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特開2023-154906搬送ユニット、移動体システム、及び、移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154906
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】搬送ユニット、移動体システム、及び、移動体
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B61B13/00 S
B61B13/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064543
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】李 周浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 叶佳
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BA03
3D101BB08
3D101BB10
3D101BB12
3D101BB16
3D101BB24
3D101BB38
3D101BB43
3D101BC03
3D101BC18
(57)【要約】
【課題】異なる第1対象面と第2対象面との間で移動体が移動可能となる搬送ユニットを提供する。
【解決手段】搬送ユニット300は、対象面S1,S2上を移動可能な移動体1を、異なる第1対象面S1と第2対象面S2との間で搬送する、移動体の搬送ユニットであって、第1対象面と第2対象面との間に取り付け可能な搬送ガイド7と、移動体を搭載し、第1対象面と第2対象面との間で搬送ガイドに沿って移動することで、移動体を第1対象面と第2対象面との間で搬送する搬送体3と、を備え、搬送体は、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面上を移動可能な移動体を、異なる第1対象面と第2対象面との間で搬送する、前記移動体の搬送ユニットであって、
前記第1対象面と前記第2対象面との間に取り付け可能な搬送ガイドと、
前記移動体を搭載し、前記第1対象面と前記第2対象面との間で前記搬送ガイドに沿って移動することで、前記移動体を前記第1対象面と前記第2対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、
前記搬送体は、前記移動体を搭載した搬送状態において、前記搬送体を移動させる動力源を有する
搬送ユニット。
【請求項2】
前記動力源は、前記移動体に搭載されており、
前記搬送体は、前記搬送状態において前記移動体の前記動力源からの動力を受けて、前記搬送のために駆動する駆動部を有する
請求項1に記載の搬送ユニット。
【請求項3】
前記搬送ガイドは、前記第1対象面と前記第2対象面とをつなぐ搬送用レールを有し、
前記移動体は、前記搬送用レールを把持する把持部を複数有し、
前記移動体は、複数の前記把持部で前記搬送用レールを把持しつつ前記搬送用レールに沿って移動する
請求項1に記載の搬送ユニット。
【請求項4】
前記対象面上には複数の突起が設けられており、
前記移動体は、移動に従って進行方向に配置された複数の前記突起に順に係合し、
前記搬送体は、前記突起が設けられた、前記移動体の搭載面を有する
請求項1に記載の搬送ユニット。
【請求項5】
前記対象面上の前記複数の前記突起は所定間隔で設けられており、
前記搭載面には、複数の前記突起が前記所定間隔で設けられている
請求項4に記載の搬送ユニット。
【請求項6】
移動体が移動する軌道が設けられた対象面と、
前記対象面と、隣接して設置された他の対象面との間に取り付け可能な搬送ガイドと、
前記移動体を搭載し、前記対象面と前記他の対象面との間で前記搬送ガイドに沿って移動することで、前記移動体を前記対象面と前記他の対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、
前記搬送体は、前記移動体を搭載した搬送状態において、前記搬送体を移動させる動力源を有する
移動体システム。
【請求項7】
移動体と、
前記移動体が移動する軌道が設けられた対象面と、
前記対象面と、隣接して設置された他の対象面との間に取り付け可能なガイドと、
前記移動体を搭載し、前記対象面と前記他の対象面との間で前記ガイドに沿って移動することで、前記移動体を前記対象面と前記他の対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、
前記搬送体は、前記移動体を搭載した搬送状態において、前記搬送体を移動させる動力源を有する
移動体システム。
【請求項8】
複数の突起が設けられた対象面上を移動可能な移動体であって、
移動用レールと、
進行方向に移動させる移動部と、
前記移動部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記移動用レールは、
前記突起に係合可能であって、前記突起からの脱落を防止する係合部と、
前記係合部での前記係合を固定するロック部と、
前記進行方向への移動に伴う前記突起と前記移動用レールとの相対移動をガイドするガイド部と、を含み、
前記対象面には、隣接する他の対象面との間に搬送ガイドが取り付けられ、
前記搬送ガイドに沿って移動する搬送体であって、搭載面に前記突起を有する搬送体の前記搭載面に、前記移動部による移動によって搭載可能であって、
前記制御部は、前記移動体の前記搭載面への搭載を検出すると、前記ロック部に、前記係合部での前記係合を固定させる、ように構成されている
移動体。
【請求項9】
前記制御部は、前記対象面上に設けられた前記突起の位置を予め記憶しておき、
前記移動体の前記搭載面への搭載を検出することは、前記移動部での移動に伴って前記係合部で係合した前記突起の前記対象面上での位置を検出することを含む
請求項8に記載の移動体。
【請求項10】
前記搬送体は、前記搭載面に搭載された前記移動体の前記移動部による動力を用いて前記搬送ガイドに沿った移動を行うように構成されており、
前記制御部は、前記移動体の前記搭載面への搭載を検出すると、前記移動部を、前記搬送体の前記移動用の駆動を行わせる、ように構成されている
請求項8に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送ユニット、移動体システム、及び、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-30922号公報(以下、特許文献1)などにおいて、対象面の指定される位置に移動体を移動させることができる移動体システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-30922号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に開示されたような移動体を、異なる対象面間において移動させたいという要望がある。例えば、移動体を室内の内周面上で移動させる場合、異なる壁面間や、壁面と天井との間も移動体を移動させたいという要望がある。そのため、異なる第1対象面と第2対象面との間で移動体が移動可能となる搬送ユニット、及び、移動体システム、並びに、移動可能な移動体が望まれる。
【0005】
ある実施の形態に従うと、搬送ユニットは、対象面上を移動可能な移動体を、異なる第1対象面と第2対象面との間で搬送する、移動体の搬送ユニットであって、第1対象面と第2対象面との間に取り付け可能な搬送ガイドと、移動体を搭載し、第1対象面と第2対象面との間で搬送ガイドに沿って移動することで、移動体を第1対象面と第2対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、搬送体は、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有する。
【0006】
他の実施の形態に従うと、移動体システムは、移動体が移動する軌道が設けられた対象面と、対象面と、隣接して設置された他の対象面との間に取り付け可能な搬送ガイドと、移動体を搭載し、対象面と他の対象面との間で搬送ガイドに沿って移動することで、移動体を対象面と他の対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、搬送体は、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有する。
【0007】
他の実施の形態に従うと、移動体システムは、移動体と、移動体が移動する軌道が設けられた対象面と、対象面と、隣接して設置された他の対象面との間に取り付け可能なガイドと、移動体を搭載し、対象面と他の対象面との間でガイドに沿って移動することで、移動体を対象面と他の対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、搬送体は、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有する。
【0008】
他の実施の形態に従うと、移動体は、複数の突起が設けられた対象面上を移動可能な移動体であって、移動用レールと、進行方向に移動させる移動部と、移動部の駆動を制御する制御部と、を備え、移動用レールは、突起に係合可能であって、突起からの脱落を防止する係合部と、係合部での係合を固定するロック部と、進行方向への移動に伴う突起と移動用レールとの相対移動をガイドするガイド部と、を含み、対象面には、隣接する他の対象面との間に搬送ガイドが取り付けられ、搬送ガイドに沿って移動する搬送体であって、搭載面に突起を有する搬送体の搭載面に、移動部による移動によって搭載可能であって、制御部は、移動体の搭載面への搭載を検出すると、ロック部に、係合部での係合を固定させる、ように構成されている。
【0009】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る移動体システム、及び、移動体システムに含まれる、移動体を搬送する搬送ユニットの概略図である。
図2図2は、対象面の表面の概略図である。
図3図3は、移動体を搭載した搬送体の概略図である。
図4図4は、移動体の斜視図である。
図5図5は、移動体の平面図である。
図6図6は、移動体の底面図である。
図7図7は、移動体の正面図である。
図8図8は、移動体の側面図である。
図9図9は、移動体の切替部材を説明するための概略図である。
図10図10は、搬送体の斜視図である。
図11図11は、搬送体の平面図である。
図12図12は、搬送体の、移動体を搭載した状態での正面図である。
図13図13は、搬送体の駆動部を説明するための図である。
図14図14は、搬送体の駆動部を説明するための図である。
図15図15は、制御装置での、移動体の移動の制御の流れの一例を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.搬送ユニット、移動体システム、及び、移動体の概要>
【0012】
(1)本実施の形態に含まれる搬送ユニットは、対象面上を移動可能な移動体を、異なる第1対象面と第2対象面との間で搬送する、移動体の搬送ユニットであって、第1対象面と第2対象面との間に取り付け可能な搬送ガイドと、移動体を搭載し、第1対象面と第2対象面との間で搬送ガイドに沿って移動することで、移動体を第1対象面と第2対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、搬送体は、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有する。
【0013】
搬送体が、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有することによって、対象面などの搬送体以外に動力源を設置する必要がない。そのため、既存の第1対象面と第2対象面に対して、容易に搬送ユニットを設置することができる。その結果、異なる第1対象面と第2対象面との間で移動体を容易に移動させることができる。
【0014】
(2)好ましくは、動力源は、移動体に搭載されており、搬送体は、搬送状態において移動体の動力源からの動力を受けて、搬送のために駆動する駆動部を有する。これにより、搬送体に動力源が不要、又は、簡易なものとすることができる。
【0015】
(3)好ましくは、搬送ガイドは、第1対象面と第2対象面とをつなぐ搬送用レールを有し、移動体は、搬送用レールを把持する把持部を複数有し、移動体は、複数の把持部で搬送用レールを把持しつつ搬送用レールに沿って移動する。これにより、搬送体の位置を搬送用レールに対して安定させて移動させることができる。そのため、搬送用レールを曲線形状とすることが可能になり、第1対象面と第2対象面とに角度がある場合であっても、搬送体を利用して移動体を搬送可能になる。
【0016】
(4)好ましくは、対象面上には複数の突起が設けられており、移動体は、移動に従って進行方向に配置された複数の突起に順に係合し、搬送体は、突起が設けられた、移動体の搭載面を有する。これにより、移動体を、対象面上での移動と同様の動作によって搭載面に搭載させることができる。
【0017】
(5)好ましくは、対象面上の複数の突起は所定間隔で設けられており、搭載面には、複数の突起が所定間隔で設けられている。これにより、移動体を、対象面上での移動と同様の動作によって搭載面に搭載させることができる。
【0018】
(6)本実施の形態に含まれる移動体システムは、好ましくは、移動体が移動する軌道が設けられた対象面と、対象面と隣接して設置された他の対象面との間に取り付け可能な搬送ガイドと、移動体を搭載し、対象面と他の対象面との間で搬送ガイドに沿って移動することで、移動体を対象面と他の対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、搬送体は、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有する。
【0019】
搬送体が、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有することによって、対象面などの搬送体以外に動力源を設置する必要がない。そのため、異なる第1対象面と第2対象面との間で移動体を容易に移動させることができる。
【0020】
(7)本実施の形態に含まれる移動体システムは、移動体と、移動体が移動する軌道が設けられた対象面と、対象面と、隣接して設置された他の対象面との間に取り付け可能なガイドと、移動体を搭載し、対象面と他の対象面との間でガイドに沿って移動することで、移動体を対象面と他の対象面との間で搬送する搬送体と、を備え、搬送体は、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有する。
【0021】
搬送体が、移動体を搭載した搬送状態において、搬送体を移動させる動力源を有することによって、対象面などの搬送体以外に動力源を設置する必要がない。そのため、異なる第1対象面と第2対象面との間で移動体を容易に移動させることができる。
【0022】
(8)本実施の形態に含まれる移動体は、複数の突起が設けられた対象面上を移動可能な移動体であって、移動用レールと、進行方向に移動させる移動部と、移動部の駆動を制御する制御部と、を備え、移動用レールは、突起に係合可能であって、突起からの脱落を防止する係合部と、係合部での係合を固定するロック部と、進行方向への移動に伴う突起と移動用レールとの相対移動をガイドするガイド部と、を含み、対象面には、隣接する他の対象面との間に搬送ガイドが取り付けられ、搬送ガイドに沿って移動する搬送体であって、搭載面に突起を有する搬送体の搭載面に、移動部による移動によって搭載可能であって、制御部は、移動体の搭載面への搭載を検出すると、ロック部に、係合部での係合を固定させる、ように構成されている。これにより、移動体は、搬送体に搭載された搬送状態での搬送体の移動に従って、隣接する他の対象面に搬送されることができる。
【0023】
(9)好ましくは、制御部は、対象面上に設けられた突起の位置を予め記憶しておき、移動体の搭載面への搭載を検出することは、移動部での移動に伴って係合部で係合した突起の対象面上での位置を検出することを含む。これにより、制御部は、突起を検出することによって移動体の搬送体への搭載を検出することができる。
【0024】
(10)好ましくは、搬送体は、搭載面に搭載された移動体の移動部による動力を用いて搬送ガイドに沿った移動を行うように構成されており、制御部は、移動体の搭載面への搭載を検出すると、移動部を、搬送体の移動用の駆動を行わせる、ように構成されている。移動用の駆動は、搬送体を移動させるための移動部の駆動を指し、一例として、対象面での移動のための駆動であってよい。他の例として、対象面での移動と異なる移動のための駆動であってよい。
【0025】
<2.搬送ユニット、移動体システム、及び、移動体の例>
【0026】
図1は、本実施の形態に係る移動体システム100、及び、移動体システム100に含まれる、移動体1を搬送する搬送ユニット300の概略図である。図1を参照して、移動体システム100は、第1対象面S1及び第2対象面S2と、対象面S1,S2上を移動可能な移動体1と、を有する。対象面S1,S2は、平面でも曲面でもよい。対象面S1,S2は、連続せずに隣接した面である。対象面S1,S2は、一例として、第1対象面S1は居室の天井面Cに設置され、第2対象面S2は居室の壁面Wに設置されている。
【0027】
図2は、対象面S1,S2を代表させた対象面Sの表面の概略図である。対象面Sの表面は、移動体1が移動する側の面を指す。図2を参照して、対象面S上には、軌道Ox,Oy上に複数の突起5が設けられている。移動体1は、軌道Ox,Oyに沿って移動。する。軌道Ox,Oyは、直線であっても曲線であってもよい。ここでは軌道Ox,Oyは、直線であるものとする。また、軌道Ox,Oyは、角度を有する軌道Ox及び軌道Oyである。すなわち、軌道Ox,Oyは、それぞれ、第1の方向及び第2の方向の軌道である。一例として、第1の方向と第2の方向とは直交し、図12では第1の方向をX方向、第2の方向をY方向で表している。また、図2では、対象面S上に、X方向に伸びる複数の軌道Ox1,Ox2,Ox3,Ox4、及び、Y方向に伸びる複数の軌道OyA,OyB,OyC,OyD,OyEが併設されている。軌道Ox1,Ox2,Ox3,Ox4を代表させて軌道Ox、軌道OyA,OyB,OyC,OyD,OyEを代表させて軌道Oyとする。
【0028】
軌道Ox上には複数の突起5が間隔d1の等間隔に配置されている。また、軌道Oy上には複数の突起5が間隔d2の等間隔に配置されている。すなわち、複数の突起5は、第1の方向と第2の方向とに、対象面Sに二次元に配置されている。これにより、後述の仕組みで移動体1を移動させる際に、二次元に移動させることができる。なお、突起5の間隔d1,d2を代表して間隔dとも称する。
【0029】
詳しくは、図2の例では、軌道Ox1上に間隔d1で突起5-1A,5-1B,5-1C,5-1D,5-1Eが配置され、軌道Ox2上に間隔d1で突起5-2A,5-2B,5-2C,5-2D,5-2Eが配置され、…軌道Ox4上に間隔d1で突起5-4A,…,5-4Eが配置されている。また、軌道OyA上に間隔d2で突起5-1A,5-2A,5-3A,5-4Aが配置され、軌道OyB上に間隔d2で突起5-1B,5-2B,5-3B,5-4Bが配置され、…軌道OyE上に間隔d2で突起5-1E,…,5-4Eが配置されている。これら突起5-1A~5-4Eを代表させて突起5とする。
【0030】
軌道Ox上の突起5の間隔d1と軌道Oy上の突起5の間隔d2とは等しくてもよい(d1=d2)。つまり、複数の突起5は、直交するX方向及びY方向の両方向に等間隔で配置される。これにより、後述の仕組みで移動体1を移動させる際に、二次元の移動が容易になる。
【0031】
移動体1は、突起5からの脱落せずに係合した状態で、軌道Ox,Oyに沿って、つまり、X方向又はY方向を進行方向として移動する。そのため、移動体1及び突起5の少なくとも一方は、移動体1が突起5から脱落せずに係合するための係合構造を有する。突起5の係合構造の一例は、図2に示された係合部5aである。係合部5aは、突起5の対象面Sから遠い側の端部、つまり、突起5の先端に設けられた、突起5の凸方向とは異なる方向に突出した形状を有する。これにより、移動体1側に凹形状の部分を形成することで、移動体1を突起5から脱落せずに係合することが可能になる。
【0032】
搬送ユニット300は、第1対象面S1と第2対象面S2との間に取り付け可能な搬送ガイド7と、搬送体3と、を含む。搬送ガイド7は、第1対象面S1と第2対象面S2とをつなぐ搬送用レール7A,7Bを有する。搬送用レール7Aは直線部のレールであって、搬送用レール7Bは曲線部のレールである。詳しくは、搬送ガイド7は、第1対象面S1の端部から第1対象面S1と平行に延びる直線部の搬送用レール7Aと、第2対象面S2の端部から第2対象面S2と平行に延びる直線部の搬送用レール7Aと、その間をつなぐ曲線部の搬送用レール7Bとを含む。
【0033】
図3は、移動体1を搭載した搬送体3の概略図である。図3を参照して、搬送体3は搭載面32を有し、搭載面32上に移動体1を搭載する。移動体1を搭載面32上に搭載して第1対象面S1と第2対象面S2との間で搬送ガイド7に沿って移動することで、搬送体3は、移動体1を第1対象面S1と第2対象面S2との間で搬送する。
【0034】
図4図9は、移動体1を説明するための図である。図4は、移動体1の斜視図である。図5は、移動体1の平面図である。図6は、移動体1の底面図である。図7は、移動体1の正面図である。図8は、移動体1の側面図である。図9は、移動体1の切替部材14を説明するための概略図である。
【0035】
図を参照して、移動体1は、移動用レール(以下、レールと言う)11を有する。レール11は、例えば、アルミフレームである。詳しくは、移動体1は、第1の方向であるD1方向に延伸し、長さL1の2本のレール11-1A,11-1Bと、第2の方向であるD2方向に延伸し、長さL2の2本のレール11-2A,11-2Bと、を有する。これらレール11-1A,11-1B,11-2A,11-2Bを代表してレール11と称する。また、D1方向に延伸するレールをレール11-1、D2方向に延伸するレールをレール11-2とも称する。また、レール11の長さL1,L2を代表させて長さLとも称する。なお、ここでのレール11は、連続した一体のレールのみならず、延伸方向を同一として接手などによって接合された複数のレールを含んでもよい。
【0036】
レール11-1A,11-1Bの間隔E1、及び、レール11-2A,11-2Bの間隔E2は、いずれも、各レール11-1,11-2の方向に連続する突起5の間隔dの2倍(間隔d×2)の長さである。これにより、レール11-1A,11-1B、及び、レール11-2A,11-2Bは、共に、同時に複数の突起5と係合可能になる。その結果、移動体1は、軌道Ox,Oyに沿って移動することができる。
【0037】
D1方向とD2方向とのなす角度は、軌道Ox,Oyのなす角度に対応している。一方のレールが軌道Oxの移動に用いられ、他方のレールが軌道Oyの移動に用いられるためである。この例では、D1方向とD2方向とは直交する。これにより、移動時の方向転換が容易になる。
【0038】
移動体1は、さらに、移動体1を進行方向に移動させる移動部として、ローラ12と、ローラ12を回転させる駆動部13と、を有する。一例として、移動体1は、中央部分に、平行に取り付けられたローラ12A,12Bを有する。ローラ12A,12Bは、レール11を含む平面内にて回転可能に取り付けられている。ローラ12A,12Bを代表させてローラ12と称する。
【0039】
駆動部13はモータ等の動力源を含み、後述の制御装置200からの制御に従って、動力源からの動力によってローラ12A,12Bを回転させる。また、駆動部13は、後述の制御装置200からの制御に従って、ローラ12A,12Bの方向をレール11を含む平面内にて変更する。また、駆動部13は、後述の制御装置200からの制御に従って、ローラ12A,12Bの回転方向を正回転と逆回転とで切り替える。
【0040】
ローラ12が対象面Sと接触しながら回転することによって、対象面Sとの間で生じる摩擦力に従って移動体1はD1方向又はD2方向の推進力を得る。これにより、移動体1の進行方向をD1方向又はD2方向とすることができる。また、移動体1の進行方向をD1方向とD2方向とで切り替えることができる。
【0041】
図7を参照して、レール11は、ガイド部112を有する。ガイド部112は、突起5の進入を許容するよう形成されたレール11の内空である。その内空は、突起5とレール11との相対移動をガイドするように、延伸方向に連続して溝を形成している。これにより、レール11内部に進入した突起5の、内部での延伸方向への移動がガイドされる。その結果、突起5とレール11との相対移動が実現される。
【0042】
図7を参照して、レール11は、係合部111を有する。係合部111は、レール11側の係合構造である。係合部111は、ガイド部112の内壁よりレール11の内側に突出した凸形状の鍔部である。図7の例の場合、突起5の係合部5aは突起5の凸方向を対称軸として少なくとも両側、好ましくは、放射状に突出している。これに対して、係合部111は、突起5を挟むように、突起5の凸方向を対称軸として両側から突出している。これにより、図7に示されたように、突起5の係合部5aは凸方向を対称軸とした両側が、係合部111と係合する。
【0043】
レール11の端部には、ガイドパーツ113が設置されている。ガイドパーツ113は開口している。これにより、突起5は、移動体1の移動に伴ってガイドパーツ113の開口を通過してガイド部112に進入する。鍔部は、延伸方向に連続して形成されている。そのため、突起5がガイド部112内で延伸方向に移動すると、係合部5aの係合部111への係合が突起5の移動の間も維持される。これにより、移動体1は突起5から脱落せずに係合状態を維持して軌道Ox,Oyに沿って移動することができる。
【0044】
ガイドパーツ113の幅はレール11の幅より大きい。そのため、ガイド部112の中心が多少、突起5から幅方向にずれていても、突起5がガイドパーツ113の幅内にあるような位置であれば、突起5を移動体1の移動に伴ってガイド部112に進入させることができる。これにより、開口しているガイド部112への突起5の進入が容易になる。
【0045】
突起5の係合構造及びレール11の係合構造は、例示された係合部5a及び係合部111に限定されない。他の例として、突起5及びレール11の係合構造は、いずれも、1方向のみに突出したかぎ型形状であって、それらが係合するものであってもよい。
【0046】
好ましくは、移動体1は、係合部111での係合を固定するロック部17を有する。ロック部17は、後述の制御装置200からの制御に従って、係合の固定、解除を行う。ロック部17の構成は特定の構成に限定されない。ロック部17は、一例として、支柱131によって駆動部13に取り付けられ、ローラ12A,12Bの回転を停止、許容する機構を含んでもよい。
【0047】
好ましくは、レール11の長さLは、進行方向に並ぶ突起5の3つ分の間隔、つまり、進行方向に連続する突起5の間隔dの2倍(間隔d×2)より長い(L>2×d)。これにより、移動体が軌道Ox,Oyに沿って移動する際に、レール11は、同時に複数の突起5と係合可能になる。その結果、レール11は軌道Ox、Oyとの平行が保たれやすくなり、開口しているガイド部112への突起5の進入が容易になる。そのため、移動体1を対象面Sに対して安定した状態で移動させることができる。
【0048】
D1方向に延伸するレール11-1とD2方向に延伸するレール11-2との交差部には、切替部材14が配置されている。詳しくは、レール11-1Aとレール11-2Aとの交差部に切替部材14A、レール11-1Aとレール11-2Bとの交差部に切替部材14B、レール11-1Bとレール11-2Bとの交差部に切替部材14C、及び、レール11-1Bとレール11-2Aとの交差部に切替部材14Dが配置されている。これら切替部材14A~14Dを代表させて切替部材14と称する。
【0049】
切替部材14は、2本のレール11の交差部であって、レール11のガイド部112に内に設けられている。図9に示されるように、切替部材14は、交差する2本のレールの一方の延伸方向のガイド部112への突起5の進入を許容し、他方の延伸方向のガイド部112への突起5の進入を非許容とする。図9の上の図は、D1方向への突起5の進入を許容し、D2方向への進入を非許容とした状態であって、第1の進行状態とする。また、図9の下の図は、D2方向への突起5の進入を許容し、D1方向への進入を非許容とした状態であって、第2の進行状態とする。
【0050】
切替部材14A~14Dには、それぞれ、駆動部15A~15Dが接続されている。駆動部15A~15Dを代表させて駆動部15とも称する。なお、駆動部15A~15Dは、単一の駆動源を切替部材14A~14Dそれぞれに接続するものであってもよい。
【0051】
駆動部15は、制御装置200の制御信号に従って、接続されている切替部材14を駆動し、突起5の進入を許容するレール11を切り替えさせる。一例として、図9に示されたように、切替部材14をR3回転方向に回転させ、第1の進行状態と第2の進行状態とを切り替える。これにより、移動体1の進行方向を容易に切り替えることができる。その結果、目的とする位置に移動体1を容易に移動させることができる。
【0052】
一例として、切替部材14には、ガイド部112と同形状の溝が形成されている。そして、駆動部15は、溝の向く方向を切り替えるように切替部材14を回転させることによって各方向のレール11への突起5の進入を許容/非許容とする。この場合、交差部から所定範囲であって、多少、交差部からずれた位置に突起5があった場合であっても、切替部材14が駆動部15によってR3回転方向に回転することで、突起5が切替部材14の溝内にあった場合には交差部に位置合わせすることができる。従って、この場合、切替部材14は、交差部付近にある突起5を交差部に位置合わせする部材でもある。
【0053】
制御装置200の制御信号に従う駆動部13によってローラ12の向きがD1方向とD2方向とで切り替わる。また、制御装置200の制御信号に従う切替部材14によってレール11内で許容される突起5の進行状態が第1の状態と第2の状態とで切り替わる。この切替の組み合わせによって、移動体1は、対象面Sに二次元上に設置された突起5の上を移動することができる。すなわち、駆動部13B,13Dによってローラ12の向きをD1方向とし、切替部材14によって第1の進行状態としたとき、移動体1の進行方向はD1方向となる。
【0054】
移動体1は、方向転換を行うポイントに設置された突起5(対象突起)がレール11の交差部まで移動したタイミングで、進行方向をD1方向とD2方向とに転換する切替動作を行う。すなわち、対象突起がレール11内部のガイド部112をD1方向に進行して交差部まで達すると、駆動部13B,13Dによるローラ12A,12Bの回転が終了する。その位置にて、切替部材14によって進行状態が第1の進行状態から第2の進行状態に切り替えられる。その後に、駆動部13A,13Cによってローラ12A,12CのR2回転方向の回転が開始される。これにより、移動体1は、対象突起まで進行方向をD1方向として移動し、対象突起で進行方向をD2方向に切り替えることができる。この制御を繰り返すことによって、移動体1を対象面S上の任意の位置に移動させることができる。
【0055】
移動体1が進行方向を変えずに移動するとき、突起5は一延伸方向のレール11内を移動する。突起5が交差部を通過する場合、切替部材14は、そのレール11の延伸方向の突起5の進入を許可し、そのレール11に直交するレール11への突起5の進入を非許可とする進行状態としている。これにより、突起5はその交差部を通過可能であるとともに、直交するレール11への進入が防がれる。対象面Sが垂直面などの水平面から角度を有する面である場合、直交するレール11への進入が非許可とされていないと、通過時に直交するレール11へ突起5が進入してしまい、移動体1の落下につながる。従って、この場合、切替部材14は、突起5が交差部付近となった位置での軌道からの落下を防止する部材でもある。
【0056】
好ましくは、レール11の交差部にセンサ16A~16Dが設置される。これらセンサ16A~16Dを代表させてセンサ16と称する。センサ16は近接センサであって、赤外線や超音波などを利用するものであってよい。センサ16は、レール11の交差部への突起5の接近を検出する。突起5の検出結果をカウントすることによって、移動体1の移動距離が得られる。これにより、移動体1の対象面S上での位置をセンシングすることができる。
【0057】
移動体システム100は、移動体1の移動を制御する制御装置200を含む。制御装置200は、1台の装置によって構成されるものであってもよいし、複数台の装置が協働して構成されていてもよい。1又は複数の装置は、一般的なコンピュータであってよい。制御装置200は、ネットワーク上のサーバであってもよい。又は、移動体1近傍に設置された1台又は複数のコンピュータや、スマートフォンなどであってもよい。
【0058】
制御装置200は、一例として、1台のコンピュータによって構成されている。図1を参照して、制御装置200は、プロセッサ21とメモリ22とを有する。プロセッサ21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。また、制御装置200は、無線又は有線によって移動体1と通信するための通信部23を有する。また、制御装置200は、オペレータからの操作を受け付ける入力部24を有する。制御装置200は、オペレータから受け付けた移動体1の移動経路や、目的位置の指定に基づいて、移動体1が対象面S上を移動するように制御する。
【0059】
一例として、制御装置200は、対象面S上の突起5を位置情報として予め記憶しておく。これにより、制御装置200は、突起5によって、経路や目的位置を特定するとともに、移動体1を、現在位置から目的位置まで移動させる経路を突起5によって特定することができる。
【0060】
制御装置200は、特定された移動経路に基づいて、ローラ12の回転/停止を指示する制御信号を駆動部13に出力する。これにより、移動体1が進行方向に移動する。また、制御装置200は、特定された移動経路に基づいて、ローラ12の方向の変換を指示する制御信号を駆動部13に出力する。これにより、移動体1の進行方向が変更される。切替部材14を回転させる制御信号を駆動部15に出力する。これにより、移動体1が方向転換したり直進したりして移動する。
【0061】
制御装置200は、センサ16からセンサ信号を取得する。これにより、制御装置200は、移動体1の位置を検出することができる。検出された位置に従って、上記の制御信号を出力する。これにより、高精度で移動体1を移動させることができる。
【0062】
図10図14は、搬送体3を説明するための図である。図10は、搬送体3の斜視図である。図11は、搬送体3の平面図である。図12は、搬送体3の正面図であって、移動体1を搭載した状態での正面図である。図13及び図14は、搬送体3の駆動部31を説明するための図である。
【0063】
図10及び図11を参照して、搬送体3は、駆動部31と、移動体1を搭載するための搭載面32と、を有する。図12に示されたように、搬送体3が搭載面32上に移動体1を搭載した状態を、搬送状態とも言う。搭載面32には、複数の突起33が設けられている。搭載面32には、移動体1が移動して搭載され、複数の突起33は、その軌道Оz上に設けられている。
【0064】
好ましくは、軌道Оzは、間隔E3を隔てた2本の軌道である。複数の突起33は、両軌道Оz上に、軌道Оzに直交する方向には一致した位置に設けられている。間隔E3は、突起5の間隔の2倍の長さである。一例として、間隔E3は、間隔d1の2倍(間隔d1×2)の長さである。この場合、複数の突起33は、軌道Оz上に間隔d2で設けられている。これにより、移動体1は、係合部5aによって複数の突起33と係合しながら、搭載面32上で移動することが可能になる。
【0065】
搭載面32上には、歯車34が設けられている。歯車34の回転軸35は搭載面32内にあって、その方向は軌道Оzに直交する方向に一致する。詳しくは、図12を参照して、搬送状態において、移動体1のローラ12A,12Bは、歯車34の真上に位置する。搬送状態においてローラ12A,12Bが回転することによって、ローラ12A,12Bの回転により歯車34が回転する。
【0066】
回転軸35は、他方端が駆動部31に接続されている。これにより、移動体1のローラ12A,12Bによる歯車34の回転が、回転軸35を介して駆動部31に伝播する。すなわち、移動体1のローラ12A,12Bは、移動体1の駆動部13に含まれる動力源からの動力によって回転する。そのため、搬送体3の駆動部31には、移動体1の駆動部13に含まれる動力源からの動力が与えられることになる。
【0067】
言い替えると、搬送体3は、移動体1を搭載した搬送状態において動力源を有し、その動力源は、一例として、移動体1の動力源からの動力である。これにより、搬送体3に動力源が不要、又は、簡易なものとすることができる。また、搬送ガイド7にも動力源を不要とすることができる。つまり、搬送ユニット300に動力源を不要とすることができる。このため、搬送ユニット300の構成を容易にすることができる。また、すでに対象面S1,S2が設置されている移動体システム100に、後から容易に搬送ユニット300を加えることができる。
【0068】
駆動部31は、搬送状態において移動体1の動力源からの動力を受けて、移動体1の搬送のために駆動する。詳しくは、図13を参照して、駆動部31は、筐体301を有し、筐体301内に、搬送用レール7Aを把持する複数の把持部311L,311R,312を有する。把持部311L,311Rは、いずれも、搬送用レール7Aを上下に挟むガイド車輪対313を有する。また、把持部312は、搬送用レール7Aを上下に挟むガイド車輪対329,321を有する。これにより、駆動部31は、搬送体3を搬送用レール7Aに対して3カ所、上下6点で密着させている。
【0069】
搬送用レール7Aを上下に挟むガイド車輪対313それぞれの回転軸313Aを保持する2つの部材314は、枠315内に格納されている。枠315は、筐体301内に配置され、筐体301内面と枠315外面との間に外ばね316が設置されている。枠315内面と部材314外面との間に内ばね317が設置されている。部材314は、内ばね317によって搬送用レール7Aに向かう方向の応力が加えられ、その応力が回転軸313Aに作用する。その結果、ガイド車輪313は搬送用レール7Aに押し付けられ、搬送用レール7Aに密着する。
【0070】
搬送用レール7Aを上下に挟むガイド車輪対329,321それぞれの回転軸329A,321Aを保持する部材324,322は、枠323内に格納されている。枠323は、筐体301内に配置され、枠323内面と部材324外面との間、及び、枠323内面と部材322外面との間に内ばね326が設置されている。部材324,322は、内ばね326によって搬送用レール7Aに向かう方向の応力が加えられ、その応力が回転軸329A,321Aに作用する。その結果、ガイド車輪329,321は搬送用レール7Aに押し付けられる。
【0071】
把持部312の近傍には、動力伝達装置の一例としてのギアボックス327が配置されている。ギアボックス327は、回転軸35の他方端に接続され、回転軸35の回転を受ける歯車328を含む。歯車328は、図示しない他の歯車及びプーリを介してガイド車輪329に回転を与える。これにより、ガイド車輪329は、回転軸35の回転を受けて回転する。
【0072】
好ましくは、ギアボックス327は、回転軸35の回転方向を反転させてガイド車輪329に与える。これにより、ローラ12A,12Bの回転方向と、搬送体3の進行方向を逆にすることができる。そのため、移動体1を搬送体3に搭載する際の移動体1のローラ12A,12Bの回転によって、意図せず搬送体3が移動することを防止できる。
【0073】
ガイド車輪329は、外周に歯車329Bを有する。搬送用レール7Aの、ガイド車輪329は外周に接する面にはタイミングベルト71が配置されている。歯車329Bはタイミングベルト71に接触する。そのため、ガイド車輪329が回転することで歯車329Bとタイミングベルト71との間の摩擦が生じ、ガイド車輪329が回転に従って搬送用レール7Aに対して相対的に移動する。
【0074】
例えば、図13の状態でガイド車輪329が右回りに回転すると、位置が固定された搬送用レール7Aに対してガイド車輪329は相対的に左側に移動する。搬送用レール7Aはガイド車輪329,321で挟み込まれているため、把持部312全体が搬送用レール7Aに対して相対的に左側に移動する。これにより、搬送体3は、搬送用レール7Aに沿って移動する。すなわち、搬送体3は、移動体1のローラ12A,12Bの回転によって搬送ガイド7に沿って移動する。
【0075】
このとき、把持部311L,311Rがガイド車輪対313によって搬送用レール7Aを上下に挟み、枠315に外ばね316によって搬送用レール7Aに向かう方向の応力が加えられるとともに、内ばね317によって筐体301に向かう方向の応力が加えられる。これにより、搬送体3の移動時に、枠315の位置が搬送用レール7Aに対して適切な位置に調整される。
【0076】
例えば、図14に示されたように、曲線部の搬送用レール7Bの移動中、把持部311L,311Rの枠315に対して、外ばね316によって与えられる搬送用レール7Bの外周側から内周側に向かう応力の方が逆向きの応力より大きい。その結果、枠315は、直線部の搬送用レール7Aの移動中(図13)よりも搬送用レール7Bの内周側に位置するようになる。これにより、駆動部31は曲線に沿って搬送用レール7Bに押し付けられるようになり、搬送体3を搬送用レール7Bに沿って移動させることができる。つまり、把持部311L,311Rは、搬送ガイド7に沿って搬送体3をガイドする。
【0077】
把持部311L,311Rが設けられることによって、図14に示されたような曲線部の搬送用レール7Bであっても搬送体3を曲線に追随させて移動させることができる。その結果、対象面S1,S2が角度を有して設置された場合であっても、その間に、曲線を有した搬送ガイド7を設置することが可能になる。その結果、移動体1自体を移動させるよりも大きな曲率で搬送体3によって移動体1を移動させることができる。それにより、角度を有して設置された対象面S1,S2間に、搬送用の対象面で接続するよりも狭い範囲で搬送ガイド7を設置することが可能になる。
【0078】
他の例として、駆動部31が動力源を有してもよい。又は、他の例として、搬送ガイド7が動力源を有してもよい。その場合、搬送体3は、移動体1の動力を利用せずに移動することができる。
【0079】
図15は、制御装置200での、移動体1の移動の制御の流れの一例を表したフローチャートである。図15を参照して、移動体1の移動の制御は、一例として、制御装置200の入力部24に対するユーザ操作に従って行われる。
【0080】
この例では、第1対象面S1から第2対象面S2に移動体1を移動させるときの制御装置200での制御の流れを説明する。このとき、移動体1は、図1に示されたルートR1,R2,R3を通って移動する。ルートR1は、移動体が第1対象面S1上を第2対象面S2に向けて移動する軌道である。ルートR2は、第1対象面S1と第2対象面S2との間に設置された搬送ガイド7に沿って、第1対象面S1から第2対象面S2に向けて移動する軌道である。ルートR3は、移動体が第2対象面S2上を移動する軌道である。この移動の際には、第1対象面S1から第2対象面S2に向かう向きに移動体1を移動させ、引き続き第2対象面S2でも移動体を移動させるユーザ操作が行われるものとする。
【0081】
図15を参照して、制御装置200のプロセッサ21は、入力部24から移動体1の進行を指示するユーザ操作を受け付けると(ステップS101でYES)、移動体1を移動させる制御を行う(ステップS103)。ステップS103の制御は、ユーザ操作によって指示された方向を進行方向とするように、必要に応じて駆動部15を駆動させるとともに、進行方向に移動体1を移動させるためのローラ12を回転(正回転)させるように駆動部13を駆動させることを含む。
【0082】
プロセッサ21は、移動体1のセンサ16からのセンサ信号を受信し、通過した突起5の数をカウントする(ステップS105)。プロセッサ21は、通過した突起5の数を用いて、移動体1の現在位置を算出する(ステップS107)。ステップS107でプロセッサ21は、一例として、予め記憶している初期位置に対してステップS105でカウントした数を加えることによって現在位置を算出する。
【0083】
プロセッサ21は、移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であるか否かを判定する(ステップS109)。第1対象面S1と第2対象面S2との間には搬送ガイド7が取り付けられており、搬送体3は、搬送ガイド7上に配置されている。移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であるか否かの判定は、一例として、ステップS107で算出した移動体1の現在位置と、搬送ガイド7上にある搬送体3の位置との比較によって行われる。
【0084】
この場合、プロセッサ21には、対象面S1,S2に対する搬送ガイド7の位置が予め記憶されていてもよい。これは、移動体1を第1対象面S1と第2対象面S2との間に搬送ガイド7を取り付けた際に入力されるものであってもよいし、予め規定された位置に搬送ガイド7が取り付けられるよう構成されていてもよい。また、搬送体3は、第1対象面S1から第2対象面S2に移動させるときには第1対象面S1に最も近い位置に配置されるものとし、その位置は、プロセッサ21に予め記憶されていてもよい。これにより、プロセッサ21は、ステップS107で算出した移動体1の現在位置と、搬送体3の位置とを比較することができる。これにより、新たなセンサ等を設けることなく移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であるか否かが判定できる。
【0085】
移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であるか否かの判定は、他の例として、移動体1と搬送体3との少なくとも一方に接近センサを配して、センサ信号から移動体1の搬送体3への接近を検出することによって行われてもよい。これにより、移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であるか否か容易に判定できる。
【0086】
また、移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であるか否かの判定は、入力部24からのユーザ操作を示す信号に基づいて行われてもよい。すなわち、他の例として、移動体1が搬送体3に搭載されたときに、それを示すユーザ操作を入力部24に対して行い、そのユーザ操作を示す信号がプロセッサ21に入力されることによって、プロセッサ21は、移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であると判定してもよい。これにより、移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であるか否か容易に判定できる。
【0087】
移動体1の位置が搬送体3の搭載面上であると判定されると(ステップS109でYES)、プロセッサ21は、ロック部17に係合部111での係合を固定させる(ステップS111)。これにより、移動体1は搬送体3に固定される。
【0088】
その後、プロセッサ21は、駆動部13に移動用の駆動を行わせる。移動用の駆動は、搬送体3を移動させるための移動体1の駆動を行わせることを指し、一例として、ローラ12を逆回転させる(ステップS113)ことを含む。これにより、ローラ12の回転に従って搬送体3の歯車34が回転し、その回転が回転軸35を介して駆動部31に与えられる。このとき、回転が反転されて駆動部31に与えられる。これにより、移動体1を搬送体3に搭載する際の移動体1のローラ12A,12Bの回転によって、意図せず搬送体3が移動することを防止できる。
【0089】
回転が駆動部31に与えられることでガイド車輪329が回転する。このとき、逆回転したローラ12の回転が反転されて駆動部31に与えられ、ガイド車輪329が回転するため、ローラ12の正回転に対応した進行方向に搬送体3が移動することになる。
【0090】
ステップS113で駆動部13にローラ12を逆回転させたプロセッサ21は、搬送体3が第2対象面S2に到達したか否かを判定する(ステップS115)。搬送体3が第2対象面S2に到達したか否かの判定は、一例として、搬送状態でのローラ12の回転量と、予め記憶している搬送ガイド7の長さとの比較によって行われる。
【0091】
搬送状態でのローラ12の回転量は、一例として、ステップS113での駆動制御の時間と、予め記憶している単位時間当たりの回転量とを乗じることによって得られる。この場合、プロセッサ21は、算出されたローラ12の回転量と予め記憶している搬送ガイド7の長さとを比較することによって、搬送体3が第2対象面S2に到達したか否かを判定する。
【0092】
搬送体3が第2対象面S2に到達したか否かの判定は、他の例として、搬送体3と第2対象面S2の端部との少なくとも一方に接近センサを配して、センサ信号から搬送体3の第2対象面S2への接近を検出することによって行われてもよい。これにより、搬送体3が第2対象面S2に到達したか否か容易に判定できる。
【0093】
また、搬送体3が第2対象面S2に到達したか否かの判定定は、入力部24からのユーザ操作を示す信号に基づいて行われてもよい。すなわち、他の例として、搬送体3が第2対象面S2に到達したときに、それを示すユーザ操作を入力部24に対して行い、そのユーザ操作を示す信号がプロセッサ21に入力されることによって、プロセッサ21は、搬送体3が第2対象面S2に到達したと判定してもよい。これにより、搬送体3が第2対象面S2に到達したか否か容易に判定できる。
【0094】
搬送体3が第2対象面S2に到達したと判定されると(ステップS115でYES)、プロセッサ21は、ロック部17に係合部111での係合の固定を解除させ(ステップS117)、ユーザ操作によって指示された方向を進行方向としてローラ12の回転(正回転)を再開させるように駆動部13を駆動させる(ステップS119)。これにより、移動体1は、第1対象面S1から第2対象面S2に向けて移動し、第2対象面S2に搬送されてから、引き続き第2対象面S2で移動を続ける。
【0095】
以上の制御が行われることによって、移動体1を容易に第1対象面S1から第2対象面S2に移動させることができる。例えば、移動体1を室内の内周面上で移動させる場合、壁面Wと天井面Cとの間なども容易に移動体1を移動させることができる。すなわち、既存の第1対象面S1と第2対象面S2との間に搬送ユニット300を設けるだけで容易に対象面S1,S2を含む移動体システム100を構築でき、移動体1の移動を容易に広げることができる。また、移動体1の移動を操作するユーザは、移動体1を第1対象面S1上を移動させる場合と同じ操作によって、第1対象面S1から第2対象面S2に移動させることができる。
【0096】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 :移動体
3 :搬送体
5 :突起
5-1A :突起
5-1B :突起
5-1E :突起
5-2A :突起
5-4A :突起
5a :係合部
7 :搬送ガイド
7A :搬送用レール
7B :搬送用レール
11 :レール
11-1 :レール
11-1A :レール
11-1B :レール
11-2 :レール
11-2A :レール
11-2B :レール
12 :ローラ
12A :ローラ
12B :ローラ
12C :ローラ
13 :駆動部
13A :駆動部
13B :駆動部
13C :駆動部
13D :駆動部
14 :切替部材
14A :切替部材
14B :切替部材
14C :切替部材
14D :切替部材
15 :駆動部
15A :駆動部
15B :駆動部
15C :駆動部
15D :駆動部
16 :センサ
16A :センサ
16B :センサ
16C :センサ
16D :センサ
17 :ロック部
21 :プロセッサ
22 :メモリ
23 :通信部
24 :入力部
31 :駆動部
32 :搭載面
33 :突起
34 :歯車
35 :回転軸
71 :タイミングベルト
100 :移動体システム
111 :係合部
112 :ガイド部
113 :ガイドパーツ
131 :支柱
200 :制御装置
300 :搬送ユニット
301 :筐体
311L :把持部
311R :把持部
312 :把持部
313 :ガイド車輪
313A :回転軸
314 :部材
315 :枠
316 :外ばね
317 :内ばね
321 :ガイド車輪
321A :回転軸
322 :部材
323 :枠
324 :部材
326 :内ばね
327 :ギアボックス
328 :歯車
329 :ガイド車輪
329A :回転軸
329B :歯車
C :天井面
Ox :軌道
Ox1 :軌道
Ox2 :軌道
Ox3 :軌道
Ox4 :軌道
Oy :軌道
OyA :軌道
OyB :軌道
OyC :軌道
OyD :軌道
OyE :軌道
R1 :ルート
R2 :ルート
R3 :ルート
S :対象面
S1 :第1対象面
S2 :第2対象面
W :壁面
Оz :軌道
図1
図2
図3
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図5
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