(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154779
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
G01N30/86 V
G01N30/86 B
G01N30/86 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064333
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市村 遼太
(72)【発明者】
【氏名】陶山 修一
(57)【要約】
【課題】カラムの状態を正確に診断する。
【解決手段】サンプルガスの成分を分離するためのカラムにおける分離度を取得し、前記カラムの分離度を時刻と対応付けて記憶する記憶部と、時刻と対応付けられた前記カラムの複数の分離度を示す分離度データに基づいて、前記カラムの状態を予測する予測部とを備えてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルガスの成分を分離するためのカラムにおける分離度を取得し、前記カラムの分離度を時刻と対応付けて記憶する記憶部と、
時刻と対応付けられた前記カラムの複数の分離度を示す分離度データに基づいて、前記カラムの状態を予測する予測部と
を備えたことを特徴とする分析システム
【請求項2】
前記分離度データは、所定の時間前以降の前記カラムの分離度に基づいて生成されるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記予測部は、前記分離度データに基づいて、第一時間経過後の前記カラムの状態を予測する第一予測と、前記第一時間よりも長い第二時間経過後の前記カラムの状態を予測する第二予測とを、行うものである
ことを特徴とする請求項1に記載の分析システム。
【請求項4】
前記予測部は、異なる演算手法に基づいて前記第一予測および前記第二予測を行うものである
ことを特徴とする請求項3に記載の分析システム。
【請求項5】
前記予測部は、前記カラムの状態として前記カラムの将来の分離度を予測するものであり、
前記カラムの将来の分離度と比較するための閾値を設定する設定部と、前記カラムの将来の分離度と前記閾値とを比較して前記カラムの交換の要否を判定する判定部とをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の分析システム。
【請求項6】
前記記憶部は、複数の前記カラムの分離度を、複数の前記カラムの識別番号および時刻とそれぞれ対応付けて記憶するものであり、
前記予測部は、複数の前記カラムの状態をそれぞれ予測するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の分析システム。
【請求項7】
前記予測部によって予測される前記カラムの状態を出力する出力部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルガスの成分を分離するためのカラムを備え、サンプルガスに含まれる複数の成分を分析可能な分析システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような分析システムにおいて、カラムの状態すなわちサンプルガスに含まれる複数成分の分離度が分析精度に影響する。そして、カラムの劣化等の状態は、オペレータの経験に基づいて判断されていた。
【0005】
そこで、本発明は、カラムの状態を正確に診断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第一の発明に係る分析システムは、サンプルガスの成分を分離するためのカラムにおける分離度を取得し、前記カラムの分離度を時刻と対応付けて記憶する記憶部と、時刻と対応付けられた前記カラムの複数の分離度を示す分離度データに基づいて、前記カラムの状態を予測する予測部とを備えてよい。
【0007】
上記課題を解決するため、第二の発明に係る分析システムは、第一の発明に係る分析システムにおいて、前記分離度データは、所定の時間前以降の前記カラムの分離度に基づいて生成されるものであってもよい。
【0008】
上記課題を解決するため、第三の発明に係る分析システムは、第一または第二の発明に係る分析システムにおいて、前記予測部は、前記分離度データに基づいて、第一時間経過後の前記カラムの状態を予測する第一予測と、前記第一時間よりも長い第二時間経過後の前記カラムの状態を予測する第二予測とを、行うものであってもよい。
【0009】
上記課題を解決するため、第四の発明に係る分析システムは、第三の発明に係る分析システムにおいて、前記予測部は、異なる演算手法に基づいて前記第一予測および前記第二予測を行うものであってもよい。
【0010】
上記課題を解決するため、第五の発明に係る分析システムは、第一から第四のいずれか一つの発明に係る分析システムにおいて、前記予測部は、前記カラムの状態として前記カラムの将来の分離度を予測するものであり、前記カラムの将来の分離度と比較するための閾値を設定する設定部と、前記カラムの将来の分離度と前記閾値とを比較して前記カラムの交換の要否を判定する判定部とをさらに備えてもよい。
【0011】
上記課題を解決するため、第六の発明に係る分析システムは、第一から第五のいずれか一つの発明に係る分析システムにおいて、前記記憶部は、複数の前記カラムの分離度を、複数の前記カラムの識別番号および時刻とそれぞれ対応付けて記憶するものであり、前記予測部は、複数の前記カラムの状態をそれぞれ予測するものであってもよい。
【0012】
上記課題を解決するため、第七の発明に係る分析システムは、第一から第六のいずれか一つの発明に係る分析システムにおいて、前記予測部によって予測される前記カラムの状態を出力する出力部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る分析システムによれば、カラムの劣化状況を正確に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る分析システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る分析システムにおける分離度の算出を説明する説明図である。
【
図3】本実施形態に係る分析システムにおけるピーク分離度のトレンドを示すグラフである。
【
図4】本実施形態に係る分析システムにおける出力部の表示例を示す説明図である。
【
図5】本実施形態に係る分析システムにおける出力部の表示例を示す説明図である。
【
図6】本実施形態に係る分析システムにおける出力部の表示例を示す説明図である。
【
図7】本実施形態に係る分析システムの動作を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る分析システムの動作の変形例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係る分析システムの構成の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態に係る分析システムは、プラント等におけるプロセスの監視制御を行うために、プロセスから分離した試料をサンプリングして当該試料(サンプリングガス)に含まれる各成分の濃度を測定し、
【0016】
本実施形態に係る分析システムの構成について、
図1を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、分析システム1は、試料に含まれる複数の成分を分離して検出する分析装置11と、分析装置11と接続されて当該分析装置11の検出結果について情報処理を行う情報処理装置12とを備えている。なお、分析システム1は、複数の分析装置11を備えることができ、情報処理装置12は、これら複数の分析装置11の検出結果について情報処理を行うことができる。
【0018】
分析装置11には、サンプルガスである試料を当該分析装置11内に導入するための試料導入部21が設けられている。試料導入部21は、図示しないプラントにおけるプロセスと接続されており、プロセスから分離してサンプリングした試料(サンプリングガス)は、試料導入部21に供給されるようになっている。また、試料導入部21は、図示しないキャリアガスボンベと接続されており、キャリアガスボンベに貯蔵されているキャリアガスは、試料導入部21に供給されるようになっている。
【0019】
なお、試料導入部21は、サンプルガスが液体状である場合に、当該液状サンプルを気化してカラム22に導入できるよう、図示しない気化器を備えていてもよい。また、試料導入部21は、キャリアガスボンベ等と接続される導管に調整器を備え、キャリアガス等の流量を適切に調整できるようになっていてもよい。試料導入部21からカラム22にサンプルガスおよびキャリアガスが供給される。
【0020】
カラム22は、試料導入部21から供給されたサンプルガスおよびキャリアガスを、その道程で分離できるように構成されている。カラム22には、吸着剤や液相などの固定相が設けられており、これら固定相がサンプルガスに含まれる試料成分と吸着や分配などの相互作用を生じるようになっている。
【0021】
この相互作用により、サンプルガスに含まれる各試料成分が選択的に遅延され、各試料成分の検出器23までの到着時間に差が生じる(各試料成分が分離される)。例えば、カラム22はパックドカラムやキャピラリーカラムとして構成されるが、サンプルガスおよびキャリアガスを分離できるものであればよく、その構成は特に限定されることはない。カラム22で分離されたサンプルガスの各試料成分は、検出器23に供給される。
【0022】
検出器23は、カラム22で分離されたサンプルガスの各試料成分を検出するためのものである。分析装置11は、検出器23における検出結果等の情報を電気信号に変えて情報処理装置12に送信するようになっている。検出器23における検出結果としては、例えば、横軸が時間、縦軸が信号強度のクロマトグラムがある。
【0023】
情報処理装置12は、記憶部31と、演算部32と、予測部33と、判定部34と、設定部35と、出力部36とを備える。情報処理装置12は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。情報処理装置12は、分析システム1を構成する各構成部と通信可能に接続され、分析システム1全体の動作を制御してもよい。
【0024】
記憶部31は、分析装置11から受信した情報を記憶する。また、記憶部31は、分析システム1を制御するための情報として、例えば、システムプログラム、アプリケーションプログラム、ログデータファイル、メーカーから受信した各種データなどを記憶してもよい。記憶部31は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)を含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部31は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。また、記憶部31は、情報処理装置12に内蔵されているものに限定されず、SD(Secure Digital)カード又はUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の外付けのデータベース又は外付け型の記憶モジュールであってもよい。
【0025】
演算部32は、記憶部31に記憶した情報を読み出して種々の演算処理を行う。演算部32は、演算処理として、例えば、検出器23における検出結果に基づいて、各試料成分の濃度およびピーク分離度の演算を行う。演算部32は、演算処理の結果を記憶部31に記憶する。
【0026】
ここで、ピーク分離度は、検出器23における検出結果である各試料成分の成分ピークの分離状態を示す演算値であり、演算部32におけるピーク分離度の演算は、既知の算出方法を採用することができる。
【0027】
例えば、2つのピークの保持時間および半値幅からピーク分離度を以下の式(1)に基づいて算出する。
X=2(t1-t2)/(1.699(tw1-tw2))・・・(1)
ここで、Xはピーク分離度、t1は一方の成分ピークの保持時間、t2は他方の成分ピークの保持時間、tw1は一方の成分ピークの半値幅、tw2は他方の成分ピークの半値幅である(
図2参照)。
【0028】
演算部32は、式(1)に基づく演算処理の結果を記憶部31に記憶する。具体的には、演算部32は、算出したピーク分離度Xを、検出時刻と対応付けて記憶部31に記憶する。
【0029】
予測部33は、記憶部31から所定の時間前以降のピーク分離度(所定の時間分のピーク分離度)を読み出し、これら所定の時間分のピーク分離度に基づいて、所定の時間分の分離度データ(
図3における実測線に相当)を生成する。ここで、例えば、予測部33は、過去14日分のピーク分離度の移動平均を分離度データとして生成することができる。
【0030】
また、予測部33は、生成した分離度データからカルマンフィルタを用いて、所定の時間(第一時間)経過後の予測ピーク分離度を予測する。ここで、例えば、予測部33は、カルマンフィルタを用いて30日後の予測ピーク分離度(
図3における第一予測線に相当)を予測することができる。
【0031】
さらに、予測部33は、生成した分離度データから線形回帰分析を用いて、第一時間よりも長い所定の時間(第二時間)経過後の予測ピーク分離度を予測してもよい。ここで、例えば、予測部33は、線形回帰分析を用いて90日後の予測ピーク分離度(
図3における第二予測線(破線)に相当)を予測することができる。
【0032】
もちろん、予測部33は、予測結果等を記憶部31に記憶する。具体的には、予測部33は、所定の時間分の分離度データおよび所定の時間経過後の予測ピーク分離度を、生成時刻または予測時刻の少なくとも一方と対応付けて記憶部31に記憶する。
【0033】
判定部34は、記憶部31から予測ピーク分離度および閾値を読み出し、これらを比較する。ここで、閾値は、予測ピーク分離度の比較対象であり、カラム22の状態を診断するための基準となるもの(ピーク分離度の比較基準値)である。
【0034】
判定部34は、予測ピーク分離度が閾値よりも大きい場合に、カラム22が健全な状態である、または、カラム22の交換時期でないと判定する。一方、判定部34は、予測ピーク分離度が閾値以下である場合に、カラム22が健全な状態でない、または、カラム22の交換時期であると判定する。
【0035】
または、閾値は、複数あってもよい。例えば、閾値を二つとし、第一閾値と第二閾値とを設定した場合には、判定部34は、予測ピーク分離度が第一閾値よりも大きい場合に、カラム22が健全な状態である、または、カラム22の交換時期でない(正常)と判定する。そして、判定部34は、予測ピーク分離度が第二閾値よりも大きく且つ第一閾値以下である場合に、カラム22が健全であるが劣化し始めている状態である、または、カラム22の所定期間経過後に交換時期となる可能性がある(準異常)と判定する。さらに、判定部34は、予測ピーク分離度が第二閾値以下である場合に、カラム22が健全な状態でない、または、カラム22の交換時期である(異常)と判定する。
【0036】
設定部35は、分析システム1の種々の設定を行う。設定部35は、分析システム1の設定として、例えば、分析装置11におけるサンプリングガスおよびキャリアガスの流量(調整器)や検出器23の感度などの設定、情報処理装置12における算出方法や予測(第一時間および第二時間)などの設定を行うことができる。
【0037】
設定部35は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インターフェースを含んでもよい。例えば、設定部35は、物理キー、静電容量キー、ポインティングディバイス、後述する出力部36の例えばディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイク等であってよい。もちろん、設定部35の構成は、これらに限定されない。
【0038】
出力部36は、記憶部31から種々の情報を読み出して、オペレータに通知する1つ以上の出力インターフェースを含む。出力部36は、種々の情報として、例えば、予測部33の予測結果や判定部34の判定結果を出力することができる。
【0039】
例えば、出力部36は、情報を画像で出力するディスプレイ、または情報を音声で出力するスピーカ等で構成され得る。もちろん、出力部36は、これらの構成に限定されない。また、出力部36は、制御装置12と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。
【0040】
分析システム1は、上述した構成を有することにより、カラム22の状態を正確に診断することができる。なお、情報処理装置12の機能は、コンピュータプログラム(プログラム)を当該情報処理装置12に含まれるプロセッサで実行することにより実現されうる。すなわち、情報処理装置12の機能は、ソフトウェアにより実現されうる。コンピュータプログラムは、情報処理装置12の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、各ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させる。すなわち、コンピュータプログラムは、コンピュータを情報処理装置12として機能させるためのプログラムである。
【0041】
ここで、コンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD(Digital Versatile Disc)又はCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行うことができる。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、ネットワークを介して、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムは流通されてもよい。プログラムはプログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0042】
コンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。このような処理は、サーバからコンピュータへのプログラムの転送を行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって実行されてもよい。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0043】
情報処理装置12の一部又は全ての機能が、当該情報処理装置12に含まれる専用回路により実現されてもよい。すなわち、情報処理装置12の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。また、情報処理装置12は単一の情報処理装置により実現されてもよいし、複数の制御装置の協働により実現されてもよい。
【0044】
本実施形態に係る分析システムにおける出力部36の表示例について、
図4から
図6を参照して説明する。
【0045】
出力部36が情報を画像で出力するディスプレイである場合には、出力部36はカラム22の状態を示す情報を第一画面36Aに出力する。例えば、
図4に示すように、第一画面36Aは、複数の分析装置11におけるそれぞれの識別番号の情報と、各識別番号に対応する分析装置11におけるカラム22の状態の情報とを有する。
【0046】
複数の分析装置11におけるそれぞれの識別番号は「ID」列の欄に表示される。例えば、「ID」列の欄には、複数の分析装置11をそれぞれ識別するための識別番号として、「001」、「002」、「003」などが表示される。
【0047】
各識別番号に対応する分析装置11におけるカラム22の状態は「GC Health」列の欄に表示される。例えば、「GC Health」列の欄には、各識別番号に対応する分析装置11におけるカラム22の状態として、正常(Healthy)を意味する丸マーク、準異常(pre-anomaly)を意味する三角マーク、異常(anomaly)を意味するバツマークが表示される。
【0048】
もちろん、本発明に係る分析システムは、上述したようにカラムの状態を、形状を異にするマークで表示するものに限定されない。例えば、本発明に係る分析システムは、カラムの状態を、色を異にするマーク等で表示してもよい。また、本発明に係る分析システムは、上述したようにカラムの状態を正常、準異常、異常の三段階で予測するものに限定されない。例えば、本発明に係る分析システムは、カラムの状態を二段階または四段階以上で予測するものであってもよい。この場合、当該分析システムにおける出力部は、カラムの状態を二段階または四段階以上で識別できるように、形状を異にするマークを表示してもよく、また、色を異にするマーク等を表示してもよい。
【0049】
また、第一画面36Aは、カラム22の状態診断の更新情報を有する。カラム22の状態診断の更新情報は、第一画面36Aの上段の「All Log」欄に表示される。例えば、「All Log」欄には、カラム22の状態診断の更新情報として、日付、時刻、識別番号などが表示され、各分析装置11におけるカラム22の状態診断の更新された時期がオペレータに認識されるようになっている。
【0050】
さらに、第一画面36Aは、設定等の未入力があることを示す情報を有する。設定等の未入力があることを示す情報は、「GC Health」列の欄に表示される。例えば、「GC Health」列の欄には、設定等(例えば閾値)の未入力があることを示す情報として、未入力の原因ありを意味する星マークが表示される。
【0051】
また、出力部36は、第一画面36Aに画面リンク機能を有する。例えば、出力部36は、第一画面36Aにおける分析装置11の識別番号を押される(クリックされる)と、当該分析装置11におけるカラム22の状態の詳細を示す情報を有する第二画面36Bに遷移されるようになっている。
【0052】
例えば、
図5に示すように、第二画面36Bは、当該特定の分析装置11の識別番号の情報と、当該特定の分析装置11の分析結果に含まれる各成分のピークを識別するピーク番号の情報と、各ピーク番号に対応する分析結果であるピーク分離度の情報と、各ピーク番号に対応する予測ピーク分離度の情報と、各ピーク番号に設定された閾値の情報とを有する。
【0053】
分析装置11の識別番号の情報は、第二画面36Bの最上段に表示される。例えば、第二画面36Bの最上段には、当該特定の分析装置11の識別番号として、「ID:001」が表示される。
【0054】
なお、分析装置11の識別番号の情報は、複数の分析装置11を識別可能なものであればよく、例えば、各分析装置11に設定された固有の番号(例えば「001」)に、当該分析装置11が設置される場所(A棟B室)または当該分析装置11の分析対象(試料をサンプリングする対象)であるプロセス(CラインD部)等の情報を含む設備情報を付加したものであってもよい(例えば「001-AB」、「001-CD」、または「001-ABCD」等)。
【0055】
分析装置11の分析結果に含まれる各成分のピークを識別するピーク番号の情報は、「Peak」列の欄に表示される。例えば、「Peak」列の欄には、分析装置11の分析結果に含まれる各成分のピークを識別するピーク番号の情報として、「1」、「2」、「3」などが表示される。
【0056】
なお、ピーク番号の情報は、各ピークを識別可能なものであればよく、例えば、各成分のピークに設定された固有の番号(例えば「1」)に、当該成分を検出する機器(機器E1)等の情報を付加したものであってもよい(例えば「1-E1」)。もちろん、当該成分を検出する機器等の情報は、ピーク番号の情報として付加されるものでなく、「Peak」列の欄と個別の図示しない「機器」列の欄等に、各ピーク番号に対応する機器等の情報として表示されてもよい。
【0057】
各ピーク番号に対応する分析結果であるピーク分離度の情報は、「現在の分離度」列の欄に表示される。例えば、「現在の分離度」列の欄には、各ピーク番号に対応する分析結果であるピーク分離度の情報として、算出されたピーク分離度が表示される。
【0058】
各ピーク番号に対応する予測ピーク分離度の情報は、「30日後の分離度」列の欄に表示される。例えば、「30日後の分離度」列の欄には、各ピーク番号に対応する予測ピーク分離度の情報として、予測された予測ピーク分離度が表示される。
【0059】
各ピーク番号に設定された閾値の情報は、「閾値」列の欄に表示される。例えば、「閾値」列の欄には、各ピーク番号に設定された閾値の情報として、オペレータが設定した予測ピーク分離度と比較する対象である閾値(ピーク分離度の比較基準値)が表示される。
【0060】
また、出力部36は、第二画面36Bに閾値設定機能を有する。例えば、出力部36は、第二画面36Bにおける任意のピーク番号に設定された閾値を押された(クリックされた)後に、第二画面36Bに表示される「Setting」ボタンを押される(クリックされる)と、当該任意のピーク番号に設定された閾値を編集(変更)するための設定画面(不図示)に遷移されるようになっている。オペレータは、この機能により、個々の分析装置11における個々の成分ピークの閾値を容易に変更することができる。
【0061】
また、出力部36は、第二画面36Bに画面リンク機能を有する。例えば、出力部36は、第二画面36Bに表示される「Close」ボタンを押される(クリックされる)と、第一画面36Aに遷移される(戻る)ようになっている。
【0062】
また、出力部36は、第二画面36Bに画面切り替え機能を有する。例えば、出力部36は、第二画面36Bをタブ表示し、当該タブを切り替えることによって、当該分析装置11におけるカラム22の状態のトレンドを示す情報を有する第三画面36Cを表示するようになっている。
【0063】
例えば、
図6に示すように、第三画面36Cは、ピーク分離度のトレンド(時系列データの情報)を有する。ピーク分離度のトレンドは、横軸を時間、縦軸を分離度として表示されるグラフである。
【0064】
また、出力部36は、第三画面36Cに表示トレンド切り替え機能を有する。例えば、第三画面36Cには、各ピーク番号に対応する実測線の表示の有無を設定するチェックボックス「PV」と、各ピーク番号に対応する予測線の表示の有無を設定するチェックボックス「Pred.」とが設けられている。
【0065】
出力部36は、任意のピーク番号に対応するチェックボックス「PV」を押されると(チェックが入れられると)、当該任意のピーク番号に対応する実測線をピーク分離度のトレンドに表示し、当該任意のピーク番号に対応するチェックボックス「PV」を再度押されると(チェックが外されると)、当該任意のピーク番号に対応する実測線をピーク分離度のトレンドから非表示とする。出力部36は、同様にチェックボックス「Pred.」を押されることによって、任意のピーク番号に対応する予測線の表示と非表示とを切り替える。
【0066】
出力部36は、複数のピーク番号に対応する複数のトレンド(実測線および予測線)をピーク分離度のトレンドに同時に表示することができる。このとき、出力部36は、表示する対象に応じて線種または色を異にする線で表示してもよい。例えば、出力部36は、実測線および予測線を、線種を異にする線(実線および破線)で表示してもよい。また、出力部36は、複数のピーク番号に対応する複数のトレンド(実測線および予測線)を、色を異にする線で表示してもよい。
【0067】
本実施形態に係る分析システムの動作について、
図7を参照して説明する。
【0068】
分析システム1が稼働し、分析装置11によるサンプルガスの成分分析が行われると、カラム22の状態診断のステップがスタートする。なお、以下に示すカラム22の状態診断のステップは、例えば、分析システム1が稼働している間、定期的または分析装置11によるサンプルガスの成分分析毎に実施される。
【0069】
ステップS101において、情報処理装置12は、分析装置11による分析結果におけるピーク分離度を算出し、ステップS102へ移行する。このとき、情報処理装置12は、ピーク分離度を記憶部31に記憶する。
【0070】
ステップS102において、情報処理装置12は、所定の時間分のピーク分離度を記憶部31に記憶すると(S102においてYESと判断すると)、ステップS103へ移行する。一方、ステップS102において、情報処理装置12は、所定の時間分のピーク分離度を記憶していないと(S102においてNOと判断すると)ステップS101へ戻る。つまり、情報処理装置12は、所定の時間分のピーク分離度を記憶するまで、ステップS101からステップS102までを繰り返し、ピーク分離度を蓄積する。
【0071】
ここで、情報処理装置12は、記憶すべき所定の時間分のピーク分離度として、任意の期間を設定することができる。この任意の期間は、例えばオペレータによって設定されうる。つまり、オペレータは、設定部35を介して、ピーク分離度を記憶すべき所定の時間(任意の期間)を設定する。例えば、オペレータは所定の時間として14日間を設定すると、分析システム1の稼働すなわち分析装置11による成分分析を開始してから14日経過するまでは、情報処理装置12はステップS101からステップS102までを繰り返すこととなる。
【0072】
ステップS103において、情報処理装置12は、記憶部31に記憶された所定の時間分のピーク分離度に基づいて分離度データを生成し、ステップS104へ移行する。ここで、例えば、情報処理装置12は、過去14日分のピーク分離度の移動平均を分離度データとして生成する。また、情報処理装置12は、分離度データを記憶部31に記憶する。
【0073】
なお、情報処理装置12は、ステップS103において分離度データの生成に要する所定の時間分のピーク分離度として、最短期間(最小データ数)と最長期間(最大データ数)とを設定することができる。これら最短期間および最長期間は、例えばオペレータによって設定されうる。つまり、オペレータは、設定部35を介して、ピーク分離度を記憶すべき所定の時間として最短期間および最長期間を設定する。
【0074】
ここで、最短期間は、ステップS103において分離度データの生成に要するピーク分離度の最小データ数であって、S102において記憶すべき所定の時間分のピーク分離度として設定されるものに相当する。情報処理装置12は、最短期間分のピーク分離度を記憶するまで、ステップS101からステップS102までを繰り返し、ピーク分離度を蓄積する。つまり、情報処理装置12は、最短期間分のピーク分離度を記憶部31に記憶すると(S102においてYESと判断すると)、ステップS103へ移行することができる。よって、例えば、情報処理装置12は、最短期間として、所定の時間経過後の予測ピーク分離度を所望の精度で予測することができる分離度データに応じた期間(データ数)を設定する。
【0075】
また、最大期間は、ステップS103において分離度データの生成に利用するピーク分離度の最大データ数であって、所定の時間経過後の予測ピーク分離度を十分な精度で予測するためのものである。情報処理装置12は、最短期間から最長期間の間における所定の時間分(蓄積された分)のピーク分離度に基づいて、当該所定の時間分の分離度データを生成する。よって、例えば、情報処理装置12は、最長期間として、所定の時間経過後の予測ピーク分離度を所望の精度で予測することができる分離度データに応じた期間(データ数)を設定する。なお、記憶部31に最長期間よりも長い期間分のピーク分離度が記憶されている場合には、情報処理装置12は、例えば、直近(最新)の最長期間分のピーク分離度に基づいて、分離度データを生成する。
【0076】
ステップS104において、情報処理装置12は、記憶部31に記憶された分離度データに基づいてピーク分離度を予測し、ステップS105へ移行する。このとき、情報処理装置12は、カルマンフィルタを用いて第一時間経過後(例えば30日後)の予測ピーク分離度を演算し、この予測ピーク分離度を記憶部31に記憶する。
【0077】
ステップS105において、情報処理装置12は、記憶部31に記憶された第一時間経過後(例えば30日後)の予測ピーク分離度と閾値とを比較する。ここで、第一時間経過後(例えば30日後)の予測ピーク分離度が閾値よりも大きい(S105においてYESである)場合には、判定部35はカラム22が第一時間経過後(例えば30日後)に健全な状態である、または、第一時間経過後(例えば30日後)に交換時期でないと判定し、ステップを終了する。
【0078】
一方、第一時間経過後(例えば30日後)の予測ピーク分離度が閾値以下である(S105においてNOである)場合には、判定部35はカラム22が第一時間経過後(例えば30日後)に健全な状態でない、または、第一時間経過後(例えば30日後)に交換時期であると判定し、ステップS106へ移行する。
【0079】
ステップS106において、出力部36は、オペレータに対してカラム22が第一時間経過後(例えば30日後)に健全な状態でないこと、または、カラム22が第一時間経過後(例えば30日後)に交換時期となる(交換時期が近付いている)ことを通知し、ステップを終了する。
【0080】
本実施形態に係る分析システムの動作の変形例について、
図8を参照して説明する。
【0081】
ステップS201からステップS204までは、前述したステップS101からステップS104までの同じであるため、説明を省略する。
【0082】
ステップS205において、情報処理装置12は、記憶部31に記憶された第一時間経過後(例えば30日後)の予測ピーク分離度と閾値とを比較する。ここで、第一時間経過後(例えば30日後)の予測ピーク分離度が閾値よりも大きい(S205においてYESである)場合には、判定部35はカラム22が第一時間経過後(例えば30日後)に健全な状態である、または、第一時間経過後(例えば30日後)に交換時期でないと判定し、ステップS206へ移行する。
【0083】
一方、第一時間経過後(例えば30日後)の予測ピーク分離度が閾値以下である(S205においてNOである)場合には、判定部35はカラム22が第一時間経過後(例えば30日後)に健全な状態でない、または、第一時間経過後(例えば30日後)に交換時期であると判定し、ステップS207へ移行する。そして、ステップS207において、出力部36は、オペレータに対してカラム22が第一時間経過後(例えば30日後)に健全な状態でなくなること、または、カラム22が第一時間経過後(例えば30日後)に交換時期となる(交換時期が近付いている)ことを通知し、ステップを終了する。
【0084】
ステップS206において、情報処理装置12は、記憶部31に記憶された分離度データに基づいてピーク分離度を予測し、ステップS208へ移行する。このとき、情報処理装置12は、線形回帰分析を用いて第一時間よりも長い第二時間経過後(例えば90日後)の予測ピーク分離度を演算し、この予測ピーク分離度を記憶部31に記憶する。
【0085】
ステップS208において、情報処理装置12は、記憶部31に記憶された第二時間経過後(例えば90日後)の予測ピーク分離度と閾値とを比較する。ここで、第二時間経過後の予測ピーク分離度と比較する閾値は、ステップS205において第一時間経過後の予測ピーク分離度と比較する閾値と、同じ数値であってもよく、異なる数値であってもよい。
【0086】
そして、第二時間経過後(例えば90日後)の予測ピーク分離度が閾値よりも大きい(S208においてYESである)場合には、判定部35はカラム22が第二時間経過後(例えば90日後)に健全な状態である、または、第二時間経過後(例えば90日後)に交換時期でないと判定し、ステップを終了する。
【0087】
一方、第二時間経過後(例えば90日後)の予測ピーク分離度が閾値以下である(S208においてNOである)場合には、判定部35はカラム22が第二時間経過後(例えば90日後)に健全な状態でない、または、第二時間経過後(例えば90日後)交換時期であると判定し、ステップS209へ移行する。
【0088】
ステップS209において、出力部36は、オペレータに対してカラム22が第二時間経過後(例えば90日後)に健全な状態でないこと、または、カラム22が第二時間経過後(例えば90日後)に交換時期となる(交換時期が近付いている)ことを通知し、ステップを終了する。
【0089】
分析システム1は、上述した動作を行うことにより、カラム22の状態を正確に診断することができる。オペレータは、この診断結果に応じて、例えば、カラムが異常状態となる前に新しいカラムを発注するなどの対応を取ることができるので、カラムが異常状態となる前に、または、カラムが異常状態となると直ぐに、新しいカラムと交換作業を行うことができる。
【0090】
本実施形態に係る分析システムの変形例として、例えば、
図9に示すように、分析システム1は、カラムの発注を行う購買システム2と接続されていてもよい。これにより、カラム12の納期と分析システム1による診断結果または予測結果とに基づいて、適切な発注時期を予測することができる。また、購買システムと接続することによって、分析システム1による診断結果または予測結果に応じたカラム12の自動発注を行う仕組みを構築することができる。その結果、長期にわたって効率的で信頼性のあるシステム稼働が可能となる。
【符号の説明】
【0091】
1 分析システム
2 購買システム
11 分析装置
12 情報処理装置
21 試料導入部
22 カラム
23 成分検出器
31 記憶部
32 演算部
33 予測部
34 判定部
35 設定部
36 出力部
36A 第一画面
36B 第二画面
36C 第三画面