(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154750
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ケーブルラック用アース金具
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
H02G3/04 056
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064298
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】合同会社ブレスト工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】大谷 政晴
(72)【発明者】
【氏名】西村 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】三上 大輝
(72)【発明者】
【氏名】菅野 友乃
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357BA03
5G357BA04
5G357BB01
5G357BC07
(57)【要約】
【課題】ケーブルラックと、上面カバーや下面カバーとを電気的に接続するための作業を大幅に減らすことが可能なケーブルラック用アース金具を提供する。
【解決手段】 梯子状のケーブルラックCRと、ケーブルラックCRに取り付けられた上面カバーTCおよび下面カバーBCとを電気的に接続するためのケーブルラック用アース金具1は、上面カバーTCと電気的に接続される第1の接続部26と、第1の接続部26の対向位置に設けられ、下面カバーBCと電気的に接続される第2の接続部27と、第1の接続部26と第2の接続部27とを連結する連結部に設けられ、親桁CR1の側面と電気的に接続される第3の接続部28と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の長尺状の親桁と、前記親桁の間に架設した複数の子桁とを備える梯子状のケーブルラックと、前記一対の親桁間を覆うように前記ケーブルラックの一方の面に取り付けられた第1のカバーと、前記一対の親桁間を覆うように前記ケーブルラックの前記一方の面とは反対側の他方の面に取り付けられた第2のカバーとに用いられるケーブルラック用アース金具であって、
前記親桁および前記子桁の長手方向に直交する前記親桁の幅方向に沿うように配置され、
前記第1のカバーと電気的に接続される第1の接続部と、
前記第1の接続部の対向位置に設けられ、前記第2のカバーと電気的に接続される第2の接続部と、
前記第1の接続部と前記第2の接続部とを連結する連結部に設けられ、前記親桁の側面と電気的に接続される第3の接続部と、
を備えることを特徴とするケーブルラック用アース金具。
【請求項2】
前記第1のカバーは、前記一対の親桁間を覆う第1のカバー本体と、前記第1のカバー本体の両側辺が前記親桁の幅方向に沿うように折り曲げられた第1の側縁部とを備え、前記第2のカバーは、前記一対の親桁間を覆う第2のカバー本体と、前記第2のカバー本体の両側辺が前記親桁の幅方向に沿うように折り曲げられた第2の側縁部とを備えており、
前記第1の接続部は、前記第1の側縁部に圧接して前記第1のカバーと電気的に接続し、
前記第2の接続部は、前記第2の側縁部に圧接して前記第2のカバーと電気的に接続し、
前記第3の接続部は、前記親桁の側面に圧接して電気的に接続する、
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブルラック用アース金具。
【請求項3】
前記第1の接続部は、前記親桁の側面と前記第1の側縁部との間に挿入される第1の圧接部と、前記第1の側縁部の外面側で前記第1の圧接部と対向する第1の対向部と、前記第1の対向部に設けられた第1のネジ穴と、前記第1のネジ穴に螺合して前記第1の側縁部に圧接するとともに、前記第1の圧接部を前記第1の側縁部の内面側に圧接させる第1のボルトとを備え、
前記第2の接続部は、前記親桁の側面と前記第2の側縁部との間に挿入される第2の圧接部と、前記第2の側縁部の外面側で前記第2の圧接部と対向する第2の対向部と、前記第2の対向部に設けられた第2のネジ穴と、前記第2のネジ穴に螺合して前記第2の側縁部に圧接するとともに、前記第2の圧接部を前記第2の側縁部の内面側に圧接させる第2のボルトとを備え、
前記第3の接続部は、前記親桁の側面に対向する第3の対向部と、前記第3の対向部に設けられた第3のネジ穴と、前記第3のネジ穴に螺合して前記親桁の側面に圧接する第3のボルトとを備える、
ことを特徴とする請求項2に記載のケーブルラック用アース金具。
【請求項4】
前記第1の圧接部は、前記第1の側縁部の表面処理膜に食い込んで破断する角部を備えており、
前記第2の圧接部は、前記第2の側縁部の表面処理膜に食い込んで破断する角部を備えている、
ことを特徴とする請求項3に記載のケーブルラック用アース金具。
【請求項5】
前記第1の圧接部および前記第2の圧接部は、スリット状の切欠きが設けられた板材が前記切欠き部分でスリット方向に沿って折り曲げられることにより形成され、
前記切欠きの縁の捩れにより、前記第1の圧接部および前記第2の圧接部の前記角部が形成される、
ことを特徴とする請求項4に記載のケーブルラック用アース金具。
【請求項6】
前記ケーブルラックは、前記親桁の幅方向の一端側に前記子桁が架設されており、
前記第3の接続部は、前記親桁の幅方向において、前記子桁が架設されている一端側に配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のケーブルラック用アース金具。
【請求項7】
前記ケーブルラックと、前記ケーブルラックに取り付けられた前記第1のカバーまたは前記第2のカバーとを電気的に接続する際に併用される係止金具を備え、
前記係止金具は、略短冊状の板材の断面が略L字状になるように折り曲げられて第1の面と第2の面とが形成され、前記第1の面に前記第1の接続部と前記第2の接続部とのいずれか一方に連結される連結部が設けられ、前記第2の面に前記親桁の幅方向の一端に係止される係止部が設けられており、
前記ケーブルラックに前記第1のカバーのみが取り付けられている場合には、前記第2の接続部に連結された前記係止金具を前記親桁に係止して、前記第1の接続部および前記第3の接続部により、前記ケーブルラックと前記第1のカバーとを電気的に接続し、
前記ケーブルラックに前記第2のカバーのみが取り付けられている場合には、前記第1の接続部に連結された前記係止金具を前記親桁に係止して、前記第2の接続部および前記第3の接続部により、前記ケーブルラックと前記第2のカバーとを電気的に接続する、
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブルラック用アース接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルラックと、ケーブルラックのカバーとを電気的に接続するためのケーブルラック用アース金具に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルや通信ケーブルなどの配線に用いられるラダータイプのケーブルラックは、一対の長尺の親桁と、親桁間に架設された複数の子桁とを備えた梯子形状をしている。ケーブルは、親桁と子桁とで囲まれた収容空間内に配設される。このようなケーブルラックは、配線経路に沿って複数台が配置され、親桁の端部同士は継ぎ金具などによって連結される。
【0003】
ケーブルラックには、配設されたケーブルの保護や安全性を確保するために、収容空間の上部を覆う上面カバーと、収容空間の下部を覆う下面カバーとのいずれか一方、または両方が取り付けられる場合がある。上面カバーおよび下面カバーは、親桁に沿って配置される長手方向の寸法がケーブルラックよりも短い。そのため、ケーブルラックには、ケーブルラックの台数よりも多数の上面カバーおよび下面カバーが取り付けられる。
【0004】
ケーブルラック、上面カバーおよび下面カバーは、導電性を有する金属によって形成され、ケーブルに漏電が発生した場合に漏電電流を逃がす機能を備えている。複数台のケーブルラックを連結して使用する場合には、継ぎ金具やアースボンド線を利用して隣接するケーブルラック同士を電気的に接続し、終端のケーブルラックを接地極に接続している。また、上面カバーおよび下面カバーについてもケーブルラックと同様に、隣接する上面カバー同士、および隣接する下面カバー同士をアースボンド線や、カバー用アース金具(例えば、特許文献1参照)を利用して電気的に接続し、終端の上面カバーおよび下面カバーを接地極に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、従来は、ケーブルラックと、上面カバーおよび下面カバーとをそれぞれ電気的に接続して接地する必要があった。また、上面カバーや下面カバーの枚数は、ケーブルラックの台数よりも多いため、ケーブルラックの経路長が長くなると、隣接するカバー同士を電気的に接続する作業数が非常に多くなる。さらに、上面カバーや下面カバーは、ケーブルが配線経路に沿って設置されてからケーブルラックに取り付けられ、その後に隣接するカバー同士が電気的に接続される。そのため、ケーブルラックが高所に設置されている場合には、カバーの長さおよび枚数に応じて高所作業車を何度も移動させ、その都度、作業台を昇降させてカバーを電気的に接続する作業を行なわなければならない。
【0007】
このように、従来は、ケーブルラックと、上面カバーや下面カバーとを電気的に接続する作業は、非常に手間がかかるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、ケーブルラックと、上面カバーや下面カバーとを電気的に接続するための作業を大幅に減らすことが可能なケーブルラック用アース金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一対の長尺状の親桁と、前記親桁の間に架設した複数の子桁とを備える梯子状のケーブルラックと、前記一対の親桁間を覆うように前記ケーブルラックの一方の面に取り付けられた第1のカバーと、前記一対の親桁間を覆うように前記ケーブルラックの前記一方の面とは反対側の他方の面に取り付けられた第2のカバーとに用いられるケーブルラック用アース金具であって、前記親桁および前記子桁の長手方向に直交する前記親桁の幅方向に沿うように配置され、前記第1のカバーと電気的に接続される第1の接続部と、前記第1の接続部の対向位置に設けられ、前記第2のカバーと電気的に接続される第2の接続部と、前記第1の接続部と前記第2の接続部とを連結する連結部に設けられ、前記親桁の側面と電気的に接続される第3の接続部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルラック用アース金具において、前記第1のカバーは、前記一対の親桁間を覆う第1のカバー本体と、前記第1のカバー本体の両側辺が前記親桁の幅方向に沿うように折り曲げられた第1の側縁部とを備え、前記第2のカバーは、前記一対の親桁間を覆う第2のカバー本体と、前記第2のカバー本体の両側辺が前記親桁の幅方向に沿うように折り曲げられた第2の側縁部とを備えており、前記第1の接続部は、前記第1の側縁部に圧接して電気的に接続し、前記第2の接続部は、前記第2の側縁部に圧接して電気的に接続し、前記第3の接続部は、前記親桁の側面に圧接して電気的に接続する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のケーブルラック用アース金具において、前記第1の接続部は、前記親桁の側面と前記第1の側縁部との間に挿入される第1の圧接部と、前記第1の側縁部の外面側で前記第1の圧接部と対向する第1の対向部と、前記第1の対向部に設けられた第1のネジ穴と、前記第1のネジ穴に螺合して前記第1の側縁部に圧接するとともに、前記第1の圧接部を前記第1の側縁部の内面側に圧接させる第1のボルトとを備え、前記第2の接続部は、前記親桁の側面と前記第2の側縁部との間に挿入される第2の圧接部と、前記第2の側縁部の外面側で前記第2の圧接部と対向する第2の対向部と、前記第2の対向部に設けられた第2のネジ穴と、前記第2のネジ穴に螺合して前記第2の側縁部に圧接するとともに、前記第2の圧接部を前記第2の側縁部の内面側に圧接させる第2のボルトとを備え、前記第3の接続部は、前記親桁の側面に対向する第3の対向部と、前記第3の対向部に設けられた第3のネジ穴と、前記第3のネジ穴に螺合して前記親桁の側面に圧接する第3のボルトとを備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のケーブルラック用アース金具において、前記第1の圧接部は、前記第1の側縁部の表面処理膜に食い込んで破断する角部を備えており、前記第2の圧接部は、前記第2の側縁部の表面処理膜に食い込んで破断する角部を備えている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のケーブルラック用アース金具において、前記第1の圧接部および前記第2の圧接部は、スリット状の切欠きが設けられた板材が前記切欠き部分でスリット方向に沿って折り曲げられることにより形成され、前記切欠きの縁の捩れにより、前記第1の圧接部および前記第2の圧接部の前記角部が形成される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載のケーブルラック用アース金具において、前記ケーブルラックは、前記親桁の幅方向の一端側に前記子桁が架設されており、前記第3の接続部は、前記親桁の幅方向において、前記子桁が架設されている一端側に配置されている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルラック用アース金具において、前記ケーブルラックと、前記ケーブルラックに取り付けられた前記第1のカバーまたは前記第2のカバーとを電気的に接続する際に併用される係止金具を備え、前記係止金具は、略短冊状の板材の断面が略L字状になるように折り曲げられて第1の面と第2の面とが形成され、前記第1の面に前記第1の接続部と前記第2の接続部とのいずれか一方に連結される連結部が設けられ、前記第2の面に前記親桁の幅方向の一端に係止される係止部が設けられており、前記ケーブルラックに前記第1のカバーのみが取り付けられている場合には、前記第2の接続部に連結された前記係止金具を前記親桁に係止して、前記第1の接続部および前記第3の接続部により、前記ケーブルラックと前記第1のカバーとを電気的に接続し、前記ケーブルラックに前記第2のカバーのみが取り付けられている場合には、前記第1の接続部に連結された前記係止金具を前記親桁に係止して、前記第2の接続部および前記第3の接続部により、前記ケーブルラックと前記第2のカバーとを電気的に接続する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、ケーブルラックと、第1のカバーおよび第2のカバーとを電気的に接続することができるので、終端ではケーブルラックのみを接地極に接続するだけで、ケーブルラック、第1のカバーおよび第2のカバーの全体を接地させることが可能である。また、従来は、隣接するカバー同士を電気的に接続していたため、上面カバーと下面カバーとでそれぞれに電気的接続作業を行なう必要があった。これに対し、本発明によれば、1つのケーブルラック用アース金具を接続するだけで上面カバーと下面カバーとの電気的接続が同時に行えるので、カバーなどの電気的接続に必要な作業を大幅に減らすことが可能である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、ケーブルラック用アース金具の第1の接続部、第2の接続部および第3の接続部は、第1のカバー、第2のカバーおよびケーブルラックに対し、それぞれ圧接することによって電気的な接続を行なうので、カバーに導通穴などを設け、この導通穴にボルトを挿通して接続を行なうような構成よりも、簡単、かつ迅速に作業を行なうことが可能である。また、ケーブルラックやカバーの表面に、対候性、防錆性などを付与するために非導電性を有する表面処理が施されている場合でも、第1の接続部などを圧接させることにより表面処理を破断することができるので、ケーブルラックと第1のカバーおよび第2のカバーとを確実に電気的に接続することが可能である。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、第1の圧接部と第1の対向部とで第1のカバーの第1の側縁部を挟み込み、第2の圧接部と第2の対向部とで第2のカバーの第2の側縁部を挟み込むようにしたので、ケーブルラック用アース金具を簡単、かつ迅速に、ケーブルラック、第1のカバーおよび第2のカバーの側面に取り付けることが可能である。また、第1の対向部、第2の対向部および第3の対向部に設けられたそれぞれのネジ穴にボルトを螺合して締め付けるだけで、各ボルトをケーブルラック、第1のカバーおよび第2のカバーに圧接させることができるので、簡単、かつ迅速に作業を行なうことが可能である。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、第1の圧接部および第2の圧接部に、第1のカバーおよび第2のカバーの表面処理膜に食い込んで破断する角部を備えているので、ボルトによる圧力を加えて、確実に電気的接続を行なうことが可能である。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、第1の圧接部および第2の圧接部を形成するための曲げ加工を利用し、切欠きの縁に捩れを与えて角部を形成するので、従来のように、ブランク加工や打ち抜き加工によって突起を設ける必要がなく、ケーブルラック用アース金具を作成するための工程数を削減することが可能である。また、ブランク加工や打ち抜き加工では、金型の磨耗によって、形成される突起の形状が変化(鋭角部の鈍化など)する可能性があるが、本発明では、曲げ加工時の捩れを利用するので、金型磨耗などの影響を軽減することができる。そのため、形状変化の少ない角部を安定的に得ることが可能である。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、親桁の幅方向において、子桁が架設されて剛性が高くなっている一端側に第3の接続部が配置されているので、第3の接続部を親桁に圧接させることにより、親桁が変形するようなことはない。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、ケーブルラック用アース金具と併用可能な係止金具を用いることにより、ケーブルラックと、ケーブルラックに取り付けられた第1のカバーまたは第2のカバーとを電気的に接続することが可能である。したがって、ケーブルラックのカバーが片面の場合であっても、新たに別のアース金具を用意せずに、本発明のケーブルラック用アース金具を有効に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の実施の形態に係るケーブルラック用アース金具をケーブルラックに取り付けた使用形態を示す斜視図である。
【
図2】ケーブルラック用アース金具を正面側から示す第1の斜視図(a)と、金具本体を背面側から示す第2の斜視図(b)である。
【
図3】金具本体の正面図(c)と、(c)のX-X断面図および金具本体の側面図(d)と、金具本体2の背面図(e)である。
【
図4】
図3(e)のY-Y断面図(f)と、金具本体の展開図(g)である。
【
図5】ケーブルラック用アース金具をケーブルラックに取り付ける手順を示す説明図である。
【
図6】ケーブルラック用アース金具をケーブルラックに取り付けた状態を示す断面図である。
【
図7】連結されたケーブルラックなどを従来の手法によって電気的に接続する場合と、ケーブルラック用アース金具を用いた場合とを比較した説明図である。
【
図8】ケーブルラック用アース金具と、併用される係止金具とを示す斜視図である。
【
図9】ケーブルラック用アース金具および係止金具を用いて、ケーブルラックと上面カバーとを電気的に接続した状態を示す断面図である。
【
図10】ケーブルラック、上面カバーおよび下面カバーの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係るケーブルラック用アース金具1の使用形態を示す斜視図である。ケーブルラック用アース金具1は、ケーブルラックCRと、ケーブルラックCRの上面カバー(第1のカバー)TCおよび下面カバー(第2のカバー)BCとを電気的に接続するための金具である。
【0026】
なお、この実施の形態では、略水平方向に設置されたケーブルラックCRに取り付けられるケーブルラック用アース金具1について説明しているが、本実施の形態のケーブルラック用アース金具1は、略垂直方向に設置されたケーブルラックCRと、このケーブルラックCRの前後の面に取り付けられたカバーにも適用することが可能である。
【0027】
ここで、ケーブルラックCR、上面カバーTCおよび下面カバーBCについて説明する。本実施の形態のケーブルラックCRは、
図10に示すように、電力ケーブルや通信ケーブル(図示せず)などの配線に用いられるラダータイプのケーブルラックである。ケーブルラックCRは、一対の長尺状の親桁CR1、CR2と、親桁CR1、CR2の間に架設された複数の子桁CR3とを備えた梯子形状をしている。ケーブルは、親桁CR1、CR2と子桁CR3とで囲まれた収容空間内に配設される。
【0028】
親桁CR1、CR2の長手方向に直交する断面は、剛性を高めるために、開口部が内側を向いた略コ字形状となっており、中央部分はケーブルラックCRの内側に向かって突出されている。親桁CR1、CR2の両端には、複数台のケーブルラックCRを連結する際に継ぎ金具が接続される取付穴が設けられている。
【0029】
子桁CR3は、長手方向に直交する断面が略コ字形状とされた棒状体である。子桁CR3は、親桁CR1、CR2および子桁CR3の長手方向に直交する親桁CR1、CR2の幅方向の一端側、例えば、下端側に所定間隔で架設されている。
【0030】
ケーブルラックCRには、配設されたケーブルの保護や安全性を確保するために、収容空間の上部を覆う上面カバーTCと、収容空間の下部を覆う下面カバーBCとのいずれか一方、または両方が取り付けられる場合がある。上面カバーTCおよび下面カバーBCは、親桁CR1、CR2に沿って配置される長手方向の寸法がケーブルラックCRよりも短い。そのため、ケーブルラックCRには、ケーブルラックCRの台数よりも多数の上面カバーTCおよび下面カバーBCが取り付けられる。
【0031】
上面カバーTCは、一対の親桁CR1、CR2間を覆う上面カバー本体(第1のカバー本体)TC1と、上面カバー本体TC1の両側辺が親桁CR1、CR2の幅方向に沿うように折り曲げられた上面カバー側縁部(第1の側縁部)TC2とを備えている。同様に下面カバーBCは、一対の親桁CR1、CR2間を覆う下面カバー本体(第2のカバー本体)BC1と、下面カバー本体BC1の両側辺が親桁CR1、CR2の幅方向に沿うように折り曲げられた下面カバー側縁部(第2の側縁部)BC2とを備えている。
【0032】
ケーブルラックCR、上面カバーTCおよび下面カバーBCは、導電性を有する金属板によって形成されている。また、ケーブルラックCR、上面カバーTCおよび下面カバーBCの表面は、対候性、防錆性などを付与するために非導電性を有する表面処理膜によって被覆されている。なお、上面カバーTCおよび下面カバーBCには、同じものを用いてもよい。
【0033】
次に、ケーブルラック用アース金具1について説明する。
図2は、ケーブルラック用アース金具1を正面側から示す第1の斜視図(a)と、ケーブルラック用アース金具1を構成する金具本体2を背面側から示す第2の斜視図(b)である。また、
図3は、金具本体2の正面図(c)と、(c)のX-X断面図および金具本体2の側面図(d)と、金具本体2の背面図(e)である。さらに、
図4は、
図3(e)のY-Y断面図(f)と、金具本体2の展開図(g)である。
【0034】
ケーブルラック用アース金具1は、棒形状をした金具本体2と、金具本体2に螺合される上面カバー用ボルト(第1のボルト)3と、下面カバー用ボルト(第2のボルト)4と、ラック用ボルト(第3のボルト)5と、を備えている。ケーブルラック用アース金具1は、
図1に示すように、親桁CR1の連結用の接続穴を避けた位置で、親桁CR1の幅方向に沿うように配置される。
【0035】
ラック用ボルト5は、ケーブルラックCRに接続するために、上面カバー用ボルト3および下面カバー用ボルト4よりも長くなっている。また、上面カバー用ボルト3、下面カバー用ボルト4およびラック用ボルト5には、先端面の周縁のみを挿通方向に環状に突出させた、くぼみ先ボルトが用いられている。上面カバー用ボルト3、下面カバー用ボルト4およびラック用ボルト5の先端部は、親桁CR1、上面カバーTC及び下面カバーBCに押しつけられることにより、表面処理膜を破断して地金に接触する。
【0036】
金具本体2は、
図4(g)に示す略短冊状の金属基板2Aを、図中2点鎖線で示す4本の折り曲げ線に沿って、断面が略コ字形状になるように折り曲げることにより、正面部21、左右の両側面部22、23、および一対の背面部24、25を備えた棒状体に形成されている。
【0037】
金具本体2は、上面カバーTCと電気的に接続される第1の接続部26と、第1の接続部26の対向位置に設けられ、下面カバーBCと電気的に接続される第2の接続部27と、第1の接続部26と第2の接続部27とを連結する連結部に設けられ、親桁CR1の側面と電気的に接続される第3の接続部28と、を備えている。
【0038】
第1の接続部26は、上面カバー側縁部TC2に圧接して上面カバーTCと電気的に接続する。また、第2の接続部27は、下面カバー側縁部BC2に圧接して下面カバーBCと電気的に接続する。さらに、第3の接続部28は、親桁CR1の側面に圧接して電気的に接続する。なお、圧接して電気的に接続する、とは、ケーブルラックCR、上面カバーTCおよび下面カバーBCの表面処理膜を破断して地金に接触することをいう。
【0039】
第1の接続部26は、親桁CR1の側面と上面カバー側縁部TC2との間に挿入される第1の圧接部261、262と、上面カバー側縁部TC2の外面側で第1の圧接部261、262と対向する第1の対向部263と、第1の対向部263に設けられた第1のネジ穴264と、第1のネジ穴264に螺合して上面カバー側縁部TC2に圧接するとともに、第1の圧接部261、262を上面カバー側縁部TC2の内面側に圧接させる上面カバー用ボルト3とを備えている。
【0040】
第1の圧接部261、262は、金属基板2Aに設けられた一対のスリット状の切欠き2A1、2A2を利用して、一対の背面部24、25の上端部に設けられている。第1の圧接部261、262のうち、一方の圧接部262の外側の角部は、ケーブルラック用アース金具1をケーブルラックCRに取り付ける際に、上面カバー本体TC1との干渉を避けるために、斜めに切り欠かれている。なお、この斜めの切欠きは、他方の第1の圧接部261の外側にも設けられていてもよい。
【0041】
また、
図4(f)に示すように、第1の圧接部261、262の根元部分には、上面カバー側縁部TC2の表面処理膜に食い込んで破断する刃物状の角部261a、262aが設けられている。これらの角部261a、262aは、
図4(g)に示す金属基板2Aの切欠き2A1、2A2の部分をスリット方向に沿って折り曲げることにより、切欠き2A1、2A2の縁が捩れて形成される。
【0042】
第1の圧接部261、262の背面部分には、背面側に突出された長円形状の当接部261b、262bが設けられている。これらの当接部261b、262bは、ケーブルラック用アース金具1をケーブルラックCRに取り付ける際に、金具本体2と親桁CR1の側面との接触面積を小さくして摩擦を小さくするために設けられている。
【0043】
第1の対向部263は、正面部21の上端部に設けられている。第1のネジ穴264は、第1の対向部263の幅方向の略中央に配置されている。第1のネジ穴264は、バーリング加工により円筒状となった穴の内周面に雌ネジが形成されている。
【0044】
第2の接続部27は、親桁CR1の側面と下面カバー側縁部BC2との間に挿入される第2の圧接部271、272と、下面カバー側縁部BC2の外面側で第2の圧接部271、272と対向する第2の対向部273と、第2の対向部273に設けられた第2のネジ穴274と、第2のネジ穴274に螺合して下面カバー側縁部BC2に圧接するとともに、第2の圧接部271、272を下面カバー側縁部BC2の内面側に圧接させる下面カバー用ボルト4とを備えている。
【0045】
第2の圧接部271、272は、金属基板2Aに設けられた一対のスリット状の切欠き2A3、2A4を利用して、一対の背面部24、25の下端部に設けられている。第2の圧接部271、272のうち、一方の圧接部272の外側の角部は、ケーブルラック用アース金具1をケーブルラックCRに取り付ける際に、下面カバー本体BC1との干渉を避けるために、斜めに切り欠かれている。この斜めの切り欠きは、他方の第2の圧接部271の外側の角部にも設けられていてもよい。
【0046】
また、第2の圧接部271、272の根元部分には、下面カバー側縁部BC2の表面処理膜に食い込んで破断する刃物状の角部271a、272aが設けられている。これらの角部271a、272aは、第1の圧接部261、262の角部261a、262aと同様に形成され、同様の形状を有するため、詳しい説明は省略する。
【0047】
第2の圧接部271、272の背面部分には、背面側に突出された長円形状の当接部271b、272bが設けられている。これらの当接部271b、272bは、ケーブルラック用アース金具1をケーブルラックCRに取り付ける際に、金具本体2と親桁CR1の側面との接触面積を小さくして摩擦を小さくするために設けられている。
【0048】
第2の対向部273は、正面部21の下端部に設けられている。第2のネジ穴274は、第2の対向部273の幅方向の略中央に配置されている。第2のネジ穴274は、バーリング加工により円筒状となった穴の内周面に雌ネジが形成されている。
【0049】
第3の接続部28は、親桁CR1の側面に対向する第3の対向部281と、第3の対向部281に設けられた第3のネジ穴282と、第3のネジ穴282に螺合して親桁CR1の側面に圧接するラック用ボルト5とを備えている。第3のネジ穴282は、バーリング加工により円筒状となった穴の内周面に雌ネジが形成されている。
【0050】
第3の対向部281および第3のネジ穴282は、金具本体2の正面部21の下方側に設けられている。これは、第3のネジ穴282に螺合されたラック用ボルト5が親桁CR1に当接して押圧し、親桁CR1が内側に変形して撓むのを防ぐためである。金具本体2の下方側、すなわち、親桁CR1の幅方向の下端側には子桁CR3が配置されていて剛性が高いため、ラック用ボルト5の押圧による親桁CR1の変形を防ぐことが可能である。
【0051】
なお、金具本体2は、第3の接続部28を除いて、金具本体2の前後方向に沿う中心軸Cを中心として、回転対称の形状を有している。すなわち、第1の接続部26と第2の接続部27とは同一形状である。
【0052】
次に、上記の実施の形態に係る作用について説明する。
図5は、ケーブルラック用アース金具1をケーブルラックCRに取り付ける手順を示している。ケーブルラック用アース金具1は、同図(a)に示すように、第1の圧接部262および第2の圧接部272が、上面カバー側縁部TC2および下面カバー側縁部BC2に干渉しないように、斜めに傾けられた状態で親桁CR1の側面に押しつけられる。
【0053】
その後、ケーブルラック用アース金具1は矢印Z方向に回転される。これにより、
図5(b)および
図6に示すように、第1の圧接部261、262は、親桁CR1の側面と上面カバー側縁部TC2との間に挿入され、第1の対向部263は、上面カバー側縁部TC2の外面側に対向する。同様に、第2の圧接部271、272は、親桁CR1の側面と下面カバー側縁部BC2との間に挿入され、第2の対向部273は、下面カバー側縁部BC2の外面側に対向する。
【0054】
この状態で上面カバー用ボルト3を締め込むと、上面カバー用ボルト3の先端部が上面カバー側縁部TC2の外面側に食い込んで表面処理膜を破断し、地金に接触する。また、上面カバー用ボルト3の締め込みにより、第1の圧接部261、262は、上面カバー側縁部TC2の内面側に圧接し、角部261a、262aによって表面処理膜を破断して地金に接触する。これにより、ケーブルラック用アース金具1と、上面カバーTCとが電気的に接続される。
【0055】
同様に、下面カバー用ボルト4を締め込むと、下面カバー用ボルト4の先端部が下面カバー側縁部BC2の外面側に食い込んで表面処理膜を破断し、地金に接触する。また、下面カバー用ボルト4の締め込みにより、第2の圧接部271、272は、下面カバー側縁部BC2の内面側に圧接し、角部271a、272aによって表面処理膜を破断して地金に接触する。これにより、ケーブルラック用アース金具1と、下面カバーBCとが電気的に接続される。
【0056】
さらに、ラック用ボルト5を締め込むと、ラック用ボルト5の先端部が親桁CR1の側面に食い込んで表面処理膜を破断し、地金に接触する。これにより、ケーブルラック用アース金具1と、ケーブルラックCRとが電気的に接続される。また、ケーブルラック用アース金具1を介して、ケーブルラックCRと、上面カバーTCおよび下面カバーBCとが電気的に接続される。
【0057】
図7は、複数台のケーブルラックCRと、このケーブルラックCRに取り付けられた複数枚の上面カバーTCおよび下面カバーBCとからなるラック経路を示す模式図である。水平方向の各直線は、1台のケーブルラックCRと、1枚の上面カバーTCおよび下面カバーBCとを示し、各直線の両端に記されている黒丸は、各ケーブルラックCRと、各上面カバーTCおよび下面カバーBCの端部を示している。この実施の形態では、各ケーブルラックCRの長さが例えば3m、各上面カバーTCおよび下面カバーBCの長さが例えば1.5mとなっており、1台のケーブルラックCRに対し、上面カバーTCおよび下面カバーBCは2枚ずつ使用される。また、ケーブルラックCRは6台が接続されており、全長18mのラック経路を構成している。
【0058】
図7に示すようなラック経路を設置して上面カバーTCと下面カバーBCとを設置する場合、従来は、隣接する上面カバーTC同士、および隣接する下面カバーBC同士をアースボンド線や、カバー用アース金具を利用して電気的に接続していた。その際の接続部分を破線の楕円によって示しており、全部で22箇所の接続作業が必要となる。例えば、このラック経路が手の届かない高所に設置されている場合、作業台が昇降可能な高所作業車による作業が必要となる。すなわち、従来は、高所作業車を1.5m毎(破線の楕円位置)に11回移動させ、その都度、作業台を昇降させて上面カバーTCおよび下面カバーBCの電気的接続作業を22回行なう必要があった。
【0059】
図7において、上面カバーTCから下面カバーBCまで垂直方向に延ばされた長方形は、本実施の形態のケーブルラック用アース金具1を示している。このケーブルラック用アース金具1は、1枚の上面カバーTCおよび下面カバーBCに対して1個が取り付けられる。そのため、
図7に示すラック経路では、12箇所のケーブルラック用アース金具1の取付作業が必要となる。また、ケーブルラック用アース金具1は、カバーの任意の位置に取り付けることが可能なため、隣接する2つのケーブルラック用アース金具1の位置を近づけることにより、作業台から手が届く距離間隔で2つのケーブルラック用アース金具1を取り付けられる。そのため、本実施の形態のケーブルラック用アース金具1を利用する場合、高所作業車を3m毎に6回移動させ、その都度、作業台を昇降させてケーブルラック用アース金具1の取付作業を11回行なうことになるので、従来に比べ高所作業車の移動回数、ケーブルラック用アース金具1の取付作業回数ともに減らすことができる。このように、本実施の形態のケーブルラック用アース金具1を利用することで、ケーブルラックCRと、上面カバーTCおよび下面カバーBCとを電気的に接続する作業を大幅に削減することが可能である。
【0060】
以上で説明したように、本実施の形態に係るケーブルラック用アース金具1によれば、ケーブルラックCRと、上面カバーTCおよび下面カバーBCとを電気的に接続することができるので、終端ではケーブルラックCRのみを接地極に接続するだけで、ケーブルラックCR、上面カバーTCおよび下面カバーBCの全体を接地させることが可能である。また、従来は、隣接するカバー同士を電気的に接続していたため、上面カバーと下面カバーでそれぞれに電気的接続作業を行なう必要があった。これに対し、本実施の形態によれば、1つのケーブルラック用アース金具1を接続するだけで上面カバーと下面カバーとの電気的接続が同時に行えるので、カバーなどの電気的接続に必要な作業を大幅に減らすことが可能である。
【0061】
また、本実施の形態に係るケーブルラック用アース金具1によれば、第1の接続部26、第2の接続部27および第3の接続部28は、上面カバーTC、下面カバーBCおよびケーブルラックCRにそれぞれ圧接することによって電気的な接続を行なうので、カバーに導通穴などを設け、この導通穴にボルトを挿通して接続を行なうような構成よりも、簡単、かつ迅速に作業を行なうことが可能である。また、ケーブルラックCRや上面カバーTCおよび下面カバーBCの表面に、対候性、防錆性などを付与するために非導電性を有する表面処理が施されている場合でも、第1の接続部26などを圧接させることにより表面処理を破断することができるので、ケーブルラックCRと上面カバーTCおよび下面カバーBCとを確実に電気的に接続することが可能である。
【0062】
さらに、本実施の形態に係るケーブルラック用アース金具1によれば、第1の圧接部261、262と第1の対向部263とで上面カバー側縁部TC2を挟み込み、第2の圧接部271、272と第2の対向部273とで下面カバー側縁部BC2を挟み込むようにしたので、ケーブルラック用アース金具1を簡単、かつ迅速に、ケーブルラックCR、上面カバーTCおよび下面カバーBCの側面に取り付けることが可能である。また、第1の対向部263、第2の対向部273および第3の対向部281に設けられたそれぞれのネジ穴264、274、282にボルト3、4、5を螺合して締め付けるだけで、各ボルト3、4、5を上面カバーTC、下面カバーBCおよびケーブルラックCRに圧接させることができるので、簡単、かつ迅速に作業を行なうことが可能である。
【0063】
また、本実施の形態に係るケーブルラック用アース金具1によれば、第1の圧接部261、262および第2の圧接部271、272に、上面カバーTCおよび下面カバーBCの表面処理膜に食い込んで破断する角部261a、262a、271a、272aを備えているので、ボルト3、4、5による圧接と加えて、確実に電気的接続を行なうことが可能である。
【0064】
さらに、本実施の形態に係るケーブルラック用アース金具1によれば、第1の圧接部261、262および第2の圧接部271、272を形成するための曲げ加工を利用し、スリット状の切欠き2A1、2A2、2A3、2A4の縁に捩れを与えて角部261a、262a、271a、272aを形成するので、従来のように、ブランク加工や打ち抜き加工によって突起を設ける必要がなく、ケーブルラック用アース金具1を作成するための工程数を削減することが可能である。また、ブランク加工や打ち抜き加工では、金型の磨耗によって、形成される突起の形状が変化(鋭角部の鈍化など)する可能性があるが、本発明では、曲げ加工時の捩れを利用するので、金型磨耗などの影響を軽減することができる。そのため、形状変化の少ない角部261a、262a、271a、272aを安定的に得ることが可能である。
【0065】
また、本実施の形態に係るケーブルラック用アース金具1によれば、親桁CR1、CR2の幅方向において、子桁CR3が架設されて剛性が高くなっている一端側に第3の接続部28が配置されているので、第3の接続部28を親桁CR1に圧接させることによって親桁CR1が変形するようなことはない。
【0066】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施の形態は、ケーブルラックCRと、ケーブルラックCRに取り付けられた上面カバーTCまたは下面カバーBCとを電気的に接続する際に、ケーブルラック用アース金具1と併用される係止金具に関するものである。
【0067】
図8に示すように、係止金具6は、略短冊状の板材の断面が略L字状になるように折り曲げられて第1の面61と第2の面62とが形成されている。また、第1の面61には、ケーブルラック用アース金具1の第1の接続部26と第2の接続部27とのいずれか一方に連結される連結穴(連結部)611が設けられている。また、第2の面62には、親桁CR1の幅方向の一端に係止されるフック状の係止部621が設けられている。
【0068】
係止金具6は、第2の面62がケーブルラック用アース金具1の背面側に配置されるように、第1の面61がケーブルラック用アース金具1に挿入され、第2の接続部27の下面カバー用ボルト4が連結穴611に挿入されて金具本体2に連結される。係止金具6の第1の面61の先端は、ケーブルラック用アース金具1内でケーブルラック用アース金具1の内面に当接するために屈曲されており、さらに、第3の接続部28との干渉を避けるために、一部が切り欠かれている。
【0069】
図9は、ケーブルラック用アース金具1と係止金具6とを利用して、ケーブルラックCRと、上面カバーTCとを電気的に接続している状態を示している。ケーブルラック用アース金具1の第2の接続部27に連結された係止金具6は、係止部621が親桁CR1の下端部に係止され、第1の接続部26および第3の接続部28により、ケーブルラックCRと上面カバーTCとが電気的に接続される。
【0070】
なお、ケーブルラック用アース金具1と係止金具6とを利用して、ケーブルラックCRと、上面カバーTCとを電気的に接続する場合について説明したが、ケーブルラックCRと、下面カバーBCとを電気的に接続することも可能である。この場合には、ケーブルラック用アース金具1の第1の接続部26に係止金具6を連結する。そして、ケーブルラック用アース金具1に連結された係止金具6は、係止部621が親桁CR1の上端部に係止され、第2の接続部27および第3の接続部28により、ケーブルラックCRと下面カバーBCとが電気的に接続される。
【0071】
また、本実施の形態では、
図9に示すように、下面カバー用ボルト4によって金具本体2と係止金具6とを連結し、ラック用ボルト5によってケーブルラックCRを電気的に接続しているが、これら2本のボルト4、5の機能を1本のボルトで兼用させてもよい。具体的には、下面カバー用ボルト4の代わりに、下面カバー用ボルト4よりも長いラック用ボルト5を第2の接続部27の第2のネジ穴274に螺合させ、ラック用ボルト5を係止金具6の連結穴611に挿通させてからケーブルラックCRの側面に圧接させる。これにより、1本のラック用ボルト5によって金具本体2と係止金具6とを連結し、ケーブルラックCRを電気的に接続することができるので、使用するボルトの本数が2本に減少して作業効率が向上する。
【0072】
なお、ケーブルラックCRと下面カバーBCとを電気的に接続する場合にも、上記と同様に使用するボルトの本数を減らすことができる。具体的には、上面カバー用ボルト3の代わりに、上面カバー用ボルト3よりも長いラック用ボルト5を第1の接続部26の第1のネジ穴264に螺合させ、ラック用ボルト5を係止金具6の連結穴611に挿通させてからケーブルラックCRの側面に圧接させればよい。
【0073】
本実施の形態によれば、ケーブルラック用アース金具1と併用可能な係止金具6を用いることにより、ケーブルラックCRと、ケーブルラックCRに取り付けられた上面カバーTCまたは下面カバーBCとを電気的に接続することが可能である。したがって、ケーブルラックCRのカバーが片面の場合であっても、新たに別のアース金具を用意せずに、本実施の形態のケーブルラック用アース金具1を有効に利用することが可能である。
【0074】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、ケーブルラック用アース金具1と上面カバーTCおよび下面カバーBCとを電気的に接続するために、第1の圧接部261、262および第2の圧接部271、272に対し、角部261a、262a、271a、272aを形成したが、ボルト3、4、5による電気的接続が確実に行なわれる場合には、角部261a、262a、271a、272aを省略してもよい。
【0075】
また、上記の実施の形態では、ボルト3、4および5をケーブルラックCR1、上面カバーTCおよび下面カバーBCまで挿通させるために、第1の圧接部261、262および第2の圧接271、272の間に隙間を設けていた。しかしながら、ケーブルラック用アース金具1の背面側にボルト3、4および5が挿通可能な穴を設ける場合には、第1の圧接部261、262および第2の圧接271、272は一体的に形成されていてもよい。
【0076】
さらに、上記の実施の形態では、ケーブルラックCR1に上面カバーTCと下面カバーBCとのいずれか一方のみが取り付けられる場合に、ケーブルラック用アース金具1と係止金具6とを組み合わせて電気的接続を行なうようにしたが、専用のアース金具を設けてもよい。具体的には、上記のケーブルラック用アース金具1に対し、一端側の第1の接続部26または第2の接続部27の代わりに、係止金具6を一体に設ける。これにより、ケーブルラック用アース金具1に係止金具6を組み込む作業は必要なくなるので作業効率が向上する。
【0077】
また、本実施の形態に係るケーブルラック用アース金具1および係止金具6は、金具本体2の長さや、係止金具6のサイズを調整することで、親桁の幅寸法が異なるケーブルラックにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 ケーブルラック用アース金具
2 金具本体
26 第1の接続部
261、262 第1の圧接部
261a、262a 角部
263 第1の対向部
264 第1のネジ穴
27 第2の接続部
271、272 第2の圧接部
271a、272a 角部
273 第2の対向部
274 第2のネジ穴
28 第3の接続部
281 第3の対向部
282 第3のネジ穴
3 上面カバー用ボルト(第1のボルト)
4 下面カバー用ボルト(第2のボルト)
5 ラック用ボルト(第3のボルト)
6 係止金具
61 第1の面
611 連結穴(連結部)
62 第2の面
621 係止部
CR ケーブルラック
CR1、CR2 親桁
CR3 子桁
TC 上面カバー(第1のカバー)
TC2 上面カバー側縁部(第1の側縁部)
BC 下面カバー(第2のカバー)
BC2 下面カバー側縁部(第2の側縁部)