アンテナは、多層構造の平面アンテナにおいて、矩形導体11及び環状導体21への電力供給を独立して制御可能になっている。
【0014】
図1~
図6に示すように、本開示は単層の両面基板及び多層基板のいずれであってもよく、給電部12及び22についても矩形導体11及び環状導体21に独立して電力を供給可能な任意の形態を採用しうる。
【0015】
図7及び
図8に、本開示の平面アンテナの構成例を示す。本実施形態の平面アンテナは、
図1及び
図4の構成において、矩形導体11及び環状導体21の外縁に、切り欠き13及び23を備える。図では、切り欠き13及び23が、対角の位置にそれぞれ配置されている例を示す。これにより、円偏波の放射特性を得ることができる。なお、矩形導体11及び環状導体21が切り欠き13及び23を備えない
図1及び
図4の構成の場合、直線偏波の放射特性を得ることができる。以下、
図8の構成について説明する。
【0016】
図9及び
図10に、それぞれ、矩形導体11の電界分布及び共振周波数の一例を示す。
図9に示す矢印は電流の流れる方向を示す。
図10に、矩形導体の共振周波数の一例を示す。
図9(a)に示すように、矩形導体11では、基本波としてTM
10モードが励振され、電流分布はY方向に対して一様な分布となっている。矩形導体11では、
図9(b)、
図9(c)、
図9(e)及び
図10に示すように、高次の波としてはTM
mn(m=0,1,2,…、n=0,1,2,…)の組み合わせ分だけ存在し、高帯域側になるにつれて多数発生する。このため、帯域が大きく離れている周波数f12で共振するアンテナとの共用はできない。
【0017】
図11及び
図12に、それぞれ、環状導体21の電界分布及び共振周波数の一例を示す。
図11に示す矢印は電流の流れる方向を示す。
図12に、環状導体21の共振周波数の一例を示す。
図11(b)、
図11(c)及び
図12に示すように、リング形の環状導体21では、素子形状に沿った電流が流れ、基本波としてはTM
11モードが励振される。高次モードの波としてはTM
m1(m=0,2,3,4,…)の組み合わせのみと考えられ、これは矩形導体11と比較して少ない。また周波数f21の高周波側に第2の高次モードTM
21及び第3の高次モードTM
31が現れるが、第3の高次モードTM
31の高周波側の周波数f22に高次モードの現れない周波数帯域が存在する。
【0018】
そこで、本開示の平面アンテナの製造方法は、矩形導体11の基本モードの周波数f11を周波数f22に一致させる。より具体的には、本開示のマルチバンドアンテナの製造方法は、基本モードの共振周波数f11が高周波側の周波数帯域に一致する矩形導体11、及び基本モードの共振周波数f21が低周波側の周波数帯域に一致する環状導体21を、絶縁基板31の一方の面に搭載し、前記矩形導体11及び前記環状導体21のそれぞれに給電部12及び22を設ける。
【0019】
これにより、本開示は、矩形導体11及び環状導体21が共振する基本モードの周波数は異なり、環状導体21の基本モードの周波数f11の方が矩形導体11の基本モードの周波数f21よりも低く、矩形導体11の基本モードの周波数f11が周波数f22に一致している平面アンテナを提供することができる。したがって、本開示は、共振周波数の大きく離れた周波数f21と周波数f22の複合のアンテナを実現し、共振周波数の大きく離れたマルチバンドアンテナを提供することができる。
【0020】
なお、本開示は、矩形導体11が高周波側の周波数帯域で発振し、環状導体21が低周波側の周波数帯域で発振していればよく、周波数f21及びf22は限定しない。また、本実施形態では環状導体21が一つである例を示したが、環状導体21は1以上の任意の数でありうる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
11:矩形導体
12、22:給電部
13、23:切り欠き
14、24:ビア導体
21:環状導体
31、32:絶縁基板