(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154789
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】在庫供給計画方法及び在庫供給計画システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20230101AFI20231013BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064353
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】ロジスティード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岸川 直子
(72)【発明者】
【氏名】細田 順子
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 美保
(72)【発明者】
【氏名】小山 英晃
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 慶人
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】物流センタ等の拠点の能力や制約を遵守し、かつ、供給元が受諾可能な発注条件の変更案を生成する。
【解決手段】演算装置とメモリを有する計算機が、拠点の物品毎の在庫量を示す初期在庫量、物品毎に拠点の能力の上限に関する能力上限指標を予め設定した能力情報、物品毎に拠点に対する単位負荷を予め設定した単位負荷情報と、物品毎に予め設定した発注条件を取得する第1のステップと、発注条件の上限を満たす物品毎の在庫供給計画を初期在庫供給計画として算出する第2のステップと、物品毎に能力が削減するように発注条件の変更案を発注条件変更指標に基づいて算出し、発注条件変更指標による在庫供給計画を変更後在庫供給計画として算出する第3のステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算装置と前記演算装置がアクセス可能なメモリとを有する計算機が、拠点に保管する在庫の計画を立案する在庫供給計画方法であって、
前記計算機が、前記拠点の物品毎の在庫量を示す初期在庫量と、前記物品毎に前記拠点の能力の上限に関する能力上限指標を予め設定した能力情報と、前記物品毎に前記拠点に対する単位負荷を予め設定した単位負荷情報と、前記物品毎に予め設定した発注条件を取得する第1のステップと、
前記計算機が、前記発注条件の上限を満たす前記物品毎の在庫供給計画を初期在庫供給計画として算出する第2のステップと、
前記計算機が、前記物品毎に前記能力が削減するように発注条件の変更案を発注条件変更指標に基づいて算出し、前記発注条件変更指標による在庫供給計画を変更後在庫供給計画として算出する第3のステップと、
を含むことを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項2】
請求項1に記載の在庫供給計画方法であって、
前記第3のステップでは、
前記初期在庫供給計画において前記能力上限指標に対して前記物品が使用する前記能力の比率を第1の能力占有率として算出し、前記変更後在庫供給計画において前記能力上限指標に対して前記物品が使用する前記能力を第2の能力占有率として算出し、前記第1の能力占有率から前記第2の能力占有率を差し引いた値を削減量として算出し、当該削減量を前記発注条件変更指標の値とすることを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項3】
請求項2に記載の在庫供給計画方法であって、
前記第3のステップでは、
前記発注条件の変更案を、前記能力情報を満たすように前記物品別に探索することを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項4】
請求項2に記載の在庫供給計画方法であって、
前記計算機が、前記発注条件の変更案を物品別に前記削減量の大きい順にソートした順で選択し、前記物品の供給元に前記選択した発注条件の変更案を送信して、当該発注条件の変更案の受諾の可否を交渉する第4のステップを、さらに含むことを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項5】
請求項4に記載の在庫供給計画方法であって、
前記第4のステップでは、
前記発注条件の変更案が受諾されない場合には、前記削減量の大きい順に次の発注条件の変更案について交渉を繰り返すことを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項6】
請求項1に記載の在庫供給計画方法であって、
前記計算機が、前記発注条件の変更案が前記能力情報を満足しない場合には、前記拠点の外部のリソースを利用する外部リソース手配案を算出する第5のステップを、さらに含むことを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項7】
請求項6に記載の在庫供給計画方法であって、
前記第5のステップでは、
前記外部リソース手配案に基づいて、前記外部のリソースの提供先に前記外部のリソースを手配する指示を送信することを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項8】
請求項1に記載の在庫供給計画方法であって、
前記第2のステップでは、
前記能力情報を満たす商品別、日別かつ経路別の輸送量を決定し、前記輸送量から入出庫量と在庫量を計算し、前記輸送量と入出庫量及び在庫量からなる在庫供給計画を算出することを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項9】
請求項1に記載の在庫供給計画方法であって、
前記第2のステップでは、
前記能力情報の前記拠点の能力上限指標として、在庫保管能力とCO2排出量能力と入庫能力及び出庫能力のうち少なくとも一つを含み、前記発注条件に加えて前記能力上限指標を満たす前記物品毎の在庫供給計画を算出することを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項10】
請求項8に記載の在庫供給計画方法であって、
前記第2のステップでは、
前記在庫供給計画を実施した場合のコストを総コストとして算出し、前記在庫供給計画を実施した場合のCO2排出量を算出し、前記在庫供給計画を実施した場合の在庫金額を算出し、前記在庫供給計画を実施した場合の総コストとCO2排出量と在庫金額とキャッシュフローの少なくとも1つを算出し、前記総コストとCO2排出量と在庫金額のいずれかが最小、または、前記キャッシュフローが最大の前記在庫供給計画を出力することを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項11】
演算装置と前記演算装置がアクセス可能なメモリとを有する計算機を含む在庫供給計画システムであって、
前記計算機は、
前記演算装置が、拠点に保管する物品毎の在庫量を示す初期在庫量と、前記物品毎に前記拠点の能力の上限に関する能力上限指標を予め設定した能力情報と、前記物品毎に前記拠点に対する単位負荷を予め設定した単位負荷情報と、前記物品毎に予め設定した発注条件を取得し、
前記演算装置が、前記発注条件の上限を満たす前記物品毎の在庫供給計画を初期在庫供給計画として算出し、
前記演算装置が、前記物品毎に前記能力が削減するように発注条件の変更案を発注条件変更指標に基づいて算出し、前記発注条件変更指標による在庫供給計画を変更後在庫供給計画として算出することを特徴とする在庫供給計画システム。
【請求項12】
請求項11に記載の在庫供給計画システムであって、
前記演算装置が前記変更後在庫供給計画を算出する際には、
前記初期在庫供給計画において前記能力上限指標に対して前記物品が使用する前記能力の比率を第1の能力占有率として算出し、前記変更後在庫供給計画において前記能力上限指標に対して前記物品が使用する前記能力を第2の能力占有率として算出し、前記第1の能力占有率から前記第2の能力占有率を差し引いた値を削減量として算出し、当該削減量を前記発注条件変更指標の値とすることを特徴とする在庫供給計画システム。
【請求項13】
請求項12に記載の在庫供給計画システムであって、
前記演算装置が前記変更後在庫供給計画を算出する際には、
前記発注条件の変更案を、前記能力情報を満たすように前記物品別に探索することを特徴とする在庫供給計画システム。
【請求項14】
請求項12に記載の在庫供給計画システムであって、
前記演算装置が、前記発注条件の変更案を物品別に前記削減量の大きい順にソートした順で選択し、前記物品の供給元に前記選択した発注条件の変更案を送信して、当該発注条件の変更案の受諾の可否を交渉することを特徴とする在庫供給計画システム。
【請求項15】
請求項14に記載の在庫供給計画システムであって、
前記演算装置が、前記発注条件の変更案が受諾されない場合には、前記削減量の大きい順に次の発注条件の変更案について交渉を繰り返すことを特徴とする在庫供給計画システム。
【請求項16】
請求項1に記載の在庫供給計画方法であって、
前記第1のステップでは、
前記単位負荷情報には前記物品毎に前記拠点の欠品率の上限が予め設定され、
前記第2のステップでは、
前記発注条件と前記欠品率の上限を満たす前記物品毎の在庫供給計画を初期在庫供給計画として算出し、
前記第3のステップでは、
前記物品毎に発注条件の変更許容範囲を予め設定した発注条件変更範囲情報を取得して、前記物品毎に前記能力が削減するように前記変更許容範囲内で発注条件の変更案を発注条件変更指標に基づいて算出することを特徴とする在庫供給計画方法。
【請求項17】
請求項11に記載の在庫供給計画システムであって、
前記単位負荷情報には前記物品毎に前記拠点の欠品率の上限が予め設定され、
前記初期在庫供給計画は、前記発注条件と前記欠品率の上限を満たす前記物品毎の在庫供給計画として算出され、
前記発注条件の変更案は、前記物品毎に発注条件の変更許容範囲を予め設定した発注条件変更範囲情報に基づいて、前記物品毎に前記能力が削減するように前記変更許容範囲内で前記発注条件変更指標に基づいて算出することを特徴とする在庫供給計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫供給計画方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の商品を取り扱い、保管や輸送又はCO2の排出量などの能力上限のある物流センタでは、従来、商品別に供給元と合意した発注条件に基づき、全商品について平均の在庫日数が基準を満たすように管理している。
【0003】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術が知られている。特許文献1には、発注側から供給元が受信した発注条件に基づき、供給元にとって効用の大きい発注条件の変更案を生成し、発注側に変更案を送信する交渉システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では発注側である物流センタの能力を考慮しないため、生成された発注条件の変更案で発注した場合に、物流センタの能力を超過しうる問題がある。特に、物流センタと供給元が合意済の発注条件のまま在庫を適正化すると、物流センタの保管能力等の能力を超過する場合がある。
【0006】
しかしながら、能力の超過を防ぐために発注条件の大幅な変更を供給元に依頼することは難しい、という問題がある。また仮に、供給元が発注条件の大幅な変更を許容してロットあたりの数量を削減して保管能力を満足できたとしても、入庫回数の増大により入庫作業量が物流センタの能力を超えたり、輸送や入庫作業に伴うCO2排出量が物流センタに割り当てられた制約を超えたりすることが発生する場合がある。
【0007】
また、発注条件の小幅な変更を複数の供給元に依頼して物流センタの能力超過を防ぐことも考えられるが、様々な商品について複数の供給元とそれぞれ交渉するためには多大な労力及び工数を要するという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、物流センタ等の拠点の能力や制約を遵守し、かつ、供給元が受諾可能な発注条件の変更案を生成することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。本発明は、演算装置と前記演算装置がアクセス可能なメモリとを有する計算機が、拠点に保管する在庫の計画を立案する在庫供給計画方法であって、前記計算機が、前記拠点の物品毎の在庫量を示す初期在庫量と、前記物品毎に前記拠点の能力の上限に関する能力上限指標を予め設定した能力情報と、前記物品毎に前記拠点に対する単位負荷を予め設定した単位負荷情報と、前記物品毎に予め設定した発注条件を取得する第1のステップと、前記計算機が、前記発注条件の上限を満たす前記物品毎の在庫供給計画を初期在庫供給計画として算出する第2のステップと、前記計算機が、前記物品毎に前記能力が削減するように発注条件の変更案を発注条件変更指標に基づいて算出し、前記発注条件変更指標による在庫供給計画を変更後在庫供給計画として算出する第3のステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、商品別に、発注条件の変更案による物流センタ等の拠点における能力占有率の削減量を定量評価することで、削減量の大きい案から順に供給元と効率良く交渉できる。その結果、拠点の能力を遵守し、かつ、供給元が受諾可能な発注条件を決定できる。
【0011】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例を示し、在庫供給計画システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例を示し、商品情報の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例を示し、拠点別の能力情報の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例を示し、商品別の発注条件情報の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例を示し、商品別の発注条件の変更許容範囲情報の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施例を示し、日別・商品別の需要予測情報の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例を示し、商品別・拠点別の初期在庫情報の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施例を示し、発注条件変更案情報の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施例を示し、交渉結果情報の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例を示し、外部リソース手配案情報の一例を示す図である。
【
図11】本発明の実施例を示し、在庫供給計画処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施例を示し、発注条件変更案の確認画面の一例を示す図である。
【
図13】本発明の実施例を示し、在庫供給計画の算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施例を示し、評価処理の一例を示す図である。
【
図15】本発明の実施例を示し、在庫供給計画の確認画面の一例を示す図である。
【
図16】本発明の実施例を示し、発注条件の変更案の確認画面の他の例を示す図である。
【
図17】本発明の実施例を示し、自動交渉の実行状況の確認画面の一例を示す図である。
【
図18】本発明の実施例を示し、外部リソースの確認画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施例の在庫供給計画システム1の構成の一例を示すブロック図である。在庫供給計画システム1は、商品や物品を保管する倉庫や物流センタなどの物流に関する拠点における商品(又は物品)在庫の供給計画を生成する。
【0014】
本発明の実施例の在庫供給計画システム1は、プロセッサ(CPU)11と、通信インターフェース12と、入出力インターフェース13及びメモリ14を有する計算機によって構成される。プロセッサ11、通信インターフェース(図中、通信IF)12、入出力インターフェース(図中、入出力IF)13及びメモリ14は、バスなどの通信経路(図示せず)によってアクセス可能となるよう互いに接続されている。
【0015】
プロセッサ11は、メモリ14に格納されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサ11が、各種プログラムを実行することによって、在庫供給計画システム1の各種機能が実現される。なお、プロセッサ11がプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算デバイス(例えば、ハードウェアによるFPGAやASIC)で実行してもよい。
【0016】
メモリ14は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶デバイスであるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶デバイスであり、プロセッサ11が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータ(例えば、記憶装置2から読み出したデータ)を一時的に格納する。
【0017】
例えば、プロセッサ11が発注条件変更案立案プログラムを実行することによって発注条件変更案立案部f1として機能する。発注条件変更案立案部f1は、商品(又は物品)別の発注条件情報をはじめとする各種データに基づいて、発注条件変更案を立案する。
【0018】
また、プロセッサ11が交渉プログラムを実行することによって交渉部f2として機能する。交渉部f2は、発注条件変更案情報o1をはじめとする各種データに基づいて、供給元に発注条件の変更の可否を交渉する。
【0019】
なお、供給元は、発注条件の決定権を有する団体や組織とすることができ、例えば、工場の生産計画システム6や物流拠点の出庫管理システム7とすることができる。
【0020】
また、プロセッサ11が画面生成プログラムを実行することによって、画面生成部f3として機能する。画面生成部f3は、決定した能力占有率と、発注条件変更案と、その交渉結果や能力占有率をユーザが視認できるよう、画面に表示するためのデータを生成する。
【0021】
通信インターフェース12は、所定のプロトコルに従って、ネットワーク9を介して他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0022】
入出力インターフェース13には、ディスプレイ装置(図示省略)やプリンタ(図示省略)などの出力装置、及びキーボード(図示省略)や、マウス(図示省略)、タッチパネル(図示省略)などの入力装置が接続され、プログラムの実行結果をユーザが視認可能な形式で出力し、ユーザからの入力を受けるインターフェースである。
【0023】
プロセッサ11が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介してサーバに提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性のメモリ14や補助記憶装置に格納される。このため、在庫供給計画システム1は、ネットワークやリムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0024】
在庫供給計画システム1は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムである。あるいは、複数の物理的な計算機資源上に構築された仮想計算機上で在庫供給計画システム1が稼働してもよい。
【0025】
在庫供給計画システム1は、記憶装置2と接続されている。記憶装置2は、例えば、磁気記憶装置(HDD)や、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶デバイスを有し、プロセッサ11がプログラムの実行時に使用するデータ等を格納する。
【0026】
例えば、記憶装置2は、在庫供給計画システム1が演算処理に使用するデータである、商品情報i1や、拠点別能力情報i2、商品別発注条件情報i3、商品別の発注条件の変更許容範囲情報i4、日別・商品別需要予測情報i5、商品別・拠点別初期在庫情報i6を格納する。なお、日別・商品別の「・」は「及び」と読み替えてもよい。なお、他の構成要素の表記についても同様である。
【0027】
また、記憶装置2は、在庫供給計画システム1が演算処理の結果として出力する発注条件変更案情報o1、交渉結果情報o2、外部リソース手配案情報o3及び在庫供給計画o4を格納する。在庫供給計画o4は、日別・商品別・経路別の輸送量情報o41と、日別・車型別・経路別の輸送台数情報o42と、日別・商品別・拠点別の入出庫・在庫量情報o43を含む。これらの情報の詳細については後述する。また、記憶装置2は、プロセッサ11が実行するプログラムを格納してもよい。
【0028】
図1に示す構成では、在庫供給計画システム1とは別に記憶装置2を設けたが、データを格納する不揮発性記憶デバイスである補助記憶装置を在庫供給計画システム1内に設けてもよい。
【0029】
在庫供給計画システム1は、通信インターフェース12及びネットワーク9を介して、他のシステム(例えば、客先POSシステム3、発注管理システム4、外部リソース管理システム5、生産計画システム6,出庫管理システム7,輸送管理システム8)と接続してもよい。
【0030】
客先POSシステム3は、販売店における商品の販売を管理するためのシステムであり、販売店が商品を発注するためにも使用される。客先POSシステム3は、例えば、商品の発注者が運用する。
【0031】
発注管理システム4は、供給元別・商品別の発注を管理するためのシステムであり、発注条件を供給元と取り決めたり、拠点から供給元に商品を発注したりするためにも使用される。発注管理システム4は、例えば、商品の発注者が運用する。
【0032】
外部リソース管理システム5は、輸送のための外部リソースである庸車や、保管のための外部リソースである外部倉庫や、作業のための外部リソースである作業員等を手配及び管理するためのシステムである。外部リソース管理システム5は、例えば、物流センタの管理者等が運用してもよいし、物流センタの外部の組織で運用するようにしてもよい。
【0033】
生産計画システム6は,工場などの各拠点における商品の生産を計画するためのシステムである。生産計画システム6は、例えば、商品の供給元が運用する。出庫管理システム7は,工場や倉庫などの各拠点における商品の出庫を管理するためのシステムである。出庫管理システム7は、例えば、供給元や物流センタで運用することができる。輸送管理システム8は、輸送業者が輸送手段の運行を管理するためのシステムである。なお、輸送管理システム8は、例えば、輸送業者の他に供給元や物流センタで運用することができる。
【0034】
例えば、在庫供給計画システム1は、客先POSシステム3から送信された商品の需要予測情報や発注情報を取り纏めて、各商品の到着要求日と予測要求量を生成する。そして、在庫供給計画システム1は、その予測要求量と商品別発注条件情報i3と商品別・拠点別初期在庫情報i6に基づき、拠点別能力情報i2に設定された能力を日々遵守するコストが最小となる在庫供給計画o4を立案して出力する。
【0035】
在庫供給計画システム1は、出力した在庫供給計画が物流センタの能力を超過する場合は、発注条件変更案情報o1に基づいて発注管理システム4において発注条件の変更を自動交渉する。在庫供給計画システム1は、自動交渉の結果である交渉結果情報o2を出力したり、交渉後も能力を超過する場合は外部リソース手配案情報o3を出力することができる。
【0036】
在庫供給計画システム1から出力された外部リソース手配案情報o3に基づいて、外部リソース管理システム5は、上述したような外部のリソース(輸送、保管、労力)を手配できる。
【0037】
在庫供給計画システム1から出力された交渉結果情報o2に基づいて、生産計画システム6が生産計画を立案又は変更したり、出庫管理システム7が出庫指示を生成又は変更したり、輸送管理システム8が配車の指示を生成又は変更したりすることができる。
【0038】
図2は、商品情報i1の一例を示す図である。商品情報i1は、少なくとも、商品名111と、単位容積112と、単位CO2排出量113と、欠品率上限114を一つのレコードに含む。
【0039】
商品名111は、商品の名称(又は識別子)を格納するデータ項目である。また、単位容積112は、拠点の能力に対して商品が占有する容積を計算するために必要となる商品の単位数量あたりの容積(又は体積)を格納する。単位CO2排出量113は、商品の単位数量あたりの入荷から出荷までの物流業務におけるCO2の排出量を格納する。
【0040】
欠品率上限114は、商品に対して許容可能な欠品率の上限値を格納する。なお、欠品率は商品毎に予め設定された在庫量に対して不足している量の比率を示す。また、商品情報i1の各項目の値は予め設定される。
【0041】
また、商品情報i1には、図示はしないが、単位数量あたりの重量である「単位重量」などの指標値のデータ項目を有してもよい。本実施例では、以降、単位数量をpcs(pieces)としているが、ケースやパレットなどでもよい。また、本実施例では容積の単位は才としているが、リットルなど他の単位でもよい。
【0042】
なお、単位容積112と、単位CO2排出量113と、欠品率上限114は、拠点に対する負荷の情報であり、予め設定された単位あたりの負荷を示すので単位負荷とすることができ、商品情報i1は単位負荷情報として扱うことができる。
【0043】
図3は、拠点別能力情報i2の一例を示す図である。拠点別能力情報i2は、少なくとも、拠点名121と、住所122と、在庫保管容積上限123と、CO2排出量上限124と、入庫作業量上限125を一つのレコードに含む。
【0044】
拠点名121は、拠点(物流センタ)の名称を格納し、住所122は拠点の住所を格納する。在庫保管容積上限123は、当該拠点で保管可能な商品の容積の上限値を格納する。
【0045】
CO2排出量上限124は、当該拠点に割り当てられたCO2の年間排出量を格納する。入庫作業量上限125は、当該拠点に設定された1日あたりの商品の最大取扱量を格納する。また、拠点名と日付の組合せに対して設定してもよい(図示せず)。なお、拠点別能力情報i2の各項目の値は予め設定される。
【0046】
また、拠点別能力情報i2には供給元からの入庫経路別に「輸送量上限」や、「輸送台数上限」などの輸送能力に関する上限を示す指標値のデータ項目を有してもよく、また、そのデータは入庫経路と日付の組合せに対して設定してもよい(図示せず)。拠点の地理的な位置を表す「住所」や、「緯度・経度」(図示せず)のデータ項目を有してもよい。
【0047】
また、拠点の能力としては、商品を保管する面積の上限や、入庫や出庫等の輸送の際に発生するCO2排出量に関する制約や、コストや入庫作業量の上限などを設定することもできる。
【0048】
図4は、商品別発注条件情報i3の一例を示す図である。商品別発注条件情報i3は、少なくとも、商品名131と、供給元拠点名132と、発注ロットサイズ133と、最低発注量134を一つのレコードに含む。
【0049】
商品名131は、商品の名称を格納する。供給元拠点名132は商品を出荷する拠点の名称を格納する。発注ロットサイズ133は、商品の発注単位である1ロットの数量を格納する。最低発注量134は、商品を発注する際の最低数量を格納する。なお、商品別発注条件情報i3の各項目の値は予め設定される。
【0050】
商品別発注条件情報i3には、上記の他に図示はしないが、リードタイムや、価格、発注サイクル、発注方式、発注点(又は発注タイミング)、基準在庫量などの、拠点から供給元へ発注する際の発注条件の設定値のデータ項目を有してもよい。
【0051】
図5は、商品別発注条件の変更許容範囲情報i4の一例を示す図である。商品別発注条件の変更許容範囲情報i4は、少なくとも、商品名141と、発注ロットサイズの変更許容範囲の下限142及び上限143と、最低発注量の変更許容範囲の下限144及び上限145を一つのレコードに含む。変更許容範囲情報i4の各項目の値は予め設定される。
【0052】
なお、上記変更許容範囲は、
図4の商品別発注条件情報i3で定義した発注条件毎に、変更許容範囲の上限及び下限を定めてもよい。上限及び下限は、比率やパーセントで設定してもよいし、絶対量で設定してもよい。
【0053】
図6は、日別・商品別需要予測情報i5の一例を示す図である。日別・商品別需要予測情報i5は、少なくとも、オーダID161と、到着要求日162と、商品名163と、着拠点名164と、予測要求量165と、需要予測誤差の分散166を一つのレコードに含む。
【0054】
オーダID161は予測情報の識別子を格納する。到着要求日162は、拠点に商品が到着すべき日付を格納する。商品名163は、需要予測対象の商品名を格納する。着拠点名164は、商品を搬入すべき拠点名を格納する。予測要求量165は、予測された商品の要求量を格納する。需要予測誤差の分散166には、誤差の分散の算出結果を格納する。
【0055】
なお、日別・商品別需要予測情報i5には、上記の項目の他、図示はしないが、予測日等のデータ項目を有してもよい。また、本実施例のように日別の需要予測ではなく、月別などの需要予測としてもよい。
【0056】
図7は、商品別・拠点別初期在庫情報i6の一例を示す図である。商品別・拠点別初期在庫情報i6は、少なくとも、商品名167と、拠点名168と、在庫量169を一つのレコードに含む。商品名167は、拠点に保管する商品の名称を格納する。拠点名168は、拠点の名称又は識別子を格納する。在庫量169は、商品の初期の在庫量を格納する。商品別・拠点別初期在庫情報i6の各項目の値は予め設定される。商品別・拠点別初期在庫情報i6では、商品と拠点の組合せ毎の初期在庫量を設定できる。
【0057】
商品別・拠点別初期在庫情報i6は、上記の他にも、拠点で発生するコストを計算するために、商品別・拠点別の単価情報を設定してもよい(図示せず)。商品をその拠点に保管する際にかかる保管単価や、その拠点で商品を入出庫するときにかかる作業単価である入出庫作業単価を設定してもよい(図示せず)。入庫作業単価と、出庫作業単価それぞれ別々に定義してもよい。
【0058】
また、輸送で発生するコストを計算するために、入庫経路別及び輸送タイプ別の単価情報を設定してもよい(図示せず)。輸送タイプは、車型やコンテナサイズ、鉄道・車両・船舶などの輸送方法などの組合せに対して設定してもよい。
【0059】
なお、商品別・拠点別初期在庫情報i6は、商品別・拠点別の現在の在庫量としてもよく、所定のタイミング(例えば、1日毎)で更新される。
【0060】
図8は、在庫供給計画システム1が出力する、発注条件変更案情報o1の一例を示す図である。発注条件変更案情報o1は、条件変更案#171と、商品名172と、発注ロットサイズ173と、最低発注量174と、保管能力占有率の最大値の変化量175と、入庫作業能力占有率の最大値の変化量176を一つのレコードに含む。
【0061】
条件変更案#171は、在庫供給計画システム1が付与した条件変更案の識別子を格納する。商品名172は、商品の名称(又は識別子)を格納する。発注ロットサイズ173は、変更後の発注条件での1ロットあたりの商品の数量を格納する。最低発注量174は、変更後の発注条件での1回の発注で注文可能な商品の数量の下限が格納される。
【0062】
保管能力占有率の最大値の変化量175は、当該変更案(変更後在庫供給計画)によって変化する保管能力の最大値に対する発注条件変更案の占有率の変化量を格納する。なお、変化量は、初期在庫供給計画の能力占有率から変更後在庫供給計画の能力占有率を差し引いた値である。例えば、在庫保管容積上限123が10万才の場合、単位容積が1.0(才/pcs)の商品では、在庫数を1万個削減した場合には削減率は-10pt(%)となる。
【0063】
また、入庫作業能力占有率の最大値の変化量176は、当該変更案によって変化する入庫作業の能力の最大値に対する変化量を格納する。
【0064】
本実施例の発注条件変更案立案部f1は、拠点別能力情報i2に設定された能力の上限(能力上限指標)に対して各商品が使用する各能力の比率を能力占有率(又は最大能力占有率)として算出する。
【0065】
発注条件変更案情報o1は、商品別に、発注条件の変更許容範囲を満たしながら能力占有率を削減するような条件変更案を0以上格納する。各条件変更案は、発注条件の設定値の案と、その設定値を使って発注したときの能力占有率の変化量を格納する。
【0066】
図示の例では、「商品A」の本来の発注条件は
図4で示したように、発注ロットサイズ133=「1000」、最低発注量134=「2000」であるが、変更案#171=「1」の場合、発注ロットサイズ173を「500」に削減し、最低発注量174を「1000」に削減する案を示す。
【0067】
そして、発注条件変更案情報o1には、この条件変更案#171=「1」を実施した場合の保管応力占有率の最大値の変化量175=「-10pt(%)」となって保管能力に対する占有率は削減される。しかし、発注ロットサイズ173が「500」に減少し、最低発注量174も「1000」に減少するため、拠点の入庫作業は増大する。このため、入庫作業能力占有率の最大値の変化量176は「+3pt」と増大することを示している。
【0068】
図9は、在庫供給計画システム1が出力する、交渉結果情報o2の一例を示す図である。交渉結果情報o2は、在庫供給計画システム1が生産計画システム6や出庫管理システム7あるいは輸送管理システム8と交渉した結果が格納される。
【0069】
交渉結果情報o2は、交渉順#181と、条件変更案#182と、能力占有率の最大値の変化量(保管183、入庫作業184)と、交渉開始時点の発注条件下での能力占有率の最大値(保管185、入庫作業186)と、交渉ステータス187を一つのレコードに含む。
【0070】
交渉順#181は、在庫供給計画システム1が実施している交渉の順序を格納する。条件変更案#182は、発注条件変更案情報o1の条件変更案#171の値が格納される。
【0071】
能力占有率の最大値の変化量のうち保管183は、交渉結果から算出した保管容積の最大値の変化量を格納する。保管容積の変化量は、拠点別能力情報i2の在庫保管容積上限123に対する保管容積(万才)の比率を百分率で示す。
【0072】
能力占有率の最大値の変化量のうち入庫作業184は、交渉結果から算出した入庫作業量の最大値の変化量を格納する。入庫作業量の変化量は、拠点別能力情報i2の入庫作業量上限125に対する作業量(pcs/日)の比率を百分率で示す。
【0073】
交渉開始時点の発注条件下での能力占有率の最大値のうち保管185は、交渉開始時点の発注量から算出した保管容積の能力占有率の最大値を格納する。保管容積の能力占有率の最大値は、拠点別能力情報i2の在庫保管容積上限123に対する保管容積(万才)の比率を百分率で示す。
【0074】
交渉開始時点の発注条件下での能力占有率の最大値のうち入庫作業186は、交渉開始時点の発注量から算出した入庫作業量の能力占有率の最大値を格納する。入庫作業量の能力占有率は、拠点別能力情報i2の入庫作業量上限125に対する作業量(pcs/日)の比率を百分率で示す。交渉ステータス187は、交渉の結果又は進捗状況を格納する。
【0075】
交渉結果情報o2は、条件変更案#182毎に交渉開始時と交渉結果の拠点別能力情報i2に対する能力占有率の変化量が格納される。
【0076】
図10は、在庫供給計画システム1が出力する、外部リソース手配案情報o3の一例を示す図である。外部リソース手配案情報o3は、処理対象の拠点のリソースが不足している場合に、外部のリソースを利用する手配案を保持する。
【0077】
外部リソース手配案情報o3は、能力タイプ191と、リソースタイプ192と、必要量193と、必要期間194と、手配案195と、総コスト増加量196と、手配交渉順#197と、手配交渉ステータス197を一つのレコードに含む。
【0078】
能力タイプ191は、不足しているリソースのカテゴリを格納する。図示の例では「保管」を示すが、この他に「輸送」や「入庫」あるいは「出庫」等の能力が格納される。リソースタイプ192は、不足しているリソースの種類を格納する。図示の例では「外部倉庫」を示すが、この他に「車両」や「作業員」等のリソースタイプが格納される。
【0079】
必要量193は、リソースタイプ192で必要とされる数量を格納する。必要期間194は、開始日と終了日を格納する。手配案195は、外部リソースの利用先の名称(又は識別子)を格納する。総コスト増加量196は、外部のリソースを使用する際に増加するコストを格納する。手配交渉順#197は、当該レコードの交渉を行う順序を格納する。手配交渉ステータス198は、外部リソースの交渉結果又は交渉状況を格納する。
【0080】
在庫供給計画o4について図示はしないが、商品名と発注日、入庫予定日時、各日付における数量、及び供給元等を含む情報で、日別・商品別・経路別の輸送量情報o41と、日別・車型別・経路別の輸送台数情報o42と、日別・商品別・拠点別の入出庫・在庫量情報o43を含むことができる。
【0081】
図11は、在庫供給計画システム1で行われる在庫供給計画処理の一例を示すフローチャートS1である。以下では、フローチャートS1の全体の概要を説明した後に、各ステップの処理について説明する。この処理は、所定のタイミング(例えば、1日毎)や管理者や利用者の指令に応じて実行される。
【0082】
まず、在庫供給計画システム1は、発注条件変更案立案部f1が処理対象の拠点を受け付けて、記憶装置2から入力データとして商品情報i1、拠点別能力情報i2、商品別発注条件情報i3、商品別発注条件の変更許容範囲情報i4、日別・商品別需要予測情報i5及び商品別・拠点別初期在庫情報i6を取得する(S10)。
【0083】
次に、発注条件変更案立案部f1は、
図4に示した供給元と在庫供給計画システム1で合意済の商品別発注条件情報i3下で、欠品率上限114を満たし、かつ、処理対象の拠点の能力(在庫保管容積上限123、CO2排出量上限124、入庫作業量上限125)を満たす在庫供給計画o4を算出する(S11)。
【0084】
すなわち、発注条件変更案立案部f1は、商品別・拠点別初期在庫情報i6と商品情報i1の欠品率上限114と、発注条件に基づいて、各商品の現在の在庫量に対して処理対象の拠点別能力情報i2を満足する在庫供給計画を1以上算出する。なお、発注条件変更案立案部f1は、拠点別能力情報i2の全てを満たす解がない場合には、在庫保管容積上限123とCO2排出量上限124及び入庫作業量上限125のいずれか一つを満たす在庫供給計画をパレート最適な在庫供給計画o4とすることができる。
【0085】
なお、発注条件変更案立案部f1が算出する在庫供給計画o4の生成については、周知又は公知の手法を用いることができる。また、発注条件変更案立案部f1は、拠点の外部のリソースを使用可能な場合には、処理対象の拠点の能力(在庫保管容積上限123、CO2排出量上限124、入庫作業量上限125)を満たす必要はない。この場合、発注条件変更案立案部f1は、欠品率上限114と、発注条件に基づいて在庫供給計画を1以上算出すればよい。
【0086】
次に、発注条件変更案立案部f1は、商品情報i1に登録された商品名111毎に、入力データとしての商品情報i1~商品別・拠点別初期在庫情報i6に基づき、商品名111毎の発注条件の変更許容範囲(i4)内で、拠点の能力占有率の削減量(変化量175又は変化量176)がパレート最適となる発注条件の条件変更案を算出して、発注条件変更案情報o1に格納する(S12)。なお、パレート最適となる発注条件の条件変更案で立案した在庫供給計画は変更後在庫供給計画としておく。また、商品毎の能力占有率の削減量は、発注条件の変更案を決定する際の発注条件決定指標となる。
【0087】
発注条件変更案立案部f1は、例えば、一つの商品について商品別発注条件の変更許容範囲情報i4に設定された変更許容範囲内で複数の条件変更案(すなわち変更後在庫供給計画)を算出することができる。すなわち、発注条件変更案立案部f1は、商品別の発注条件の変更案を、拠点別能力情報i2の上限を満たすように商品別で探索することができる。
【0088】
また、パレート最適は、変更後在庫供給計画で商品の能力占有率が拠点別能力情報i2に対して無駄なく配分された状態を示すものとする。
【0089】
次に、交渉部f2は、予め定めた終了条件を満たすまで、ステップS13からステップS19の処理を繰り返す。
【0090】
まず交渉部f2は、ステップS14の処理で供給元と合意済の商品別発注条件情報i3に基づく在庫計画での最大能力占有率に対し、発注条件の変更により拠点の能力(拠点別能力情報i2)を遵守でき、かつ、拠点別能力情報i2を超過している能力に対する占有率の削減量が最大となる条件変更案(変更後在庫供給計画)を選択する。
【0091】
交渉部f2は、発注条件変更案情報o1のうち未処理の発注条件の変更案の中から上記選択条件を満たす条件変更案#171を一つ選択する。ここで、交渉部f2は、発注条件変更案情報o1の発注条件の変更案について、削減量(変化量175又は176)の大きい順(降順)に商品別にソートして、削減量の大きい順に各商品の発注条件変更案を選択する。
【0092】
次に交渉部f2は、ステップS14で選択した発注条件変更案の交渉を、各商品毎の供給元に対して実行する(S15)。交渉部f2は、選択した発注条件変更案を供給元の生産計画システム6又は出庫管理システム7に送信して発注条件変更案の受諾の可否を問い合わせる。交渉部f2は、供給元から受諾の可否の回答を交渉結果として受信する。
【0093】
なお、供給元に対する発注条件変更案の交渉は、在庫供給計画システム1と生産計画システム6等の計算機同士の自動交渉でもよいが、管理者やオペレータが介在してもよい。なお、計算機同士で行う発注条件変更案の自動交渉は、在庫供給計画システム1が送信した発注条件変更案を供給元の計算機で受諾の可否を判定する構成が想定されるが、機械学習モデルを用いた自動交渉を利用してもよい。
【0094】
ステップS16では、交渉部f2が発注条件変更案の交渉の可否を判定し、交渉が成立した場合はステップS17の処理に進み、成立しない場合にはステップS19に進んでステップS13からの処理を繰り返す。すなわち、交渉部f2は、発注条件変更案の交渉を削減量の大きい順に実施して、交渉が成立するまで繰り返す。
【0095】
ステップS17では、交渉部f2が上記ステップS15で交渉が成立した発注条件変更案について、ステップS11で計算しておいた発注条件変更案の適用による占有率変化量(保管能力占有率の最大値の変化量175、入庫作業能力占有率の最大値の変化量176)に基づき、能力占有率の変更案を更新する。なお、拠点別能力情報i2には図示しない条件変更案の能力占有率を有し、交渉部f2は変化量176に応じた能力占有率を更新するようにしてもよい。
【0096】
次に、交渉部f2は、予め設定された終了条件を満たしたか否かを判定し、終了条件を満たしている場合にはループ処理を終了してステップS20へ進み、終了条件を満たしていない場合にはステップS13に戻って新たな発注条件変更案で上記ループ処理を実行する。
【0097】
なお、ステップS13~S19のループ処理の所定の終了条件は、例えば、全ての処理対象の商品の発注条件変更が拠点別能力情報i2を満たしている場合や、ステップS15で実施すべき交渉が全て完了している場合、あるいはループ処理の回数が予め設定された回数を超えた場合とすることができる。
【0098】
次に、交渉部f2は、ステップS13~S19のループで交渉が成立した全ての発注条件変更案に対応する商品別発注条件情報i3を変更する(S20)。
【0099】
ステップS21では、交渉部f2が上記発注条件の変更を適用した商品別発注条件情報i3で生成した在庫供給計画o4が拠点の能力上限を満たすか否かを判定する。交渉部f2は、生成され在庫供給計画o4が拠点別能力情報i2の能力の上限以内であるか否かを判定する。
【0100】
交渉部f2は、在庫供給計画o4が拠点別能力情報i2の能力以内であれば能力上限を満たすと判定して処理を終了する。一方、交渉部f2は、在庫供給計画o4が能力上限を超える場合には、ステップS22で処理対象の拠点以外の外部リソースを利用するため、超過分を補う外部リソースの必要量を計算し、外部のリソースを手配する(S22)。
【0101】
上記の処理によって、在庫供給計画システム1は、物流センタ等の拠点の能力を遵守し、かつ、供給元が受諾可能な発注条件の変更案を生成することが可能となるのである。
【0102】
次に、上記ステップS10で行われる処理の詳細を説明する。発注条件変更案立案部f1が取り込んだ入力データから、画面生成部f3が入力・確認画面の表示データを生成し、入出力インターフェース13から外部の計算機へ表示データを出力してディスプレイ装置(図示省略)などに表示してもよい。
【0103】
図12は発注条件変更案の立案用データの入力・確認画面d1の一例を示す図である。入力・確認画面d1の表示データは、画面生成部f3で生成される。入力・確認画面d1は、拠点別能力情報i2の内容を表示する拠点別の能力情報の領域d11と、商品別発注条件情報i3の内容を表示する商品別の発注条件情報の領域d12と、入力データの編集ボタンd13と、条件変更案の立案の実行ボタンd14を含む。
【0104】
入力・確認画面d1では、拠点別能力情報i2の内容や商品別発注条件情報i3の内容を編集することができ、入力データの編集ボタンd13を操作することによって入力データを編集又は更新することができる。
【0105】
在庫供給計画システム1の利用者や管理者は、入力データの編集又は確認が終了した後に、条件変更案の立案の実行ボタンd14を操作することによって
図11に示したステップS10以降の処理を開始することができる。
【0106】
次に、ステップS11で行われる処理の詳細を説明する。
図2に示したステップS11では、発注条件変更案立案部f1が、供給元と在庫供給計画システム1で合意済の商品別発注条件情報i3下で、欠品率上限114を満たし、かつ、処理対象の拠点の能力を満たす在庫供給計画o4を出力する。
【0107】
発注条件変更案立案部f1は、商品情報i1に登録された商品を対象に、拠点別能力情報i2と、供給元と合意済の商品別発注条件情報i3と、日別・商品別需要予測情報i5と、商品別・拠点別初期在庫情報i6に基づき、合意済の発注条件下で、欠品率上限を満たし、かつ、処理対象の拠点の能力を満たす在庫供給計画o4を立案する。この在庫供給計画の算出は、
図13に示すフローチャートS2の処理で行う。
【0108】
まず、ステップS21では、発注条件変更案立案部f1が供給元と合意済の商品別発注条件情報i3に従い、商品別・拠点別初期在庫情報i6に基づき、拠点別能力情報i2に設定された能力上限を満たすように、日別・商品別・経路別の輸送量情報o41と、日別・車型別・経路別の輸送台数情報o42と、日別・商品別・拠点別の入出庫・在庫量情報o43からなる在庫供給計画o4を後述するように立案する。
【0109】
在庫供給計画o4の立案方法としては、例えば、輸送量・輸送台数・入出庫量・在庫量・欠品量の取り得る全通りの組合せを発注条件変更案立案部f1が自動生成することで、全通りの在庫供給計画o4を生成してもよい。
【0110】
そして、発注条件変更案立案部f1は、生成した全通りの在庫供給計画o4から、各在庫供給計画についてS21からS26のステップを繰り返すことで全通りについて探索し、欠品率上限114を満たしKPI(Key Performance Indicator)が最良となる在庫供給計画o4を決定してもよい。ここで、KPIは、総コストの他、CO2排出量や、売上、キャッシュフロー、在庫量など複数存在してよい。
【0111】
他の在庫供給計画o4の立案方法としては、全通りの要求到着日(又は入庫予定日)が最も遅いオーダから順に、そのオーダの要求量を満たすよう、輸送量上限及び輸送台数上限まで余裕がある能力枠に輸送を割付けていき、輸送の能力枠を超える分は日付を前倒しして割付けることで、日別・商品別・経路別の輸送量を決定してもよい。
【0112】
出発日t、経路p、車型v、商品iについて、輸送量trans(t、p、v、i)に基づき、輸送台数vcnt(t、p、v)を次式で計算できる。以下に計算の要素及び数式を示す。
【0113】
・集合:
・計画対象の日付:0、1、~T
・商品の集合:I
・経路の集合:P
・拠点の集合:W
・拠点wに到着する経路の集合:Pw
・定数: 以下、t∈T
・商品iの単位容積:ItemUnitVol(i)
・車型vの積載容積上限:VehicleVolUB(v)
・輸送台数をvcnt(t、p、v)とした場合の計算式を以下に示す。
【0114】
【0115】
上記は積載量上限として容積のみ考慮したが、例えば重量も併せて考慮する場合は、積載容積上限について算出した輸送台数と、積載重量上限について算出した輸送台数の、いずれか多い方を用いればよい。
【0116】
また、上記の輸送量に基づき、日別・拠点別・商品別の入庫量は、上流からの全経路の輸送量を、同じ到着日・同じ商品について合算した値として算出できる。
【0117】
日別・拠点別・商品別の入庫量は、上流からの全経路の輸送量を、同じ到着日・同じ商品について合算した値として算出できる。日別・拠点別・商品別の廃棄量は、その日に、保管開始日からの保管日数が保管日数上限を超える在庫量を、拠点別・商品別に合算した値として算出できる。
【0118】
日付t、拠点w、商品iについて、日別・拠点別・商品別の在庫量stock(t、w、i)は、上記の方法で計算した入庫量in(t、w、i)、出庫量out(t、w、i)を用いて、次式で算出できる。
【0119】
・定数:
・初期在庫量:InitStock(w、i)
・在庫量stock(t、w、i)の計算式を次式に示す。
【0120】
【0121】
在庫の拠点別能力情報i2で在庫保管容積上限、入庫量上限、出庫量上限を定義する場合は、上限を超える分は、入庫量や出庫量を上限以下になるよう修正し、その分を欠品とすればよい。
【0122】
日別・拠点別・商品別の欠品量shortage(t、w、i)は、拠点wの下流の経路の集合Pについて、下流からの要求量requestQty(t、p、i)(p∈P)を用いて、次式で算出できる。
【0123】
・下流から拠点wへの出庫要求量requestQty(t、w、i)の計算式を次式に示す。
【0124】
【0125】
・欠品量shortage(t、w、i)の計算式は、次式で表すことができる。
【0126】
【0127】
次に、ステップS22の詳細を説明する。ステップS22では、上記ステップS21で立案した在庫供給計画o4を実行した場合の、拠点の能力占有率と、総コストやCO2排出量、売上、キャッシュフロー、在庫量などのKPIと、欠品率を発注条件変更案立案部f1が評価する。ステップS22で行われる処理の詳細を示すフローチャートS3を
図14に示す。
【0128】
まず、ステップS31で、発注条件変更案立案部f1は、商品別の日別・商品別需要予測情報i5における予測要求量165と、需要予測誤差の分散166に基づき、実需要として想定される日別・商品別・経路別の想定要求量を生成する。想定要求量は、予測要求量165に、需要予測誤差の分散166に基づき生成したランダムノイズなどを加算することで生成できる。
【0129】
次に、ステップS32で、発注条件変更案立案部f1は、上記ステップS31において、日別・商品別需要予測情報i5に基づき立案した在庫供給計画o4を実行した場合に、実需要がステップS31で生成した想定要求量であり需要の予実差が発生したときの、輸送量・輸送台数・入出庫量・在庫量・欠品量・出庫要求量を計画期間の初日から1日ずつ、最終日に達するまでシミュレーションする。
【0130】
例えば、ある日に需要が下振れした場合は、需要に備えた在庫の一部が余剰となり、次の日にローリングする。ある日に需要が上振れし、在庫を上回る需要となった場合は、欠品量が生じ、在庫量がゼロになり、次の日にローリングする。これを最終日まで繰り返すことで、需要予測の誤差を考慮した各物量の推移のシミュレーションができる。
【0131】
最後に、ステップS33で、発注条件変更案立案部f1はシミュレーションの結果で得られた輸送量・輸送台数・入出庫量・在庫量・欠品量・出庫要求量に基づき、次式で、能力占有率と、総コストなどのKPIと欠品率を以下のように評価する。
【0132】
・定数:
保管能力上限StockCapUpBound(w)、
CO2排出能力上限CO2EmissionCapUpBound(w)、
単位保管負荷StockUnitLoad(w、i)、
単位CO2排出負荷(保管分)CO2EmissionUnitLoadSt(w、i)、
単位CO2排出負荷(入庫分)CO2EmissionUnitLoadIn(w、i)、
単位CO2排出負荷(出庫分) CO2EmissionUnitLoadOut(w、i)、
単位CO2排出負荷(輸送分)CO2EmissionUnitLoadTrans(p、v)、
単位CO2排出負荷(廃棄分) CO2EmissionUnitLoadDisposal(w、i)、
輸送単価TransUnitCost(t、p、v)、
保管単価StockUnitCost(w、i)、
廃棄単価DisposalUnitCost(w、i)、
入庫作業単価InputUnitCost(w、i)、
出庫作業単価OutputUnitCost(w、i)、
単位簿価UnitBookValue(w、i)
【0133】
・変数:
保管能力占有率occupiedVolCapRatio、
CO2排出能力占有率occupiedCO2CapRatio、
総コストtotCost、
輸送コストtransCost、
保管コストstockCost、
廃棄コストdisposalCost、
入庫作業コストinputCost、
出庫作業コストoutputCost、
平均在庫金額aveInventory、
欠品率shortageRate
【0134】
上記の定数及び変数を用いた能力占有率occupiedVolCapRatio(w)の計算式は次式で表すことができる。
【0135】
【0136】
・KPIの計算式を総コストと平均在庫金額及び欠品率で評価する例を以下に示す。
【0137】
総コストtotCostの計算式は次式で表すことができる。:
【0138】
【0139】
平均在庫金額aveInventoryは、次式で表すことができる。
【0140】
【0141】
欠品率shortageRateの計算式は次式で表すことができる。
【0142】
【0143】
上記ではKPIを評価するための拠点の能力として保管とCO2の例を記したが、輸送能力や、入出庫作業能力についてKPIを評価してもよい。上記例ではKPIとして総コストと平均在庫金額の2つとする例を記したが、在庫量や、CO2排出量や売上量やキャッシュフローなどでもよい。上記の例では輸送コストは車両単位で加算されるとしたが、輸送量に比例して連続して加算される変動コストの項を追加してもよい。
【0144】
続いて、
図13に戻って、ステップS23からS25の詳細を説明する。まず、ステップS23では、発注条件変更案立案部f1が上記ステップS22で計算した欠品率(shortageRate)が欠品率上限114を満たすか否かを判定し、欠品率上限114を満たす場合には次のステップS24へ進み、欠品率上限114を超える場合にはステップS26に進む。
【0145】
次に、ステップS24では、発注条件変更案立案部f1が1つ以上の能力指標(保管、CO2排出量、など)について、能力超過量(拠点別能力情報i2の上限との差分)がゼロ又は暫定解より小さいか否かを判定して、小さい場合はステップS25に進み、そうでない場合にはステップS26に進む。
【0146】
次にステップS26では、発注条件変更案立案部f1が上記ステップS21で算出した在庫供給計画を、欠品率上限114を満たし、かつ、能力超過量がゼロ又は最小の暫定解としてメモリ14の所定の領域に保存する。
【0147】
図13の例では、発注条件変更案立案部f1が欠品率上限114を満たし、かつ、能力超過量がゼロ又は暫定解より小さい場合のみ算出した在庫供給計画を暫定解として保存しているが、それ以外の場合でも条件緩和案や次点の計画案として全て保存してもよい。また、能力超過量が暫定解と同値の場合は、いずれかのKPI指標が最良な解を、パレート最適な暫定解として保存してもよい。
【0148】
ステップS26では、発注条件変更案立案部f1が所定の終了条件を満足しているか否かを判定する。所定の終了条件としては、ステップS21からS26の処理の繰り返し回数上限や、能力超過量の改善率の下限値などを予め設定しておき、これらの上限を満たした場合は、終了条件を満たしたと判定してステップS27に進む。
【0149】
終了条件を満たさない場合は、上記ステップS21からS26の処理を繰り返す。その場合、ステップS21では、発注条件変更案立案部f1が、例えば全通り探索の場合は、未探索の輸送量・輸送台数・入出庫量・在庫量・廃棄量・欠品量の組合せの在庫供給計画を生成すればよい。もしくは、発注条件変更案立案部f1が暫定解の在庫供給計画のうち、一部の物量を増減して新しい在庫供給計画を生成してもよい。
【0150】
次に、ステップS27の詳細を説明する。発注条件変更案立案部f1は、上記のループ処理で得られた複数のパレート最適な暫定解を、供給元と合意済の発注条件下で、拠点別能力情報i2の能力を満たす在庫供給計画o4として保存する。画面生成部f3は保存された在庫供給計画o4から変更案の立案結果の確認画面の表示データを生成する。生成された表示データは、入出力インターフェース13から出力されてディスプレイ装置(図示省略)などに表示される。
【0151】
図15は、在庫供給計画の立案結果の確認画面d2の表示例を示す図である。確認画面d2は、能力遵守状況d21と時系列グラフd22及びKPIグラフd23の領域を含む。
【0152】
能力遵守状況d21は、立案したパレート最適な計画のグラフが表示される。このグラフは、横軸を入庫作業量、縦軸を保管量として保管能力と入庫作業能力の関係を示す。図示の実線のグラフは、入庫作業量と保管量がパレート最適となる在庫供給計画の一例を示す。図示のグラフでは、在庫供給計画が「計画1」では保管量が最大となり、在庫供給計画が「計画2」では入庫作業量が最大となる例を示す。なお、「計画1」は総コストが最小となる在庫供給計画o4であり、「計画2」は総コストが最小となる在庫供給計画o4である。なお、総コストは上記在庫供給計画を実施した場合のコストの予測値である。
【0153】
能力遵守状況d21は、保管量や入庫作業量の他にCO2排出量やコスト等の拠点に関する能力の相関関係を示すグラフで構成することができる。
【0154】
時系列グラフd22は、保管量と日付のグラフ及び入庫作業量と日付のグラフで構成する例を示す。図示のグラフでは、在庫供給計画が「計画1」では保管量が保管能力を超える日が発生する例を示す。また、在庫供給計画が「計画2」では入庫作業量が入庫作業能力を超える日が発生する例を示す。
【0155】
KPIグラフd23は、在庫供給計画o4の「計画1」と「計画2」のレーダチャートをそれぞれ示す例を示す。レーダチャートは、CO2排出量と在庫金額とキャッシュフロー及び総コストに関する指標で構成した例を示す。なお、レーダチャートは、図示のチャートに限定されるものではなく、拠点の能力を評価する指標を用いることができる。
【0156】
なお、画面生成部f3は、欠品率が欠品率上限114を満たし、かつ、総コストやCO2排出量や在庫金額や在庫量やキャッシュフローのKPIのうち1つ以上が最良となる在庫供給計画を出力するようにしてもよい。なお、KPIが最良となる条件は、総コストとCO2排出量と在庫金額及び在庫量については最小値であり、キャッシュフローについては最大値である。また、前述のように、パレート最適な計画案以外も保存しておいた場合は、他の計画案を表示してもよい。
【0157】
図11に戻ってステップS12の詳細を説明する。発注条件変更案立案部f1は、商品別に、商品別の発注条件の変更許容範囲情報i4の範囲内で、能力占有率の削減量がパレート最適となる条件変更案を算出する。
【0158】
ステップS12の処理は、発注条件変更案立案部f1が、顧客(供給元)と合意済の発注条件を、変更許容範囲情報i4の範囲内で変動させながら、ステップS11と同様の手法で、
図13のフローチャートS2に従い、発注条件下で拠点別能力情報i2の能力を満たす在庫供給計画を立案し、立案された在庫供給計画の能力占有率とKPIと欠品率を評価し、評価済の計画を在庫供給計画o4に保存することで実現できる。
【0159】
画面生成部f3は、保存された在庫供給計画o4に基づき、発注条件の変更案の立案結果の確認画面d3の表示データを生成し、入出力インターフェース13から出力してディスプレイ装置などに表示することもできる。
【0160】
図16は、発注条件の変更案の立案結果の確認画面d3の表示例を示す図である。確認画面d3は、パレート最適化結果d31と、時系列グラフd32と、変更案一覧d325と、変更案の立案の編集ボタンd33と、交渉開始ボタンd34を含む。
【0161】
パレート最適化結果d31は、立案されたパレート最適な在庫供給計画o4のグラフが表示される。このグラフは、横軸を入庫作業量、縦軸を保管量として「条件1」、「条件2」及び「条件3」についてパレート最適なグラフ上に表示する例を示す。
【0162】
時系列グラフd32は、保管量と日付の関係を示すグラフで、条件1~条件3の日付毎の保管量の変化と最大保管量の関係を示す例である。発注条件の変更前に比して発注条件の変更案(条件1)~変更案(条件3)は、商品の最大保管量を遵守することが可能なことを示している。
【0163】
変更案一覧d325は、発注条件変更案情報o1の内容を示すテーブルを表示する例を示す。
【0164】
なお、変更案一覧d325は、算出された全ての発注条件の変更案と、各案のインデックス番号と、条件変更内容及び能力占有率の最大値の変化量を表示してもよい。
【0165】
変更案の編集ボタンd33を押す(クリック)と、管理者やユーザが変更案を直接編集できるようにしてもよいし、交渉開始ボタンd34を押すと、
図11のステップS15に進むようにしてもよい。
【0166】
次に、
図11に戻ってステップS13~S19の詳細を述べる。交渉部f2は、ステップS13~S19の処理の進捗状況を保存し、保存内容に基づき画面生成部f3が自動交渉の実行状況の確認画面の表示データを生成し、入出力インターフェース13から出力してディスプレイ装置などに表示することもできる。
【0167】
図17は、自動交渉の実行状況の確認画面d4の表示例を示す図である。確認画面d4は、
図9に示した交渉結果情報o2を表示する領域d41と、交渉終了ボタンd42を含む。
【0168】
領域d41は、交渉の実行順(交渉順#181)に、交渉している条件変更案のインデックス番号(条件変更案#182)と、条件変更による能力占有率の最大値の変化量(保管183、入庫作業184)と、ステップS15の交渉処理の開始時点での発注条件下での能力占有率の最大値(保管185、入庫作業186)と、交渉ステータス187を表示してもよい。また、交渉終了ボタンd42を押すと、交渉処理を途中で終了し、ステップS20に進むようにしてもよい。
【0169】
次に、
図11に戻って、ステップS20~S22の詳細を述べる。交渉部f2は、上記の交渉処理により、交渉が成立した発注条件を変更する(S20)。そして、交渉部f2は更新された発注条件変更案情報o1が能力上限を満たすか否かを判定する(S21)。交渉部f2は、能力上限を満たさない場合は、ステップS22に進んで、能力超過分を補うために外部リソースの必要量を計算し、手配することができる。また、交渉部f2は手配した外部リソースの内容を外部リソース手配案情報o3に保存し、画面生成部f3が保存内容に基づき外部リソース量の確認及び手配画面の表示データを生成し、入出力インターフェース13から出力してディスプレイ装置などに表示することもできる。
【0170】
図18は、外部リソース量の確認及び手配画面d5の表示例を示す図である。確認及び手配画面d5は、交渉後の能力超過分を補うために必要な外部リソース量の一覧を表示する領域d51と、交渉開始ボタンd52を含む。
【0171】
領域d51には、
図10に示した外部リソース手配案情報o3の要素を表示することができ、保管、CO2排出量、などの拠点別能力情報i2を超過している能力タイプ191と、その超過能力を補うためのリソースタイプ192と、外部リソースの必要量193と、必要期間194と、手配案195と、手配することによる総コスト増加量196を示してもよい。
【0172】
図18の例では、自動交渉後も保管能力が超過するため、それを補う外部倉庫が2022年12月1日から2023年1月10日まで1、000坪必要であり、その手配案として、総コストが1.0M$増加するP倉庫と、総コストが1.1M$増加するQ倉庫の2案あることが示されている。
【0173】
総コスト増加量196が最小の手配案から交渉開始ボタンd52を押すと、同じ能力タイプ191に対する手配案195の中から、総コスト増加量196が最小の案から順に、手配の自動交渉を開始するようにしてもよい。また、交渉ステータスを表示してもよい(図示せず)。
【0174】
以上の例では、在庫供給計画及び発注条件の変更案の生成において、全ての組合せを生成したり、暫定解の一部の物量を増減したりして、新しい在庫供給計画や発注条件を生成して、パレート最適な案を探索する方法を示したが、本発明はこのような方法に限定されるものではなく、例えば混合整数計画法をはじめとする数理最適化手法により、パレート最適な案を立案してもよい。
<結び>
【0175】
以上のように、本実施例の在庫供給計画システム1は、商品別に、発注条件変更案を生成して変更案毎に物流センタ(又は拠点)における能力占有率の削減量を定量評価することで、能力占有率の削減量の大きい案から順に供給元と効率良く交渉できる。その結果、拠点の能力を遵守し、かつ、供給元が受諾可能な発注条件を決定することができる。
【0176】
また、上記実施例の在庫供給計画システム1は、以下のような構成とすることができる。
【0177】
(1)演算装置(プロセッサ11)と前記演算装置(11)がアクセス可能なメモリ(14)とを有する計算機(在庫供給計画システム1)が、拠点に保管する在庫の計画を立案する在庫供給計画方法であって、前記計算機(1)が、前記拠点の物品毎の在庫量を示す初期在庫量(商品別・拠点別初期在庫情報i6)と、前記物品毎に前記拠点の能力の上限に関する能力上限指標(上限)を予め設定した能力情報(拠点別能力情報i2)と、前記物品毎に前記拠点に対する単位負荷を予め設定した単位負荷情報(商品情報i1)と、前記物品毎に予め設定した発注条件(商品別発注条件情報i3)を取得する第1のステップ(S10)と、前記計算機(1)が、前記発注条件(i1)の上限を満たす前記物品毎の在庫供給計画を初期在庫供給計画として算出する第2のステップ(S11)と、前記計算機(1)が、前記物品毎に前記能力が削減するように発注条件の変更案を発注条件変更指標に基づいて算出し、前記発注条件変更指標による在庫供給計画を変更後在庫供給計画(04)として算出する第3のステップ(S12)と、を含むことを特徴とする在庫供給計画方法。
【0178】
上記構成により、物流センタ等の拠点における能力占有率の削減量を定量評価することによって拠点の能力を遵守し、かつ、供給元が受諾可能な発注条件を決定できる。
【0179】
(2)上記(1)に記載の在庫供給計画方法であって、前記第3のステップ(S12)では、前記初期在庫供給計画において前記能力上限指標に対して前記物品が使用する前記能力の比率を第1の能力占有率として算出し、前記変更後在庫供給計画(o4)において前記能力上限指標に対して前記物品が使用する前記能力を第2の能力占有率として算出し、前記第1の能力占有率から前記第2の能力占有率を差し引いた値を削減量(175、176)として算出し、当該削減量を前記発注条件決定指標の値とすることを特徴とする在庫供給計画方法。
【0180】
上記構成により、物流センタ等の拠点において商品別に発注条件の変更案による能力占有率の削減量を定量的に評価することが可能となる。
【0181】
(3)上記(2)に記載の在庫供給計画方法であって、前記第3のステップ(S12)では、前記発注条件の変更案を、前記能力情報(i2)を満たすように前記物品別に探索することを特徴とする在庫供給計画方法。
【0182】
上記構成により、物流センタ等の拠点における能力を遵守しながら発注条件の変更案を商品別に探索することで、パレート最適な発注条件の変更案を決定することが可能となる。
【0183】
(4)上記(2)に記載の在庫供給計画方法であって、前記計算機(1)が、前記発注条件の変更案を物品別に前記削減量(175、176)の大きい順にソートした順で選択し、前記物品の供給元に前記選択した発注条件の変更案を送信して、当該発注条件の変更案の受諾の可否を交渉する第4のステップ(S15)を、さらに含むことを特徴とする在庫供給計画方法。
【0184】
上記構成により、物流センタ等の拠点において商品別に発注条件の変更案による能力占有率の削減量を定量的に評価することで、拠点の能力に対して能力占有率の削減量の大きい変更案から順に供給元と効率良く交渉することが可能となる。
【0185】
(5)上記(4)に記載の在庫供給計画方法であって、前記第4のステップ(S15)では、前記発注条件の変更案が受諾されない場合には、前記削減量(175、176)の大きい順に次の発注条件の変更案について交渉を繰り返すことを特徴とする在庫供給計画方法。
【0186】
上記構成により、交渉が受諾されるまで繰り返して発注条件の変更案を交渉することが可能となって、商品別に発注条件を変更する提案を行う際の労力を低減することが可能となる。
【0187】
(6)上記(1)に記載の在庫供給計画方法であって、前記計算機(1)が、前記発注条件の変更案が前記能力情報(i2)を満足しない場合には、前記拠点の外部のリソース(5)を利用する外部リソース手配案(o3)を算出する第5のステップ(S22)を、さらに含むことを特徴とする在庫供給計画方法。
【0188】
上記構成により、拠点の能力を満足できない場合には、外部のリソースを利用する発注条件の変更案を立案することが可能となって、複数の拠点のリソースを有効に利用することが可能となる。
【0189】
(7)上記(6)に記載の在庫供給計画方法であって、前記第5のステップ(S22)では、前記外部リソース手配案(o3)に基づいて、前記外部のリソース(5)の提供先に前記外部のリソースを手配する指示を送信することを特徴とする在庫供給計画方法。
【0190】
上記構成により、拠点の能力を満足できない場合には、外部のリソースを利用する手配を行うことが可能となって、複数の拠点のリソースを利用する際の労力を低減することが可能となる。
【0191】
(8)上記(1)に記載の在庫供給計画方法であって、前記第2のステップ(S11)では、前記能力情報(i2)満たす商品別、日別かつ経路別の輸送量を決定し、前記輸送量から入出庫量と在庫量(stock(t、w、i))を計算し、前記輸送量と入出庫量及び在庫量(stock(t、w、i))からなる在庫供給計画(o4)を算出することを特徴とする在庫供給計画方法。
【0192】
上記構成により、物流センタ等の拠点において商品別に発注条件の変更案による能力占有率の削減量を定量的に評価することが可能となる。
【0193】
(9)上記(1)に記載の在庫供給計画方法であって、前記第2のステップ(S11)では、前記能力情報(i2)の前記拠点の能力上限指標として、在庫保管能力とCO2排出量能力と入庫能力及び出庫能力のうち少なくとも一つを含み、前記発注条件(i1)と前記欠品率の上限(123)に加えて前記能力上限指標を満たす前記物品毎の在庫供給計画を算出することを特徴とする在庫供給計画方法。
【0194】
上記構成により、在庫保管能力とCO2排出量能力と入庫能力及び出庫能力の少なくとも一つの能力上限指標と欠品率上限114及び発注条件を満足する在庫供給計画o4を立案することが可能となる。
【0195】
(10)上記(8)に記載の在庫供給計画方法であって、前記第2のステップ(S11)では、前記在庫供給計画(o4)を実施した場合のコストを総コスト(totCost)として算出し、前記在庫供給計画を実施した場合のCO2排出量を算出し、前記在庫供給計画を実施した場合の在庫金額(aveInventory)を算出し、前記在庫供給計画を実施した場合のキャッシュフローを算出し、前記総コスト(totCost)とCO2排出量及び在庫金額(aveInventory)が最小で、前記キャッシュフローが最大の前記在庫供給計画を出力することを特徴とする在庫供給計画方法。
【0196】
上記構成により、総コストとCO2排出量、在庫金額及びキャッシュフローをKPIとして、これらのKPIが最良となる在庫供給計画o4を出力することが可能となる。
【0197】
(16)上記(1)に記載の在庫供給計画方法であって、前記第1のステップでは、 前記単位負荷情報(i1)には前記物品毎に前記拠点の欠品率の上限(123)が予め設定され、前記第2のステップでは、前記発注条件と前記欠品率の上限(123)を満たす前記物品毎の在庫供給計画を初期在庫供給計画(商品別・拠点別初期在庫情報i6)として算出し、前記第3のステップでは、前記物品毎に発注条件の変更許容範囲を予め設定した発注条件変更範囲情報(i6)を取得して、前記物品毎に前記能力が削減するように前記変更許容範囲内で発注条件の変更案を発注条件変更指標に基づいて算出することを特徴とする在庫供給計画方法。
【0198】
上記構成により、拠点毎の発注条件と欠品率の上限を満たして、拠点毎の能力を超えず、かつ、供給元が受諾可能な発注条件を算出することができる。
【0199】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を含むものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、又は置換のいずれもが、単独で、又は組合せても適用可能である。
【0200】
また、上記の各構成、機能、処理部、及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、及び機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0201】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0202】
1 在庫供給計画システム
2 記憶装置
11 プロセッサ
14 メモリ
f1 発注条件変更案立案部
f2 交渉部
f3 画面生成部
i1 商品情報
i2 拠点別能力情報
i3 商品別発注条件情報
i4 商品別発注条件の変更許容範囲情報
i5 日別・商品別・需要予測情報
i6 商品別・拠点別初期在庫情報
o1 発注条件変更案情報
o2 交渉結果情報
o3 外部リソース手配案情報
o4 在庫供給計画
o41 日別・商品別・経路別の輸送情報
o42 日別・車型別・経路別の輸送台数情報
o43 日別・車型別・拠点別の入出庫・在庫量情報