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2023-154890用紙搬送装置、画像形成装置、用紙目方向判定方法及びプログラム
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  • -用紙搬送装置、画像形成装置、用紙目方向判定方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154890
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】用紙搬送装置、画像形成装置、用紙目方向判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20231013BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231013BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B65H7/02
G03G21/00 370
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064519
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 斉
(72)【発明者】
【氏名】小出 恭宏
(72)【発明者】
【氏名】泉宮 由美子
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博之
【テーマコード(参考)】
2H270
3F048
【Fターム(参考)】
2H270LC02
2H270LC04
2H270LC05
2H270LD02
2H270LD08
2H270LD15
2H270MA01
2H270MA24
2H270MA34
2H270MA35
2H270MB07
2H270MC55
2H270MD10
2H270MH09
2H270ZC03
2H270ZC04
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA00
3F048BA06
3F048BB02
3F048BB10
3F048CA01
3F048CA02
3F048CA03
3F048DA06
3F048DC02
3F048DC14
(57)【要約】
【課題】装置を大型にすることなく、用紙の目方向を判定できる技術を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、用紙の搬送方向において押圧部が押圧する用紙からの押圧力に基づいて、用紙の搬送方向における用紙の剛度に対応する搬送方向剛度情報を取得する第1剛度算出部71dと、用紙の長辺方向の剛度に対応する長辺方向剛度情報と用紙の短辺方向の剛度に対応する短辺方向剛度情報を取得する第2剛度算出部71fと、長辺方向剛度情報と短辺方向剛度情報の少なくともと一つと、搬送方向剛度情報の比較結果と、に基づいて、用紙の目方向を判定する目方向判定部71gと、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の搬送方向において押圧部が押圧する用紙からの押圧力に基づいて、前記用紙の搬送方向における前記用紙の剛度に対応する搬送方向剛度情報を取得する第1剛度取得部と、
前記用紙の長辺方向の剛度に対応する長辺方向剛度情報、及び、前記用紙の短辺方向の剛度に対応する短辺方向剛度情報を取得する第2剛度取得部と、
前記長辺方向剛度情報及び前記短辺方向剛度情報の少なくとも一つと、前記搬送方向剛度情報と、の比較結果に基づいて、前記用紙の目方向を判定する目方向判定部と、を備える
用紙搬送装置。
【請求項2】
前記第2剛度取得部は、前記用紙の長辺方向の弾性特性の情報に基づいて前記長辺方向剛度情報を算出し、前記用紙の短辺方向の弾性特性の情報に基づいて前記短辺方向剛度情報を算出する、
請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記用紙の長辺方向の弾性特性の情報及び短辺方向の弾性特性の情報は、予め用紙特性情報記憶部に記憶されている、
請求項2に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記用紙特性情報記憶部において、前記用紙の長辺方向の弾性特性及び短辺方向の弾性特性の情報は、前記用紙の特性の情報と対応付けて記憶され、
前記用紙の特性を検出する用紙特性検出センサによる検出結果に基づいて、前記用紙特性情報記憶部から前記用紙の長辺方向の弾性特性及び短辺方向の弾性特性の情報を取得する弾性特性情報取得部をさらに備える
請求項3に記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記目方向判定部は、前記第1剛度取得部が算出した前記用紙の搬送方向における前記用紙の剛度と、前記第2剛度取得部が算出した前記用紙の長辺方向の剛度とが一致した場合に、搬送される前記用紙の目方向は縦目であると判定し、一致しない場合に、前記用紙の目方向は横目であると判定する
請求項4に記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記用紙特性検出センサは、前記用紙の水分率、坪量、抵抗値、表面特性、光学特性のうちの少なくとも一つの情報を前記用紙の特性として検出する
請求項5に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
前記用紙の幅方向の紙幅及び紙厚を検出する紙幅紙厚センサをさらに備え、
前記第2剛度取得部は、前記弾性特性情報取得部が取得した前記用紙の長辺方向の弾性特性及び短辺方向の弾性特性に加えて、前記紙幅紙厚センサによって検出された前記用紙の紙幅及び紙厚の情報も用いて、前記用紙の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度を算出する
請求項6に記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
前記第2剛度取得部は、前記紙幅紙厚センサが検出した前記紙幅、前記紙幅紙厚センサが検出した前記紙厚のN乗(Nは前記用紙の押し曲げ量及び押し曲げ距離によって変化する値)、前記押圧部による前記用紙の押し曲げ量、前記押圧部による前記用紙の押し曲げ量及び押し曲げ距離によって変化する固定値である定数、及び、前記用紙の長辺方向の弾性特性又は短辺方向の弾性特性を乗算することによって、前記用紙の長辺方向の剛度又は短辺方向の剛度を算出する
請求項7に記載の用紙搬送装置。
【請求項9】
前記用紙特性検出センサには、前記用紙の水分率を検出する水分率センサが含まれ、
前記用紙の水分率と、前記用紙の弾性特性の補正値と、を対応付けた補正値テーブルをさらに備え、
前記第2剛度取得部は、前記水分率センサによって検出された前記用紙の水分率に基づいて、前記補正値テーブルから取得した補正値を用いて、前記用紙特性情報記憶部から取得した前記用紙の長辺方向の弾性特性及び短辺方向の弾性特性を補正する
請求項8に記載の用紙搬送装置。
【請求項10】
前記用紙特性情報記憶部には、前記用紙の水分率が所定の水分率である場合における前記用紙の長辺方向の弾性特性及び短辺方向の弾性特性が記憶され、
前記補正値テーブルにおいて、前記補正値は、所定の水分率と、前記水分率センサによって検出された水分率との差である水分率差と対応付けられる
請求項9に記載の用紙搬送装置。
【請求項11】
前記押圧部及び前記用紙特性検出センサは、いずれも用紙搬送装置内において前記用紙を搬送する前記用紙の搬送路上に配置される
請求項1~10のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項12】
用紙の搬送方向において押圧部が押圧する用紙からの押圧力に基づいて、前記用紙の搬送方向における前記用紙の剛度に対応する搬送方向剛度情報を取得する第1剛度取得部と、
前記用紙の長辺方向の剛度に対応する長辺方向剛度情報、及び、前記用紙の短辺方向の剛度に対応する短辺方向剛度情報を取得する第2剛度取得部と、
前記長辺方向剛度情報及び前記短辺方向剛度情報の少なくとも一つと、前記搬送方向剛度情報と、の比較結果に基づいて、前記用紙の目方向を判定する目方向判定部と、
搬送される前記用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記目方向判定部によって判定された目方向の情報に基づいて、前記用紙の搬送動作、及び/又は、前記用紙への画像形成動作を制御する制御パラメーターを設定する制御パラメーター設定部と、をさらに備える
画像形成装置。
【請求項13】
用紙の搬送方向において押圧部が押圧する用紙からの押圧力に基づいて、前記用紙の搬送方向における前記用紙の剛度に対応する搬送方向剛度情報を取得する手順と、
前記用紙の長辺方向の剛度に対応する長辺方向剛度情報、及び、前記用紙の短辺方向の剛度に対応する短辺方向剛度情報、を取得する手順と、
前記長辺方向剛度情報及び前記短辺方向剛度情報の少なくとも一つと、前記搬送方向剛度情報と、の比較結果に基づいて、前記用紙の目方向を判定する手順と、を含む
用紙目方向判定方法。
【請求項14】
用紙の搬送方向において押圧部が押圧する用紙からの押圧力に基づいて、前記用紙の搬送方向における前記用紙の剛度に対応する搬送方向剛度情報を取得する手順と、
前記用紙の長辺方向の剛度に対応する長辺方向剛度情報、及び、前記用紙の短辺方向の剛度に対応する短辺方向剛度情報を取得する手順と、
前記長辺方向剛度情報及び前記短辺方向剛度情報の少なくとも一つと、前記搬送方向剛度情報と、の比較結果に基づいて、前記用紙の目方向を判定する手順と、をコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置、画像形成装置、用紙目方向判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置によって画像が形成される用紙には、目の方向(繊維の並び方向)が存在しており、目の方向によって用紙の剛度が異なる。なお、用紙の長辺に平行な目の方向を縦目といい、用紙の短辺に平行な目の方向を横目という。
【0003】
用紙の目方向と、印刷の方向、すなわち、用紙の搬送方向とが一致しない場合、用紙の腰が弱くなるため、画像形成時において、しわや定着カールなどの用紙の不具合が発生してしまう。このような不具合の発生を防ぐためには、縦目の用紙においては、長辺が搬送方向となる向き(縦向き)での印刷、横目の用紙においては、短辺が搬送方向となる向き(横向き)での印刷が行われる必要がある。用紙の目方向の判別は、用紙の剛度を検出することによって行うことができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、搬送中の用紙をレバーに押し当て、そのときのレバーの変位量を用紙の剛度として検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-49178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
用紙の目方向の判別は、用紙搬送方向の剛度と、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向の剛度との両方を検出することによって行うことができる。しかしながら、特許文献1に記載された技術は、用紙幅方向に設けたレバーによって用紙の搬送方向における剛度を検出する技術であり、用紙幅(短辺)方向における用紙の剛度を検出する技術については記載されていない。
【0007】
特許文献1に記載の技術を用いて用紙短辺方向の用紙の剛度を検出するには、長尺のレバーを用紙長さ方向に設ける必要があるが、このようなレバーを設けた場合、装置が大型化してしまう。また、用紙の搬送方向に対して斜めの方向に配置した押し曲げ部材によって、用紙の角を押し曲げ、押し曲げられた用紙からの応力に基づいて、用紙の斜め方向における剛度を算出し、該斜め方向における剛度に基づいて、用紙幅方向における用紙の剛度を算出する技術も知られている。しかしながら、斜め方向に押し曲げ部材を配置する場合にも、押し曲げ部材による占有面積は大きくなるため、装置の大型化は避けられない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、装置を大型にすることなく、用紙の目方向を判定できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る用紙搬送装置は、用紙の搬送方向において押圧部が押圧する用紙からの押圧力に基づいて、用紙の搬送方向における用紙の剛度に対応する搬送方向剛度情報を取得する第1剛度取得部と、用紙の長辺方向の剛度に対応する長辺方向剛度情報、及び、用紙の短辺方向の剛度に対応する短辺方向剛度情報を取得する第2剛度取得部と、長辺方向剛度情報及び短辺方向剛度情報の少なくともと一つと、搬送方向剛度情報と、の比較結果に基づいて、用紙の目方向を判定する目方向判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、用紙幅方向の用紙の剛度を検出する幅方向に長いレバー等を設けることなく、用紙短辺方向の剛度を検出できるため、装置を大型にすることなく、用紙の目方向を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る剛度取得ユニットの構成例を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る剛度取得ユニットの構成例を模式的に示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るメディアセンサの光学センサの構成例を模式的に示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る用紙特性情報DBの構成例を示す図である
図7】本発明の一実施形態に係る画像形成装置による目方向判定方法の概要を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る画像形成装置による目方向判定方法の手順の例を示すフローチャートである。
図9】本発明の変形例に係る画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図10】本発明の変形例に係る補正値テーブルの構成例を示すグラフである。
図11】本発明の変形例に係る画像形成装置による目方向判定方法の概要を示す図である。
図12】本発明の変形例に係る画像形成装置による目方向判定方法の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す概略図である。図1に示す画像形成装置1(用紙搬送装置の一例)は、電子写真式で画像形成を行う複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)である。なお、画像形成装置1の画像形成方式は電子写真方式に限定されず、インクジェット方式等の他の方式であってもよい。また、画像形成装置1は、複合機ではなく、画像形成のみを行う装置であってもよい。
【0014】
画像形成装置1は、装置本体である筐体10の上部に画像読取部11を備える。また、画像形成装置1は、筐体10の内部に、画像形成部30と、定着部40と、用紙搬送部50と、剛度取得部60と、メディアセンサ80と、を備える。さらに、画像形成装置1は、操作部8及び表示部9を備える。
【0015】
[画像読取部]
画像読取部11は、原稿トレイ12と、原稿台13と、自動原稿送り機構14と、撮像部15と、を備える。自動原稿送り機構14は、原稿トレイ12に置かれた原稿を原稿台13へと送り込む機構である。画像読取部11の撮像部15は、原稿台13に直接置かれた原稿の画像、又は、自動原稿送り機構14によって原稿台13に送られた原稿の画像を読み取って画像データを生成する。
【0016】
[画像形成部]
画像形成部30は、用紙2に画像を形成する。画像形成部30は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を作り出す4つの作像ユニット20y,20m,20c,20kと、中間転写体としての中間転写ベルト31と、を備える。なお、画像形成部30が用いるトナーの数は4つに限定されない。
【0017】
作像ユニット20yは、感光体21と、帯電器23と、光走査装置25と、現像器27とを備え、他の作像ユニット20m,20c,20kも同様に、それぞれ、感光体21と、帯電器23と、光走査装置25と、現像器27と、を備える。
【0018】
感光体21は、トナー像を担持する像担持体であって、ドラム状に形成される。感光体21は、図示しない感光体駆動モータの駆動に従って回転する。感光体21の周囲には、感光体21の回転方向の上流側から下流側に向かって帯電器23、光走査装置25および現像器27が順に配置されている。
【0019】
感光体21の外周面は像担持面となる。感光体21の像担持面は、帯電器23によって一様に帯電され、帯電した像担持面に光走査装置25による露光走査によって静電潜像が形成される。光走査装置25による露光走査は、画像読取部11で読み取られた画像データ、または外部装置から受信した画像データに基づいて行われる。
【0020】
現像器27は、静電潜像が形成された感光体21の像担持面にトナーを供給することにより、静電潜像にトナーを付着させて現像する。現像器27によって現像が行われることにより、作像ユニット20yが有する感光体21の像担持面にはイエローのトナー像が形成される。また、作像ユニット20mが有する感光体21の表面にはマゼンタのトナー像が形成され、作像ユニット20cが有する感光体21にはシアンのトナー画像が形成され、作像ユニット20kが有する感光体21にはブラックのトナー像が形成される。
【0021】
中間転写ベルト31は、無端ベルトであり、複数のベルト支持ローラ32によって支持される。中間転写ベルト31の回転移動経路には、一次転写部33と、二次転写ローラ33aと、除電ローラ34と、クリーニングユニット35と、が配置される。
【0022】
中間転写ベルト31の外周面は像担持面31aとなっており、像担持面31aは、作像ユニット20y,20m,20c,20kの各感光体21の外周面に接触している。中間転写ベルト31は、作像ユニット20y,20m,20c,20kの各感光体21の回転とは逆方向に回転する。具体的には、各感光体21は反時計回り方向に回転し、中間転写ベルト31は時計回り方向に回転する。
【0023】
複数のベルト支持ローラ32は、中間転写ベルト31の内周側に配置される。複数のベルト支持ローラ32は、4つの作像ユニット20y,20m,20c,20kに対応する4つの感光体21のすべてに中間転写ベルト31の像担持面31aが接触するように、中間転写ベルト31を支持する。複数のベルト支持ローラ32のうちの1つは、中間転写ベルト31を回転させるためのベルト駆動ローラとして構成される。
【0024】
一次転写部33は、各々の感光体21と対向する位置に1つずつ配置される。各々の一次転写部33は、中間転写ベルト31の内周側に配置されるとともに、それぞれに対応する感光体21との間に中間転写ベルト31を挟み込む状態で配置される。各々の一次転写部33は、トナーと逆極性の電荷を中間転写ベルト31に与えることにより、感光体21の像担持面上に付着したトナーを、中間転写ベルト31の像担持面31aに転写させる。
【0025】
二次転写ローラ33aは、中間転写ベルト31の像担持面31aに転写されたトナー像を用紙2に転写する。二次転写ローラ33aは、上述した複数のベルト支持ローラ32のうちの1つに対向する状態で配置される。二次転写ローラ33aは、この二次転写ローラ33aとベルト支持ローラ32との間に中間転写ベルト31を挟み込む状態で配置される。二次転写ローラ33aとベルト支持ローラ32とが接触する位置は、中間転写ベルト31の像担持面31aに転写されたトナー像が用紙2に転写されるときにおける、転写位置57となる。転写位置57は、用紙2に画像が形成される位置である画像形成位置に相当する。
【0026】
除電ローラ34は、中間転写ベルト31の回転方向において、作像ユニット20yの感光体21に対向する一次転写部33の上流側であり、かつ、二次転写ローラ33aの下流側の位置に配置される。除電ローラ34は、中間転写ベルト31を挟持する一対のローラによって構成され、中間転写ベルト31に残留する電荷を除電する。
【0027】
クリーニングユニット35は、中間転写ベルト31の回転方向において、作像ユニット20yの感光体21に対向する一次転写部33の上流側であり、かつ、除電ローラ34の下流側の位置に配置される。クリーニングユニット35は、像担持面31aに対向する状態で配置され、中間転写ベルト31の像担持面31aに残留するトナーを除去する。
【0028】
[定着部]
定着部40は、定着ローラ41と加圧ローラ43と、を備える。定着ローラ41には、図示しないヒータが内蔵される。加圧ローラ43は、定着ローラ41に対して押圧されている。これにより、定着ローラ41と加圧ローラ43とは互いに圧着され、この圧着部分に定着ニップ部44が形成される。この定着ニップ部44を用紙2が通過するときに用紙2が加熱及び加圧されることにより、用紙2にトナー像が定着される。定着ニップ部44の下流側にはカール矯正部45が配置される。カール矯正部45は、一対のカール矯正ローラによって構成され、用紙2のカールを矯正する。
【0029】
[用紙搬送部]
用紙搬送部50は、複数の給紙トレイ51と、用紙2を搬送するための搬送路53と、搬送路53上で用紙2に搬送力を付与する複数の搬送ローラと、を備える。筐体10の下部には、複数の給紙トレイ51が設けられており、複数の給紙トレイ51には、それぞれサイズや種類の異なる用紙2が収納される。複数の各給紙トレイ51は、筐体10に対して出し入れ可能に設けられ、それぞれ給紙部51aを有する。給紙部51aは、給紙トレイ51に収納された用紙2を1枚ずつ分離して搬送路53に供給(給紙)する。
【0030】
なお、本実施形態では、画像形成装置1の筐体10の内部に給紙トレイ51及び給紙部51aが設けられる例を示すが、本発明はこれに限定されない。給紙トレイ51及び給紙部51aは、画像形成装置1とは別個に設置される用紙搬送装置に収容されてもよい。
【0031】
搬送路53は、各々の給紙トレイ51から供給される用紙2を、1枚ずつ転写位置57に向けて搬送する個別搬送路53aを備える。また、画像形成装置1は、筐体10の外部に手差トレイ10aを備えており、搬送路53は、この手差トレイ10aから延在する手差搬送路53bも備える。手差トレイ10aから供給される用紙2は、手差搬送路53b及び個別搬送路53aを順に経由して転写位置57に搬送される。また、搬送路53は、定着部40を通過した用紙2を表裏反転させて再び転写位置57へと送り込むための反転搬送路53cと、定着部40を通過した用紙2を排出するための排出搬送路53dと、を備える。
【0032】
上述した個別搬送路53a、手差搬送路53b及び反転搬送路53cは、合流位置56において合流することにより、1つの合流搬送路53gとして合流位置56から転写位置57へと延在する。このため、各給紙トレイ51から供給される用紙2、手差トレイ10aから供給される用紙2、および、反転搬送路53cから供給される用紙2は、いずれも、合流搬送路53gを通して転写位置57に搬送される。
【0033】
排出搬送路53dは、定着部40を通過した用紙2を排出ローラ55へと搬送する。排出ローラ55は、画像形成を終えた用紙2を排出トレイ等に排出するためのローラである。反転搬送路53cは、排出ローラ55よりも用紙搬送方向の上流側に位置するカール矯正部45から分岐している。また、反転搬送路53cは、個別搬送路53aおよび手差搬送路53bに対し、合流位置56で合流する。
【0034】
[操作部]
操作部8は、画像形成装置1を使用するユーザーによって操作される。ユーザーは、この操作部8を操作することにより、画像形成に関連する各種の設定や条件などを画像形成装置1に入力することができる。操作部8は、たとえば、筐体10の上面部分に設けられた操作キーや、表示部9の表示面に設けられたタッチパネルなどで構成される。なお、操作部8は、画像形成装置1に接続されるパーソナルコンピュータ等の外部装置(図示略)に設けられてもよい。
【0035】
[表示部]
表示部9は、例えば、筐体10の上面部分に設けられた薄型ディスプレイによって構成され、画像形成に関連する各種の設定や条件などを表示する。表示部9は、表示面に操作部8としてのタッチパネルを備えたものであってもよい。また、表示部9は、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置(図示略)に設けられていてもよい。
【0036】
[剛度取得部]
剛度取得部60は、用紙2の剛度を取得する。用紙2の剛度は、用紙2を曲げたときの抵抗性を示す指標であり、様々な物理量によって表すことが可能である。剛度取得部60は、合流位置56よりも用紙搬送方向の下流側であり、かつ、転写位置57よりも用紙搬送方向の上流側の搬送路53上に配置される。剛度取得部60がこのような位置に配置されることにより、用紙2の第1面(表面)及び第2面(裏面)に画像を形成する両面印刷を実行する場合に、第1面に画像を形成する前の用紙2の剛度と、第2面に画像を形成する前の用紙2の剛度との両方を、剛度取得部60において取得することができる。なお、第2面に画像が形成される前の用紙2は、第1面への画像形成、特にトナー画像の定着によって、剛度が変化している場合がある。上述した位置に剛度取得部60を配置しておくことにより、そのような剛度の変化にも対応することができる。
【0037】
剛度取得部60は、剛度取得ユニット61(図2参照)を備える。剛度取得ユニット61は、用紙搬送方向において用紙2を曲げることにより、用紙2の搬送方向の剛度を取得するユニットである。以下、図2及び図3を参照して、剛度取得ユニット61について詳しく説明する。
【0038】
(剛度取得ユニットの構成)
図2は、剛度取得ユニット61の構成例を模式的に示す斜視図であり、図3は、剛度取得ユニット61の構成例を模式的に示す側面図である。
図2及び図3に示すように、剛度取得ユニット61は、用紙2を保持する用紙保持部611と、用紙保持部611によって保持された用紙2を押圧する押圧部612と、を備える。
【0039】
用紙保持部611は、一対の用紙保持ローラ611a及び用紙保持ローラ611bによって構成される。用紙保持ローラ611a及び用紙保持ローラ611bの各中心軸は、用紙搬送方向(長辺方向)Yと平行に配置されている。すなわち、用紙保持部611は、用紙搬送方向Yと平行に配置されている。一対の用紙保持ローラ611a及び用紙保持ローラ611bは、所定の圧力で用紙2を挟み込むことにより、用紙2を保持する。一対の用紙保持ローラ611a及び用紙保持ローラ611bは、搬送ローラによって構成されることが好ましい。
【0040】
押圧部612は、用紙2を押し上げる押し上げ部材613と、押圧力を検出する押圧力検出部614と、押し上げ部材613をZ方向に移動可能に支持する支持機構615と、支持機構615を介して押し上げ部材613をZ方向に移動させるモータ616と、を備える。
【0041】
押し上げ部材613は、用紙搬送方向Yに搬送される用紙2の全幅に接触し得る長さを有する、板状の部材である。用紙幅方向Xは、用紙搬送方向Yに直交する方向である。
【0042】
押圧力検出部614は、例えば、圧力センサによって構成され、押し上げ部材613が用紙2を押し上げるときの用紙2からの押圧力(応力の一例)を検出する。
【0043】
支持機構615は、押し上げ部材613及び押圧力検出部614をZ方向に移動可能に支持する。Z方向は、用紙幅方向Xおよび用紙搬送方向Yの両方に直交する方向である。本実施形態においては、一例として、用紙幅方向Xおよび用紙搬送方向Yを水平二軸方向としており、Z方向を鉛直方向としている。
【0044】
モータ616は、押し上げ部材613及び押圧力検出部614をZ方向に移動させるための駆動源であり、例えば、ステッピングモータによって構成される。
【0045】
上記構成からなる剛度取得ユニット61は、以下のように動作することにより用紙2の剛度を取得する。
まず、図2に示すように、用紙搬送方向Yの所定の位置で用紙2の搬送が停止する。このとき、用紙保持部611の一対の用紙保持ローラ611a及び用紙保持ローラ611bの間に、用紙2が挟み込まれて保持された状態となる。また、用紙2は、用紙幅方向Xの全幅にわたって一対の用紙保持ローラ611a,611bによって保持された状態となる。用紙保持部611は、用紙2の先端2aから所定の距離だけ離れた位置において、用紙2を保持する。なお、用紙2の先端2aとは、用紙搬送方向Yにおいて下流側を向いて配置される用紙2の端部をいう。
【0046】
次に、押圧部612は、モータ616の駆動によって押し上げ部材613を上方に移動させる。これにより、用紙2は、図3に示すように、押し上げ部材613により押し上げられて曲がる。このとき、用紙2が曲がっていない状態で押し上げ部材613が用紙2の紙面(下面)に接触し始めるポジションを、Z方向における押し上げ部材613のホームポジションとする。そして、このホームポジションから押し上げ部材613により用紙2を所定量(たとえば、3mm)だけ曲げたときに用紙2から受ける押圧力を、押圧力検出部614が検出する。
【0047】
押圧部612は、用紙保持部611によって用紙2が保持されている位置よりも、用紙2の先端2aに近い位置において、押し上げ部材613を用紙2に押し当てることにより、用紙2を押圧する。押し上げ部材613による用紙2の押し曲げ量Pr1は、モータ616のドライバに入力されるパルス信号の数によって把握することが可能である。
【0048】
剛度取得ユニット61は、押し上げ部材613が用紙2を曲げた場合における用紙2からの押圧力により用紙2の剛度を測定する。換言すると、剛度取得ユニット61は、押し上げ部材613によって用紙2を曲げた際に押圧力検出部614によって検出される押圧力を、用紙2の剛度として取得する。このようにして得られる用紙2の剛度は、用紙搬送方向Yにおける用紙2の剛度である。
【0049】
なお、押し上げ部材613による用紙2の押し曲げ量Pr1、及び、用紙保持ローラ611a,用紙保持ローラ611bから押し上げ部材613までの距離である押し曲げ距離Pr2は、後述する第2剛度算出部71f(図5参照)による用紙2の剛度算出時のパラメーターとして用いられる。
【0050】
また、図2及び図3には、押し上げ部材613が用紙2を下から押し上げる例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。押し下げ部材が用紙2を上から下の方向に押し下げてもよい。
【0051】
[メディアセンサ]
図1に戻って説明を続ける。メディアセンサ80(用紙特性検出センサの一例)は、給紙トレイ51及び手差トレイ10aよりも用紙搬送方向の下流側であり、かつ、剛度取得部60よりも用紙搬送方向の上流側の搬送路53上に配置される。すなわち、メディアセンサ80は、剛度取得部60よりも上流側に配置される。メディアセンサ80は、用紙2が給紙トレイ51から画像形成部30へ搬送されるごとに、用紙2の特性を検出する。
【0052】
メディアセンサ80は、用紙2の紙厚、紙幅、坪量、抵抗値、水分率、反射率を検出する複数種類のセンサから構成される。すなわち、メディアセンサ80は、紙幅紙厚センサ、坪量センサ、水分率センサ(いずれも図示略)、光学センサ81(図4参照)、抵抗値センサ(図示略)を含む。
【0053】
光学センサ81は、例えば、用紙2の表面に光照射を行う光源と、用紙2の表面からの正反射光を受光する受光センサと、用紙2の表面からの散乱光を受光する受光素子と、を備える。そして、光学センサ81は、光源から照射されて用紙2によって反射された光正反射光の反射率(以下、「第1反射率」と称する)と、光源から照射されて用紙2によって散乱された散乱光の反射率(以下、「第2反射率」と称する)と、を算出する。光学センサ81の構成については、後述の図4を参照して詳述する。
【0054】
坪量センサは、用紙2のサイズを検出する光学センサと、用紙2の重量を検出する重量センサ(いずれも図示略)と、を備える。そして、坪量センサは、光学センサの出力から紙幅を含めた用紙2のサイズ及び面積を検出し、該サイズ及び面積と、重量センサで検出された用紙2の一枚分の重量とに基づいて、坪量を算出する。
【0055】
水分率センサは、用紙の含水量を検出する不図示の静電容量センサを備え、用紙2の水分率を検出する。
紙厚センサは、用紙の厚さを検出する不図示の変位センサを備え、用紙2の厚さを測定する。
抵抗値センサは、用紙の抵抗値を検出する不図示の電位センサを備え、用紙2の抵抗値を測定する。
【0056】
図4は、メディアセンサ80の光学センサ81の構成例を模式的に示す側面図である。
図4に示す光学センサ81は、光源としてのLED(Light Emitting Diode)811と、受光素子としてのフォトダイオード812及びフォトダイオード813と、を含む。
【0057】
LED81は、用紙2に対する照射角A1が70度となる位置に配置され、用紙2に光を照射する。フォトダイオード812は、LED811から照射されて用紙2に反射した正反射光の受光角A2が70度となる位置に配置され、用紙2からの正反射光を受光する。フォトダイオード813は、LED811から照射されて用紙2によって散乱された散乱光の受光角が0度となる位置に配置され、用紙2からの散乱光を受光する。そして、光学センサ81の不図示の演算部が、フォトダイオード812による受光量に基づいて第1反射率を算出し、フォトダイオード813による受光量に基づいて第2反射率を算出する。なお、光学センサ81の構成例は図4に示す例に限定されない。
【0058】
<画像形成装置の制御系の構成>
次に、図5を参照して、本実施形態に係る画像形成装置1の制御系の構成について説明する。図5は、画像形成装置1の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0059】
図5に示すように、画像形成装置1は、制御部71と、記憶部72とを備える。制御部71は、画像形成装置1全体の動作を統括的に制御する。制御部71は、コンピュータのハードウェア資源として、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、を有する。
【0060】
ROMには、画像形成装置1に対応するシステムプログラム、該システムプログラム上で実行可能な画像形成プログラム、用紙目方向判定プログラム等を記憶する。これらのプログラムは、コンピュータが読取り可能なプログラムコードの形態で格納される。つまり、ROMは、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0061】
記憶部72は、例えば、不揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等によって構成される。記憶部72は、画像形成の対象となる画像データ、画像読取部11で読み取って得た原稿画像の画像データ等を記憶する。また、記憶部72は、用紙特性情報DB(データベース)72aを記憶する。用紙特性情報DB72aについては、後述の図6を参照して詳述する。
【0062】
記憶部72に上述した各種プログラムが記憶される場合、記憶部72も、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。なお、プログラムのデータは、インターネット等の通信を介して画像形成装置1に提供されてもよい。
【0063】
制御部71は、用紙搬送制御部71aと、画像形成制御部71bと、剛度取得制御部71cと、第1剛度算出部71dと、弾性特性情報取得部71eと、第2剛度算出部71fと、目方向判定部71gと、制御パラメーター設定部71hと、を備える。
【0064】
用紙搬送制御部71aは、用紙搬送部50(図1参照)による用紙2の搬送動作を制御する。
画像形成制御部71bは、画像形成部30および定着部40による画像の形成動作を制御する。
【0065】
剛度取得制御部71cは、剛度取得ユニット61(図2図3参照)の動作を制御する。具体的には、剛度取得制御部71cは、剛度取得ユニット61が有するモータ616の駆動を制御するとともに、剛度取得ユニット61が有する押圧力検出部614の検出結果を取り込んで、第1剛度算出部71dに出力する。
【0066】
第1剛度算出部71d(第1剛度取得部の一例)は、剛度取得制御部71cから入力された押圧力検出部614による検出結果に基づいて、用紙2の搬送方向における用紙2の剛度(搬送方向剛度情報の一例)を算出する。
【0067】
弾性特性情報取得部71eは、メディアセンサ80が検出した各種検出値に基づいて、用紙特性情報DB72aを参照して、用紙2の弾性特性情報(本実施形態においてはヤング率)を取得する。そして、弾性特性情報取得部71eは、取得した用紙2の弾性特性情報を、第2剛度算出部71fに出力する。
【0068】
第2剛度算出部71f(第2剛度取得部の一例)は、弾性特性情報取得部71eが取得した用紙2の弾性特性情報を用いて、用紙2の長辺方向の剛度(長辺方向剛度情報の一例)及び短辺方向の剛度(短辺方向剛度情報の一例)を算出し、算出した各剛度の情報を目方向判定部71gに出力する。第2剛度算出部71fによる用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度の算出方法は、後述の図7を参照して詳述する。
【0069】
目方向判定部71gは、第1剛度算出部71dから入力された用紙2の剛度と、第2剛度算出部71fから入力された用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度と、を比較する。そして、目方向判定部71gは、第1剛度算出部71dから入力された搬送方向における用紙2の剛度と、第2剛度算出部71fから入力された用紙2の長辺方向の剛度とが一致した場合、用紙2の目は縦目であると判定する。一方、第1剛度算出部71dから入力された搬送方向における用紙2の剛度と、第2剛度算出部71fから入力された用紙2の短辺方向の剛度とが一致した場合、用紙2の目は横目であると判定する。目方向判定部71gは、判定結果を制御パラメーター設定部71hに出力する。
【0070】
なお、目方向判定部71gは、搬送方向における用紙2の剛度及び用紙2の長辺方向の剛度の比較と、搬送方向における用紙2の剛度及び用紙2の短辺方向の剛度の比較と、の両方行わなくてもよい。搬送方向における用紙2の剛度と、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度のいずれか一方とが一致した時点で、用紙2の目方向を判定してもよい。もしくは、搬送方向における用紙2の剛度と、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度のいずれか一方とが一致しなかった時点で、用紙2の目方向を判定してもよい。
【0071】
制御パラメーター設定部71hは、目方向判定部71gから入力された用紙2の目方向の情報に基づいて、制御パラメーターを設定する。制御パラメーターには、例えば、用紙搬送部50による用紙搬送動作を制御する用紙搬送パラメーター、画像形成部30による画像形成動作を制御する画像形成パラメーター、用紙2のカールの矯正を行うカール矯正パラメーター等がある。
【0072】
用紙搬送パラメーターには、例えば、用紙搬送速度がある。
画像形成パラメーターには、例えば、帯電器23による帯電電位、一次転写部33又は二次転写ローラ33aに供給する転写電流、定着部40における定着温度および定着圧力などを挙げることができる。
カール矯正パラメーターには、例えば、カール矯正部45のカール矯正ローラによって用紙に加えられる圧力、カール矯正ローラと用紙2との接触時間等がある。
【0073】
なお、画像形成装置1が後処理装置を備える場合には、制御パラメーターに後処理パラメーターが含まれてもよい。後処理パラメーターには、例えば、ステープル処理するための打ち込み圧力、紙折り処理するための駆動トルク等がある。
【0074】
制御パラメーター設定部71hによって設定された搬送パラメーターは、用紙搬送制御部71aによって用いられる。画像形成パラメーターは、画像形成制御部71bによって用いられる。なお、制御パラメーター設定部71hが設定する制御パラメーターには、ここで挙げた制御パラメーター以外の制御パラメーターが含まれてもよい。
【0075】
<用紙特性情報DBの構成>
次に、図6を参照して、用紙特性情報DB72aの構成について説明する。図6は、用紙特性情報DB72aの構成例を示す図である。
【0076】
図6に示すように、用紙特性情報DB72a(用紙特性情報記憶部の一例)においては、用紙2の特性を示す各種物性値(入力パラメーター)と、用紙2の弾力特性情報(出力パラメーター)とが対応付けられている。図6には、用紙2の特性を示す物性値として、「坪量」、「抵抗値」、「水分率」、「第1反射率」及び「第2反射率」の各情報が示されている。また、弾力特性情報として、「縦方向ヤング率」及び「横方向ヤング率」が示されている。
【0077】
ヤング率は、材料が弾性的に挙動する場合における応力とひずみとの比によって示される値であり、材料が固有に有する値である。用紙2におけるヤング率は、紙の組成、水分率及び目方向によって異なる。より具体的には、用紙2のヤング率は、用紙2がパルプ製の普通紙である場合には、パルプの密度、組成及びコート層の厚さによって定まる。用紙2が樹脂製の合成紙である場合には、ヤング率は、樹脂材料、配合物及び成形方法(温度、気泡含有等)により決定する。
【0078】
これらの組成の情報を、センサによる検出結果を用いて直接特定する事は困難であるが、組成及びヤング率は、用紙2の紙の銘柄によって一意に定まる。したがって、本実施形態では、用紙特性情報DB72aにおいて、各種入力パラメーターによって特定される用紙銘柄(“A”~“D”)と、用紙2のヤング率(縦(長辺)方向及び横(短辺)方向)とを対応付けている。
【0079】
例えば、用紙特性情報DB72aの1行目には、用紙2の銘柄“A”の坪量は“64g/m”であり、抵抗値は“57MΩ”であり、水分率は“4.1%”であり、第1反射率は“17%”であり、第2反射率は“2.3%”であることが示されている。また、銘柄“A”の用紙2の縦(長辺)方向ヤング率は“6.3GPa”であり、横(短辺)方向ヤング率は“4.9GPa”であることが示されている。
【0080】
したがって、弾性特性情報取得部71e(図5参照)は、メディアセンサ80による検出値が、用紙特性情報DB72aの1行目に示される物性値であった場合、用紙2の弾性特性情報として、縦方向ヤング率“6.3GPa”及び横方向ヤング率 “4.9GPa”の各値を取得する。
【0081】
なお、用紙特性情報DB72aには、ヤング率そのものでなく、例えば、指標や特性信号などの、ヤング率に代る値が格納されてもよい。また、弾性情報として、粘性を示す値や、粘弾性を示す値などが格納されてもよい。
【0082】
<目方向判定方法の概要>
次に、図7を参照して、画像形成装置1による目方向判定方法の概要について説明する。図7は、画像形成装置1による目方向判定方法の概要を示す図である。
【0083】
メディアセンサ80によって検出された用紙2の坪量、抵抗値、水分率、光学特性(第1反射率及び第2反射率)の各情報は、弾性特性情報取得部71e(図5参照)が、用紙2の長辺方向ヤング率及び短辺方向ヤング率を特定するための入力パラメーターとして用いられる。すなわち、弾性特性情報取得部71eは、メディアセンサ80が検出したこれらの各物性値に基づいて、用紙特性情報DB72a(図7参照)を参照して、用紙2の縦(長辺)方向ヤング率及び横(短辺)方向ヤング率を取得する。弾性特性情報取得部71eが取得した用紙2の縦方向ヤング率及び横方向ヤング率の各情報は、第2剛度算出部71fに出力される。
【0084】
なお、本実施形態では、弾性特性情報取得部71eは、用紙特性情報DB72aに記憶されたすべての種類の入力パラメーターの情報を用いて、用紙2の長辺方向ヤング率及び短辺方向ヤング率を特定する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。弾性特性情報取得部71eは、これらの入力パラメーターのうちの少なくとも一つ以上を用いて、用紙2の長辺方向ヤング率及び短辺方向ヤング率を特定してもよい。
【0085】
メディアセンサ80によって検出された用紙2の紙幅及び紙厚の情報は、第2剛度算出部71fに入力される。そして、第2剛度算出部71fは、弾性特性情報取得部71eから入力された用紙2の縦(長辺)方向ヤング率及び横(短辺)方向ヤング率、メディアセンサ80から入力された用紙2の紙幅及び紙厚、剛度取得ユニット61(図2,3参照)の製品固有値(剛度測定パラメーター:押し曲げ量Pr1及び押し曲げ距離Pr2)の情報を用いて、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度を算出する。
【0086】
具体的には、第2剛度算出部71fは、下記の式(1)を用いて用紙2の長辺方向又は短辺方向の剛度を算出する。
【0087】
剛度=紙幅×紙厚×押し曲げ量×定数×ヤング率…式(1)
【0088】
上記式(1)において、「紙厚」の乗数である「N」及び「定数」は、押し上げ部材613(図3参照)による用紙2の押し曲げ量Pr1、及び、押し曲げ距離Pr2によって変化する固定値である。「N」には、例えば、“2”~“4”のいずれかの値が設定される。
【0089】
第2剛度算出部71fによって算出された用紙2の長辺方向ヤング率及び短辺方向ヤング率の各情報は、目方向判定部71g(図5参照)に入力される。目方向判定部71gには、第1剛度算出部71dによって算出された用紙2の長辺方向の剛度の情報も入力される。そして、目方向判定部71gは、第1剛度算出部71dによって算出された用紙2の搬送方向における用紙2の剛度が、第2剛度算出部71fによって算出された用紙2の長辺方向の剛度と一致する場合、用紙2の目方向は縦目であると判定する。一方、第1剛度算出部71dによって算出された用紙2の剛度が、第2剛度算出部71fによって算出された用紙2の短辺方向の剛度と一致する場合、用紙2の目方向は横目であると判定する。
【0090】
<目方向判定方法の手順>
次に、図8を参照して、画像形成装置1による目方向判定方法の手順について説明する。図8は、画像形成装置1による目方向判定方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、画像形成装置1の弾性特性情報取得部71e(図5参照)は、メディアセンサ80による用紙2の物性値の測定結果を取得する(ステップS1)。次いで、弾性特性情報取得部71eは、ステップS1で取得した用紙2の物性値の測定結果に基づいて、用紙特性情報DB72aより、用紙2の長辺方向ヤング率及び短辺方向ヤング率を取得する(ステップS2)。次いで、第2剛度算出部71fは、メディアセンサ80が検出した用紙2の紙幅及び紙厚の情報を取得する(ステップS3)。
【0092】
次いで、第2剛度算出部71fは、ステップS2で取得した用紙2の長辺方向ヤング率及び短辺方向ヤング率、ステップS3で取得した用紙2の紙幅及び紙厚、及び、剛度取得ユニット61(図2、3参照)による用紙2の剛度測定パラメーターを用いて、用紙2の縦方の剛度及び短辺方向の剛度を算出する(ステップS4)。
【0093】
次いで、目方向判定部71gは、ステップS4で第2剛度算出部71fが算出した用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度と、第1剛度算出部71dによって算出された用紙2の搬送方向においける剛度と、を取得する(ステップS5)。
【0094】
次いで、目方向判定部71gは、第1剛度算出部71dによって算出された用紙2の搬送方向における剛度と、第2剛度算出部71fによって算出された用紙2の長辺方向の剛度と、が一致するか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6で、両剛度は一致すると判定された場合(ステップS6がYES判定の場合)、目方向判定部71gは、用紙2の目方向は縦目であると判定する(ステップS7)。
【0095】
一方、ステップS6で、両剛度は一致しないと判定された場合(ステップS6がNO判定の場合)、目方向判定部71gは、用紙の目方向は横目であると判定する(ステップS8)。ステップS7又はステップS8の処理後、画像形成装置1による目方向判定方法は終了する。
【0096】
上述した実施形態では、画像形成装置1は、用紙2の搬送方向において、押圧部612(図3参照)が用紙2の一部を押し曲げた場合における用紙2からの応力に基づいて、搬送方向における用紙2の剛度の情報を取得する第1剛度算出部71dを備える。また、画像形成装置1は、用紙2の長辺方向の剛度の情報、及び、用紙2の短辺方向の剛度の情報を取得する第2剛度算出部71fを備える。さらに、画像形成装置1は、用紙2の長辺方向の剛度の情報及と用紙2の短辺方向の剛度の情報の少なくともと一つと、搬送方向における用紙2の剛度の情報と、の比較結果に基づいて、用紙2の目方向を判定する目方向判定部71gと、を備える。したがって、本実施形態によれば、用紙2の用紙短辺方向の剛度、又は、斜め方向の剛度を測定するための長尺のレバー等を設けることなく、すなわち、装置を大型化することなく、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度を両方算出でき、これらの情報を用いて、用紙2の目方向を判定することができる。
【0097】
また、上述した実施形態では、用紙特性情報DB72a(図6参照)において、用紙2の縦(長辺)方向ヤング率及び横(短辺)方向ヤング率の各情報は、用紙2の特性の情報と対応付けて記憶される。そして、弾性特性情報取得部71eは、用紙2の特性を検出するメディアセンサ80による検出結果に基づいて、用紙特性情報DB72aから用紙2の縦方向ヤング率及び横方向ヤング率の各情報を、弾性情報として取得する。したがって、本実施形態によれば、弾性特性情報取得部71eは、第2剛度算出部71fによる用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度の算出に必要な、用紙2の長辺方向の弾性特性の情報及び短辺方向の弾性特性の情報を、メディアセンサ80による検出結果を用いて容易に取得することができる。
【0098】
また、上述した実施形態では、目方向判定部71gは、第1剛度算出部71dが算出した用紙2の搬送方向における用紙2の剛度と、第2剛度算出部71fが算出した用紙2の長辺方向の剛度とが一致した場合に、用紙2の目方向は縦目であると判定し、一致しない場合に、用紙2の目方向は横目であると判定する。したがって、本実施形態によれば、画像形成装置1を大型化することなく、用紙2の長辺方向及び短辺方向の両方の目方向を判定することができる。
【0099】
また、上述した実施形態では、メディアセンサ80は、用紙の水分率、坪量、抵抗値、表面特性、光学特性のうちの少なくとも一つの情報を、用紙2の特性として検出する。したがって、弾性特性情報取得部71eは、用紙2の剛度を決定づけるこれらの要素の情報に基づいて、用紙2の種類(銘柄)を特定することが可能となる。つまり、弾性特性情報取得部71eは、メディアセンサ80による検出結果に基づいて、用紙特性情報DB72aにおいて用紙2の銘柄と対応付けられている用紙2の弾性特性(縦(長辺)方向ヤング率及び横(短辺)方向ヤング率)の情報を、適切に取得することができる。これにより、目方向判定部71gは、用紙2の目方向を適切に判定することができる。
【0100】
また、上述した実施形態では、メディアセンサ80内に、用紙2の幅方向の幅及び紙厚を検出する紙幅紙厚センサが含まれる。そして、第2剛度算出部71fは、弾性特性情報取得部71eが取得した用紙2の縦方向ヤング率及び横方向ヤング率に加えて、紙幅紙厚センサによって検出された用紙2の紙幅及び紙厚の情報も用いて、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度を算出する。用紙2の剛度は、用紙2の紙幅や紙厚によっても変化する。本実施形態によれば、用紙2の紙幅や紙厚の情報も参照して用紙2の剛度が算出されるため、用紙2の剛度の算出精度を向上させることができ、これにより、用紙2の目方向を適切に判定することができる。
【0101】
また、上述した本実施形態では、メディアセンサ80が実際に検出した用紙2の紙幅の情報に基づいて用紙2の剛度が算出されるため、例えば、ユーザーが給紙トレイ51に誤った向きで用紙2をセットした場合であっても、セットされた用紙2の方向ではなく、メディアセンサ80による検出結果に基づいて目方向が判定される。したがって、本実施形態によれば、ヒューマンエラー等に起因して、用紙2の目方向と一致しない方向で用紙2に画像が形成されてしまうことを、防ぐことができる。
【0102】
また、上述した実施形態では、第2剛度算出部71fは、メディアセンサ80の紙幅紙厚センサが検出した用紙2の紙幅、紙厚のN乗、押圧部612(図3参照)による用紙2の押し曲げ量、押圧部612による用紙2の押し曲げ量及び押し曲げ距離によって変化する固定値である定数、及び、用紙2の縦方向の弾性特性又は横方向のヤング率のすべてを乗算することによって、用紙2の長辺方向の剛度又は短辺方向の剛度を算出する。したがって、本実施形態によれば、センサ等の検出値に基づく用紙2の組成の特定等を行うことなく、用紙2の剛性を算出することができる。
【0103】
また、上述した実施形態では、押圧部612及びメディアセンサ80は、いずれも画像形成装置1内の搬送路53(図1参照)上に配置される。すなわち、用紙2の搬送方向における用紙2の剛度の算出時に用いられる各種パラメーター、及び、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度の算出に用いられる各種パラメーターは、搬送路53上に配置されたこれらの機器が得た情報に基づいて自動的に算出される。つまり、本実施形態では、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度の算出に、ハンディタイプの計測器等を用いたユーザーによる測定の測定結果等は使用されない。したがって、本実施形態によれば、ユーザーによる測定が不適切であることに起因して、用紙2の剛性が正確に算出されない事態が発生してしまうことを、防ぐことができる。これにより、用紙2の目方向を適切に判定することができる。
【0104】
<変形例>
用紙2のヤング率は、画像形成装置1の使用環境、例えば、画像形成装置1が設置された環境における湿度によっても変化する。したがって、例えば、用紙特性情報DB72a(図6参照)において、複数種類の水分率に対応する複数種類のヤング率を予め定義しておけば、どのような環境において画像形成装置1が使用される場合であっても、弾性特性情報取得部71eは、用紙特性情報DB72aより、周囲環境に応じた適切なヤング率を取得することが可能となる。しかし、画像形成装置1の様々な使用環境に対応させることを目的として、用紙特性情報DB72aに登録する水分率と補正値との組の数を増やした場合、用紙特性情報DB72aに記憶されるデータ量は増大してしまう。
【0105】
本変形例においては、画像形成装置1A(図9参照)は、弾性特性情報取得部71eが用紙特性情報DB72aから取得したヤング率を、第2剛度算出部71fが、用紙2の水分率と対応付けられた補正値を用いて補正する。
【0106】
[画像形成装置の構成]
図9は、本変形例に係る画像形成装置1Aの制御系の構成例を示すブロック図である。図9において、図5に示した画像形成装置1と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0107】
図9に示す画像形成装置1Aが、図5に示した画像形成装置1と異なる点は、図9に示す用紙特性情報DB72aにおいては、所定の環境(例えば、温度23度、湿度55%)における用紙2の縦(長辺)方向ヤング率及び横(短辺)方向ヤング率が記憶されている点である。また、記憶部72に、補正値テーブル72bが記憶される点である。補正値テーブル72bは、メディアセンサ80が検出した実際の水分率、及び、上述した所定の環境における用紙の水分率の差である水分率差と、ヤング率の補正値と、が対応付けられたテーブルである。
【0108】
第2剛度算出部71fは、メディアセンサ80が検出した実際の用紙2の水分率に基づいて、補正値テーブル72bより補正値を取得し、該補正値を用いて、用紙特性情報DB72aから取得した縦方向及び横方向の各ヤング率を補正する。そして、第2剛度算出部71fは、補正した縦方向及び横方向の各ヤング率に基づいて、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度を算出する。
【0109】
図10は、補正値テーブル72bの構成例を示すグラフである。図10に示すグラフの縦軸は補正値を示し、横軸は水分率差(%)を示す。横軸に示す水分率差は、メディアセンサ80が検出した実際の水分率から、所定の環境の水分率を減算して得られる値である。
【0110】
例えば、図10に示す補正値テーブル72bにおいては、水分率差の“-1.5%”には補正値の“0.8”が対応付けてあり、水分率差の“0%”には補正値の“1”が対応付けてあり、水分率差の“+1.5%”には補正値の“1.2”が対応付けてある。
【0111】
[目方向判定方法の概要]
次に、図11を参照して、本変形例に係る画像形成装置1Aによる目方向判定方法の概要について説明する。図11は、画像形成装置1Aによる目方向判定方法の概要を示す図である。
【0112】
図7に示した例と、図11に示す本変形例とが異なる点は、メディアセンサ80によって検出された用紙2の水分率の情報が、第2剛度算出部71fによるヤング率の補正に用いられる点である。
【0113】
メディアセンサ80によって検出された用紙2の坪量、抵抗値、光学特性(第1反射率及び第2反射率)の各情報は、弾性特性情報取得部71e(図9参照)が、用紙2の長辺方向ヤング率及び短辺方向ヤング率を特定するための入力パラメーターとして用いられる。すなわち、弾性特性情報取得部71eは、メディアセンサ80が検出したこれらの各物性値に基づいて、用紙特性情報DB72a(図6参照)を参照して、用紙2の縦(長辺)方向ヤング率及び横(短辺)方向ヤング率を取得する。弾性特性情報取得部71eが取得した用紙2の縦方向ヤング率及び横方向ヤング率の各情報は、第2剛度算出部71fに入力される。
【0114】
第2剛度算出部71fは、メディアセンサ80が検出した用紙2の水分率に基づいて、補正値テーブル72bから補正値を取得する。すなわち、第2剛度算出部71fは、メディアセンサ80が検出した用紙2の水分率と、所定の環境下における用紙の水分率との水分率差に対応付けられた補正値を取得する。
【0115】
そして、第2剛度算出部71fは、弾性特性情報取得部71eから入力された用紙2の縦方向ヤング率及び横方向ヤング率に、補正値テーブル72bから取得した補正値を乗算することにより、長辺方向及び短辺方向の各ヤング率を補正する。
【0116】
なお、用紙2が樹脂を主成分とする合成紙である場合には、本変形例によるヤング率の補正は行わなくてもよい。合成紙は吸湿しないため、水分率による剛性の変化も発生しないためである。
【0117】
[目方向判定方法の手順]
次に、図12を参照して、本変形例に係る画像形成装置1Aによる目方向判定方法の手順について説明する。図12は、画像形成装置1Aによる目方向判定方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0118】
図12のステップS11~ステップS13までの各処理は、図8のステップS1~ステップS3の処理と同様であるため、ここではこれらの各ステップにおける処理の説明は省略する。
【0119】
ステップS14では、第2剛度算出部71f(図9参照)は、メディアセンサ80が取得した用紙2の水分率の情報を取得する。次いで、第2剛度算出部71fは、ステップS14で取得した水分率を用いて算出した水分率差に対応する補正値を、補正値テーブル72bから取得する(ステップS15)。
【0120】
次いで、第2剛度算出部71fは、ステップS12で取得した用紙2の縦方向ヤング率及び横方向ヤング率のそれぞれに、ステップS15で取得した補正値を乗算することにより、用紙2の縦方向ヤング率及び横方向ヤング率を補正する(ステップS16)。
【0121】
次いで、第2剛度算出部71fは、ステップS16で補正した用紙2の縦方向ヤング率及び横方向ヤング率、ステップS13で取得した用紙2の紙幅及び紙厚、及び、剛度取得ユニット61(図2、3参照)による用紙2の剛度測定パラメーターの各情報を用いて、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度を算出する(ステップS17)。
【0122】
ステップS18~ステップS21の各処理は、図8のステップS5~ステップS8の処理と同様であるため、ここではこれらの各ステップにおける処理の説明は省略する。
【0123】
上述した変形例では、第2剛度算出部71fは、メディアセンサ80によって検出された用紙2の水分率と、弾性特性情報取得部71eが用紙特性情報DB72aから取得した所定の環境下における用紙の水分率との水分率差に基づいて、補正値テーブル72b(図10参照)から補正値を取得する。そして、第2剛度算出部71fは、取得した補正値を用いて、用紙2の縦方向のヤング率及び横方向のヤング率を補正する。したがって、画像形成装置1の周囲環境がどのような環境である場合であっても、その環境に基づいて変化した用紙2の水分率に基づいて、用紙2の剛度の算出に用いられるヤング率が適切に補正されるため、用紙2の長辺方向の剛度及び短辺方向の剛度の算出精度を向上させることができる。つまり、本変形例によれば、用紙2の目方向をより適切に判定できるようになる。
【0124】
なお、上述した実施形態及び変形例においては、剛度取得ユニット61において、用紙2を所定量だけ曲げたときに用紙2から受ける押圧力により、用紙2の剛度を測定する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らない。たとえば、剛度取得ユニット61において、用紙2を所定の押圧力で曲げたときの用紙2の変形量により、用紙2の剛度を測定してもよい。用紙2の変形量は、ホームポジションからの押し上げ部材613の移動量(上昇量)によって測定してもよいし、図示しない変位センサ(距離センサ)によって測定してもよい。
【0125】
また、上述した実施形態及び変形例では、本発明の用紙搬送装置を、画像形成部30(図5参照)を有する画像形成装置1に適用した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明の用紙搬送装置は、画像形成部を備えない用紙搬送装置、すなわち、画像形成装置とは別体で設けられ、該画像形成装置に用紙を搬送する用紙搬送装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1、1A…画像形成装置、53…搬送路、60…剛度取得部、61…剛度取得ユニット、71…制御部、71a…用紙搬送制御部、71b…画像形成制御部、71c…剛度取得制御部、71d…第1剛度算出部、71e…弾性特性情報取得部、71f…第2剛度算出部、71g…目方向判定部、71h…制御パラメーター設定部、72…記憶部、72a…用紙特性情報DB(データベース)、72b…補正値テーブル、80…メディアセンサ
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