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特開2023-154847フィルムカートリッジおよびフィルムユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154847
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】フィルムカートリッジおよびフィルムユニット
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B65H75/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064450
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】中西 有樹子
(72)【発明者】
【氏名】市川 智也
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA03
3F058AA04
3F058AB01
3F058BB11
3F058GA01
3F058HA07
3F058HB02
(57)【要約】
【課題】箔フィルムの一端部を巻取リールに固定するための接着テープの背面に箔が付着するのを抑制すること。
【解決手段】フィルムカートリッジFCは、箔を含む箔フィルムFと、箔フィルムFが巻回される供給リールと、供給リールから箔フィルムFを巻き取るための巻取リール35と、箔フィルムFの一端部を巻取リール35に固定する接着テープ90を備える。接着テープ90は、一部が巻取リール35に接着され、他部が巻取リール35との間で箔フィルムFを挟んだ状態で箔フィルムFに接着される。接着テープ90は、第1基材91と、第1基材91の一方の面に位置するテープ接着層92と、第1基材91の他方の面に付着した背面処理剤93を有する。箔フィルムFは、箔を含む転写層F2を有する。転写層F2は、箔フィルムFが巻取リール35に巻回された状態において背面処理剤93と接触する。背面処理剤93は、アクリル系以外の剥離処理剤からなる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔を含む箔フィルムと、
前記箔フィルムが巻回された供給リールと、
前記供給リールから前記箔フィルムを巻き取るための巻取リールと、
前記箔フィルムの一端部を前記巻取リールに固定するための接着テープであって、一部が前記巻取リールに接着され、他部が前記巻取リールとの間で前記箔フィルムを挟んだ状態で前記箔フィルムに接着される接着テープと、を備えたフィルムカートリッジであって、
前記接着テープは、
第1基材と、
前記巻取リールおよび前記箔フィルムに接着されるテープ接着層であって、前記第1基材の一方の面に位置するテープ接着層と、
前記第1基材の他方の面に付着した背面処理剤と、を有し、
前記箔フィルムは、
箔を含む転写層であって、前記箔フィルムが前記巻取リールに巻回された状態において前記背面処理剤と接触する転写層と、
前記転写層を支持する第2基材と、を有し、
前記背面処理剤は、アクリル系以外の剥離処理剤からなることを特徴とするフィルムカートリッジ。
【請求項2】
前記背面処理剤は、シリコーン系剥離処理剤からなることを特徴とする請求項1に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項3】
箔を含む箔フィルムと、
前記箔フィルムが巻回された供給リールと、
前記供給リールから前記箔フィルムを巻き取るための巻取リールと、
前記箔フィルムの一端部を前記巻取リールに固定するための接着テープであって、一部が前記巻取リールに接着され、他部が前記巻取リールとの間で前記箔フィルムを挟んだ状態で前記箔フィルムに接着される接着テープと、を備えたフィルムカートリッジであって、
前記接着テープは、
第1基材と、
前記巻取リールおよび前記箔フィルムに接着されるテープ接着層であって、前記第1基材の一方の面に位置するテープ接着層と、を有し、
前記箔フィルムは、
箔を含む転写層であって、前記箔フィルムが前記巻取リールに巻回された状態において前記第1基材の他方の面と接触する転写層と、
前記転写層を支持する第2基材と、を有し、
前記第1基材の他方の面には、背面処理剤が付着していないことを特徴とするフィルムカートリッジ。
【請求項4】
前記転写層は、
シートに箔を接着させるための箔接着層であって、前記箔フィルムが前記巻取リールに巻回された状態において前記接着テープの前記巻取リールとは反対側の面と接触する箔接着層を有し、
前記箔接着層は、熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項5】
前記箔接着層は、エチレン酢酸ビニルからなることを特徴とする請求項4に記載のフィルムカートリッジ。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフィルムカートリッジと、
前記フィルムカートリッジが着脱可能なホルダと、を備えることを特徴とするフィルムユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箔を含む箔フィルムを備えたフィルムカートリッジおよびフィルムユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムカートリッジとして、箔フィルムと、箔フィルムが巻回された供給リールと、供給リールから箔フィルムを巻き取る巻取リールとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-116185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、供給リールに巻回された箔フィルムの一端を巻取リールに固定する方法としては、接着テープによって固定する方法がある。この方法により箔フィルムの一端部を巻取リールに固定した後、巻取リールに箔フィルムを巻き付けると、接着テープの接着面とは反対側の背面に、箔フィルムのうち箔を含む転写層が接触する場合がある。この場合において、接着テープの背面に塗布される背面処理剤がアクリル系剥離処理剤であると、フィルムカートリッジが高温高湿の環境下で放置された場合に、箔が接着テープの背面に付着してしまうおそれがある。そして、箔が接着テープの背面に付着すると、フィルムカートリッジを初めて使うべくユーザが巻取リールに巻回された箔フィルムをほどいた際に、接着テープの背面に付着した箔が露出して、見栄えが悪くなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、箔フィルムの一端部を巻取リールに固定するための接着テープの背面に箔が付着するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るフィルムカートリッジは、箔フィルムと、供給リールと、巻取リールと、接着テープと、を備える。
前記箔フィルムは、箔を含む。
前記供給リールには、前記箔フィルムが巻回される。
前記巻取リールは、前記供給リールから前記箔フィルムを巻き取るためのリールである。
前記接着テープは、前記箔フィルムの一端部を前記巻取リールに固定するためのテープである。前記接着テープは、一部が前記巻取リールに接着され、他部が前記巻取リールとの間で前記箔フィルムを挟んだ状態で前記箔フィルムに接着される。
前記接着テープは、第1基材と、テープ接着層と、背面処理剤と、を有する。
前記テープ接着層は、前記巻取リールおよび前記箔フィルムに接着される層である。前記テープ接着層は、前記第1基材の一方の面に位置する。
前記背面処理剤は、前記第1基材の他方の面に付着している。
前記箔フィルムは、転写層と、第2基材と、を有する。
前記転写層は、箔を含む層である。前記転写層は、前記箔フィルムが前記巻取リールに巻回された状態において前記背面処理剤と接触する。
前記第2基材は、前記転写層を支持する。
前記背面処理剤は、アクリル系以外の剥離処理剤からなる。
【0007】
この構成によれば、背面処理剤がアクリル系以外の剥離処理剤からなるので、フィルムカートリッジが高温高湿の環境下で放置された場合であっても、接着テープの背面に転写層の箔が付着するのを抑制することができる。なお、この効果は、実験により確認されている。
【0008】
また、前記背面処理剤は、シリコーン系剥離処理剤からなっていてもよい。
【0009】
また、本発明に係るフィルムカートリッジは、箔フィルムと、供給リールと、巻取リールと、接着テープと、を備える。
前記箔フィルムは、箔を含む。
前記供給リールには、前記箔フィルムが巻回される。
前記巻取リールは、前記供給リールから前記箔フィルムを巻き取るためのリールである。
前記接着テープは、前記箔フィルムの一端部を前記巻取リールに固定するためのテープである。前記接着テープは、一部が前記巻取リールに接着され、他部が前記巻取リールとの間で前記箔フィルムを挟んだ状態で前記箔フィルムに接着される。
前記接着テープは、第1基材と、テープ接着層と、を有する。
前記テープ接着層は、前記巻取リールおよび前記箔フィルムに接着される層である。前記テープ接着層は、前記第1基材の一方の面に位置する。
前記箔フィルムは、転写層と、第2基材と、を有する。
前記転写層は、箔を含む層である。前記転写層は、前記箔フィルムが前記巻取リールに巻回された状態において前記第1基材の他方の面と接触する。
前記第2基材は、前記転写層を支持する。
前記第1基材の他方の面には、背面処理剤が付着していない。
【0010】
この構成によれば、第1基材の他方の面に背面処理剤が付着していないので、フィルムカートリッジが高温高湿の環境下で放置された場合であっても、接着テープの背面に転写層の箔が付着するのを抑制することができる。なお、この効果は、実験により確認されている。
【0011】
また、前記転写層は、シートに箔を接着させるための箔接着層であって、前記箔フィルムが前記巻取リールに巻回された状態において前記接着テープの前記巻取リールとは反対側の面と接触する箔接着層を有し、前記箔接着層は、熱可塑性樹脂からなっていてもよい。
【0012】
また、前記箔接着層は、エチレン酢酸ビニルからなっていてもよい。
【0013】
また、本発明に係るフィルムユニットは、前記フィルムカートリッジと、前記フィルムカートリッジが着脱可能なホルダと、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、箔フィルムの一端部を巻取リールに固定するための接着テープの背面に箔が付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る箔転写装置を示す図(a)と、箔フィルムの構成を示す断面図(b)である。
図2】箔転写装置のカバーを開けた状態を示す図である。
図3】フィルムユニットを示す分解斜視図である。
図4】接着テープ、箔フィルムおよび巻取リールの関係を示す斜視図(a)と断面図(b)である。
図5】接着テープの背面への箔の転写の程度を調べた実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、方向は、図1(a)に示す方向で説明する。すなわち、図1(a)の右側を「前」とし、図1(a)の左側を「後」とし、図1(a)の紙面手前側を「左」とし、図1(a)の紙面奥側を「右」とする。また、図1(a)の上下を「上下」とする。
【0017】
図1(a)に示すように、箔転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置によってシートS上に形成されたトナー像の上にアルミニウム等の箔を転写するための装置である。箔転写装置1は、筐体2と、シートトレイ3と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、転写部50とを備えている。
【0018】
筐体2は、樹脂などからなり、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に開口21A(図2参照)を有している。開口21Aは、筐体本体21に後述するフィルムユニットFUを着脱するための開口である。開口21Aは、上向きとなっている。カバー22は、開口21Aを開閉するための部材である。カバー22の後端部は、筐体本体21に回動可能に支持されている。
【0019】
シートトレイ3は、用紙、OHPフィルム等のシートSが載置されるトレイである。シートトレイ3は、筐体2の後部に設けられている。なお、シートSは、トナー像が形成された面を下向きにしてシートトレイ3上に載置される。
【0020】
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート供給機構11は、シートトレイ3上のシートSを一枚ずつ転写部50に向けて搬送する機構である。シート排出機構12は、転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。
【0021】
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSに重ねるように箔フィルムFを供給する部分である。フィルム供給部30は、フィルムユニットFUと、モータ等の駆動源80を備えている。
【0022】
フィルムユニットFUは、図2に示すように、筐体本体21に上から着脱可能となっている。フィルムユニットFUは、供給リール31と、巻取リール35と、第1案内軸41と、第2案内軸42と、第3案内軸43とを備えている。フィルムユニットFUの供給リール31には、箔フィルムFが巻回されている。
【0023】
図1(b)に示すように、箔フィルムFは、第2基材F1と、転写層F2とを有する。第2基材F1は、高分子材料からなるテープ状の透明な基材であり、転写層F2を支持している。
【0024】
転写層F2は、剥離層F21と、箔層F22と、箔接着層F23とを有する。剥離層F21は、第2基材F1から箔層F22を剥離しやすくするための層であり、第2基材F1と箔層F22との間に配置されている。剥離層F21は、第2基材F1から剥離しやすい透明な材料、例えばワックス系樹脂を含んでいる。
【0025】
箔層F22は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の薄い金属である。また、箔層F22は、ゴールド、シルバー、レッドなどの色の着色材料と、熱可塑性樹脂とを含む。箔層F22は、剥離層F21と箔接着層F23との間に配置されている。
【0026】
箔接着層F23は、箔層F22をシートSのトナー像に接着させるための層である。箔接着層F23は、熱可塑性樹脂からなる。具体的には、箔接着層F23は、例えばEVA(エチレン酢酸ビニル)、PMMA(アクリル樹脂)などからなる。
【0027】
図1(a)に示すように、供給リール31は、樹脂などからなり、箔フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。巻取リール35は、樹脂などからなり、供給リール31から箔フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。
【0028】
なお、図1(a)等においては、便宜上、供給リール31および巻取リール35の両方に箔フィルムFが最大に巻回された状態を図示することとする。実際には、フィルムユニットFUが新品の状態においては、供給リール31に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最大となっており、巻取リール35には箔フィルムFが巻回されていない、もしくは、巻取リール35に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最小となっている。また、フィルムユニットFUの寿命時(箔フィルムFを使い切ったとき)においては、巻取リール35に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最大となり、供給リール31には箔フィルムFが巻回されていない、もしくは、供給リール31に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最小となる。
【0029】
第1案内軸41、第2案内軸42および第3案内軸43は、箔フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第1案内軸41、第2案内軸42および第3案内軸43は、SUS(ステンレス鋼)などからなっている。
【0030】
第1案内軸41は、シートSの搬送方向において、転写部50の上流に位置する。第1案内軸41は、供給リール31から引き出される箔フィルムFの進行方向を、シートSの搬送方向と略平行となるように変更する。
【0031】
このような第1案内軸41によって案内される箔フィルムFは、転写層F2(図1(b)参照)を上に向けた状態で、転写部50に向けて搬送される。また、シートSは、転写層F2が上に向いた状態の箔フィルムFの上に重ねられて、箔フィルムFとともに転写部50に向けて搬送される。
【0032】
第2案内軸42は、シートSの搬送方向において、転写部50の下流に位置する。第2案内軸42は、転写部50を通過した箔フィルムFの進行方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更することで、箔フィルムFをシートSから剥離させている。
【0033】
第3案内軸43は、シートSから箔フィルムFを剥離させるときの箔フィルムFの角度(以下、「剥離角度」ともいう。)を規定している。ここで、剥離角度は、箔フィルムFのうち、第1案内軸41と第2案内軸42の間で張架される部分と、第2案内軸42と第3案内軸43の間で張架される部分とのなす角である。第3案内軸43は、第2案内軸42で案内された箔フィルムFの進行方向を変更して巻取リール35に案内している。
【0034】
フィルムユニットFUを箔転写装置1に装着した状態において、巻取リール35は、筐体2に設けられた駆動源80によって図示反時計回りに回転駆動される。巻取リール35が回転すると、供給リール31に巻回された箔フィルムFが引き出され、引き出された箔フィルムFが各案内軸41~43で案内されて巻取リール35に巻き取られていく。詳しくは、箔転写中において、後述する加圧ローラ51と加熱ローラ61によって箔フィルムFが送り出されることで、供給リール31から箔フィルムFが引き出される。そして、加圧ローラ51と加熱ローラ61から送り出された箔フィルムFが、巻取リール35に巻き取られていく。
【0035】
転写部50は、シートSと箔フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に箔層F22を転写するための部分である。転写部50は、加圧ローラ51と、加熱ローラ61とを備えている。転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと箔フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0036】
加圧ローラ51は、円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。加圧ローラ51は、箔フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面である表面と反対側の面)と接触可能となっている。
【0037】
加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび箔フィルムFを挟み、駆動源80によって回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。
【0038】
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータを配置したローラであり、箔フィルムFおよびシートSを加熱している。加熱ローラ61は、箔フィルムFの下側に配置され、箔フィルムFと接触している。
【0039】
なお、本実施形態では、加熱ローラ61を箔フィルムFに対して接触・離間させるための接離機構70によって加熱ローラ61を移動させている。接離機構70は、シートSの搬送方向において、供給リール31と巻取リール35の間に配置されている。接離機構70は、カバー22を閉じている状態においては、シートSが転写部50に供給されるタイミングに合わせて加熱ローラ61を、箔フィルムFに接触する接触位置に移動させている。また、接離機構70は、カバー22が開けられた場合や、転写部50においてシートSに箔転写を行わない場合には、加熱ローラ61を、箔フィルムFから離間する離間位置に位置させている。
【0040】
このように構成された箔転写装置1では、シートSの表面を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSが、シート供給機構11により転写部50に向けて搬送される。シートSは、転写部50のシート搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された箔フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と箔フィルムFが接触した状態で転写部50に搬送される。
【0041】
転写部50においては、シートSと箔フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に箔(転写層F2)が転写される。
【0042】
箔が転写された後、シートSと箔フィルムFは密着した状態で第2案内軸42まで搬送される。シートSと箔フィルムFが第2案内軸42を通過すると、箔フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから箔フィルムFが剥離、すなわち、トナー像に接着した転写層F2が、箔フィルムFの第2基材F1から剥離される。
【0043】
シートSから剥離され、シートS上のトナー像に接着した転写層F2から剥離した第2基材F1を含む箔フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、箔フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
【0044】
以下、図3および図4を参照して、フィルムユニットFUについて説明する。
図3に示すように、フィルムユニットFUは、樹脂などからなるホルダ100と、ホルダ100に着脱可能なフィルムカートリッジFCとを備えている。フィルムカートリッジFCは、前述した箔フィルムF、供給リール31および巻取リール35と、供給ケース32とを備えている。フィルムカートリッジFCは、ホルダ100に取り付けられた状態で、筐体本体21の開口21Aを通して筐体本体21に着脱可能となっている。
【0045】
供給リール31(詳しくは、供給ケース32)および巻取リール35は、ホルダ100に対して、供給リール31の軸方向に直交する方向に着脱可能となっている。
【0046】
供給ケース32は、供給リール31を収容する中空のケースである。供給ケース32は、樹脂などからなり、略円筒状の外周壁32Aと、外周壁32Aの両端に設けられる略円板状の2つの側壁32Bとを有する。供給リール31は、供給ケース32の各側壁32Bに回転可能に支持されている。
【0047】
各側壁32Bは、供給リール31の軸方向から見て長尺状の係合部32Cを有している。各係合部32Cは、後述するホルダ100の着脱ガイドGによってガイドされる部位であり、角丸長方形状に形成されている。
【0048】
ホルダ100は、ベースフレーム110と、ベースフレーム110に回動可能に支持される回動フレーム120とを有している。
ベースフレーム110は、前述した第1案内軸41と第2案内軸42を回転可能に支持している。また、ベースフレーム110は、第1保持部111と、第2保持部112と、2つの連結部113と、2つの取手114とを有している。
回動フレーム120は、第3案内軸43を回転可能に支持している(図示略)。
【0049】
第1保持部111は、供給ケース32を保持する部位である。第1保持部111は、供給ケース32を介して供給リール31を保持している。
第1保持部111の両側壁111Bは、供給ケース32の着脱時に供給ケース32をガイドする着脱ガイドGを有している。
【0050】
第2保持部112は、巻取リール35を保持する部位である。詳しくは、第2保持部112は、回動フレーム120とともに、中空のケースを構成しており、中空のケース内に巻取リール35を収容している。
【0051】
2つの連結部113は、第1保持部111と第2保持部112とを連結する部位である。各連結部113は、供給リール31の軸方向に間隔を開けて配置されている。このように連結部113が形成されることで、ホルダ100は、供給リール31の軸方向に直交する直交方向に貫通する貫通穴100Aを有する。これにより、前述した接離機構70によって移動する加熱ローラ61が、貫通穴100Aを通って、箔フィルムFに対して接触・離間可能となっている。各取手114は、各連結部113の上に配置されている。
【0052】
図4(a)に示すように、フィルムカートリッジFCは、接着テープ90をさらに備えている。接着テープ90は、箔フィルムFの一端部を巻取リール35に固定するためのテープである。接着テープ90は、一部が巻取リール35の巻取軸部35Aに接着され、他部が巻取軸部35Aとの間で箔フィルムFを挟んだ状態で箔フィルムFに接着される。
【0053】
図4(b)に示すように、接着テープ90は、第1基材91と、テープ接着層92と、背面処理剤93とを有する。第1基材91は、高分子材料からなるテープ状の基材であり、例えばアセテートフィルムからなる。
【0054】
テープ接着層92は、巻取リール35および箔フィルムFに接着される層である。テープ接着層92は、第1基材91の一方の面に位置する。詳しくは、テープ接着層92は、第1基材91の巻取軸部35A側の面に位置する。テープ接着層92は、例えば天然ゴム、合成ゴム、アクリル系などを有する粘着剤からなる。
【0055】
背面処理剤93は、第1基材91の他方の面に付着している。詳しくは、背面処理剤93は、第1基材91の巻取軸部35Aとは反対側の面に位置する。背面処理剤93は、アクリル系以外の剥離処理剤からなる。具体的に、背面処理剤93は、シリコーン系剥離処理剤からなる。
【0056】
箔フィルムFは、転写層F2が巻取軸部35Aを向いた状態で、巻取軸部35Aに巻き付けられる。これにより、箔フィルムFが巻取軸部35Aに一周以上巻回された状態において、転写層F2(詳しくは箔接着層F23)は、接着テープ90の巻取軸部35Aとは反対側の背面90Aと接触する。そのため、箔フィルムFが巻取軸部35Aに一周以上巻回された状態において、転写層F2は、背面処理剤93と接触する。
【0057】
次に、本実施形態の効果について説明する。
フィルムカートリッジFCの製造メーカにおいて、フィルムカートリッジFCを梱包する際、作業者は、図4(a)に示すように、接着テープ90により箔フィルムFの一端部を巻取リール35の巻取軸部35Aに固定する。その後、作業者は、図4(b)に示すように、箔フィルムFを巻取軸部35Aに1周以上巻き付けた状態とし、梱包の箱内に、フィルムカートリッジFCを収容する。
【0058】
梱包されたフィルムカートリッジFCは、例えば船などに積載されて輸送される。輸送時においては、フィルムカートリッジFCの周囲の環境が高温高湿になる場合がある。ここで、背面処理剤93が仮にアクリル系剥離処理剤からなっている場合には、環境が高温高湿になると、箔フィルムFの転写層F2が、接着テープ90の背面処理剤93に付着することがある。この場合には、ユーザが、梱包の箱からフィルムカートリッジFCを取り出した後、巻取軸部35Aに巻回された箔フィルムFをほどいた際に、箔フィルムFの第2基材F1から転写層F2が剥がれて、接着テープ90の背面90A上に残るので、見栄えが悪くなる。
【0059】
これに対し、本実施形態では、背面処理剤93がアクリル系以外の剥離処理剤からなるので、フィルムカートリッジFCの周囲の環境が高温高湿になっても、箔フィルムFの転写層F2が、接着テープ90の背面処理剤93に付着するのを抑制することができる。なお、この効果は、後述する実施例で確認されている。
【0060】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0061】
前記実施形態では、背面処理剤を有する接着テープを例示したが、本発明はこれに限定されず、背面処理剤を有さない接着テープであってもよい。つまり、接着テープは、前記実施形態に係る第1基材91とテープ接着層92を有するが、背面処理剤93を有さない構成であってもよい。この場合、箔フィルムFの転写層F2は、箔フィルムFが巻取リール35に巻回された状態において第1基材91の他方の面(テープ接着層92とは反対の面)と接触する。そして、第1基材91の他方の面には、背面処理剤が付着していない。
【0062】
この構成によれば、第1基材91の他方の面に背面処理剤が付着していないので、フィルムカートリッジFCが高温高湿の環境下で放置された場合であっても、接着テープの背面に転写層F2の箔が付着するのを抑制することができる。なお、この効果は、後述する実施例で確認されている。
【実施例0063】
以下に、接着テープの背面への箔の転写の程度を調べた実施例を示す。具体的には、第1実験方法と第2実験方法とによって、接着テープの背面への箔の転写の程度を調べた。
【0064】
<第1実験方法>
タッキング試験機(TAC-1000)にて、接着テープの背面と箔フィルムの箔接着層を下記の条件で接触させた後、接着テープから箔フィルムをピンセットで剥がす。箔フィルムを剥がす方向は、接着テープの背面に対して180°の方向とした。その後、ハンディ型画質解析装置(PIAS-II)により、接着テープの背面に転写された箔の面積を測定する。
【0065】
<条件>
(1)面圧:3MPa
(2)押しつけ速度:5mm/s
(3)保持時間:300sec
(4)引き上げ速度:5mm/s
(5)プローブ温度50℃
(6)箔接着層:EVA(エチレン酢酸ビニル)
接着テープとしては、図5に示すように、日東電工株式会社の品番J550、NO.720、NO.31B、NO.3800Kの接着テープ、スリーエムジャパン株式会社の商品名ドラフティングテープ、メンディングテープを使用した。J550、NO.720およびドラフティングテープの背面処理剤は、アクリル系である。NO.31BおよびNO.3800Kの背面処理剤は、シリコーン系である。メンディングテープは、背面処理剤が塗布されておらず、基材がアセテートフィルムからなる。
【0066】
以上のような条件で、実験を行い、接着テープの背面への箔の転写率を調べた。箔の転写率は、接着テープの背面の所定面積に対する箔の割合を示す。実験の結果、背面処理剤がアクリル系である場合には、接着テープの背面に箔が転写されることが確認された。また、背面処理剤がシリコーン系である場合、または、背面処理剤がない場合には、接着テープの背面に箔が転写されないことが確認された。
【0067】
<第2実験方法>
接着テープで巻取リールに固定された箔フィルムを巻取リールに1周以上巻き付けた状態のフィルムカートリッジを、温度が50℃、湿度が95%となる高温高湿の環境下で放置する。数時間置きに、巻取リールから箔フィルムをほどいて、接着テープの背面に箔が付着しているかを目視で確認する。数時間置きに箔を確認する作業を、所定回数繰り返し、所定回数以内に、接着テープの背面に箔が転写されていたら「NG」、転写されていなかったら「OK」の評価を行う。
【0068】
<条件>
箔接着層の種類と、背面処理剤の種類は、実施例1と同様とする。
【0069】
以上のような条件で、実験を行い、接着テープの背面に箔に転写されたか否かを調べた。図5に示すように、実験の結果、背面処理剤がアクリル系である場合には、接着テープの背面に箔が転写されることが確認された。また、背面処理剤がシリコーン系である場合、または、背面処理剤がない場合には、接着テープの背面に箔が転写されないことが確認された。
【0070】
なお、実施例1,2で使用した箔接着層は、EVAであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、箔接着層は、PMMA(アクリル樹脂)であってもよい。PMMAは、EVAよりも軟化点が低いため、同様の結果が得られると予想される。
【0071】
前記実施形態では、フィルムカートリッジとホルダを備えるフィルムユニットが、箔転写装置の筐体に着脱可能となる構成を例示したが、例えば、フィルムカートリッジが箔転写装置の筐体に直接着脱可能となる構成であってもよい。
【0072】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0073】
31 供給リール
35 巻取リール
90 接着テープ
91 第1基材
92 テープ接着層
93 背面処理剤
F 箔フィルム
F1 第2基材
F2 転写層
FC フィルムカートリッジ
図1
図2
図3
図4
図5